2020年1月4日土曜日

今年、米国が北朝鮮に軍事攻撃の可能性も…トランプ再選で中国共産党崩壊が加速か―【私の論評】年始早々のソレイマニ氏の殺害は、中国との本格対峙のための前哨戦か?

今年、米国が北朝鮮に軍事攻撃の可能性も…トランプ再選で中国共産党崩壊が加速か


トランプ大統領

 2020年が幕を開けた。

 19年は日韓関係が戦後最悪の状態を迎えたといわれ、18年に続き米中貿易戦争が世界経済の大きなリスクとなった。しかし、12月には安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領が1年3カ月ぶりに会談を行い、米中間の通商協議では第1段階の合意がなされるなど、事態は少しずつ動き出しつつある。

バブル崩壊の中国を追い詰める米国

 では、20年はどう動くのか。

 まず、米中合意に関しては、アメリカが1600億ドル相当の中国製品に対する関税発動を見送るとともに1200億ドル相当の中国製品に対する関税を従来の15%から7.5%に引き下げ、中国はアメリカ産の農産物を320億ドル追加購入し、さらにエネルギーやサービスの購入も増やすという内容だ。

 これは、いわば「額」に対する合意であり、問題の本質である中国の構造改革にまでは踏み込んでいない。また、中国側が大きく妥協したことにより合意に至ったが、その内容を中国側が履行しなければ、アメリカは再び関税強化に踏み切ることを明言している。さらに、複数回に分割される可能性も浮上している第2段階の合意についても、アメリカは中国が第1段階の合意内容を履行してからだとしている。つまり、交渉の本番は今年ということだろう。

 そもそも、アメリカは中国に「外国企業の企業活動の保証」「知的財産権の保護」「資本移動の自由化」「為替の自由化」「国有企業の解体や不正な産業保護の廃止」を求めており、中国の国家資本主義を問題視している。これは単なる貿易問題ではなく文明と文明の衝突であり、アメリカが最終的に中国共産党の崩壊を狙っている以上、今後も終わりなき戦いが繰り広げられるのであろう。

 19年6月から始まった香港デモが長期化し内政に火種を抱える中国は、経済面でも苦しい状況が続いている。企業物価指数が下落し消費者物価指数が上昇しており、景気悪化の中で物価が上がるスタグフレーションの状態にあるのだ。また、民間企業のデフォルト率が過去最高を記録し、高額消費の流れを示すといわれる自動車販売台数も17カ月連続で前年割れとなるなど、さまざまな経済指標を見る限り、バブル崩壊が顕在化している。

 一方、アメリカは11月に香港での人権尊重や民主主義の確立を支援する「香港人権・民主主義法」を成立させ、12月には台湾への武器供与や軍事支援などを盛り込んだ「国防権限法」を成立させるなど、中国に圧力をかけている。いずれも中国は強く反発しているが、中国のもうひとつの火種である新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧に関しても、アメリカは「ウイグル人権法」を成立させる見込みであり、中国にとっては分の悪い戦いが続くことになるだろう。

 また、1月11日には台湾総統選挙が行われるが、現職の蔡英文総統が優勢と見られている。独立派の蔡総統が再選を果たせば、中国にとって向かい風となることは確実だ。

米国が北朝鮮へ軍事行動に出る可能性も

 選挙といえば、今年はアメリカ大統領選挙イヤーである。現状では民主党に有力な候補者がおらず、ドナルド・トランプ大統領の再選が有力視されているが、仮にトランプ政権が2期目に突入すれば、中国および北朝鮮への対応はますます厳しいものになるだろう。

 19年2月に行われた米朝首脳会談が決裂に終わって以来、北朝鮮の非核化交渉は不透明な状態が続き、金正恩朝鮮労働党委員長は再び弾道ミサイル発射を繰り返すなど、18年の米朝合意は事実上の白紙に戻っている。これは、北朝鮮がミサイルおよび核開発を停止し、その間はアメリカが北朝鮮の安全を保証するという内容であったが、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)のエンジン燃焼試験を行った可能性も取り沙汰されている。

 そのため、北朝鮮は自ら安全保障を放棄しており、条件的にはアメリカが軍事オプションを行使してもおかしくない状況をつくり出しているわけだ。アメリカとしても、この状況を放置しておくわけにもいかず、なんらかの行動に出る可能性はあるだろう。

