2019年12月25日水曜日

あまりに酷い中国のウイグル政策に米国が人権法案可決―【私の論評】日本も国会で超党派での「香港、ウイグル対中非難決議」で中国共産党に対抗するべき(゚д゚)!


岡崎研究所

 今年1年を通じて、米国第116回議会では、「2019年ウイグル人権政策法案」が審議されてきた。法案の正式名は、「新疆におけるトルク族ムスリムの人達に対する酷い人権侵害を非難し中国内外でのこれらの人達への恣意的な拘留、拷問及びハラスメントを止めさせることを訴える法案」である。1月17日にマルコ・ルビオ上院議員(共和党、フロリダ選出)より提案され、上院外交委員会や下院では外交委員会、情報委員会及び司法委員会で審議がなされてきた。9月11日、上院では、全会一致で可決され、下院ではより強硬な法案として12月3日に407対1で可決した。同法案は、米国政府の様々な省庁に対して、中国の新疆における再教育センター(強制収容所)を含むウイグル人の状況を報告し、必要な措置を講じるよう求めている。



 12月3日の可決を前にして、米ワシントン・ポスト紙の論説委員長ともいうべきFred Hyattが、12月2日付の同紙に、中国共産党習近平政権が新疆ウイグル地区で、ウイグル人に対して行っている政策を、「今世紀最大の人道に対する罪が中国北西部で行われている」と断定する論説を寄せた。

 先般流出した中国共産党のウイグル人対策に関する内部文書などを読んだうえで書かれた論説であると思われるが、過激派のテロを防ぐために100万人以上を強制収容するということは、「鶏を裂くに牛刀をもってする」ようなもので、目的と手段が著しく不均衡である。ウイグル人のアイデンティティを根絶しようとする暴挙といってよい。

 先般の中国共産党内部文書によると、このキャンペーンは習近平の号令で行われているという。こういうひどいことをして、習近平主席が国際社会で尊敬される立場にいることは不可能であろう。

 12月2日、遼寧省瀋陽市の中級人民法院は、ウイグル自治区主席を務めたウイグル族のヌル・ベクリ元国家発展改革委員会副主任に汚職の罪で無期懲役を言い渡した。ヌル・べクリはウイグル人としては異例の出世をした人であるが、ウイグル人から見ると、この判決は反ウイグルキャンペーンの1つと見られるおそれがある。 

ヌル・ベクリ氏

ウイグル弾圧は、イスラム諸国からはイスラム弾圧と思われる危険があるし、欧米からは、人権侵害、人道に対する罪とみなされている。この中国のウイグル政策はテロをなくすどころか、テロを挑発する可能性が大きいと思われる。中国の不安定化につながるだろう。


 中国は正しいことをしているのならば、新疆での状況をオープンにして、赤十字による現地視察、国際的調査視察団の受け入れをすべきである。これだけ国際的な問題になっていることを秘密のベールで包み隠すことは国際的に認められないことであろう。

 米国議会が「香港民主主義・人権法」を通過させ、今回、「ウイグル人権政策法案」を可決したことに、中国は猛反発している。ただ、この件とは別個に、米中は、12月13日、貿易交渉において第一段階の合意に達した。中国が年間500億ドルとも言われる大量の米国の農産物を輸入するかわりに、米国は対中関税の一部を15%から7.5%に引き下げることで話はまとまった。が、今後も、米中間では、人権や技術問題、安全保障等では対立することが予想される。来年は米国大統領選挙もあり、当分、米中関係は紆余曲折を経ることになろう。

【私の論評】日本の国会も超党派での「香港、ウイグル対中非難決議」で中国共産党に対抗するべき(゚д゚)!


