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2019年8月13日火曜日

空港機能停止!香港デモ、第2の天安門事件に発展か 「香港1つ片付けることができないのか…」共産党内から習氏に批判も?―【私の論評】中国共産党が最も恐れる香港市民の価値観とは?

空港機能停止!香港デモ、第2の天安門事件に発展か 「香港1つ片付けることができないのか…」共産党内から習氏に批判も?

抗議の群衆に占拠された香港国際空港=12日

 香港が騒乱状態だ。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を巡り、香港国際空港ロビーで12日午後、市民による大規模な抗議デモが発生。航空当局が同日夕方以降のほぼ全便を欠航とした影響で、空港では13日も欠航が相次ぎ機能不全となった。行政府への市民の怒りは収まるどころか拡大するばかり。「第2の天安門事件になりかねない」。専門家も緊張感をもって注視している。


 アジア有数のハブ(拠点)空港が機能停止に陥った。香港国際空港で12日、抗議の群衆数千人が押し寄せ、搭乗手続き業務などができなくなった。13日朝には業務が再開されたものの、香港メディアは300便以上に上る多数の欠航が決まったと伝え、同日午後1時半現在、混乱が続いている。

 全日空は同日未明の羽田発の運航を中止。格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションも関西と沖縄発の2便が欠航した。キャセイパシフィック航空など香港を拠点とする航空会社でも欠航が相次ぎ、同日は各社合計で少なくとも10便以上の日本発の便が運航できなかった。「(ホテルも含めて)全部キャンセル」「国内旅行に切り替えるしかない」など、夏休みを海外で過ごす計画だった日本人旅行客は成田などでパニックとなった。

 6月に本格化した一連の抗議活動。今月5日には呼び掛けられたゼネストに航空業界の関係者らも参加、約250便が欠航したばかり。香港政府トップの林鄭月娥行政長官は13日、記者会見し、一連の抗議活動について「自由と正義の名で、多くの違法行為が行われている」と非難。だが、香港メディアによると、会員制交流サイト(SNS)では13日以降も空港での集会が呼び掛けられている。

 12日に発生した抗議活動はSNSを通じ、シンボルの黒い服を着た市民らが集まった。抗議参加者らは、11日に九竜地区の繁華街で行われた抗議活動で、警察が発射した鎮圧用の弾を右目に受けた女性が負傷したと批判。警察が地下鉄駅構内に催涙弾を発射したことにも反発した。

「世界征服を夢見る嫌われ者国家 中国の狂気」(ビジネス社)などの著書がある評論家の石平氏は、「第2の天安門事件に向かっている。10月1日が中華人民共和国70周年にあたるため、習近平政権としては祝福ムードをつくり出したいはずだが、政権内部からも習氏に対し『香港1つ片付けることができないのか』と批判が出てきそうだ。人民解放軍を投入すると国際社会から非難される可能性もあるが、最終的には何らかの武力鎮圧に出るだろう」とみる。

 その上で、「仮に鎮圧できても、経済の中心地である香港を捨てることになり、来年1月の台湾の大統領選にも影響することが考えられ、後遺症は大きい。ただでさえ、習氏は米中貿易摩擦など中国を悪い方向に進めているとみられている。中国共産党が習氏を排除するか、さもなくば習氏と中国共産党政権が共倒れする状況もありえる」。予断は許さない。

【私の論評】中国共産党が最も恐れる香港市民の価値観とは?

今回の一連の香港でのデモ活動は、単なるデモとか、香港市民が中共に抗議をしている等という見方以上にかなり大きな中国社会の分水嶺につながる大きな変動だと思います。

この問題は本来、中国が多元社会であるにもかかわらず現在の中国共産党が「一つの中国」を国是に掲げているからにほかならないです。しかしながら、歴史を背負う中国の為政者にとって、「一つの中国」はつねに追い求めなくてはならない夢想の共同体なのです。

習近平の「中国夢」カレンダーの表紙

今日から現在に至るまで、中国を端的に表現するなら、「一つの中国」「中華民族」という国是・スローガンと、それとはまったく裏腹の、上下の乖離・多元性という社会の現実、この両者の併存です。

中国には過去において、どのような帝国がつくられようが、今日の共産中国が、チベット、ウィグルまで含めた大帝国をつく出そうと、多元社会という呪縛からは逃れられません。

それは、以前のこのブログにも述べたように、今でも厳然として宗族(そうぞく)という集団が機能しているという現実があるからです。中国の宗族については、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
まさに血で血を洗う戦い!? “独立王国化”する中国マフィア…共産党は“容赦なき”取り締まり ―【私の論評】宗廟、宗族を理解しなけば、中国社会を理解できない(゚д゚)!
中国の黒社会
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、宗族とはどのようなものなのか、説明している部分を以下に引用します。
宗族(そうぞく)とは、中国の父系の同族集団。同祖、同姓であり、祭祀を共通にし、同姓不婚の氏族外婚制をたてまえとするものです。同じく血縁でも母系は入らず、女系は排除されます。

したがっていわゆる親族のうちの一つであっても、親族そのものではありません。文献では前2世紀頃あるいは3世紀頃からみえます。同族を統率する1人の族長の支配下におかれ、族内の重要問題は,同族分派の各首長 (房長) らによる長老会議または族人による同族会議が召集され、協議決定されました。

宗族は往々集団をなして同族集落を構成し、その傾向は華中、華南に強く、1村をあげて同族であることも少くありませんでした。その場合、閉鎖的で排他性が強く、利害の衝突から集落相互間に争いを引起すこともありました。また同族結合の物的基礎として、共同の祖先を祀る宗祠設立のほか、義荘,祭田の設置、族譜 (宗譜) の編集なども行われました。

そして中国のいたるところ、宗廟があって、世界中に散った一族が集まる習慣がいまも確然として残っているのです。 
これが、宗族、日本人に分かりやすく言えば、「一族イズム」です。 
中国人にとって、今でも一族の利益、一族の繁栄はすべてであり、至高の価値なのです。それを守るためにはどんな悪事でも平気で働 くし、それを邪魔する者なら誰でも平気で殺してしまうのです。一族にとっては天下国家も公的権力もすべてが利用すべき道具であり、 社会と人民は所詮、一族の繁栄のために収奪の対象でしかないのです。 
だから「究極のエゴイズム」を追い求め、一族の誰かが権力を握れば、それに群がり、もし失脚すれば、一族全員がその道連れ となって破滅するのです。 
習近平と王岐山一族が、いま何をやっているか、なぜそうなのか。正に宗族の論理によって突き動かされ、一族だけの利権を追 求し、一族だけが繁栄を究めているのです。 
中国共産党が『宗族』を殲滅したのではなく、むしろ、宗族の行動原理は生き残った上で、党の中国共産党政権自身を支配しているのです。中国における宗族制度の原理の生命力はそれほど堅忍不抜なものであり、宗族は永遠不滅なのです。 
中国人は、現代日本人の感性や規範、道徳、しきたりとまったく異なる伝統を今でも保持しているのです。
こうした宗族に支配された社会構造が、現在の中国にも厳然として残っているのです。中国の歴史は、本質的に多元的な社会を一つの中国としてまとめようとする試みの連続でした。そうして、過去の大帝国はすべて瓦解しました。

