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2018年6月28日木曜日

財政緊縮派とデフレ派の存在が、デフレ脱却の大きな障害に 国債発行と金融緩和が近道だ―【私の論評】10%増税等の緊縮財政は、将来世代のための子育て、教育、生活などの基盤を毀損することに(゚д゚)!

財政緊縮派とデフレ派の存在が、デフレ脱却の大きな障害に 国債発行と金融緩和が近道だ

消費者物価指数の推移

 5月の消費者物価指数が17カ月連続でプラスとなったが、デフレ脱却に進んでいるのか。

 デフレについて、学問上の定義は単純で、「一般物価水準の継続的下落」である。国際通貨基金(IMF)などの国際機関では、一般物価水準は「GDPデフレーター」(消費者物価と企業物価を併せ持つ性格)、持続的下落は「2年以上」を使っている。

 そこで、GDPデフレーターの対前年増減率の推移をみると、1995年以降マイナス傾向になっていて、デフレになったのがわかる。正確に言えば、97年は若干のプラスであるが、その年を除き、2013年までマイナスだった。14年から、1・7、2・1、0・3と3年連続のプラスだったが、17年には▲0・2と再びマイナスに転じてしまった。


 この国際機関の定義に従えば、安倍晋三政権になってから、一時デフレを脱却しかかったが、18年のGDPデフレーター対前年増減率がプラスとしても、デフレ脱却したといえるのは19年以降ということになろう。

 もっとも、金融政策(マクロ経済政策)の目標は雇用を作ることであって、その場合に物価が上がりすぎないようにするためにもインフレ目標がある。

 この基本はマスコミなどでは理解されずに、単にインフレ目標が達成できていないから、リフレ政策は失敗だったとかの半可通な論調がいまだにあるのは残念だ。

 このインフレ目標の基本的な理解の観点からみれば、失業率が下限になって賃金が上がり出せば、その時のインフレ率が低いのはたいした問題ではない。賃金が上がり出せば、その後からインフレ率は上がるからだ。

 このように考えると、これまでの金融政策は方向性としては正しいがその効果はまだ弱く、いずれにしてもデフレ脱却まではあと一歩だ。

 雇用を確保した後、賃金が上がるのがマクロ経済政策の目標である。そのために、金融政策と財政政策によって総需要管理を行う。

 ただし、現実の金融政策では、オペ対象の国債の品不足が深刻になりつつある。そのために金融緩和がやりにくくなっている。これは、これまで本コラムで指摘したことだ。

 そうであれば、財政政策で国債発行して、国債市場での品不足を解消し、同時に財政出動を行えばいい。金融政策でこの国債オペを行い、金融緩和すれば、財政政策と金融政策の同時発動となって、すぐにデフレ脱却できるだろう。

 財務省による財政再建キャンペーンが行き届き、世間では国債発行は悪いものであるとの思い込みが強すぎる。どうしてこんな簡単な政策ができないのか。マスコミを含めてみんな財政緊縮病に罹(かか)っているのではないか。

 と同時に、この政策に対し、財政ファイナンスと批判する「デフレ派」がいる。彼らはハイパーインフレになると煽ってきたが間違っていた。

 財政緊縮派とデフレ派の存在が、デフレ脱却への大きな障害である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】10%増税等の緊縮財政は、将来世代のための子育て、教育、生活などの基盤を毀損することに(゚д゚)!

私達は子どもの頃から「自分のお財布の中にある以上のお金を使ってはならない」と教えられてきました。そうして、家庭を持つようになれば、家計についても、同じように言われてきました。だからそれが政府にも当てはまるのだと霞ヶ関の官僚が言えばすんなりと受け入れてしまいそうになります。しかし、現実はそうではありません。

政府には貨幣(おカネ)を発行することができますが、われわれの一般家庭にはそのような権限はありません。ここが政府と家計の大きな違いです。

そして貨幣をどの程度、あるいはどうやって発行するかというテクニック、つまり金融政策の目標を定めることが国においては重要な事柄です。

支出を切り詰めることが万能薬だと主張する人々、つまり緊縮財政を奉ずる人々(官僚や国会議員、マスコミのほとんどの人々)は、例えば財政赤字を削減すれば金利が下がっていいことが起きると主張しています。しかし、これは歴史的な事実では全く裏付けられていません。

彼らの議論は、国の赤字を削減すれば、消費者は安心し、企業は投資を増やし、「国の国際競争力」を増すというものです。特にお笑いは「非ケインズ効果」です。これは、政府による財政支出の削減や増税が、国の景気やGDPにプラスの影響を与えるという現象のことをいいます。

 人は将来の予測に基づいて行動することから、国の財政赤字が深刻な場合には、財政支出や減税が将来の増税を意識させ、消費を手控えさせる結果を招くとされます。 不況時は財政支出や減税により有効需要を補うべきと主張したケインズの理論と逆の効果です。この「非ケインズ効果」は、古今東西で確かめられたことはありません。

もし仮にこの「非ケインズ効果」が、たとえどのような条件がついたにしても、あるいは理論的にだけでも正しく証明されれば、証明した人は「ノーベル経済学賞」を受賞できることでしょう。それだけ「非ケインズ効果」はありえないことなのです。科学技術にたとえれば、永久機関のようなものかもしれません。

イギリスの経済学者ケインズ

緊縮財政で景気が悪くなり、それでも国民、資産がないただのサラリーマンが喜んで支出を増やすはずだという非ケインズ効果が日本でも生じるという人々は国民がおろかで合理性のかけらもないと考えているに違いありません。

昨年、世界の政治に新風を吹き込んだ英国のコービン労働党党首の主張、カナダのトルドー首相、米国民主党のサンダース氏らの主張はともに緊縮財政をやめようというものでした。

コービン労働党党首

コービン労働党党首といえば、当然のことながら、左派系なのですが、日本の左派系とはかなり異なります。日本の左派系といえば、どの政党もすべて財政緊縮派です。では自民党の議員が全員が反緊縮派であるかといえば、そうではありません。自民党でも、安倍総理とその一部の側近を除けばほとんどが財政緊縮派です。

しかし、先程あげたコービン労働党党首、カナダのトルドー首相、米国民主党のサンダース氏等はもとより、米国をはじめ多くの国々の政治家が緊縮財政に反対しています。また、ノーベル経済学賞を受賞したようなまともな経済学者の中では、景気が悪いとき、デフレのときに緊縮財政をせよと主張する学者など存在しません。

それはなぜでしょうか。景気が悪くなるということもさることながら、もっと大切なことは自国の将来世代の未来が失われてしまうからです。財政削減をすれば、将来の世代に対する子育て、教育、生活の基盤となるインフラ、こうした大切なものが真っ先に切り捨てられ、損なわれてしまうからです。

ギリシャは、EU統合に悪乗りして、借りるべきでないカネを低利で借りて浪費してしまいました。日本は、使うべきお金を政府の政策の失敗で使わずに、まだ返す必要もない借金の返済に充てて不況に陥りました。まったく原因が違います。原因が違えば処方箋ももちろん別でなければなりません。

そもそも、低所得者に重い負担が生じる逆進性がある消費税を増税して社会保障の財源をまかなうという発想自体おかしいのです。2009年の麻生内閣下での税制改正で「3年以内に消費増税法を作ること」が法定されました。

そこで法定されたことが大義名分となって、2012年に民進党、当時野党の自民党、公明党が増税法を可決しました。そうして、この増税法には、景気が悪ければ増税しないという「景気条項」があったにもかかわらず、これも無視され、2014年4月には最終的に増税が行われました。

そうして、増税推進派は「日本経済への影響は軽微」としていましたが、ブログ冒頭の記事にもあるように、2014年4月からの消費税の8%への増税は、個人消費の低迷を招き、日本経済に甚大な悪影響を及ぼしました。そのせいもあり、日本は今でもデフレから完璧に脱却していません。

現状の日本は、ブログ冒頭にもあったように、国債を大量を発行し、金融政策でこの国債オペを行い、金融緩和すれば、財政政策と金融政策の同時発動となって、すぐにデフレ脱却できます。

日本の政治家、官僚、マスコミ、識者のほとんどが財政緊縮派とデフレ派です。しかし、私達は、我が国の将来世代の未来のために、これら多数派を退ける世論を形成し、積極財政が行われるにし、将来の世代に対する子育て、教育、生活の基盤となるインフラを守っていかなけければならないのです。

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2016年5月6日金曜日

日本経済は後半に回復する 増税スキップ&大型景気対策で中国・EUの不安払拭―【私の論評】殺人政策である10%増税見送りは当然!まともな経済対策で日本は再度成長軌道に乗る(゚д゚)!


