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2017年6月29日木曜日

都議選の結果で国政への影響は… 民進は「虎の子」の都議を小池氏に奪われるだけかも―【私の論評】積極財政に無関心の小池知事は国政に影響を与えられない(゚д゚)!


都議選の応援をする小池知事

 7月2日に投開票される東京都議選では、何が争点となっているのだろうか。

 民進党や共産党では、トップである代表や委員長が加計学園問題や改憲など、国政問題を掲げている。一方、自民党の幹部や公明党の代表は、豊洲市場への移転問題など都政を訴えている。都議選なのに国政問題を訴えるのは場違いに思えるが、テレビに露出するだけでいいという考え方なのだろうか。

 事前の世論調査をみると、選挙戦では、都民ファーストの会と自民が熾烈な議席獲得競争を続けており、民進、共産は厳しい戦いのようだ。

 国政では、安倍晋三政権が支持率をやや失っており、地方の都議選とはいえ、本来なら民進や共産に有利に働いてもおかしくない。しかし、その批判票は今のところ都民ファーストが受け皿になっている。

 一方で、豊洲移転をめぐる迷走で、都民ファーストへ流れた批判票も一部は自民党に回帰している可能性もある。両党の競争の結果として、民進、共産が切り崩される展開となっているもようだ。それが、冒頭のように民進、共産が国政の課題を訴える背景になっている。

 都議選の現場では都民ファーストと自民は競っている。都民ファーストを率いる小池百合子知事が最近表明した「豊洲移転・築地再開発」の評判は良くない。豊洲と築地の両方にいい顔をしただけと見る人は多い。

 筆者としても、本コラムで書いたように、豊洲への移転は、サンクコスト(埋没費用)論と、豊洲・築地の科学的なリスク評価のみで合理的な帰着である。しかし、「食のテーマパーク」としての築地再開発についてはさっぱりわからない。

 無理してテーマパークのような施設を作ることは可能だが、問題はその後どのように黒字経営できるかだ。思いつきレベルでどこまで収支計算ができるか分からないし、そもそも都庁が口を出さずに、民間に売却して再開発してもらった方が政策の「打率」もいいだろう。そうした不合理性が都民に浸透すれば、都民ファーストの戦いも苦しくなる。

 逆に、今の小池ブームの勢いが続けば、自民が苦戦するだろう。しかし、これが国政に影響するとは必ずしも言えないのではないか。民進、共産が大躍進しない限りは、国政での自公連立は揺るがないからだ。というのは、都民ファーストが勝てば公明の勝利、自民が勝てば自民の勝利なので、かなり乱暴な言い方ではあるが、国政における自公政権としては、どっちが勝ってもいいともいえる。

 都民ファーストが勝利しても、2020年の東京五輪を控えて、小池都知事が国政で自公政権と対立するとは思えず、むしろ協力関係になるだろう。民進にとっては「虎の子」の都議を小池知事に奪われるだけになる恐れもあるのだ。

 いずれにしても民進や共産が期待する国政の混乱にはなりそうもない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】積極財政に無関心の小池知事は国政に影響を与えられない(゚д゚)!

高橋洋一氏の読みは正しいと思います。都民ファーストの会が大勝利したとしても、国政にはあまり影響はないでしょう。

国政に関して、なぜ安倍政権が一強になるかといえば、それは経済対策に関して、野党や自民党内の他の幹部クラスと比較して、まともであるということがいえます。

特に金融政策は未だ不十分とはいいながら、安倍政権が政権の座についてからは、緩和に転じたため、現状では若者雇用を筆頭にかなり雇用環境が良くなっています。

一方、マスコミ全部と与野党の政治家が8%増税に大賛成し、しかもこの増税は日本経済に与える影響は軽微としたため、やむなく増税に踏み切ったところ、軽微であるどころか、甚大な悪影響を与え、個人消費が伸び悩みGDPの伸びはいまいちというところで、今のままではまた何かがあればデフレに戻りかねない状況です。

実際に、8%増税の悪影響で、税収も減っています。2016年度の国の一般会計税収が55兆5千億円前後にとどまり、15年度の56兆2854億円を下回ったことが28日分かりました。前年度割れはリーマン・ショックの影響で税収が急減した09年度以来7年ぶりです。


