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2019年4月8日月曜日

歴史の法則で浮かんできた、安倍政権「改元後半年で退陣」の可能性―【私の論評】安倍総理の強みは、経済!まともな政策に邁進することで強みが最大限に発揮される(゚д゚)!

歴史の法則で浮かんできた、安倍政権「改元後半年で退陣」の可能性
このまま増税を実施するならば…

大阪の成長は安泰だが、では日本の成長は…?

先週の本コラム「平成は終わるが、大阪の成長を終わらせてはいけない 大阪選挙の論点を11の図表で確認」https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63847)では大阪ダブル選挙の情勢について取り上げたが、フタをあけてみれば、大阪ダブル選挙は吉村・松井の維新コンビがそれぞれ府知事・市長に当選した。

これまでの実績が十分にあり、さらに2025年に開催予定の大阪万博と夢洲にIR(統合型リゾート施設)を建設する、という将来への布石も打ってきた維新が負けるはずないと思いながら、選挙は水ものなので、筆者の中にも一抹の不安はあった。

しかし、やはり大阪府・市民は賢明な選択をした。選挙当日、お笑い芸人・ブラックマヨネーズの吉田氏が、ツイッター(https://twitter.com/bmyoshida/status/1114602103056375808)で、

<【大阪】人が必死で考えて、結果まで残して言う意見に対して、「それは違います」と言いきる。背筋を伸ばし首を横に振るだけ。そして、代替案は話し合いが大事だという。いいか?相手の意見を首振って否定する、そんな奴が話し合いで解決できるとか言わないで欲しいんだ。>
とつぶやいたが、これは大阪で維新を支持する一般的な人の、まっとうな感想だろう。
さて、これで2025年万博も夢洲IRも実施に向けて動くことになるので、大阪の成長はひとまず安心である。

一方、日本全体の成長はどうなるか。次の元号が「令和」に決まり、慶賀ムードが高まっているが、「令和」はどのような時代になるのだろうかを予測してみたい。

結論から言えば、それは、今後安倍政権がどこまで続くか、その上でもし安倍政権が続く場合、どのような政策を打つのか、によって大きく異なってくるだろう。

自民党の一部からは、自民党総裁の任期を延長して「安倍四選でいい」という話も出てきているが、これまでの歴史をみると、そう簡単ではないことが分かる。

明治以降、改元があったのは①1912年7月3日(大正元年)、②1926年12月25日(昭和元年)、③1989年1月8日(平成元年)と、今回の④2019年5月1日(令和元年)である。

それぞれ、①は第二次西園寺内閣(1911年8月3日0~1912年12月21日)、②は第一次若槻内閣(1926年1月30日~1927月4月20日)、③は竹下内閣(1987年11月6日~1989年6月3日)の時に起こっている。そして④が第四次安倍内閣(2017年11月1日~)である。

これまでの改元では、改元後半年たらず(ほぼ5カ月後)にその時の内閣が退陣している。①大正後は5カ月18日、②昭和後は4カ月26日、③平成後は4カ月26日で、それぞれ内閣が倒れている。これまでの改元は天皇崩御に伴うもので、今回の譲位はまったく違うものではある。

しかし、それにしても過去3回で改元の5カ月後に内閣が退陣している、というのは不吉な事実である。

改元後、各政権で何が起こったか

①の内閣退陣は、日露戦争後の情勢変化により、当時勢力を強めていた軍部と財政難を理由とする内閣との争いが原因で、1912年12月に、西園寺内閣が総辞職に追い込まれた。

②は、1927年3月の昭和金融恐慌が原因であった。経営危機となった台湾銀行を救済する緊急勅令案発布について、1927月4月に枢密院が否決して若槻内閣が倒れた(枢密院は戦前の天皇の諮問機関であり、戦後は廃止されている)。

③は記憶に新しい。1988年12月24日の消費税導入を柱とする「税制改革法」を竹下内閣は剛腕で成立させた。しかし消費税への反発は強く、そのうえ竹下内閣で不祥事が相次いだこともあり、内閣支持率が低下し、1989年6月に退陣に追い込まれた。