8%増税は実施直後から大失敗であったことが明白になっていた
昨年末の本コラムの特別号で、今年の経済見通しについて、「年前半は経済の調子が悪いが、7月の参院選の前に消費増税はスキップして大型景気対策を実施するだろうから、年後半には回復する」と書いた。

筆者のメーンシナリオに変更はない。4月の熊本地震という想定外の事態によって、衆参ダブル選挙の可能性は遠のいた。ダブル選なら7月10日しか実施可能日はないが、さすがに熊本地震から3カ月もたたずに実施するのは被災者感情や選挙の事務作業から考えても難しい。

ダブル選でなければ、7月24日に参院選を行えばよく、それなら実施可能な日程ではないか。

いずれにせよ、参院選で、消費増税スキップと大型景気対策について国民の信を問うことに変わりはない。むしろ、熊本地震の補正予算を今国会中に仕上げて、伊勢志摩サミット後に国会を閉じ、参院選を7月24日に行うというスケジュールがより具体的になってきたといえるだろう。

熊本地震に加えて、世界経済の不透明感もあるので、消費増税スキップについては、もはや誰も疑わない既定路線と化しつつある。

中国は相変わらず国内総生産(GDP)統計を粉飾しているようで、もう誰も7%成長していないことを知っている。

英国では6月に欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票が行われる。もし離脱すると、貿易自由化や資本取引自由化の恩恵を受けられなくなり、金融業界をはじめとする産業競争力を落として雇用が激減、経済は壊滅的になる-という意識が人々に広がっている。このため英国のEU離脱の可能性は高くはないが、EU残留を主張するキャメロン首相がパナマ文書問題で政治的にイメージダウンしているので予断を許さない。

年後半には米国の利上げが待ったなしだ。米連邦準備制度理事会(FRB)は世界経済の状況を見て、利上げを急がないスタンスであるが、米国の国内雇用情勢はほぼ完全雇用状態になりつつあるので、いずれ利上げせざるを得なくなる。

米大統領選は、民主党のヒラリー・クリントン氏と共和党のドナルド・トランプ氏の戦いになる可能性があるが、予備選と本選で両者の主張が変化するかどうかがポイントである。特に、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)については両者ともに否定的なスタンスであり、本選でも続くと、TPP交渉がご破算になる恐れもある。そうなると、日本にとってはもったいない話だ。

米国でTPPに否定的な意見が多いのは、逆にいえば日本がうまく交渉してメリットが大きいと考えたほうがいい。

こうした海外の不確定要因に左右されないためには、内需拡大が必要だ。日銀の追加金融緩和と伊勢志摩サミット後の消費増税スキップ、大型景気対策がそろえば、年後半の景気は持ち直すだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】殺人政策である10%増税見送りは当然!まともな経済対策で日本は再度成長軌道に(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事、まったくこの通りです。10%増税見送りは、当然のことです。これを逃せば、8%増税などはるかに上回る、経済の停滞を招くことはあまりにも明らかです。これは、高橋洋一氏が主張するように、最早規定路線です。

もしそれでも実行した場合には、日本経済は破綻し、安倍政権は崩壊します。そうして、10%増税したままでそのまま放置すれば、自民党政権崩壊で、自民党は再び下野することになります。その後は、自民党も弱小政党に成り下がり、当面多数の少数制等が乱立することになり、どの党が政権をとったにしても、長続きせず短命政権に終わることでしょう。

日本は、経済的に停滞するだけはなく、政治的にも、文化的にも大きく停滞し、その破壊力はとどまるところを知らず、日本をかなり弱体化させてしまうことになります。これは、決して脅しでもなんでもなく、10%増税を来春に実行すれば、そうなります。

だからこそ、高橋洋一氏も10%増税見送りもしくは凍結は、「もはや誰も疑わない既定路線と化しつつある」と主張しているのです。こんなときに、増税をすべきという政治家、アナリスト、学者、マスコミなどは、一言でいえば「愚鈍」と言われても、やむを得ないです。事実、愚鈍です。いや、もっとはっきり言わせていただければ「人殺し」です。なぜなら、10%増税などすれば、経済苦を理由に自殺する人が増えます。経済政策の如何によっては、人は死ぬのです。

これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【正論】「欲ない、夢ない、やる気ない」……現代日本の最大の危機そのはこの「3Y」にある 作家・堺屋太一―【私の論評】団塊の世代以上の世代には想像もつかない現代の若者の窮状(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、『経済政策で人は死ぬか』という書籍を紹介させていただきました。その部分のみ以下に引用します。

"
さて、ここで、一冊の書籍を紹介させて頂きたいと思います。
経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

この書籍には、経済政策と死者数と間の相関を調べた内容が記載されています。

さて、日本では、現在アベノミクスの是非が話題になっています。世界中どこでも、不況に陥ると経済政策をどのようにするべきか、議論されます。しかし、結局のところ、どのような政策がいいのでしょう。そして、その決断を、イデオロギーや経済理論だけを頼りに行って、本当に良いのでしょうか。

世界規模の不況に陥ったとき、国ごとに経済政策は異なり、それによって国民の運命も異なる方向に動かされてきました。公衆衛生学者と疫学者である本書の著者は、そのことを利用して政策の優劣を比較しました。つまり、過去の各国の政策選択とその結果のデータを、世界恐慌からソ連崩壊後の不況、アジア通貨危機、そしてサブプライム危機後の大不況まで調査し、比較したのです。

比較の指標は、国民の生死です。政策の違いによって、国の死者数は増えたのか減ったのか、健康状態や平均寿命などがどう変化したかを比較しました。経済政策は、国の借金返済や構造改革、景気刺激など、さまざまな目的で行われますが、そもそも国民に死を強いるようでは元も子もありません。結果はどうだったのでしょうか。

著者らの研究によれば、不況下で危険な「緊縮政策」を選択した影響で増加する死亡数は、まさに驚くべきものです。最も悲惨なのは、ソ連崩壊後のロシアで、1990年代に経済政策の失敗により数百万人の男性が死んだ(主に自殺とアルコール関連の死亡)と考えられるといいます。


アジア通貨危機後にIMFに緊縮財政を強いられたタイでは、感染症対策支出を削らされたせいで、感染症による死亡率が大幅に上昇しました。現在、緊縮財政をとっているギリシャでは、これも対策費の削減によりHIV感染が拡大しているほか、医療費カットで医療制度が崩壊し国民の健康状態はひどく悪化しています。

著者たちは次のように述べています。
民主的な選択は、裏づけのある政策とそうでない政策を見分けることから始まる。特に国民の生死にかかわるようなリスクの高い政策選択においては、判断をイデオロギーや信念に委ねてはいけない。…正しくかつわかりやすいデータや証拠が国民に示されていないなら、予算編成にしても経済政策にしても、国民は政治家に判断を委ねることができない。その意味で、わたしたちはこの本が民主化への第一歩となることを願っている。
私は、本書をきっかけに、政策論争がイデオロギーを離れ、経済理論だけではなく、現実のデータに基づいたものになることを願っています。
"
経済政策がまずければ、死ななくても良い人まで死ぬのです。だからこそ、10%増税は絶対に見送らなければならないのです。

