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2018年8月1日水曜日

米中貿易戦争、中国に“勝ち目”なし…国際社会「一帯一路、既に失敗」 習近平体制、いよいよ黄信号 ―【私の論評】貿易戦争の過程で、台湾問題で中国に揺さぶりをかける米国(゚д゚)!

米中貿易戦争、中国に“勝ち目”なし…国際社会「一帯一路、既に失敗」 習近平体制、いよいよ黄信号 

高橋洋一 日本の解き方

7月25日新興5カ国(BRICS)首脳会議に
おいて「貿易戦争に勝者なし」と演説した習近平

 米トランプ政権が中国に仕掛けている貿易戦争が習近平政権に打撃を与えている。習政権の肝いりの政策である「一帯一路」や、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、「中国製造2025」などはもくろみ通りに進むのか。

 本コラムでも指摘したが、この争いは中国に勝ち目がない。関税引き上げは、自由な資本主義国間では百害あって一利なしだが、対社会主義国では政治的には意味があるためだ。

 そもそもモノの取引の自由化は互いの利益になるが、その前提としてヒトやカネの自由化が必要だ。ところが、社会主義国ではその体制維持のためにヒトとモノの自由化は制限される。となると、モノの自由化は社会主義国のいいとこ取りになることもありうる。中国は実際、自国への投資を制限しつつ、資本主義国への投資を自由に行い、その結果、投資とともに見返りに技術を導入していた。技術面での内外非対称的な対応が経済成長を後押ししてきた。

 ところが、トランプ政権が関税引き上げという思わぬ手を使ったことで、習政権が対応に苦慮しているのが実情だ。

 最近、中国国内でも、習批判が出ているようだ。これは今後の経済成長を疑問視することと同じで、トランプ政権の対中貿易戦争のこれまでの成果と関係なしとはいえない。

 トランプ政権が対中強硬路線を打ち出してきたのは、前のオバマ政権が対中融和的であったのと好対照だ。トランプ大統領は生粋のビジネスマンであり、自由資本主義者である。社会主義的な覇権主義の中国とは基本的な価値観が合わないのだろう。

 米国は貿易戦争を中国だけに猛烈に仕掛けており、欧州連合(EU)や日本には今のところ厳しい対応はない。これは、やはりトランプ流の中国包囲網であろう。

 一方、中国の対外的な覇権主義を象徴するのが、AIIBを通じた一帯一路構想だ。以前に本コラムで、その無謀性や失敗になる可能性を指摘したが、当時のマスコミは「バスに乗り遅れるな」の大合唱だった。

 その後の展開をみると、パキスタンの地下鉄建設などで一帯一路は既に失敗だったと国際社会から評価されている。

 「中国製造2025」は、国内向けの産業政策である。中国製造業の2049年までの発展計画を3段階で表し、その第1段階として「25年までに世界の製造強国入り」することを掲げている。第2段階は、35年に「世界の製造強国陣営の中位に位置させる」。第3段階は、45年には「製造強国のトップになる」というものだ。



 ある程度の工業化がないと、1人あたり国内総生産(GDP)1万ドルの壁を突破するのは難しいというのが、これまでの発展理論であるが、中国は今その壁にぶち当たっている。

 貿易摩擦によって輸出主導経済が崩れると、中国の経済発展に行き詰まりが出て、「中国製造2025」の達成も危うくなる。

 これも、習体制にとっての黄色信号だといえるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】貿易戦争の過程で、台湾問題で中国に揺さぶりをかける米国(゚д゚)!

中国が貿易戦争に勝てる見込みは全くありません。かといって、これで習近平体制がすぐに潰れるかといえば、その可能性は小さいです。

何しろ中国は自由自在に統計改竄できる国なので、実体は苦しく破綻状態になったにしても表には出にくいからです。

旧ソ連は70年間も騙し続けました。中国も同じで破綻と分かるのは実際に体制崩壊した時でしょう。それまではピンピンにみせかけたゾンビ状態を続けることでしょう。

中国のゾンビ「キョンシー」

米ブルームバーグ通信は7月31日、米政権が2000億ドル(約22兆2000億円)相当の中国製品に追加関税を課す制裁について、関税の税率を10%から25%に引き上げる検討をしていると報じました。貿易問題で対立する中国政府への圧力を、制裁強化によって一段と強める狙いがあるといいます。

