黒田日銀総裁 |
日銀の黒田東彦総裁は19日、ロイターのインタビューに応じ、追加の金融緩和が必要になれば短期・中期の金利を「確実に」(certainly) 引き下げると語り、高まる海外経済のリスクに対し、マイナス金利の深堀りが主要な選択肢との考えを示した。
また、市場が大きく動けば現状の枠組みでも上場投資信託(ETF)の買い入れを増やすことは可能と述べ、景気に悪影響を与えかねない株価下落に対応する準備があることを示唆した。
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議出席のため、米ワシントンを訪れている黒田総裁はロイターに対し、「世界経済の見通しは、総じてより活発さに欠けている。成長が回復する時期は幾分後ずれしている」と語った。
その上で「もし追加の金融緩和が必要なら、確実に短期・中期の金利を引き下げる。超長期金利の低下は望まない」と述べた。
黒田総裁のこうした発言は、米中貿易摩擦と世界的な需要の落ち込みに対する日銀の懸念を裏付ける。市場関係者の間では、こうした海外経済の減速を受け、日銀が10月の金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るとの観測が出ている。
さらに黒田総裁の発言は、緩和に踏み切る場合、短期金利を一段と引き下げ、マイナス金利を深堀りする可能性が最も高いことも強く示している。
黒田総裁は、短期・中期金利の引き下げは経済にプラスに作用する可能性がある一方、超長期ゾーンを過度に引き下げると、年金や生命保険の運用に悪影響を与え、消費者心理を冷やしかねないと語った。
日銀はイールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組みの下、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導している。国債とともに、ETFなどのリスク資産も購入している。
日銀が前回の会合で、海外リスクの高まりを警告し、政策対応に踏み切る可能性を示唆したことで、市場では日銀が10月30、31日の金融政策決定会合で追加緩和するのではとの観測が強まっている。
10月会合で緩和が必要なほど海外のリスクは高まっているか、との問いに黒田総裁は「確定的に言うのは少々難しい」と答えた。
黒田総裁は、米中協議に多少の進展が見られる一方、対立は続く可能性があり、英国の欧州連合(EU)離脱の先行きもまだ不確実だ、と指摘。「世界経済の下振れリスクが非常に高まったとか、非常に縮小したとか言うことはできない。リスクの高い状況が続くと思う」と語った。
そのような海外リスクと国際通貨基金(IMF)による世界経済見通しの下方修正は、日銀の日本経済の見通しに影響を与えるとも付け加えた。
黒田総裁は、2%の物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる場合、日銀はちゅうちょせず金融緩和するという従来の見解を繰り返したが、いつ行動するかについて前もってアイデアがあるわけではないと述べた。
「あらかじめ政策を決めていることはない。すべて経済データ次第だ」とし、今月の政策決定は既定路線ではないと示唆した。
日銀は追加緩和する場合の政策オプションとして、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、マネタリーベース拡大ペースの加速の4つがあるとしてきた。
黒田総裁はマイナス金利の深掘りが主要なオプションの1つだと発言してきたが、アナリストらはマイナス金利のさらなる低下は地方銀行の資金繰りを悪化させ、消費者マインドを傷めると警告している。
マイナス金利深掘り以外ではどんな政策ツールがあるかとの質問に黒田総裁は「いくつかのオプションの組み合わせや応用がある」と指摘したが、詳細は語らなかった。
「資産買い入れプログラムを拡大することもできる。われわれの資産買い入れプログラムは長期国債だけでなくETFなども含む」と述べ、「金融緩和によって経済に影響を与える様々なツールがある」とした。
日銀は現在の資産買い入れプログラムの下で、保有残高が年間6兆円のペースで増えるよう、ETF買い入れを行っており、市場の状況に応じてそのペースは変動するとしている。
黒田総裁は「われわれのETF買い入れは非常に柔軟だ。現在の制度の下でも、必要ならETFの買い入れを大幅に増やすこともできる」と発言。年間6兆円のペースで買い入れを増やすという現在のコミットメントの下で、ペースを拡大することも可能との考えを示した。
インタビューは英語で行われました。
【私の論評】いま日銀が取り組むべきは、マイナス金利の深堀、構造不況業種の銀行などに配慮するな(゚д゚)!