実は多元的な社会を「一つ」にまとめようとする試みは、中国史のみならず、程度の差はありますが、アジア史・東洋史にも少なからずみられました。そのプロセスで生まれる軋轢をどう処理するかが、それぞれの歴史の要諦でした。

その手段として用いられたのが、宗教です。だいたい世界3大宗教と呼ばれるイスラーム、キリスト教、仏教は、いずれもアジア発祥です。それはおそらく、多元性をまとめるための普遍性やイデオロギー、あるいは秩序体系を提供することが、アジアの全史を貫く課題だったからでしょう。

それも一つの宗教・信仰に限定したわけではありません。1人の君主が複数の宗教を奨励、信奉し、同じ場所に暮らすそれぞれの宗教の信者をつなぎ止めて、共存させるといったこともありました。

アジア各地では宗教という普遍的なものも、多元的に存在していたのです。そうであるなら、複数の宗教・普遍性の存在を認めて重層化させることでしか、多元共存を可能とする統一的な体制は保てなかったわけです。

言い換えるなら、アジア史において政教分離は成立しにくいということです。多元性の強い社会で安定した体制を存続させるには、宗教のような普遍性を有するものがどうしても欠かせません。複数の普遍性を重層させねばならない場合は、なおさらです。

ヨーロッパで政教分離が成立したのは、そもそも社会も信仰も単一均質構造でまとまっていたからです。分離しても社会が解体、分裂しない確信が、その背後に厳存しています。仮にアジアで政教分離を実施したら、たちまち体制や秩序はバラバラになって混乱をもたらしてしまったでしょう。

中国の場合も、統合の象徴として儒教・朱子学が用意されました。ところが儒教は、漢人のイデオロギー・普遍性ですので、モンゴル・チベットと共存した清朝では、それだけでは不十分です。儒教の聖人を目指した清朝の皇帝は、同時にチベット仏教にも帰依して、普遍性の重層を図ったのですが、その体制も18世紀までしかもちませんでした。

かくて近代以降、儒教・チベット仏教もろとも、先に述べた「国民国家」や「一つの中国」が代替することになります。同時に、清代の多元共存に代わる秩序と統合のシンボルとして「五族共和」や「中華民族」のような概念がしばしば提起されました。

「中華民族」は理論上「多元一体」のはずですが、そのセオリーどおりに「一体」が実現したことはありません。チベット・新疆の民族問題や香港の一国二制度の実情・現状をみれば、一目瞭然ではないでしょうか。それに、中国には宗族が根強く残っていることを考えれば、国家の設立すら困難というのが、実情です。

こうして「中華民族の復興」を「中国の夢」とする習近平政権も、はるか古くからの中国史の1コマとして捉えることができます。リアルな中国史を振り返れば、現在香港で起こっていることの本質が理解できると思います。

香港にも宗族が、新界原居民という形で形跡は残っていますが、多くの香港市民は長い間の英国による統治により、台湾のように、宗族の良い面だけが残っているようです。

台湾の宗族については、以前もこのブログで説明したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「親中」に逆風が吹き始めた台湾総統選―【私の論評】台湾では、宗族の良い要素だけが残ったため、民主化が実現されている(゚д゚)!
台湾の蔡英文総統
現在の台湾では、宗族の伝統は残ってはいますが、中国のように「究極のエゴイズム」を追い求めるような存在ではありません。 
台湾においても、従来の宗族は儒教を通して、祖先崇拝、族長の統治、系譜の存在、一族の互助、家廟、祀堂場所の建立など、宗族の組織は非常に厳密でした。宗族員の結合は堅く、宗族の機能も広汎でした。 
しかし、古くは日本統治、最近では産業の進展にともない、宗族の構成は大きく変化しました。 
喪失して要素としては、族長権威と、共有財産です。持続されている要素としては、祭祀と墓参りです。残存要素としては、豊かな人間関係、経済の援助、系譜の尊重などです。 
台湾では、宗族の良い要素だけが残ったようです。ここが、宗族の伝統の悪い面も根強く残り、中国共産党をも支配している大陸中国とは、対照的です。
台湾では、宗族の構成が大きく変化したからこそ、まがりなりにも民主主義が根付いているということができます。
中国共産党が『宗族』を殲滅したのではなく、むしろ、宗族の行動原理は生き残った上で、当の中国共産党政権自身を支配している大陸中国と、香港は本質的に社会が違うのです。

長い英国支配により、香港では行政的に宗族は大きな意味を持たなくなったのです。これは、国家の成立にとっては避けて通ることができない道でした。国家が成立しないところに、民主主義も生まれることはないのです。政治と経済の分離、法治国家化も無理なのです。

大陸中国も本来はこの道を通るべきでしたが、結局中国共産党は「宗族」を殲滅できなかったどころか、当の中国共産党を支配しているのです。大陸中国では、結局共産主義も宗族のエゴイズムには勝てなかったのです。現在の中国の本質は、共産主義ではないし、国家資本主義でもないのです。その本質は、宗族支配の究極のエゴイズムなのです。

香港も宗族が支配する地域であれば、中国共産党もこれを比較的簡単に制御できたかもしれません。強力な宗族を懐柔できれば、香港は意外と簡単に中国の手に落ち、一国二国制度など有名無実になっていたかもしれません。

この価値観の相克が、現在の香港に色濃く反映されているのです。この問題は、かなり大きな中国社会の変動であり、これからますます大きくなっていくことでしょう。やがて、香港だけでなく、中国全土に広がっていくことでしょう。

最終的には、中国は価値観を共有できるいくつかの単位にまで、分裂することでしょう。中国共産党は、それを最も恐れているのです。おそらく、彼らにとっては米国との冷戦よりも、こちらのほうを恐れているに違いありません。だからこそ、香港の取り締まりは厳しくなる一方で、第二の天安門事件になるのではと危惧する専門家も存在するのです。

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2018年11月3日土曜日

苦境の習氏、トランプ大統領にすり寄りか 米中首脳が電話会談 藤井氏「米国は甘い顔を見せない」―【私の論評】内需を拡大できない中共の宿痾で中国は凡庸なアジアの独裁国家に成り果てる(゚д゚)!