だから、10%増税は当たり前として、その上何をするかというのが次の政策課題になるのです。

そうして、その政策課題はどのようなものにすべきかは、このブログでも何度か掲載してきました。そうして、それは私が思うだけではなく、多くのまともな経済通が当然のこととする政策でもあります。以下にそれを再び掲載します。そうして、これを掲載したときとは、状況が少し異なるので、さらに追加の説明を行います。

1.追加緩和

2%の物価目標も達成がなかなかできていないのですから、追加金融緩和を行い。これを達成する速度をはやめるべきです。イギリスの事例をみてもわかるように物価目標をいっとき4%程度にしても、ハイパーインフレになる可能性はありません。2%などと悠長なこと言っていないで、言っとき4%にするべきと思います。

2.増税延期or凍結 

これは、上記で述べたように絶対に増税などすべきではありません。増税は、緊縮財政の手法であり、本来景気が加熱して、ハイパーインフレなどになりそうなときに行う手段であり、デフレから脱却するときに行う政策ではありません。デフレからの完全脱却を目指すなら、減税や給付金などの積極財政を行うべぎてす

3.20兆円ぐらいの大型補正予算 

日本には、未だ、10兆円のデフレギャプがあります。これを埋めるためには、補正予算3兆円など、焼け石に水です。最低でも10兆円、できれは20兆円の補正予算を組むべぎです。日本にはその能力があります。実際、特別会計には、為替特別会計など、円安の現状では必要のないお金が天文学的に積み上げせられています。これで、20兆円など簡単に捻出できます。ただし、政治決断が必要。

1.の追加緩和については、最近ではいろいろと考慮しなければならないことがでてきました。

特に、現在米財務省は日本を為替の「監視対象」に指定、連休中に一時1ドル=105円台まで円高が進みました。日銀は、4月に追加緩和を見送り、市場を失望させましたが、専門家は今月の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)に合わせて政府と共同で逆襲する可能性を指摘しています。実際そうなるのではないかと思います。

トランプ氏は「円安によって、(米国企業の)キャタピラーは日本のコマツとの競争が難しくなっている」と強調するなど、日本の為替政策を敵視しています。

しかし、トランプ氏の「日本が為替操作している」という見解は全くの事実誤認です。米財務省の為替に関する議会向け報告書でも、日本を監視対象とした一方でこの4年間、日本が為替介入を行っていないと明記しています。


さらに、報告書では、今後の介入を牽制(けんせい)したものの、米国自身が3度にわたる量的緩和を実施しただけに、金融緩和については否定していません。

そもそも、トランプ氏の語るようないわゆ「通貨戦争」のごときは、単なる妄想に過ぎません。いかなる国でも、どこまでも通貨安にもっていこうとすれば、何がおこるかといえば、当然のことながら、インフレに見舞われることになります。だから、どこまでも、通貨安にするなどということは、いずれハイパーインフレを招いていしまうことになりますから、これをいつまでも続けるということはできません。

しかし、日本でこのようなことにならずとも、まだまだ金融緩和ができる余地がかなりあります。米財務省の報告書はあくまで選挙イヤーによくある米国内向けに過ぎないものです。緩和のために買い取る資産も、新規国債の発行はもちろん、外債、地方債、ETF(上場投資信託)などいくらでも、まだまだあります。

2.の増税延期or凍結に関しては、上記で述べたように、これはすでに当然のこととして良いと思います。私は、それどころか、8%増税で大失敗したのですから、当面5%に戻すべきであると思っています。失敗した政策は、そのまま放置しておくのではなく、それに対する手当をすべきです。

3.の20兆円くらいの、大型補正予算も当然のことながら、8%増税の失敗だけではなく、熊本の震災まで発生したことですから、実行すべきです。もっと大きな予算でも良いと思いますが、最低この規模の補正予算を組むべきです。

また、財源としてしては、この時は円安傾向でしたので為替特会をあげました。現在は円高傾向です。しかし、追加金融緩和をすれば、再び円安傾向になります。さらに、現在円高傾向なのに為替介入を行っていません、であればこれは無駄詰みです。一部を使うのなら何も問題はないはずです。

さらに、為替特会でなくても、最近は雇用情勢が良くなっているので、労働特会を当てても良いです。いずれにせよ、財務省そうみせかけたり、やマクロ経済音痴の政治家などが思っているように、日本の財政は逼迫していません。財源は潤沢です。

さて、1の追加緩和と3の大型補正予算すなわち、財政支出の両方を組み合わせた政策を同時に行えば、これはマクロ経済学では周知の事実である、ヘリコプターから現金をばらまくように政府や中央銀行から国民にお金を直接支給する「ヘリコプターマネー」と同様の効果があります。これにより、日本経済はかなりの勢いと、素早さで回復します。

ヘリコプター・マネーのイメージ
さて、8%増税と、最近では日銀が4月に緩和を見送ったのは明らかに失敗でしたた。この教訓を生かして次に上記で示したような、政策をとらないとアベノミクスは終わってしまいます。

私としては、伊勢志摩サミットあたりで、まずは日本がこれからも追加金融緩和を行うこと、10%増税の見送りは無論のこと積極財政に転じることを、公表し、それに先行き不安の他の国々が大賛同し、上記の政策をやりやすい状況にもっていくと思います。

選挙直前にこれを公約として、参院に挑み与党が勝利を収め、秋から上記のような政策を実行し、年末にかけて日本経済は徐々回復し、 年明けから年度末にかけて、回復の勢いを増すことになると思います。

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2016年1月31日日曜日

日銀のマイナス金利 投資・消費の増加につながるか―【私の論評】マイナス金利政策は当然!10%増税では、優先順位を間違えたECBよりも始末が悪いことに(゚д゚)!

日銀のマイナス金利 投資・消費の増加につながるか



日銀は29日、金融機関から預かっている当座預金にマイナス金利を導入する新たな金融緩和策に踏み切り、さらに今後も金利のマイナス幅を拡大する可能性を示唆しました。これを受けて長期金利は過去最低まで急激に下がりましたが、金利の低下が投資や消費の増加につながるかどうか、今後、新たな金融緩和の効果が問われます。

日銀は、金融機関から預かっている当座預金の一部に来月半ばからマイナス金利を導入する、新たな金融緩和策に踏み切ることを決めました。

日銀の黒田総裁は記者会見で、今回の政策のねらいについて「金利全体により強い下押し圧力を加えていく。2%の物価目標をできるだけ早く実現するため導入を決めた」と述べ、世の中の金利全般を一段と下げることで、投資や消費を活発化させることが期待できるとしました。

これを受けて、東京債券市場では29日、長期金利が一時、0.09%と過去最低の水準まで急激に下がり、金利はひとまず、日銀のねらいどおりの反応を示したほか、円安と株高も進みました。

ただ、金利が下がっても企業や個人の資金の需要が高まらなければ、金融機関からの貸し出しなども増えず、投資や消費の増加につながらないおそれもあります。日銀は必要があればマイナス金利の幅を拡大する可能性も示唆していますが、金利の低下を経済の活性化につなげ、日銀が目標とする2%の物価上昇率を達成できるかどうか、新たな金融緩和策の効果が問われることになります。

【私の論評】マイナス金利政策は当然!10%増税では、優先順位を間違えたECBよりも始末が悪いことに(゚д゚)!

