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2020年3月23日月曜日

東京五輪「中止」は回避 安倍首相とIOCの利害一致 「延期」容認に入念にすりあわせ―【私の論評】今こそ、オリンピックを開催しても経済が悪化した英国の大失敗に学べ(゚д゚)!

東京五輪「中止」は回避 安倍首相とIOCの利害一致 「延期」容認に入念にすりあわせ

IOCバッハ会長(左)と安倍総理(右)

安倍晋三首相は23日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、7月の東京五輪の開催延期を容認する考えを初めて示した。首相が先進7カ国(G7)首脳による16日の緊急テレビ電話会議で、五輪を「完全な形で実施したい」と語ったことを受け、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が柔軟な姿勢に転じたとみられる。首相もIOCも「中止」の判断だけは避けたかったようで、22日には大会組織委員会の森喜朗会長を挟み、入念なすりあわせが行われた。

 「トランプ米大統領をはじめ、G7の首脳も私の判断を支持してくれると考えている。判断を行うのはIOCだが、中止が選択肢にない点はIOCも同様だ」

 首相は23日の参院予算委員会で、IOCが4週間以内に延期も含めて検討を進めることに理解を示しつつ、東京五輪そのものが「中止」とはならないことを強調した。

 中止となれば、これまでの準備の多くが水泡に帰すばかりでなく、日本経済に及ぼす悪影響は「延期」の比ではない。IOC側も五輪開催が1回分吹き飛べば、スポンサー料など収入面で甚大な被害を受ける。

 首相は、G7首脳に「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証し」として、規模縮小や無観客ではなく「完全な形で実施したい」と根回しし、「中止」の選択肢を消すことに努めた。大会組織委幹部は「首相のG7での振る舞いを見て、利害の一致したIOCが延期を含めた検討を始めた」と解説する。

 「好都合だった」と森氏も振り返る。これまでは、感染がどう広がるか分からない現状で、早々と結論を決めるのは得策でないとして、決断を5月下旬頃まで先送りする案もあった。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中で日を追うごとに深刻化していた。連日のように各国・地域の国内オリンピック委員会(NOC)や競技団体、現役アスリートらが声を上げ、組織委への風当たりは強まっていた。

 森氏は23日の記者会見で「われわれもIOCと話を合わせたいと、月曜日(23日)から(電話会議を)やろうと思っていた。(開催が)早まり、よかった」と打ち明ける。組織委側がバッハ氏から「延期」という単語を聞いたのは22日が初めてというが、事実上、電話会議が決まった時点で延期の検討は決まっていたのかもしれない。

 森氏は22日、首相や東京都の小池百合子知事らと電話で対応を協議し、特に首相とは3回も連絡を取り合った。首相は、IOC側が延期を決断した際、受け入れる考えも示したという。首相は23日の参院予算委でこう強調した。

 「世界中のアスリートがしっかり練習でき、世界からしっかり参加していただき、アスリートや観客が安心できる形で開催したい」(森本利優、原川貴郎)

【私の論評】今こそ、五輪を開催しても経済が悪化した英国の大失敗に学べ(゚д゚)!

オリンピックの開催は、やはり延期にした方が良いです。たとえ、7月24日までに日本で武漢肺炎が終息したとしても、他国がどうなっているかはわかりません。

以下のグラフをご覧になって下さい。


これは、新型コロナウイルス 第1感染者確認後のグラフです。 3/22時点の感染者数累計は、 日本(1101)、韓国(8897)、イタリア(59138)、イラン(21638)、フランス(15810)、ドイツ(24806)、スペイン(28603)、アメリカ(32582)です。

このグラフでもわかるように、日本は、いまのところ感染の封じ込めに相対的に他国よりも成功しています。このグラフは単純に感染者数の比較をしていますが、日本の場合は人口が1億2千万人ですが、先進国では米国の人口は3億人ですが、その他の先進国は数千万人です。

人口10万人あたりの、感染者数などで比較すれば、韓国、イタリア、フランス、ドイツ、スペインなどは、さらに悲惨な状況であることがわかるでしょう。

これらの国々にすれば、現状ではオリンピックどころではなく、感染症対策で精一杯でしょう。

さらに、日本だって今までは、感染封じ込めに成功してきたようですが、これからはどうなるかはわかりません。

小池百合子東京都知事

新型コロナウイルス対策について東京都の小池百合子知事は、23日の記者会見で「感染の爆発的な増加を避けるためロックダウン(都市封鎖)など強力な措置を取らざるを得ない状況が出てくる可能性がある」と述べています。ネット上ではこれに反応し『東京封鎖』『ロックダウン』という言葉がツイッターのトレンド入りし、さまざな憶測や不安が飛び交いました。

小池知事は封鎖について「何としても避けなければならない」とイベント自粛継続などへ協力を呼び掛けました。ネット上では「封鎖するのは警察?自衛隊?」「山手線も止まるのか」「検問所どれだけ必要なの」「仕事は?給料は??」との声が相次ぎました。映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』の主人公・織田裕二が発した「レインボーブリッジ封鎖できません!」のセリフを連想して「映画みたいなこと本当に起きるの?」と疑問を抱く人もいました。

飲食店閉鎖などの措置が実施されている海外からは「友達とも自由に会えない状況だけど、みんな頑張ってる。私も頑張ろう!」との反応もありました。相次ぐ新型コロナ関連のニュースに「流行が早く終わったらいいな。明るく笑いながら、何気ない日常を過ごしたいな」と切望する声もありました。

無論、小池百合子知事の「ロックダウン」という言葉は、最悪のシナリオを想定したものですが、それにしても全くあり得ないとはいえません。

運悪く、東京がロックダウンされれば、当然のことながらオリンピックは開催できません。そうした可能性もあるのですから、やはりここは、延期すべきでしょう。

オリンピックを延期とか、中止などというとすぐに経済の落ち込みを心配する人もいますが、日本や米国などの経済規模がかなり大きな国では、オリンピックの経済効果は実はさほどでもありません。それよりも、個人消費を伸ばしたほうがはるかに、経済効果は高いです。

これに関しては、良い事例があります。それは、2012年のロンドンオリンピックです。英国は、オリンピックの直前に付加価値税(日本の消費税に相当)を大幅にあげ、大失敗しています。日本でも、オリンピックの前年である昨年に消費税を上げて大失敗しています。

英国は量的緩和政策で景気が回復基調に入ったにもかかわらず、「付加価値税」の引き上げで消費が落ち込み、再び景気を停滞させてしまいました。 その後、リーマン・ショック時の3.7倍の量的緩和を行っても、英国経済が浮上しなかった教訓を日本も学ぶべきです。

このようなことを主張すると、英国の財政は日本よりも良い状況だったからなどという人もいるかもしれませんが、日本の財政は負債のみでなく、資産にも注目すれば、さほどではないどころか、英国よりもはるかに良い状況にあります。

英国は、日本よりは経済規模が小さいですが、それでも経済対策を間違えば、オリンピックなど開催しても景気は落ちこんだのです。

オリンピックを開催すれば、経済効果は大きいですが、かといって経済対策の間違いを補えるほどかといえば、そうではないのです。英国よりも経済規模が大きい日本ではなおさらです。

私は、もともとさほど大きくはない経済効果を期待して、オリンピックを無理に開催する必要性などないと思います。そのようなことをするよりも、オリンピックは延期して、消費税減税、給付金対策、無論追加の金融緩和をするなどのことをして、経済を浮揚させてから、オリンピックを開催すべきです。

武漢肺炎で、経済が破壊されてとんでもないことになるのではないかと心配する人もいるようですが、まともな経済政策をしている国において、大規模な災害や、伝染病等で経済が一時かなり悪化しても、災害や伝染病が終息した後はかなりの勢いで消費等が伸びて、回復します。これについては、このブログでも香港の事例をあげたことがあります。

詳細は、当該記事をご覧になって下さい。以下にグラフだけ引用しておきます。


戦争の場合もいっとき景気は落ち込みまずか、それでもその後ものすごい勢いで経済が伸びることは、私達日本人が経験しているところです。これについても、当該記事に書きましたので是非ご覧になってください。

現状では、オリンピックは延期して、ロンドンオリンピックの失敗に学び、上げてしまった消費税を減税して、一人あたり10万円くらいの給付などを行い、日銀も異次元緩和のスタンに戻り、オリンピックが開催するときには、日本経済が大きく回復する状況ををつく出すのがベストです。

誰もが、先行きにあまり不安を感じない状態で、平和の祭典を開催するのが、日本にとっても世界にとってもベストだと思います。

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2019年3月23日土曜日

【日本の解き方】米財政赤字容認する「MMT」は数量的でなく“思想優先”の極論 日本財政は標準理論で説明可能―【私の論評】貯蓄過剰の現代の世界は桁外れの金融緩和、積極財政が必要だがMMTは不要(゚д゚)!


