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2019年11月22日金曜日

政府、赤字国債3年ぶり増発へ 10兆補正求める与党も容認見込み―【私の論評】マイナス金利の現時点で、赤字国債発行をためらうな!発行しまくって100兆円基金を創設せよ(゚д゚)!

政府、赤字国債3年ぶり増発へ 10兆補正求める与党も容認見込み


 政府は22日、策定中の令和元年度補正予算案で赤字国債を発行する方向で調整に入った。与党からは、災害復旧や景気の下ぶれリスクなどに対応するため、10兆円規模の財政支出を求める声が強まっており、国債を発行して歳入不足を補う。年度途中で国債を増発すれば3年ぶりとなるが、与党も容認する見込みだ。
 安倍晋三首相は経済対策の策定を指示しており、補正予算案と2年度予算案で必要経費を手当てする。具体的には、台風災害からの復旧・復興▽大規模災害に備えたインフラ整備▽日米貿易協定の発効に向けた国内の農業対策▽来年の東京五輪後に備えた経済活性化策-などが挙がっている。
 与党内では大型補正を求める声が相次いでいる。
 自民党の世耕弘成参院幹事長は22日の記者会見で、補正予算について、国の直接の財政支出である「真水」で10兆円、事業費で20兆円規模が必要だとの認識を示した。さらに、中小企業のIT化支援などの施策を挙げ、「未来への投資はたくさんある。(赤字国債の)発行を躊躇(ちゅうちょ)すべきではない」と強調した。
 自民党の二階俊博、公明党の斉藤鉄夫両幹事長も20日、補正予算は真水で10兆円を求めることで一致。自民党は26日に岸田文雄政調会長のもとで経済対策の要望をとりまとめる予定だ。
 政府の元年度税収は企業業績の悪化などを受け、当初の見通しを下回る可能性がある。このため、補正予算は建設国債などと合わせ、赤字国債で歳入不足を補う方向になった。
【私の論評】マイナス金利の現時点で、赤字国債発行をためらうな!発行しまくって100兆円基金を創設せよ(゚д゚)!
日本では、赤字国債というと、「将来世代へのつけ」とドヤ顔で語る、愚か者が、政治家や官僚、識者といわれる人まで大勢います。嘆かわしいことです。行政の根幹部分ともいえる、財政についてこれほど理解度が低い人々が、政治家、官僚、識者であるいう日本は本当に不幸な国かもしれません。


このブログでは、過去もこれは間違いということを掲載してきましたが、本日もその理論について掲載します。

政府が財政支出を行い、それを税ではなく赤字国債の発行で賄うとします。つまり、政府が債務を持つとします。そして、政府はその債務を、将来のある時点に、税によって返済するとします。
このような単純な想定で考えた場合、増税が先延ばしされればされるほど、財政支出から便益を受ける世代と、それを税によって負担する世代が引き離されてしまうことになってしまいます。これが、通説的な意味での「政府債務の将来世代負担」です。
経済をモデル化する一つの枠組みに、若年と老年といった年齢層が異なる複数の世代が各時点で重複して存在しているという「世代重複モデル」と呼ばれるものがあります。政府債務の将来世代負担論は、この枠組みを用いるのが最も考えやすいです。
そこで、仮に老年世代の寿命が尽きたあとに増税が行われるとすれば、彼らは税という「負担」をまったく負うことなく、財政支出の便益だけを享受できることになります。そうして、その税負担はすべてそれ以降の若年世代が負うことになります。
つまり、世代重複モデル的に考えた場合には、増税が先になればなるほど「現在および将来の若い世代」の負担が増えます。それは要するに、老年の残り寿命が若年のそれよりも短いからです。
老年は、その残り寿命が短ければ短いほど、自らは税負担を免れ、それをより若い世代に押し付ける可能性が強まります。その意味で、この政府債務の将来世代負担論は、「老年世代の食い逃げ」論とも言い換えることができます。
こうした通説的な政府債務の将来世代負担論に対しては、よく知られた反論が存在します。それは、初期ケインジアンを代表する経済学者の一人であったアバ・ラーナーによる、政府債務将来世代負担への否定論であす("The Burden of the National Debt," in Lloyd A. Metzler et al. eds., Income, Employment and Public Policy, Essays in Honour of Alvin Hanson, 1948, W. W. Norton)。

このラーナーの議論の結論は、「国債が海外において消化される場合には、その負担は将来世代に転嫁されるのですが、国債が国内で消化される場合には、負担の将来世代への転嫁は存在しない」というものでした。ラーナーによれば、租税の徴収と国債の償還が一国内で完結している場合には、それは単に国内での所得移転にすぎないというのです。ラーナーはそれについて、以下のように述べています。
もしわれわれの子供たちや孫たちが政府債務の返済をしなければならないとしても、その支払いを受けるのは子供たちや孫たちであって、それ以外の誰でもない。彼らをすべてひとまとまりにして考えた場合には、彼らは国債の償還によってより豊かになっているわけでもなければ、債務の支払いによってより貧しくなっているわけでもないのである(上掲書p.256)。
このラーナーの議論には、いくつか注意すべきポイントが存在します。第一に、ここで言われている「将来世代」は、世代重複モデル的な把握ではなく、将来のある時点に存在する人々を老若含めてひとまとまりにしたものとして考えられているのです。

つまり、「1950年生まれ世代」とか「2000年生まれ世代」という区分ではなく、「1950年に生存していた世代」とか「2000年に生存していた世代」といったような世代区分が想定されているのです。

第二に、ラーナーの議論における「負担」は、単に税負担を意味するのではなく、「国民全体の消費可能性の減少」として考えられています。ラーナーは、赤字財政政策の結果としての「負担」は、上の意味での将来世代の経済厚生あるいは消費可能性が全体として低下した場合においてのみ生じると考えます。そこでの焦点は、将来世代の所得や支出が現世代の選択によって低下させられているのか否かです。

たとえば、戦争の費用を国債発行で賄い、その国債をすべて自国民が購入したとします。その場合、現世代の国民は国債購入のために自らの支出を切り詰めるという「負担」を既に被っているので、将来世代の国民が支出を切り詰める必要はないです。

将来世代は単に、戦費負担を一時的に引き受けてくれた国債保有者への見返りとして、増税による国債償還という形で、より大きな所得の分け前を提供すればよいのです。それは、純粋に国内的な所得分配問題です。

それに対して、戦費が外債の発行によって賄われる場合には、現世代は戦争だからといって支出を切り詰める必要はないです。戦争のための支出は、現世代の国民の耐乏によってではなく、その時代の他国民の耐乏によって実現されているからです。ただし、将来世代はその見返りとして、増税によって自らの支出を切り詰めて他国民に債務を返済する必要があります。

つまり、将来世代の消費可能性は、現世代が国債を購入してその支出を自ら負担するのか、国債を購入せずに海外からの借り入れに頼るのかによって異なります。前者の場合には将来世代の負担は発生しないのですが、後者の場合にはそれが発生します。これが、ラーナーが明らかにした「負担」問題の本質です。

このラーナーの議論は、政府債務負担問題についてのありがちな誤解を払拭する上では、大きな意義を持っています。人々はしばしば、赤字財政によって生じる政府債務に関して、家計が持つ債務と同じように「将来の可処分所得がその分だけ減ってしまう」かのように考えがちです。それは、財政赤字が外債によって賄われている場合にはその通りですが、自国の国債によって賄われている場合にはそうとはいえません。

というのは、人々の消費可能性は常にその時点での生産と所得のみによって制約されているのであり、政府債務や税負担の大きさとは基本的に無関係だからです。政府債務がどれだけ大きくても、それが国内で完結している限り、必ずそれと同じだけの債権保有者が存在するのですから、その債務は一国全体ではすべてネットアウトされるのです。


他方で、このラーナーの議論には、一つの大きな問題点が存在します。それは、「赤字国債の発行が将来時点における一国の消費可能性そのものを縮小させる」可能性を十分に考慮していない点です。

一般には、政府がその支出を赤字国債の発行によって賄えば、資本市場が逼迫して金利が上昇するか、対外借り入れが増加して経常収支赤字が拡大するか、あるいはその両方が生じます。


1980年前半にアメリカのロナルド・レーガン政権は、レーガノミクスの名の下に大規模な所得減税政策を行ったのですが、その時に生じたのが、この金利上昇と経常収支赤字の拡大でした。

金利の上昇とは民間投資がクラウディングアウトされたことを意味し、それは一国の将来の生産可能性が縮小したことを意味しますから、一国の将来の消費可能性はその分だけ縮小します。また、外債に関する上の議論から明らかなように、一国の対外借り入れの増加とは、将来世代の負担そのものです。