今回のゼロ金利について、予め予言をしている人がいました。それは、あの高橋洋一氏です。その予言を掲載した動画を以下に掲載します。


マイナス金利の件は45分あたりから

 この動画は1月28日に収録されたものです。高橋氏としては、29日に日銀が重大発表があるとの発表をした時点で、ゼロ金利はあり得ることとして、この動画の緊急特番ということになったのだと思います。

この動画の中でも、今回の黒田総裁が、マイナス金利を導入しなければ、まともな中央銀行総裁とはいえないということを語っていました。そうして、今回実際にゼロ金利政策を宣言したわけですから、黒田総裁はまともだということです。このあたりのことについては、詳細は上の動画をご覧ください。

このゼロ金利政策、マスコミの経済記者などには意味が良くわからないようです。識者のなかにもとんでない解説をする人がいるので、そんなことに皆さんが幻惑されないように、以下にいくつかの査証(エビデンス)を掲載させていただきます。

そもそも、日銀がマイナス金利政策を宣言する前から、もう日本は実質的にマイナス金利政策をとっているといっても過言ではありませんでした。

すでに、日本銀行は、マイナス金利政策を発表する前からゼロ金利政策を放棄してマイナス金利政策を採用してしまっていました(これって、英文法でいえば過去完了)。その査証を以下に掲載します。


さて、上は、財務省が発表している国債金利情報をグラフにしたものです。昨年の12月の半ば頃から残存期間1年の国債の利回りはマイナスになってしまっていたのです。瞬間的にマイナスになったというのではないのです。それ以来マイナスが継続しまっていたのです。

そして、昨年12月13日には、5年物新発国債の落札利回りがゼロとなったとも報じられてしまっていました。10年物国債にしても、利回りは0.26%まで低下してしまっていました。

国債の利回りがマイナスになるその原因は、日本銀行が市中金融機関から国債を買い入れる場合に、額面以上の価格で購入しているからです。日銀が額面以上の価格で国債を購入すれば、落札利回りはマイナスになります。つまり、市中金融機関は、国債を担保に日銀からマイナス金利でお金を借りてしまっていたのです。

今や市中金融機関は、ゼロ金利どころかマイナス金利で日銀からお金を借りることができる時代に突入しているのです。では、何故そのようなことを日銀はするのでしょうか。

そうでもしなければ、日銀が目標に掲げた国債の買い入れが達成できないからです。そうなると日銀の掲げた物価目標を達成できなくなるからです。

さて、すでに国債のマイナス金利政策を実行している、日銀がさらに今回マイナス金利政策を発表したのにはどんな背景があり、それが日本経済にどのような影響を及ぼすのか以下に解説します。

日銀には銀行の預金口座である「日銀当座預金」があります。この「日銀当座預金」にはこれまで0.1%の金利がついていたのですが、預金の一部にマイナス0.1%の金利、つまり手数料がとられるようになるのです。

日銀はアベノミクス開始以降、銀行などの金融機関から大量の国債を購入していますが、その国債の購入代金は銀行の預金口座である「日銀当座預金」に振り込まれます。しかし、「日銀当座預金」に0.1%の金利がついたままでは、銀行は振り込まれたお金を企業の貸出しにまわすことなく、そのまま放っておくことが考えられます。



しかし、今回のマイナス金利導入により、「日銀当座預金」に利息収入ではなく手数料がかかることになってしまいました。こうなると銀行は利益を確保するために、こぞって企業にお金を貸し出すとか、株式投資をするようになることが考えられます。これがマイナス金利導入の狙いです。

しかし、ユーロ圏では欧州中央銀行のドラギ総裁がマイナス金利政策を実施しましたが、これといってマイナス金利の効果は確認されていません。にもかかわらず、今回黒田総裁がマイナス金利政策を導入したのは、どうしてなのでしょぅか。

その違いは、日本とユーロ圏の量的緩和の「量」にあります。以下の図を見てください。ユーロ圏の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利導入を発表したのは、2014年6月5日。つまり、ECBは本格的な量的緩和を実施して、マネタリーベースが急拡大する前の段階でマイナス金利を導入してしまっていたのです。


ECBのマイナス金利導入は、時期尚早でした。日本の場合は、日銀の金融緩和策によって、「日銀当座預金」に銀行の預金がかなり積み上がった状態になってしまっいるので、EUとは異なり、導入すればそれなりの効果が期待できるというわけです。

これは、高橋洋一氏が動画で指摘していたように、正しい措置であり、黒田日銀総裁は、まともな中央銀行総裁であることが示されたといえると思います。

しかし、だからといって、日本経済は安泰だというわけでもありません。先日も、指摘したように、この先中国経済はしばらくかなり停滞します。アメリカの利上げによって新興国の経済が大ダメージを受けてしまう可能性も大きいです。

さらに、原油安が資源国の経済を直撃しています。また、中東の地政学的リスクも増大しています。これらが日本の経済にどのような悪影響を与えるのか、全く予断を許さない状態です。今後リーマン級の大打撃が日本を再度襲う可能性があります。 

今後の、不測の事態に備えるためにも、日本政府は早急に2016年度の補正予算を組み、金融緩和を拡大して、財政金融両面でさらなる景気対策を施さなければなりません。

10%増税などやっている場合ではありません。まずは、景気回復、デフレ完全脱却が今の日本にとっては最優先課題です。安倍政権にはECBのように政策の優先順位を間違えないようにして欲しいです。もし、10%増税など予定通りに実行してしまえば、ECBの優先順位の誤りどころの話ではありません。

ECBが優先順位を間違えて、マイナス金利政策をやっても、効果が出ないだけで、それ自体が経済に甚大な悪影響を及ぼすわけではありません。しかし、デフレ完全脱却前の、増税は甚大な悪影響を及ぼすのは必定です。そんなことは、私達は8%増税の大失敗ですでに学んでいるはずです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2016年1月14日木曜日

「世界の工場・中国」は終わった リーマン以来の貿易前年割れ…トドメはTPP―【私の論評】世界の工場が消えるだけのはずが、10%増税なら日本経済回復は中国より遅れる(゚д゚)!

「世界の工場・中国」は終わった リーマン以来の貿易前年割れ…トドメはTPP

夕刊フジ

かつて世界の工場と呼ばれた中国だが・・・・
 中国が「世界の工場」と呼ばれた時代は完全に終わった。輸出と輸入を合わせた2015年の貿易総額が前年比8・0%減の3兆9586億ドル(約468兆円)とリーマン・ショック後の09年以来の前年割れ。16年以降もさらなる下振れが予想されている。

15年の輸出は2・8%減。原材料や部品を輸入して安価に組み立て大量輸出する加工貿易で急成長してきた中国だが、人件費高騰や労使紛争の頻発などで競争力が失われ、繊維や衣料品、機械・電子部品など外資系の工場が相次いで中国から撤退した。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が発効すれば有望な輸出拠点となるベトナムなどへのシフトが加速するとみられ、中国の輸出産業は地盤沈下が止まらない。

輸入に至っては14・1%減の1兆6820億ドルと落ち込んだ。不動産市況や株式市場の低迷で内需が低迷、人民元安で輸入価格も上昇した。

輸入の動きは国内総生産(GDP)と連動するといわれ、19日に発表される15年の中国のGDPでは統計数字の信憑(しんぴょう)性も問われている。

貿易失速を受けて、13日の上海株式市場で、総合指数の終値は2015年8月下旬以来、約4カ月半ぶりに終値が3000を下回った。

過去30年間で中国の貿易総額がマイナスとなるのは、アジア通貨危機のあった1998年とリーマン・ショックの影響を受けた2009年の2回しかない。

政府系の中国社会科学院も16年の輸出は前年比0・6%減、輸入は3・0%減と予想しており、中国経済はさらに沈みそうだ。

【私の論評】世界の工場が消えるだけのはずが、10%増税なら日本経済回復は中国より遅れる(゚д゚)!