中国は二度と 新疆ウイグル自治区(ウイグル族 は東トルキスタンと呼ぶ)で犯した罪を隠蔽することはできません。数か月間にわたり、活動家、NGO、国際組織などからの激しい糾弾が続いた後、米国の上院を『ウイグル人権政策法案』(S.178)が通過したことで、先に進むしかない段階まで到達したのです。

9月11日、上院では、全会一致で可決され、下院ではより強硬な法案として12月3日に407対1で可決しました。かなり大きな動きです。両党全会一致で可決したのですが、そのような法案としては世界初であることが、何よりも重要です。実に初めて、主権国家の立法府がウイグル族ムスリムに対する虐待を非難し、行動をよびかけているのです。

それだけでありません。この法案は文字通り、「新疆のチュルク系ムスリムの重大な 人権 侵害を非難し、中国内外の当該コミュニティの恣意的な拘束、拷問、嫌がらせの中止を要請する」ために作られたのです。

これは、米国上院が承認した法案は以下の事柄を認めたことを意味します。

第一に、ウイグル族だけでなく(悪名高い 「教育による改心」のための強制収容所 に最大300万人が拘束されている)、カザフ族、ウズベク族、キルギス族、トルクメン族、タタール族やその他(何千人も)のチュルク系少数民族のすべてが中国で迫害されていること。

第二に、これらのチュルク系の人々をムスリムとして特定し、彼らが信仰を理由に迫害されていること。第三に新彊で迫害されているチュルク系ムスリムの人々は中国の国境外でも迫害を受けており、それは国際的にも違法行為であること。

有能な連邦議会議員であり、「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)」共同議長も兼ねるマルコ・ルビオ(Marco Rubio)上院議員(共和党、フロリダ州選出)、は、これらの虐待を非難するときには率直に中国を「全体主義(中略)政府」と呼んでいます。

マルコ・ルビオ(Marco Rubio)上院議員(共和党、フロリダ州選出)

なぜなら「広範囲に及ぶおぞましい人権侵害」と「米国本土で米国市民と合法的永住者に対して、脅迫、恫喝」を行っているからです。

これは前例のない出来事です。実質的には、この法案によって、国家情報長官が国務省と連携して報告書の公布を実行に移し、「新疆各地の取り締まりによって引き起こされた国家と地域の安全保障上の脅威、中央アジア、東南アジア政府がチュルク系ムスリムの難民と亡命申請者を強制的に送還する頻度、予測警備や大規模データ収集と分析など、中華人民共和国政府が使用しているチュルク系ムスリムの大規模拘留と監視を容易にする技術の移送と開発状況を査定すること」が可能になるのです。

この報告書には「政治的『再教育収容所』に拘束された個人の数および拷問、信仰の放棄の強制などの虐待の有無を含む新疆地方の収容所拘束者の状態」、「強制収容所の地理的位置の可能な限りの記述、当該施設に拘束されている人々の数の推定」、また「中華人民共和国の『再教育』の責任所在機関のみならず、中華人民共和国当局がウイグル族の拘束者を『再教育』する際に用いた手段を可能な限り記述」、そして「拘置所や刑務所をはじめとする施設に恣意的に拘束された個人の数の査定」などが盛り込まれます。

さらに、「新疆各地で『政治的再教育』収容所の建設と運営、監視技術や運用組織の提供と運用に携わった全中国企業の一覧の付記を含む」。そして「『政治的再教育』収容所への送還の危機にさらされた状態で収容所と地域の工場で行われた低賃金の強制労働」から「利益を得た中国企業と業界のリスト」も盛り込まれます。

「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が新疆の衝撃的な状況に関して綿密かつ正確な報道を行っていることを理由に、その従業員を脅迫している中国の動きを非難する一方、法案は国務長官に対し、「国務省内に新たな職位として『新疆担当米国特別調整官』を設立し、外交、政治、広報外交、経済支援、制裁、テロ対策、安全保障資源を行うほか、米国政府内で議会報告を義務付け、広く認知されている新疆地区の重大な人権侵害に対応する」ことも検討するよう嘆願しています。

最後に、9月11日に米国の議員が承認した文書は「人権の包括的責任に関するマグニツキー法」(『ロシア及びモルドバ、ジャクソン=バニク除外およびセルゲイ・マグニツキー説明責任法』)の適用を要請しています。この法律により、2016年から米国政府は、世界のどこかで人権侵害に関与した外国当局に制裁を加えることができるようになっています。