ドル紙幣でつくられたビキニ

 米国で財政赤字の拡大を容認する「現代金融理論」(Modern Monetary Theory=MMT)の議論が活発になっていると報じられている。

 MMTは、自国通貨を無制限に発行できる政府は、政府債務(国の借金)が増えても問題がないとする経済理論だ。

 現実には、過去にデフォルト(債務不履行)に陥った国は少なくない。2001年のアルゼンチンや15年のギリシャなどの例がある。ギリシャは単一通貨ユーロを採用しているため自国で通貨を発行できなかった。

 なお、ギリシャは破綻(債務不履行と債務条件変更)の常習国だ。カーメン・ラインハート、ケネス・ロゴフ著『国家は破綻する』によれば、1800年以降の200年余の歴史の中で、ギリシャが債務不履行と債務条件変更を行った年数は50%を超える。いうなれば、2年に1度は破綻している国で、ユーロに入る以前には自国通貨でも破綻している。

 これらに対し、米国のMMT支持者は、世界の基軸通貨ドルで借金ができる米国はドルを刷ればいいので、財政破綻はあり得ないと主張する。

 米国の主流派の経済学者は、こうしたMMTの主張に対してバカげていると感情的に反発している。

 筆者にとって、数量的ではない政策議論には意味がない。米国の議論は定性的な極論か経済思想優先で、実りのある政策議論には思えない。

 従来の経済理論では、財政赤字でも中央銀行が国債を買い入れればインフレになる。そのインフレさえ感受できれば政府債務は財政上問題ない。

 これを統合政府のバランスシート(貸借対照表)から見てみよう。政府債務は、中央銀行の国債買い入れで全部または一部が銀行券に置き換わる。国債は有利子有償還であるが銀行券は無利子無償還なので財政問題はなくなる。



 一方、発行された銀行券は実体経済の生産力との関係で、過大になりすぎるとインフレを招く。これは、実体経済の生産力は潜在国内総生産(GDP)水準と近似できるが、それが政府の規模と一定関係であれば、統合政府のバランスシートでの債務超過はインフレをどの程度もたらすかと大いに関係している。また、他国との銀行券の比率において自国通貨が過大になると自国通貨安をもたらす。これらは、MMTによらずとも従来の経済理論から出てくる。

 インフレ率や自国通貨安がどの程度の弊害になるかだが、インフレ率は自国通貨安にも関係するので、結果としてインフレ率が許容範囲かどうかに帰着する。

 先進国で2%程度のインフレ目標は、最小失業率を目指したものだ。それよりインフレ率が高くなると、経済活動の障害など社会コストが高くなる。

 少なくとも、日本のように、インフレ率がインフレ目標まで達していないならば、財政赤字の心配は不要という主張は多くの人に受け入れられるのではないか。これはMMTからでなくとも導かれる標準的な内容だ。MMTの主張は極論すぎると思う。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】貯蓄過剰の現代の世界は桁外れの金融緩和、積極財政が必要だがMMTは不要(゚д゚)!

MMTには三つの以下の中核的な主張があります。
1)自国通貨を持つ国家の政府は、純粋な財政的予算制約に直面することはない。 
2)すべての経済および政府は、生産と消費に関する実物的および環境上の限界がある。 
3)政府の赤字はその他全員の黒字である。
一番目の主張は、広く誤解されている主張です。自国通貨を持つ国の政府とは、自国通貨と中央銀行を有しており、変動為替制度を採用し、大きな外貨債務がないという意味です。日本はそのひとつであり、英国、米国、豪州も該当します。ユーロ圏の国々は自国通貨を持たないので当てはまらないです。これは、当たり前といえば当たり前です。

2番目の主張は、政府はその気にさえなれば、消費しすぎたり課税しなさすぎたりして、インフレを起こすことが出来るという明白な事実を確認しているにすぎないです。現実的な限界を迎えるとき、消費の総合的な水準が、すべての労働力、スキル、物質的な資本、技術および自然資源を投入して生産できる上限を超えているといえます。

間違ったものを大量に生産したり、消費したいものを生産するために間違ったプロセスを使用することで、自然のエコシステムを破壊することも出来るということです。これも当たり前といえば当たり前です。

3番目の主張は、すべての貸し手には、必ず借り手が存在する。つまり金融制度の中では黒字と赤字は足せばいつもゼロになるということです。

政府が巨大な投資を行った場合、それはそれを実施する民間企業にわたり、それは企業の従業員の給料として支払われ、家計からは生活費などとして支払われたり、貯蓄として銀行にまわったり、税金として政府にもどってくるお金もあるということです。

政府の支出はゼロになるというわけではなく、金融制度の中では黒字と赤字は足せばゼロということであり、何やら当たり前といえば当たり前の話です。これは、日本国のバランスシートを見ればわかる話です。

ただし、1)に関しては、自国通貨を持つ国家の政府は、予算制約に直面した場合、自国通貨を自国政府の裁量で刷り増すことができるので、制約に直面することはないということです。ただし、際限なく刷り増せば、インフレになります。

標準理論でもMMTの全部の主張をいえるし、それを超えるの部分(予算制約なしなど)では極論すぎます。MMTは、定量的な議論には向いていません。つまりMMTなしでも標準理論で十分という意味で、MMTは不要です。

では、なぜこのような理論が注目を浴びているのでしょうか。それはブルームバーグの以下の記事が参考になります。
MMT台頭は積極財政論への「パラダイム転換」を示唆-PIMCO
詳細は、この記事をごらんいただくものとして、この記事から一部を引用します。
パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は、「現代金融理論(MMT)」の主張がにわかに注目を集めていることについて、経済成長を促すために政府が財政手段を用いることに対する支持の拡大を示唆するとの見方を示した。 
  PIMCOのグローバル経済アドバイザー、ヨアヒム・ フェルズ氏と世界債券担当最高投資責任者 (CIO)のアンドルー・ボールズ氏は21日公表の経済見通しで、「MMTが公の論議で最近目を引いているのは、緊縮財政から、成長促進や世界的な過剰貯蓄への対応、拡大する所得・富の不平等の是正のための手段として、財政政策をもっと積極的に用いるべきだとする新たな主流の見解への広範なパラダイム転換を象徴する」と記した。
 現在では、全世界的に過剰貯蓄の状態になっているのは間違いないです。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
世界が反緊縮を必要とする理由―【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した事実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!
野口旭氏

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、全世界的に過剰貯蓄なっていることを示唆する野口氏の主張を以下に引用します。
一つの仮説は、筆者が秘かに「世界的貯蓄過剰2.0」と名付けているものである。世界的貯蓄過剰仮説とは、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したものである。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである。 
各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味する。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのである。
このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためである。
ローレンス・サマーズ氏

この「長期需要不足」の世界は、ローレンス・サマーズが「長期停滞論」で描き出した世界にきわめて近い。その世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくい。というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができない。ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうからである。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由なのである。
このような状況を打開するためには、無論大規模な金融緩和をしつつ、かなりの積極財政をし続けなければならないということです。そのため、MTTのような理論が形成され、話題となっているのでしょう。

それにしても、先に掲載したように、別にMTTがなくても、既存の経済理論(現在緊縮を主張する日本主流の経済学者らの理論ではありません、あくまで世界標準のマクロ経済理論ということです)で十分説明可能ですし、計量的にも、過剰貯蓄の状況は説明できますし、さらにそれに対する対処法も導くことできます。

であれば、新たな理論など構築する必要もないです。そのようなことよりも、既存の標準の理論で、日本や世界中の国々の財政を定性的・定量的に分析し、その上で対処法を決めるべきです。

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2017年9月3日日曜日

米国で沸き起こる強硬論「平壌上空にトマホーク」 北の相次ぐミサイル発射に米有力紙「日本の核武装」容認も ―【私の論評】北朝鮮が暴れまくるほど日本核武装論は実現に一歩近づく(゚д゚)!

