中国の習近平国家主席。米中「貿易戦争」に頭が痛い=7月、南アフリカ・ヨハネスブルク |
中国共産党最高指導部メンバーと長老らが毎年8月、河北省の避暑地、北戴河に集まる非公式・非公開の「北戴河会議」が終わった。今回は「米中貿易戦争」の激化や、広域経済圏構想「一帯一路」の限界など、難題山積で紛糾したとみられている。揺らぐ習近平国家主席の立場と、「チャイナセブン」(中央政治局常務委員7人)の失脚情報、狙われた日本の元首相2人について、ノンフィクション作家の河添恵子氏が緊急リポートする。
「この夏の休暇は、これまでと雰囲気が異なる」「形勢が緊迫し、緊張が張りつめている」
中国共産党の機関紙「人民日報」傘下の新メディア「人民日報中央厨房」は9日、北戴河で休暇を取った人物の発言を、こう報じた。難題山積、北戴河会議の異変は確実なようだ。
難題といえば、ドナルド・トランプ米政権が仕掛けた米中貿易戦争だろう。これは、「中国=最大の脅威」とみなした対応で、中国経済の息の根を止めかねない。そして、世界の製造強国を目指す「中国製造2025」計画も、欧米諸国は「軍事覇権に拍車をかける」と警戒態勢に転じた。
「一帯一路」構想についても、関係国からは「債務の罠」であり、国が借金まみれになり、政治がコントロールされ、港湾など戦略的軍事拠点が奪取されるとの非難が噴出している。北極海航路を狙われているロシア、中央アジアも「一帯一路」への警戒感を強めている。
さらに、野党連合を率いる、93歳のマハティール・モハマド首相の再登板によって、マレーシアなどでは“脱中国”の動きが急速に進行中である。
中国国内でも、党幹部を含めて、習独裁体制への懸念が高まり、人民解放軍や人民の不満も爆発寸前…。内憂外患の習政権は、まさに崖っぷちにある。
党最高幹部の動向にも“異変”がある。
「北戴河に(チャイナセブンの1人)王滬寧(オウ・コネイ)の姿がない」「1カ月近く雲隠れしている」「失脚か?」「影響力を失った」などの内容が、反共産党系中国メディアから噴出している。
歴代中国共産党トップの理論的支柱を務めてきた 王滬寧氏。習近平思想も彼が骨格をつくりあげた。 |
序列5位の王氏は、「3つの代表」「科学的発展観」「中華民族の偉大なる復興」など、江沢民、胡錦濤、習近平という国家主席3代の重要理論の起草に関与し、中南海の“知恵袋”と言われてきた。第16回党大会(2002年11月)で中央委員入りし、党中央政策研究室主任に就いて16年、現在に至るまで、その地位を維持してきた。
だが、第2次習政権は、その王氏に一連の政策失敗の全責任を負わせ、習政権の“イメージ転換”を図るのだろうか?
海外の中国人ジャーナリストらの弁によれば、「鄧小平時代の『韜光養晦』(とうこうようかい=才能を隠して、内に力を蓄える)の時代とは一変し、習政権が傲慢に『見える』ことで、世界から不評を買ってしまった。その責任が彼(=王氏)にある」という論理だ。2月下旬に封切られた中国の自画自賛映画『すごいぞ、わが国』も4月に突如、上映禁止が報じられた。
世界各国が本気モードで中国を警戒するなか、この“新潮流”からズレまくっているのが、日本の元首相たちである。
鳩山由紀夫元首相は11日、北京で開かれた国際シンポジウムに出席し、「一帯一路」構想について、「習近平主席は、目的は平和をもたらすことだと述べた」「日本は大いに協力すべきだ」と強調したという。
福田康夫元首相も6月、江蘇省南京市の「南京大虐殺記念館」を訪問し、「日本人はもっと過去の事実を正確に理解しなければならない」などと語ったことが報じられた。
2015年全国戦没者追悼式で献花をする(左から)福田康夫、鳩山由紀夫、菅直人の歴代首相経験者 |
1989年6月の天安門事件で、「自由と民主」「法の下の平等」「人権」という価値観を重視する欧米諸国から一気に四面楚歌(そか)となった中国は、日本へすり寄ってきた。
歴史は繰り返す。欧米諸国に危険視された習政権がいくら微笑み外交に転じようと、中国は、沖縄県・尖閣諸島も台湾も「我がもの」と考えており、軍事超大国となり世界覇権を目指しているのだ。
日本はもういい加減、だまされてはならない。
■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『中国・中国人の品性』(ワック)など。
河添恵子氏 |
【私の論評】日米リベラルメディアの中国報道を鵜呑みにすれば末は時代に取り残された化石になる(゚д゚)!