いずれも、今とは時代背景が異なるので、軽々に「歴史は繰り返す」とは断言できない。しかし、若干の示唆もあると筆者は思っている。

①は、国際情勢が大きく変化していたにもかかわらず、それを考慮せずに緊縮財政を言い過ぎた結果といえる。②は、若槻内閣の後を継いだ田中義一内閣の高橋是清蔵相が、モラトリアム(支払猶予令)と大量の日銀券増刷を実施することで昭和金融恐慌がおさまった。裏を返せば、若槻内閣が倒れたのは金融引締政策を行ったためだと解釈できる。③は、いうまでもなく消費税が原因である。

これをあえて、今のマクロ経済政策の財政政策と金融政策に置き直してみると、①と③は財政緊縮政策、②は金融引締政策がそれぞれ原因であると整理できる。

マクロ経済政策という観点から、改元後、半年足らずで安倍内閣退陣が起こりえるのかを考えてみよう。

まず、安倍政権のマクロ経済政策は、アベノミクスの第一の矢である「金融緩和」と第二の矢である「機動的財政」である。2013年からの安倍政権をみると、金融政策では異次元緩和を実施してきたが、2013年から2016年9月までは年80兆円日銀保有国債ペースの金融緩和、2016年9月以降は年20兆円の弱い金融緩和、財政政策では、2013年はまさに積極財政、2014年以降は消費増税を強行した。つまり、「なんちゃって」財政政策というべきもので、これは積極財政とはいいがたい。


こうしたマクロ経済政策の推移をみると、最近の景気動向指数の動きをよく説明できる。
これについては、下図や3月25日付け本コラム<消費増税、予定通り進めれば日本に「リーマン級の危機」到来の可能性>https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63706)を見てもらいたい。

今の状況はどうかというと、安倍政権が実施する金融政策は弱く、財政政策も積極的とはいえない。ということを考えると、実は過去の「改元後退陣内閣」の状況と似ていると言えなくもない。

しかも、今年10月には消費増税を予定している。いくら消費増税を見越して経済対策を行うとはいえ、それが切れたときには消費増税の悪影響をもろに被ることになる。これは、特に③の前例が繰り返されるそれが強い。

参院選、消費増税で敗北すれば…

国際社会からも「このタイミングで消費増税はないだろ…」という常識論がでてきた。3月25日付け本コラムやその他で何度も指摘しているが、中国の経済低迷やイギリスのブレグジットに伴う世界経済の悪化が予想されているが、これらはいわゆる「リーマン・ショック級の出来事」になりうるからだ。

これについて、4月3日のウォール・ストリート・ジャーナルの社説で、日本が今年10月からやろうとしている消費増税は「経済を悪化させるワケのわからない政策だ」と皮肉っている(https://www.wsj.com/articles/land-of-the-rising-unease-11554333457)。

別に米紙にいわれなくても、おかしな政策であることは、例えば、今年6月の大阪G20サミットに参加する中国やオーストラリアが、増税ではなく減税政策をやろうとしていることから、誰でもわかるだろう。G20では世界経済の話も議題として出てくるはずだが、議長国の日本がヘンテコな政策をやろうとしていることが世界に伝われば、恥をさらすことになるだろう。

冒頭の大阪ダブル選挙に戻ると、筆者は大阪の経済を考えれば、維新が勝利してよかったと思っている。このダブル選挙において、反維新勢は自民と公明が中心であった。一方、国政では、維新は今年10月からの消費増税に反対しているが、自民と公明は消費増税を推進している。

官邸はまだ最終的な決断をしていないものの、自民党の大半と公明党はほとんど財務省の追随と言っていいぐらい、増税に傾いている。もし、大阪ダブル選挙で、一つでも反維新が勝利していたら、10月からの消費増税を大阪府市民が望んでいる、という間違ったメッセージを与えかねなかった、と筆者は思っている。

