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2020年6月3日水曜日

麻生氏の「豹変」が象徴する政府と日銀の“対コロナ連合軍” 相変わらずのマスコミ報道には笑ってしまう ―【私の論評】ピント外れのマスコミには理解できない日本国債の真実(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

麻生財務大臣

新規国債の発行額が、当初予算と1次、2次補正を合わせて過去最大の90兆2000億円に達したと報じられた。

相変わらずマスコミは財務省の言う通りに国債発行額だけを報道しているのかと笑ってしまう。現状はマイナス金利なので、10年以内の年限で国債を発行すると儲かるのが実情だ。

今回の2次補正では予備費10兆円が計上された。本コラムで「100兆円基金」を提唱してきた筆者からみれば、金額は足りないけど、基金とほぼ同じ性格である予備費10兆円計上は一歩前進と評価できる。

なぜ基金の創設を提唱したかといえば、マイナス金利を活用するというのが基本にある。普通のプラス金利であれば、利払いコストを伴う基金を事前に準備する必要はなく、事後で十分だ。しかし、今はマイナス金利なので、事前に用意するのが理にかなっているのだ。

いずれにしても、戦前の大恐慌並みの経済ショックの際に、過去最大規模の国債を発行するのは当然である。それでも財務省の事務方は財政再建の旗を降ろさないが、麻生太郎財務相には、事務方とは違う良い兆候もある。麻生氏は5月12日の記者会見で、政府の借金が増え過ぎることによって日本財政が信頼されなくなる可能性を指摘してきた財務省を「オオカミ少年」と表現したのだ。

この麻生氏の「豹変(ひょうへん)」は、22日の黒田東彦(はるひこ)日銀総裁との共同談話の伏線だったと筆者はにらんでいる。

財務相と日銀総裁の共同談話発表は異例のことで、英国の欧州連合(EU)からの離脱を問う国民投票で金融市場が不安定化した2016年6月以来、およそ4年ぶりだ。

コロナ・ショックは戦争状態ともいえるような非常事態だ。そこで麻生氏が共同談話で「日銀と政府の関係は、きちんと同じ方向に向いていることがすごく大事なことだ」と語ったことが重要だ。

筆者はかねてから、こうした政府と日銀との連合軍を主張していた。経済政策としては、財政政策と金融政策の同時・一体発動を意味しており、コロナ・ショックという戦後初、戦前の大恐慌に匹敵するくらいの経済危機に対し、政府の危機感を示すものだ。

政府と日銀との連合軍では、政府が大量の国債発行によって財源調達を行うが、その一方で、日銀がその国債の買い入れを行う。これによって政府が巨額の有効需要を創出でき、不況の下支えをする。まさに大恐慌スタイルの経済政策だ。

この政策のリスクは、インフレ率が高まることだ。しかし、コロナ・ショックは基本的に需要蒸発した需要ショックなので、当面はインフレというよりデフレを心配すべきときだ。

こうした状況では、さすがに財務省の事務方もすぐには財政再建や増税を言い出すことはないだろう。ただ、ひそかにその準備くらいはしていてもおかしくない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】ピント外れのマスコミには理解できない日本国債の真実(゚д゚)!

麻生氏の5月12日の記者会見の模様を財務省のサイトから引用します。

麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣記者会見の概要(令和2年5月12日(火曜日))

【質疑応答】

問)追加的な経済対策について伺います。安倍首相が昨日の予算委員会で必要であればこの国会でと述べ、自民党での2次補正予算に向けた議論も始まりましたが、改めて規模やスケジュール、予算措置についての考えを伺えますでしょうか。

また、追加の対策により財政の健全化がさらに遠のくおそれもありますが、そのことについてどう考えるでしょうか。

答)まずは先般、4月30日に成立をした1次補正をまず直ちに執行へ移していただいて、総力を挙げて支援を皆さんの手元に早いところ届けなければいけないというところが一番なんだと思うのですが、加えて先般の5月4日でしたか、安倍総理の方から飲食店の家賃負担の軽減の話とか、雇用調整助成金等についての運用等いろいろ出ておりましたし、よく言われるアルバイト学生の支援等、与党において今いろいろ検討もされておられるようなので、速やかな追加的な措置を講じていくというところなんだと思いますので、いろいろ野党もご意見があるようですから、検討を踏まえながら対応していかなければいけないということだと思っています。