米国で沸き起こる強硬論「平壌上空にトマホーク」 北の相次ぐミサイル発射に米有力紙「日本の核武装」容認も 

B-1戦略爆撃機「ランサー」 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 「核・ミサイル」で暴走を続ける北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権に対し、米国の一部で強硬論が沸き起こっている。シンクタンクの研究員は、北朝鮮の首都・平壌(ピョンヤン)上空に巡航ミサイルを飛来させるべきだと提案。米有力紙は、北朝鮮の相次ぐミサイル発射が「日本の核武装」を認めることにつながると指摘した。日米韓の軍事的連携が再確認されるなか、米国内で強硬世論が高まれば、ドナルド・トランプ政権が軍事オプションを選択する可能性もありそうだ。 

 「(日米が緊密に連携して)目に見える形で圧力をさらに強める」

 小野寺五典防衛相は8月31日午前、ジェームズ・マティス米国防長官と電話で会談し、北朝鮮が日本列島を越える弾道ミサイルを発射したことを受け、このような方針で一致した。

 同日午後、航空自衛隊のF-15戦闘機2機と、米国領グアムを発進した米空軍のB-1戦略爆撃機「ランサー」2機、米軍岩国基地(山口県岩国市)のF-35最新鋭ステルス戦闘機4機とともに、九州周辺空域で共同訓練を実施した。

F-35最新鋭ステルス戦闘機
 米軍機はその後、朝鮮半島上空に展開。韓国軍のF-15戦闘機4機とともに北東部江原(カンウォン)道の訓練場で、北朝鮮の重要施設の破壊を想定した攻撃訓練を行った。朝鮮半島上空への米軍のB-1、F-35の同時展開は初めて。

 B-1は、敵地に超音速(マッハ1・2)で侵入し、精密誘導爆弾「スマートボム」や、地中貫徹爆弾「バンカーバスター」などで、地上や地下の主要軍事施設をピンポイントで破壊できる。「死の白鳥」とも呼ばれ、「北朝鮮にとって、これ以上ない恐怖」(軍事専門家)といわれる。

 F-35は、高いステルス性と高度なレーダーなどを兼ね備えた第5世代型の戦闘攻撃機。北朝鮮のミグ29戦闘機(第4世代型)を一瞬にして壊滅でき、移動式のミサイル発射車両を一気に攻撃できる実力を持つ。

 米国内では、さらなる強硬論を説く声もある。

 朝鮮日報(日本語版)は30日、《「平壌上空を通るミサイルを放つべき」米の一部に強硬論》というタイトルの衝撃的な記事を掲載した。

 記事によると、米シンクタンクの専門家から「軍事的攻撃ではなく『軍事的行動』が必要。米国には日本海の公海上から巡航ミサイル『トマホーク』を発射し、平壌上空を経て黄海の公海上に落下させるという方法がある」との指摘が出ているというのだ。

 トマホークは、核弾頭が搭載可能で、潜水艦や艦艇から発射できる。命中精度の高さと、射程(約2500キロ)の長さが際立っている。

トマホーク
 トランプ氏は今年4月、中国の習近平国家主席をフロリダ州パームビーチの別荘「マール・ア・ラーゴ」に招いた際、夕食会のデザートを食べながら「たった今、シリアに59発のミサイルを撃ち込んだ」と伝え、習氏を絶句させている。

 トマホークの平壌襲来は、暴挙を繰り返す正恩氏を正気に戻させる一案かもしれない。ただ、日本海から北朝鮮・平壌を通過して黄海にミサイルを落下させれば、その背後にある中国を刺激することは確実である。

 米国では「日本核武装論」も指摘され始めた。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(日本語版)は8月31日、《日本の核武装に道開く北朝鮮の核容認》との社説を掲載した。

 社説は、北朝鮮の弾道ミサイルに触れ、次のように記した。

 「この中距離ミサイル発射実験は、北東アジアの安全保障をめぐる政治を一段と混乱させるだろう。そして、日本に自前の核抑止力を持つことをあらためて促すものだ」

 「東アジアが中東に続いて核拡散の新時代を迎えれば、世界の秩序に深刻なリスクをもたらす。それもあって、核ミサイルを持つ北朝鮮を黙認することはあまりに危険なのだ」

日本のロケットはすぐにでもICBMに転用できる
 確かに、米国の一部には「日本の核武装」を奨励する声もある。トランプ氏自身、昨年3月、米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューに、「日本と韓国の核兵器保有容認」を語っていた。

 ただ、日本は唯一の戦争被爆国であり、国民の間には強い核アレルギーが存在している。世界有数の高い原子力・ロケット技術を持っているが、核拡散防止条約(NPT)に加盟しており、「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則もある。

 このため、日本は米国の「核の傘」に頼ってきた。

 米国内には当然、「日本の核武装」に猛烈に反対する声も多い。そう簡単に実現するとは思えないが、米国内で容認論が再浮上するほど、正恩氏の暴走は突出しており、北朝鮮情勢は緊迫しているともいえる。

 北朝鮮は核兵器完成間近で、日本のほぼ全土を射程内に入れる弾道ミサイル「ノドン」を数百発も配備している。「東京を火の海にする」などと公言し、日本の了解も得ずにミサイルを5回も上空に飛来させている。日本を取り巻く安全保障環境は激変している。

 米国と北朝鮮は「水面下接触」も指摘されているが、双方とも相手を信用できず、軍事衝突に発展する可能性もある。

 ともかく、左派メディアや左派政党の「平和ボケ」した議論ではなく、国民の生命と財産を守るための現実的な議論が必要だ。

【私の論評】北朝鮮が暴れまくるほど日本核武装論は実現に一歩近づく(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事には、米紙ウォールストリート・ジャーナル(日本語版)は8月31日、《日本の核武装に道開く北朝鮮の核容認》との社説が掲載されていたことを掲載していました。

この内容に近い内容のものをこのブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【北ミサイル発射】日本列島通過 北海道襟裳岬沖の東1200キロに落下 「これまでにない深刻かつ重大な脅威」 安倍晋三首相 日米電話首脳会談開催 国連安保理に緊急会合を要請―【私の論評】北朝鮮を放置すれば中国、ロシアのアジアでの覇権を強めることに(゚д゚)!