昨年は、ホンダ が新型原付スクーター「ジョルノ」の生産を中国から日本の熊本製作所に移しました。ホンダのような大手に限らず、中小の日系工場でも、日本生産回帰や東南アジアへの進出など中国生産縮小の動きが進行しつつあります。特に人件費の安さを理由に進出した労働集約型や、中国国内での販売を考慮していない輸出専業型の場合は、撤退さえ選択肢に入れていることでしょう。


食料品、繊維製品など生活必需品の対日輸出に強い、山東省の最低賃金を見てみましょう。この数値が初めて発表されたのは1994年でした。このとき月例の賃金はわずか170元でした。それが2015年3月の改定では1600元となりました。20年で約10倍の上昇です。

しかし、実際にはこの最低賃金で労働者を雇うことは難しいです。外資系なら2000~3000元は必要でしょう。上海、深センでは最低賃金が2000元の大台を初めて超えました。この間、日本市場はデフレが続いており、店頭販売価格はむしろ下落していました。労働コスト的にはとっくに限界に達していたのですが、2012年まで続いていた日本の円高が延命治療の役割を果たしていました。

しかし、アベノミクスによる急速な円安がこのそれ以前の麻薬漬け状態を外した格好になり、東南アジアへの産地移動が急加速しました。続いて日本回帰の動きも始まりました。

この麻薬漬け状態の中国については、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。この記事は、2012年11月4日のものです。まだ、民主党政権だった頃です。この直後に衆院選があり、安倍自民党政権が圧勝しました。
中国は世界で最もストレスの大きい国に―【私の論評】日本の円高・デフレを終わらせ、中国麻薬漬け政策を終わらせ、中国に新社会秩序を打ちたてよ!!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国の麻薬漬け状態に関する部分に関する部分のみ以下にコピペします。
中国を支えているのは為替操作によるキャッチアップ型の経済成長であり、円高とデフレを放置する日本銀行によるものだ。からくりはこうだ。 
慢性的な円高に苦しむ日本企業は、過度な「元安」政策をとる中国に生産拠点を移し、出来上がった製品の一部を逆輸入している。国内で一貫生産するより、わざわざ中国を経由した方がもうかる構造になっているのだ。つまり日銀は、「デフレ政策で日本の産業空洞化を促進し、雇用と技術を中国に貢ぎ続けた」ことになる。 
これ以上、日本経済が中国に振り回されないで済むにはどうしたらいいか。答えは簡単だ。日銀にデフレ政策をいますぐやめさせることである。
・・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・ 
日銀は、はからずも、中国を人間でいえば、麻薬漬けにしてしまったといえるかもしれません。しかし、先に述べたようにこのような麻薬漬け政策をつづけたとしても、日本を、デフレと円高で苦しめるし、中国は麻薬漬け体質からなかなか抜け出しにくくするだけです。日銀の白川総裁も、いい加減、中国麻薬漬け政策など、中国を駄目にしていずれ人民に恨まれるだけであろうことを認識していただきたいものです。 
やはり、日本の円高・デフレを終わらせ、中国麻薬漬け政策をおわらせ、中国に新社会秩序を早期に打ちたてるためにも、日銀のとんでもない金融政策は、一刻もはやく終わらせるべきだと思います。そう思うのは私だけでしようか?
日銀の中国麻薬漬け政策により、金融・経済が過度に蝕まれた中国は、麻薬が切れた今とんでもないことになっています。実体経済は悪化、株安、金融の空洞化と、とんでもない状況です。

そうして以前、中国への進出コンサルタントをしていた連中が、今や中国撤退コンサルタントをしているという有様です。

こんな状況では、もはや中国は世界の工場でいられるわけもありません。

中国の経済モデルはもともと非常に高い貯蓄と非常に低い消費の特徴を持っていました。中国のGDPに占める個人消費の割合は35%に過ぎません。日本をはじめとする先進国は、60%台が普通です。アメリカに至っては、70%台です。

これは中国が非都市部に不完全就業者労働力  の膨大な貯えをもっていた時には可能でした。しかしこの状況は最早一変していて、 中国はいま、 不況に陥ることなく相当大きく成長率を引き下げた体勢に移行するという綱渡りのような課題に直面しています。

合理的に考え得る戦略としては、金融緩和とインフラ支出で時間を稼ぎつつ、一般世帯の購買力を強化する方向に経済改革を進めて行くという方針があったはずでしたが、残念ながら中国が実行したのは同戦略の前半部分だけでした。その結果、一方では負債が急増し、 その多くを保有しているのは規制の杜撰な 『影の銀行』です。 他方で金融崩壊の恐れも出てきました。

そうするとやはり中国の状況は予断を許さぬもののようです。

しかし、中国が世界各国から購入する 「財やサービス」 は、毎年2兆ドルを超えています。とはいいながら、世界は広いです。各国国内総生産合計は、中国のそれを除いても、60兆ドルを超えています。中国の輸入が劇的な落ち込みをみせたとしても、世界全体の支出への衝撃はさほどのことはないと思います。

日本もその例外ではありません。日本の対中輸出はGDPの2.7%程度であり、これが劇的に低下したとしても、あまり大きな影響があるとは考えられません。以下に、各国の対中輸出・輸入がGDPに占める割合のグラフを掲載します。


この程度であれば、日本の内需が拡大したり、他国への輸出に振り向けることにより、たとえ中国の経済が停滞してもその影響は軽微だと考えられます。

金融関係については、どうかといえば、 中国は資本規制を敷いています。そのため株価が急落し、或いは中国内国債のデフォルトが生じた場合でも、直接的な波及効果は極めて小さいです。

だから、中国経済の長期にわたる不振が続いたにしても、さらには、中国の金融がさらに空洞化したにしても、世界に及ぼす影響や、日本に対する影響も軽微で終わることでしょう。日本を含めた、世界の先進国などが、困ることは中国に変わる世界の工場を探すことくらいのものだと思います。

ただし、日本に関しては、一つだけ条件があります。それは、現在日本に厳然として存在する10兆円のデフレギャップを早期に解消するということです。

金融緩和をしたことにより、このギャップも縮まる傾向にはあるのですが、それにしても、このギャップを無視して、8%増税をしてしまった結果、このギャップは縮まることなく温存されたままです。

これを、早目に解消するには、10%増税などとんでもないです。まずは、10%増税は絶対にしないことが、中国の経済悪化を軽微にすることの最低条件です。

そうして、できうれば、3兆円などとチマチマしたことをせずに、10兆円規模の財政政策を早期に打てば、中国経済悪化の悪影響など、なきが如しの程度で済んでしまうことでしょう。

このあたりについて、以前このブログにも詳しく掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
衝撃!中国経済はすでに「マイナス成長」に入っている〜データが語る「第二のリーマン・ショック」―【私の論評】中国経済の悪化をだしに、日本の積極財政を推進せよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、とにかく来年からの10%増税などという馬鹿なことは、絶対にやめるべぎてす。そうすれば、中国の経済悪化の影響など日本にとっては軽微なものになるはずです。

しかし、増税してしまい、さらに中国経済がさらに悪化すれば、またリーマン・ショックのように、日本が一人負けになることは必定です。リーマン・ショックのときは、日本だけが、緩和をしなかっのですが、他国は大規模な金融緩和を行ったため、本来ほんど影響がなかったはずの日本が、震源地のアメリカや、サブプラム・ローンの悪影響をかなり受けたEUなどよりも立ち直りが遅く、一番長くその影響を被ってしまいました。

今回の中国経済の悪化に対しても、他国はこの時期を狙ってわざわざ増税するなどという愚策は絶対しませんから、日本だけが実行するということにでもなれば、またまた、日本がひとり負けという状況になり、震源地の中国よりも回復が遅れる馬鹿げたことにもなりかねません。

私としては、安倍政権はそのような愚策を実行するとはとても思えませんので、先の私の中国経済の悪化が日本に及ぼす影響は軽微という予測が是非ともあたって欲しいものと思っています。




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2015年12月15日火曜日

軽減税率をめぐる攻防ではっきりした財務省主税局の「没落」―【私の論評】財務省の大惨敗によって、さらに10%増税は遠のいた(゚д゚)!