2次補正という話は、新しい政策というより1次補正のところで不足しているんじゃないかと言われている部分について主に補足していく、補充していくというのが基本的な考え方かなとは思っております。財政健全化という話がありましたけれども、経済を成長しない限りは財政健全化しませんから、そういった意味では今度の緊急経済対策を速やかに実行することによって雇用とか事業とかが継続され、底割れしないようにしておいた上で、世界経済も今完全に止まった形になっていますから、日本だけが成長するわけではありませんので、そういったものと波長が合えば最高ですけれども、そううまくはいかないでしょうから、日本としては確かな成長軌道に乗せなければいけないところなので、経済の健全化というものをやっていった上での財政健全化ということにならざるを得ないということだと思っています。

問)今おっしゃった財政健全化のところで、経済が成長しないと健全化しないというのはそのとおりだと思うのですけれども、今月8日に発表された国の借金が既に2019年度末で1,114兆円ということで過去最大であるということで、これがさらにどんどん膨らんでいくことによって投資家から見た日本の財政への信認というのが損なわれてしまうのではないかというふうなおそれもあるかと思うんですが、そのあたりの懸念についてはどのようにお考えでしょうか。

答)何十年たって、そうすると金利が上がるんじゃなかったっけね。そこが問題なんだよね。借金が増えて赤字公債を最初に再び出し始めたのが1994年。1994年の金利が幾らだったか調べてごらん。そしてその頃の借金は270、280兆円じゃなかったかな。記憶だからあまり確かじゃない、金利が5%ぐらいだったろう。4.7だったか、そんなもんだ。今幾らだ、1,100兆円だろう。10年ものの国債の金利は幾ら。

問)0%。

答)借金が増えて、200ないし50~60から1,100といえば4倍に増えたんだ。

4倍に増えたら金利はもうちょっと上がるんじゃないの。何で下がるんだ。国債が増えても、借金が増えても金利が上がらないというのは普通私達が習った経済学ではついていかないんだね、頭の中で。

今の答えを言える人が多分日銀にもいないんだと思うけれどもね。そこが問題なんだ。金利が上がるぞ、上がるぞと言って狼少年みたいなことをやっているわけだよね。

だけど現実問題としては本当に上がっていないんだよ。そこのところは真剣に考えなければいけないところなので、我々は金利が低いうちにさっさと金利が高いものから低いものに交換しようとかいろいろ、低いは低いなりに考えなければいけないところなので、低いからできているという経済政策は今のうちだからやれるというのだったら、それは今のうちにさっさとそれを最大限に活用してやっていかなければ、経済対策、財政政策を考えなければいけないということだと思いますね。

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ここでは、狼少年(財務省)の言うように、なぜ国債の金利が上がらないのかその訳を解説します。

2020年3月末の国債及び借入金残高は1114兆円ですが、10年国債金利は0%前後で推移しています。この水準は日本銀行のyield curve controlによって引き下げられたものですが、QQEが始まる前から1%を割り込んでいました。


ちなみに、QQE(キュー・キュー・イー)とは、"Quantitative and Qualitative Monetary Easing"の略で、量的・質的金融緩和のことをいいます。これは、日本銀行が2013年4月の政策委員会・金融政策決定会合において導入を決定した、従来とは量・質ともに次元の違う金融緩和策を指し、FRBECBなどの「QE(Quantitative easing):量的金融緩和」とは区別されます。

「借金が増えても金利が上がらない」のは全く不思議なことではなく、経済学の常識で十分に説明できます。

個人や民間企業では借金が増えると金利が上がるのは、利払いや元本返済ができなくなるリスクが上昇するからです。個人には寿命があるので、借金が増えるほど死ぬまでに完済できなくなるリスクは上昇します。民間企業は寿命は定まっていないですが、かつて日経ビジネス社は「企業の寿命」という書籍を出していました。

その書籍では、「企業の寿命は30年」といわれていました。私は、これは正しいと思います。ただし、「企業の寿命」というよりは、「事業の寿命」といったほうがより正しいと思います。

現在の大企業だと、複数の事業を運営するのが当たり前なので、大企業が30年以内に潰れるということは滅多にありません。ただ、中小企業で一つの事業しか営んでいない企業は、他の事業を模索したり、複数の事業を営むようなことをしておらず、一つの事業だけ、営んでいるところで、何らかの革新を行わないところは、確かに30年もすれば、倒産の危機に見舞わています。