ブルームバーグは同日、米中両国が対立緩和に向けて協議の再開を模索しているとも伝えました。2000億ドル相当の輸入品を対象とする対中制裁の強化検討は、協議の席に戻るよう中国に迫る狙いがあるとしています。

トランプ米政権は中国の知的財産侵害に対抗するため、計500億ドル相当に25%の追加関税を課す制裁を表明。7月上旬にまず340億ドル分を発動し、今月にも残り160億ドル分を実施する可能性があります。

米政権はさらに2000億ドル相当に10%を課す制裁を準備中でした。同通信によると、税率25%への引き上げは最終決定されていません。

協議再開に向けた動きをめぐっては、ムニューシン米財務長官と中国の劉鶴副首相が非公式な意見交換を継続していますが、具体的な日程や協議の形式は固まっていないといいます。

米中間ですでに貿易戦争が勃発しました、米中間の通商摩擦はもはや言葉遊びをしていられる段階を過ぎています。

さて、今後米中の対立はどうなっていくのでしょうか。今後の展開として、米国が台湾問題で中国に揺さぶりをかける可能性が大いにあります。

2018年7月13日、米国海軍のイージス駆逐艦2隻が先月、台湾海峡を通過しました。米艦の通過は11年ぶりのことです。独立志向の台湾・蔡英文政権への軍事的圧力を強める中国をけん制する狙いとみられ、中国は「受け入れられない」と反発しています。米中間で激しさを増す貿易戦争とも重なり、「台湾海峡も波高し」という状況です。

台湾国防部によると、航行したのはイージス駆逐艦マスティン(排水量9200トン)とベンフォールド(同8900トン)。いずれも米第7艦隊の母港・神奈川県横須賀基地に配備されています。

台湾海峡を通過したとされる米イージス艦「マステイン」

2隻は7日午前、台湾海峡に南から進入して北東へ向かいました。米国側は2隻が海峡を通過する前に通知。台湾軍は規定に基づき周辺海域と上空を統制し、戦闘機と軍艦を派遣して同行監視しました。米国が艦船を台湾海峡に送ったのは公式的には2007年以来。台湾メディアによると、昨年7月に中国海軍の空母「遼寧」が台湾海峡を航行した際にも米艦船が追跡したとの情報がありますが、公表されていません。

台湾総統府の報道官は7日夜、「台湾はかねてから台湾海峡と地域の平和・安定を重視している。台湾は国際社会の責任ある一員として今後も両岸(台湾と中国)の現状維持に努め、アジア太平洋地域の平和と繁栄、発展を確保していきたい」とコメント。外交部の報道官は台湾への軍事圧力を強める中国を念頭に、「絶えず高まる軍事的脅威に対応するため、国防への投資を加速して防衛能力を強化する」としています。

台湾を中国の一部と見なす「一つの中国」原則を認めない蔡政権に対して中国側は最近、台湾周辺で戦闘機や爆撃機の訓練を繰り返すなどの軍事的威嚇を続けています。今回は米艦船の航行を公表することで、米軍が南シナ海で行っている「航行の自由作戦」と同様に、中国に米軍の存在感を改めて誇示した形です。

さらに2隻の台湾海峡通過は、米国が膨大な貿易赤字を理由に中国に対する高関税措置に踏み切るなど、米中間の摩擦がますます高まっている時期とも重複しています。香港メディアは「トランプ政権をタカ派が掌握し、米議会の与野党ともに中国に対して強硬な立場を前に出している」とし、「米国は今後、外交軍事手段を強化し、台湾問題と東シナ海、南シナ海問題への介入を強化するだろう」との見方を示しています。

これに対して、中国側はどう反応・対応するでしょうか。様々な考え方をするでしょうが、どれも外れると思います。

何やら中国は勘違いをしているようです。トランプ政権による対中国貿易戦争の目的は、中国をまともな相手とみなして、中国市場の開放や、人民元の完全な変動相場制への移行などで終了するようなものではないです。

先日もこのブログで指摘したように、典型的なピューリタニズムの原理に基づき行動する典型的な米国の保守層に属するトランプ氏はもともと、中国とは価値観を共有することはできません。

トランプ氏にとっては、ピューリタニズム的な勤勉が報われるような社会にしたいとこですが、それを邪魔するのが、中国なのです。中国による、知的財産権の侵害はもとより、中国の現体制下における米国との貿易は、そもそも米国の勤労者にとって不利益をもたらすものであるというのが、トランプ大統領の考えです。

