生前の余旭大尉 写真はブログ管理人挿入 以下同じ |
中国で初めて戦闘機「殲(J)10」の女性操縦士となったパイロットが曲芸飛行の訓練中に事故死した。ネット上では「ガラスの天井」を破った女性の理想像として追悼の声が相次ぎ、当局も「革命烈士」に認定して愛国心高揚の材料にしている。ただ、中国では昨年以降、戦闘機の墜落事故が相次いでおり、「戦える軍隊」に向けた過度の訓練強化が背景にあるとも指摘されている。
中国国防省や中国メディアによると、死亡したのは中国空軍のアクロバット飛行チーム「八一飛行表演隊」の飛行中隊長、余旭大尉(30)。12日午前、河北省唐山上空を飛行していた殲10の機体から脱出したが、僚機の補助翼に激突し死亡した。同乗の男性操縦士は無事に脱出した。現地住民が撮影したとされる映像には、機体の墜落によってできた直径10メートルほどの大きな穴や機体の破片が映し出された。余氏らが脱出を余儀なくされた原因は公表されていない。
中国空軍八一飛行表演隊の長春でのパフォーマンス 今年9月2日 |
余氏は2005年に空軍航空大学に入り、09年に行われた建国60周年の軍事パレードでは天安門上空を戦闘機で飛行した。殲10を操縦できる女性は余氏を含めて4人しかおらず、容姿端麗なこともあり「金のクジャク」のニックネームでメディアが盛んに取り上げた。事故後は「夢を実現し国防に身をささげた女性」として称賛一色の報道となっている。
ただそうした状況に異を唱える声もある。殲10は15年10月以降の約1年間で、公表されているだけで墜落事故が4件発生。エンジン性能や操作性などの問題に加えて、現在の飛行訓練のあり方を疑問視する意見もある。「強軍路線」を掲げる習近平指導部が、空軍や海軍の飛行訓練に高い難度と訓練時間の大幅な増加を要求しているためだ。
今年4月には地上で模擬着艦訓練を行っていた空母艦載機「殲15」の男性パイロットが死亡する事故も起きている。
まずは、亡くなられた余旭さんのご冥福をお祈りさせていただきます。
2014年11月15日、四川省成都の郊外でJ-10Bが1機墜落する事故が発生した。住民7人ほどが負傷、パイロットは脱出に成功した。AL-31FNエンジンの故障とみられている。
2015年12月17日、J-10Sが浙江省で墜落した。パイロットの2名は脱出に成功した。
2016年9月28日、天津市でJ-10B が1機墜落した。バードストライクによるAL-31FNエンジンの故障が原因。パイロットは脱出に成功した。
2016年11月12日、飛行訓練中のJ-10が墜落、中国初の女性戦闘機パイロットが死亡。
J-10は、中国の国産戦闘機であり、現在も生産されていて、200機以上を保有しています。
設計はイスラエルのラビという試作機が元になっていて、中国とイスラエルの軍事交流が盛んだった頃の遺物です。ただし、この事実は中国、イスラエルともに否定しています。
初飛行は1998年で、当時の中国の航空技術を考慮すると、どう考えても「それなり」の性能でしかありません。西側のF15やF16に通用するとは考えられず、戦闘機としては自衛隊と対峙する際には戦力外と言っても良い代物です。
ただし、中華人民共和国はJ-10についての情報をほとんど公開しておらず技術的な細部は明らかになってはいません。ただし、曲芸飛行用航空機としては、必要十分なものであったものと思います。
在日米軍が日本を守っているのではなく、自衛隊が在日米軍を守っているといっても良いくらいです。
今のところ数は少ないものの、質の面で日本空軍(日本の航空自衛隊)は中国空軍を圧倒しており、空の戦いにおいては、日本が中国に対して優位に立っています。
ただそうした状況に異を唱える声もある。殲10は15年10月以降の約1年間で、公表されているだけで墜落事故が4件発生。エンジン性能や操作性などの問題に加えて、現在の飛行訓練のあり方を疑問視する意見もある。「強軍路線」を掲げる習近平指導部が、空軍や海軍の飛行訓練に高い難度と訓練時間の大幅な増加を要求しているためだ。
今年4月には地上で模擬着艦訓練を行っていた空母艦載機「殲15」の男性パイロットが死亡する事故も起きている。
【私の論評】事故の背景には、人為的構造的なものがあり早期解決は不可能(゚д゚)!