いずれにしても、このまま今年10月からの消費増税を行えば、今年7月の参院選に安倍政権はまともに勝てない可能性がある。そうなると、安倍政権は、四選どころか、即退陣も現実味を帯びてくる。

安倍総裁の四選を、という声が自民党から出てくるのは、安倍総裁下の自民党が選挙に強いからであり、逆に最大の強みである選挙に負ければ退陣を迫られる、ともいえるのだ。実際、第一次安倍政権は2006年9月26日にスタートしたが、2007年7月29日の参院選で自民・公明を合わせて過半数をとれず、9月26日に退陣した。

このときを参考にするなら、参院選で負ければその2カ月後に退陣である。今回の参院選は7月に行われるが、それに負ければ9月に退陣となる。つまり、改元の後、半年ももたずに内閣退陣になり、明治以降の「改元後半年もたたずに内閣退陣」という悲劇が繰り返される可能性があるのだ。

この悪夢を吹っ飛ばすには、「リーマン・ショック級」があり得ることを見越して、今年10月からの消費増税を取りやめにするしかないと筆者は思っている。

【私の論評】安倍総理の強みは、経済!まともな政策に邁進することで強みが最大限に発揮される(゚д゚)!




新元号「令和」に国民の好感が広がっているとみて、安倍政権が安堵(あんど)しています。

内閣支持率も押し上げる結果になり、安倍晋三首相は新時代の象徴として、さらにアピールしていく考えです。過去3回の改元では、立ち会った首相はいずれも半年以内に退陣に追い込まれた。安倍首相がこのジンクスを打ち破れるかも注目です。

「いよいよ令和の時代が始まる」。首相は3日、国家公務員合同初任研修で新人職員約780人を前に訓示。新元号が、万葉集にある梅の花を歌った和歌の序文を引用したことを引き合いに、「それぞれの花を大きく咲かせてほしい」と激励しました。首相は令和時代の政権維持に向け、統一地方選や夏の参院選の勝利に全力を挙げる方針です。

新元号決定をめぐり、首相が心配したのは、事前の情報漏えいに加え、国民の評判でした。首相は1日夜のテレビ番組で「多くの方々が前向きに明るく受け止めていただいて本当にほっとした」と語りました。一部報道機関の世論調査でも令和に好感を持つ人が八割強に上り、内閣支持率も上昇。初めて日本古典を典拠としたことも評価され、政権は自信を深めています。

首相は1日夜、自民党幹部と会食した際、「万葉集がブームになる」と述べるなど上機嫌でした。出席者からは「この勢いで(参院選に合わせた)衆参ダブル選は勘弁してください」との声が上がり、首相は笑って聞いていたといいます。

これまで改元を経験した首相はこの記事の冒頭の高橋洋一氏の記事にもあるとおり3人。大正(1912年)の西園寺公望首相(当時、以下同)は陸軍2個師団増設問題をめぐる軍部との対立で総辞職。昭和(1926年)の若槻礼次郎首相は金融恐慌によって、平成(1989年)の竹下登首相は消費税への反発とリクルート事件をめぐる疑惑でそれぞれ退陣しました。

ただ、皇位継承に伴う一連の儀式が来春まで続き、国民の祝賀ムードも持続しそうな今回は過去の改元とは状況が違うとの見方が多いです。政府関係者は「当面、自民党は首相を代えられない」と語ったとされています。

今年予定されている儀式

このようなことがあるため、私自身は安倍内閣は仮に消費税増税をしたとしても、参院選で負けることもなく、しばらくは退陣ということにはならないとは思いますが、そのかわり、実質的に増税後は、憲法改正もできずに、レイムダックになり総裁任期の2021年9月までは総理でありつづけるでしょうが、その後の4選の目はでないと思います。

安倍総理が総理大臣になり、他の総理大臣のように劇的に支持率が落下しなかった最大の要因は、やはり経済政策です。その中でも、財政政策は増税により失敗しましたが、金融政策においては、最近は実質上の引き締めに近いところがありますが、それでも過去の政権と比較すれば結果として緩和を実行し続けたことです。

