ウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事とトランプ氏(今月1日) |
トランプ陣営は、ニューヨークのホテルで支持者集会を開催し、大歓声の中で「勝利の瞬間」を待ち構えていた。正面玄関付近でも数十人がポスターや横断幕を掲げて「トランプ! トランプ!」と連呼するなど、熱気に包まれていた。
日本時間9日午後3時10分時点で、トランプ氏は選挙人(計538人)の過半数(270人)まで26人まで迫った。
「史上最低と史上最悪の候補の争い」といわれた選挙戦を盛り上げたのは、トランプ氏の「隠れ支持者」の存在だ。
過激な言動を繰り返すトランプ氏には、共和党支持者も「差別的思考の持ち主と思われたくない」と距離を置く傾向があり、世論調査では正確な支持がつかめず、共和党内にも亀裂を残した。
だが、「オバマ政治が米国の衰退を招き、世界を大混乱させた」「クリントン氏は既成政治家の代表」と感じる無党派層を含む有権者の間で、トランプ氏は着実に支持を広げ、最終盤で逆転した。
「隠れ支持者」は500万人どころではなかったようだ。
クリントン氏は「米国初の女性大統領」を目指して当初、選挙戦を優位に進めたが、政治の刷新を求める声の高まりや、「私用メール問題」や「財団疑惑」「健康問題」などが響いて支持を落としていた。
選挙戦で、白人中間層や非エリート層はクリントン氏を「ウォール街の手先」と批判し、女性やヒスパニック、エリート層はトランプ氏を「差別主義者」と攻撃した。背景にある「貧富の差」や「人種間の亀裂」…。激しい中傷合戦で、米国は傷つき「分断の危機」に直面している。
劇薬の「トランプ大統領」の誕生で、世界に多大な影響を与える。日本も例外ではない。
トランプ氏は選挙戦で、過激な保護主義政策を訴え、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)からの脱退を主張した。口癖が「ディール(取引)する」だけに、条件闘争との見方もあるが、公約実現に踏み出した場合、世界経済の混乱は避けられない。
日米同盟についても、トランプ氏は「われわれには日本を防衛する財政的余裕はない」「日本は、在日米軍の駐留経費の全額負担をすべきだ」「応じなければ在日米軍の撤収を検討する」と発言していた。
日本は在日米軍の駐留経費として、別枠の米軍再編関連予算などを除き、2016年度予算で約5818億円を計上している。トランプ氏は今後、金銭的な「負担増」と「役割増」を要求してくる可能性がある。
日本の安全保障の基軸は「日米安保条約」である。日本単独では、中国や北朝鮮などの脅威に対抗できないからだ。今後、日本の政界では「トランプ政権とどう向き合っていくか」という議論が起こりそうだ。
安倍晋三首相率いる自民党は「日米同盟」を堅持する方針とみられるが、蓮舫代表の民進党は、党綱領に「日米安保条約の廃棄」を掲げている共産党との選挙共闘を進めている。次期衆院選の焦点となるのか。
ちなみに、トランプ氏は「アンチ・チャイナ(反中国)」的な言動も繰り返している。
国際政治学者の藤井厳喜氏は「トランプ氏が勝てば短期的にはマーケットの混乱があるが、長期的にみれば米経済は回復するので日本経済にとってもプラスだろう。日本の外交・安全保障を立て直すチャンスだ」といい、続けた。
「トランプ氏は『在日米軍の半減』を求めてくるのではないか。日米安保条約の改定や、日本の防衛費をGDP(国内総生産)比2%まで引き上げることも必要になるかもしれない。憲法9条を改正し、緊迫する東アジア情勢に対応できるよう自衛隊を再編すべきだ。安倍首相からトランプ氏に逆提案し、日米関係を次のステージに進めるべきではないか」
【私の論評】米保守派の今まで声にならなかった声が、大声となった(゚д゚)!
