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2020年2月9日日曜日

知らないと損する、世界の投資家が「米国債を購入」するワケ―【私の論評】数量的なエビデンスでものを考えないと馬鹿になる(゚д゚)!

知らないと損する、世界の投資家が「米国債を購入」するワケ

米国の財政赤字をどう見るか


日経新聞は財務省の広報誌

1月19日の日本経済新聞朝刊に、米政府の財政拡張に関する記事が掲載された。財政赤字額は年1兆ドル(約110兆円)を超え、世界を見ても断トツの数字だ。

債務残高は国内総生産(GDP)の約100%と第2次世界大戦の直後以来の水準となり、利払いは年43兆円に膨らんでいる。日経としては、このまま債務が増え続けるのは危険だという論調を貫きたいようだ。



このような財政緊縮路線の記事ばかりを書いているので、日経新聞は財務省の広報誌、御用新聞と呼ばれるのだ。米政府の数字をどう捉えるのが正しいのか、改めて見ていこう。

米国の金利は1%以上と高く、そのため世界からマネーが集まり、米国の財政赤字を賄っている。目先の金利で投資家を釣り、財政リスクに目をつぶっているというのが日経新聞の解説だ。

米国債の名目金利1%以上を高いと見るのは、あくまで日本やドイツなど例外的な国と比較した場合だ。米国より名目金利の高い国は数多くあり、そうした国の投資家も米国債を購入している。

海外投資家は名目金利のみを理由に投資していない。米国は世界の多くの国に対し経常赤字になっている。つまり多くの国は対米ドル債権を有しているわけだが、その債権の代わりに米国債を購入している。

その際には、為替など他の経済的なファクターも当然考慮されている。金融機関の担当者取材を鵜呑みにして記事を書いていると、こうした誤解が出てくる。

そもそも、政府にしろ民間にしろ、債務残高だけで経済の健全性を語るのは誤っている。企業の財務状況を見るとき、債務残高ではなくバランスシートで資産と負債の両方を見るのはファイナンスの基本中の基本だ。

どんな企業でも負債はあるが、それがどのように活用されているかは資産を見ればわかる。ただ実態がよくわからない部分も多い国の財政に関し、財務省は「由らしむべし、知らしむべからず」のスタンスを貫く。

民間企業の場合、財務状況は企業単体ではなく、グループ企業全体の連結ベースで見る必要がある。国も同様で、国の「子会社」である中央銀行を含めた「統合政府」で見なければいけない。

米国政府を統合政府で見ると、ネット債務残高はGDP比の1割にも満たない程度だ。この数字は英仏独より低く、債務残高で言うのならばこれらの諸国よりよほど健全性が高い。

このように米国政府の健全性は、市場で取り引きされるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)レートを見てもわかる。簡単に言うと、各国国債が破綻した時に保証される保険(料)であり、財政状況を客観的に表すものだ。そして、米国債のCDSレートは0・15%と、先進国でもトップクラスで低い水準である。

市場のプロは、米国政府の破綻などまったく現実味のない話と見ている。それにもかかわらず、米国政府の財政危機を煽って、誰も耳を貸すはずがない。地政学リスクや上がり続けるダウ平均株価に疑念を持つ人もいるかもしれないが、雰囲気だけで語るのは危うい。きちんとした数量的なエビデンスがあるものを信じたほうがいい。

『週刊現代』2020年2月1・8日号より

【私の論評】数量的なエビデンスでものを考えないと馬鹿になる(゚д゚)!

国の経済の黒字・赤字を企業のそれと同一視するのは間違いです。経常収支の黒字は、国内の需要不振や自国経済の先行きに対する自信喪失の裏返しである場合も少なくないのです。

日本では、一昨年度の国際収支統計は、経常収支が大幅な黒字でした。経常収支というのは、日本国全体としての海外との取引を家計簿のように記録したものです。
我々はマスコミ等で「国は赤字で、国の借金は巨額にのぼる」という話を頻繁に聞かされているので、混乱するかもしれませんが、このマスコミが頻繁に使う「国の赤字」という言葉は「地方公共団体ではなく中央政府の財政収支は赤字だ」という意味ですので、「日本国」が赤字であるわけではありません。

日本の経常収支は下のグラフでも明らかに、黒字が続いていますが、それではこれは黒字だから良いことと単純にいえるわけではありません。それは、中身を精査してみないとわからないことです。

私自身、過去の日本はデフレが続き、現在でも完璧に抜けきっていないですから、やはり国内では、めぼしい直接・間接投資案件がないですから、大企業が海外に投資をしたことが、このような結果になっているものと思います。