 いわば、北朝鮮は対米融和路線から崖っぷち外交に逆戻りしたわけだが、その北朝鮮にすり寄る姿勢を見せているのが韓国だ。

 昨年、日本の輸出管理強化に反発して軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の一方的な破棄を通告したものの、失効当日になって「破棄通告を停止」するという離れ業を見せた韓国は、文大統領が指名したチョ・グク前法相が数々の不正疑惑によりスピード辞任し逮捕寸前まで追い詰められるなど、青瓦台と検察当局との対立が深まっている。任期5年の折り返しを迎えた文政権は4月に総選挙を控えており、国内世論の支持を得るために、さらに反日的な姿勢を強めるとも見られている。

 また、日本は19年の天皇譲位に伴う改元に続いて、20年も記念すべき年となる。夏に東京オリンピック・パラリンピックが開催され、それに先立ち、春には次世代通信規格「5G」の商用サービスが始まる。

 また、五輪前の7月には東京都知事選挙が控えており、11月には安倍晋三首相の連続在職日数が大叔父の佐藤栄作氏を超えて歴代1位となる予定だ。安倍首相はすでに19年11月の時点で通算在任日数で歴代1位を記録しているが、12年12月から続く連続在職日数でも憲政史上最長となるかどうかが注目される。

英国、いよいよEU離脱へ

 イギリスのEU(ヨーロッパ連合)離脱も、20年の世界の関心事のひとつだ。12月に行われた総選挙でボリス・ジョンソン首相率いる与党・保守党が圧倒的勝利を収め、1月31日の“ブレグジット”がほぼ確定した。2月以降は完全離脱の準備のための「移行期間」に入り、年末までにEUとの間で新たな自由貿易協定で合意するという課題は残っているものの、長期間の混乱に終止符が打たれることの意味は大きいだろう。

 もともと「栄光ある孤立」を外交方針としてきたイギリスは、ヨーロッパ大陸を捨てたことで、今後はアメリカをはじめとする「ファイブ・アイズ」(アメリカ、イギリスのほかにカナダ、オーストラリア、ニュージーランド)との関係を重視する戦略に転換するものと思われる。

 また、EUに加盟している以上は他国との貿易協定を結ぶことはできなかったが、今後は個別の貿易協定交渉も前に進むことになるだろう。日本との間でもTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加を前提とした交渉が進んでおり、安全保障に関しても共同声明により、すでに準同盟関係が構築されている。また、ブレグジットが確定したことで、イギリスは元宗主国である香港の問題に関しても積極的に関与する体制が整ったといえる。

 いずれにせよ、20年は米大統領選とブレグジットのゆくえが世界的な注目を集め、同時にアメリカが中国および北朝鮮とどのようなディール(取引)を見せるのかが重要なポイントとなりそうだ。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】年始早々のソレイマニ氏の殺害は、中国との本格対峙のための前哨戦か?

中国情勢に関しては、このブログでも昨年は様々な内容を掲載させていただきました。その中でも今後の対米関係を最も予感させると思われる記事のリンクを以下に掲載します。
米中貿易「第1段階合意」が中国の完敗である理由―【私の論評】米国の一方的な完勝、中共は米国の要求に応ずることができず、やがて破滅する(゚д゚)!
      昨年12月13日に北京で会見する財政相副大臣の廖岷。重要な会見の
         はずなのに出席者はいずれも副大臣級ばかりだった
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部を以下に引用します。米中貿易「第1段階合意」には7項目の合意事項があります。その合意事項の(7)の内容が今後の中国を運命づけるものとなったと私は考えています。
合意項目(7)の「双方による査定・評価と紛争処理」の意味は自ずと分かってくる。要するに今後において、中国側が自らの約束したことをきちんと実行しているかどうかを「査定・評価」し、それに関して双方で「紛争」が起きた場合はいかにそれを「処理」するかのことであろう。中国側の発表では一応「双方による査定・評価」となっているが、実際はむしろ、アメリカ側が一方的に中国側の約束履行を「査定・評価」することとなろう。
これは、はっきり言えば、米国による合意6項目が中国により履行されているかどうかを米国が監視を意味します。企業などでたとえると、外部から監査するようなものです。