生前の余旭さん |
上の記事では、"殲10は15年10月以降の約1年間で、公表されているだけで墜落事故が4件発生"としていますが、具体的にどのような事故だったのか以下に掲載します。
2014年11月15日、四川省成都の郊外でJ-10Bが1機墜落する事故が発生した。住民7人ほどが負傷、パイロットは脱出に成功した。AL-31FNエンジンの故障とみられている。
2015年12月17日、J-10Sが浙江省で墜落した。パイロットの2名は脱出に成功した。
2016年9月28日、天津市でJ-10B が1機墜落した。バードストライクによるAL-31FNエンジンの故障が原因。パイロットは脱出に成功した。
2016年11月12日、飛行訓練中のJ-10が墜落、中国初の女性戦闘機パイロットが死亡。
記録を調べたところ、以上の4件がヒットしたので、ブログ冒頭の記事の「殲10は15年10月以降の約1年間で、公表されているだけで墜落事故が4件発生」は、間違いであり正しくは、「殲10は14年10月以降の約1年間で、公表されているだけで墜落事故が4件発生」が正しいのだと思います。
さて、このように事故の多い「殲10」ですが、どのような戦闘機なのか、以下に掲載しておきます。
設計はイスラエルのラビという試作機が元になっていて、中国とイスラエルの軍事交流が盛んだった頃の遺物です。ただし、この事実は中国、イスラエルともに否定しています。
イスラエルのラビ試作機 |
電子機器や装備もイスラエルの協力を受け、当時の西側に近い機能を持っています。これは、ミグ21より遥かに優れているのですが、外観・機能ともに北欧やフランスの軽戦闘機に類似しています。
J-10は、西側からの技術導入を前提としていたため、1989年に起こった天安門事件を契機としたアメリカをはじめとする西側諸国の対中政策見直しによる武器輸出規制により計画は失敗の危機に瀕していました。結局、ソビエト連邦崩壊後に関係を改善したロシアから入手したAL-31Fターボファン・エンジンやアビオニクスを搭載することで実現に至りました。
ただし、その後は国産エンジンも搭載されていましたが、J―10の最大の問題は、搭載された中国産エンジン「WS-10」のパワー不足とされています。中国の航空機エンジンは海外からの輸入が拡大しており、中国政府も「15年内に、外国産エンジンが中国機のすべてを占める」と公言しています。
初飛行は1998年で、当時の中国の航空技術を考慮すると、どう考えても「それなり」の性能でしかありません。西側のF15やF16に通用するとは考えられず、戦闘機としては自衛隊と対峙する際には戦力外と言っても良い代物です。
離陸するJ-10 |
さて、中国の空軍の実体などについて以下に掲載しておきます。今回の事故に関しては、中国側はまともに公表しないと思いますが、以下のことを知ればこの事故の本当の原因がみえてくるかもしれません。
今のところ一見数は少ないものの、質の面で日本空軍は中国空軍を圧倒しており、空の戦いにおいては、日本が中国に対して優位に立っています。
生前の余旭さん |
在日米軍が日本を守っているのではなく、自衛隊が在日米軍を守っているといっても良いくらいです。
今のところ数は少ないものの、質の面で日本空軍(日本の航空自衛隊)は中国空軍を圧倒しており、空の戦いにおいては、日本が中国に対して優位に立っています。
在日米軍が日本を守っているのではなく、自衛隊が在日米軍を守っていると言っても良いくらいです。
保有戦闘機の数を比較すると以下のようになります。