政府は16年度税収に関し、当初予算の段階では15年度を上回り57兆6040億円に達すると見込んだが、昨年末の補正予算で1兆7440億円下方修正し、55兆8600億円に減少すると見積もり直しました。

この税収減少については、マスコミは8%増税の悪影響であることを報道しませんが、これは以前にもこのブログにも掲載したように、増税による個人消費の減退は明らかで、これが税収の減少につながつていることは明らかです。

日経新聞は、昨秋までの円高で企業収益が伸び悩み、法人税収が低迷したことが響いたなどとしていますが、これよりも個人消費の落ち込みが大きかったことは明らかです。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
なぜ日本の「実質GDP成長率」は韓国以下のままなのか?―【私の論評】緊縮会計をやめて消費税も5%に戻せ(゚д゚)!
 
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では8%増税の悪影響について掲載しました。

この記事から、一部分を以下に引用します。
日本国民は、長期化するデフレの中で、ながらく消費支出を抑えてきたが、2012年終盤以降、現在の安倍政権発足と「アベノミクス」によるデフレ脱却の機運の高まりの中で、消費性向は急上昇した。 
2014年4月の消費税率引き上げ直後も、その余勢(もしくは、長年のデフレによる「倹約疲れ」も影響してか)からか、消費性向はすぐには低下しなかったが、2014年の夏場以降、急速に低下し始めた。 
この間、景気回復のモメンタムは失われたが、雇用環境の改善は続いたため、全体としての賃金(統計的には雇用者報酬)の増加は続いた。だが、賃金の回復局面にもかかわらず、消費性向の低下(及び、貯蓄率の上昇)はむしろ、加速度的に進行した。
そして、消費性向の低下の推移をみると、特に加速度的に低下が進行したのは2016年半ば以降であった。 
思い起こすと、ちょうど2016年6月に、安倍首相は、2017年4月に予定していた消費税率再引き上げの先送りを発表した。この決定自体は、当時の経済状況を考えると「英断」であったことは間違いない。ただ、問題は、次の消費税率再引き上げを2019年10月に単に「先送り」しただけであったという点だと考える。 
多くの国民は、「2017年からの消費税率引き上げはなくなったが、いずれかの時点(この場合、2019年10月)で消費税率の引き上げは実現し、場合によっては、それだけでは終わらず、将来的にはさらなる増税も実施されるに違いない」ことを想定して、「節約志向」を変えなかったと推測される。そして、この流れは現在も継続中ということなのだろう。
さて、長々と日本経済の現状について掲載してきましたが、結局何が言いたかったかといえば、確かに8%増税には失敗しましたが、金融緩和のほうはそれなりに効果がでてきて、雇用状況はかなり良くなっているということです。これが、安倍政権一強の最大の要因です。

さて、実はこの事実には、都民ファーストの会が将来国政において大躍進できる機会がったかもしれません。

そうです。東京都が日本全国に先駆けて、積極財政に踏み出せば、東京都のGDPは全国に先駆けて上昇し、金融緩和+積極財政で、経済が上向き東京都はデフレから完全に脱却して、物価も上昇、実質賃金もはっきりと上昇傾向になり、この業績をもって小池知事が国政に積極財政を標榜して再び参画すれば、都民ファーストの会は国政レベルで相当躍進したかもしれません。

さらに、積極財政を標榜し、無論さらなる量的緩和も実施することを標榜し、国政に打ってでれば、国政でキャスティング・ボードを握り、それこそ近い将来に初の女性総理大臣登場ということにもなったかもしれません。

しかし、小池知事はこのせっかくのチャンスを棒に振ったかもしれません。なぜなら、小池知事はどうも積極財施などはなから念頭にないようなのです。

たとえば、今年の2月28日、東京都議会定例会の本会議が開かれ、各会派による代表質問が行われたときに、最初に質問に立った最大会派自民党の高木啓幹事長(51)は、いきなり「個人都民税の10%削減を提案したい」と切り出したのですが、小池氏はこれを一蹴してしまったからです。

高木氏は小池百合子知事(64)が昨年、知事給与を半減させ、議会も議員報酬を2割削減することを可決したことを指摘した上で、「来年度予算案で720億円の歳出削減しているので、成果を直接都民に還元することは、都民福祉の向上に結びつく」と理由を説明。減税規模は約880億円に上るとの見通しを示ししました。