ただし、赤字国債の発行が民間投資減少や経常収支赤字拡大をもたらすその程度は、経済が完全雇用にあるか不完全雇用にあるかで大きく異なります。所得の拡大余地が存在しない完全雇用経済では、国債発行によって政府が民間需要を奪えば、それは即座に民間投資のクラウディングアウトや海外からの借り入れ増加につながります。

しかし、ケインズ的な財政乗数モデル(45度線モデル)が示すように、不完全雇用経済では、国債発行による政府支出の増加によって所得それ自体が拡大するため、貯蓄も同時に拡大します。その結果、金利上昇や経常収支赤字拡大は完全雇用時よりも抑制されます。

財政定数モデル

つまり、赤字財政政策による「将来世代の負担」の程度は、不完全雇用時は完全雇用時よりも小さくなります。その意味で、「赤字国債発行による将来世代への負担転嫁は存在しない」というラーナー命題がより高い妥当性を持つのは、財政赤字拡大がそれほど大きな投資減少や対外借り入れ拡大に結びつかないような不完全雇用経済においてなのです。

ラーナーの議論の最も重要なポイントは、「将来の世代の経済厚生にとって重要なのは、将来において十分な生産と所得が存在することであり、政府債務の多寡ではない」という点にあります。仮に早期の増税によってより若い世代が負う税負担が多少減ったとしても、それによって生産と所得それ自体が減ってしまっては、まったく本末転倒なのです。そして、「失われた20年」とも言われるバブル崩壊後の日本経済においては、まさしくその本末転倒が生じていたのです。


日本経済の長期デフレ化をもたらした一つの大きな契機は、橋本龍太郎政権が行った1997年の消費税増税でした。そして、それ以降の長期デフレ不況の中で最も痛めつけられてきたのは、ロスト・ジェネレーションとも呼ばれている、その当時の若年層でした。そのツケはきわめて大きく、それは単に彼ら世代の勤労意欲や技能形成の毀損には留まらず、日本の少子化といった問題にまで及んでいます。

結果としては、この早まった消費税増税は、若い世代の所得稼得能力を将来にわたって阻害しただけでなく、デフレ不況の長期化による政府財政の悪化をもたらし、将来世代が負うことになる税負担をより一層増やしてしまったのです。


つまり、「将来世代の負担軽減」を旗印に行われた消費税増税は、皮肉にも彼ら世代に対して、所得稼得能力の毀損と税負担の増加という二重の負担を押し付けるものとなってしまったのです。

この1990年代後半以降の日本経済は、恒常的なデフレと高失業の状態にありました。つまり、一貫して不完全雇用の状態にあった。そして、小渕恵三政権時のような大規模な赤字財政政策が実行された時期においてさえ、国債金利はきわめて低く保たれ、大きな経常収支黒字が維持され続けてきました。これは、赤字財政による将来世代への負担転嫁は存在しないというラーナー命題が、ほぼ字義通りに当てはまっていたことを意味しています。

それとは逆に、日本で行われた不況下の増税は、若い世代が将来的に負う負担を減らすのではなく、むしろそれを増やしてきまし。それは、不況下の増税がとりわけ若い世代の雇用と所得に大きな影響を及ぼすものである以上、まったく当然のことでした。

結局のところ、経済が不完全雇用である限り、職からはじき出されがちな若い世代の雇用の確保の方が、彼らへの多少の税負担軽減よりもはるかに優先度が高いということになるのです。

ラーナーの理論は無論現在の日本にもあてはまっています。しかし、政府は数度にわたり増税を行い、とうとう10%増税まで実行してしまいました。本来は、増税などせずに、証国債を発行すべきだったのです。

小渕恵三政権時のような大規模な赤字財政政策が実行された時期においてさえ、国債金利はきわめて低かったのですが、現在国債の金利はマイナスです。

金利がマイナスということは、政府が国債でお金を借りると、将来つけを払わなくて良いどころか、余分にお金がもらえるということです。この機会を利用して国債がゼロになるまで、無制限でどんどん発行すべきときなのです。それについては、このブログでも以前掲載したことがあります。
残り3週間!「消費増税で日本沈没」を防ぐ仰天の経済政策がこれだ―【私の論評】消費税増税は財務省の日本国民に対する重大な背信行為(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部のみ以下に引用します。
財務省がゼロ金利まで国債無制限発行に乗り出せば、日銀の金融緩和効果はさらに高められる。しかも、得た財源で景気対策を行えば、まさに財政・金融一体政策となり、目先の消費増税ショックを回避できる可能性も出てくる。しかも、金利正常化で金融機関支援にもなる。 
逆にいえば、こうした「美味しい」金利環境を財務省が見過ごし、金利ゼロまでの無制限国債発行を行わないとすれば、それは彼らが増税しか頭にない「無能官庁」であることの証明といえる。
上では、ラーナーの理論を詳細に印してきましたが、このようなことを全く知らなくても、国債の金利がマイナスであるということは、国債を発行しまくれば、確実に政府は儲けられることになるのは明らかです。 金利がゼロになるくらいまで発行し続ければ良いのです。高橋洋一の試算によれば、金利がゼロを超えないで発行できるのは、103兆円だとしています。

にもかかわらず、たった10兆円など、本当に微々たるものです。このチャンスを生かし切るためには、もっともっと国債を発行すべきなのです。




私は、高橋洋一氏に大賛成です。国債の金利がマイナスなのですから、どんどん発行して、10兆円などとチマチマしたことをせずに、それこそ100兆円の基金でも設けて、それを用いて、景気対策、自然災害対策、安全保証、貧困対策などをどんどん実行しまくれば良いのです。

そうすれば、日本の令和年間は平成年間のようにデフレではなくなり、緩やかなインフレで、成長が期待できます。たとえ、そのようなことをしても、将来の世代につけを回すことには絶対にならないのですから、このチャンスをみすみす逃す手はないのです。

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2019年10月20日日曜日

EXCLUSIVE-緩和必要なら短中期金利を「確実に」引き下げ=黒田日銀総裁―【私の論評】いま日銀が取り組むべきは、マイナス金利の深堀、構造不況業種の銀行などに配慮するな(゚д゚)!

EXCLUSIVE-緩和必要なら短中期金利を「確実に」引き下げ=黒田日銀総裁

黒田日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は19日、ロイターのインタビューに応じ、追加の金融緩和が必要になれば短期・中期の金利を「確実に」(certainly) 引き下げると語り、高まる海外経済のリスクに対し、マイナス金利の深堀りが主要な選択肢との考えを示した。

また、市場が大きく動けば現状の枠組みでも上場投資信託(ETF)の買い入れを増やすことは可能と述べ、景気に悪影響を与えかねない株価下落に対応する準備があることを示唆した。

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議出席のため、米ワシントンを訪れている黒田総裁はロイターに対し、「世界経済の見通しは、総じてより活発さに欠けている。成長が回復する時期は幾分後ずれしている」と語った。

その上で「もし追加の金融緩和が必要なら、確実に短期・中期の金利を引き下げる。超長期金利の低下は望まない」と述べた。

黒田総裁のこうした発言は、米中貿易摩擦と世界的な需要の落ち込みに対する日銀の懸念を裏付ける。市場関係者の間では、こうした海外経済の減速を受け、日銀が10月の金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るとの観測が出ている。

さらに黒田総裁の発言は、緩和に踏み切る場合、短期金利を一段と引き下げ、マイナス金利を深堀りする可能性が最も高いことも強く示している。

黒田総裁は、短期・中期金利の引き下げは経済にプラスに作用する可能性がある一方、超長期ゾーンを過度に引き下げると、年金や生命保険の運用に悪影響を与え、消費者心理を冷やしかねないと語った。

日銀はイールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組みの下、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導している。国債とともに、ETFなどのリスク資産も購入している。

日銀が前回の会合で、海外リスクの高まりを警告し、政策対応に踏み切る可能性を示唆したことで、市場では日銀が10月30、31日の金融政策決定会合で追加緩和するのではとの観測が強まっている。

10月会合で緩和が必要なほど海外のリスクは高まっているか、との問いに黒田総裁は「確定的に言うのは少々難しい」と答えた。

黒田総裁は、米中協議に多少の進展が見られる一方、対立は続く可能性があり、英国の欧州連合(EU)離脱の先行きもまだ不確実だ、と指摘。「世界経済の下振れリスクが非常に高まったとか、非常に縮小したとか言うことはできない。リスクの高い状況が続くと思う」と語った。