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日本 ・・・・・ 360機
中国 ・・・・・ 2570機
出展 こんなに強い自衛隊 著者: 井上和彦
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確かに保有台数では比較になりません。中国は日本の7倍もの戦闘機を持っています。しかし、戦闘機の質を見ると中国の戦闘機はかってソ連が開発した「ミグ19」ないし「ミグ21」の改良型ばかりであり、もはや骨董品級の代物なのです。
これに対して航空自衛隊は、F15(改良型)などの近代的戦闘機をずらりと揃えているのです。そうして近々F35 を導入する予定もあります。
戦闘機の優位性は、こうしたハード面だけでは決まりません。とくにこうしたハイテク戦闘機の場合、いかに機を使いこなせるかにかかっています。その尺度となるのは、飛行時間なのです。これについては、日本と中国の間には決定的な差があります。
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≪飛行時間≫
航空自衛隊 ・・・・・ 年間最低150時間
中国空軍 ・・・・・ 年間平均 25時間
ただし、最新鋭スホーイ27の部隊でもやっと年間100間程度と推測
出展 こんなに強い自衛隊 著者: 井上和彦
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さらに中国海軍は、慢性的な部品の欠乏という問題を抱えていて、飛べない戦闘機が多いのです。中国のスホーイ戦闘機の稼働率は60%といわれています。これに対して日本のF15戦闘機は、故障しても翌朝には飛び立てる状況になっており、その稼働率は90%です。
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さらに中国海軍は、慢性的な部品の欠乏という問題を抱えていて、飛べない戦闘機が多いのです。中国のスホーイ戦闘機の稼働率は60%といわれています。これに対して日本のF15戦闘機は、故障しても翌朝には飛び立てる状況になっており、その稼働率は90%です。
ただし、この60%という数字もあてにはなりません。私は以前軍事専門家から中国の航空機の全体の稼働率は20%以下という驚くべき数字を聞いたことがあります。中国の戦闘機のエンジンは外国製が多いということや技術水準が低いも考えると、確かに慢性的な部品不足に陥るのも無理のないことであり、この20%という数字もあながち全く根拠のない出鱈目とはいえないと思います。
飛行時間が、航空自衛隊のほうが中国よりも6倍あるのですから、稼働率も航空自衛隊よりも中国はかなり低いとみて間違いないです。スホーイ27の稼働率は中国でも例外的なのでしょう。
さらに、中国空軍の極端に低い年間飛行時間は、やはり戦闘機の稼働率が低すぎるため、十分に訓練できないという事情があるのではないかと考えられます。そうでないと、辻褄が全くあいません。
稼働率が20%ということで、概算してみたところ、中国機の稼働率と戦力外の戦闘機を数に入れないで中国と日本の航空兵力を比較して驚くべきことが明らかになり、その内容をこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【緊迫・南シナ海】ベトナムが中国・人工島射程にスプラトリー諸島でロケット弾を配備 インドからミサイル購入も―【私の論評】日本の備えはベトナムよりはるかに強固、戦えば中国海軍は崩壊(゚д゚)!