この記事は、先月29日午前、北朝鮮が同日午前5時58分ごろ、北朝鮮西岸から弾道ミサイル1発を北東方向に向けて発射し、北海道・襟裳岬上空を通過した後、6時12分ごろ、襟裳岬東方約1180キロメートルの太平洋上に落下した日に掲載したものです。

この記事では、日本が核武装をする前提条件として、米国が北朝鮮の核ミサイルを放置し、結局北朝鮮を核保有国として認めてしまった場合を想定しました。

もしそうなれば、日本は核武装せざるを得なくなります。その理由に関する部分のみをこの記事から引用します。
もし、このままアメリカが北の核・ミサイル開発を無視し続け、オバマ政権の時のように、威勢よく非難はするものの、その他に何もしないとしたら何が起こるのでしょう。そうして、北朝鮮に対する軍事行動を永遠にためらい続け、ついに北がワシントンに届くICBMを完成させ、実戦配備したらどうなるのでしょうか。 
それは2年以内になるといわれていますが、本当にそうなったときは、完全に手遅れです。北がいくらSLBMと戦略爆撃機を持っていないないとしても、ある程度の「相互確証破壊」は成立してしまうことになります。 
ちなみに「相互確証破壊」とは、核戦略に関する概念・理論・戦略のことです。 核兵器を保有して対立する2か国のどちらか一方が、相手に対し核兵器を使用した場合、もう一方の国が先制核攻撃を受けても核戦力を生残させ核攻撃による報復を行うことです。 
そうなると、その先は、何が起ころうとアメリカは北と戦争がかなりしにくくなります。 
そうなれば、アメリカの権威は完全に失墜します。アメリカの世界覇権に穴が空き、パックスアメリカーナは消滅。世界中の反米国国はもとより普通の国家まで、北朝鮮がやったことを「学習」することになります。 
多くの国が、「この世界は結局力だ。核を持った者が勝つ」と認識することになります。こうして、現在でも有名無実になっているNPT(核兵器の不拡散に関する条約)体制は完全崩壊します。 
そうなってしまえば、世界は、まさに弱肉強食の世界になってしまいます。 核保有国の天下となり、世界から「公正」「正義」「自由」「人権」などという価値観はなくなり、「法と秩序」は消滅します。 
トランプ大統領には、こうしたことに対する自覚や、これを本気で防ごうという責任感は、あるのでしょうか。 
北朝鮮とアメリカに相互確証破壊が成立すると、アメリカは北の核を事実上容認してしまうことになり、日本に対するアメリカの核の傘は自動的に消滅することになります。なにしろ北が核で日本を脅かしても、アメリカはいままで以上に手出しができなくなります。日米同盟は無力化する可能性もあります。 
そうなれば、金正恩のやりたい放題です。日本は北朝鮮に土下座外交をするしかなくなります。経済制裁などとんでもないことになります。脅かされてもバックにアメリカがいないのですから、従うしかなくなります。韓国も同じです。 
そうなると、中国も北朝鮮と同じ態度をとることになります。尖閣など、あっと言う間に中国領になるでしょう。日本は、尖閣どころか、沖縄本島さらには西日本まで、中国の脅威にさらされることになります。 
沖縄本島を中国が手にしてしまえば、さっそく弾圧が始まります。とくに、沖縄基地運動に反対してきた連中は、権力に反逆するものとして、真っ先に弾圧され、拘束されることになります。そうして、沖縄では永遠に反基地運動などやりたくてもできなくなります。沖縄地方二紙もあっという間に廃刊です。 
金正恩と習近平は、韓国からのアメリカ軍の撤退を要求することになるでしょう。韓国は、北の支配下に入ると見て間違いないです。そうして、次の段階では、北と中国が、日本から米軍が撤退することを要求することになります。 
北と中国の覇権がアジアに全域に及ぶ状況が予想されることになれば、ロシアも黙ってはいないでしょう。ロシアも何らかの形で、アジアに進出してくる可能性もあります。朝鮮半島は、中国、ロシア、北朝鮮によって分割統治されることになるでしょう。日本は北方領土どころか、ロシアに道東を実効支配されることになるかもしれません。
このようなシナリオは十分に考えられます。 一度米国が北朝鮮を核保有国として認めてしまえば、様々な紆余曲折があったにしても、最終的にはこのシナリオどおりになることでしょう。

このようになることを防ぐためには、日本は核武装するしかなくなります。日本が核武装したとすると、アジアの安全保障状況は随分と変わります。アジアは日米の軍事力によって、新たな秩序ができあがり、北の核ミサイルは無効化され、中国は今以上に南シナ海や東シナ海に進出することを諦めるでしょう。ロシアも、アジアへの介入などは考えなくなります。新たに北方領土返却の話が進展するかもしれません。

このような筋書きは私のような素人でも考えるし、米国のWSJ紙でもそのような社説を掲載するのは当然のことと思います。本気で日本の安全保障の問題を考えれば、このような考えが出るのは当然のことです。WSJ紙も日本でこのような声が出ることは当然と考えて、今回の社説を出したのだと思います。

本日は、さらに北朝鮮が核実験を行っています。金正恩が「アメリカの行動を見守る」と発言すると、日本のメディアや識者の中には「トランプ大統領が北朝鮮を煽っている」とか「安倍首相は圧力だけでなく対話をするべき」と日米首脳を批判していましたが、今回6回目の核実験を強行した事を見ても、北朝鮮が対話に応じる気がない事は明らかです。

そう考えると今後、選択肢は2つです。米国が何らかの軍事行動を起こすか、さもなくば日本や韓国が核武装するかです。

もし、北朝鮮の核開発を米国がなんとしてでも止めようという行動を起こさない限り、現状ではたとえ不可能と見えても、日本は核武装の道を歩むことになるでしょう。

安倍晋三氏は2002年に早稲田大学で行われた講演会で「戦術核の保有や使用は違憲ではない」とぶち上げ、それを『サンデー毎日』に報じられて批判を浴びたことがあります。


そうして、ノーベル平和賞を受賞した安倍首相の大叔父である佐藤栄作もまた、核武装論者でした。1964年の東京オリンピックのさなかだった10月18日、中国が核実験に成功し、首相就任を翌月に控えていた佐藤は、ますます日本も核武装する必要がある、と強く確信するようになりました。そして、65年1月の首相としての初訪米を前にした64年12月29日のライシャワー駐日大使との下打ち合わせで、核武装論を語ったといわれています。

しかし、広島と長崎に原爆を落とされ、大きな被害を受けた日本国民は、佐藤が首相だった頃から核武装反対の世論が強かったし、米国も日本の核武装を好みませんでした。

しかし、これからは日本は変わって行く可能性が大です。そもそも、米国から日本核武装論が出るようになりました。北朝鮮が暴れまくるほど日本核武装論は現実味を増し、実現に一歩近づくことでしょう。

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2017年5月15日月曜日

【一帯一路】中国の指導力拡大を容認する米国 中国市場へのアクセスと引き換え 「自国第一」…米国の利益優先―【私の論評】ゾンビ企業の受け皿にしてはあまりに小さな投資(゚д゚)!


「一帯一路」をテーマに北京で開かれた国際会議で、ロシアのプーチン大統領(前列右)ら
各国首脳と記念撮影に向かう中国の習近平国家主席(同中央)=15日、北京市郊外
中国が現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を推し進めるなか、トランプ米政権は「米国第一」へのこだわりを強めている。その表れのひとつが11日発表の貿易などをめぐる米中合意。米国が中国市場へのアクセスを得る一方で、中国の国際社会における指導力拡大を容認する内容だった。ただし中国が国際協調を尊重しないのではないかという疑念は拭えず、トランプ政権に内向きな姿勢からの脱却を求める声もある。

 米国はオバマ前政権下では一帯一路やアジアインフラ投資銀行(AIIB)から距離をとり、中国の影響力拡大を牽制。また日米など12カ国で合意した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)にも中国に国際貿易のルールを作らせない狙いがあると公言してきた。

 しかしトランプ政権下では様相が一変した。11日の米中合意は米国が中国の牛肉や金融サービスの市場開放を勝ち取ることと引き換えに、「米国は一帯一路の重要性を認識する」と明記して中国の指導力を歓迎する内容。米国は今回の国際協力サミットフォーラムにも代表団を派遣した。ロス商務長官は「米中関係は特に貿易面で史上最高の良好さだ」と言い切る。

 一方、トランプ氏は中国の鉄鋼の過剰生産問題など米国経済に大きなダメージをもたらす問題では中国への譲歩は示していない。しかしTPP離脱や国務省の海外援助予算の削減方針などからみても、米国としての国際社会での指導力発揮よりも米国の利益を優先させる意思は鮮明だ。