そのような海外リスクと国際通貨基金(IMF)による世界経済見通しの下方修正は、日銀の日本経済の見通しに影響を与えるとも付け加えた。

黒田総裁は、2%の物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる場合、日銀はちゅうちょせず金融緩和するという従来の見解を繰り返したが、いつ行動するかについて前もってアイデアがあるわけではないと述べた。

「あらかじめ政策を決めていることはない。すべて経済データ次第だ」とし、今月の政策決定は既定路線ではないと示唆した。

日銀は追加緩和する場合の政策オプションとして、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、マネタリーベース拡大ペースの加速の4つがあるとしてきた。

黒田総裁はマイナス金利の深掘りが主要なオプションの1つだと発言してきたが、アナリストらはマイナス金利のさらなる低下は地方銀行の資金繰りを悪化させ、消費者マインドを傷めると警告している。

マイナス金利深掘り以外ではどんな政策ツールがあるかとの質問に黒田総裁は「いくつかのオプションの組み合わせや応用がある」と指摘したが、詳細は語らなかった。

「資産買い入れプログラムを拡大することもできる。われわれの資産買い入れプログラムは長期国債だけでなくETFなども含む」と述べ、「金融緩和によって経済に影響を与える様々なツールがある」とした。

日銀は現在の資産買い入れプログラムの下で、保有残高が年間6兆円のペースで増えるよう、ETF買い入れを行っており、市場の状況に応じてそのペースは変動するとしている。

黒田総裁は「われわれのETF買い入れは非常に柔軟だ。現在の制度の下でも、必要ならETFの買い入れを大幅に増やすこともできる」と発言。年間6兆円のペースで買い入れを増やすという現在のコミットメントの下で、ペースを拡大することも可能との考えを示した。

インタビューは英語で行われました。

【私の論評】いま日銀が取り組むべきは、マイナス金利の深堀、構造不況業種の銀行などに配慮するな(゚д゚)!

現状、安倍政権は経済成長を最優先させることに力点を置いていないとみられ、それが引き起こすであろう経済情勢の変化が政権の地盤を揺るがしかねないですす。このリスクは、すでに金融市場の価格形成に反映されています。

日本株の日々の値動きは、米国株市場にほぼ連動して動いています。ただ、2018年から米国と比べて日本株はアンダーパフォームし、2018年初をピークに日本株(TOPIX、東証株価指数)が緩やかな下落基調にあります。日本の経済政策がうまく作用せず、経済が冴えない状況が続いていることが最大の背景です。

株価指数ヒストリカルグラフ -TOPIX (東証株価指数)- 週足チャート

経済最優先を掲げていた安倍政権の政策が2018年からはっきり転換したことの象徴としては、今年10月の消費増税を決断し、財政政策が明確に緊縮方向に転じたことです。


2%インフレという経済正常化を実現する前に財政政策を逆噴射させるのは、2014年の消費増税と同様で、成長率を押し下げてデフレ圧力を高める政策対応以外の何ものでもありません。

もちろん、消費増税への対応政策として補正予算策定などが検討されています。3兆~5兆円規模の補正予算などの手当てが想定されますが、可処分所得の伸びが極めて低い中で、2兆円を上回る家計に対するネットの増税負担への手当てとして十分な対応はほとんど見当たりません。

このため、2020年にかけて個人消費を中心に成長率は大きく減速することになるでしょう。

また、安倍首相は新設する検討会議において、「全世代社会保障改革」に全力で取り組む、としています。新たな検討会議での議論は、社会保障制度や税制の将来の姿につながるという意味では重要でしょうが、長期的な政策枠組みの話がメインとなり、予想される景気減速への対応には直結していません。

他国に目を転じると、米国や欧州などほとんどの国で、経済成長の下振れリスクが高まりインフレが停滞する中、経済成長率を押し上げる拡張的な経済政策を行っています。

米国では、ドナルド・トランプ大統領が議会と財政合意にこぎ着け、2020年までの歳出の上限を引き上げました。フランスは4月に減税などを行い、EU離脱を控えた英国ではボリス・ジョンソン首相が政府債務を拡大させる大規模な財政政策を表明しています。そしてドイツでも、景気低迷を受けて、減税などの財政政策についての議論が活発になっています。

ジョンソン英首相(左)とトランプ米大統領(右)

マクロ安定化政策が各国の経済成長率を左右し、それが株式市場のパフォーマンスにも影響します。デフレ脱却の途上にあり、各国と比べても成長率を押し上げる経済政策が必要である日本だけが緊縮的な経済政策を行っていることへの、投資家の不信感はかなり大きいと思われます。今後景気が減速する中で、この不信感は強まるとみています。

緊縮的な経済政策は、財政政策だけではなく、日本銀行の金融政策についても同様です。

現状、米連邦準備制度理事会(FRB)が2019年7月から利下げに転じる中で、新興国を含めたほとんどの中央銀行が金融緩和を強めています。こうした状況下、インフレ目標の実現が先送りされる中で日銀が金融政策の現状維持を続けていることは、円高を引き起こし、金融引き締め的に作用しています。

2%インフレ目標の達成可能性が低下する中で日銀が同じ政策を続けているのは、安倍政権と足並みをそろえ、経済軽視の政策を行っているからかもしれません。いわゆる「金融緩和の副作用」なるものが、少し前まで声高に叫ばれていましたが、具体的なものはありませんでした、さらに最近はこの副作用という声が小さくなってきたようです。

マイナス金利政策はこれを続けることで政府による国債発行を増やして、財政政策を拡張することをサポートしているともいえますが、その必要性を政府に強く訴えることはできるでしょう。そして金融政策についても、円高リスクを低下させるために、マイナス金利の深掘りが有力な金融緩和のオプションが必要になるでしょう。

マイナス金利に関しては、銀行関係者は銀行の利益がなくなるとしして、反対していますが、日銀はこのような銀行関係者の声に耳を傾けている時なのでしょうか。

そもそも、銀行はすでに構造不況牛酒です。銀行の9割が消え、銀行員は99%リストラされるという近未来像は、暴論でもなければ、絵空事でもありません。そのようなこと、私自身は肌身で感じます。なぜなら、最近では従来のように、金融機関に足を運ぶことがほとんどなくなったからです。

銀行の不振を伝えるテレビ報道。銀行はもはや構造不況業種なのだ。

銀行業界が抱えるさまざまな問題をすべて解決するための方法は、1つしかありません。
それは、銀行業務から人を排除することです。

これで銀行が抱えているあらゆる問題は解決し、弱点がすべて強みになるかもしれないのです。

バブル崩壊やリーマンショックなど、銀行業界はこれまで数々の金融危機を乗り越えてきましたが、それらとは質が異なり、より深刻な危機が襲いかかっています。

地銀の大半は赤字続き、メガバンクもこぞって数千人・万単位の人員削減や、支店・ATM網の統廃合に乗り出しています。

それだけではありません。銀行の存在意義そのものが根底から揺らいでいます。AIやフィンテックといった金融技術の進化によって、銀行業務の独占が崩れ始めているのです。

銀行業務そのものが「消える」可能性が高いです。

特に資金決済など、伝統的に銀行が担ってきた業務は、急速に新たな仕組みに置き換わりつつあります。

ブロックチェーンと呼ばれるシステム上の帳簿技術や、それを使ったビットコインなど仮想通貨が広まれば、ますます伝統的な銀行業務は消えていきます。

これからほんの数年で、金融業界が一変する可能性を秘めているのです。そのような大変化のさだ中にある日本の金融業界に対して、低金利の深堀をしなければ、旧態依然とした銀行の体質を温存するだけとなります。

日銀が、マイナス金利の深堀をしないで、旧態依然とした金融機関を守ったつもりであっても、金融機関の革新を遅らせ、結局どこかの金融機関に天下りできるだろうという日銀官僚の目論見はことごとく外れて、銀行のほとんどは消滅しているかもしれません。

あるいは、首尾よく天下りできたとしても、直後に消滅などといこともありえます。

そのような不確かな未来にかけるよりも、現在日銀は、有利な金融緩和のオプションとして、大多数の日本国民のために、マイナス金利の深堀を実施すべきです。さらに、量的金融緩和にも果敢に取り組むべきです。

マイナス金利の深堀りが主要な選択肢との考えを示すという悠長なことを言わずに、明日からでも実行していただきたいです。

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2019年9月5日木曜日

長期金利マイナスの明と暗 金融機関の経営に悪影響も…インフラ整備の絶好のチャンスに―【私の論評】日本は財政破綻するとされマイナス金利なのに、なぜ日本の投資家は日本国債を買い続けるのか?

