RCEPの閣僚会合後、記者会見する世耕経産相=3日、北京 |
世耕弘成経済産業相は終了後に記者会見し「今までの会合の中ではかなり円滑に進んだ。次回の9月の閣僚会合が大きなヤマ場になる。年内妥結に向けて日本が交渉のリード役になりたい」と語った。
世耕氏によると、韓国側は日本の輸出管理強化について閣僚会合で2回発言した。世耕氏は「まったくRCEP交渉と関係ない提起」に対して遺憾の意を示した上で「参加国の誤解」を招かないために、管理強化が安全保障を目的にした貿易管理の適切化であり、韓国が主張する世界貿易機関(WTO)違反ではないことや、世界のサプライチェーンに影響はないことを説明した。世耕氏と韓国側代表との接触は「まったくなかった」という。
今後、韓国が態度を硬化させて日韓の関税交渉が難航する可能性もあるが、世耕氏は「日本側が影響させる意図はまったくない。もし韓国が影響させてRCEPが停滞すれば各国がどう思うか」と牽制した。
中国の胡春華副首相は開幕式で演説し「強い政治的意志を積極的行動につなげ、年内妥結という目標に向けて揺るぎなく前進してほしい」と呼びかけた。
【私の論評】日本にとってRCEPなどどうでも良い、本命はTPPである(゚д゚)!
韓国は、RCEPの交渉で日本を非難しているようですが、そんなことはどうでも良いです。なぜなら、日本にとってはTPPのほうが本命中の本命だからです。
RCEP交渉自体は、いままで円滑に進んではきませんでした。交渉開始からすでに6年が経過しています。
北京で開かれたRCEPの閣僚会合=3日 |
物の貿易の自由化について、インドは関税の削減や撤廃に極めて後ろ向きです。知的財産権や電子商取引などのルール作りの交渉では、高いレベルのルールを求める日本、オーストラリア等に対して、中国やインドは反対しています。
WTOのドーハラウンド交渉が頓挫した大きな要因は、貿易の自由化をさらに推進し、25年前の1993年に合意されたルールを時代に合ったものにしようとする先進国に対して、途上国の大国を自認する中国やインドが消極的な態度をとり続けてきたことです。これらの国が参加するRCEPに、TPP並みのレベルは期待できません。
さらに、一定の労働基準や環境規制の遵守を要求し、これを緩めることによって自国の産業の競争力を高めようとする、いわゆる"底辺への競争"(race to the bottom)という行為に規律を課そうとする "貿易と労働" "貿易と環境" という分野、さらには補助金や規制によって保護される国有企業が外国企業よりも有利に競争できることになっていることに対する規律など、これまでWTOではカバーされず、TPP交渉で合意された重要な柱は、RCEP交渉の対象になってはいません。これらを交渉することに、中国は大きな困難を抱えるからです。
日本の政府やマスコミは、メガFTAであるRCEPの参加国のGDP規模の大きさを強調してきました。FTAの対象となる市場が大きくなることは事実ですが、GDPの大きさだけがFTAの価値を決めるものではないです。
ほとんど関税も削減しない、WTO以上のルールや規律は設定しない、という内容の乏しいFTAでは、いくら参加国のGDPが大きかったとしても現状に大きな変更を加えるものではありません。この意味からもRCEPはまともな協定にならない可能性が高いです。
さらなる問題は、複数のFTAが重複することによって、それぞれの関税、ルール、規則などが複雑に絡み合ったスパゲッティのように錯綜して貿易が混乱するという「スパゲッティボール効果」です。
からまったスパゲティー |
TPP11と日EUのFTAは対象となる地域が異なるので、このような問題は生じないです。しかし、TPP11とRCEPの参加国には重複があります。スパゲッティボール効果を避けるためには、一つの大きなFTAに関係国すべてが参加することが望ましいです。
自由貿易の推進や新しいルールの設定の両面でレベルの高いTPPに、アジア太平洋地域の経済を統合すべきです。
米国のオバマ政権は、TPPを新しい通商・投資のルールを作る21世紀型の自由貿易協定だと誇らしげに語っていました。しかも、マスコミで報道されている内容と異なり、オバマ政権にとって、TPPは中国を排除しようとする仕組みではなく、この高いレベルの規律が適用されるアジア太平洋自由貿易圏に中国を取り込むための仕組みでした。
TPPにおいて、中国と同じ社会主義国でありかつ多数の国有企業を抱えるベトナムと交渉することで、国有企業に対する高いレベルの規律を作るという目論見でした。将来TPPが拡大すると、中国もこれに参加せざるを得なくなったことでしょう。そのときに中国に国有企業に関する規律を適用しようとしたのです。
知的財産権の保護もこれらの規律の一つです。残念ながら、トランプ政権はこの壮大な構想を理解できず、TPPからの脱退を表明しました。もっとも、中国に知的財産権の保護を行わせるという観点から、ようやくTPPの重要性に気付いたようです。ですから、少なくともトランプの次の大統領はTPPに参加することになるでしょう。
2017年1月23日、トランプ米大統領は選挙公約通り、環太平洋連携協定(TPP)
からの正式離脱に関する大統領令に署名した
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TPPに関心を示す国は多いです。メガFTAには参加しないと不利益を受けるので参加せざるを得ないというドミノ効果が働くからです。
韓国、台湾、フィリピン、インドネシア、タイというアジアの国に加えて、コロンビアが参加の意思を表明しましたし、イギリスも関心を示しています。合意する見通しがなく、合意が得られたとしても質の高いFTAにはなりそうにないRCEP交渉に貴重な人的資源を割くよりも、日本政府はTPPの拡大に能力と資源を傾注すべきです。
かつて社会主義経済の中国のWTO加入交渉には15年を要しました。これほどではないにしても、TPP拡大のためには、単に加入の声掛けをするだけではなく、貿易の自由化の程度や各種の規制がまちまちである加入希望国について、どのような条件で加入を認めるかという交渉に多くの時間と労力を必要とするからです。
私は、中国は結局TPPには加入できないと思います。なぜなら、TPPが要求する水準を中国はとても受け入れられないからです。それを実行すれば、それこそ中共は崩壊するかもしれません。韓国も日本が韓国に対して貿易管理を強化しただけで、反発していることから、無理かもしれません。しかし、米国はおそらくいずれ入らざるを得ないでしょう。
なお、中共が崩壊した後の中国、もしくはこの地域に新たにできる国々全部もしくは一部は、加盟できるかもしれません。結局TPPは、中国包囲網となってしまうでしょう。
そうして米国が入り、メガFTAが拡大すればするほど、そのドミノ効果は大きくなります。アジア太平洋地域の国を巻き込んでTPPが拡大していくと、米国だけでなく、。日本はRCEPで実現しようとした以上のはるか上のことを実現できるのです。日本はこれからもどんどんTPPを拡大すべきです。
それにしても、トランプ氏は良いことをしてくれたと思います。米国が抜けたおかげて、日本がTPPのリーダー役をつとめることができたのです。
米国が旗振り役のTPPだとどうしても、米国の意向をかなり反映した貿易協定になっていた可能性が大きいです。しかし、日本がリーダーとなったことで、それはなくなりました。
米国の覇権主義を嫌う国々にとって、TPPは加入しやすくなったのは間違いありません。後で米国が加入したにしても、日本のリーダー的地位を脅かすことはできないでしょう。これは、覇権によらない、防衛協定として多くまともな国々とっては受け入れやすいものになったと思います。トランプ氏は着せずして、世界の自由貿易に大きな貢献をしたかもしれません。
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