 トランプ氏には北朝鮮の核問題への対処のためには中国の協力が必要だという計算もあるが、各国の間では中国が国益追求のために国際社会の規範を破ることへの懸念は根深い。米シンクタンク、ブルッキングス研究所は4月の中国の国際経済戦略についての報告書で「中国の狙いを慎重に見極めなければならない」として、トランプ政権に監視の目を光らせるよう促している。

 一方、トランプ氏は中国の鉄鋼の過剰生産問題など米国経済に大きなダメージをもたらす問題では中国への譲歩は示していない。しかしTPP離脱や国務省の海外援助予算の削減方針などからみても、米国としての国際社会での指導力発揮よりも米国の利益を優先させる意思は鮮明だ。

 トランプ氏には北朝鮮の核問題への対処のためには中国の協力が必要だという計算もあるが、各国の間では中国が国益追求のために国際社会の規範を破ることへの懸念は根深い。米シンクタンク、ブルッキングス研究所は4月の中国の国際経済戦略についての報告書で「中国の狙いを慎重に見極めなければならない」として、トランプ政権に監視の目を光らせるよう促している。

【私の論評】ゾンビ企業の受け皿にしてはあまりに小さな投資(゚д゚)!

一帯一路については、このブログでも今年の年初に掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
黒竜江省の炭鉱労働者のデモ
鞍山鉄鋼集団
仕事を失った労働者はどうするのでしょうか。鞍山市では興味深い動きが見られます。国外に活路を見出す労働者が増えているのです。

中国には、国外への赴任や移民などを扱う機関として各地に「対外サービスセンター」が設置されています。鞍山市のセンターがまとめた統計によれば、2015年に出国した労働者や技術者は前年比18%増加の6360人に上ったといいます。

受け入れ先は主に、中国の大型国有企業の国外拠点です。現在、中国政府が直接管理する「中央企業」が、続々と国外でインフラ建設プロジェクトを立ち上げています。失業者が増える一方の国内とは異なり、中央企業が事業展開する海外では、機械の操作や建築物の設計、建設現場での労働などに従事する中国人労働者の募集が増えているのです。

金融系シンクタンクの中国人研究員は、この動きの背景を次のように説明しています。

「習近平政権は、中国と周辺国との国境に道路や鉄道を設け、経済をつなげる『一帯一路』構想を打ち出しています。その構想に沿って進められているインフラ建設プロジェクトが、今後リストラされた中国人労働者の受け入れに大きく貢献する可能性があります」

この研究員によれば「一帯一路構想には、国内で過剰となった生産設備や労働者を沿線国に拡散させる狙いもありました」と言う。その狙い通りになりつつあるというわけです。

河北省唐山のゾンビ企業の敷地に積み上げられた鉄鋼製品
中国が「一帯一路」構想の対象とする国は71カ国におよびます。だが、民族・部族問題、宗教問題、政治闘争や内乱など、途上国のリスクは高いです。近年はイスラム過激派組織・イスラム国(IS)によるテロが活動範囲を拡大させています。71カ国のうち「30カ国以上は危険な状態にある」との分析もあります。

しかし、リストラされた労働者はそうした国に赴任することを拒まみません。職工の場合、派遣期間は最低2年。この間に20万元の報酬に得られるならば、たとえ危険の多い新興国であっても躊躇しないのです。1人が国外に出稼ぎに出れば、一家はたちまち富裕になれるのです。

ただし、一度国を離れた労働者が中国に戻って再就職するのは難しいです。途上国での仕事は単純作業が多いため、次の仕事につながる技術やスキルが身に着けられないからです。ましてや外資による中国への投資が一段落した今、帰国後に再び働ける工場などを見つけるのは困難です。新興国ののんびりした空気に馴染んでしまい、中国への帰国が億劫になるケースもあるといいます。

それでも、中国人労働者が国外流出する流れは加速していきそうです。

かつて朱鎔基政権で行われた国有企業改革で、1998年に1254万人、1999年には1174万人と、2年で2400万人を超える規模の大量リストラが行われました。今回のゾンビ企業の淘汰では「それ以上になるのではないか」と憂慮する声もあります。

今後、国外に活路を見出す中国人労働者は空前の規模になるのではないでしょうか。「国内のゾンビ企業淘汰と『一帯一路』は連動している」(前出の研究員)のだとすれば、「一帯一路」の沿線国に向けた中国人労働者の大移動はますます本格化するでしょう。

一方で「一帯一路」には、国有企業改革という中国の政策目標を阻むリスクがあることも否定できません。「一帯一路」で最大の恩恵を受けるとみられるのが、まさに国有企業だからです。

朝日新聞によると中国は自らが主導するシルクロード経済圏構想(一帯一路)の参加国に、今後5年間で最大1500億ドル(約17兆円)を投資する方針をまとめたそうです。

たった、17兆円です。これでは、とてもじゃないですが、一帯一路などの大規模な開発には足りないです。桁がちがうのではないでしょうか。

1500億ドルという額は中国が世界金融危機時に行った景気刺激策の30分の1の規模にすぎません。過去の刺激策の結果生じた、過剰設備という構造問題を「一帯一路」で解決できると考えるのは「幻想」といえるでしょう。

習近平は、絵に描いた餅のようでもある「一帯一路」を本気でやろうと考えているとは、とても思えません。結局のところ、ゾンビ企業の余剰労働者の厄介払いであり、棄民政策ともいえるのでないでしょうか。

とにかく一見すごいことをやるようにみせかけて、結局余剰労働者を世界各地にばら撒いて、ゾンビ企業を国内から一掃するということなのではないかと思います。

このような実体を知ったらトランプ大統領もさぞ驚くことでしょう。

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2016年8月16日火曜日

<米国>バイデン副大統領「日本国憲法、米が書いた」―【私の論評】米国は場合によっては、日本の戦術核を容認する用意がある(゚д゚)!


8月15日にクリントン氏の応援演説をするバイデン副大統領
バイデン米副大統領は15日、東部ペンシルベニア州スクラントンで民主党大統領候補のヒラリー・クリントン前国務長官(68)の応援演説をし、「私たちが(日本を)核武装させないための日本国憲法を書いた」と語った。共和党大統領候補の実業家、ドナルド・トランプ氏(70)を批判する中での発言だが、米政府高官が、日本国憲法を「(米国が)起草した」と明言するのは極めて異例だ。

バイデン氏はトランプ氏を「事実から学ぼうとしていない」と批判した上で、日本国憲法の話題に触れた。トランプ氏が今春、日本や韓国の核武装を容認する発言をしたことを念頭に置いたとみられ、「(トランプ氏は)学校で習わなかったのだろうか? 彼に(大統領として)核兵器発射コードを知る資格はない」とも非難し、会場は笑いに包まれた。

バイデン氏は今年6月、米公共テレビ(PBS)のインタビューで、中国の習近平国家主席に対して北朝鮮の核開発阻止で協力を求める中で、「日本は事実上、一夜で核兵器を製造する能力がある」と伝えたことを明らかにしている。

【私の論評】米国は場合によっては、日本の戦術核を容認する用意がある(゚д゚)!