そうなると、事業の寿命は、人の寿命よりも短いともいえるわけです。

事業が業績悪化時に資金繰りが苦しくなると、借換できなくなり、倒産のリスクは借金が増えるほど上昇します。

しかし、政府にはのような寿命はなく(going concern)、さらには、政府には徴税権があり、民間企業の営業収益に相当する税収が途絶えるリスクも無視できます。フローの利払費を税収で十分に賄える間は「優良な借り手」なので、金利収入を求める貸し手がいなくなることはありません。


国債残高にかかわらず、いつまでも借り続けられることは、借金が増えることが信用リスクの上昇に直結しないことを意味します。従って、金利に織り込まれるもう一つのリスクのインフレリスクが上昇しない限りは国債金利も上昇しないわけです。


日本は消費者物価の上昇率も、名目GDPの成長率も低いままなので、国債金利が上がらないのは当然ということになります。

この当たり前のことがわからないので、高橋洋一氏は、「相変わらずのマスコミ報道には笑ってしまう」というのです。

笑う高橋洋一氏、笑う門には福来たる?

マスコミは、金融や財政のこととなる、ほとんど理解していないようで、狼少年の財務省が「金利がー、金利がー」と言うと、すぐに騙されてしまうのです。それも、何回も騙されて、騙されるたびに金利が上がっていないのに、まだ騙され続けているのです。

これを滑稽といわずして、何と言えば良いのでしょう。そろそろ、気づけよということです。

これくらいのことは、経済や金融の知識がなくても常識で考えればわかると思うのですが、どうもそうではないようです。そもそも、財政や金融に関して、知識どころか、センスもないようです。

多分、上のグラフや説明を読んでみても、ピンと来ない人も多いのではないかと思います。そのような方のために、以下の動画をおすすめします。



さすが、上念氏です。国債について本当にわかりやすく解説しています。これをご覧なれば、さらに良くご理解いただけるものと思います。

さて、その上で、マスコミの方に質問したいと思います。

野党はよく国会で、安部総理や大臣などに、クイズのような問題を出すことがおおいです。だから、本当はこのようなことはしたくないのです。マスコミの方々に質問してみたいです。

さて、経団連は2日、定時総会を開き、中西会長の3年目がスタートしました。中西会長は新型コロナウイルスの感染拡大によって、打撃を受けている経済を成長させるために、デジタル化に一層取り組む考えを示しました。

総会で中西会長は「全世界に未曾有の大打撃を与えている新型コロナウイルスの感染拡大の克服と、ダメージを受けた経済の成長の実現という2つの大きな課題に取り組む必要がある」と述べました。

そのうえで「感染拡大をきっかけにテレワークや遠隔医療、オンライン授業などデジタルのパワーを使った新しい生活様式への変化が出てきました。これを元に戻すことなく、むしろ先に進める形で推進していきたい」と述べ、新型コロナウイルスの感染対策として広がったデジタル化に一層取り組む考えを示しました。

さて、中西会長はデジタル化の推進で、生産性を高めるということを言っていました。

そこで、質問です。「デジタル化で生産性が飛躍的に何倍も上がったとします。その時に、日銀が何もしないでそのままにしていたとしたらどうなりますか?」

答えは「デフレになります」です。このくらいは常識だと思うのですが、マスコミ関係者の方々は、ひよっとするとこれも分からないのではないかと思います。

これに関しては、詳細は解説しません。なぜ「デフレ」になるのか、わからない人、考えも及ばない人は、自分は相当経済センスが悪いと思うべきです。

まずは、本当に簡単なことから勉強をし直したほうが良いと思います。そうして、まともな経済記事を書けるようなってください。

【関連記事】

2019年9月5日木曜日

長期金利マイナスの明と暗 金融機関の経営に悪影響も…インフラ整備の絶好のチャンスに―【私の論評】日本は財政破綻するとされマイナス金利なのに、なぜ日本の投資家は日本国債を買い続けるのか?