そんな中国の体制を変更させるか、変更できないというのなら、二度と米国を頂点とする戦後秩序に対する挑戦をできないくらいまでに、中国の経済を弱体化させることです。

習近平や中国の共産党幹部は、米国の保守層に息づくピューリタニズムの原理を全く理解できません。米国の連中も自分たちと五十歩百歩であり、綺麗事のベールを剥げば、結局拝金主義に塗れた連中に違いなく、どこかで気脈を通じることができるに違いないと考えていることでしょう。

実際、クリントン夫妻など、気脈を通じやすい人物が米国にも多数存在することは確かです。しかし、それがすべてでもありませんし、大部分でもありません。米国の人口のおそらく半分は占めるであろう、保守層の中にはピューリタニズムの原理が息づいています。そうして、トランプ大統領はその代表格であります。

習近平がこれを無視して、トランプ氏をただの金持ち爺さんくらいに思うと、とんでもない目にあうこことになります。そうして、実際にとんでもないことになりつつあるのです。

トランプ氏は中国が民主化、政治と経済の分離、法治国家化をある程度すすめるというような大胆な構造改革を行わない限り、次の段階では台湾問題で中国に揺さぶりをかけるのは必至です。

中国は、今後米国に貿易戦争で負け、台湾で負け、東シナ海で負け、尖閣で負け、さらに南シナ海で負け、世界中で負け、数十年後に気がついたときには図体が大きいだけの、国際的には何の影響力もない凡庸なアジアの独裁国家に成り果てていることでしょう。

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2018年4月11日水曜日

米中貿易戦争、習氏がトランプ氏に「降伏宣言」 外資規制緩和など要求丸のみ―【私の論評】元々中国に全く勝ち目なし、米国の圧勝となる(゚д゚)!


習近平とトランプ

 米中貿易戦争で、中国の習近平国家主席がトランプ米大統領に「降伏宣言」した。外資の規制緩和や知的財産の保護など、米国側の要求を丸のみした形だ。トランプ政権は口約束で終わらせないように「具体的行動を」とクギを刺した。

 10日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は、前日比428・90ドル高の2万4408・00ドルと大幅続伸した。

 11日午前の東京市場は午前9時現在、24円77銭高の2万1819円09銭と小幅続伸して取引が始まった。円相場は、1ドル=107円前半と円安基調で推移した。

 習主席は10日の講演で「中国の市場環境はこれから大幅に改善し、知的財産は強力に保護される。中国の対外開放は全く新しい局面が開かれる」と述べ、市場開放に向けて努力する姿勢を表明。外資による金融機関の設立で制限を緩和するほか、自動車分野などでも外資の出資比率の制限を緩和するとした。

 トランプ政権が問題視する対中貿易赤字について「貿易黒字を追求しない」として輸入拡大に努力するとし、自動車などの関税を大幅に引き下げる意向を示したほか、知的財産の侵害についても「外資企業の中国における合法的な知的財産を守る」と強調した。

 少なくとも言葉のうえではトランプ政権が問題視していた点に「満額回答」した形だ。

 トランプ氏はツイッターで「習主席による思いやりのある言葉」と満足げにつぶやいた。

 ただ、サンダース米大統領報道官は習氏の発言について「正しい方向への一歩だが、単なる美辞麗句ではなく具体的に行動を起こしてほしい」と要求。中国が市場開放を具体化するまで交渉を続け、関税引き上げなど制裁発動の手続きも進める考えを示した。

 貿易戦争はさらに攻防が続きそうだ。

【私の論評】元々中国に全く勝ち目なし、米国の圧勝となる(゚д゚)!

中国の「対米報復関税」により、本格的に勃発するとされていた米中貿易戦争。両国間だけでなく日本にも影響必至と報じられていますが、制裁が長期化すれば、むしろ首が締まるのは中国です。一体それはなぜなのか。本日はこれをメインに掲載します。

アメリカのトランプ政権が3月末に海外からの輸入鉄鋼・アルミニウム製品に高い関税をかけたことに対して、中国は4月2日から報復措置として、アメリカ産品128品目に最大25%の上乗せ関税をかけました。

これに対して、日本のメディアは「貿易戦争」が勃発すると騒いでいますが、本当にそうなるのでしょうか。よく知られているように、中国はアメリカにとって最大の貿易赤字国です。

2017年のアメリカのモノの貿易赤字7,962億ドルのうち、対中赤字は3,752億ドルで過去最大、約半分を占めています。ちなみに、これまでアメリカにとって2位の貿易赤字国だった日本は、メキシコに抜かれて3位になっています。