長期金利マイナスの明と暗 金融機関の経営に悪影響も…インフラ整備の絶好のチャンスに

国債市場で8月29日、長期金利の指標となる新発10年債の終値利回りが、マイナス0・290%となった。2016年7月下旬以来、約3年1カ月ぶりの低水準で、過去最低のマイナス0・300%に迫った。その後はややマイナス幅を縮小しているが、長期金利のマイナスが拡大した背景は何か、経済にどのような影響を与えるのか。

 イールドカーブ(期間別の金利)を見てみよう。8月30日の国債利回りは6カ月がマイナス0・280%、1年がマイナス0・263%、2年がマイナス0・304%、7年がマイナス0・375%、10年がマイナス0・273%だった。



 これに対し、1年前は6カ月がマイナス0・140%、1年がマイナス0・111%、2年がマイナス0・108%、7年が0・019%、10年が0・114%。

 つまり、1年前は順イールド(長期金利が短期金利を上回る)だったのが、今や7年までは逆イールドになっている。

 米国では、2年と10年の金利が逆転すると、景気の先行きが怪しい兆候といわれている。日本でみると、形式的には、2年と10年とで金利逆転はないが、2年と7年とではかなりの金利逆転になっている。

 一般論として、長期金利は将来の短期金利の積み合わせになっている。2年金利は1年金利と1年後の1年金利、3年金利は2年金利と2年後の1年金利によって決まる。つまり、10年金利は、今の1年金利、1年後の1年金利、2年後の1年金利…9年後の1年金利によって決まる。10年金利が今の1年金利より低いというのは、これからの1年金利が今より低いと予想されることを意味する。

 日本経済に当てはめると、今後7年間は景気の先行きが明るくないとなる。少なくとも1年前は、そこまで先行きの不安はなかったが、不透明感がかなり増しているというわけだ。

 その原因は、(1)米中貿易戦争の激化(2)10月末の英国の合意なき欧州連合(EU)離脱(3)ホルムズ海峡の不安(4)日韓関係の泥沼化(5)日本の10月からの消費増税-が考えられる。

 長期金利のマイナスそれ自体は、金融機関経営にとっては、利ざやが取れないので悪影響がある。しかし、実体経済にとっては、金利負担なしで長期資金が借りられるので設備投資の絶好のチャンスだ。不動産投資や住宅投資はかなり良好である。

 政府は、この機会にインフラ整備をどんどん行ったほうがいい。長期金利がマイナスというのは、ほぼ全てのインフラ投資について、費用対効果を算定すれば、投資が正当化できることを意味する。

 具体的にみると、南海トラフ巨大地震や首都直下地震は確実にやってくるので、今の時期に防災対策投資を行うべきだ。さらに、教育、研究開発や国防等でも、政府は国債をもっと多く発行し、それらの施策の費用とすべきである。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本は財政破綻するとされマイナス金利なのに、なぜ日本の投資家は日本国債を買い続けるのか?

上の記事は、高橋洋一氏の解説は、理解しやすく、かつ必要十分であり、これに対して何か付け加えることなどおこがましくてできません。

そこで、このブログでは、もっと根源的というか、基礎的なことを掲載しようと思います。そもそも、日本国債はマイナス金利なのになぜ購入されるかということを掲載します。日本の国債がマイナス金利でも購入されるということがなければ、当然のことながら上の高橋洋一の主張も成り立ちません。

一般に日本政府は巨額の財政赤字を毎年計上しているとされています。これは、このブログでは過去に何度も解説してきたので、このブログの読者なら、財務省の嘘であることはご存知だと思います。

その理屈は、財務省が指摘する国の借金とは、政府の負債のみを言っているだけであって、そのため、借金が1103兆円という莫大な金額に膨れ上がっているとされています。現在税収等が62兆円程度ですから、その18倍の借金を抱えている計算になるとされています。

昨年の新聞記事より。まるで、財務省の広告塔のよう。

ところが、世界で一番資産を持っている、日本政府の資産を計算に入れる相殺すると、政府の借金はトータルでかなり少なくなり、これであると米国や英国などより、良いということになります。さらに、日本政府と日本銀行(日本の中央銀行)をトータルした統合政府ベースでいうと、すでに財政再建は終了したと言っても良いような状況です。

統合政府ベースで比較しても、無論日本政府の財務状況は、米国や英国、その他諸外国の財務状況と比較してもかなり良い水準にあります。このあたりは、ここで解説していると長くなってしまうので、過去のこのブログの記事を参照していただきたいと思います。

しかし、財務省が嘘を吐きつづけ、何が何でも増税しようとしているので、そのことをはっきり認識している人は金融関係の人でも少ないようです。一般の人ではなおさらです。

そこで、投資家や金融機関の中にも「借金が返済できそうな気がしないので、日本政府は、将来いつかは破産するのだろう」と考えている人は多いはずです。にもかかわらず、投資家や金融機関は喜んで日本国債を買っているのです。ゼロ金利や、マイナス金利ても買っているのです。
それはなぜかといえば、結論から言ってしまえば、「他の選択肢よりはマシだから」「長期的には不安だけれど短期的には安心だから」ということだからなのです。

民間企業が売上高の18倍の借金を抱えていたら、直ちに倒産しそうですが、なぜ政府は倒産しないのでしょうか。それは、皆が喜んで政府に金を貸している(日本国債を購入している)からです。

黒字倒産という言葉があるように、黒字赤字と倒産とが直接関係しているわけではありません。銀行の取り付け騒ぎもそうですね。銀行が赤字だろうと黒字だろうと「あの銀行は倒産しそうだ」という噂が流れて預金者たちが一斉に預金を引き出しに走ると、本当に資金繰りがつかなくなって破産しかねないわけです。

つまり、企業も銀行も政府も、資金繰りがつかなくなった時に倒産するのです。これを反対から見れば、どれほど巨額の赤字を続けていても、あるいは巨額の赤字あると思われ続けても、資金繰りが付いている間は倒産しないのです。

そこで疑問がわいてきます。なぜ投資家や金融機関は「売上高の18倍の借金のある民間企業には金を貸さない」一方で「税収の18倍の借金あると彼らが信じて疑わない日本政府には金を貸す」のか、ということです。

しかも、強制されたわけでもないのに、マイナス金利の長期国債を自発的に買っているのです。これって、普通に考えれば異常としか言いようない行為ではありませんか?

しかし、日本政府に関しては、他に選択肢が乏しいのです。日本政府が破産する時は、日本政府の子会社である日本銀行も、日本国内のメガバンクも、破産を免れないはずです。

「日本政府が破産するといけないから、日本政府には貸さない(日本国債は購入しない)と」なると、手元の資金を日銀に預けても、日本銀行券を大量に持っていたとしても、安全性が増すわけではありません。メガバンクに預金しても、日本政府が破産する時はアウトになるでしょう。

そうなると、円をドルに替えてドルを持つしかありませんが、その場合には為替リスクを抱えることになります。


「とりあえず、今日から明日までの運用を考えよう。明日以降のことは明日考えよう」と投資家が考えたとします。「明日までに日本政府が破綻する可能性は非常に小さい」一方で「明日までに円高ドル安で損するリスクは小さくない」ということならば、「とりあえず明日までは国債で運用しよう」ということになりそうです。

明日以降も全く同じことが繰り返されれば、日本人投資家はずっと日本国債を持ち続けることになるでしょう。「長期的には不安だけれど、短期的には安心だ」ということで短期の投資が繰り返され、結果として長期間にわたって投資が続くことになります。

日本人投資家にとって心強いのは、「他の日本人投資家も同様の投資行動を採るとすれば、少なくとも当分の間は日本政府が破綻することはなさそうだ」と思えることでしょう。そうしてお互いに「意図せざる励まし合い」が行われているわけです。

この点も、社債と異なるところです。社債については、他の投資家が当該社債を買うとは限りません(というか多分買わないでしょう)から。

もちろん、日本人投資家が米国債を全く持たないわけではありません。「為替リスクはあるけれど、ドル高で儲かるチャンスもあるし、そもそも米国債は日本国際より金利が高いので魅力的だ」と言えるからです。

そこで、分散投資として資産の一部を米国債等で持っている投資家は多いのですが、それでも比較的多くの部分は日本国債で持っている投資家が多いです。

日本人投資家から見ると、日本国債は「信用リスクはあるが、為替リスクがないので、相対的に安全な資産だ」と言えるわけですが、外国人から見ると違います。彼らにとっては日本国債は「信用リスクも為替リスクもある、相対的にリスクの大きい資産だ。しかも金利も低い」ということになるからです。