これにより、雇用情勢はかなり良くなっています。これが、安倍内閣の強みの源泉です。これは、理想からいえばは十分とはいえませんが、それにしても、過去の内閣にはない強みです。

さらには、残念ながら自民党の他の幹部や、野党には全くこの金融政策が理解できていません。安倍総理は憲法の改正等その他のことでは、これほどの強みを発揮することはできなかったでしょう。実際、第一次安倍政権はまともなマクロ政策を打ち出すことができず、退陣しました。

やはり、多くの人々は、自分たちや周りの人たちの暮らし向きを最重点に考えるのです。その中でも、雇用は根幹的なものであり、これが確保されなければ、他の経済指標がいくら良くても、政府の経済政策は失敗です。一部の変わり者は別にして、大多数の日々の普通の生活者にとっては、憲法改正など二の次です。まずは、雇用です。

しかし、安倍総理が、10月の消費税増税を実行してしまえば、金融緩和政策の効き目も、完璧に相殺され、安倍総理は強みを失ってしまうことになります。

経営学の大家ドラッカー氏は、強みについて以下のように語っています。
誰でも、自らの強みについてはよくわかっていると思う。だが、たいていは間違っている。わかっているのは、せいぜい弱みである。それさえ間違っていることが多い。しかし、何ごとかをなし遂げるのは、強みによってである。弱みによって何かを行うことはできない」(『プロフェッショナルの条件』)
ドラッカーは、この強みを知る方法を教えています。“フィードバック分析”です。なにかまとまったことを手がけるときは、必ず9ヵ月後の目標を定め、メモしておくのです。9ヵ月後に、その目標とそれまでの成果を比較する。目標以上であれば得意なことであるし、目標以下であれば不得意なことです。
ドラッカーは、こうして2~3年のうちに、自らの強みを知ることができるといいます。自らについて知りうることのうちで、この強みこそが最も重要です。
このフィードバック分析から、いくつかの行なうべきことが明らかになります。行なうべきではないことも明らかになります。
もちろん第1は、その明らかになった強みに集中することです。強みがもたらす成果の大きさには、誰もが驚かされるはずです。
第2は、その強みをさらに伸ばすことです。強みを伸ばすことは、至ってやさしいです。ところが誰もが、弱みを並の水準にするために四苦八苦しています。
第3は、その強みならざる分野に敬意を払うことです。不得意なことを負け惜しみで馬鹿にしてはならないです。自らにとって弱みとなるものに対してこそ、敬意を払わなければならないです。
第4は、強みの発揮に邪魔になることはすべてやめることです。強みを発揮できないほどもったいないことはないです。
第5は、人との関係を大事にすることです。そうして初めて強みも発揮できます。
第6は、強みでないことは引き受けないことです。正直に私は得意ではありませんと言うべきなのです。
第7は、強みでないことに時間を使わないことです。いまさら直そうとしても無理です。時間は、強みを発揮することに使うべきなのです。
これからは、誰もが自らをマネジメントしなければならない。自らが最も貢献できる場所に自らを置き、成長していかなければならない。(『プロフェッショナルの条件』)
安倍総理には、自らの強みを最大限に発揮していただき、増税を見送り、現在日本にとって最も重要なマクロ経済政策に邁進していただきたいです。

そうして、それは必ず大多数の国民に支持されることになります。

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2016年2月4日木曜日

マイナス金利は極めてまともな政策 緩和手段の余地も残されている ―【私の論評】主流派経済学者が主体(チュチェ)思想とでも呼びたくなる酷い論評をするのはなぜ?

