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2017年5月15日月曜日

【一帯一路】中国の指導力拡大を容認する米国 中国市場へのアクセスと引き換え 「自国第一」…米国の利益優先―【私の論評】ゾンビ企業の受け皿にしてはあまりに小さな投資(゚д゚)!


「一帯一路」をテーマに北京で開かれた国際会議で、ロシアのプーチン大統領(前列右)ら
各国首脳と記念撮影に向かう中国の習近平国家主席(同中央)=15日、北京市郊外
中国が現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を推し進めるなか、トランプ米政権は「米国第一」へのこだわりを強めている。その表れのひとつが11日発表の貿易などをめぐる米中合意。米国が中国市場へのアクセスを得る一方で、中国の国際社会における指導力拡大を容認する内容だった。ただし中国が国際協調を尊重しないのではないかという疑念は拭えず、トランプ政権に内向きな姿勢からの脱却を求める声もある。

 米国はオバマ前政権下では一帯一路やアジアインフラ投資銀行(AIIB)から距離をとり、中国の影響力拡大を牽制。また日米など12カ国で合意した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)にも中国に国際貿易のルールを作らせない狙いがあると公言してきた。

 しかしトランプ政権下では様相が一変した。11日の米中合意は米国が中国の牛肉や金融サービスの市場開放を勝ち取ることと引き換えに、「米国は一帯一路の重要性を認識する」と明記して中国の指導力を歓迎する内容。米国は今回の国際協力サミットフォーラムにも代表団を派遣した。ロス商務長官は「米中関係は特に貿易面で史上最高の良好さだ」と言い切る。

 一方、トランプ氏は中国の鉄鋼の過剰生産問題など米国経済に大きなダメージをもたらす問題では中国への譲歩は示していない。しかしTPP離脱や国務省の海外援助予算の削減方針などからみても、米国としての国際社会での指導力発揮よりも米国の利益を優先させる意思は鮮明だ。

 トランプ氏には北朝鮮の核問題への対処のためには中国の協力が必要だという計算もあるが、各国の間では中国が国益追求のために国際社会の規範を破ることへの懸念は根深い。米シンクタンク、ブルッキングス研究所は4月の中国の国際経済戦略についての報告書で「中国の狙いを慎重に見極めなければならない」として、トランプ政権に監視の目を光らせるよう促している。

 一方、トランプ氏は中国の鉄鋼の過剰生産問題など米国経済に大きなダメージをもたらす問題では中国への譲歩は示していない。しかしTPP離脱や国務省の海外援助予算の削減方針などからみても、米国としての国際社会での指導力発揮よりも米国の利益を優先させる意思は鮮明だ。

 トランプ氏には北朝鮮の核問題への対処のためには中国の協力が必要だという計算もあるが、各国の間では中国が国益追求のために国際社会の規範を破ることへの懸念は根深い。米シンクタンク、ブルッキングス研究所は4月の中国の国際経済戦略についての報告書で「中国の狙いを慎重に見極めなければならない」として、トランプ政権に監視の目を光らせるよう促している。

【私の論評】ゾンビ企業の受け皿にしてはあまりに小さな投資(゚д゚)!

一帯一路については、このブログでも今年の年初に掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
黒竜江省の炭鉱労働者のデモ
鞍山鉄鋼集団
仕事を失った労働者はどうするのでしょうか。鞍山市では興味深い動きが見られます。国外に活路を見出す労働者が増えているのです。

中国には、国外への赴任や移民などを扱う機関として各地に「対外サービスセンター」が設置されています。鞍山市のセンターがまとめた統計によれば、2015年に出国した労働者や技術者は前年比18%増加の6360人に上ったといいます。

受け入れ先は主に、中国の大型国有企業の国外拠点です。現在、中国政府が直接管理する「中央企業」が、続々と国外でインフラ建設プロジェクトを立ち上げています。失業者が増える一方の国内とは異なり、中央企業が事業展開する海外では、機械の操作や建築物の設計、建設現場での労働などに従事する中国人労働者の募集が増えているのです。

金融系シンクタンクの中国人研究員は、この動きの背景を次のように説明しています。

「習近平政権は、中国と周辺国との国境に道路や鉄道を設け、経済をつなげる『一帯一路』構想を打ち出しています。その構想に沿って進められているインフラ建設プロジェクトが、今後リストラされた中国人労働者の受け入れに大きく貢献する可能性があります」

この研究員によれば「一帯一路構想には、国内で過剰となった生産設備や労働者を沿線国に拡散させる狙いもありました」と言う。その狙い通りになりつつあるというわけです。

河北省唐山のゾンビ企業の敷地に積み上げられた鉄鋼製品
中国が「一帯一路」構想の対象とする国は71カ国におよびます。だが、民族・部族問題、宗教問題、政治闘争や内乱など、途上国のリスクは高いです。近年はイスラム過激派組織・イスラム国(IS)によるテロが活動範囲を拡大させています。71カ国のうち「30カ国以上は危険な状態にある」との分析もあります。

しかし、リストラされた労働者はそうした国に赴任することを拒まみません。職工の場合、派遣期間は最低2年。この間に20万元の報酬に得られるならば、たとえ危険の多い新興国であっても躊躇しないのです。1人が国外に出稼ぎに出れば、一家はたちまち富裕になれるのです。

ただし、一度国を離れた労働者が中国に戻って再就職するのは難しいです。途上国での仕事は単純作業が多いため、次の仕事につながる技術やスキルが身に着けられないからです。ましてや外資による中国への投資が一段落した今、帰国後に再び働ける工場などを見つけるのは困難です。新興国ののんびりした空気に馴染んでしまい、中国への帰国が億劫になるケースもあるといいます。

それでも、中国人労働者が国外流出する流れは加速していきそうです。

かつて朱鎔基政権で行われた国有企業改革で、1998年に1254万人、1999年には1174万人と、2年で2400万人を超える規模の大量リストラが行われました。今回のゾンビ企業の淘汰では「それ以上になるのではないか」と憂慮する声もあります。

今後、国外に活路を見出す中国人労働者は空前の規模になるのではないでしょうか。「国内のゾンビ企業淘汰と『一帯一路』は連動している」(前出の研究員)のだとすれば、「一帯一路」の沿線国に向けた中国人労働者の大移動はますます本格化するでしょう。

一方で「一帯一路」には、国有企業改革という中国の政策目標を阻むリスクがあることも否定できません。「一帯一路」で最大の恩恵を受けるとみられるのが、まさに国有企業だからです。

朝日新聞によると中国は自らが主導するシルクロード経済圏構想(一帯一路)の参加国に、今後5年間で最大1500億ドル(約17兆円)を投資する方針をまとめたそうです。

たった、17兆円です。これでは、とてもじゃないですが、一帯一路などの大規模な開発には足りないです。桁がちがうのではないでしょうか。

1500億ドルという額は中国が世界金融危機時に行った景気刺激策の30分の1の規模にすぎません。過去の刺激策の結果生じた、過剰設備という構造問題を「一帯一路」で解決できると考えるのは「幻想」といえるでしょう。

習近平は、絵に描いた餅のようでもある「一帯一路」を本気でやろうと考えているとは、とても思えません。結局のところ、ゾンビ企業の余剰労働者の厄介払いであり、棄民政策ともいえるのでないでしょうか。

とにかく一見すごいことをやるようにみせかけて、結局余剰労働者を世界各地にばら撒いて、ゾンビ企業を国内から一掃するということなのではないかと思います。

このような実体を知ったらトランプ大統領もさぞ驚くことでしょう。

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