そのため、外国人投資家は、あまり日本国債を持っていません。分散投資として持っている場合や、資金繰り上の理由で短期国債を持っている場合などもありますが、いずれも積極的に持っているというわけではありません。

日本は経常収支が黒字で、対外債権国(海外にお金を貸している国)ですから、政府は外国人から借金をする必要を感じていないわけですが、仮に経常収支が赤字で外国人から借金をしようと思ったら、結構大変です。

彼らは円建ての日本国債を持ちたいとは思わないので、外貨建てで借りることになるわけですが、たとえばドル建であれば、米国債と競合するので、米国債より高い金利を支払う必要があります。最無償が喧伝しているように、本当はそうではないのに、日本政府のような巨額の借金をしている相手には、よほど高い金利でないと貸したくないと考えるのが普通です。

それだけではありません。彼らが不安になって資金を引き揚げると大変なことが起きかねないのです。

政府は、最初に満期が来た国債を償還するためにドルを買いますが、そのドル買いでドルが値上がりします。次に満期が来た国債を償還するためのドル買いが、さらにドルを値上がりさせます。次々と償還のたびにドルが高くなり、最後には天文学的な値段になってしまうかもしれません。

そうなると、ますます日本政府は破産するという思惑が投資家の間で広がるでしょう。それが日本人投資家のドル買いを招くようなことになったら大変です。日本政府の子会社が発行している日本銀行券が紙屑になる前にドルに替えておこう、というわけですね。

日本の経常収支が黒字で、日本が対外純金融資産(外国に貸し付けているお金)が世界一であることが、たとえ、財務省が消費税増税のために、日本が大借金国だとアピールしたにしても、日本政府の破産を防いでくれているのだ、ということをしっかり認識したいものです。

 テレビで報道されるように、日本は海外純資産が世界一というのではなく、
 対外純金融資産(外国に貸し付けているお金もしくはお金にすぐ変えられる資産)
 が世界一である。
無論対外純金融資産が世界一だからといって、世界一裕福とは必ずしもいえません。たとえば、米国は対外純金融資産がマイナス300兆円ですが、これは米国が基軸通貨国であり、もともとこれがマイナスになりやすい体質があるからです。

そうして、日本がなぜこのように対外純金融資産を抱えるようになったかといえば、国内が長い間デフレで、めぼしい投資先がなかったので、海外に投資したということもあります。

ただし、基軸通貨国でもないし、特別な理由もないのに、対外純金融資産がマイナスすなわち、対外純金融負債を抱えている国は、確かに借金国ということができます。しかし、日本はその真逆であり、どう考えても少なくとも借金国ではありません。

もし、日本の経常収支が赤字で、日本が対外負債国(外国からお金を借りている国)であり、かつ財務省が日本は借金大国であると喧伝していたとしたら、とうの昔に日本政府は破産していたことでしょう。

そうではないからこそ、財務省がいくら日本は大借金国であると喧伝し続けても、日本は未だに財政破綻もせず、マイナス金利であってさえ、多くの投資家が日本国債を買い続けているのです。

ただし、賢明な投資家の中に、このことをはっきり認識して、投資を行っている人もいるとは思います。そういう人は、理解していない人よりは、投資効率の良い取引をしているのではないかと思います。

ただし、金融機関の中にはこれを理解しない人が幹部の中にも多いようです。そういう人に限って、現状の低金利、マイナス金利に文句たらたらで、将来の金融機関はどうあるべきかなどの明確なビジョンも持っていないようです。

ちなみに、かつてある金融機関の幹部の人何人かに、なぜ「おたくの会社は日本が財政破綻するのに、国債を購入し続けるのか?」とか「本当に日本が財政破綻するというのなら、それで儲けること(クレジット・デフォルト・スワップ等)ができるはずなのに、なぜをそれをやらないのか?」などと質問したこともありますが、満足に答えられませんでした。無論金融機関の人全部がこのような有様ではないとは思いますが、それにしても困ったものです。

【関連記事】

2016年2月10日水曜日

マイナス金利に文句言うのは 銀行の関係者だけだ―【私の論評】ドイツ銀行の不振まで、マイナス金利のせいにしてしまう浅ましさ(゚д゚)!

マイナス金利に文句言うのは 銀行の関係者だけだ

日銀は(2016年)1月29日、マイナス金利を導入した。その後、株式市場、為替市場は乱高下した。それでマイナス金利悪者論が闊歩している。

それらは世界経済の動きが原因であり、残念ながら日本の金融政策が世界を動かしているわけでない。

にもかかわらず、マイナス金利には否定的な論評が多い。

日銀決定の影響は

■日銀当座預金に金利で「濡れ手に粟」

筆者は、この状況を揶揄して、2月3日に次のようなツイートをしたところ、これまでに1400を超えるリツイートがあった。この種の堅い話題では珍しい。
多少言葉が不正確で乱暴なのはご容赦願いたいが、銀行を通してみると、マイナス金利の意味がよくわかる。テレビなどで、エコノミストらが批判するのは銀行の子会社にいて、親会社の銀行がマイナス金利を嫌っているからだ。

一般人が銀行に当座預金しても金利はつかない。ところが、銀行は日銀に当座預金すると、0.1%の金利が付いていた。銀行は一般人から当座預金ではゼロ金利であったが、それを仕入れとして、日銀に当座預金すると、0.1%の金利が付くので、濡れ手に粟だった。

この制度が導入されたのが、前の白川・日銀総裁時代の2008年である。

今回、マイナス金利を決めた日銀政策決定会合は象徴的だった。

賛成は、黒田委員、岩田委員、中曽委員、原田委員、布野委員。反対は、白井委員、石田委員、佐藤委員、木内委員。白井委員は学者出身であるが、石田委員、佐藤委員、木内委員は民間金融機関出身である。賛成には民間金融機関出身者はいない。賛成委員は安倍政権下で黒田体制になってからの任命、反対委員は民主党政権下で白川体制での任命である。

■「個人の預金金利がマイナスになる可能性はない」

白川前総裁は、日本経済より銀行を優遇する政策を行ったが、この当座預金への0.1%付利はその典型だ。

銀行の日銀当座預金残高は250兆円。その大半に0.1%の金利が付いているので、これだけで銀行は年間2200億円の利益を得ている。そもそも、当座預金に金利をつけることがおかしい。

この付利は、次の金融緩和で見直される可能性がある。今回の騒動は、この2200億円を守りたい銀行が必死になっていると見たほうがいい。

あえていえば、一般人からゼロコストの預金を受け入れ、それを貸出にまわさず、日銀当座預金している銀行は社会的にはいらない。貸出先がないと仕事をしない銀行もいらない。金融再編で消えても一般人は困らない。

なお、日銀のマイナス金利政策の導入を受けても、個人の預金金利がマイナスになる可能性はない。マイナス金利になるなら、預金せずに、家の金庫に置いておいた方がいい。もしみんなが預金しなくなると、銀行は仕入れがなくなるわけだから経営できなくなる。だから、銀行は仕入れをするためにマイナス金利にしないはずだ。

++ 高橋洋一

【私の論評】ドイツ銀行の不振まで、マイナス金利のせいにしてしまう浅ましさ(゚д゚)!

上の、記事さすがに高橋洋一氏の書いたものですから、マイナス金利について余すところなく、掲載されています。

それにしても、このマイナス金利悪者論者に関しては、高橋洋一氏が主張するように、銀行関連の人たちだけではないようです。マスコミもそのような主張をするものが多いです。

その典型的な例をあげておきます。これは、産経新聞の記事ですが、産経に限らず他紙でも似たような論調が多いです。
欧州発金融不安? ドイツ銀の株価が急落 マイナス金利で収益圧迫 銀行株一斉売り
ドイツ銀行
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にはこの記事の出だし部分のみを掲載しておきます。
 欧州の金融最大手のひとつ、ドイツ銀行の株価が急落している。債券の利払い能力に不安が高まったためだ。マイナス金利政策の導入など欧州中央銀行(ECB)が超低金利状態を保ち、利ざやが縮小していることも収益を圧迫。銀行株の売りは欧州全体に広がり、金融システム全体の健全性に対する懸念がくすぶる。 
 ドイツ銀の株価は8日に9・5%急落し、9日も4・3%の大幅安で、年初からの下落率は40%を超えた。2015年12月期に68億ユーロ(約8800億円)の純損失を計上し、4月末に予定されている3億5千万ユーロの利払いができるか疑問視された。
この記事、明らかな錯誤があります。それは、「マイナス金利政策の導入など欧州中央銀行(ECB)が超低金利状態を保ち、(ドイツ銀行の)利ざやが縮小していることも収益を圧迫」という部分です。