マイナス金利は極めてまともな政策 緩和手段の余地も残されている 

マイナス金利はまともな政策だが・・・・

日銀は1月29日の金融政策決定会合で「マイナス金利」を導入した。日銀の当座預金を3段階に分け、それぞれの階層に0・1%、0%、マイナス0・1%の金利を適用する。

日銀当座預金への付利については、これまでも問題になっていた。先日の当コラムでは、付利をゼロ金利とする追加緩和策とする手があると指摘している。

黒田東彦(はるひこ)日銀総裁が国会で「マイナス金利を検討していない」と言ったことから、ほとんどの市場関係者の間ではノーマークだったようだが、「解散と公定歩合はウソをついても良い」とも言われてきたので、そのような人たちはプロとは呼べないのではないか。

今回の日銀の決定は、ゼロ金利ではなくマイナス金利まで踏み込んでいるので、この点を筆者は高く評価できる。

日銀当座預金への付利0・1%は、金融緩和効果を減殺してきた。黒田日銀以前は、国債買いオペの対象は中短期債であった。金融機関は低利の中短期債を日銀に売却して、その代わりに日銀当座預金で運用しているという状態だった。

日銀による国債買いオペとは、そもそも日銀が金融機関から国債を取り上げて、その代わりに収益ゼロのキャッシュを与える。金融機関はキャッシュのままでは収益が上がらないので、収益を稼げる貸出や株式への投資を促そうというものだ。そのためには、当座預金への付利が障害だった。

当座預金金利をゼロにしたり、欧州中央銀行(ECB)のようにマイナスにするのは金融政策としては極めてまともである。しかも、2016年度は国債が品不足の状態なので、買いオペ(市場からの国債購入)の増額はテクニカルな面でもやりにくい。

国債市場で取引される国債は新規発行されたものが多く、過去に発行されて金融機関のポートフォリオに沈んだ国債はあまり取引されない傾向がある。このため、追加緩和の効果を考えれば、おのずと日銀当座預金の付利をゼロまたはマイナスにするという政策になる。

マイナス金利自体は、スイス、スウェーデン、デンマーク、ECBで行われている。この意味では、ごく普通の金融緩和措置である。

マイナス金利は一般には「金融機関課税」ともいえるわけだが、今回の日銀のマイナス金利は、今の当座預金残高250兆円を超える部分に原則として適用するようだ。

ということは、金融機関としては、日銀の買いオペに応じて日銀当座預金が増加(ブタ積み)すると、ペナルティーが付くということになる。一方でブタ積みを避けて、貸出に回せば、ペナルティーはないといえる。ECBでは、当座預金すべてにマイナス金利がかかるのと比較すれば、日銀のマイナス金利は金融機関には優しいものとなっている。

この意味で、当座預金にもかかわらず付利し、現状2200億円程度が金融機関への事実上の補助金になっていることは是正されていない。

これが今後の問題でもあり、まだ金融緩和の手段の余地は残されているということもできる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】主流派経済学者が主体(チュチェ)思想とでも呼びたくなる酷い論評をするのはなぜ?

マイナス金利に関しては、金融関係や識者などから、批判が出ているようですが、それに関しては高橋洋一氏自身が以下のようなツイートをしています。
今回の日銀のマイナス金利は、日銀の銀行向けの当座預金残高250兆円を超える部分に適用するとのことで、まだまだ甘い措置であるともいえます。
当座預金とは、主に企業や個人事業主が業務上(営業資金等)の支払いに利用する無利息の預金で、現金の代わりに「小切手」や「手形」で支払いをする際に活用します。

そもそも、銀行以外の企業や個人事業主が銀行の当座預金を利用するときには無利子であるにもかかわらず、利付し現状では、2200億円程度が利子となっていて、これが金融機関への事実上の国による補助金のようになっているという、金融機関にとってはまさにぬるま湯的な状況になっていたということです。

これは、明らかに金融機関に対する優遇措置であり、こういう状況を打破して、付利しないどころか、マイナス金利にして、日銀にお金を預けておくとマイナス金利を支払わなければならなくなり、銀行は日銀にお金を預けっぱなしにはしなくなり、より一層金融緩和が進むことになります。