中国空軍の大部分を占める時代遅れのJ-7戦闘機
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、結論部分だけ以下に掲載しておきます。
(戦力外の戦闘機は外してさらに)保有していても稼動しないのは飛べないので、存在しないのと同じなので除外します。そうすると、航空自衛隊の稼働率90%、従って実数は315機です。中国空軍の稼働率推定20%、従って実数は50機です。
何と、実戦力でいえば、航空自衛隊は中国の6倍以上ということです。これはにわかに信じがたいでしょうが、実際はこれほど酷くはないにしてもかなり劣勢であることは明らかです。
さらに、現在の最新戦闘機は、高度な電子機器を満載しています。したがって、それを維持管理していくことは並大抵のことではないのです。まして高い稼働率を維持するには、優秀な整備員と円滑な部品供給が不可欠なのです。
生前の余旭さん |
中国では結局自前で、旅客機を製造することもできません。開発計画は昔からあるのですが、結局できていません。以前、習近平がアメリカを訪問したときに、ボーイング社から50機もの旅客機の買い付けをし、これをセンセーショナルに報道する日本メディアもありますが、実体をいうと、中国の自主開発が間に合わなくなったので、買い付けをせざるをえなくなったというのが事実です。
このように技術水準の低い中国です。最近のJ-10の事故も酷いですが、中国の最新鋭戦闘機スホーイ27は、1年間で12機を損失した記録が残っていますが、航空自衛隊の場合、1980年から今日までの20年以上の間に、事故などで失われたF15戦闘機は9機のみです。これは、自衛隊の機体整備の優秀さとパイロットの技量の高さの証明です。
生前の余旭さん |
以上のことから、今回のJ-10の事故原因も見えてくるような気がします。ただでさえ、稼働率が低いのですから、稼働している実機はかなり少なく、このような状況の中で、「八一飛行表演隊」を運用するのは至難の技だと思います。
ただでさえ、中国の領土は広いでし、周りにはロシアやインドなどをはじめとして多くの国々と国境を接してして、いつ何時周りの国が領空侵犯をしないともかぎりません。領空をパトロールするだけであれば、J-10などの旧式戦闘機でも良いのでしょうが、それにしても、稼働機はせいぜい100機くらいと考えた場合、これで全空域をパトロールするのは至難の業です。
その上、中国は尖閣付近で領空侵犯もしくはそれに近いようなことを繰り返しています。これに対応するための自衛隊機のスクランブルの回数は最近とみに増えています。
これらを考えると、中国空軍の幹部らは、毎日薄氷を踏むような心持ちで、様々な作戦を遂行していると思います。
こんなことを考えると、国威発揚のための曲芸飛行をする「八一飛行表演隊」のJ-10戦闘機など、空軍関係者からみれば、厄介な存在とさえいえるかもしれません。曲芸飛行ができるパイロットは当然のことなが、腕が良くなければならず、未熟なパイロットでは勤まりません。腕の良いパイロットを交代要員も含めて多数配置しなければなりません。
そうして、曲芸飛行には少なくとも6機くらいは飛ばせないとみすぼらいので、当然のことながら、党中央からは6機くらいは飛ばせられるようにと指示されているものと思います。そうなると、仮に稼働率が20%とすると、そうなると6機を常時飛ばすためには、30機は用意しなければならなくなります。これは、本当に無茶な注文です。
生前の余旭さん |
ただし、中国共産党幹部からは、国威発揚のためこれを維持することを命令されているのだと思います。実際、この「八一飛行表演隊」は、昨年の抗日70周年記念軍事パレードでも華々しく登場しています。北京オリンピックでも、上海万博でも登場しました。過去においても、これからも国威発揚のためには欠くことのできない存在になっています。
以上総合的に考えると、稼働実機の少ない中国空軍においては、「八一飛行表演隊」を運用するのは本来至難技であるにもかかわらず、中国共産党による国威発揚のため無理やり運用した結果、航空機のメンテナンスが疎かになりパイロットの訓練飛行時間も十分にとれないことなどで「八一飛行表演隊」にしわ寄せが行き、今回の事故を招いたと考えられます。
直接の事故原因はわかりませんが、その原因が何であったにせよ、このような構造的な人為的問題が背後にあって、この事故が発生し余旭さんがその犠牲になったのは間違いないと思います。
今後のこのようなことを防ぐには、中国空軍のメンテナンスや、航空機開発の技術水準を飛躍的に向上させるか、それができないというのなら、曲芸飛行などやめることです。そうして、脆弱な空軍力しかないのに分不相応で身の丈知らずの他国への挑発などもやめるべきです。
それでも、曲芸飛行をやりたいというのなら、日本の航空自衛隊のブルーインパルスにでもやらせたらいかがでしょうか。日本の航空自衛隊なら十分できると思います。
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