これを読むと、多くの読者は、日銀がマイナス金利政策の導入をすると、日本の銀行の利ざやが縮小すると考えると思います。

ECBは、そもそも銀行の銀行です。銀行の銀行であるECBがマイナス金利を導入すれば、ドイツ銀行などのような市中銀行は、ECBに金を預けておけば、預かり料をはらわなれればならないことになるので、ECBにあまりお金を預けなくなります。

ルーチンで決まったような、決済などの必要なお金のみ預け、その他は引き出し自分のところに保管するか、他に貸出をすることになります。それだけのことです。これで、それまでよりも、利ざやが減ることになるという考えそのものが不思議です。

いいですか、お金を置く場所を変えるだけです。ドイツ銀行の利ざやがそれによって減るには減りますが、激減するわけではありません。これをもって、ドイツ銀行の利ざやが減って、業績悪化につながったというのは、あまりにも乱暴な極論です。EUには多くの銀行が、あります。ドイツ銀行が、マイナス金利で不振になったというなら、EUの銀行がことごとく、不振になっているはずてです。ドイツ銀行の不振はもっと他の原因にあるとみるべきです。

そもそも、ドイツ銀行は、ECBと取引をして利ざやを稼ぐのではなく、あくまで市中銀行として、企業などに融資してお金を稼ぐ機関です。

確かに、ドイツ銀行などの市中銀行が、決済などに預けるお金にはマイナス金利がかかることになりますが、微々たるものでしょう。

ECBとしては、マイナス金利にすることにより、市中銀行がなるべくお金をECBに預ける料を減らし、市場に出回るようにしたということです。ただし、これは、以前このブログにも掲載したように、あまり効果は出ていないことを掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
日銀のマイナス金利 投資・消費の増加につながるか―【私の論評】マイナス金利政策は当然!10%増税では、優先順位を間違えたECBよりも始末が悪いことに(゚д゚)!
さて、このマイナス金利政策は、ECBではあまり効果が出ていないのですが、日本で実行すれば、それなりの効果はあります。この記事から、その部分を述べた部分を以下にコピペします。
ユーロ圏では欧州中央銀行のドラギ総裁がマイナス金利政策を実施しましたが、これといってマイナス金利の効果は確認されていません。にもかかわらず、今回黒田総裁がマイナス金利政策を導入したのは、どうしてなのでしょぅか。 
その違いは、日本とユーロ圏の量的緩和の「量」にあります。以下の図を見てください。ユーロ圏の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利導入を発表したのは、2014年6月5日。つまり、ECBは本格的な量的緩和を実施して、マネタリーベースが急拡大する前の段階でマイナス金利を導入してしまっていたのです。
ECBのマイナス金利導入は、時期尚早でした。日本の場合は、日銀の金融緩和策によって、「日銀当座預金」に銀行の預金がかなり積み上がった状態になってしまっいるので、EUとは異なり、導入すればそれなりの効果が期待できるというわけです。
また、ドイツ銀行の不振が、リーマン級のショックを世界経済に与えるとの論調もありますが、それもかなり疑問符がつきます。

このあたりについては、私が説明するよりも、その道のブロの人の記事をご覧になったほうが良いと思います。以下に、矢口新氏の記事のリンクを掲載します。
世界恐慌の噂を検証~ドイツ銀行が破綻するとは思えない10の理由=矢口新
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、矢口新氏はドイツ銀行が破綻するとは思えない理由を10あげています。その一つ一つが十分納得のいくものです。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、矢口氏は一番最後の理由で以下のように述べています。
リーマン・ブラザーズは高レバレッジ体質でした。その後、ボルカールールなどで銀行のレバレッジの縮小が続いています。前述の「大き過ぎて潰せない」銀行への新規制でも、換金可能な資金の確保が要求されるということです。
レバレッジ(英語:leverage, gearing)とは、経済活動において、他人資本を使うことで自己資本に対する利益率を高めること、または、その高まる倍率をいいます。特に、リーマン・ブラザーズは異常なほどの高レバレッジ体質だったので、この一社の破綻が、他社にとてつもない影響を及ぼしました。

それから、私自身は、あのリーマンショツクに関しては、一家言があります。それは、日本におけるリーマンショツクは、本当の意味でのリーマンショツクではなく、日銀ショツクであるというものです。

実際、あのリーマショック後に、リーマン・ショックの悪影響を直接被った、米英、EU、中国等では、経済の不振を払拭するために、大規模な金融緩和を実行しました。そうして、比較的短期間のうちにリーマン・ショックから回復しました。

ところが当初はリーマン・ショックの影響は、軽微と見られていた日本においては、他国が金融緩和をしても、日銀はしなかったため、当時のデフレをさらに深化させ、円高も亢進してしまい、まさにひとり負けの状況でした。


だから、私は、日本におけるリーマン・ショックは、日銀ショックと呼称しています。実際、これは正しい見方です。あのとき、日銀が大規模な金融緩和に転換していれば、日本はあそこまで、一人負け状態になるはずはありませんでした。もともと、当時の金融業界は、あまり余裕がなく、サブプライムローンに手を出しているところなどほとんどありませんでした。

以上のようなことを考えれば、マイナス金利悪者論は完璧に間違いであることがわかると思います。最近の株価や、為替の乱高下は、マイナス金利とは全く関係なく、世界経済の動きが原因であり、マイナス金利をやめると、株価や為替が安定するなどということは全くありえません。

それにしても、あろうことか、ドイツ銀行の不振まで、マイナス金利のせいにしてしまうマイナス金利悪者論者の浅ましさは酷いものですし、それを見抜けず、マイナス金利悪者論者の言説に惑わされて、悪者論者の片棒をかつぐマスコミもいかがなものかと、思ってしまいます。

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2016年2月4日木曜日

マイナス金利は極めてまともな政策 緩和手段の余地も残されている ―【私の論評】主流派経済学者が主体(チュチェ)思想とでも呼びたくなる酷い論評をするのはなぜ?

マイナス金利は極めてまともな政策 緩和手段の余地も残されている 

マイナス金利はまともな政策だが・・・・

日銀は1月29日の金融政策決定会合で「マイナス金利」を導入した。日銀の当座預金を3段階に分け、それぞれの階層に0・1%、0%、マイナス0・1%の金利を適用する。

日銀当座預金への付利については、これまでも問題になっていた。先日の当コラムでは、付利をゼロ金利とする追加緩和策とする手があると指摘している。

黒田東彦(はるひこ)日銀総裁が国会で「マイナス金利を検討していない」と言ったことから、ほとんどの市場関係者の間ではノーマークだったようだが、「解散と公定歩合はウソをついても良い」とも言われてきたので、そのような人たちはプロとは呼べないのではないか。

今回の日銀の決定は、ゼロ金利ではなくマイナス金利まで踏み込んでいるので、この点を筆者は高く評価できる。

日銀当座預金への付利0・1%は、金融緩和効果を減殺してきた。黒田日銀以前は、国債買いオペの対象は中短期債であった。金融機関は低利の中短期債を日銀に売却して、その代わりに日銀当座預金で運用しているという状態だった。

日銀による国債買いオペとは、そもそも日銀が金融機関から国債を取り上げて、その代わりに収益ゼロのキャッシュを与える。金融機関はキャッシュのままでは収益が上がらないので、収益を稼げる貸出や株式への投資を促そうというものだ。そのためには、当座預金への付利が障害だった。

当座預金金利をゼロにしたり、欧州中央銀行(ECB)のようにマイナスにするのは金融政策としては極めてまともである。しかも、2016年度は国債が品不足の状態なので、買いオペ(市場からの国債購入)の増額はテクニカルな面でもやりにくい。

国債市場で取引される国債は新規発行されたものが多く、過去に発行されて金融機関のポートフォリオに沈んだ国債はあまり取引されない傾向がある。このため、追加緩和の効果を考えれば、おのずと日銀当座預金の付利をゼロまたはマイナスにするという政策になる。

マイナス金利自体は、スイス、スウェーデン、デンマーク、ECBで行われている。この意味では、ごく普通の金融緩和措置である。

マイナス金利は一般には「金融機関課税」ともいえるわけだが、今回の日銀のマイナス金利は、今の当座預金残高250兆円を超える部分に原則として適用するようだ。

ということは、金融機関としては、日銀の買いオペに応じて日銀当座預金が増加(ブタ積み)すると、ペナルティーが付くということになる。一方でブタ積みを避けて、貸出に回せば、ペナルティーはないといえる。ECBでは、当座預金すべてにマイナス金利がかかるのと比較すれば、日銀のマイナス金利は金融機関には優しいものとなっている。

この意味で、当座預金にもかかわらず付利し、現状2200億円程度が金融機関への事実上の補助金になっていることは是正されていない。

これが今後の問題でもあり、まだ金融緩和の手段の余地は残されているということもできる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】主流派経済学者が主体(チュチェ)思想とでも呼びたくなる酷い論評をするのはなぜ?