黒田総裁は、金融緩和政策の一環として、マイナス金利導入を中央銀行総裁として当然のことをしたにも関わらずこれを批判する新聞や識者がいます。

たとえば東洋経済オンラインでは、以下のような中原 圭介氏の記事を掲載しました。
マイナス金利は「劇薬」というより「毒薬」だ
中原 圭介氏

中原氏は、経営コンサルタント、経済アナリストだそうですが、この記事本当に書いてある内容がクソコメントです。

さらに慶応大学大学院準教授小幡績氏は、以下のような記事を書いています。
マイナス金利で日本経済の何が変わるのか
小幡績氏
 この記事、小幡氏は以下のように述べています。
 マイナス金利で日本経済の何が変わるのか──何も変わらない。変わるとすればデフレを引き起こすぐらいだ。 
 短期的には円安が進む以外は何も変わらない。消費も投資も実体経済においては増えない。したがって、マイナス金利という日銀の新しい金融緩和策が実体経済に与える影響の評価は、さらなる円安を評価するかどうかにかかっている。そして、円安は過度に進んでいるという見方に立てば、これはプラスではなく、パブロフの犬のような株式市場の短期的な反応を除いてマイナスと考えられる。
本当に、クソコメントです。小幡氏は、テレビでもとんでもないコメントをしています。それに関するツイートがありましたので、以下にそのツイートを以下に掲載します。
このツイートは、報道ステーションで報道された、小幡氏コメントをまとめたものです。ご覧いただいてもおわかりになるよに 、知能レベルが疑われるような発言をしています。

それにしても、日本ではなぜか、日本の経済が少しでも良くなるなるような政策が行われると、それにあからさまに反対する意見が出ます。それも、論拠が薄弱なものが多いです。

たとえば、日銀が金融引き締めばかりして、デフレが十数年続いてしまいました。このときに金融緩和をすると日銀が言い出すと、そんなことをするとハイパーインフレになるなどと反対する人がいました。

8%増税に関しては、増税しても日本経済への影響は軽微であるとした論評を大勢の識者が大勢いましたが、その結果、日本経済はかなりの悪影響を受けました。

何やら、日本にはとにかく経済が少しでも良くなりそうな政策や、意見に関しては、論拠に欠ける論評をして反対、日本の経済が少しでも悪くなりそうだと、それに大賛成する人がいます。上に掲載した二人は、その代表的な例であり、この二人だけではなく、大勢の経済学者などの識者がこのような意見を表明しています。

こういう、論評は、一体何のために行われるのでしょうか。私自身は、どうも海の向こうの韓国・北朝鮮や中国に利するような論評のようにしか思えません。

昨日は、朝鮮大学校元幹部逮捕が逮捕されたことについて掲載し、北朝鮮のチュチェ思想についても掲載しました。

北朝鮮のチュチェ思想は、簡単にいえば、朝鮮労働党の目的達成のためならどんな手段を用いてもかまわないという思想です。

主体思想の犠牲者、北朝鮮の痩せこけた子どもたち
そんなことを考えると、日本経済が少しでも良くなりそうな政策や、考えかたに反対したり、その逆に日本経済が壊滅的に悪くなる政策に大賛成の人たちは、経済主体(チュチェ)思想にでも汚染されているのではないかとさえ思えてしまいます。

彼らの、論評は、ほとんどまともなエビデンスに基づいていないのですが、とにかくありとあらゆる、屁理屈を並べアベノミクスは駄目、10%増税はすべきと主張します。こういう主張を聴いていると、自分たちの理屈だけが正しく、とにかく自分たちの考えを正当化するという目的達成のためなら事実を歪めるなどのどんな手段を用いても構わないと考えているようにしか見えません。

これは、北朝鮮の主体(チュチェ)思想ともかなり共通点があると思います。こういうことから、私はこのような論評をする人たちの思想を経済主体(チェチュ)思想と呼びたいと思います。