そして、2016年の『フランク・ウルフ国際信教の自由法』の徹底的な施行も求めています。フランク・ウルフ(Frank Wolf)元下院議員(共和党、ヴァージニア州選出)の名を冠するこの法律は、米国が外交の強化、教育、対テロ対策、外国支援を通して世界の信教の自由を促進する能力を向上させようとするものです。

これからが、米国議会の両院を通過した現在、新疆で違法に拘束され、嫌がらせ、虐待、拷問を受けている数百万の罪のない人々の苦しみが終わりの始まりを迎えるでしょう。長い道のりであることは間違いないですが、最初の一歩なくしては、何も成し遂げられません。

中国共産党は監視の行き届いた社会をつくることを目指しています。ウイグルのみならず、人権弁護士など民主化を推進する人を弾圧するなど圧政を行っています。中国は経済力でも軍事力でも米国と肩を並べるような国を目指しているのですが、こういう圧政をしていては、とても世界の指導国にはなれないし、すべきではありません。


米国アニメの #サウスパーク がこのほど配信した『band in China』(バンド・イン・チャイナ)が、言論の自由や人権に関する敏感な内容で中国を風刺したため、中国から視聴できなくなっています。この件について、主な国際社会は中国共産党を邪悪であると認識し、その認識は大きく変わったと考える人もいます。 

米国の成人向けアニメ「サウスパーク」は、ブラックユーモアで時世を風刺することで知られ、1997年に初配信されてから現在までに数々の賞を受賞しています。米ニュース雑誌『タイム』は同番組を「米国の過去数十年の中で最も鋭い風刺作品」と称賛しています。


こういう弾圧、圧政をしている背景は何なのでしょうか。それは、彼らが自らの統治の正統性に自信を持っておらず、共産党統治が一寸油断するとひっくり返されかねないとの恐怖におののいているからだと考えられます。

そもそも、中国共産党による政権は、選挙で選ばれた政治家ではなく、その正当性を主張できない、指名という手順で選ばれた人間によって運営されています。これは、政治家というよりも、官僚に近いというか官僚そのものです。このような体制が建国以来70年も続いてきたことが、奇跡に近いです。

天安門事件についての報道を今なおブラックアウトし、報道規制をしているのは、それが再び起こりかねない「悪夢」になっているからではないでしょうか。

国連の第3委員会や人権理事会で、ウイグル問題について考え方を同じくする国と共同で、中国の説明を求めるなどやるべきことは多いです。それがウイグル人のためにも中国人民のためにもなります。イスラム諸国会議にも役割がありえます。

そうして、無論日本にも役割があります。それは、習近平国賓訪日という最大の外交失政は防ぐことです。もし、日本が習近平一旦国賓待遇で招聘した場合、政府がこれを取り消すことは難しいです。

これに対し、国会としては、超党派での「香港、ウイグル対中非難決議」で対抗するべです。

もしこれが可決したなら、恐らく訪日は取り消しか延期となるでしょうが、仮に訪日すれば政府から面前で改善申し入れを行う事を定めて置くことにより、外交上の最大の失政を致命傷にすることだけは辛うじて避けられるでしょう。

外交の要諦は、「国際的大義を伴う長期的国益の追求」に他ならないです。

今回の習氏国賓訪日は、人権無視という面で国際的大義を、領土問題や経済的メリット等という面でも長期的国益を著しく毀損します。経団連会員企業の経営者任期に見合う程度のメリットはあるのかもしれませんが、そのような短期のメリットを優先すべきではないのです。


彼らの大半そうして、彼らの後ろ盾になる政治家などは、後10年、長くても20年すれば、確実にこの世にいません。そのような彼らのメリットよりも、現在の若者、子供たちのことを優先すべきです。そうして、無論弾圧・迫害を受けているウイグル人を優先すべきです。

与野党有志の決起を期したいです。


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