さて、まずはバイデン副大統領が今年、「日本は事実上、一夜で核兵器を製造する能力がある」と語ったその内容について、詳細を以下に掲載します。
波紋呼ぶバイデン米副大統領の「日本は一夜で核兵器製造が可能」発言、中国・習主席に北朝鮮説得促す? 
2016年7月1日、米国のバイデン副大統領は、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との会談で、「日本は一夜で核兵器製造が可能」と発言したことを自ら明かしました。発言は習主席に核・ミサイル開発を急ぐ北朝鮮の説得を求める中で飛び出しました。日本では禁句とされる核武装に言及した発言は、少なからず波紋を呼んでいます。 
日本メディアなどによると、バイデン副大統領の発言は先月20日に行われた米公共テレビPBSのインタビューで明らかにされました。習主席との会談時期は明言しませんでした。 
会談で習主席は北朝鮮情勢に関して、在韓米軍への地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備に触れ、「中国軍は米国が中国を包囲しようとしていると考えている」と反対。これに対し、バイデン副大統領は中国に北朝鮮への圧力を強めるよう促し、「日本は実質的に一夜で核武装できる能力を持っている」と語ったといいます。 
バイデン発言は、北朝鮮が核・ミサイル開発にこのまま突っ走れば、危機感を抱いた日本が対抗して、中国が最も警戒する核武装に踏み切る恐れがあるとあえて例示。米中の連携がなければ、日本の核保有があり得るとの認識を伝えたとみられます。 
習近平(左)とバイデン副大統領
参院選の応援で全国各地を飛び回る菅義偉官房長官に代わり、24日に記者会見した世耕弘成官房副長官はバイデン発言について「(日本が)核兵器を保有することはありえないことだ」と否定。「非核3原則」に言及し、「日本政府の重要かつ基本的な政策として今後も堅持していく」と強調しました。 
その上で、核に関する法制度として「国内法上は原子力基本法によって、日本の原子力利用は平和目的に極めて厳しく限定されている」と説明。「国際的にも核兵器不拡散条約(NPT)の非核兵器保有国として、核兵器の製造や取得などを行わない義務を負っている」とも述べました。 
米国務省のカービー報道官も、バイデン発言について「米国は日本の防衛に十分な責任を持っている」と指摘。副大統領とは別に、日本の核保有を認めない従来の立場を明確にしました。 
日本の核武装については、米大統領選の共和党候補指名が確実視されるトランプ氏も今年3月の米紙とのインタビューで容認する考えを示し、物議を醸しました。その後、さすがのトランプ氏も「そんなことは言っていない」と軌道修正を図っています。 
習主席との会談でバイデン副大統領は「北朝鮮がハワイやアラスカはもちろん、米本土まで攻撃できる核兵器の開発を進めている事実をはっきり認識するよう求めた」といいます。副大統領は、米上院外交委員長などを長く務めた外交通。オバマ政権ナンバー2が日本を引き合いに出した真意をめぐっては、さまざまな臆測を招いています。
バイデン副大統領は、「日本は事実上、一夜で核兵器を製造する能力がある」という発言を背景に、ブログ冒頭の記事におけるトランプ氏批判を行っています。

それにしても、バイデン大統領が語るとおりに、日本は一夜で核兵器を製造できるでしょうし、開発すれば技術的には世界最高水準であり、中国やロシアなどの比ではなく、米国と肩を並べるほどの核保有国となることでしよう。

中朝の核兵器とは一線を画すものとなるでしょう。中国の核兵器は北朝鮮と比較すれば、進んでいますが、それにしてもICBMは全世界を標的にし得るのですが、SLBM(潜水艦発射型核弾頭)は、未だ全世界をカバーできる状況ではなく、SLBMで米国全土を射程に収めようとすると、西太平洋に潜水艦を巡航させそこから発射しなければ、飛距離がまだ足りないです。

北朝鮮の核兵器は中国と比較するとまだ遅れていて、ICBM(陸上発射型核弾頭)でも、アメリカ全土を射程距離には収めきれていません。SLBMに関しては、まだ開発途上と見られています。

日本が、核兵器開発に乗り出した場合、ICBMでも、SLBMでも、全世界を射程距離内に収めることができます。さらに、SLBM の場合、日本の既存型の潜水艦である最新鋭の「そうりゅう型」に搭載すれば、その静寂性から、他国に探知されることなく、潜水艦を巡航させ、世界中のどこにでも核弾頭を発射することができることになります。

日本の新型固体燃料ロケット「イプシロン」は
比較的簡単にICBMや、SLBMに転用できる
そうなると、中朝に対しては、安全保障面では、かなり優位に立つことができ、中国や北朝鮮にとってはかなりの脅威です。

バイデン氏はこの事実を習近平につきつけ、中国が北朝鮮を懐柔することができない場合には、日本の核兵器配備を容認する考えがあることを示したのです。そうして、ブログ冒頭の記事は、暗に日本国憲法の改正もあり得ることを示していると考えられます。

これによって、米民主党政権でも、場合によっては日本が核兵器を保有することを容認する用意があるし、そのための憲法改正もやぶさかではないことを示しています。ただし、バイデン大統領は、表立って主張するのではなく、あくまで、トランプ氏を揶揄する形で語っています。

これによって、日本が核兵器を保有することを容認するのは、トランプ氏だけではなく、米民主党にもその用意があるのですが、世界情勢を鑑みたうえで、米国にとって良い方向でそれを容認するということを示しているのです。

確かに、中国が北朝鮮を懐柔することができずに、北朝鮮がこのまま核兵器の開発を続け、ICBMやSLBMの開発に成功して、米全土を核兵器の標的に収めることができるようになったとしたら、米国にとっては脅威ですし、そうなれば、米国としてもこれに対する備えをしなければなりません。

これに対して、無論自らも備えるでしょうが、日本にも備えてもらえれば、より強固なものになります。米国からすれば、日本が米国も標的になるような核兵器ではなく、米国が標的にならないような短距離の核兵器を装備すれば、ベストでしょう。

さて、日本国憲法に関しては、バイデン副大統領が主張するように、事実上米国側が起草したものであることは周知の事実です。そうして、アメリカ議会は、すでに数年前から、日本憲法の改憲派が多数派になっています。

これに関しては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「日本は憲法改正せよ」が米国議会で多数派に―【私の論評】憲法を改正するか、中国の属国になるか、アメリカの51番目の州になるか、あなたはどの道を選択しますか?

GHQによる日本国憲法草案
1946年(昭和21)2月13日、外相官邸で行われた日米会談の席で、政府の「憲法改正要綱」は、あまりに保守的内容であるとして拒否され、GHQ起草の案(マッカーサー草案)が提示された。この草案は、GHQ民政局部内で極秘裏に起草されたもので、主権在民・象徴天皇制・戦争放棄などを規定していたため、政府側に大きな衝撃を与えた。


この記事は、2010年12月9日のものです。アメリカ議会は、もうすでにこの時期から日本の改憲派が多数派となっていました。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に、この記事から一部のみ引用します。
米国議会が日本の憲法第9条を日米共同防衛への障害と見なし、改憲を望むようになった――。 
この現実は日本の護憲派にはショックであろう。だが、米国議会上下両院の一般的な認識として、日本側の憲法9条の現行解釈による集団的自衛権の行使禁止は、「より緊密な日米共同防衛には障害となる」というのである。 
日本の憲法を改正するか否かはあくまで日本独自の判断によるというのが正論である。だが、日本の防衛が米国という同盟パートナーに大幅に依存し、しかも日本の憲法がかつて米国側により起草されたという事実を見れば、どうしても米国の意向が重視されてきた側面は否めない。 
つまり、日本で改憲を考えるに当たっては、米国が改憲に賛成なのか、反対なのかが、どうしても大きなカギとなってきたのである。
トランプ氏のように荒っぽい主張ではありませんが、米国議会も、この時期までの日本政府による憲法解釈による憲法9条による集団的自衛権の行使禁止は「より緊密な日米共同防衛には障害となる」とみていたのです。

その後、ご存知のように昨年、日本政府の憲法解釈の変更による、集団的自衛権の行使を含む安保法制が成立し、今日に至っています。これに関しては、米国側としては、一定の評価はしているものの、まだまだ十分ではありませんし、日本が独自で核兵器を持つようなことはできません。

そのため、もし中国が北朝鮮に対して、これ以上の核開発をしないように懐柔することができなければ、米民主党としても、日本の核武装を容認する用意があり、そのためには日本政府による憲法改正も認める用意があるということです。

次期大統領が、トランプになろうが、ヒラリーになろうが、米国が日本の改憲を望み、場合によっては、核兵器の配備も認めることもあるということです。

米国の戦術核の実験 1957年
ただし、核兵器とは言っても、日本が戦略核を配備すれば、米国も標的になるので、米国としてはあくまで、戦術核の配備を望むことでしょう。ちなみに、戦術核とは戦場単位で通常兵器の延長線上での使用を想定した核兵器のことです。 戦略核兵器や、戦域核兵器(中距離核兵器)に対して射程距離が短い。 米ソ間の核軍縮協定などでは射程距離500km以下のものが戦術核兵器であると定義されています。

それにしても、日本が戦術核を持てば、アジアの安全保障は劇的に変化することでしょう。日本国内では、核に関して論じることはタブーのような状態です。このタブーを破り、真摯にこの問題に向き合うことからはじめなければなりません。

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2014年5月16日金曜日

集団的自衛権、71%が容認 読売調査―【私の論評】集団的自衛権は世界の常識、今までが非常識であったと認識すべき(゚д゚)!