貿易収支や経常収支は、「黒字を目指す、赤字を避ける」という、目標として使うのではなく、「いまの自分の国の経済の状況を知る指標」として考えるのが、正しい使い方なのです。たとえば「国内の景気対策がうまく効いたから、経常収支が赤字になった」というふうにです。

米国の財政赤字と経常収支赤字といういわゆる「双子の赤字」は、米国および国際経済上の懸案事項としてしばしば挙げられるものでした。

基本的な問題意識としては、経常収支赤字の解消のために財政赤字の縮小を目指すべきだとされたり、逆に主な貿易相手国(それこそ、日本など)に内需拡大政策を取らせて、貿易相手国の経常収支黒字を縮小させようと画策したりしていました。

日経新聞は米国の双子の赤字を煽っているが・・・。日経新聞より

しかし、ここで注意しなければならないのは、米国は基軸通貨国であり、国際貿易決済手段として、世界中に基軸通貨・ドルを供給する立場であるということです。

世界貿易が小さいうちはまだ良かったのですが、現在のように貿易が拡大を続けていくにあたって、貿易国は決済手段としてのドルやドル建て資産を貯蓄する傾向を持つようになります。

となれば、貿易額が大きくなればなるほど、各国は取引及び貯蓄手段としてのドル(およびドル建て資産)の”純粋”な供給が必要になってきます。

ドルおよびドル建て資産の純粋な供給のためには、米国の財政赤字および経常収支赤字が必要になってくるというか、そうならざるをえなくなるのです。

実際、アジア通貨危機、ロシア通貨危機(1997)、アルゼンチン通貨危機(2001)後において経常収支赤字すなわち世界へのドル・ドル建て資産供給の拡大を余儀なくされています。

もし米国が経常収支赤字に抵抗し、その縮小を目指したら、世界貿易は崩壊を余儀なくされるでしょう。なぜなら世界貿易は、米国の基軸通貨供給に依存しているからです。

もし一時的に経常収支改善と世界貿易堅調が見かけ上維持されていたように見えても、それは途上国等の借入過剰による不安定化を意味する可能性が高いです。アジア通貨危機やアルゼンチン通貨危機はその意味で、基軸通貨の過少供給に遠因があると考えることが出来ます。だからこそ、通貨危機から世界貿易を守るには基軸通貨の追加供給が必要となったのです。

一連の議論で気づいた人がいるかもしれないですが、これは世界を一国と考え、基軸通貨を自国通貨と考えた場合でもまったく同じ議論が出来ます。

自国通貨は、(中央銀行で紙幣や当座預金が”負債”として扱われていることからもわかるように)厳密には政府債務です。信用創造によって通貨を供給し、それ自体が貯蓄手段となる通常の政府債務も同質です。

民間債務も、信用創造によって通貨を供給し、同時に貯蓄手段となっています。こうした経済全体の債務(および債務としての通貨)は、経済全体の貯蓄欲求を満たし、それ以上の通貨が流通することを助けています。もし経済全体で債務不足になれば、通貨流通とそれによる財取引は滞ることになります。

こう考えると、基軸通貨国のアメリカは、財政金融的に見て、世界に対する中央銀行・財務省として機能していることがわかる。アメリカの財政赤字(ベースマネーの供給原資であり、信用創造によるマネーサプライ供給手段でもある)、および経常収支赤字は、世界貿易のために十分な赤字である必要があるというわけです。

ただし、米国の経済は、かなり大きいです。何しろ、以前このブログでも指摘したように、サウジアラビアのGDP(国内総生産)は、世界で18番目です。ところが、米国のペンシルベニア州よりも少ないです。2017年のサウジアラビアのGDPは約6830億ドル、ペンシルベニア州のGDPは7520億ドルでした。そして、ペンシルベニア州のGDPはアメリカ50州のうち6位です。

だからこそ、米ドルは基軸通貨にも成り得るわけです。ちなみに、サウジアラビアのGDPは日本では福岡県と同レベルです。このような事実をあげると、日本経済もまんざらではないと思われる方も多いのではないでしょうか。

サウジアラビアの1人当たり年間所得は、アメリカの約半分に過ぎない

米国が経常収支を黒字にしたいなら、極言すれば、基軸通貨国であることをやめるしかないということになります。それは、ほとんど不可能に近いでしょう。これをトランプ大統領は、理解していないようです。

本来は、中国との貿易が赤字であること自体を問題にするのではなく、中国が国内のプラック的な状況を是正することなく、それで安い労働力や政府による補助金により、米国に低価格の商品を輸出していることにより、米国の雇用を奪ったり、米国の知的財産を剽窃して、不当に利益を得ていることを問題にすべきなのです。