現状、安倍政権は経済成長を最優先させることに力点を置いていないとみられ、それが引き起こすであろう経済情勢の変化が政権の地盤を揺るがしかねないですす。このリスクは、すでに金融市場の価格形成に反映されています。
日本株の日々の値動きは、米国株市場にほぼ連動して動いています。ただ、2018年から米国と比べて日本株はアンダーパフォームし、2018年初をピークに日本株(TOPIX、東証株価指数)が緩やかな下落基調にあります。日本の経済政策がうまく作用せず、経済が冴えない状況が続いていることが最大の背景です。
日本株の日々の値動きは、米国株市場にほぼ連動して動いています。ただ、2018年から米国と比べて日本株はアンダーパフォームし、2018年初をピークに日本株(TOPIX、東証株価指数)が緩やかな下落基調にあります。日本の経済政策がうまく作用せず、経済が冴えない状況が続いていることが最大の背景です。
株価指数ヒストリカルグラフ -TOPIX (東証株価指数)- 週足チャート |
2%インフレという経済正常化を実現する前に財政政策を逆噴射させるのは、2014年の消費増税と同様で、成長率を押し下げてデフレ圧力を高める政策対応以外の何ものでもありません。
もちろん、消費増税への対応政策として補正予算策定などが検討されています。3兆~5兆円規模の補正予算などの手当てが想定されますが、可処分所得の伸びが極めて低い中で、2兆円を上回る家計に対するネットの増税負担への手当てとして十分な対応はほとんど見当たりません。
このため、2020年にかけて個人消費を中心に成長率は大きく減速することになるでしょう。
また、安倍首相は新設する検討会議において、「全世代社会保障改革」に全力で取り組む、としています。新たな検討会議での議論は、社会保障制度や税制の将来の姿につながるという意味では重要でしょうが、長期的な政策枠組みの話がメインとなり、予想される景気減速への対応には直結していません。
他国に目を転じると、米国や欧州などほとんどの国で、経済成長の下振れリスクが高まりインフレが停滞する中、経済成長率を押し上げる拡張的な経済政策を行っています。
米国では、ドナルド・トランプ大統領が議会と財政合意にこぎ着け、2020年までの歳出の上限を引き上げました。フランスは4月に減税などを行い、EU離脱を控えた英国ではボリス・ジョンソン首相が政府債務を拡大させる大規模な財政政策を表明しています。そしてドイツでも、景気低迷を受けて、減税などの財政政策についての議論が活発になっています。
ジョンソン英首相(左)とトランプ米大統領(右) |
マクロ安定化政策が各国の経済成長率を左右し、それが株式市場のパフォーマンスにも影響します。デフレ脱却の途上にあり、各国と比べても成長率を押し上げる経済政策が必要である日本だけが緊縮的な経済政策を行っていることへの、投資家の不信感はかなり大きいと思われます。今後景気が減速する中で、この不信感は強まるとみています。
緊縮的な経済政策は、財政政策だけではなく、日本銀行の金融政策についても同様です。
現状、米連邦準備制度理事会(FRB)が2019年7月から利下げに転じる中で、新興国を含めたほとんどの中央銀行が金融緩和を強めています。こうした状況下、インフレ目標の実現が先送りされる中で日銀が金融政策の現状維持を続けていることは、円高を引き起こし、金融引き締め的に作用しています。
2%インフレ目標の達成可能性が低下する中で日銀が同じ政策を続けているのは、安倍政権と足並みをそろえ、経済軽視の政策を行っているからかもしれません。いわゆる「金融緩和の副作用」なるものが、少し前まで声高に叫ばれていましたが、具体的なものはありませんでした、さらに最近はこの副作用という声が小さくなってきたようです。
マイナス金利政策はこれを続けることで政府による国債発行を増やして、財政政策を拡張することをサポートしているともいえますが、その必要性を政府に強く訴えることはできるでしょう。そして金融政策についても、円高リスクを低下させるために、マイナス金利の深掘りが有力な金融緩和のオプションが必要になるでしょう。