苦境の習氏、トランプ大統領にすり寄りか 米中首脳が電話会談 藤井氏「米国は甘い顔を見せない」

トランプ大統領と習近平主席

 ドナルド・トランプ米大統領は1日、中国の習近平国家主席と電話会談を行った。「米中新冷戦」が顕在化するなか、苦境に陥った中国としては、米国にすり寄った面もある。トランプ氏としても、中間選挙(6日)の直前に、硬軟織り交ぜた外交手腕をアピールする意図もありそうだ。

 《習氏と貿易に重点を置き、長い時間、多くの議題をめぐり協議した。(11月末に)アルゼンチンで開かれるG20(20カ国・地域)首脳会議での会談予定も順調だ》《(北朝鮮情勢についても)良い協議ができた》

 トランプ氏は1日、ツイッターにこう書き込んだ。両首脳の電話会談は、貿易摩擦が深刻化する前の今年5月以来。

 中国の国営中央テレビ(CCTV)などによると、習氏は会談で「世界2大国が、安定的で健全な関係を促進することを望んでいる。過去に経済貿易で立場の違いもあり、両国の産業と世界貿易はマイナスの影響を受けた。今後は、双方で受け入れ可能な案で通商協議を進め、2カ国間貿易での協力を拡大したい」と発言。

 これに対し、トランプ氏は「習氏との良好な関係構築を重視している。両国で頻繁に意思疎通することが重要だ」と語ったという。

 トランプ政権は、中国が、米国のハイテク技術を不当に入手しているなどとして、これまでに、中国からの総額2500億ドル(約28兆円)の輸入品に対し、高額の関税をかけた。

 背景には、米国に挑戦するように、軍事的覇権を強めている共産党一党独裁の中国を牽制(けんせい)する意図がある。米国はこの先、米中協議などが不調に終われば中国に追加制裁を発動する構えだ。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「トランプ氏は、中国が実際に結果を出さなければ、妥協はしない。習氏としても、これ以上、関税をかけられたり、トランプ氏から『G20での首脳会談もないぞ』と言われると困る。米国に泣きつき、今回の電話会談になったのだろう。すべては、マイク・ペンス米副大統領が10月4日、ワシントンで、中国を念頭に『宣戦布告』といえる演説をしたことに始まっている。トランプ氏は、中国にはそう簡単には甘い顔を見せない」と語った。

【私の論評】内需を拡大できない中共の宿痾で中国は凡庸なアジアの独裁国家に成り果てる(゚д゚)!

中国はもうすでに、八方塞がりです。中国がまともな国であれば、たとえ米国から貿易戦争を挑まれても、金融制裁をくらってもやりようがあるどころか、潜在能力としては世界一なのですが、現在の体制ではその能力を十分活かすことができません。

それは何かといえば、内需拡大策です。本来はこれを実行し、それに成功すれば、別に米国と貿易などしなくても、やりようはあります。ただし、先進国並みに内需拡大ができるような体制の国であれば、そもそも中国は米国などと貿易摩擦を起こすこともありませんでした。

記者会見する中国国家発展改革委員会の連維良副主任(右端から2人目)ら=9月25日、北京

中国のマクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会の連維良副主任は9月25日の記者会見で、米国による対中制裁関税の影響について「中国経済には強靱性と内需の潜在力がある。リスクは全体として抑制できる」と述べました。消費促進などの内需拡大策を強化し、貿易摩擦の影響を相殺する方針と語りました。

実際、中国政府は内需刺激策を順次打ち出しています。しかし、かつては中国でしばしば景気刺激策の柱となったインフラ投資の拡大については、比較的抑制的な水準にとどめられています。

これは、過去のインフラ投資拡策が生み出した弊害を踏まえたものです。10年前のリーマン・ショック後に中国政府が実施した、インフラ投資中心の4兆元(当時の為替レートで約56兆円)の景気対策やその他のインフラ投資拡大策は、後に企業、地方政府の過剰債務問題をもたらし、金融システムの安定を損ねる事態に発展してしまいました。

また、過剰投資は鉄鋼、セメントなどの過剰生産を生み出し、米中貿易戦争の遠因の一つともなりました。さらに、道路や居住用建築物でも過大で無駄な投資プロジェクトが次々と発覚していくことになりました。

そこで今回の景気対策では、預金準備率引き下げなどの金融緩和策と並んで、減税措置がその中核を担っています。中国政府は2018年10月から、中間層の消費底上げを狙って個人所得減税策を実施しました。

減税規模は年間3,200億元(約5兆1千億円)です。個人所得税の課税最低限を現在の3,500元から5千元に引き上げるのが柱となります。子供の教育費や住宅ローンの利息などを課税所得から差し引ける仕組みも併せて導入されます。2018年10月から実施されたましたが、法改正を踏まえた全面実施は2019年年初からです。

しかし、この所得減税措置の景気刺激効果については、慎重な見方も多いです。そもそも、インフラ投資と比べると、所得減税策は短期的な景気刺激効果は小さくなるのが通例です。減税の相当部分が貯蓄の増加に回されるためです。野村證券は、今回の措置による個人消費の押し上げ効果は0.2%程度、GDPの押し上げ効果は0.1%弱にとどまると試算しています。

こうした点を踏まえて、中国政府が追加的な所得税減税を実施するとの見方も多くなされています。中国人民銀行・金融政策委員会の委員で、清華大学金融発展研究センター主任の馬駿氏は、2019年の減税及び手数料の引き下げ規模がGDPの1%を超える可能性があると指摘しています。GDPの1%規模は8,000億人民元強であることから、2018年の所得減税を相当上回る規模となります。

米中貿易戦争は、長期化する可能性が高まっています。それは、この問題が単なる貿易不均衡の問題ではなく、2大大国の経済、先端産業、軍事を巡る覇権争いがその背景にあり、さらに政治・経済体制間の争いにも発展しているためです。両国ともに簡単には譲歩できない事態にまで発展しています。

マイク・ペンス副大統領が2018年10月4日に米国の保守系シンクタンクのハドソン研究所で行った演説は、激しい中国批判に終始し、米中が経済、政治、軍事で全面的な対立の構図に陥った可能性、いわば「米中新冷戦」の始まりを宣言したに等しい内容になっています。

演説をするペンス大統領。2018年10月4日に米国の保守系シンクタンクのハドソン研究所似て。

このように米中貿易戦争が長期化すれば、中国の輸出環境は長期間厳しい状況に置かれる可能性があります。そのもとでも相応の成長率を維持するには、より内需主導型への経済構造を転換していく必要があるでしょう。

しかし、インフラ投資、あるいは一般に公的・民間投資の拡大は、すでに見たような深刻な問題を再び生じさせるおそれがあります。そこで、内需のけん引役としては個人消費が期待されます。すでに見た所得減税策も、こうした考えに基づいて実施された側面もあると考えられます。

しかし、税制改革だけで持続的な個人消費主導の経済に転換していくことは、難しいです。個人消費の増加率を高めるには、個人貯蓄率の継続的な引き下げが必要になりますが、それを阻んでいるのが、社会保障制度の未整備に基づく将来不安です。

そうであれば、大幅な社会保障制度が、消費刺激の観点からも求められます。さらに、労働者の地域間移動の活性化を通じた所得引き上げを促すには、戸籍制度の見直しも必要にです。