軽減税率をめぐる攻防ではっきりした財務省主税局の「没落」

攻防の第1幕は安倍官邸の「谷垣」不信から始まった
軽減税率をめぐる政府・与党内の攻防はやはり、首相・安倍晋三、官房長官・菅義偉による官邸の勝利に終わった。

浮き彫りになったのは、これまで税の決定権限を握ってきた自民党税制調査会と財務省主税局の没落である。財務事務次官の有力候補だった主税局長・佐藤慎一は官邸の意向に逆らい、自ら次官の目をつぶした。
■官邸の「谷垣」不信

軽減税率をめぐる攻防で大きなヤマが3つあった。第1幕は11月24日午前9時から30分間、自民党本部で行われた安倍と、幹事長・谷垣禎一、税調会長・宮沢洋一との会談だ。

安倍は谷垣と2人で会うつもりでいた。ところが、宮沢が同席し、さらに財務省主税局の幹部が10人近くぞろぞろと入ってきた。安倍はこの異様さに強い警戒感を抱き、慎重に言葉を選んで発言した。
幹事長・谷垣禎一(左)と税調会長・宮沢洋一(左)
谷垣、宮沢の説明を聞いた後、安倍が話したのは、①国民の理解が得られるような内容にする、②事業者の混乱を招かないように配慮する、③安定財源を確保する、の3点のみだった。

ところが、谷垣は会談後の記者会見で、安倍の発言として「いわゆる税と社会保障の枠内で議論してほしい」「ない袖は振れない」と語ったーーと紹介した。また、記者団から「4000億円という指示があったのか」と質問され、「首相もそうお考えだと思う」と答えた。

これに対し、菅は同日午前の記者会見で「社会保障と税一体改革の枠内ということは聞いていない。具体的な指示はしていないと思う」と、谷垣の会見内容を否定した。菅は翌25日の記者会見で「(首相は)具体的な数字は言っていない。首相に確認した」と重ねて否定した。

このころ、官邸の「谷垣不信」が一気に強まった。ある官邸関係者はこう言った。

「谷垣さんは軽減税率の問題を、財務大臣経験者としてしか考えていないのか。公明党、創価学会を含む政権全体の問題として考えてほしい」
■谷垣の方針転換

第2幕は今月9日正午から首相官邸で約1時間20分間行われた、安倍、菅、谷垣3人の会談だ。

この会談を経て、谷垣は財務省寄りの姿勢を一気に転換し、公明党の意向を尊重してまとめる方向にカジを切った。軽減税率の対象品目を「生鮮食料品のみ」から「加工食料品を含む」に拡大し、その額は3400億円から「8000億円~1兆円」になった。

安倍と菅は谷垣に、公明党、なかんずく公明党の母体である創価学会の窮状を詳しく説明した。公明党・創価学会は最近の選挙を「軽減税率実現」に絞って戦っており、軽減税率が導入されてもコンビニに行って適用されるのはバナナだけというのでは「選挙マシンが動かなくなる」と説明した。

そして安倍は「この交渉は決裂させてはならない。なんとかまとめてほしい」と頼んだ。安倍は命令・指示はしておらず、谷垣が納得して自ら動くように仕向けた。会談の最後は次のような会話で終わっている。

谷垣「もう一回やらせてほしい」

安倍「よろしくお願いします」

党総裁、幹事長の立場なら、安倍が指示・命令してもおかしくない。しかし、谷垣本人がその気にならなければうまく運ばず、しこりを残すことになる。かつ、谷垣が理解しなければ、党が官邸主導に反対することにつながる。

谷垣が自分自身でやらなければと思うようになるのに、安倍は1時間20分もの時間をかけたのだった。

■麻生が外食案をつぶす

第3の幕は自公が「加工品を含む1兆円規模」で決着したあと、11日に上がった。自民党から谷垣、宮沢ら、公明党から幹事長・井上義久、税調会長・斉藤鉄夫らが出席した幹部協議で、自民党側が「外食を含む飲食料品全般」を提案した。もし、実現すれば、必要財源がさらに3000億円膨らんで1兆3000億円に上る案だった。

提案は谷垣が行った。出席者によると、これは立場上のことで、必要性を熱心に説いたのは宮沢。宮沢を主税局が支え、「宮沢さんと主税局が一緒になって作った案」(出席者の一人)だった。

外食を含める理由は、①線引きが難しい、②財務相・麻生太郎が答弁で立ち往生しかねない、の2点だった。テークアウト、コンビニのイートイン、出前などに軽減税率を適用するかどうかなど、線引きは難しい。

この提案は麻生がつぶした。12日午後、谷垣と会談した際、「手当済みの4000億円を除き、6000億円の財源を探すのでさえ大変なのに、9000億円もの財源を探すのはもっと大変になる。外食を除くことはヨーロッパでも行っているんだから説明できる」と言って反対した。

もちろん、麻生は安倍、菅と連絡を取っていた。安倍や菅も、かつ公明党・創価学会も外食を含むことを望んではいなかった。財務省では主計局が抑えに回った。

繰り返すが、外食を含む案を主導したのは、軽減税率導入決定で敗北した自民税調と主税局だった。とくに、主税局は財務相が反対する案を懸命に根回ししていたことになる。

官邸主導の決定に対して、反乱を起こしたと見られてもやむを得ない。主税局長である佐藤に対する官邸の視線は厳しい。(敬称略)

田崎 史郎

【私の論評】財務省の大惨敗によって、さらに10%増税は遠のいた(゚д゚)!

上の記事で、軽減税率の対象品目と、必要な財源について、文章だけでは理解しにくいと思いますので、以下に図を掲載します。



今回の、バトルは上記の田崎氏の記事にもあったように、公明党+官邸vs.自民党税調+財務省です。田崎氏自身は、財務省主計局としてますが、無論、これは財務省とみて間違いないです。今回は公明党+官邸が大勝利を収めました。

ただし、上の田崎氏の記事では、このバトルの背後に何があるのか、明確に伝えていません。これが理解できなければ、上記のバトルの意味が全く見えません。

■バトルの背後にあるもの

この背後にあるのは、公明党サイドとしては、来年の参議院議員選挙に向けての選挙対策です。

官邸サイドとしては、なぜ軽減税率対象を広くしたいかといえば、もし消費増税を実施せざるを得なくなった場合でも、できるだけその悪影響を薄めたいという思惑があるからでしょう。おそらく官邸としては、2014年4月からの8%への消費増税に懲りているので、できることなら、2017年4月からの10%への消費増税も避けたいという思惑があるのだと思います。

ただし、安倍首相は、リーマンショックのようなことがない限り増税するともいっているので、増税回避6割、増税4割の二つのシナリオを用意していると思われます。

増税回避へのシナリオは、財務省やその関係者の押さえ込みです。そのため、今回の大勝利は、財務省抑えこみの最初の大勝利になったといえます。

一方、増税実施への対応プランは、ダメージコントロールとしての軽減税率です。このブログでは、つい最近も、7%増税を予定通りに実施すれば、平成18年あたりには、そのとき政権が誰のものであったにしても崩壊の危機に見舞われることを掲載しました。

この崩壊の危機を少しでも低減する一つの方策が、軽減税率対象を広くとることなのです。

自民党税調・財務省が、最後になって外食まで含む案を出してきたのは、低所得者対策という公明党のウリを奪うとともに、加工食品と外食との境界を決める作業が難しいので、事務作業を優先し、何が何でも2017年4月からの消費増税を成し遂げたい、という財務省事務方の希望の合作であろう。