実際、米国はその方向に向かっているようですが、それにしても昨年の米中貿易交渉では、経常収支などを問題にしているようで、この点では、やはりトランプ大統領は、国内経済に関してはまともなのですが、国際経済には疎いようです。しかし、これは何とか是正して欲しいものです。

これでもまだ、米国の双子の赤字を不安に感じる人がいるかもしれませんが、冒頭の記事にもあるように、米国政府を統合政府で見ると、ネット債務残高はGDP比の1割にも満たない程度なのです。いかに米国の経済が大きいのか理解できます。

一方日本は、2017年にはすでに統合政府を含めた、ネットの債務残高はゼロ円になったとされています。2018年以降は、借金どころか、黒字になっています。これは、高橋洋一氏が試算していますし、私自身も日銀や政府が出している統計資料などから、高橋洋一氏の試算が正しいことを、確認し、その結果をこのブログにも掲載したことがあります。この計算はさほど難しいものではありません。足し算、引き算が正確にできれば、誰にでもできると思います。

上の記事でも、「雰囲気だけで語るのは危うい。きちんとした数量的なエビデンスがあるものを信じたほうがいい」と主張されていますが、それは全く正しいと思います。

日経などを含む日本の大手新聞の記者などは、このような確認もしないで、日本の財政が破綻するとか、米国の財政が破綻すると、騒ぎ立てているのでしょう。全く情けないかぎりです。

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2019年3月23日土曜日

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ドル紙幣でつくられたビキニ

 米国で財政赤字の拡大を容認する「現代金融理論」(Modern Monetary Theory=MMT)の議論が活発になっていると報じられている。

 MMTは、自国通貨を無制限に発行できる政府は、政府債務(国の借金)が増えても問題がないとする経済理論だ。

 現実には、過去にデフォルト(債務不履行)に陥った国は少なくない。2001年のアルゼンチンや15年のギリシャなどの例がある。ギリシャは単一通貨ユーロを採用しているため自国で通貨を発行できなかった。

 なお、ギリシャは破綻(債務不履行と債務条件変更)の常習国だ。カーメン・ラインハート、ケネス・ロゴフ著『国家は破綻する』によれば、1800年以降の200年余の歴史の中で、ギリシャが債務不履行と債務条件変更を行った年数は50%を超える。いうなれば、2年に1度は破綻している国で、ユーロに入る以前には自国通貨でも破綻している。

 これらに対し、米国のMMT支持者は、世界の基軸通貨ドルで借金ができる米国はドルを刷ればいいので、財政破綻はあり得ないと主張する。

 米国の主流派の経済学者は、こうしたMMTの主張に対してバカげていると感情的に反発している。

 筆者にとって、数量的ではない政策議論には意味がない。米国の議論は定性的な極論か経済思想優先で、実りのある政策議論には思えない。

 従来の経済理論では、財政赤字でも中央銀行が国債を買い入れればインフレになる。そのインフレさえ感受できれば政府債務は財政上問題ない。

 これを統合政府のバランスシート(貸借対照表)から見てみよう。政府債務は、中央銀行の国債買い入れで全部または一部が銀行券に置き換わる。国債は有利子有償還であるが銀行券は無利子無償還なので財政問題はなくなる。



 一方、発行された銀行券は実体経済の生産力との関係で、過大になりすぎるとインフレを招く。これは、実体経済の生産力は潜在国内総生産(GDP)水準と近似できるが、それが政府の規模と一定関係であれば、統合政府のバランスシートでの債務超過はインフレをどの程度もたらすかと大いに関係している。また、他国との銀行券の比率において自国通貨が過大になると自国通貨安をもたらす。これらは、MMTによらずとも従来の経済理論から出てくる。

 インフレ率や自国通貨安がどの程度の弊害になるかだが、インフレ率は自国通貨安にも関係するので、結果としてインフレ率が許容範囲かどうかに帰着する。

 先進国で2%程度のインフレ目標は、最小失業率を目指したものだ。それよりインフレ率が高くなると、経済活動の障害など社会コストが高くなる。

 少なくとも、日本のように、インフレ率がインフレ目標まで達していないならば、財政赤字の心配は不要という主張は多くの人に受け入れられるのではないか。これはMMTからでなくとも導かれる標準的な内容だ。MMTの主張は極論すぎると思う。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】貯蓄過剰の現代の世界は桁外れの金融緩和、積極財政が必要だがMMTは不要(゚д゚)!