米国はこの監査を本気で行うつもりです。その覚悟をナバロ氏やライトハイザー氏が述べています。
中国が「第一段階」の貿易協定に違反すれば米国は一方的報復を行う可能性がある、とホワイトハウスのピーター・ナバロ通商製造政策局長は15日、FOXニュースのエド・ヘンリーに語りました。 
https://www.foxbusiness.com/markets/us-retaliation-phase-one-trade-china
「私が合意で最も気に入っている部分は強制の仕組みだ。それによってもし中国が合意に違反しそれに関して何もできなければ、我々は90日以内に、基本的に一方的に報復できる」とナバロは語った。「だからそのことについては強力な合意だ。中国が約束した2,000億ドル分の農産物、エネルギー・サービス、そして製品を買うか見てみよう。それは最も容易に観察できることだろう――見たままだのことだ」
ナバロは視聴者に、米国がまだ3,700億ドル相当の中国製品に関税をかけていることを思い出させました。 
「これは中国に対話を続けさせるための保険であると同時に、我々の技術的重要資産に対する保護でもある」とナバロは語りました。
ピーター・ナバロ通商製造政策局長

ロバート・ライトハイザー米国通商代表は15日朝のCBS「Face the Nation」で同じことを指摘し、合意には「本当に確かな強制力」があると説明しました。
「最終的にこの合意全体が機能するかどうかは、米国ではなく中国で誰が決定を行うかによって決まるだろう」とライトハイザーは語りました。「強硬派が決定すれば1つの結果を得ることになる。改革派が決定を行うなら、それが我々の希望だが、別の結果を得ることになる。これがこの合意についての考え方であり、2つのとても異なる制度を両者の利益に統合しようという中での第一歩だ」
どのような反応だとしても「相応」となるとライトハイザーは述べました。
これは、以下の6項目に関して、米国が監視するということです。 
 (1)知的財産権に関する合意、(2)中国による技術移転の強要の是正、(3)食品と農産物に関する合意、要するに中国側がアメリカ側の要求に応じてアメリカから大豆や豚肉などの食品・農産物を大量に購入すること、(4)金融サービスに関する合意、アメリカ側が求めている中国国内の金融サービスの外資に対する開放、(5)為替とその透明度に関する合意、(6)貿易拡大に関する合意、中国側はアメリカ側の要求に応じてアメリカからの輸入を大幅に増やすことを約束
そうして、この合意項目が履行されていなければ、90日以内に、基本的に一方的に報復するということです。

(2)、(3)、(6)関しては、中国がすぐに実行しようと思えばできます。他の項目はなかなかできないというのが中国の実情だと思います。これは、資金を投下して政府が掛け声をかけて、できなければ、武力鎮圧して無理にでも実行させれば、できるというものではないからです。

これを実行するには、ある程度以上の民主化、政治と経済の分離、法治国家化は避けて通れません。中共自体がこのような経験が全くありません。中共幹部には、何をどうしたら良いのかさえ理解していないかもしれません。それに、実行すれば、中共は国内で統治の正当性を失い崩壊する可能性が大きいです。

上の記事にもあるように、今回は中国側が大きく妥協したことにより合意に至ったのですが、その内容を中国側が履行しなければ、米国は再び関税強化に踏み切ることを明言しています。さらに、複数回に分割される可能性も浮上している第2段階の合意についても、米国は中国が第1段階の合意内容を履行してからだとしています。つまり、交渉の本番は今年なのです。

中国側が、従来のようなつもりで、これを上辺だけ実行したようにみせかけても、米国は納得しないでしょう。そんなことは、中国のWTO加盟後の中国の不誠実な対応で懲りています。

であれば、もうすでに3ヶ月後(今年3月以降)には、米国から報復されることはほぼ確定です。これは、バブル崩壊中の中国を追い詰めることになります。これによって、中共崩壊へまっしぐらということにもなりかねません。

