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2020年6月3日水曜日

麻生氏の「豹変」が象徴する政府と日銀の“対コロナ連合軍” 相変わらずのマスコミ報道には笑ってしまう ―【私の論評】ピント外れのマスコミには理解できない日本国債の真実(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

麻生財務大臣

新規国債の発行額が、当初予算と1次、2次補正を合わせて過去最大の90兆2000億円に達したと報じられた。

相変わらずマスコミは財務省の言う通りに国債発行額だけを報道しているのかと笑ってしまう。現状はマイナス金利なので、10年以内の年限で国債を発行すると儲かるのが実情だ。

今回の2次補正では予備費10兆円が計上された。本コラムで「100兆円基金」を提唱してきた筆者からみれば、金額は足りないけど、基金とほぼ同じ性格である予備費10兆円計上は一歩前進と評価できる。

なぜ基金の創設を提唱したかといえば、マイナス金利を活用するというのが基本にある。普通のプラス金利であれば、利払いコストを伴う基金を事前に準備する必要はなく、事後で十分だ。しかし、今はマイナス金利なので、事前に用意するのが理にかなっているのだ。

いずれにしても、戦前の大恐慌並みの経済ショックの際に、過去最大規模の国債を発行するのは当然である。それでも財務省の事務方は財政再建の旗を降ろさないが、麻生太郎財務相には、事務方とは違う良い兆候もある。麻生氏は5月12日の記者会見で、政府の借金が増え過ぎることによって日本財政が信頼されなくなる可能性を指摘してきた財務省を「オオカミ少年」と表現したのだ。

この麻生氏の「豹変(ひょうへん)」は、22日の黒田東彦(はるひこ)日銀総裁との共同談話の伏線だったと筆者はにらんでいる。

財務相と日銀総裁の共同談話発表は異例のことで、英国の欧州連合(EU)からの離脱を問う国民投票で金融市場が不安定化した2016年6月以来、およそ4年ぶりだ。

コロナ・ショックは戦争状態ともいえるような非常事態だ。そこで麻生氏が共同談話で「日銀と政府の関係は、きちんと同じ方向に向いていることがすごく大事なことだ」と語ったことが重要だ。

筆者はかねてから、こうした政府と日銀との連合軍を主張していた。経済政策としては、財政政策と金融政策の同時・一体発動を意味しており、コロナ・ショックという戦後初、戦前の大恐慌に匹敵するくらいの経済危機に対し、政府の危機感を示すものだ。

政府と日銀との連合軍では、政府が大量の国債発行によって財源調達を行うが、その一方で、日銀がその国債の買い入れを行う。これによって政府が巨額の有効需要を創出でき、不況の下支えをする。まさに大恐慌スタイルの経済政策だ。

この政策のリスクは、インフレ率が高まることだ。しかし、コロナ・ショックは基本的に需要蒸発した需要ショックなので、当面はインフレというよりデフレを心配すべきときだ。

こうした状況では、さすがに財務省の事務方もすぐには財政再建や増税を言い出すことはないだろう。ただ、ひそかにその準備くらいはしていてもおかしくない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】ピント外れのマスコミには理解できない日本国債の真実(゚д゚)!

麻生氏の5月12日の記者会見の模様を財務省のサイトから引用します。

麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣記者会見の概要(令和2年5月12日(火曜日))

【質疑応答】

問)追加的な経済対策について伺います。安倍首相が昨日の予算委員会で必要であればこの国会でと述べ、自民党での2次補正予算に向けた議論も始まりましたが、改めて規模やスケジュール、予算措置についての考えを伺えますでしょうか。

また、追加の対策により財政の健全化がさらに遠のくおそれもありますが、そのことについてどう考えるでしょうか。

答)まずは先般、4月30日に成立をした1次補正をまず直ちに執行へ移していただいて、総力を挙げて支援を皆さんの手元に早いところ届けなければいけないというところが一番なんだと思うのですが、加えて先般の5月4日でしたか、安倍総理の方から飲食店の家賃負担の軽減の話とか、雇用調整助成金等についての運用等いろいろ出ておりましたし、よく言われるアルバイト学生の支援等、与党において今いろいろ検討もされておられるようなので、速やかな追加的な措置を講じていくというところなんだと思いますので、いろいろ野党もご意見があるようですから、検討を踏まえながら対応していかなければいけないということだと思っています。