MMTには三つの以下の中核的な主張があります。
1)自国通貨を持つ国家の政府は、純粋な財政的予算制約に直面することはない。 
2)すべての経済および政府は、生産と消費に関する実物的および環境上の限界がある。 
3)政府の赤字はその他全員の黒字である。
一番目の主張は、広く誤解されている主張です。自国通貨を持つ国の政府とは、自国通貨と中央銀行を有しており、変動為替制度を採用し、大きな外貨債務がないという意味です。日本はそのひとつであり、英国、米国、豪州も該当します。ユーロ圏の国々は自国通貨を持たないので当てはまらないです。これは、当たり前といえば当たり前です。

2番目の主張は、政府はその気にさえなれば、消費しすぎたり課税しなさすぎたりして、インフレを起こすことが出来るという明白な事実を確認しているにすぎないです。現実的な限界を迎えるとき、消費の総合的な水準が、すべての労働力、スキル、物質的な資本、技術および自然資源を投入して生産できる上限を超えているといえます。

間違ったものを大量に生産したり、消費したいものを生産するために間違ったプロセスを使用することで、自然のエコシステムを破壊することも出来るということです。これも当たり前といえば当たり前です。

3番目の主張は、すべての貸し手には、必ず借り手が存在する。つまり金融制度の中では黒字と赤字は足せばいつもゼロになるということです。

政府が巨大な投資を行った場合、それはそれを実施する民間企業にわたり、それは企業の従業員の給料として支払われ、家計からは生活費などとして支払われたり、貯蓄として銀行にまわったり、税金として政府にもどってくるお金もあるということです。

政府の支出はゼロになるというわけではなく、金融制度の中では黒字と赤字は足せばゼロということであり、何やら当たり前といえば当たり前の話です。これは、日本国のバランスシートを見ればわかる話です。

ただし、1)に関しては、自国通貨を持つ国家の政府は、予算制約に直面した場合、自国通貨を自国政府の裁量で刷り増すことができるので、制約に直面することはないということです。ただし、際限なく刷り増せば、インフレになります。

標準理論でもMMTの全部の主張をいえるし、それを超えるの部分(予算制約なしなど)では極論すぎます。MMTは、定量的な議論には向いていません。つまりMMTなしでも標準理論で十分という意味で、MMTは不要です。

では、なぜこのような理論が注目を浴びているのでしょうか。それはブルームバーグの以下の記事が参考になります。
MMT台頭は積極財政論への「パラダイム転換」を示唆-PIMCO
詳細は、この記事をごらんいただくものとして、この記事から一部を引用します。
パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は、「現代金融理論(MMT)」の主張がにわかに注目を集めていることについて、経済成長を促すために政府が財政手段を用いることに対する支持の拡大を示唆するとの見方を示した。 
  PIMCOのグローバル経済アドバイザー、ヨアヒム・ フェルズ氏と世界債券担当最高投資責任者 (CIO)のアンドルー・ボールズ氏は21日公表の経済見通しで、「MMTが公の論議で最近目を引いているのは、緊縮財政から、成長促進や世界的な過剰貯蓄への対応、拡大する所得・富の不平等の是正のための手段として、財政政策をもっと積極的に用いるべきだとする新たな主流の見解への広範なパラダイム転換を象徴する」と記した。
 現在では、全世界的に過剰貯蓄の状態になっているのは間違いないです。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
世界が反緊縮を必要とする理由―【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した事実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!
野口旭氏

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、全世界的に過剰貯蓄なっていることを示唆する野口氏の主張を以下に引用します。
一つの仮説は、筆者が秘かに「世界的貯蓄過剰2.0」と名付けているものである。世界的貯蓄過剰仮説とは、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したものである。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである。 
各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味する。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのである。
このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためである。
ローレンス・サマーズ氏

この「長期需要不足」の世界は、ローレンス・サマーズが「長期停滞論」で描き出した世界にきわめて近い。その世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくい。というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができない。ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうからである。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由なのである。
このような状況を打開するためには、無論大規模な金融緩和をしつつ、かなりの積極財政をし続けなければならないということです。そのため、MTTのような理論が形成され、話題となっているのでしょう。

それにしても、先に掲載したように、別にMTTがなくても、既存の経済理論(現在緊縮を主張する日本主流の経済学者らの理論ではありません、あくまで世界標準のマクロ経済理論ということです)で十分説明可能ですし、計量的にも、過剰貯蓄の状況は説明できますし、さらにそれに対する対処法も導くことできます。

であれば、新たな理論など構築する必要もないです。そのようなことよりも、既存の標準の理論で、日本や世界中の国々の財政を定性的・定量的に分析し、その上で対処法を決めるべきです。

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