ブログ冒頭の記事に掲載されていること以外にも、揺らぐ習近平国家主席の立場を象徴するような事件が起こっています。
その最大のものは、退役軍人のデモの拡大です。中国では、年金削減など退役後の待遇に不満を抱いた元軍人によるデモが続発し、沈静化の兆しが見られません。
このブログでも紹介したように、6月13日に四川省徳陽で最初のデモが勃発したのを皮切りに、江蘇省鎮江で19~24日、湖南省長沙で7月9日、河北省石家荘で12日、山西省太原で17日、内モンゴル自治区赤峰では19日、山東省煙台で24日にと、各地に飛び火しています。
以下に煙台市でデモに関する、動画つきのツイートを掲載します。
中国山東省煙台市 7月24日— 地蛋 (@Wl9uZ) 2018年7月30日
煙台市駅で退役軍人デモ発生
全国各地から結集する退役軍人を阻止するため、中国鉄道局がデモ隊に乗車券の販売拒否!
日本だったら人権侵害になりますが、本物の独裁社会ではニュースにすらならないです。 pic.twitter.com/i1lk2SxbBv
79年に中越戦争に参加した60代の退役軍人を先頭に、デモ参加者の年齢層は幅広いです。元軍人たちは相互に呼び掛け、地域を超えてデモを行っています。
彼らは労働者や農民の抗議と異なり、自分たちで選んだ「指揮官」の号令に従って隊列を組み行進し、政府庁舎前で抗議を行うときも整然としています。警察と機動隊を前にしても一致団結して抵抗し、簡単には退きません。
かつて国家の「暴力装置」だった軍人は、鎮圧する政府側の出方を知り尽くしているだけに厄介です。デモ隊に退官後の己の姿を重ね合わせて見てしまうのか、鎮圧側も強くは出られず、事態は深刻化しつつあります。
退役軍人は中国全土に5700万人以上いるといわれます。習政権になってから国有企業の改革が進まず、経済が悪化の一途をたどり、地方政府の予算も潤沢ではなくなりました。
もともと地方政府は経済統計の水増しを繰り返して業績を偽り、発展を装ってきました。ここに至って地方財政は破綻し、退役軍人に支払うべき年金も削減されているのです。
16年には退役軍人数千人が待遇改善を求め、首都北京の国防省を包囲しました。習政権は今年4月に再就職支援などを行う退役軍人事務省を発足させ不満解消を図ったのですが、情勢は好転していません。
待遇がひどくなっている背景の1つに、習の進めた軍改革があります。人民解放軍は広大な大陸を舞台にした20年代から40年代にかけての国共内戦から発展しました。国民党との長い内戦から次第に4つの野戦軍が形成。毛沢東を最高指導者と認めながらも、それぞれ独自の派閥と地域に立脚した組織が維持されていました。
毛が死去し鄧小平時代になっても、派閥と地域性は基本的に残されました。4つの野戦軍はさらに複数の軍区に分割されることがあっても、旧来の人事・指揮系統は不動のままです。それぞれの軍区内で退役軍人の面倒を見る伝統もそれなりに機能していました。
しかし、総司令官となった習は16年2月から従来の7大軍区を廃止し、5大戦区に整理統合し、人事と指揮は党中央に吸い上げられました。こうした改革で、実戦の際には指揮系統を統一したことで命令伝達はうまくいくかもしれません。ところが、軍と地方の関係を薄めたことで、平時において軍内部の福祉政策は麻痺してしまったのです。
共産党は「党が軍を指揮する」と主張するのですが、それは建前に過ぎません。実際は軍を掌握できた者だけが党を動かし、国家の最高指導者として人民に君臨するのです。
まさに毛沢東が語ったように「政権は銃口より生まれる」わけなのです。この「伝家の宝刀」は毛や鄧の時代はうまく使えましたが、江沢民(チアン・ツォーミン)時代から次第に軍に対する党の権威が衰えました。
胡錦濤(フー・チンタオ)から習に至って威光は一層低下しました。そもそも人民解放軍は27年に中国南部で結成された中国工農紅軍を祖としています。一方、習の父・仲勲(チョンシュン)は中国中部の陝西省を拠点とするゲリラ部隊の出で、しかも文官だったので毛並みはよくないです。そして、習は反腐敗運動を利用して高級将校を多数摘発してきたので、軍に不満がたまっています。
共産党大会の開幕式で拍手する習近平総書記(中央)、江沢民元国家主席(右)、胡錦濤前国家主席(左) |
党の軍隊から国家の軍隊に改編すべきであり、人民解放軍を共産党の私兵から国軍に改造すべきだとの意見は昔から改革派知識人から出されていました。ただ、その改革は私兵に守られた共産党の命脈を絶つことを意味しています。