北朝鮮人民解放軍の女性兵士による剣の舞 北朝鮮の軍では女性兵士へのセクハラが横行。
告発システムもなく、女性兵士たちは沈黙。「人権」という概念すらなく、何をされても
人権侵害だと気づかない。これも主体思想の犠牲者?この写真と、人民解放軍内の
セクハラについては直接関係はありません。
現実にあるものを無いと言ったり、黒を白と言い張る人は世間から疎まれる存在です。しかし、その人に権力がある場合は事情が異なります。例えば絶対権力を有する独裁者の言の前では、人々は理不尽さを感じつつも外面上服従しなければならないでしょう。実は経済学の世界にも、主流派経済学の権威を盾に無理を通す一群の経済学者が存在します。

そうして、現実と自分たちの理論が乖離すると、彼らは自分たちの不見識を糊塗するために、次のように主張します。

「現実が間違っている」と。

「現実が理論どおりにならないのは、人々が経済理論を知らないために間違った行動をとるからだ」とするのです。

「理論が正しく現実が間違っている」と考える経済学者は、理論と現実の関係を顧みないことを自ら表明しているようなものです。しかし、残念ながら多くの経済学者がそうした思考に陥っています。

「専門知(専門家の知見)」と「世間知(国民の知識)」という言葉をよく使う学者がいますが、これも同類です。専門知は経済理論の帰結に基づくものであるから、常に世間知より優れていると言いたいのでしょう。

そして彼らは、「専門知に基づく政策は、国民には耳の痛いことであっても実行しなければならない」と続けるわけです。財政再建論者、増税論者に多く見られるパターンです。

理論の鋳型に現実を押し込めるために、主流派経済学者は如何なる手立てを用いているのでしょうか。その方法は彼等にとって「不都合な現実」を否定することです。具体的には、自らの論理で説明できない不況概念をこの世から消し去ることです。無いことにすればよいのです。

そうして、主流派経済学者らは、10年ほど前には、当時のデフレ状況を以下のように論評しました。

「日本の失われた10年の原因は、財政による景気刺激の不十分さ、流動性の罠(金融緩和が景気刺激に効かない状態)、バブル期の過剰投資の反動、といったものではない。これらは(短期的な)景気後退を説明するものであって、今回の長期にわたる経済不振を説明する理由としては不適当である。

また、企業の設備投資のための資金調達が阻害されている訳でもないため、金融システムの崩壊も原因ではない。

真の原因は生産性の伸び率の低下と、1988年の労働基準法改正を背景とした労働時間の減少で、特に重要なのが前者である。これらは新古典派経済学の経済成長理論で説明できる。

問題解決のためには、生産性を取り戻すためにどのような政策変更(構造改革)をすべきかを追究すべきである」

そうして、この理論は、現実から乖離していたため、実体経済を良くするためには何の役にもたちませんでした。

主流派経済学者の理論は、未だにこれが基本です。金融政策や財政政策などお構いなしにとにかく生産性で実体経済を説明し、現実を無視し、あろうことか、現実のほうを理論にあわせて、金融引き締め、緊縮財政などて変えようとしました。

しかし、現実には金融緩和が行われ、最近は実体経済が良くなりかけたのですが、8%増税で日本経済は足踏みしまた。しかし、主流派経済学者らは、デフレは、生産性が落ちたことによるものであり、アベノミクスは最初から失敗であり、10%増税は予定どおり実施すべきとしています。

これでは、経済主体思想などと言われても仕方ないと思います。

経済理論と、現実の実体経済の乖離があれば、その乖離を縮めようと努力するのが本来の学問の姿だと思います。

しかし、それをしないで、自分の理論をあくまで正しいものとして、現実が間違いであるとするのは、結局のところ、自分の理論を正当化して、現実を変えることを正当化します。そうして、それは、朝鮮労働党の目的を達成するためには、何をやっても良いとするチュチェ思想とまるで同じようなものです。

日本の主流の経済学者らの思想が、チュチェ思想に似るのは、現実を認めず自分たちの理論だけが正しく、現実が間違いであり、その現実を理論にあわせるために、変更しようとするからです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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