長期金利マイナスの明と暗 金融機関の経営に悪影響も…インフラ整備の絶好のチャンスに

国債市場で8月29日、長期金利の指標となる新発10年債の終値利回りが、マイナス0・290%となった。2016年7月下旬以来、約3年1カ月ぶりの低水準で、過去最低のマイナス0・300%に迫った。その後はややマイナス幅を縮小しているが、長期金利のマイナスが拡大した背景は何か、経済にどのような影響を与えるのか。

 イールドカーブ(期間別の金利)を見てみよう。8月30日の国債利回りは6カ月がマイナス0・280%、1年がマイナス0・263%、2年がマイナス0・304%、7年がマイナス0・375%、10年がマイナス0・273%だった。



 これに対し、1年前は6カ月がマイナス0・140%、1年がマイナス0・111%、2年がマイナス0・108%、7年が0・019%、10年が0・114%。

 つまり、1年前は順イールド(長期金利が短期金利を上回る)だったのが、今や7年までは逆イールドになっている。

 米国では、2年と10年の金利が逆転すると、景気の先行きが怪しい兆候といわれている。日本でみると、形式的には、2年と10年とで金利逆転はないが、2年と7年とではかなりの金利逆転になっている。

 一般論として、長期金利は将来の短期金利の積み合わせになっている。2年金利は1年金利と1年後の1年金利、3年金利は2年金利と2年後の1年金利によって決まる。つまり、10年金利は、今の1年金利、1年後の1年金利、2年後の1年金利…9年後の1年金利によって決まる。10年金利が今の1年金利より低いというのは、これからの1年金利が今より低いと予想されることを意味する。

 日本経済に当てはめると、今後7年間は景気の先行きが明るくないとなる。少なくとも1年前は、そこまで先行きの不安はなかったが、不透明感がかなり増しているというわけだ。

 その原因は、(1)米中貿易戦争の激化(2)10月末の英国の合意なき欧州連合(EU)離脱(3)ホルムズ海峡の不安(4)日韓関係の泥沼化(5)日本の10月からの消費増税-が考えられる。

 長期金利のマイナスそれ自体は、金融機関経営にとっては、利ざやが取れないので悪影響がある。しかし、実体経済にとっては、金利負担なしで長期資金が借りられるので設備投資の絶好のチャンスだ。不動産投資や住宅投資はかなり良好である。

 政府は、この機会にインフラ整備をどんどん行ったほうがいい。長期金利がマイナスというのは、ほぼ全てのインフラ投資について、費用対効果を算定すれば、投資が正当化できることを意味する。

 具体的にみると、南海トラフ巨大地震や首都直下地震は確実にやってくるので、今の時期に防災対策投資を行うべきだ。さらに、教育、研究開発や国防等でも、政府は国債をもっと多く発行し、それらの施策の費用とすべきである。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本は財政破綻するとされマイナス金利なのに、なぜ日本の投資家は日本国債を買い続けるのか?

上の記事は、高橋洋一氏の解説は、理解しやすく、かつ必要十分であり、これに対して何か付け加えることなどおこがましくてできません。

そこで、このブログでは、もっと根源的というか、基礎的なことを掲載しようと思います。そもそも、日本国債はマイナス金利なのになぜ購入されるかということを掲載します。日本の国債がマイナス金利でも購入されるということがなければ、当然のことながら上の高橋洋一の主張も成り立ちません。

一般に日本政府は巨額の財政赤字を毎年計上しているとされています。これは、このブログでは過去に何度も解説してきたので、このブログの読者なら、財務省の嘘であることはご存知だと思います。

その理屈は、財務省が指摘する国の借金とは、政府の負債のみを言っているだけであって、そのため、借金が1103兆円という莫大な金額に膨れ上がっているとされています。現在税収等が62兆円程度ですから、その18倍の借金を抱えている計算になるとされています。

昨年の新聞記事より。まるで、財務省の広告塔のよう。

ところが、世界で一番資産を持っている、日本政府の資産を計算に入れる相殺すると、政府の借金はトータルでかなり少なくなり、これであると米国や英国などより、良いということになります。さらに、日本政府と日本銀行(日本の中央銀行)をトータルした統合政府ベースでいうと、すでに財政再建は終了したと言っても良いような状況です。

統合政府ベースで比較しても、無論日本政府の財務状況は、米国や英国、その他諸外国の財務状況と比較してもかなり良い水準にあります。このあたりは、ここで解説していると長くなってしまうので、過去のこのブログの記事を参照していただきたいと思います。

しかし、財務省が嘘を吐きつづけ、何が何でも増税しようとしているので、そのことをはっきり認識している人は金融関係の人でも少ないようです。一般の人ではなおさらです。

そこで、投資家や金融機関の中にも「借金が返済できそうな気がしないので、日本政府は、将来いつかは破産するのだろう」と考えている人は多いはずです。にもかかわらず、投資家や金融機関は喜んで日本国債を買っているのです。ゼロ金利や、マイナス金利ても買っているのです。
それはなぜかといえば、結論から言ってしまえば、「他の選択肢よりはマシだから」「長期的には不安だけれど短期的には安心だから」ということだからなのです。