マイナス金利に関しては、金融関係や識者などから、批判が出ているようですが、それに関しては高橋洋一氏自身が以下のようなツイートをしています。
今回の日銀のマイナス金利は、日銀の銀行向けの当座預金残高250兆円を超える部分に適用するとのことで、まだまだ甘い措置であるともいえます。
当座預金とは、主に企業や個人事業主が業務上(営業資金等)の支払いに利用する無利息の預金で、現金の代わりに「小切手」や「手形」で支払いをする際に活用します。

そもそも、銀行以外の企業や個人事業主が銀行の当座預金を利用するときには無利子であるにもかかわらず、利付し現状では、2200億円程度が利子となっていて、これが金融機関への事実上の国による補助金のようになっているという、金融機関にとってはまさにぬるま湯的な状況になっていたということです。

これは、明らかに金融機関に対する優遇措置であり、こういう状況を打破して、付利しないどころか、マイナス金利にして、日銀にお金を預けておくとマイナス金利を支払わなければならなくなり、銀行は日銀にお金を預けっぱなしにはしなくなり、より一層金融緩和が進むことになります。

黒田総裁は、金融緩和政策の一環として、マイナス金利導入を中央銀行総裁として当然のことをしたにも関わらずこれを批判する新聞や識者がいます。

たとえば東洋経済オンラインでは、以下のような中原 圭介氏の記事を掲載しました。
マイナス金利は「劇薬」というより「毒薬」だ
中原 圭介氏

中原氏は、経営コンサルタント、経済アナリストだそうですが、この記事本当に書いてある内容がクソコメントです。

さらに慶応大学大学院準教授小幡績氏は、以下のような記事を書いています。
マイナス金利で日本経済の何が変わるのか
小幡績氏
 この記事、小幡氏は以下のように述べています。
 マイナス金利で日本経済の何が変わるのか──何も変わらない。変わるとすればデフレを引き起こすぐらいだ。 
 短期的には円安が進む以外は何も変わらない。消費も投資も実体経済においては増えない。したがって、マイナス金利という日銀の新しい金融緩和策が実体経済に与える影響の評価は、さらなる円安を評価するかどうかにかかっている。そして、円安は過度に進んでいるという見方に立てば、これはプラスではなく、パブロフの犬のような株式市場の短期的な反応を除いてマイナスと考えられる。
本当に、クソコメントです。小幡氏は、テレビでもとんでもないコメントをしています。それに関するツイートがありましたので、以下にそのツイートを以下に掲載します。
このツイートは、報道ステーションで報道された、小幡氏コメントをまとめたものです。ご覧いただいてもおわかりになるよに 、知能レベルが疑われるような発言をしています。

それにしても、日本ではなぜか、日本の経済が少しでも良くなるなるような政策が行われると、それにあからさまに反対する意見が出ます。それも、論拠が薄弱なものが多いです。

たとえば、日銀が金融引き締めばかりして、デフレが十数年続いてしまいました。このときに金融緩和をすると日銀が言い出すと、そんなことをするとハイパーインフレになるなどと反対する人がいました。

8%増税に関しては、増税しても日本経済への影響は軽微であるとした論評を大勢の識者が大勢いましたが、その結果、日本経済はかなりの悪影響を受けました。

何やら、日本にはとにかく経済が少しでも良くなりそうな政策や、意見に関しては、論拠に欠ける論評をして反対、日本の経済が少しでも悪くなりそうだと、それに大賛成する人がいます。上に掲載した二人は、その代表的な例であり、この二人だけではなく、大勢の経済学者などの識者がこのような意見を表明しています。

こういう、論評は、一体何のために行われるのでしょうか。私自身は、どうも海の向こうの韓国・北朝鮮や中国に利するような論評のようにしか思えません。

昨日は、朝鮮大学校元幹部逮捕が逮捕されたことについて掲載し、北朝鮮のチュチェ思想についても掲載しました。

北朝鮮のチュチェ思想は、簡単にいえば、朝鮮労働党の目的達成のためならどんな手段を用いてもかまわないという思想です。

主体思想の犠牲者、北朝鮮の痩せこけた子どもたち
そんなことを考えると、日本経済が少しでも良くなりそうな政策や、考えかたに反対したり、その逆に日本経済が壊滅的に悪くなる政策に大賛成の人たちは、経済主体(チュチェ)思想にでも汚染されているのではないかとさえ思えてしまいます。

彼らの、論評は、ほとんどまともなエビデンスに基づいていないのですが、とにかくありとあらゆる、屁理屈を並べアベノミクスは駄目、10%増税はすべきと主張します。こういう主張を聴いていると、自分たちの理屈だけが正しく、とにかく自分たちの考えを正当化するという目的達成のためなら事実を歪めるなどのどんな手段を用いても構わないと考えているようにしか見えません。

これは、北朝鮮の主体(チュチェ)思想ともかなり共通点があると思います。こういうことから、私はこのような論評をする人たちの思想を経済主体(チェチュ)思想と呼びたいと思います。

北朝鮮人民解放軍の女性兵士による剣の舞 北朝鮮の軍では女性兵士へのセクハラが横行。
告発システムもなく、女性兵士たちは沈黙。「人権」という概念すらなく、何をされても
人権侵害だと気づかない。これも主体思想の犠牲者?この写真と、人民解放軍内の
セクハラについては直接関係はありません。
現実にあるものを無いと言ったり、黒を白と言い張る人は世間から疎まれる存在です。しかし、その人に権力がある場合は事情が異なります。例えば絶対権力を有する独裁者の言の前では、人々は理不尽さを感じつつも外面上服従しなければならないでしょう。実は経済学の世界にも、主流派経済学の権威を盾に無理を通す一群の経済学者が存在します。

そうして、現実と自分たちの理論が乖離すると、彼らは自分たちの不見識を糊塗するために、次のように主張します。

「現実が間違っている」と。

「現実が理論どおりにならないのは、人々が経済理論を知らないために間違った行動をとるからだ」とするのです。

「理論が正しく現実が間違っている」と考える経済学者は、理論と現実の関係を顧みないことを自ら表明しているようなものです。しかし、残念ながら多くの経済学者がそうした思考に陥っています。

「専門知(専門家の知見)」と「世間知(国民の知識)」という言葉をよく使う学者がいますが、これも同類です。専門知は経済理論の帰結に基づくものであるから、常に世間知より優れていると言いたいのでしょう。

そして彼らは、「専門知に基づく政策は、国民には耳の痛いことであっても実行しなければならない」と続けるわけです。財政再建論者、増税論者に多く見られるパターンです。

理論の鋳型に現実を押し込めるために、主流派経済学者は如何なる手立てを用いているのでしょうか。その方法は彼等にとって「不都合な現実」を否定することです。具体的には、自らの論理で説明できない不況概念をこの世から消し去ることです。無いことにすればよいのです。

そうして、主流派経済学者らは、10年ほど前には、当時のデフレ状況を以下のように論評しました。

「日本の失われた10年の原因は、財政による景気刺激の不十分さ、流動性の罠(金融緩和が景気刺激に効かない状態)、バブル期の過剰投資の反動、といったものではない。これらは(短期的な)景気後退を説明するものであって、今回の長期にわたる経済不振を説明する理由としては不適当である。

また、企業の設備投資のための資金調達が阻害されている訳でもないため、金融システムの崩壊も原因ではない。

真の原因は生産性の伸び率の低下と、1988年の労働基準法改正を背景とした労働時間の減少で、特に重要なのが前者である。これらは新古典派経済学の経済成長理論で説明できる。

問題解決のためには、生産性を取り戻すためにどのような政策変更(構造改革)をすべきかを追究すべきである」

そうして、この理論は、現実から乖離していたため、実体経済を良くするためには何の役にもたちませんでした。

主流派経済学者の理論は、未だにこれが基本です。金融政策や財政政策などお構いなしにとにかく生産性で実体経済を説明し、現実を無視し、あろうことか、現実のほうを理論にあわせて、金融引き締め、緊縮財政などて変えようとしました。

しかし、現実には金融緩和が行われ、最近は実体経済が良くなりかけたのですが、8%増税で日本経済は足踏みしまた。しかし、主流派経済学者らは、デフレは、生産性が落ちたことによるものであり、アベノミクスは最初から失敗であり、10%増税は予定どおり実施すべきとしています。

これでは、経済主体思想などと言われても仕方ないと思います。

経済理論と、現実の実体経済の乖離があれば、その乖離を縮めようと努力するのが本来の学問の姿だと思います。

しかし、それをしないで、自分の理論をあくまで正しいものとして、現実が間違いであるとするのは、結局のところ、自分の理論を正当化して、現実を変えることを正当化します。そうして、それは、朝鮮労働党の目的を達成するためには、何をやっても良いとするチュチェ思想とまるで同じようなものです。

日本の主流の経済学者らの思想が、チュチェ思想に似るのは、現実を認めず自分たちの理論だけが正しく、現実が間違いであり、その現実を理論にあわせるために、変更しようとするからです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2016年1月31日日曜日

日銀のマイナス金利 投資・消費の増加につながるか―【私の論評】マイナス金利政策は当然!10%増税では、優先順位を間違えたECBよりも始末が悪いことに(゚д゚)!