2次補正という話は、新しい政策というより1次補正のところで不足しているんじゃないかと言われている部分について主に補足していく、補充していくというのが基本的な考え方かなとは思っております。財政健全化という話がありましたけれども、経済を成長しない限りは財政健全化しませんから、そういった意味では今度の緊急経済対策を速やかに実行することによって雇用とか事業とかが継続され、底割れしないようにしておいた上で、世界経済も今完全に止まった形になっていますから、日本だけが成長するわけではありませんので、そういったものと波長が合えば最高ですけれども、そううまくはいかないでしょうから、日本としては確かな成長軌道に乗せなければいけないところなので、経済の健全化というものをやっていった上での財政健全化ということにならざるを得ないということだと思っています。

問)今おっしゃった財政健全化のところで、経済が成長しないと健全化しないというのはそのとおりだと思うのですけれども、今月8日に発表された国の借金が既に2019年度末で1,114兆円ということで過去最大であるということで、これがさらにどんどん膨らんでいくことによって投資家から見た日本の財政への信認というのが損なわれてしまうのではないかというふうなおそれもあるかと思うんですが、そのあたりの懸念についてはどのようにお考えでしょうか。

答)何十年たって、そうすると金利が上がるんじゃなかったっけね。そこが問題なんだよね。借金が増えて赤字公債を最初に再び出し始めたのが1994年。1994年の金利が幾らだったか調べてごらん。そしてその頃の借金は270、280兆円じゃなかったかな。記憶だからあまり確かじゃない、金利が5%ぐらいだったろう。4.7だったか、そんなもんだ。今幾らだ、1,100兆円だろう。10年ものの国債の金利は幾ら。

問)0%。

答)借金が増えて、200ないし50~60から1,100といえば4倍に増えたんだ。

4倍に増えたら金利はもうちょっと上がるんじゃないの。何で下がるんだ。国債が増えても、借金が増えても金利が上がらないというのは普通私達が習った経済学ではついていかないんだね、頭の中で。

今の答えを言える人が多分日銀にもいないんだと思うけれどもね。そこが問題なんだ。金利が上がるぞ、上がるぞと言って狼少年みたいなことをやっているわけだよね。

だけど現実問題としては本当に上がっていないんだよ。そこのところは真剣に考えなければいけないところなので、我々は金利が低いうちにさっさと金利が高いものから低いものに交換しようとかいろいろ、低いは低いなりに考えなければいけないところなので、低いからできているという経済政策は今のうちだからやれるというのだったら、それは今のうちにさっさとそれを最大限に活用してやっていかなければ、経済対策、財政政策を考えなければいけないということだと思いますね。

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ここでは、狼少年(財務省)の言うように、なぜ国債の金利が上がらないのかその訳を解説します。

2020年3月末の国債及び借入金残高は1114兆円ですが、10年国債金利は0%前後で推移しています。この水準は日本銀行のyield curve controlによって引き下げられたものですが、QQEが始まる前から1%を割り込んでいました。


ちなみに、QQE(キュー・キュー・イー)とは、"Quantitative and Qualitative Monetary Easing"の略で、量的・質的金融緩和のことをいいます。これは、日本銀行が2013年4月の政策委員会・金融政策決定会合において導入を決定した、従来とは量・質ともに次元の違う金融緩和策を指し、FRBECBなどの「QE(Quantitative easing):量的金融緩和」とは区別されます。

「借金が増えても金利が上がらない」のは全く不思議なことではなく、経済学の常識で十分に説明できます。

個人や民間企業では借金が増えると金利が上がるのは、利払いや元本返済ができなくなるリスクが上昇するからです。個人には寿命があるので、借金が増えるほど死ぬまでに完済できなくなるリスクは上昇します。民間企業は寿命は定まっていないですが、かつて日経ビジネス社は「企業の寿命」という書籍を出していました。