中国・上海の古い街並みに座る高齢の男性

こうした点から、長期化が見込まれる米中貿易戦争は、社会制度も含めた中国の構造改革を必然的に促すようになる可能性があります。

この構造改革については、以前からもこのブログに掲載しています。この構造改革は幅も奥行きも広いものとなりますが、その中でも根底にあるのは、民主化、政治と経済の分離、法治国家化です。これなしに、他の構造改革を実行したとしても、すべて積木くずしのように崩れてしまうことでしょう。

これは、先進国でもどの国でも完璧ではないとはいいながら、中国などの発展途上国から比較すれば、かなり進んでいます。中国に限らず、これらが整備されていない国では本来自由貿易などできません。

ただし、中国以外のこれらがあまり整備されていない発展途上国の場合は、人口もさほど大きいわけでもなく、大きな産業もないため、先進国と貿易をしたとしても、そもそも取引量ならびに額が低いのでほとんど問題にはなりません。

しかし、中国はそういうわけにはいきません。社会構造はとてつもなく遅れているにもかかわらず、人口が多く、中国の経済統計は出鱈目なので本当はどうかはわかりませんが、GDPは一応世界第二位といわれています。これが嘘だとしても、他の発展途上国と比較すると、かなり大きいことは確かです。さらに、軍事も経済もこれからまだ伸びる余地があるということで、先進国と同列にみられがちですが、その実社会構造はとてつもなく遅れています。

なぜこんないびつなことになってしまったかといえば、中国の将来性に期待して海外からかなり投資が増えたからです。そのため、中国は遅れた社会構造を維持したまま、インフラを整備し、軍隊を強化して現在に至っています。

この中国が遅れた体制を維持したまま、米国や他の先進国と貿易をしたので、必然的に不公正、不正などが生じたのです。それが今日、米国の対中国冷戦へとつながったのです。

これを是正して、日米をはじめとする先進国とまともな貿易をするには、中国はまずは、ある程度の民主化、経済と政治の分離、法治国家化を進めなければならいですし、内需を拡大するにもこれを実施しなければなりません。

内需を拡大するには、構造改革をして、現在のように極一部の富裕層とその他大勢の貧乏人という状況を崩して、多数の中間層が自由に社会・経済活動を営めるようにして、経済的に豊かにする必要があります。

しかし、中国共産党にとっては、これをすすめると、統治の正当性が失われることになります。なぜそのようなことになるかといえば、まずは民主化を進めるためには、選挙など実施しなければならなくなりますが、それを実施すれば、共産党一党独裁は崩れる可能性があります。

政治と経済の分離をしてしまえば、現在のような人治による経済活動は崩れてしまいます。人脈はあまり大きな意味を持たなくなります。そうなると、中国の人脈に基づいた派閥政治は崩れることになります。

法治国家化を進めれば、当然のことながら、現在のように憲法や人民解放軍が共産党の下に位置づけられるということはなくなり、憲法に縛られ、人民解放軍は他の先進国ではあたりまえの、国民国家の軍隊ということになり、中国共産党の私兵ではなくなります。

そうなると、当然のことながら、共産党の統治の正当性が崩れ、他の勢力にとって変わられることになります。

そのような状況を中国共産党が望むはずもありません。中国の将来は中共が支配し続けるか、内乱によって、構造改革を進めようとする他の勢力が中共にとってかわるかしかないと考えられます。

中共が支配しつづけることになれば、中国は内にこもるしかなくなり、図体が大きいだけの凡庸なアジアの一独裁国家に成り果てることになります。そうして、確率としてはこちらのほうが高いと思います。私としては、中国が何か変わるとすれば、この状態を経て、中共の力が弱まり、最終的にいくつかの国に分裂するときだと思います。

中国がいずれの道を選ぶにしても、そこまで行き着くには短くても、10年、長ければ20年はかかるでしょう。はっきりしているのは、その時がくるまで、米国による対中国冷戦が続くということです。そうして、その時は必ず来ます。

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2018年8月17日金曜日

中国急変!習氏“最側近”王氏、8月恒例の「北戴河会議」に姿なし…政策失敗の全責任を負わせ失脚か? ―【私の論評】日米リベラルの中国報道を鵜呑みにすれば末は時代に取り残された化石になる(゚д゚)!

中国急変!習氏“最側近”王氏、8月恒例の「北戴河会議」に姿なし…政策失敗の全責任を負わせ失脚か? 

中国の習近平国家主席。米中「貿易戦争」に頭が痛い=7月、南アフリカ・ヨハネスブルク

中国共産党最高指導部メンバーと長老らが毎年8月、河北省の避暑地、北戴河に集まる非公式・非公開の「北戴河会議」が終わった。今回は「米中貿易戦争」の激化や、広域経済圏構想「一帯一路」の限界など、難題山積で紛糾したとみられている。揺らぐ習近平国家主席の立場と、「チャイナセブン」(中央政治局常務委員7人)の失脚情報、狙われた日本の元首相2人について、ノンフィクション作家の河添恵子氏が緊急リポートする。

「この夏の休暇は、これまでと雰囲気が異なる」「形勢が緊迫し、緊張が張りつめている」

中国共産党の機関紙「人民日報」傘下の新メディア「人民日報中央厨房」は9日、北戴河で休暇を取った人物の発言を、こう報じた。難題山積、北戴河会議の異変は確実なようだ。

難題といえば、ドナルド・トランプ米政権が仕掛けた米中貿易戦争だろう。これは、「中国=最大の脅威」とみなした対応で、中国経済の息の根を止めかねない。そして、世界の製造強国を目指す「中国製造2025」計画も、欧米諸国は「軍事覇権に拍車をかける」と警戒態勢に転じた。

「一帯一路」構想についても、関係国からは「債務の罠」であり、国が借金まみれになり、政治がコントロールされ、港湾など戦略的軍事拠点が奪取されるとの非難が噴出している。北極海航路を狙われているロシア、中央アジアも「一帯一路」への警戒感を強めている。

さらに、野党連合を率いる、93歳のマハティール・モハマド首相の再登板によって、マレーシアなどでは“脱中国”の動きが急速に進行中である。

中国国内でも、党幹部を含めて、習独裁体制への懸念が高まり、人民解放軍や人民の不満も爆発寸前…。内憂外患の習政権は、まさに崖っぷちにある。

党最高幹部の動向にも“異変”がある。

「北戴河に(チャイナセブンの1人)王滬寧(オウ・コネイ)の姿がない」「1カ月近く雲隠れしている」「失脚か?」「影響力を失った」などの内容が、反共産党系中国メディアから噴出している。

歴代中国共産党トップの理論的支柱を務めてきた
王滬寧氏。習近平思想も彼が骨格をつくりあげた。

序列5位の王氏は、「3つの代表」「科学的発展観」「中華民族の偉大なる復興」など、江沢民、胡錦濤、習近平という国家主席3代の重要理論の起草に関与し、中南海の“知恵袋”と言われてきた。第16回党大会(2002年11月)で中央委員入りし、党中央政策研究室主任に就いて16年、現在に至るまで、その地位を維持してきた。

だが、第2次習政権は、その王氏に一連の政策失敗の全責任を負わせ、習政権の“イメージ転換”を図るのだろうか?