中国のアメリカへの輸出は、同国のアメリカからの輸入の3倍もの規模になります。2016年の中国のアメリカへの輸出額は3,897億ドルでしたが、アメリカからの輸入は1,344億ドルしかありません。今回の中国側の報復関税では、そのアメリカからの輸入のうち、30億ドルが対象になっているだけです。したがって、もしも貿易戦争が起こった場合、圧倒的に不利になるのは中国側です。

しかも、アメリカが制裁対象にしているのは鉄鋼やアルミニウムなど、中国が最大の生産国となっている品目です。2017年の世界の鉄鋼生産量は16億9,122万トンでしたが、そのうちの約半分、8億3,173万トンを中国が生産しています。明らかに過剰生産であり、不当廉売によって世界各国の鉄鋼業界が悲鳴を上げている状態であることは、言うまでもありません。

言うまでもなく、世界最大の鉄鋼消費国も中国で、2017年の鉄鋼需要は7億7,000万トンとダントツですが、6,000万トン、約7.5%も過剰生産していることがわかります。しかも、インフラ建設もピークに達し、その需要は年々低下すると予想されています。

そのことは、中国の経済成長率が年々下落していることや、「一帯一路」によって、過剰生産された鉄鋼を他国へ振り向けようとしていることからも理解できるというものです。

一方、世界2位の鉄鋼消費国はアメリカです。2018年のアメリカの予想鉄鋼需要は1億1,000万トンと見込まれています。アメリカの年間鉄鋼生産量は8,164万トン(2017年)ですから、約3,000万トン分を自国で生産するか、輸入すれば良いことになります。

そして、輸入先は中国以外にも数多くあります。中国の不当廉売によって被害を受けている他国から鉄鋼を買えば良いだけです。すでに鉄鋼価格は世界的に低下していましたから、中国製鉄鋼に関税をかけたからといって、鉄鋼価格の上昇によるインフラ懸念も少ないはずです。

一方、中国が報復措置として輸入制限をかけた128のアメリカ産品のうち、代表的なものが豚肉と大豆です。

中国は豚肉消費量においても生産量においても世界1位ですが、近年では豚飼養頭数が減り、生産量が消費量を下回っているため、輸入に頼ってきました。2016年には162万トンを輸入に頼っていますが、アメリカからはその8分の1にあたる21万トンを輸入しています。輸入先の1位はドイツ、2位がスペインで、アメリカは3位にすぎません。

しかもアメリカの豚肉生産量は1,132万トン(2016年)であり、そのうちの21万トンというのは、アメリカ国内生産の2%にも満たない数量です。

アメリカにとってはさほどの打撃にならない一方、むしろ中国にとっては大きな打撃になる可能性が高いでしょう。というのも、食料価格の高騰は人民の不満につながるからです。シカゴ大学の趙鼎新教授は、1989年の天安門事件は、食料品価格の急騰が発端だったと分析しています。中東で起きたジャスミン革命も、食料価格の高騰が原因でした。

中東で起きたジャスミン革命は食料価格の高騰が原因だった

また、大豆についてはたしかにアメリカが世界の生産量1位で、1億トンを生産しているため、アメリカ農家も中国の輸入規制を非常に警戒しています。しかし、一方の中国は1,100万トンの生産しかないにもかかわらず、消費量は9,500万トンで、8,400万トンを輸入に頼らざるをえない状況なのです。

アメリカからの輸入大豆は中国での流通量の3分の1を占めているとされています。中国がこれほど大豆を必要とする理由は、搾油用に加えて、家畜飼料のためです。

しかも、2018年の生産量は、アメリカでは増産見込みであるものの、アルゼンチンやブラジルなどでは減産が見込まれ、世界全体では減少すると見込まれています。一方、消費は中国をはじめとする世界全体で増加すると見込まれています。

そのため、中国がアメリカからの大豆を輸入規制すれば、中国国内での需要に供給が追いつかず、大豆の価格高騰、さらには豚肉などの畜産物の価格高騰につながる可能性が非常に高いと言えます。

鉄鋼・アルミは世界的な供給過剰状態にあり、アメリカのみならず、欧米でも中国産鉄鋼への強い反発があります。このような状態であるからこそ、アメリカは中国産鉄鋼・アルミに高関税をかけたわけです。