民間企業が売上高の18倍の借金を抱えていたら、直ちに倒産しそうですが、なぜ政府は倒産しないのでしょうか。それは、皆が喜んで政府に金を貸している(日本国債を購入している)からです。

黒字倒産という言葉があるように、黒字赤字と倒産とが直接関係しているわけではありません。銀行の取り付け騒ぎもそうですね。銀行が赤字だろうと黒字だろうと「あの銀行は倒産しそうだ」という噂が流れて預金者たちが一斉に預金を引き出しに走ると、本当に資金繰りがつかなくなって破産しかねないわけです。

つまり、企業も銀行も政府も、資金繰りがつかなくなった時に倒産するのです。これを反対から見れば、どれほど巨額の赤字を続けていても、あるいは巨額の赤字あると思われ続けても、資金繰りが付いている間は倒産しないのです。

そこで疑問がわいてきます。なぜ投資家や金融機関は「売上高の18倍の借金のある民間企業には金を貸さない」一方で「税収の18倍の借金あると彼らが信じて疑わない日本政府には金を貸す」のか、ということです。

しかも、強制されたわけでもないのに、マイナス金利の長期国債を自発的に買っているのです。これって、普通に考えれば異常としか言いようない行為ではありませんか?

しかし、日本政府に関しては、他に選択肢が乏しいのです。日本政府が破産する時は、日本政府の子会社である日本銀行も、日本国内のメガバンクも、破産を免れないはずです。

「日本政府が破産するといけないから、日本政府には貸さない(日本国債は購入しない)と」なると、手元の資金を日銀に預けても、日本銀行券を大量に持っていたとしても、安全性が増すわけではありません。メガバンクに預金しても、日本政府が破産する時はアウトになるでしょう。

そうなると、円をドルに替えてドルを持つしかありませんが、その場合には為替リスクを抱えることになります。


「とりあえず、今日から明日までの運用を考えよう。明日以降のことは明日考えよう」と投資家が考えたとします。「明日までに日本政府が破綻する可能性は非常に小さい」一方で「明日までに円高ドル安で損するリスクは小さくない」ということならば、「とりあえず明日までは国債で運用しよう」ということになりそうです。

明日以降も全く同じことが繰り返されれば、日本人投資家はずっと日本国債を持ち続けることになるでしょう。「長期的には不安だけれど、短期的には安心だ」ということで短期の投資が繰り返され、結果として長期間にわたって投資が続くことになります。

日本人投資家にとって心強いのは、「他の日本人投資家も同様の投資行動を採るとすれば、少なくとも当分の間は日本政府が破綻することはなさそうだ」と思えることでしょう。そうしてお互いに「意図せざる励まし合い」が行われているわけです。

この点も、社債と異なるところです。社債については、他の投資家が当該社債を買うとは限りません(というか多分買わないでしょう)から。

もちろん、日本人投資家が米国債を全く持たないわけではありません。「為替リスクはあるけれど、ドル高で儲かるチャンスもあるし、そもそも米国債は日本国際より金利が高いので魅力的だ」と言えるからです。

そこで、分散投資として資産の一部を米国債等で持っている投資家は多いのですが、それでも比較的多くの部分は日本国債で持っている投資家が多いです。

日本人投資家から見ると、日本国債は「信用リスクはあるが、為替リスクがないので、相対的に安全な資産だ」と言えるわけですが、外国人から見ると違います。彼らにとっては日本国債は「信用リスクも為替リスクもある、相対的にリスクの大きい資産だ。しかも金利も低い」ということになるからです。

そのため、外国人投資家は、あまり日本国債を持っていません。分散投資として持っている場合や、資金繰り上の理由で短期国債を持っている場合などもありますが、いずれも積極的に持っているというわけではありません。

日本は経常収支が黒字で、対外債権国(海外にお金を貸している国)ですから、政府は外国人から借金をする必要を感じていないわけですが、仮に経常収支が赤字で外国人から借金をしようと思ったら、結構大変です。

彼らは円建ての日本国債を持ちたいとは思わないので、外貨建てで借りることになるわけですが、たとえばドル建であれば、米国債と競合するので、米国債より高い金利を支払う必要があります。最無償が喧伝しているように、本当はそうではないのに、日本政府のような巨額の借金をしている相手には、よほど高い金利でないと貸したくないと考えるのが普通です。