日本では、あまり注目されませんが、大統領選と同時に行われたもう一つ重要な選挙の結果を以下に掲載します。それは、連邦議会上院、下院の結果です。
その結果は、上のグラフをご覧頂いたとおり、上院でも下院でも共和党が勝利しました。ただし、上院ではぎりぎりで、過半数を獲得しています。
なぜ、これが重要かといえば、たとえ共和党のトランプ氏が大統領選挙に勝利したとしても、議会選挙で共和党が勝てなければ、就任初日からトランプ政権は「レームダック」政権になってしまう可能性があるからです。
仮にトランプ政権が実現したとしても、その行方を握るのは連邦議会選挙の勝敗だから
です。アメリカの大統領の立法権限は極めて限られています。大統領側の政党が議会で多数派を握ってなければ、野心的な法案は何も通ることはありません。
振り返れば、オバマ大統領の大型景気刺激策、医療保険改革法など目玉の立法成果は、すべて1期目の最初の2年間だけでした。なぜなら、その時期だけ民主党が上下両院で多数党だったからです。その後は、移民関連法案の事例のようにほとんど法案を通すことができず、オバマ政権はレームダック化しました。
仮にトランプ政権が実現したとしても、その行方を握るのは連邦議会選挙の勝敗だから
です。アメリカの大統領の立法権限は極めて限られています。大統領側の政党が議会で多数派を握ってなければ、野心的な法案は何も通ることはありません。
振り返れば、オバマ大統領の大型景気刺激策、医療保険改革法など目玉の立法成果は、すべて1期目の最初の2年間だけでした。なぜなら、その時期だけ民主党が上下両院で多数党だったからです。その後は、移民関連法案の事例のようにほとんど法案を通すことができず、オバマ政権はレームダック化しました。
今回の結果をみると、上院・下院ともに共和党が勝利しています。上院に関しては僅差ですので、圧倒的に有利ということはないですが、少なくともトランプ政権が最初からレームダック化することはなくなりました。
少し前置きが長くなりましたが、今回なぜ、トランプ氏が圧勝したのか、もうすでにいろいろと分析されています。細かな票読みなどは、元々私にはできないので、他のメディアをご覧いただくものとして、私としてはその背景について掲載しようと思います。
このブログは個人ブログでもあるため、アメリカ社会を直接分析することもできないので、私が知り得る範囲で、なぜこのような結果になったのかを掲載します。
ちなみに、このブログでは、他の日米のメディアがクリントン氏有利を喧伝していても、選挙戦序盤から直前まで一環して、トランプ氏が圧倒的に不利であり、クリントン氏が絶対優位などとは掲載しませんでした。最初から、最後までトランプ氏の勝利はあり得るものと確信していました。
では、なぜこのような確信を持てたかといえば、決して希望的観測ではありません。多くの人が未だ気づいていないアメリカ社会の特徴について私が知っていたからです。
これについては、前からこのブログを良く読まれている方はすでに知っていることと思います。なぜなら、過去に何度がそれについてこのブログに掲載しているからです。
それについて掲載した代表的な記事のリンクを以下に掲載します。
米大統領選「隠れトランプ支持者」がカギ?―【私の論評】トランプ氏台頭の背景には、米保守派の憤懣の鬱積がある(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に部分的に引用します。
アメリカのメディアはかなり偏りがあって、リベラル・左派が9割方を占めている状況です。残りの1割が保守系メディアなので、保守系の声などはかき消されてしまいます。