一方、中国は自国で供給不足にあり、世界的にみても供給過剰ではないアメリカ産の農産物、畜産物に報復関税をかけたということになります。しかも、工業製品は生産調整が容易であるのに対して、農業・畜産物は天候や病害などによって生産は不安定です。

すでに中国の食料自給率は8割台で食料輸入国に転落していますが、一人っ子政策を廃止したことや、高齢化社会による働き手不足によって、ますます食料自給率が下がっていくことは目に見えています。

食糧問題はこれからの中国の最大のリスクとされてきました。その自らのウイークポイントにかかわるような産品に対して制裁措置を行うというのは、それしか手段がなかったということの表れです。そのため、そう長くは対米制裁措置を継続できないでしょうし、制裁が長期化すれば、むしろ首が締まるのは中国のほうなのです。

ちなみに、この米中の「貿易戦争」については、日本や台湾も通商国家、貿易国ですから、「被害が避けられない」という恨み節もよく聞かれます。しかし、日台にとって「利益だ」という声も多いです。私の見解としては、長期戦として長引いたほうが、中国以外の国にとっても「百利あって一害なし」だと思っています。

3月8日、トランプ米大統領は記者会見で、鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ
25%と10%の関税を課す輸入制限を実施することを正式に発表

そうはいつても、鉄鋼・アルミの問題は日本にもかなり悪影響があるのではとみるむきもありますが、高品質の日本製品を制限して困るのは米産業界なのです。ほうっておけばよいのです。どうしても制限対象から日本を外してくれ、と安倍首相が頼み込むなら、トランプ氏は待ってましたとばかり、為替条項付きの日米貿易協定の交渉開始を言い出すに決まっています。

日本の円安政策に歯止めをかけ、日本車の輸出攻勢をかわしたい。そればかりではない。円安に頼るアベノミクスは制約を受ける。日本は米国との利害が共通する分野に議題を合わせる。中国の鉄鋼などの過剰生産を厳しく批判して、トランプ氏に同調すればよいのです。

この米中貿易戦争について、多くの海外メディアや日本のメディアは、トランプ大統領こそ元凶だとしています。中国は「トランプ大統領は保護主義に走っている、中国は自由貿易を守ろうとしている」と主張し、これに賛同する識者も少なくありません。

しかし、中国における鉄鋼産業は国営企業が中心です。習近平は国営企業は潰さず、「国際市場において、より強く、より大きくする」と述べています。つまり、中国という国家を後ろ盾にした国営企業の存在感を国際市場において高めていくと宣言しているのです。どんなに赤字でも国が資金援助し、その国家の支援をもとに国営企業の国際競争力を強めていくと主張しているのです。

はたしてそれは「自由貿易」と言えるのでしょうか。国家が介入しない民間企業が主役の資本主義市場に、中国という強大な国家の力を背景とした国営企業が乗り込み、不当な廉売によって市場を奪っていく。

これのどこが「自由貿易」といえるでしょうか。しかも中国は国内の民間企業、外資系企業に対して中国共産党の指導を強めるとしています。中国こそが経済統制に走り、自由経済の脅威となっているのです。今回の「貿易戦争」には、そうした背景があることを認識すべきです。

いずれにせよ、アメリカに対して勇ましく対抗措置を打ち出した中国ですが、このことが習近平政権の命脈を断つことにつながる可能性が非常に高い状況でした。

中国の王外相は「(貿易戦争は間違いなく誤った処方箋であり、他国と自国に
損害を与えるだけだ」との考えを示し、実際に米国が追加関税に
踏み切った場合には「同様の措置を取る用意がある」と表明していた

このような状況を理解したからこそ、習近平は10日の講演で「中国の市場環境はこれから大幅に改善し、知的財産は強力に保護される。中国の対外開放は全く新しい局面が開かれる」と述べ、市場開放に向けて努力する姿勢を表明したのです。

さらに、外資による金融機関の設立で制限を緩和するほか、自動車分野などでも外資の出資比率の制限を緩和するとしたのです。

そうして、これには最近の日米による北に対する制裁が苛烈さを増し、とどまるところを知らないということも大きく影響しているとみられます。

先日このブログにも掲載したように日本は、戦後一度も艦艇を差し向けたことがない黄海に海自の艦艇を派遣して監視活動にあたっています。米国は、制裁をさらに強化するため、今後米沿岸警備隊を半島付近に派遣することを検討しています。