それだけではありません。彼らが不安になって資金を引き揚げると大変なことが起きかねないのです。

政府は、最初に満期が来た国債を償還するためにドルを買いますが、そのドル買いでドルが値上がりします。次に満期が来た国債を償還するためのドル買いが、さらにドルを値上がりさせます。次々と償還のたびにドルが高くなり、最後には天文学的な値段になってしまうかもしれません。

そうなると、ますます日本政府は破産するという思惑が投資家の間で広がるでしょう。それが日本人投資家のドル買いを招くようなことになったら大変です。日本政府の子会社が発行している日本銀行券が紙屑になる前にドルに替えておこう、というわけですね。

日本の経常収支が黒字で、日本が対外純金融資産(外国に貸し付けているお金)が世界一であることが、たとえ、財務省が消費税増税のために、日本が大借金国だとアピールしたにしても、日本政府の破産を防いでくれているのだ、ということをしっかり認識したいものです。

 テレビで報道されるように、日本は海外純資産が世界一というのではなく、
 対外純金融資産(外国に貸し付けているお金もしくはお金にすぐ変えられる資産)
 が世界一である。
無論対外純金融資産が世界一だからといって、世界一裕福とは必ずしもいえません。たとえば、米国は対外純金融資産がマイナス300兆円ですが、これは米国が基軸通貨国であり、もともとこれがマイナスになりやすい体質があるからです。

そうして、日本がなぜこのように対外純金融資産を抱えるようになったかといえば、国内が長い間デフレで、めぼしい投資先がなかったので、海外に投資したということもあります。

ただし、基軸通貨国でもないし、特別な理由もないのに、対外純金融資産がマイナスすなわち、対外純金融負債を抱えている国は、確かに借金国ということができます。しかし、日本はその真逆であり、どう考えても少なくとも借金国ではありません。

もし、日本の経常収支が赤字で、日本が対外負債国(外国からお金を借りている国)であり、かつ財務省が日本は借金大国であると喧伝していたとしたら、とうの昔に日本政府は破産していたことでしょう。

そうではないからこそ、財務省がいくら日本は大借金国であると喧伝し続けても、日本は未だに財政破綻もせず、マイナス金利であってさえ、多くの投資家が日本国債を買い続けているのです。

ただし、賢明な投資家の中に、このことをはっきり認識して、投資を行っている人もいるとは思います。そういう人は、理解していない人よりは、投資効率の良い取引をしているのではないかと思います。

ただし、金融機関の中にはこれを理解しない人が幹部の中にも多いようです。そういう人に限って、現状の低金利、マイナス金利に文句たらたらで、将来の金融機関はどうあるべきかなどの明確なビジョンも持っていないようです。

ちなみに、かつてある金融機関の幹部の人何人かに、なぜ「おたくの会社は日本が財政破綻するのに、国債を購入し続けるのか?」とか「本当に日本が財政破綻するというのなら、それで儲けること(クレジット・デフォルト・スワップ等)ができるはずなのに、なぜをそれをやらないのか?」などと質問したこともありますが、満足に答えられませんでした。無論金融機関の人全部がこのような有様ではないとは思いますが、それにしても困ったものです。

【関連記事】

2012年12月17日月曜日

米著名ヘッジファンドが苦笑するAKB48の日本国債CM―【私の論評】ヘッジファンドのいうことなど傾聴に値しない!!今は何が何でも、自民党に公約を守ってもらうべきとき!!

米著名ヘッジファンドが苦笑するAKB48の日本国債CM:


財務省が個人向け日本国債のテレビCMを流している。国内消費が90%以上の日本国債だが、なぜか一部海外で話題となっているのだ。「日本売り」でも知られる、米著名ヘッジファンドマネージャーのカイル・バス氏が、「ルビコン川を渡る」と発言。いつものポジョントークと見られるが、見過ごすわけにはいかない発言だ。

【私の論評】ヘッジファンドのいうことなど傾聴に値しない!!今は何が何でも、自民党に公約を守ってもらうべきとき!!