海外の中国人ジャーナリストらの弁によれば、「鄧小平時代の『韜光養晦』(とうこうようかい=才能を隠して、内に力を蓄える)の時代とは一変し、習政権が傲慢に『見える』ことで、世界から不評を買ってしまった。その責任が彼(=王氏)にある」という論理だ。2月下旬に封切られた中国の自画自賛映画『すごいぞ、わが国』も4月に突如、上映禁止が報じられた。

世界各国が本気モードで中国を警戒するなか、この“新潮流”からズレまくっているのが、日本の元首相たちである。

鳩山由紀夫元首相は11日、北京で開かれた国際シンポジウムに出席し、「一帯一路」構想について、「習近平主席は、目的は平和をもたらすことだと述べた」「日本は大いに協力すべきだ」と強調したという。

福田康夫元首相も6月、江蘇省南京市の「南京大虐殺記念館」を訪問し、「日本人はもっと過去の事実を正確に理解しなければならない」などと語ったことが報じられた。

2015年全国戦没者追悼式で献花をする(左から)福田康夫、鳩山由紀夫、菅直人の歴代首相経験者

1989年6月の天安門事件で、「自由と民主」「法の下の平等」「人権」という価値観を重視する欧米諸国から一気に四面楚歌(そか)となった中国は、日本へすり寄ってきた。

歴史は繰り返す。欧米諸国に危険視された習政権がいくら微笑み外交に転じようと、中国は、沖縄県・尖閣諸島も台湾も「我がもの」と考えており、軍事超大国となり世界覇権を目指しているのだ。

日本はもういい加減、だまされてはならない。

■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『中国・中国人の品性』(ワック)など。

河添恵子氏

【私の論評】日米リベラルメディアの中国報道を鵜呑みにすれば末は時代に取り残された化石になる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事に掲載されていること以外にも、揺らぐ習近平国家主席の立場を象徴するような事件が起こっています。

その最大のものは、退役軍人のデモの拡大です。中国では、年金削減など退役後の待遇に不満を抱いた元軍人によるデモが続発し、沈静化の兆しが見られません。

このブログでも紹介したように、6月13日に四川省徳陽で最初のデモが勃発したのを皮切りに、江蘇省鎮江で19~24日、湖南省長沙で7月9日、河北省石家荘で12日、山西省太原で17日、内モンゴル自治区赤峰では19日、山東省煙台で24日にと、各地に飛び火しています。

以下に煙台市でデモに関する、動画つきのツイートを掲載します。


79年に中越戦争に参加した60代の退役軍人を先頭に、デモ参加者の年齢層は幅広いです。元軍人たちは相互に呼び掛け、地域を超えてデモを行っています。

彼らは労働者や農民の抗議と異なり、自分たちで選んだ「指揮官」の号令に従って隊列を組み行進し、政府庁舎前で抗議を行うときも整然としています。警察と機動隊を前にしても一致団結して抵抗し、簡単には退きません。

かつて国家の「暴力装置」だった軍人は、鎮圧する政府側の出方を知り尽くしているだけに厄介です。デモ隊に退官後の己の姿を重ね合わせて見てしまうのか、鎮圧側も強くは出られず、事態は深刻化しつつあります。

退役軍人は中国全土に5700万人以上いるといわれます。習政権になってから国有企業の改革が進まず、経済が悪化の一途をたどり、地方政府の予算も潤沢ではなくなりました。

もともと地方政府は経済統計の水増しを繰り返して業績を偽り、発展を装ってきました。ここに至って地方財政は破綻し、退役軍人に支払うべき年金も削減されているのです。

16年には退役軍人数千人が待遇改善を求め、首都北京の国防省を包囲しました。習政権は今年4月に再就職支援などを行う退役軍人事務省を発足させ不満解消を図ったのですが、情勢は好転していません。

待遇がひどくなっている背景の1つに、習の進めた軍改革があります。人民解放軍は広大な大陸を舞台にした20年代から40年代にかけての国共内戦から発展しました。国民党との長い内戦から次第に4つの野戦軍が形成。毛沢東を最高指導者と認めながらも、それぞれ独自の派閥と地域に立脚した組織が維持されていました。

毛が死去し鄧小平時代になっても、派閥と地域性は基本的に残されました。4つの野戦軍はさらに複数の軍区に分割されることがあっても、旧来の人事・指揮系統は不動のままです。それぞれの軍区内で退役軍人の面倒を見る伝統もそれなりに機能していました。

しかし、総司令官となった習は16年2月から従来の7大軍区を廃止し、5大戦区に整理統合し、人事と指揮は党中央に吸い上げられました。こうした改革で、実戦の際には指揮系統を統一したことで命令伝達はうまくいくかもしれません。ところが、軍と地方の関係を薄めたことで、平時において軍内部の福祉政策は麻痺してしまったのです。

共産党は「党が軍を指揮する」と主張するのですが、それは建前に過ぎません。実際は軍を掌握できた者だけが党を動かし、国家の最高指導者として人民に君臨するのです。

まさに毛沢東が語ったように「政権は銃口より生まれる」わけなのです。この「伝家の宝刀」は毛や鄧の時代はうまく使えましたが、江沢民(チアン・ツォーミン)時代から次第に軍に対する党の権威が衰えました。

胡錦濤(フー・チンタオ)から習に至って威光は一層低下しました。そもそも人民解放軍は27年に中国南部で結成された中国工農紅軍を祖としています。一方、習の父・仲勲(チョンシュン)は中国中部の陝西省を拠点とするゲリラ部隊の出で、しかも文官だったので毛並みはよくないです。そして、習は反腐敗運動を利用して高級将校を多数摘発してきたので、軍に不満がたまっています。

共産党大会の開幕式で拍手する習近平総書記(中央)、江沢民元国家主席(右)、胡錦濤前国家主席(左)

党の軍隊から国家の軍隊に改編すべきであり、人民解放軍を共産党の私兵から国軍に改造すべきだとの意見は昔から改革派知識人から出されていました。ただ、その改革は私兵に守られた共産党の命脈を絶つことを意味しています。

こうして抜本的な軍改革に手をこまねくうちに、退役軍人という時限爆弾は刻々と暴発へと近づいているようです。

現在はオバマ以前の大統領のときとは全く異なり、完璧に反中国派のトランプ大統領が、大統領選挙線のときから「中国を叩く」とはっきり公約を宣言して、その通りの実行しています。

現在の総理大臣は、中国包囲網を構築するという「安全保障のダイヤモンド」を提唱する安倍総理大臣ですから、良かったものの、鳩山由紀夫や福田康夫のような親中派が総理大臣だったら大変なことになっていたかもしれません。

それこそ、中国に利するような発言や行動をして、米国から利敵行為をしているとみなされ、米国から貿易戦争を挑まれたり、金融制裁をくらったりして大変なことになっていたかもしれません。