■財務省は、最初からつまづき通しだった

それにしても、今回のバトルでは財務省は最初から大きなつまづきを繰り返してしていました。9月上旬、海外で麻生財務相に、軽減税率の代わりに給付金で対応すると言わせたのだ。大臣が発言するからには、最終決着点でなければならないはずです。

まだ予算編成が始まったばかりの時期に大臣発言でしたが、やはり詰めが甘く、給付案は完全に頓挫してしまいました。そもそも、制度が出来上がっておらず、うまくスタートできるかどうかすらわからないマイナンバーを前提とたのは、誰にでもわかる初歩的ミスとしかいいようがありません。

それでも、軽減税率はできないと財務省は踏んでたようです。軽減税率の導入には、商品ごとに税率や税額を明記した請求書(インボイス)が必要になるのですが、これに経済界は事務が煩瑣になるとして反対すると読んでいたようです。

インボイスは、売り買いする商品それぞれの価格と消費税率、税額を記入するものです。現在は消費税率が一律8%のため請求書に基づいて税額の計算が可能ですが、消費税が複数税率になると対応しきれず、インボイスは不可欠とされていました。

世界の中でも、インボイスがないのは日本の消費税だけです。これが、消費税脱税や益税(消費者が事業者へ支払った消費税のうち事業者から国庫に納入されず、事業者の手元に残る租税利益)の温床ともされ、問題視されていました。

そうした声から、世界と同様にインボイス導入する運びとなり、軽減税率の技術的な障壁が取り除かれました。

それでも、財務省は、学者・エコノミストを使って、高所得者に便益が及び真の弱者対策ではない、弱者対策を行うのであれば給付金、という原則論から軽減税率に反対し続けました。

確かに、この意見は、消費税部分だけを見れば正しいです。ただし、約6000万人いる日本の納税者のうち、申告納税と源泉徴収の比率は1:2くらいで、申告納税は海外と比べて少ないです。このため、給付金を申告と合わせてやりにくいのが実情であり、しかも今回救済すべきは非納税者なので、給付金措置が実際には軽減税率よりも実施しにくいです。

給付金とインボイスに関しては、財務省は完全に読み誤りました。

ただし、安倍首相は、リーマンショックのようなことがない限り増税するといっているので、回避6割、増税4割の二つのシナリオに対応したプランをもっているはずだ。

増税回避への対応プランは、財務省やその関係者の押さえ込みである。一方、増税実施への対応プランは、一つにはダメージコントロールであり、軽減税率対象を広くとるのはそのためす。

自民党税調・財務省が、最後になって外食まで含む案を出してきたのは、低所得者対策という公明党のウリを奪うとともに、加工食品と外食との境界を決める作業が難しいので、事務作業を優先し、何が何でも2017年4月からの消費増税を成し遂げたい、という財務省事務方の希望の合作であろう。

■10%増税は遠のいた

さて、軽減税率を導入したうえで、10%増税をしたとしたらどういうことになるでしょうか。

昨年は、経済対策として3兆円の補正予算が組まれました。その結果がどうなったかといえば、今年の第一四半期はご存知のようにマイナス成長になりました。第二四半期は、速報値ではマイナス、修正値でもほんのわずかのプラスで、とても順調であるとはいえません。

これからみても、1兆円規模の、軽減税率だけではどうにもならないことが、十分予想できます。仮に、経済対策として3兆円上乗せしたとして、4兆円クラスの対策としたらどうなるでしょう。

現状の日本では、10兆円程度のデフレ・ギャップがあるといわれています。これを改善するためには、10兆円以上の対策を実施しなければ焼け石に水です。4兆や、5兆くらいでは、やるなとはいいませんが、あまり効果は期待できません。

この10兆円のデフレ・ギャップが、10%増税のときまで解消されているとはとても思えません。

昨年か、少なくとも今年あたり10兆円くらいの補正予算が実行されていたというなら、軽減税率を織り込んだ10%増税をすれば、なんとかなるかもしれません。しかし、現実はそうではありません。

であれば、やはり、10%増税は見送るべきです。そうして、このようなことは、安倍総理は良く理解されていると思います。

そうして、安倍総理は14日、2017年4月の消費税再引き上げ時に導入する軽減税率をめぐり、国民的な納得が得られるものでなければ、再増税によって「経済に大きなブレーキがかかる可能性がある」との見方を示した上で、自民・公明両党が合意した内容は「最善の結果」と評価しています。

この言葉から、私は安倍総理は、10%増税スキップをやる気満々であると見ています。

やる気まんのんの安倍総理

そうして、ここにきて、民主党が増税反対の狼煙をあげました。民主党の枝野幸男幹事長は9日の記者会見で、消費税増税時に導入する軽減税率制度に関し、社会保障の財源を充てるならば消費税率10%への引き上げに反対する考えを示唆しました。「社会保障と税の一体改革に関する3党合意違反だ。税率引き上げを認められなくなる可能性は高い」と述べました。

枝野氏がなぜこのような批判をするかといえば、財務省が消費税を社会保障目的税化(社会保障財源化)しているからです。しかし、今回、官邸は、財務省の財源論を完全に破りました。

本日、麻生太郎財務相は本日の閣議後記者会見で、酒類・外食を除く食料品に適用する消費税の軽減税率制度の財源が1兆円に上ることについて「(与党で)1年かけて検討していく。安定的な恒久財源確保が必須だ」と述べました。これで、財務省は完膚なきまでに、敗北したと見て間違いありません。枝野氏もびっくり仰天しているかもしれません。

民主党が増税に反対するというのは、10%増税見送りに拍車をかけるものと思います。来年の参議院選挙(衆参両院同時選挙になる可能性も大)で、もし安倍総理が10%増税見送りを公約の中にいれたとしたら、これは選挙の争点ではなくります。

仮に、民主党が増税反対をやめたとて、安倍総理が10%増税見送りを公約にしたとしたら、安倍自民党はさらに有利になります。

今回のは新聞にも軽減税率が適用されるのが決まったようですが、今回の誰の目からみても、財務省の敗北からみて、これは財務省が新聞に飴玉与えたというよりは、官邸側が、あえてリスクを冒さず、新聞を官邸に向ける作戦であると思います。官邸は、自民党税調・財務省の連合軍に完膚なきまでに圧勝しました。新聞はパワーのあるところに、ネタを求めてくるので、官邸は軽減税率のアメ玉を与えたと見るべきでしょう。

今後新聞は、増税に対してどうのような報道をするのか、楽しみです。

いずれにせよ、政治の世界は一寸先は闇ともいわれますから、まだ完璧とは言いがたいですが、予定どおりの10%増税は相当遠のいたとみて、間違いないようです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年11月30日月曜日

「衆参ダブル選」はもはや“前提”状況 自民幹部の相次ぐ発言…支持率も追い風 ―【私の論評】自民党は、衆参同時選挙の公約に、是が非でも10%増税の見送りを加えよ、でなければ地獄をみることになる(゚д゚)!