集団的自衛権、71%が容認 読売調査

「政府の基本的方向性」を表明する安倍総理大臣

   読売新聞社が2014年5月9日から11日にかけて行った世論調査によると、71%が集団的自衛権の行使を容認する考えを示した。大半が「限定容認論」を支持しているが、8%は全面的に容認する考えだ。

   設問の内容は

「日本と密接な関係にある国が攻撃を受けたとき、日本への攻撃とみなして反撃する権利を『集団的自衛権』と言います。政府はこれまで、憲法上、この権利を使うことはできないとしていました。この集団的自衛権について、あなたの考えに最も近いものを、1つ選んで下さい

というもの。「使えるようにする必要はない」という選択肢を選んだ人が25%にとどまったのに対して、「全面的に使えるようにすべきだ」が8%、「必要最小限の範囲で使えるようにすべきだ」は63%にのぼった。

   一方、朝日新聞社が4月19~20日に行った世論調査では、容認に否定的な結果が出ている。

「集団的自衛権についてうかがいます。集団的自衛権とは、アメリカのような同盟国が攻撃された時に、日本が攻撃されていなくても、日本への攻撃とみなして、一緒に戦う権利のことです。これまで政府は憲法上、集団的自衛権を使うことはできないと解釈してきました。憲法の解釈を変えて、集団的自衛権を使えるようにすることに、賛成ですか。反対ですか」

という問いに対して、賛成は27%にとどまり、反対は56%にのぼった

【私の論評】集団的自衛権は世界の常識、今までが非常識であったと認識すべき(゚д゚)!

安倍晋三首相は15日夕、首相官邸で記者会見を開き、集団的自衛権行使など安全保障上の課題について「政府の基本的方向性」を表明し、国民に理解を求めました。会見の詳報は以下の通りです。動画と、書き起こしの両方を以下に掲載します。


 「こうした事態は机上の空論ではありません。連日、ニュースで報じられているように、南シナ海ではこの瞬間も、力を背景とした一方的な行為によって国家間の対立が続いています。これはひとごとではありません。東シナ海でも、日本の領海への侵入が相次ぎ、海上保安庁や自衛隊の諸君が高い緊張感を持って24時間体制で警備を続けています。北朝鮮のミサイルは、日本の大部分を射程に入れています。東京も大阪も、みなさんの町も例外ではありません。そして、核兵器の開発を続けています。さらには、サイバー攻撃など、脅威は瞬時に国境を越えてきます」 
 「これは、私たちに限ったことではありません。もはやどの国も一国のみで平和を守ることはできない。これは世界の共通認識であります。だからこそ私は、『積極的平和主義』の旗を掲げて、国際社会と協調しながら、世界の平和と安定、航空・航海の自由といった基本的価値を守るために、これまで以上に貢献するとの立場を明確にし、取り組んできました」 
 「積極的平和主義の考え方は、同盟国である米国はもちろん、先週まで訪問していた欧州各国からも、そしてASEANの国々をはじめとするアジアの友人たちからも高い支持をいただきました。世界が日本の役割に大きく期待をしています。いかなる事態においても、国民の命と暮らしは断固として守り抜く。本日の報告書では、そうした観点から提言が行われました」 
 「今後、政府・与党において具体的な事例に即してさらなる検討を深め、国民の命と暮らしを守るために、切れ目のない対応を可能とする国内法制を整備します。これまでの憲法解釈のもとでも可能な立法措置を検討します」 
 「例えば、武力攻撃に至らない侵害、漁民を装った武装集団がわが国の離島に上陸してくるかもしれない。こうしたいわゆる『グレーゾーン事態』への対処をいっそう強化します。さらに、PKOや後方支援など、国際社会の平和と安定に、いっそう貢献していきます」 
 「その上でなお、現実に起こり得る事態に対して万全の備えがなければなりません。国民の命と暮らしを守るための法整備が、これまでの憲法解釈のままで十分にできるのか、さらなる検討が必要です。こうした検討については、『日本が再び戦争をする国になる』といった誤解があります。しかし、そんなことは断じて有り得ない。日本国憲法が掲げる平和主義は、これからも守り抜いていきます。そのことは明確に申し上げておきたいと思います」 
 「むしろ、あらゆる事態に対処できるからこそ、そして対処できる法整備によってこそ、抑止力が高まり、紛争が回避され、わが国が戦争に巻き込まれることがなくなる、と考えます」 
 「今回の報告書では、2つの異なる考え方を示していただきました。1つは『個別的か集団的かを問わず自衛のための武力の行使は禁じられていない、また、国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上、合法な活動には憲法上の制約はない』とするものです」 
 「しかし、これは、これまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しない。私は、憲法がこうした活動の全てを許しているとは考えません。したがって、この考え方、いわゆる『芦田修正論』は、政府として採用できません」 
 「自衛隊が、武力行使を目的として、湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してありません。もうひとつの考え方は、わが国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき、限定的に集団的自衛権を行使することは許される、との考え方です」 
 「生命、自由、幸福追求に対する国民の権利を、政府は最大限尊重しなければならない。憲法前文、そして憲法13条の趣旨をふまえれば、自国の平和と安全を維持し、その存立をまっとうするために、必要な自衛の措置をとることは禁じられていない。そのための必要最小限度の武力の行使は許容される。こうした従来の政府の基本的な立場を踏まえた考え方です」 
 「政府としてはこの考え方について、今後さらに研究を進めていきたいと思います。切れ目のない対応を可能とする国内法整備の作業を進めるにあたり、従来の憲法解釈のままで必要な立法が可能なのか。それとも、一部の立法にあたって憲法解釈を変更せざるをえないとすれば、いかなる憲法解釈が適切なのか。今後、内閣法制局の意見も踏まえつつ、政府としての検討を進めるとともに、与党協議に入りたいと思います」 
 「与党協議の結果に基づき、憲法解釈の変更が必要と判断されれば、その点を含めて、改正すべき法制の基本的方向を、国民の命と暮らしを守るため、閣議決定してまいります。今後、国会においても議論を進め、国民の皆様の理解を得る努力を継続していきます。十分な検討を行い、準備ができしだい、必要な法案を国会にお諮りしたいと思います」 
「日本は戦後70年近く、一貫して平和国家としての道を歩んできました。これからも、この歩みが変わることはありません。しかし、『平和国家である』と口で唱えるだけで、私たちの平和な暮らしを守ることはできません。私たちの平和な暮らしも、突然の危機に直面するかもしれない。そんなことはないと、誰が言い切れるでしょうか。テロリストがひそむ世界の現状に目を向けたとき、そんな保障はどこにもありません」 
 「政府は、私たちは、この現実に真っ正面から向き合うべきだと私は考えます。私たちの命を守り、私たちの平和な暮らしを守る。そのためには、いかなる事態にも対応できるよう、常日頃から隙のない備えをするとともに、各国と協力を深めていかなければなりません」 
 「それによって、抑止力が高まり、わが国が戦争に巻き込まれることがなくなると考えます。さきほど申し上げたような事態においても、しっかりと日本人の命を守ることこそが、総理大臣である私の責任であると確信します。今後、検討を進めるにあたり、国民の皆様のご理解、心からお願いを申し上げる次第であります。私からも引き続き、あらゆる機会を通して丁寧に説明をしていきたいと思います」 
 「再度申し上げますが、まさに紛争国から逃れようとしている、お父さんやお母さんやおじいさんやおばあさん、子供たちかもしれない、彼らが乗っている米国の船を今私たちは守ることができない。そして、世界の平和のためにまさに一生懸命汗を流している若い皆さん、日本人を、私たちは自衛隊という能力を持った諸君がいても守ることができない」 
 「そして一緒に汗を流している他国の部隊、もし逆であったら彼は救援に訪れる。しかし私はそれを断らなければならない。見捨てなければならない。おそらく世界は驚くことでしょう。こうした課題に、日本人の命に対して守らなければいけない責任を有する私は、総理大臣は、日本国政府は、検討していく責務があると私は考えます。私からは以上です」
以下は、記者団からの質問と、それに安部総理が答えた内容です。