この減税提案は他会派から「知らなかった」との声が上がる完全な“隠し球”。これに対して答弁に立った小池氏は、この提案を一蹴したのです。
 「高額所得者ほど減税額大きくなる。税の公平性の観点から問題がある。都市と地方の税収格差が問題視される中で都富裕論から財政調整の動きに拍車をかけることになりかねない。慎重に戦略的な対応をすべきだ」
代表質問を終え小池知事の前を通って自席に戻る自民高木啓議員
加えて2017年度予算案で無駄なコストを削って捻出したとする720億円は、「待機児童など必要な政策に思い切って投じ、都民に還元している」とすでに使い道が決まっているとかわされました。

質問終了後、記者団に対して高木氏は「議会は自らの待遇を引き下げた。その成果が自己満足で終わってはいけない」としたうえで、「財源の問題も含め唐突なことではなく、背景があってこの問題提起した。確実にできる目標」と強調しました。

この高木議員の「個人都民税の10%削減を提案」に関しては、ひょっとすると本人は積極財政などという考えはなかったかもしれません。単に、節約できたから、それを都民に還元すべきという程度の主張なのかもしれません。

しかし、本人が意図しようとしまいと、積極財政の提案であることにはかわりありません。もし、小池氏が国政レベルでの積極財政を推進すべきであるとの考えを持っていれば、ここまではっきりと否定することはなかったと思います。

積極財政といえば、国政でなくとも、都政でもできることはあるのです。高木議員の提案はその一つにすぎません。

実は東京都には、他にもデフレ的経済と闘う手段があります。これは、経済学者の田中秀臣氏が提案していたのですが、東京都で地域通貨(アービング・フィッシャー流の日付け貨幣というもの)を発行するという方法もあります。

この地域通貨と、現在行われてる地域通貨と決定的に違うのは、これを取得したものは一定期限に利用しないと事実上のペナルティ(追加の増税)を受けることにあります。最寄りの地方自治体の窓口に行き、この「日付け貨幣」を受け取った者(希望者に限定する)は、一定の期間に消費してしまわないと、むしろ追加の税負担を要求されるのです。

そのためこの追加の税負担を避ける目的で、「日付け貨幣」を得たものは積極的に消費する、という政策の枠組みです。これに類した政策の枠組みは多数あります。要はやる気の問題なのです。

東京都の経済が活性化すれば、都の財政状況も改善し、必要な社会保障などの財源として貢献することでしょう。だが、いまの東京都の現状では、むしろ低所得者層の状況を悪化させている消費増税の負担で、社会保障を充実しようという倒錯した形になってしまっている。そしてそれは東京都だけではなく、日本全体の縮図でもあるのです。

だからこそ、東京都が何らかの手段で、積極財政に転じて、東京都が他に先んじて、全国に先駆けてデフレから完全脱却し経済を良くすれば、都民フアーストの会は国政でも勢いを増し、その結果として、小池百合子氏が国政でキャスティング・ボードを握るということもあり得たかもしれないのです。

そうして、もしそうなれば、豊洲への移転問題など、さして問題にされなくなったかもしれません。そうして、もし小池氏がこの道をすすむというなら、私としては大歓迎です。であれば、私は都民ファーストの会を応援し、日本初の女性首相の誕生を待望したかもしれません。

さて、小池百合子氏が積極財政にあまり関心がないことを示す客観的事実はこれだけではありません。

これは、2008年 にまだ自民党に属していた、小池百合子氏が、総裁選に出馬したときの公約をみると良くわかります。

当時の公約について書かれている記事を見つけました。そのリンクを以下に掲載します。
自民党総裁選:小池百合子氏の公約
9月10日、小池百合子元防衛相は自民党総裁選公約で日本が
生かしきれていない潜在力を十分発揮できるよう
戦略的に取り組むことが必要との認識を示した

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この公約から経済政策のみを以下に拾ってみます。

"
 4.「経済力」

(1)財政政策は「財政に家計の常識を入れる」ことを基本にする。

  ・「借金依存の贅沢はしません」=赤字国債増発による景気対策は打たない。

  ・「資金繰り計画を変えません」=2011年度までの財政再建目標は堅持する。

  ・「ヘソクリを今こそつかいます」=構造改革の果実や特別会計の余剰金等を使う。

(2)当面の景気対策について

  ・必要な財源は特別会計の剰余金(いわゆる霞ヶ関埋蔵金)として、財政出動の部分は「経済力」「環境力」「女性力」を強化するという観点から再検討する。

(3)今後の経済財政運営は以下のように考える。

  ・マクロ経済政策運営としては、変動相場制のもとでの財政出動には効果がないとの認識に基づき、金融政策を中心として、必要に応じて減税政策を行い、個別業界へのばらまき財政支出は行わないことを基本とする。