五郎丸ポーズで集中力を高める?安倍首相=29日、東京都内のホテル

来年夏の「衆参ダブル選」が現実味を帯びてきた。自民党幹部がダブル選の可能性にいち早く言及し、谷垣禎一幹事長も否定しなかったからだ。実際、「ダブル選を想定した」といわれる国会日程が固まるなど、環境は着々と整いつつあるようにも見える。まもなく年末だが、選挙に向かって走り出す政治家も出てきそうだ。

「いろいろな可能性は、そりゃありますよ」

谷垣氏は29日、自民党立党60年記念式典終了後、記者団からダブル選の可能性について聞かれ、否定しなかった。

実は、谷垣発言には前触れがあった。佐藤勉国対委員長が28日、秋田県大仙市で「(選挙活動を)甘くみないで。来年ダブル選があるかもしれない」と1日早く言及していたのだ。幹部の相次ぐ発言が「ダブル選現実論」に拍車をかけているのは間違いない。

政府・与党が、来年1月4日に通常国会を召集する方針を固めたこともダブル選の根拠となっている。

通常国会は法律で150日間と定められている。会期延長しなければ会期末は6月1日となり、この日に衆院を解散すれば「7月10日投開票」で参院選との同日選が可能になるのだ。1月5日以降の招集では日程が合わず、ダブル選は成立しない。国会日程をみれば、ダブル選はもはや“前提”といえる状況だ。

22日投開票の「大阪ダブル選」で大阪維新が2勝し、橋下徹大阪市長の求心力が回復したことも大きい。安倍晋三首相は憲法改正で意気投合する橋下氏に期待しており、ダブル選を仕掛けて橋下氏を国政に引っ張り出そう-という思惑も見え隠れする。

内閣支持率も追い風となりそうだ。日本経済新聞とテレビ東京が27~29日に実施した世論調査で、内閣支持率は49%となり、10月下旬の前回調査から8ポイントも上昇した。共同通信が28、29日に実施した世論調査でも、内閣支持率は48・3%と前回調査より3・5ポイント増で回復傾向は顕著だ。

安倍政権は2017年4月に消費税10%への増税を控えている。衆院解散が増税の直前や直後のタイミングとなると、与党に不利なのは明らかだ。その前に解散を打つタイミングを探るのは当然で、政権を取り巻くあらゆる状況が「ダブル選現実論」を後押ししている。

【私の論評】自民党は、衆参同時選挙の公約に、是が非でも10%増税の見送りを加えよ、でなければ地獄をみることになる(゚д゚)!

確かに安倍内閣の支持率は、あがっています。これはすでに政権成立から2年近くたっていて、過去の内閣と比較すると、かなりの支持率の高さであると思います。さらに、最近では最も人気がないと思われた安保法制の成立を実施したことを考えると、破格の支持率の高さです。


時事通信が6~9日に実施した11月の世論調査によると、安倍内閣の支持率は前月比0・7ポイント増の40.5%で、4カ月ぶりに4割台に回復しました。不支持率は同1.6ポイント減の36.1%。

内閣支持率は8月以降、安全保障関連法に対する批判などが響いて4割を切っていました。安倍晋三首相が今月初めに日韓、日中韓首脳会談を約3年半ぶりに行い、近隣国との関係改善に努めたことなどが

支持率回復につながったとみられます。

安倍内閣が重要政策に掲げる「1億総活躍社会」について聞いたところ、「支持する」は38.0%、「支持しない」は37.5%で、賛否がほぼ拮抗(きっこう)した。

環太平洋連携協定(TPP)が日本経済にどのような影響を与えるかについて、「良い影響」とみる人は20.9%、「悪い影響」は15.8%でした。輸出入それぞれに複雑な利害が絡むため、「どちらとも言えない」が55.3%に上りました。

内閣を支持する理由(複数回答)は、「他に適当な人がいない」が17.1%と最も多く、「リーダーシップがある」12.8%、「首相を信頼する」9.7%と続いた。支持しない理由(同)は、「期待が持てない」17.5%、「首相を信頼できない」15.7%、「政策が駄目」15.6%の順でした。

これだと、確かに自民党にとって、来年の衆参同時w選挙の条件が整ってきたといえると思います。

それしても、w選挙が規定状況になりつつあるとは、頼もしいかぎりです。何度も続いた悪夢のような、短期政権はもうなくなるかもしれません。ただし、そのためには、一つ条件があると思います。

それについては、以前のこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
GDP600兆円実現に必要な消費再増税の見送りと日銀法改正 ―【私の論評】10%増税で、GDP600兆円どころか、安倍政権崩壊は免れない(゚д゚)!
 
記者会見で新しい「三本の矢」を表明した
安倍晋三首相=9月24日、東京・永田町の自民党本部

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に消費税増税の見送りと、日銀法改正が必要であることに関する部分のみコピペします。
自民党総裁に再選された安倍晋三首相が記者会見で、経済に注力するとして、「新3本の矢」が披露された。(1)希望を生み出す強い経済(2)夢を紡ぐ子育て支援(3)安心につながる社会保障-という3項目だ。 
これらの3項目のロジカルな関係をいえば、1番目の「強い経済」がすべてだ。これがうまくできれば、2番目の「子育て支援」と3番目の「社会保障」もうまく進むはずだ。 
こうした中期の経済成長の場合、達成手段は金融政策と財政政策になる。新聞では「旧3本の矢」とかいわれているが、今も有効なはずだ。甘利氏は、2%の物価目標は変わっていないとしている。 
甘利氏は「東京五輪後に達成可能」としているが、これから名目3%成長が続けば、21年度には名目GDPが600兆円に達するという意味である。名目3%は今の政府が掲げている中期目標である。

しかし、政府が掲げる名目3%目標の内訳は、実質2%、インフレ率1%になっていて、インフレ目標2%と矛盾している。さらに、17年4月から消費増税しても成長率への影響は軽微だというのが前提になっている。 
この前提は既に誤りであることがわかっているのに、政府の中期財政試算でも修正されていない。このため、甘利氏がいう東京五輪後に達成可能というのも実は怪しい。 
インフレ目標2%なら名目4%になるはずで、そうであれば東京五輪前年の19年度でほぼ600兆円になる。17年4月からの10%への消費再増税をやらなければ、これはかなり可能性の大きい数字である。 
いまだにデフレ脱却がおぼつかないので、この際、日銀法改正をしたうえでインフレ目標を3%に引き上げるのもアリだ。そうなれば、18年度にほぼ600兆円が実現可能だ。安倍総裁の任期は18年9月までであり、常識的には自分の任期内での目標のはずだ。それを達成するためには、17年の消費再増税の見送りと日銀法改正によるインフレ目標3%が必要となる。
いずれにしても、もし10%増税を平成17年度に、予定通り実行してしまえば、たとえ来年衆参w選挙で自民党が大勝したとしても、GDP600兆円はおろか、平成18年度の政権が安倍政権であろうが、誰の政権であろうが、経済が破滅的な状況になり、政権が崩壊するのは必至とみるべきでしょう。

14年度からの8%増税は大失敗であり、すでに日本経済はリセッション入しているとみるべきことは、先日もこのブロクに掲載したばかりです。17年度の10%は絶対に見送るべきです。

さて、このブログでは、増税など全く必要のないことを繰り返し述べてきました。また、同じように文書で長々と掲載するのは、私自身も疲れますし、ブログの読者の方もそうだと思いますので、以下に最近見た動画を掲載します。



これをご覧いただくと、そそも日本は財政危機にあるわけでもなく、ましてや増税する必要性も全くないことがおわかりになると思います。

このような状況にある日本がわざわざ、8%増税で大失敗したにもかかわらず、再度10%増税すれば、確実に経済がかなり停滞して、とんでもないことになり、自民党政権は崩壊します。それこそ、地獄をみることになります。

安倍総理には是が非でも、衆参両院同時選挙の公約として、しっかりと10%見送りを取り入れるべきです。それも、前回のように、17年4月まで10%増税を見送るなどとするのではなく、数値などで明確に、物価、雇用や、GDPなどの目標を数値化して、その目標が達成できない限り増税を見送るようにすべきです。

それを公約とすれば、さらに自民党は盤石の体制を築くことができるでしょう。PKO法案後の選挙のとき社会党が崩壊して消えたように、安保法案を「戦争法案」などとして、レッテル貼りをした、野党はことごとく自民党に蹴散らされることになります。

しかし、10%増税を予定通りに、実施してしまえば、せっかく選挙に大勝利しても、政権は崩壊し、その後はとんでもないことになり、自民党が再度下野することになります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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