現実のアメリカは、本当にリベラル・左派と保守派に真っ二つに割れていて、おそらく比率は半々くらいなのでしょうが、マスコミ・学界などが、完璧にリベラル・保守に握られており、これによって形成される世論は、リベリラル・左派的な価値観が大勢を占めているということです。
誰でも、保守派の家に生まれば、最初は当然「保守的」な考えを持つのでしょうが、学校に入ったり、もっと上の学校に行けば、そこはリベラル・左派が大勢を占めています。さらに、社会人になれば、職場でも表向きはリベラル・左派な考えが大勢を占めています。場合によっては、リベラル・左派的な考えを否定すれば、職場で周りと馴染めないどころか、場合によって追い出されてしまいかねません。
このようなことが長い間続くとどのようなことがおこるでしょうか。テレビを見ても、新聞を読んでも、保守派の考えはマイナーな扱いです。保守的な考えを持つ人々には、当然のことながら憤懣が鬱積していきます。その憤懣をぶつける場所は残念ながら従来のアメリカにはありませんでした。
ところが、その憤懣を受け止める、トランプ氏という大統領候補が出てきたのです、そうして、この大統領候補はうわべを飾ることなく、ずけずけとものを言いますし、兵役経験者ならわかるように、何かを語って説得する場合でも決して丁寧な言葉など使いません。どちらかというと、汚いくらいの言葉を使って、話相手にショツクを与えて、これからおこることは相手が予測もしないことであることを悟らせるというような方式をとります。
実は、アメリカは変わりつつあるのです。その先駆けとなったのが、当初泡沫候補であるといわれたトランプ氏がここまでしぶとく大統領選を闘いぬいているという事実なのです。ブログ冒頭の記事では、米国は「分断の危機」としていますが、アメリカはもともと分断していたのです。ただし、アメリカのメディアのほとんどがリベラル・左派であり、保守の声などかき消され、あたかも分断していなように見えただけなのです。今回の大統領選挙により、それが大きくクローズアップされただけです。
このような、自分の考えをなかなか表明できず、アメリカの現状に不満をつのらせた多数の生粋の保守派と、それに生粋の保守派ではないもののアメリカの現状に業を煮やしているものの、これまた自分の考えをなかなか表明することのできなかった「隠れトランプ支持者」が 大勢存在したのでしょう。
そうして、この両者ははっきりと分かれているのではなく、重なる部分も多いのでしょう。危機感をつのらせた、米保守派はかなり熱心に選挙活動をして、多くの人々に働きかけたのでしょう。そうして、両者をあわせると実数として無視できないくらいの数になっていたのでしょう。これらが、トランプ氏を支持したのです。そうして、その多くは、アンケートなどでは、クリントン支持と答えておきながら、実際の投票ではトランプに入れたのでしょう。
だからこそ、CNNなどの世論調査では圧倒的にクリントン有利と言われていたものが、今回のトランプ氏の大勝利につながったのです。
このアメリカの現状に不満をつのらせた、アメリカの保守派の気持ちは間接的ながら、私も理解できたことがあります。
それは、Googleがオンラインで提供している、英語学習サイト"English Central"を視聴していたときでした。
Googleは、大統領候補としてはヒラリー・クリントン氏を支持していて、トランプ氏の台頭には危機感を抱いていました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米産業界、トランプ氏へ懸念の声 グーグルも対策議論?―【私の論評】日本にとって自腹で動くトランプが大統領になるより、中華マネーで動くヒラリーのほうがはるかに危険(゚д゚)!