上の記事では、ヘッジファンドの「ルビコン川を渡る」という発言を見過ごすことができないなどと掲載していますが、私も、こんな馬鹿な発言見過ごすべきだし、ましてや傾聴になど全く値しないと思います。

これは、いろいろな観点からも明らかです。ヘッジファンドは、無論のこと投資銀行などの言うことは、自分の財産、資産に関わることならまだしも、国の財政、金融政策に関わることなど全く聴く必要はありません。場合によっては、自分にかかわることだって、疑ってかかる必要があります。彼らの最後の切り札は、ご存知でしょう。自分たちの投資が成功しているうちはいいですが、失敗した「自己責任」で終わりです。本日は、AKB48の皆さんの写真等とともに掲載させていただきます。

こんなことは、金融危機で、周知の事実だと思います。彼らは、自分のが儲けるために、顧客から金を集め、投資をして、利鞘を稼ぐ、賭博師にすぎません。このことは、以前のブログにも掲載しました。
上の記事に書いてある内容酷い話(注:様々な国の財政破綻などを弄んできた、投資銀行の話)ですが、私のこのブログでも似たような話を掲載したことがあります。その発端は、ゴールドマンサックスが日本の財政破綻をさかんにはやしたてていたときです。今はなき、その当時、サービスをはじめたばかりのGoogle Buzzを見ていると、アメリカのご婦人が、「ゴールドマン・サックスのアナリストが、日本が財政破綻すると語っている」とBuzzにコメントとを書いていました。
その内容を見て、私はすぐに、そのアメリカのご婦人に対して、日本が財政破綻などすぐにするなど考えられない旨の反論のコメントを即座にしました。
内容としては、今はあまりはっきりとは覚えていませんが、例えば日本の対外純金融資産の額は、200兆円を超えており、これは、世界一の水準であり、これが、20年間近くも続いていること。アメリカは、米ドルで、外国にドル建てで300兆円もの借金を背負っていますが、借金があったとしても、すべてドル建てであり、財政破綻など考えられないことを掲載しました。
実際一国が、財政破綻する尺度として、用いられている指標であるCDS(キャッシュ・デフォルト・スワッブ)でみても、現状では、アメリカは0.5%、日本も!%前後です。これは、別の角度からみると、アメリカは、今後財政破綻する確率が、200年に1度、日本は100年に1度というものです。上のコメントを書いたときには、ギリシャのこの指標は、50%、現状では、100%というものです。
だから、アメリカも日本も、現状では、すぐに財政破綻することなど非常に考えにくいです。にも、かかわらず、ゴールドマンサックスは、日本がすぐにでも、財政破綻するように煽りまくっていました。なぜ、そのようなことをしてきたかといえば、無論金儲けのためだけのためです。日本がどうなろうが、本当に財政破綻しようが、しまいが、とにかく金融に多きな変動があれば、それを利用して金儲けができるからです。
こうして、オオカミ少年のように、日本財政破綻の噂を意図的に流し、何度も煽っていたのですが、そもそも、日本がいつまでたっても、財政破綻しそうにもないこと、さらに、その煽りにのって、投資をした人たちが、大損をしたので、さすがに、最近は、そんなことをしても誰ものってこなくなったので、こうした煽りはしなくなりました。


以上の記事でも、お分かりにになるように、投資銀行や、ましてやヘッジファンドなど、自分たちと、自分たちに出資する人間以外のことなど、どうでもよく、金儲けの材料になりそうであれば、関心をもちますが、それ以外ならどうでも良い存在なのです。とにかく、金儲の材料をいつもうかがっている連中なのです。

まあ、自分の金を預けて、自分のために儲けてくれるといのなら、しかも、かなりの確率で儲けられし、捨て金がたっぷり(理想的には、1億円以上)あるような人なら、話を聞いてもいいですが、他のことで、何か話をしても、それは金儲けのための手段以外の何ものでもないと思っておくのが、妥当です。


彼らにとって、自国や、他国の財政破綻なども、金儲けの材料にすぎないのです。たとえば、一国が財政破綻したとすれは、その国をめぐって大きく金融環境が変わります。それをうまく活用すれば、大きく金儲けができるのです。本当に破綻しようが、しまいが全くお構いなしで、とにかく、そのような機会をいつも虎視眈々と狙っているだけなのです。実際ゴールドマンサックスなど、ギリシャの破綻にも関わっていたとされています。

投資銀行も、ましてやヘッジファンドごときは、日本が財政破綻しようが、しまいがどうでも良いのです。日本が財政破綻すれば、日本をめぐって、金融環境が変わります。それが、彼らのつけ込む口です。こんなことがあれば、これを活用して、大儲けができるのです。このようなことを書くと、とんでもないことを書いていると思われるかたもいますが、もともと、彼らは、日本の財政や、金融政策に対する責任などありません。責任のないものが、ドヤ顔で、「ルビコン川を渡る」などという資格など毛頭ないわけです。