それこそ、1980年代の貿易摩擦よりも酷いことになっていたかもしれません。

しかし、この歴史上の大転換ともいえる、この時代を理解していないのは、過去の総理大臣らのみではありません。政治家の中はもとより、マスコミは未だ親中派で染まっているようです。

中国国営テレビCCTV(中国名称は中国中央電視台)といえば、反日の評論や報道、そして日本人を殺人鬼のように描く反日ドラマの放映で知られています。

その中国国営テレビの日本支局というのが、なんとわが日本国の公営放送のNHKの内部に存在しているのです。

中国中央電視台(中国国営テレビCCTV 日本支局)のオフィスは未だに、渋谷区神南2-2-1 のNHK放送センタービル内にあります。このようなことで、重要な情報が中国に漏れたりした場合、米国から目の敵にされたりすることもあり得ます。

それにしても、世界のどこの放送局でも、特に国営の放送局などに、中国中央電視台の支局があるなどとは聞いたことがありません。それだけ、NHKは、異常だということです。

米国では、自身に批判的な記事を「フェイク(偽)ニュース」と非難し、一部メディアを「国民の敵」と断じたトランプ大統領に抗議するため、全米の350を超える新聞社が16日、報道の自由を訴える社説を一斉に掲載しました。

ただし、日本ではあまり知られていないことですが、米国のマスコミのほとんどはリベラル派で占められています。特に大手新聞は100%がリベラルであり、日本でいえば「産経新聞」のような保守派の大手新聞は存在しません。

デレビはフォックスTVだけが大手保守系テレビ局ですが、他はすべてリベラルで占められています。そのため、米国では過去数十年間にわたり、少なくとも米国の総人口の半分は存在すると考えられる保守層の考えは、リベラルメディアによってかき消されてきたというのが現実です。

日本のメデイアが米国の報道をするときは、米国メディアの報道を垂れ流すため、多くの日本人は米国のリベラル派の考えや文化ばかりをみて、後の半分の保守派のことは見過ごしてきたというのが現実です。

そのようなリベラルメディアが、トランプ氏をまるで気狂いピエロのように報道してきたのは事実です。日本での報道もこれに右に倣えです。

米国メディアはトランプ氏をまるで気狂いピエロでもあるかのように
報道し、日本のマスコミはそれに右ならえをしたが・・・・・・・・・

米国ではトランプ氏のメディア敵視の姿勢に非難が集まる一方、メディアの信用低下も加速している。とくに共和党支持者の間で著しく、米調査機関ピュー・リサーチ・センターの昨年6月の調査によると、メディアが自国にマイナスの影響を与えていると答えた共和党支持者は85%となり、2010年の68%から大幅に増えた。

共和党支持者というより、米国の保守層の多くは、もう米国のメディアをほんど信用してないでしょう。米国メデイアのほとんどが、トランプ大統領誕生の予測ができなかったように、トランプ大統領による中国成敗がどうなるのかも予測できないでしょう。

そうして、それは日本のマスコミも同じです。日本でも似たような現象があります。いわゆる「アベニクシーズ」「アベノセイダーズ」の存在です。あれだけ「もりかけ」で過去一年間以上も「疑惑は深まった」などと主張したり報道しつづけてきたのに、現在に至るまで何らのエビデンスもあげられないでいます。

安倍総理の件でなくても、どのような件であっても、過去1年以上も「疑惑が深まった」として追求してあげくのはて何らの確証もあげられなければ、無能のそしりを受けるのは当然です。

今後、日米のメデイアなどの中国報道を単純に信じ込んで、米国のトランプ政権による対中国叩きをみていては、世界情勢の変化についていけなくなります。

それこそ、鳩山氏のようになってしまい、時代に取り残された化石のような存在になってしまうことになるでしょう。

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2018年4月11日水曜日

米中貿易戦争、習氏がトランプ氏に「降伏宣言」 外資規制緩和など要求丸のみ―【私の論評】元々中国に全く勝ち目なし、米国の圧勝となる(゚д゚)!


習近平とトランプ

 米中貿易戦争で、中国の習近平国家主席がトランプ米大統領に「降伏宣言」した。外資の規制緩和や知的財産の保護など、米国側の要求を丸のみした形だ。トランプ政権は口約束で終わらせないように「具体的行動を」とクギを刺した。

 10日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は、前日比428・90ドル高の2万4408・00ドルと大幅続伸した。

 11日午前の東京市場は午前9時現在、24円77銭高の2万1819円09銭と小幅続伸して取引が始まった。円相場は、1ドル=107円前半と円安基調で推移した。

 習主席は10日の講演で「中国の市場環境はこれから大幅に改善し、知的財産は強力に保護される。中国の対外開放は全く新しい局面が開かれる」と述べ、市場開放に向けて努力する姿勢を表明。外資による金融機関の設立で制限を緩和するほか、自動車分野などでも外資の出資比率の制限を緩和するとした。

 トランプ政権が問題視する対中貿易赤字について「貿易黒字を追求しない」として輸入拡大に努力するとし、自動車などの関税を大幅に引き下げる意向を示したほか、知的財産の侵害についても「外資企業の中国における合法的な知的財産を守る」と強調した。

 少なくとも言葉のうえではトランプ政権が問題視していた点に「満額回答」した形だ。

 トランプ氏はツイッターで「習主席による思いやりのある言葉」と満足げにつぶやいた。

 ただ、サンダース米大統領報道官は習氏の発言について「正しい方向への一歩だが、単なる美辞麗句ではなく具体的に行動を起こしてほしい」と要求。中国が市場開放を具体化するまで交渉を続け、関税引き上げなど制裁発動の手続きも進める考えを示した。

 貿易戦争はさらに攻防が続きそうだ。

【私の論評】元々中国に全く勝ち目なし、米国の圧勝となる(゚д゚)!

中国の「対米報復関税」により、本格的に勃発するとされていた米中貿易戦争。両国間だけでなく日本にも影響必至と報じられていますが、制裁が長期化すれば、むしろ首が締まるのは中国です。一体それはなぜなのか。本日はこれをメインに掲載します。

アメリカのトランプ政権が3月末に海外からの輸入鉄鋼・アルミニウム製品に高い関税をかけたことに対して、中国は4月2日から報復措置として、アメリカ産品128品目に最大25%の上乗せ関税をかけました。

これに対して、日本のメディアは「貿易戦争」が勃発すると騒いでいますが、本当にそうなるのでしょうか。よく知られているように、中国はアメリカにとって最大の貿易赤字国です。

2017年のアメリカのモノの貿易赤字7,962億ドルのうち、対中赤字は3,752億ドルで過去最大、約半分を占めています。ちなみに、これまでアメリカにとって2位の貿易赤字国だった日本は、メキシコに抜かれて3位になっています。



中国のアメリカへの輸出は、同国のアメリカからの輸入の3倍もの規模になります。2016年の中国のアメリカへの輸出額は3,897億ドルでしたが、アメリカからの輸入は1,344億ドルしかありません。今回の中国側の報復関税では、そのアメリカからの輸入のうち、30億ドルが対象になっているだけです。したがって、もしも貿易戦争が起こった場合、圧倒的に不利になるのは中国側です。