トランプ氏 |
米国の産業界に、米国の大統領選の共和党候補者の指名争いで首位を走る不動産王トランプ氏の言動を懸念する声が広がっている。貿易や移民など経済政策での極端な持論が、堅調な米国経済の足を引っ張りかねないと心配するからだ。この記事からもおわかりのように、Googleの経営層の考え方は、生粋のリベラル・左派なのだと思います。
ハイテク企業の集積地シリコンバレーの経営者らは、「移民敵視」発言に敏感だ。移民の力が技術革新を促してきた歴史があり、それを否定する考えに反対する。米メディアによると、アップルやグーグルなどの経営トップが3月上旬に共和党系会議に出席し、党の主流派議員も加わって、「トランプ対策」をテーマに話し合ったという。
ただし、検索エンジンの運用や、インターネット広告の運用などに関しては、特に生粋のリベラル・左派の考えなどあまり関係はないと思います。だからこそ、私自身も検索エンジンはGoogleをもちいていますし、このブログもGoogleが提供しているレンタル・ブログサービスであるBloggerを用いています。その他にもGoogle+やドライブやその他のサービスもかなり利用しています。
これらのサービスを利用している限りにおいては、あまりストレスを感じたことはありません。
しかし、英語学習サイト"English Central"は違いました。ただし、このサイト自体は英語学習サイトとしてかなりの優れものです。これは、現在ではGoogleの傘下にある、YouTubeの動画を英語教材に用いています。
英語学習サイト"English Central"の画面 |
英語学習サイトとしては、申し分のない素晴らしいものだと思います。ところが、ひとつだけストレスを感じたことがありました。それは、この学習サイトで提供される動画の内容でした。
これは、当然誰かが世界中からYouTubeに投稿された動画の中から選んでいるのでしょうが、その内容がはっきりとリベラル・左派的なものを数多く選んでいるよう感じました。
全部が全部そうだというわけではないのですが、たとえば世界中の戦場で休戦日をある一定頻度で、一日設けるという考えを持った若者が、実際にそれを各国に訴えて、ほんの一部ですが、実際に受けいられている地域もあり、そのことが動画で流れてきました。
確かに、休戦日一日を設けること自体は、それはそれで良いこととは思いますが、それだけで根本問題が解消されるわけではありません。そうして、その若者の話すシーンもでてくるのですが、それが何というのか非常に軽いのです。
後は、アジアの動画を流すにしても、韓国の内容が不自然に多かったり、中国のものも流れるのに、日本はあまりないとか・・・・・。
その他にも、アメリカのリベラル・左派と思しき人のライフスタイルなどが結構流れてきたりで、何というから見終わると脱力感を感じることもありました。ある日PUNKの人生観に関する動画が流れきました。
punk的な生き方をするのは個人の自由だが、punkの 人生観を英語教材にされてはたまったものではない |
なんというか、一言でいえば軽佻浮薄とでもいうような内容に辟易としました。無論、私がそう感じただけのことかもしれないですが・・・・・。
無論、なぜこのようなことになったかといえば、私自身がどちらかというと保守的な人間だからだと思います。リベラル・左派の人ならば、これを見ても何とも思わないのかもしれません。だから、長い期間にわたり視聴して、それなりに英語力もアップできるのでしょう。
動画を選択している人も、おそらく自分がリベラル・左派なので特に意識しないで自分の価値観に従って選んでいるだけなのかもしれません。
しかし、私には、耐えられませんでした。このサイトでの学習は一日せいぜい1時間くらいなもので、休みの日などに長くても2時間くらいだったのに、この有様でした。日本のテレビなどの番組を見ていてもリベラル・左派的なものもありますが、これほど軽くはなかったものと思います。
しかし、これがアメリカに住んだとしたら、テレビをみてもラジオを聴いても、圧倒的にリベラル・左派的な内容がほとんどであり、それどころか、学校や会社に行ってもリベラル・左派的な内容の会話が多いのだと思います。
日本も無論そのような傾向はありますが、それにしてもアメリカほどではないのではないかと思います。
このような環境長年にわたって浸り続ければどうなるのかと考えてしまいました。アメリカの保守派は、それこそ、腹の中身と会話とは全く異なるものになり、本当に打ち解けた人にしか自分の本当の考えを話さなくなったのではないかと思います。これでは、アンケートも正確にはならないわけです。
今回のトランプ氏の大勝利は、米保守派の今まで声にならなかった声が、大きな声となった結果です。
それにしても、今回のトランプの圧勝で、米保守も見直されると思います。日米のメディアも反省して、保守の声も拾い上げるようにしていただきたいものです。
そうでないと、これからもメデイアは、今回のような大間違いをしでかすことになります。
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