日本では、民主党の野田総理や、安住元財務大臣が、国会で「日本が財政破綻するかもしれない」などという無責任な発言をしていましたし、その情報源はあろうことか、すでに退任した、勝元財務次官でした。それに、日本のマスコミや、いわゆる知的文化人なども、このようなことを言うし、さらに手が込んでると、日本国債が暴落するなどというありもしないことを、ほざいています。だから、これらの発言に幻惑されて、財政破綻するとか、国債が暴落すると信じ込む人も多いです。信じ込んだ人々のうち、有力な企業や、資産家の人々が、日本国債などに投資をするのをやめて、自分たちに投資してくれれば、彼らにとっては願ったり叶ったりなのです。そうして、本当に破綻すればさらに、願ったり叶ったりなのです。

財政破綻については、しそうもないことを引用記事の中にも掲載してあるし、それに過去に何回も掲載してきたことなので、ここでは、詳細を述べませんが、詳細を知りたいかたは、「財政破綻」などのキーワードで、ネットを良く調べてみてください。きっと、納得のいく記事が見つかると思います。


それから、国債の暴落についても、日本の国債は暴落しようがないことをこのブログにも過去に掲載したことがあります。そのURLを以下に掲載しておきます。

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詳細は、上の記事をご覧いただくものとして、以下に国債暴落の懸念があたっていないことを示す部分のみをコピペしておきます。
 たとえ日本政府の信用が凋落しても、日本銀行が金融市場の国債を「買い占める」と、銀行は手元の日本円を政府に貸し出さざるを得ない。すなわち、日本国債が買われることになり、国債金利は低下する。
というわけで、日本政府が過去に発行した国債が100%日本円建てであり、かつ「子会社」の日本銀行が国債を買い入れることができるため、我が国は「政府の財政破綻」「政府の債務不履行」に陥りたくても陥れないのである。
国民の安全や生命を守るインフラ防災などの公共投資の財源を、日本銀行の建設国債買入に求めている安倍自民党の政策は、現在の日本に適したソリューションだ。
ただ、日本銀行の国債買入に代償が一つもないわけではない。それは、インフレ率の上昇だ。
上の記事では、インフレ率の上昇ということを言っていますが、今の日本、デフレの真っ最中ですね。であれば、インフレ率が上昇するというのなら、願ったり叶ったりです。

まあ、いずれにせよ、こんなことから、国債暴落はもとより、日本の財政破綻破などあり得ないです。それに、良く良く考えてみれば、投資銀行やヘッジファンドなどだけが、悪いということではないと思います。そもそも、日本で、総理大臣や財務大臣にまでが、ありもしない、財政破綻の危機を煽っていたのですから、彼らからすれば、それを良いことに、言いたいことを言ってみただけかもしれません。言ってみるだけなら、タダですから、彼らの目的を考えれば、当たり前の真ん中かもしれません。


そんなことから、日本は、まつたくルビコン川を渡ってなどいません。こんな話など忘れて、今私たちは、安部政権が実施しようとしている、財政・金融政策を信じて任せるべきと思います。そうして、デフレから一刻もはやく脱出することを第一義とすべきです。それにもう、私たちは、選挙で安部自民党政権を圧倒的な支持率で信認しているのですから、この政策を支持すべきです。それに、何か間違いがあって、自民党内がまとまらず、この政策が実行できないような事態にでもなれば、これは、民主党のマニフェスト違反と同じことになります。そんなことは、絶対に許すべきではありません。

ただし、急いては事を仕損じるということもあります。たとえ、たとえば安倍総裁がいうように、いますぐ金融緩和を実施したとしても、 それが、目に見えて効果があがるには、少なくとも1年半はじかんがかかります。その他にも、時間がかかることもかなりあります。そもそも、難しい困難なことに挑戦しようとしているのですから、すぐに効果があがらないからといって、苛ついてはいけないと思います。とにかく、最初は何かをやっていれば、良しとしなければなりません。そんなときでも、民主党のように、最初から駄目なことをやっているわけではないことを認識すべきと思います。審判は、2年後、3年後にはじめてできると思います。


しかし、何がなんでも、自民党には、政権公約を守らせなければなりません。その覚悟で、今後の推移を見守っていくべきです。そう思うのは、私だけでしょうか? 皆さんは、どう思われますか?





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