  ・日本がもっている「もったいない力」を生かしきれば2.5─3%以上の経済成長をする実力を持っている。

  ・名目成長率4%を巡航速度とする先進国で一般的な経済の姿を実現する。その結果10年以内に、国民一人当たりGDPを18位から5位に引き上げる。

  ・2011年度の基礎的財政収支黒字化目標は堅持し、増税の前に、無駄の削減、公務員給与の更なる削減、政府資産売却などを徹底的に行う。

(4)借金依存体質に「リバウンド」させてはいけない。

(5)税制改革については以下のように考える。

  ・現在の石油関連税制を総合的に見直して、CO2排出量に応じた一般財源としての「炭素税」に切り替える。

  ・国税は、国税の原則である「応能税、人税、累進的課税」に基づくもので構成すべき。消費税は道州制導入の際に、地方の基幹的税として州政府に税源移譲すべき。

  ・相続税は、高齢者介護の社会化が進んでいること、高齢者の資産格差が拡大しており、この格差を次世代が継承することは望ましくないとの社会的公正の観点から、広く薄い資産課税を適正に行うものとして、福祉財源に充当する。

  ・経済活性化の観点からは、法人税減税の引き下げ、ファンドマネージャー課税の撤廃等の税制の国際標準化を行うべき。法人税率については、地域振興のための法人税減税特区を実現する。

  ・中小企業向けの欠損金繰り戻し還付制度を確立する。黒字から赤字転落した中小企業の納付済み法人税を3年前までさかのぼって還付し、中小企業税制の国際標準化により競争力を高める。

(6)海外の豊かさを日本に取り込む。

  ・羽田空港を24時間化するとともに全国主要都市の国際空港機能を強化して、日本をアジアのヒト・モノ・カネの中心とする。

  ・2013年の農林水産物輸出額1兆円の政府目標を順守する。

  ・国民の豊かさの定義を拡充するため、GDPからGNI(GDP+海外からの純所得)を重視すべき。

  ・英語教育を徹底する。とりわけ公教育における小学校英語教育を拡充する。

"
なにやら、頓珍漢な内容です。特に、"財政政策は「財政に家計の常識を入れる」ことを基本にする"というのは、どういうことなのでしょうか。家計のように、とにかく借金を減らすというプライマリーバランス至上主義であるとしかうけとりようがありません。

マクロ経済政策運営としては、"変動相場制のもとでの財政出動には効果がないとの認識に基づき、金融政策を中心として、必要に応じて減税政策を行い"としてはいるのですが、ではこれと財政政策とはどう折り合いをつけようというのか、理解できません。

しかし、財政政策を筆頭にあげているので、やはり、財政政策を優位におき、マクロ経済政策による景気変動対応型の金融緩和、積極財政はあくまでも従という取扱のようです。

やはり、安倍総理が後にあげた、三本の矢である、金融政策、財政政策、成長戦略(成長戦略はとってつけたようなもので不要だったと私は思うが)とは随分異なるものです。

やはり、小池知事の頭の中は、積極財政は従という扱いであるとしか思えません。

これでは、その他大勢の国会議員と大同小異で、安倍政権に対して優位性を保ったり、キャスティングボードを握ることは不可能です。2008年から時もたっているので、小池百合子氏も考えかを変えたかもしれないと思う人もいるかもしれませんが、この時点で財政優先の考えを持っている議員でその後考えを変えた人は与党にも野党にも存在しません。小池知事だけが、例外であるとは考えにくいです。

そうなると、豊洲移転への不手際や、築地市場の失敗も目に見えるてくるでしょうし、都民ファーストの会が国政で大きな影響を与える機会も訪れることはないでしょう。今回の都議会選挙では勝利するかもしれませんが、その後は線香花火のような状況になり、少数政党として、いずれ消えていくか、他の党に吸収されて終わりということになると思います。

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