私自身は、集団的自衛権はあたり前のど真ん中であり、それが国際常識であり、集団的自衛権を認めてこなかったことのほうが、余程異常であり狂っていたと思います。

新聞報道においては、朝日が明らかに世論を誘導しています。

大手紙の集団的自衛権に関する世論調査は下記のようにまとめることができます。

●読売新聞(5月9、10、11日)全面賛成  8% 限定賛成 63% 反対 25%
●朝日新聞(4月19、20日)賛成 27% 反対 56%
●毎日新聞(4月19、20日)全面賛成 12% 限定賛成 44% 反対 38%
●産経新聞(4月26、27日)全面賛成  7% 限定賛成 64% 反対 26%

この結果で明確な事実は、4紙中3紙が集団的自衛権の行使で全面賛成と限定賛成を合わせれば過半数を占めて、朝日新聞だけ全面賛成も限定賛成の選択肢が無く賛否の二者択一なことです。

朝日新聞は集団的自衛権の行使の質問内容において、全面容認、限定容認、行使反対にしなかったのでしょうか。なぜ、朝日新聞は賛成、反対以外に「どちらともいえない」の選択肢が無かったのでしょうか。

その理由は他3紙の如く全面容認と限定容認を合わせて過半数超えの結果となることを恐れたためと考えられます。これは明らかな世論操作であると思います。

集団的自衛権に関しては、私自身はあまりにあたり前すぎることなので、それに対してあれがとうのこれがどうのと、論評することは控えさせていただきます。ただし、もっともあたり前で、常識的に説明している高橋洋一氏の記事のURLを以下に掲載しておきます。
「個別」「集団」の区別は世界の非常識 集団的自衛権の基礎知識
詳細はこの記事をご覧いただくものとて、高橋洋一氏は、この記事の結びに集団的自由権についてまとめています。その部分のみ以下に掲載します。
 集団的自衛権の反対論者が言う、「巻き込まれ論」は、国際的に日本だけは「見て見ぬふり」を公言しているのをわかっていない。 
 それと、地球の裏側まで行くのかという議論も、極論である。正当防衛論から見れば、「緊迫性」、「必要性」、「相当性」が求められているので、地球の裏側というのは、そうした要件に該当するものとはなりにくいので、極論といえるわけだ。 
 報告書では、2008年に示された4類型(公海における米艦の防護、米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃、国際的な平和活動における武器使用、同じ国連PKO等に参加している他国の活動に対する後方支援)のほかに、次の6事例があげられている。 
事例1:我が国の近隣で有事の船舶の検査、米艦等への攻撃排除等  
事例2:米国が武力攻撃を受けた場合の対米支援 
事例3:我が国の船舶の航行に重大な影響を及ぼす海域(海峡等)における機雷の除去 
事例4:イラクのクウェート侵攻のような国際秩序の維持に重大な影響を及ぼす武力攻撃が発生した際の国連の決定に基づく活動への参加 
事例5:我が国領海で潜没航行する外国潜水艦が退去の要求に応じず、徘徊(はいかい)を継続する場合の対応 
事例6:海上保安庁等が速やかに対処することが困難な海域や離島等において、船舶や民間人に対し武装集団が不法行為を行う場合の対応 
 これらに対して、次の3つの対応が考えられる。 
A. 対応を行わない
B. 個別的自衛権の延長として、行う
C. 集団的自衛権として、行う
 A~Cのどれでいくのか。ただし、これまで述べたように、Bは国内でしか通じないロジックで、国際的にはCと見られる。
さて、この記事を書いた高橋洋一氏集団自衛権に関して、面白いツイートをされていました。それを以下に掲載します。
このツイートにでてくる、「猫が猛犬に体当たり」のCNNのニュースで放映された動画を以下に掲載します。



この猫は、普段は自分より体格の大きい犬などに体当たりなどしないと思います。しかし、飼い主の子供が危険にさらされたため、これを守るためやむなく体当たりをしたのだと思います。

これは、猫でさえ防衛本能があることを示しています。このあたり前のことをできるようにするということが、集団的自衛権ということです。

集団的自衛権について、反対する人たちの論拠としては、この子どもがこの犬に対して攻撃をしようとか、あるいは子どもにとって脅威になるような、この猫があずかり知らない遠く離れたところにいる犬や人間に対する攻撃を仕掛けた場合、猫は自分の意思に反しても、これらの犬や人間に対してまて゜攻撃しかけなければならなくなるといって反対しているわけです。

しかし、このような場合は無論猫の判断になると思います。この猫が子どものことが心配で、遠くに行ったときも、必ずついてまわり、その都度攻撃に加担するかどうかを決めるのはあくまで猫の判断によるものと思います。

決して、自動的に攻撃をするというわけではないと思います。子どもとの関係や、自分の利益を考えた場合、それでやるべきと判断した場合は、実行するでしようし、そうでなければ、攻撃には加担しないでしょう。

それは、集団的自衛権を認めたから自動的に攻撃に加担しなければならないというわけではなく、あくまで、猫の判断によります。

海外で支援活動をする自衛隊員や、民間人を守ることができないなど非常識(゚д゚)
その非常識を貫き通すというのなら、鎖国するしかないが、鎖国もかなり危険だ(゚д゚)!
現実の集団的自由権に話をもどせば、その時々の国際情勢と他国との関係において、決まるものであり、集団的自由権により、自動的に他国の戦争に加担するというわけではありません。あくまで、総合的長期的判断によるものです。

その総合的長期的判断により、攻撃すべきとなれば、地球の裏側に行ってまで攻撃するでしょうし、そうでなけばすぐ近くで味方の軍隊が攻撃を受けて被害者を出しても見捨てることでしょう。極限すれば、アメリカが弱小国に成り果てて、助けても日本にとって何にもならないということになれば、見放せば良いことですし、恩義があるか今後国益になると思えば、助けるべきです。

これは、冷たいようですが、現実です。私たちが住んでいる世界は、お花畑ではないのです。有力な国々のパランス・オブ・パワーで均衡しているというのが現実です。日本は軍事的には弱い立場にありますが、経済的にはあいかわらず強い国ですから、今はアメリカも日本が攻撃を受ければ、助けてくれるかもしれません。しかし、日本が軍事的にも経済的にもとるに足りない国になれば、中国から攻撃を受けても手のひらを返したように、見捨てられるようになります。日本が、ラオスやカンボジア程度の経済になれば、確実にそうなります。

私たちはお花畑の住人ではない(゚д゚)!

集団的自衛権は、こうした厳しい現実の枠組みで考えなければなりません。集団的自衛権に対して、闇雲に反対する人々は、世界はこうした厳しい枠組みの中で動いていることを理解していません。話になりません。

世界中の国が行使できる集団的自衛権を、日本も当然行使できるようにすべきです。するしないは別にして、何でも出来る事が我が国への侵略を抑止するのです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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