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2018年3月8日木曜日

完全失業率2・4%の意味 異常値ともいえる大幅下落、賃金本格上昇はこれから 高橋洋一 日本の解き方―【私の論評】日本経済にはまだまだ、まだ!量的緩和と積極財政が必要(゚д゚)!

完全失業率2・4%の意味 異常値ともいえる大幅下落、賃金本格上昇はこれから 高橋洋一 日本の解き方

1月の完全失業率が2・4%と24年9カ月ぶりの低水準となった。この失業率が意味するものは何か。賃金の本格上昇には、低い失業率がどの程度続く必要があるのか。

 本コラムで、NAIRU(インフレを加速しない失業率)がマクロ経済政策、とりわけ金融政策において重要だと指摘してきた。一般的に、インフレ率と失業率は逆相関であり、NAIRUを達成する最小のインフレ率をインフレ目標に設定するからだ。ここから導かれる金融政策は、失業率がNAIRUに達するほど低くない場合、インフレ率もインフレ目標に達しないので金融緩和、失業率がNAIRUに達すると、その後はインフレ率がインフレ目標よりも高くなれば金融引き締めというのが基本動作である。


 そして、筆者の推計として、NAIRUを「2%台半ば」としてきた。国会の公聴会でも説明したが、経済学は精密科学でないので、小数点以下に大きな意味はないが、あえてイメージをハッキリさせるために、「2%台半ば」を2・5%ということもある。これは、2・7%かもしれないし2・3%かもしれない。2・5%程度というと数字が一人歩きするので、普通は「2%台半ば」といっている。

 今回、2・4%という数字が実際に出たわけなので、NAIRUに達したかといわれるが、筆者の答えはまだ否である。

 なにしろ、前月の昨年12月は2・7%だったので、0・3%もの大幅な下落となった。一方、1月の有効求人倍率は1・59倍と前月と同水準である。

失業率は、失業者を労働人口で除した数字である。失業者は働く意思があるが失業している人をいうので、1月には大雪があり、職探しを中断して、結果として失業者が減った可能性もある。

 過去のデータを見ても、失業率はあまり上下しない数字である。過去1953年1月から、前月との差をみると、平均0・00064、標準偏差0・11である。ほぼ変動しないのが当たり前だ。これではイメージしにくいかもしれないので、今回のような0・3%下落を探すと、780回のうち今回を含めてわずか7回である。しかも、最大の下落幅だったのだ。


 統計的に見ると、今回の下落はほとんど起こりえないことが起こったわけで、統計的に異常値であるといってもいい。NAIRUになっているかどうかは、あと数カ月間の動向を見なければ判断できない。

 もちろん、失業率が一時でもあれ下落したのは悪いことではない。しかし、これで、金融政策の出口と早計したら、間違った政策になってしまう。

 というわけで、今回の数字だからNAIRUになったとはいえないが、仮にNAIRUになったら、その半年から1年以内に本格的な賃金上昇が来るはずである。なぜなら、人手不足なので、企業は賃金を払わないと人の確保ができなくなり、企業活動に支障が出てしまうからだ。今がNAIRUとは決していえないが、それが目前に迫っていると筆者は思っている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本経済にはまだまだ量的緩和と積極財政が必要(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では触れられていませんが、失業率が一時2.4%になったからといって、インフレ目標2%が達成されない限りは、金融緩和政策をやめるわけにはいきません。

失業率に関しては、このたとえが適切かどうかはわかりませんが、失業率を健康の問題などにたとえると、血圧のようなもので、何かの原因で血圧があがって病院に入院したとして、血圧が下がったからといって、すぐに退院ということにはならないでしょう。


やはり、しばらく様子を見るはずです。血圧が安定して、下がっているかをみるのと同時に、血圧が上がった原因が取り除かれたかどうかを検査することになると思います。その結果、大丈夫だということになれば、退院ということになるでしょう。

ただし、その後もしばらく通院して、様子をみて、その後特に変化がなければ、通院もなしということになると思います。

失業率も同じことです。一時、失業率が下がったことをもって、金融緩和をする必要はなしということにはなりません。

さらに、失業率が上がった原因である、デフレ状況が取り除かれ、緩やかなインフレになっているかも調べる必要があります。

インフレ目標は2%ですが、この2%が恒常的にクリアされている状態にもっていく必要があります。

日銀の現在の政策は、市場に供給するお金の量(マネタリーベース)を年間80兆円ペースで増やすとしていますが、これを年100兆円ペースに増やせば、かなりの確率でデフレから完全脱却できます。

ただ、日銀は市場から買う国債の量を年80兆円から年約50兆円程度まで減らしてきています。国債の購入量を拡大するのが難しくなっているのであれば、政府がそれを埋めるだけの財政拡張をして、合計で100兆円にするべきです。財政拡張自体に景気拡大の効果もあるので、実際に増額するマネタリーベースの量はあと10兆円程度でも良いかもしれません。

具体的には、建設国債など新規の国債を増発し、それを日銀が買い上げる方法をとるべきです。その際、日銀のイールドカーブ・コントロール政策は効果的です。政府が財政出動すると景気が刺激されます。金利が上がりそうになれば、イールドカーブ・コントロール政策で長期金利の水準が一定の値に保たれるように日銀が国債を買うので、金利の上昇は止められることになります。日銀が国債を買うことで、量的金融緩和の効果もあります。


日銀が大規模な「量的・質的金融緩和」を導入した2013年4月以降、「予想インフレ率は着実に上昇していましたが、消費税率引き上げと原油価格の下落を契機に弱まってしまいました。

このため、2019年度の消費税引き上げについては消費低迷を通じて予想インフレ率が弱含み、物価が下がることになるでしょう。海外経済のリスクも19年度までに顕在化する可能性があります。その場合、日本経済は相応に下振れることになります。

要するに、今の日本では失業率が2.4%になったからといって、おいそれとすぐに金融引締めや、緊縮財政をするような状況にはとてもないということです。

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