しかも、アメリカが制裁対象にしているのは鉄鋼やアルミニウムなど、中国が最大の生産国となっている品目です。2017年の世界の鉄鋼生産量は16億9,122万トンでしたが、そのうちの約半分、8億3,173万トンを中国が生産しています。明らかに過剰生産であり、不当廉売によって世界各国の鉄鋼業界が悲鳴を上げている状態であることは、言うまでもありません。

言うまでもなく、世界最大の鉄鋼消費国も中国で、2017年の鉄鋼需要は7億7,000万トンとダントツですが、6,000万トン、約7.5%も過剰生産していることがわかります。しかも、インフラ建設もピークに達し、その需要は年々低下すると予想されています。

そのことは、中国の経済成長率が年々下落していることや、「一帯一路」によって、過剰生産された鉄鋼を他国へ振り向けようとしていることからも理解できるというものです。

一方、世界2位の鉄鋼消費国はアメリカです。2018年のアメリカの予想鉄鋼需要は1億1,000万トンと見込まれています。アメリカの年間鉄鋼生産量は8,164万トン(2017年)ですから、約3,000万トン分を自国で生産するか、輸入すれば良いことになります。

そして、輸入先は中国以外にも数多くあります。中国の不当廉売によって被害を受けている他国から鉄鋼を買えば良いだけです。すでに鉄鋼価格は世界的に低下していましたから、中国製鉄鋼に関税をかけたからといって、鉄鋼価格の上昇によるインフラ懸念も少ないはずです。

一方、中国が報復措置として輸入制限をかけた128のアメリカ産品のうち、代表的なものが豚肉と大豆です。

中国は豚肉消費量においても生産量においても世界1位ですが、近年では豚飼養頭数が減り、生産量が消費量を下回っているため、輸入に頼ってきました。2016年には162万トンを輸入に頼っていますが、アメリカからはその8分の1にあたる21万トンを輸入しています。輸入先の1位はドイツ、2位がスペインで、アメリカは3位にすぎません。

しかもアメリカの豚肉生産量は1,132万トン(2016年)であり、そのうちの21万トンというのは、アメリカ国内生産の2%にも満たない数量です。

アメリカにとってはさほどの打撃にならない一方、むしろ中国にとっては大きな打撃になる可能性が高いでしょう。というのも、食料価格の高騰は人民の不満につながるからです。シカゴ大学の趙鼎新教授は、1989年の天安門事件は、食料品価格の急騰が発端だったと分析しています。中東で起きたジャスミン革命も、食料価格の高騰が原因でした。

中東で起きたジャスミン革命は食料価格の高騰が原因だった

また、大豆についてはたしかにアメリカが世界の生産量1位で、1億トンを生産しているため、アメリカ農家も中国の輸入規制を非常に警戒しています。しかし、一方の中国は1,100万トンの生産しかないにもかかわらず、消費量は9,500万トンで、8,400万トンを輸入に頼らざるをえない状況なのです。

アメリカからの輸入大豆は中国での流通量の3分の1を占めているとされています。中国がこれほど大豆を必要とする理由は、搾油用に加えて、家畜飼料のためです。

しかも、2018年の生産量は、アメリカでは増産見込みであるものの、アルゼンチンやブラジルなどでは減産が見込まれ、世界全体では減少すると見込まれています。一方、消費は中国をはじめとする世界全体で増加すると見込まれています。

そのため、中国がアメリカからの大豆を輸入規制すれば、中国国内での需要に供給が追いつかず、大豆の価格高騰、さらには豚肉などの畜産物の価格高騰につながる可能性が非常に高いと言えます。

鉄鋼・アルミは世界的な供給過剰状態にあり、アメリカのみならず、欧米でも中国産鉄鋼への強い反発があります。このような状態であるからこそ、アメリカは中国産鉄鋼・アルミに高関税をかけたわけです。

一方、中国は自国で供給不足にあり、世界的にみても供給過剰ではないアメリカ産の農産物、畜産物に報復関税をかけたということになります。しかも、工業製品は生産調整が容易であるのに対して、農業・畜産物は天候や病害などによって生産は不安定です。

すでに中国の食料自給率は8割台で食料輸入国に転落していますが、一人っ子政策を廃止したことや、高齢化社会による働き手不足によって、ますます食料自給率が下がっていくことは目に見えています。

食糧問題はこれからの中国の最大のリスクとされてきました。その自らのウイークポイントにかかわるような産品に対して制裁措置を行うというのは、それしか手段がなかったということの表れです。そのため、そう長くは対米制裁措置を継続できないでしょうし、制裁が長期化すれば、むしろ首が締まるのは中国のほうなのです。

ちなみに、この米中の「貿易戦争」については、日本や台湾も通商国家、貿易国ですから、「被害が避けられない」という恨み節もよく聞かれます。しかし、日台にとって「利益だ」という声も多いです。私の見解としては、長期戦として長引いたほうが、中国以外の国にとっても「百利あって一害なし」だと思っています。

3月8日、トランプ米大統領は記者会見で、鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ
25%と10%の関税を課す輸入制限を実施することを正式に発表

そうはいつても、鉄鋼・アルミの問題は日本にもかなり悪影響があるのではとみるむきもありますが、高品質の日本製品を制限して困るのは米産業界なのです。ほうっておけばよいのです。どうしても制限対象から日本を外してくれ、と安倍首相が頼み込むなら、トランプ氏は待ってましたとばかり、為替条項付きの日米貿易協定の交渉開始を言い出すに決まっています。

日本の円安政策に歯止めをかけ、日本車の輸出攻勢をかわしたい。そればかりではない。円安に頼るアベノミクスは制約を受ける。日本は米国との利害が共通する分野に議題を合わせる。中国の鉄鋼などの過剰生産を厳しく批判して、トランプ氏に同調すればよいのです。

この米中貿易戦争について、多くの海外メディアや日本のメディアは、トランプ大統領こそ元凶だとしています。中国は「トランプ大統領は保護主義に走っている、中国は自由貿易を守ろうとしている」と主張し、これに賛同する識者も少なくありません。

しかし、中国における鉄鋼産業は国営企業が中心です。習近平は国営企業は潰さず、「国際市場において、より強く、より大きくする」と述べています。つまり、中国という国家を後ろ盾にした国営企業の存在感を国際市場において高めていくと宣言しているのです。どんなに赤字でも国が資金援助し、その国家の支援をもとに国営企業の国際競争力を強めていくと主張しているのです。

はたしてそれは「自由貿易」と言えるのでしょうか。国家が介入しない民間企業が主役の資本主義市場に、中国という強大な国家の力を背景とした国営企業が乗り込み、不当な廉売によって市場を奪っていく。