こうして抜本的な軍改革に手をこまねくうちに、退役軍人という時限爆弾は刻々と暴発へと近づいているようです。
現在はオバマ以前の大統領のときとは全く異なり、完璧に反中国派のトランプ大統領が、大統領選挙線のときから「中国を叩く」とはっきり公約を宣言して、その通りの実行しています。
現在の総理大臣は、中国包囲網を構築するという「安全保障のダイヤモンド」を提唱する安倍総理大臣ですから、良かったものの、鳩山由紀夫や福田康夫のような親中派が総理大臣だったら大変なことになっていたかもしれません。
それこそ、中国に利するような発言や行動をして、米国から利敵行為をしているとみなされ、米国から貿易戦争を挑まれたり、金融制裁をくらったりして大変なことになっていたかもしれません。
それこそ、1980年代の貿易摩擦よりも酷いことになっていたかもしれません。
しかし、この歴史上の大転換ともいえる、この時代を理解していないのは、過去の総理大臣らのみではありません。政治家の中はもとより、マスコミは未だ親中派で染まっているようです。
中国国営テレビCCTV(中国名称は中国中央電視台)といえば、反日の評論や報道、そして日本人を殺人鬼のように描く反日ドラマの放映で知られています。
その中国国営テレビの日本支局というのが、なんとわが日本国の公営放送のNHKの内部に存在しているのです。
中国中央電視台(中国国営テレビCCTV 日本支局)のオフィスは未だに、渋谷区神南2-2-1 のNHK放送センタービル内にあります。このようなことで、重要な情報が中国に漏れたりした場合、米国から目の敵にされたりすることもあり得ます。
それにしても、世界のどこの放送局でも、特に国営の放送局などに、中国中央電視台の支局があるなどとは聞いたことがありません。それだけ、NHKは、異常だということです。
米国では、自身に批判的な記事を「フェイク(偽)ニュース」と非難し、一部メディアを「国民の敵」と断じたトランプ大統領に抗議するため、全米の350を超える新聞社が16日、報道の自由を訴える社説を一斉に掲載しました。
ただし、日本ではあまり知られていないことですが、米国のマスコミのほとんどはリベラル派で占められています。特に大手新聞は100%がリベラルであり、日本でいえば「産経新聞」のような保守派の大手新聞は存在しません。
デレビはフォックスTVだけが大手保守系テレビ局ですが、他はすべてリベラルで占められています。そのため、米国では過去数十年間にわたり、少なくとも米国の総人口の半分は存在すると考えられる保守層の考えは、リベラルメディアによってかき消されてきたというのが現実です。
日本のメデイアが米国の報道をするときは、米国メディアの報道を垂れ流すため、多くの日本人は米国のリベラル派の考えや文化ばかりをみて、後の半分の保守派のことは見過ごしてきたというのが現実です。
そのようなリベラルメディアが、トランプ氏をまるで気狂いピエロのように報道してきたのは事実です。日本での報道もこれに右に倣えです。
米国メディアはトランプ氏をまるで気狂いピエロでもあるかのように 報道し、日本のマスコミはそれに右ならえをしたが・・・・・・・・・ |
共和党支持者というより、米国の保守層の多くは、もう米国のメディアをほんど信用してないでしょう。米国メデイアのほとんどが、トランプ大統領誕生の予測ができなかったように、トランプ大統領による中国成敗がどうなるのかも予測できないでしょう。
そうして、それは日本のマスコミも同じです。日本でも似たような現象があります。いわゆる「アベニクシーズ」「アベノセイダーズ」の存在です。あれだけ「もりかけ」で過去一年間以上も「疑惑は深まった」などと主張したり報道しつづけてきたのに、現在に至るまで何らのエビデンスもあげられないでいます。
安倍総理の件でなくても、どのような件であっても、過去1年以上も「疑惑が深まった」として追求してあげくのはて何らの確証もあげられなければ、無能のそしりを受けるのは当然です。
今後、日米のメデイアなどの中国報道を単純に信じ込んで、米国のトランプ政権による対中国叩きをみていては、世界情勢の変化についていけなくなります。
それこそ、鳩山氏のようになってしまい、時代に取り残された化石のような存在になってしまうことになるでしょう。
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