マイナス金利に関しては、銀行関係者は銀行の利益がなくなるとしして、反対していますが、日銀はこのような銀行関係者の声に耳を傾けている時なのでしょうか。
そもそも、銀行はすでに構造不況牛酒です。銀行の9割が消え、銀行員は99%リストラされるという近未来像は、暴論でもなければ、絵空事でもありません。そのようなこと、私自身は肌身で感じます。なぜなら、最近では従来のように、金融機関に足を運ぶことがほとんどなくなったからです。
銀行の不振を伝えるテレビ報道。銀行はもはや構造不況業種なのだ。 |
銀行業界が抱えるさまざまな問題をすべて解決するための方法は、1つしかありません。
それは、銀行業務から人を排除することです。
これで銀行が抱えているあらゆる問題は解決し、弱点がすべて強みになるかもしれないのです。
バブル崩壊やリーマンショックなど、銀行業界はこれまで数々の金融危機を乗り越えてきましたが、それらとは質が異なり、より深刻な危機が襲いかかっています。
地銀の大半は赤字続き、メガバンクもこぞって数千人・万単位の人員削減や、支店・ATM網の統廃合に乗り出しています。
それだけではありません。銀行の存在意義そのものが根底から揺らいでいます。AIやフィンテックといった金融技術の進化によって、銀行業務の独占が崩れ始めているのです。
銀行業務そのものが「消える」可能性が高いです。
特に資金決済など、伝統的に銀行が担ってきた業務は、急速に新たな仕組みに置き換わりつつあります。
ブロックチェーンと呼ばれるシステム上の帳簿技術や、それを使ったビットコインなど仮想通貨が広まれば、ますます伝統的な銀行業務は消えていきます。
これからほんの数年で、金融業界が一変する可能性を秘めているのです。そのような大変化のさだ中にある日本の金融業界に対して、低金利の深堀をしなければ、旧態依然とした銀行の体質を温存するだけとなります。
日銀が、マイナス金利の深堀をしないで、旧態依然とした金融機関を守ったつもりであっても、金融機関の革新を遅らせ、結局どこかの金融機関に天下りできるだろうという日銀官僚の目論見はことごとく外れて、銀行のほとんどは消滅しているかもしれません。
それは、銀行業務から人を排除することです。
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特に資金決済など、伝統的に銀行が担ってきた業務は、急速に新たな仕組みに置き換わりつつあります。
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これからほんの数年で、金融業界が一変する可能性を秘めているのです。そのような大変化のさだ中にある日本の金融業界に対して、低金利の深堀をしなければ、旧態依然とした銀行の体質を温存するだけとなります。
日銀が、マイナス金利の深堀をしないで、旧態依然とした金融機関を守ったつもりであっても、金融機関の革新を遅らせ、結局どこかの金融機関に天下りできるだろうという日銀官僚の目論見はことごとく外れて、銀行のほとんどは消滅しているかもしれません。
あるいは、首尾よく天下りできたとしても、直後に消滅などといこともありえます。
そのような不確かな未来にかけるよりも、現在日銀は、有利な金融緩和のオプションとして、大多数の日本国民のために、マイナス金利の深堀を実施すべきです。さらに、量的金融緩和にも果敢に取り組むべきです。
マイナス金利の深堀りが主要な選択肢との考えを示すという悠長なことを言わずに、明日からでも実行していただきたいです。
そのような不確かな未来にかけるよりも、現在日銀は、有利な金融緩和のオプションとして、大多数の日本国民のために、マイナス金利の深堀を実施すべきです。さらに、量的金融緩和にも果敢に取り組むべきです。
マイナス金利の深堀りが主要な選択肢との考えを示すという悠長なことを言わずに、明日からでも実行していただきたいです。
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