これのどこが「自由貿易」といえるでしょうか。しかも中国は国内の民間企業、外資系企業に対して中国共産党の指導を強めるとしています。中国こそが経済統制に走り、自由経済の脅威となっているのです。今回の「貿易戦争」には、そうした背景があることを認識すべきです。

いずれにせよ、アメリカに対して勇ましく対抗措置を打ち出した中国ですが、このことが習近平政権の命脈を断つことにつながる可能性が非常に高い状況でした。

中国の王外相は「(貿易戦争は間違いなく誤った処方箋であり、他国と自国に
損害を与えるだけだ」との考えを示し、実際に米国が追加関税に
踏み切った場合には「同様の措置を取る用意がある」と表明していた

このような状況を理解したからこそ、習近平は10日の講演で「中国の市場環境はこれから大幅に改善し、知的財産は強力に保護される。中国の対外開放は全く新しい局面が開かれる」と述べ、市場開放に向けて努力する姿勢を表明したのです。

さらに、外資による金融機関の設立で制限を緩和するほか、自動車分野などでも外資の出資比率の制限を緩和するとしたのです。

そうして、これには最近の日米による北に対する制裁が苛烈さを増し、とどまるところを知らないということも大きく影響しているとみられます。

先日このブログにも掲載したように日本は、戦後一度も艦艇を差し向けたことがない黄海に海自の艦艇を派遣して監視活動にあたっています。米国は、制裁をさらに強化するため、今後米沿岸警備隊を半島付近に派遣することを検討しています。

最近まで、トランプ政権は、オバマが中国が南シナ海や、その他の地域で中国が何をしようが、結局のとろ「戦略的忍耐」で何も具体的な行動を起こさなかったのとは対照的に北朝鮮に対して制裁でかなりの圧力をかけています。

ご承知の通り、トランプ大統領は先月、レックス・ティラーソン国務長官を更迭し、後任にマイク・ポンペオCIA(中央情報局)長官を指名しました。続いて、ハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も解任し、後任にジョン・ボルトン元国連大使を内定した。

マイク・ポンペオ氏(左)とジョン・ボルトン氏(右)

ポンペオ氏は、『正恩氏排除=斬首作戦』に賛成しています。CIA内に初の北朝鮮専門部隊『朝鮮ミッションセンター』をつくりました。結果、正恩氏の隣に協力者を構築し、反正恩一派が結成されたようです。朝鮮人民軍の一部は命乞いを始め、クーデターを計画し始めたとされています。正恩氏が一番憎む男だです。

ボルトン氏は、対北先制攻撃を公言しています。ジェームズ・マティス米国防長官は3月末、国防総省でボルトン氏を迎えた際、『あなたは“悪魔の化身”だと聞いている』といいました。イラク戦争(2003年~11年)時にも、北朝鮮とイランへの攻撃を強硬に主張しました。

正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記は2週間も地下に隠れて震えていたとされています。『ボルトン』という言葉は、北朝鮮では『死神』と同じです。

トランプ氏はこれは2人を抜擢することによって、『戦争内閣』を構築したのです。ポンペオ、ボルトン両氏を信頼し、対北朝鮮政策の最終形を組み立てているのです。米国が要求する『核・ミサイル開発』放棄は、ボルトン氏がいう『リビア方式』です。

正恩氏はこれに対して『武装解除だ』と激しく拒否しています。しかし、米国の要求を飲まなければ、5月の米朝首脳会談は、正恩氏への『死刑宣告=宣戦布告の場』になることになります。

この圧力に耐えきれなくなった金正恩は、平昌で微笑み外交をはじめ、最近でははじめて北朝鮮を出て、中国まで赴き習近平主席と会談を行っています。

この有様をみて、習近平も恐れをなしたとみえます。まずは、トランプ氏に対して、「敵対」するつもりはないことを表明せざるをえなくなったのでしょう。

そもそも、トランプ政権は、北朝鮮など前哨戦にすぎず、中国こそが本当の敵である捉えているようです。だからこそ、昨年は北朝鮮に対して具体的に軍事作戦をとることもなく、中国の動向を探っていたようです。

中国に明確に対峙するという戦略を採用したからこそ、北に対して明確な態度をとることができるようなったのです。そうして、北が米国の要求を飲まなければ、間髪を入れず北に対して軍事攻撃を開始するでしょう。

ブログ冒頭の記事には掲載されていませんが、中国は保持する米国債を売却する等の報復措置に出ることを予測する専門家もいます。

しかし、中国当局は米国債を売却できないでしょう。なぜなら、売却によって債券価格が大幅に下落するため、同様に中国当局にも巨額な損失をもたらすことになるからです。そもそも、中国の元は、中国が米国債を大量に持っていること、ドルを大量に保有しているということが信用の裏付けになっています。

米国債を大量に売却すれば、元の価値を毀損するだけになります。最近は外貨不足が目立ってきた中国ですが、そうなるとますますドルが寄り付かなくなり、元の信用はガタ落ちになることでしょう。

米中貿易戦が勃発すれば、政治制度が異なる両国の中で中国は最も大きな代価を支払うとことになります。中国の現在の政治制度では、経済成長を維持しつづけることのみが政権の統治の正当性を保証しています。

したがって、米中貿易戦でホワイトハウスから追われることを心配しないトランプ氏に対して、中国共産党政権はこの貿易戦で中南海を失うことにもなりかねないです。

中南海

しかし、米国にはリスクが全くないわけではありません。中国からの輸入を減らせば、国民の日常生活に必要な生活用品や電化製品などの価格が上昇し、これによって米国のインフレ率も約0.5%上がる可能性もあまりす。

このような状況が現れれば、トランプ氏がやならなければならないことは、ウォルマートの前で価格上昇を抗議する国民に対して「価格上昇は一時的な物だ。安価の商品はすぐベトナム、タイ、インド、マレーシアから米国に入ってくる」と言い聞かせ、納得させることです。それは、さほど難しいことではないはずです。

米中貿易戦争においては、米国が必ず勝つでしょう。中国がアップル社のiPhoneを中国で組み立てることは大した脅威ではありません。米国にとって脅威なのは、中国がiPhoneのようなスマートフォン技術の研究開発に成功し、その技術を掌握することです。

中国に対して米国は、「目には目を、歯には歯を」という戦略を採るべきです。例えば、中国当局が米国製品の輸入、米国企業の投資を禁止すれば、米国も同様な政策を採るべきです。米国も同様に中国製品の輸入と中国企業の投資を禁止すべきです。

この戦略を採れば、米国製造業の先端技術と機密技術が中国当局に流れることがなくなります。実に、米国連邦議会はすでに、中国企業による米国企業の買収について審議しています。

現在、米国の工業から農業、しかもハリウッド映画産業まであらゆる産業で中国企業を見かけることができます。米中経済・安全保障検討委員会(U.S.-China Economic and Security Review Commission)がその役割を担っています。

トランプ大統領も中国企業による買収案に否定的な姿勢を示しています。以上のようなことから、米中貿易戦争が本格的に勃発すれば、負けるのは中国共産党政権です。

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