日銀のマイナス金利 投資・消費の増加につながるか



日銀は29日、金融機関から預かっている当座預金にマイナス金利を導入する新たな金融緩和策に踏み切り、さらに今後も金利のマイナス幅を拡大する可能性を示唆しました。これを受けて長期金利は過去最低まで急激に下がりましたが、金利の低下が投資や消費の増加につながるかどうか、今後、新たな金融緩和の効果が問われます。

日銀は、金融機関から預かっている当座預金の一部に来月半ばからマイナス金利を導入する、新たな金融緩和策に踏み切ることを決めました。

日銀の黒田総裁は記者会見で、今回の政策のねらいについて「金利全体により強い下押し圧力を加えていく。2%の物価目標をできるだけ早く実現するため導入を決めた」と述べ、世の中の金利全般を一段と下げることで、投資や消費を活発化させることが期待できるとしました。

これを受けて、東京債券市場では29日、長期金利が一時、0.09%と過去最低の水準まで急激に下がり、金利はひとまず、日銀のねらいどおりの反応を示したほか、円安と株高も進みました。

ただ、金利が下がっても企業や個人の資金の需要が高まらなければ、金融機関からの貸し出しなども増えず、投資や消費の増加につながらないおそれもあります。日銀は必要があればマイナス金利の幅を拡大する可能性も示唆していますが、金利の低下を経済の活性化につなげ、日銀が目標とする2%の物価上昇率を達成できるかどうか、新たな金融緩和策の効果が問われることになります。

【私の論評】マイナス金利政策は当然!10%増税では、優先順位を間違えたECBよりも始末が悪いことに(゚д゚)!

今回のゼロ金利について、予め予言をしている人がいました。それは、あの高橋洋一氏です。その予言を掲載した動画を以下に掲載します。


マイナス金利の件は45分あたりから

 この動画は1月28日に収録されたものです。高橋氏としては、29日に日銀が重大発表があるとの発表をした時点で、ゼロ金利はあり得ることとして、この動画の緊急特番ということになったのだと思います。

この動画の中でも、今回の黒田総裁が、マイナス金利を導入しなければ、まともな中央銀行総裁とはいえないということを語っていました。そうして、今回実際にゼロ金利政策を宣言したわけですから、黒田総裁はまともだということです。このあたりのことについては、詳細は上の動画をご覧ください。

このゼロ金利政策、マスコミの経済記者などには意味が良くわからないようです。識者のなかにもとんでない解説をする人がいるので、そんなことに皆さんが幻惑されないように、以下にいくつかの査証(エビデンス)を掲載させていただきます。

そもそも、日銀がマイナス金利政策を宣言する前から、もう日本は実質的にマイナス金利政策をとっているといっても過言ではありませんでした。

すでに、日本銀行は、マイナス金利政策を発表する前からゼロ金利政策を放棄してマイナス金利政策を採用してしまっていました(これって、英文法でいえば過去完了)。その査証を以下に掲載します。


さて、上は、財務省が発表している国債金利情報をグラフにしたものです。昨年の12月の半ば頃から残存期間1年の国債の利回りはマイナスになってしまっていたのです。瞬間的にマイナスになったというのではないのです。それ以来マイナスが継続しまっていたのです。

そして、昨年12月13日には、5年物新発国債の落札利回りがゼロとなったとも報じられてしまっていました。10年物国債にしても、利回りは0.26%まで低下してしまっていました。

国債の利回りがマイナスになるその原因は、日本銀行が市中金融機関から国債を買い入れる場合に、額面以上の価格で購入しているからです。日銀が額面以上の価格で国債を購入すれば、落札利回りはマイナスになります。つまり、市中金融機関は、国債を担保に日銀からマイナス金利でお金を借りてしまっていたのです。

今や市中金融機関は、ゼロ金利どころかマイナス金利で日銀からお金を借りることができる時代に突入しているのです。では、何故そのようなことを日銀はするのでしょうか。

そうでもしなければ、日銀が目標に掲げた国債の買い入れが達成できないからです。そうなると日銀の掲げた物価目標を達成できなくなるからです。

さて、すでに国債のマイナス金利政策を実行している、日銀がさらに今回マイナス金利政策を発表したのにはどんな背景があり、それが日本経済にどのような影響を及ぼすのか以下に解説します。

日銀には銀行の預金口座である「日銀当座預金」があります。この「日銀当座預金」にはこれまで0.1%の金利がついていたのですが、預金の一部にマイナス0.1%の金利、つまり手数料がとられるようになるのです。

日銀はアベノミクス開始以降、銀行などの金融機関から大量の国債を購入していますが、その国債の購入代金は銀行の預金口座である「日銀当座預金」に振り込まれます。しかし、「日銀当座預金」に0.1%の金利がついたままでは、銀行は振り込まれたお金を企業の貸出しにまわすことなく、そのまま放っておくことが考えられます。



しかし、今回のマイナス金利導入により、「日銀当座預金」に利息収入ではなく手数料がかかることになってしまいました。こうなると銀行は利益を確保するために、こぞって企業にお金を貸し出すとか、株式投資をするようになることが考えられます。これがマイナス金利導入の狙いです。

しかし、ユーロ圏では欧州中央銀行のドラギ総裁がマイナス金利政策を実施しましたが、これといってマイナス金利の効果は確認されていません。にもかかわらず、今回黒田総裁がマイナス金利政策を導入したのは、どうしてなのでしょぅか。

その違いは、日本とユーロ圏の量的緩和の「量」にあります。以下の図を見てください。ユーロ圏の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利導入を発表したのは、2014年6月5日。つまり、ECBは本格的な量的緩和を実施して、マネタリーベースが急拡大する前の段階でマイナス金利を導入してしまっていたのです。


ECBのマイナス金利導入は、時期尚早でした。日本の場合は、日銀の金融緩和策によって、「日銀当座預金」に銀行の預金がかなり積み上がった状態になってしまっいるので、EUとは異なり、導入すればそれなりの効果が期待できるというわけです。

これは、高橋洋一氏が動画で指摘していたように、正しい措置であり、黒田日銀総裁は、まともな中央銀行総裁であることが示されたといえると思います。

しかし、だからといって、日本経済は安泰だというわけでもありません。先日も、指摘したように、この先中国経済はしばらくかなり停滞します。アメリカの利上げによって新興国の経済が大ダメージを受けてしまう可能性も大きいです。

さらに、原油安が資源国の経済を直撃しています。また、中東の地政学的リスクも増大しています。これらが日本の経済にどのような悪影響を与えるのか、全く予断を許さない状態です。今後リーマン級の大打撃が日本を再度襲う可能性があります。 

今後の、不測の事態に備えるためにも、日本政府は早急に2016年度の補正予算を組み、金融緩和を拡大して、財政金融両面でさらなる景気対策を施さなければなりません。

10%増税などやっている場合ではありません。まずは、景気回復、デフレ完全脱却が今の日本にとっては最優先課題です。安倍政権にはECBのように政策の優先順位を間違えないようにして欲しいです。もし、10%増税など予定通りに実行してしまえば、ECBの優先順位の誤りどころの話ではありません。

ECBが優先順位を間違えて、マイナス金利政策をやっても、効果が出ないだけで、それ自体が経済に甚大な悪影響を及ぼすわけではありません。しかし、デフレ完全脱却前の、増税は甚大な悪影響を及ぼすのは必定です。そんなことは、私達は8%増税の大失敗ですでに学んでいるはずです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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