一方、トランプ大統領としては、中国問題がメインであり、北朝鮮、韓国はその従属関数程度にとらえていることでしょう。

なぜそうなのかといえば、米国民にとって一番の関心事は、経済だからでしょう。これは、日本でも同じことです。いや、世界中の国々がそうです。

多くの国の国民にとって経済、もっといえば暮らし向きが一番大事なのです。大多数の国民が、大金持ちにはなれなくても、努力すれば正当に報われ、将来に期待を持てるような政治を為政者が実行してくれれば、大多数の国民は満足なのです。

ただし、無論将来に期待を持てるようにするためには、安全保証も大事なことです。ただし、先立つのは国内経済なのです。本格的な総力戦にでもならない限り、これはどこの国でも同じことです。

しかし、中国が不公正な貿易や、技術の剽窃や安全保障の面で米国を脅かしつつあったので、トランプ氏は中国を叩くことを最優先したのです。

考えてみれば、韓国など日本の東京都と同程度のGDPです。ロシアも同程度です。北朝鮮などさらに小さいです。EU諸国も、EU単位ではなく、国別にみれば、いずれの国も日本よりもGDPが小さいです。

中東も同じです。サウジアラビアのGDP(国内総生産)は、世界で18番目です。ところが、米国のペンシルベニア州よりも少ないです。2017年のサウジアラビアのGDPは約6830億ドル、ペンシルベニア州のGDPは7520億ドルでした。そして、ペンシルベニア州のGDPはアメリカ50州のうち6位です。

中国は1人あたりのGDPでは、まだまだ低くく中進国の中でも低レベルですが、それにしても国レベルでいえば、人口は、13.86億人で14億人に迫る勢いで、GDPも米国についで世界第二位です。中国共産党は、この経済を裏付けに他国にはできないこともできるのです。中国のみが現在では米国の安全保障と、経済を大きく脅かす存在なのです。

このような事実をみると、米国が中国問題をメインとして、他は従属関数と考えるのは当然といえば当然です。これをトランプ大統領は「米国第一主義」と表現しているのです。そう考えれば、トランプ氏の言うことは何も矛盾していません。米国第一主義を貫くためにこそ、中国と対峙するのです。他は従属関数に過ぎないのです。


現在、北朝鮮は核を保有しているとはいえ、金正恩は、金王朝存続のために中国の干渉をひどく嫌っています。そのため、結果として北朝鮮とその核の存在が、中国の朝鮮半島全体への浸透を防いでいます。

しかし、このバランスが崩れ、中国、北朝鮮、韓国が協力関係を強め、中国主導で38度線を有名無実とし、米国と対峙したり、同盟国である日本に攻勢を強める様子をみせたりすれば、トランプ大統領は、躊躇することなく、中国と直接の軍事対決は避けつつ北朝鮮を攻撃するでしょう。

そうして、そのときはサラフィー・ジハード主義組織ISILの指導者バクダディや、イラン革命防衛隊のコッズ部隊を率いていたソレイマニ司令官を殺害したように、金正恩を斬首することでしょう。場合によっては、他の幹部も狙い撃ちするかもしれません。

これにより、米国は習近平ならびに、中共幹部にかなりの衝撃を与えることになります。米国との合意事項を守ることと、命を失うことのいずれを選ぶのかということになれば、たとえ、中共が崩壊しても合意事項を守るということになるでしょう。

年始早々の、ソレイマニ氏の殺害は、今年3月以降に考えられる、中国との本格的対峙に備えるための前哨戦のようなものと捉えるべきです。実際、米国はイラン精鋭部隊、革命防衛隊のソレイマニ司令官をイラクで殺害し中東地域で緊張が高まる中、イラクのメディアはアメリカ軍が3日、現地の民兵組織を標的にした新たな攻撃を行い、6人が殺害されたと伝えています。

米国のニューズウィークは、国防総省関係者の話として、攻撃はシーア派民兵組織「イマーム・アリ旅団」の指導者を標的に行われ高い確率で殺害したとみられると伝えています。

「イマーム・アリ旅団」は、イラクの複数のシーア派民兵組織で構成される「人民動員隊」の中の有力部隊で、ニューズウィークによりますと、今回の攻撃はイランの精鋭部隊、革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害した作戦の一環として、2日にトランプ大統領が承認したということです。


トランプ大統領は、今年3月以降の中国との対峙に備えて、中東における脅威を少しでも減らしておくため、年初に攻勢にでたものと見られます。


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