その書籍では、「企業の寿命は30年」といわれていました。私は、これは正しいと思います。ただし、「企業の寿命」というよりは、「事業の寿命」といったほうがより正しいと思います。

現在の大企業だと、複数の事業を運営するのが当たり前なので、大企業が30年以内に潰れるということは滅多にありません。ただ、中小企業で一つの事業しか営んでいない企業は、他の事業を模索したり、複数の事業を営むようなことをしておらず、一つの事業だけ、営んでいるところで、何らかの革新を行わないところは、確かに30年もすれば、倒産の危機に見舞わています。

そうなると、事業の寿命は、人の寿命よりも短いともいえるわけです。

事業が業績悪化時に資金繰りが苦しくなると、借換できなくなり、倒産のリスクは借金が増えるほど上昇します。

しかし、政府にはのような寿命はなく(going concern)、さらには、政府には徴税権があり、民間企業の営業収益に相当する税収が途絶えるリスクも無視できます。フローの利払費を税収で十分に賄える間は「優良な借り手」なので、金利収入を求める貸し手がいなくなることはありません。


国債残高にかかわらず、いつまでも借り続けられることは、借金が増えることが信用リスクの上昇に直結しないことを意味します。従って、金利に織り込まれるもう一つのリスクのインフレリスクが上昇しない限りは国債金利も上昇しないわけです。


日本は消費者物価の上昇率も、名目GDPの成長率も低いままなので、国債金利が上がらないのは当然ということになります。

この当たり前のことがわからないので、高橋洋一氏は、「相変わらずのマスコミ報道には笑ってしまう」というのです。

笑う高橋洋一氏、笑う門には福来たる?

マスコミは、金融や財政のこととなる、ほとんど理解していないようで、狼少年の財務省が「金利がー、金利がー」と言うと、すぐに騙されてしまうのです。それも、何回も騙されて、騙されるたびに金利が上がっていないのに、まだ騙され続けているのです。

これを滑稽といわずして、何と言えば良いのでしょう。そろそろ、気づけよということです。

これくらいのことは、経済や金融の知識がなくても常識で考えればわかると思うのですが、どうもそうではないようです。そもそも、財政や金融に関して、知識どころか、センスもないようです。

多分、上のグラフや説明を読んでみても、ピンと来ない人も多いのではないかと思います。そのような方のために、以下の動画をおすすめします。



さすが、上念氏です。国債について本当にわかりやすく解説しています。これをご覧なれば、さらに良くご理解いただけるものと思います。

さて、その上で、マスコミの方に質問したいと思います。

野党はよく国会で、安部総理や大臣などに、クイズのような問題を出すことがおおいです。だから、本当はこのようなことはしたくないのです。マスコミの方々に質問してみたいです。

さて、経団連は2日、定時総会を開き、中西会長の3年目がスタートしました。中西会長は新型コロナウイルスの感染拡大によって、打撃を受けている経済を成長させるために、デジタル化に一層取り組む考えを示しました。

総会で中西会長は「全世界に未曾有の大打撃を与えている新型コロナウイルスの感染拡大の克服と、ダメージを受けた経済の成長の実現という2つの大きな課題に取り組む必要がある」と述べました。

そのうえで「感染拡大をきっかけにテレワークや遠隔医療、オンライン授業などデジタルのパワーを使った新しい生活様式への変化が出てきました。これを元に戻すことなく、むしろ先に進める形で推進していきたい」と述べ、新型コロナウイルスの感染対策として広がったデジタル化に一層取り組む考えを示しました。

さて、中西会長はデジタル化の推進で、生産性を高めるということを言っていました。

そこで、質問です。「デジタル化で生産性が飛躍的に何倍も上がったとします。その時に、日銀が何もしないでそのままにしていたとしたらどうなりますか?」

答えは「デフレになります」です。このくらいは常識だと思うのですが、マスコミ関係者の方々は、ひよっとするとこれも分からないのではないかと思います。

これに関しては、詳細は解説しません。なぜ「デフレ」になるのか、わからない人、考えも及ばない人は、自分は相当経済センスが悪いと思うべきです。

まずは、本当に簡単なことから勉強をし直したほうが良いと思います。そうして、まともな経済記事を書けるようなってください。

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