最近まで、トランプ政権は、オバマが中国が南シナ海や、その他の地域で中国が何をしようが、結局のとろ「戦略的忍耐」で何も具体的な行動を起こさなかったのとは対照的に北朝鮮に対して制裁でかなりの圧力をかけています。

ご承知の通り、トランプ大統領は先月、レックス・ティラーソン国務長官を更迭し、後任にマイク・ポンペオCIA(中央情報局)長官を指名しました。続いて、ハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も解任し、後任にジョン・ボルトン元国連大使を内定した。

マイク・ポンペオ氏(左)とジョン・ボルトン氏(右)

ポンペオ氏は、『正恩氏排除=斬首作戦』に賛成しています。CIA内に初の北朝鮮専門部隊『朝鮮ミッションセンター』をつくりました。結果、正恩氏の隣に協力者を構築し、反正恩一派が結成されたようです。朝鮮人民軍の一部は命乞いを始め、クーデターを計画し始めたとされています。正恩氏が一番憎む男だです。

ボルトン氏は、対北先制攻撃を公言しています。ジェームズ・マティス米国防長官は3月末、国防総省でボルトン氏を迎えた際、『あなたは“悪魔の化身”だと聞いている』といいました。イラク戦争(2003年~11年)時にも、北朝鮮とイランへの攻撃を強硬に主張しました。

正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記は2週間も地下に隠れて震えていたとされています。『ボルトン』という言葉は、北朝鮮では『死神』と同じです。

トランプ氏はこれは2人を抜擢することによって、『戦争内閣』を構築したのです。ポンペオ、ボルトン両氏を信頼し、対北朝鮮政策の最終形を組み立てているのです。米国が要求する『核・ミサイル開発』放棄は、ボルトン氏がいう『リビア方式』です。

正恩氏はこれに対して『武装解除だ』と激しく拒否しています。しかし、米国の要求を飲まなければ、5月の米朝首脳会談は、正恩氏への『死刑宣告=宣戦布告の場』になることになります。

この圧力に耐えきれなくなった金正恩は、平昌で微笑み外交をはじめ、最近でははじめて北朝鮮を出て、中国まで赴き習近平主席と会談を行っています。

この有様をみて、習近平も恐れをなしたとみえます。まずは、トランプ氏に対して、「敵対」するつもりはないことを表明せざるをえなくなったのでしょう。

そもそも、トランプ政権は、北朝鮮など前哨戦にすぎず、中国こそが本当の敵である捉えているようです。だからこそ、昨年は北朝鮮に対して具体的に軍事作戦をとることもなく、中国の動向を探っていたようです。

中国に明確に対峙するという戦略を採用したからこそ、北に対して明確な態度をとることができるようなったのです。そうして、北が米国の要求を飲まなければ、間髪を入れず北に対して軍事攻撃を開始するでしょう。

ブログ冒頭の記事には掲載されていませんが、中国は保持する米国債を売却する等の報復措置に出ることを予測する専門家もいます。

しかし、中国当局は米国債を売却できないでしょう。なぜなら、売却によって債券価格が大幅に下落するため、同様に中国当局にも巨額な損失をもたらすことになるからです。そもそも、中国の元は、中国が米国債を大量に持っていること、ドルを大量に保有しているということが信用の裏付けになっています。

米国債を大量に売却すれば、元の価値を毀損するだけになります。最近は外貨不足が目立ってきた中国ですが、そうなるとますますドルが寄り付かなくなり、元の信用はガタ落ちになることでしょう。

米中貿易戦が勃発すれば、政治制度が異なる両国の中で中国は最も大きな代価を支払うとことになります。中国の現在の政治制度では、経済成長を維持しつづけることのみが政権の統治の正当性を保証しています。

したがって、米中貿易戦でホワイトハウスから追われることを心配しないトランプ氏に対して、中国共産党政権はこの貿易戦で中南海を失うことにもなりかねないです。

中南海

しかし、米国にはリスクが全くないわけではありません。中国からの輸入を減らせば、国民の日常生活に必要な生活用品や電化製品などの価格が上昇し、これによって米国のインフレ率も約0.5%上がる可能性もあまりす。

このような状況が現れれば、トランプ氏がやならなければならないことは、ウォルマートの前で価格上昇を抗議する国民に対して「価格上昇は一時的な物だ。安価の商品はすぐベトナム、タイ、インド、マレーシアから米国に入ってくる」と言い聞かせ、納得させることです。それは、さほど難しいことではないはずです。

米中貿易戦争においては、米国が必ず勝つでしょう。中国がアップル社のiPhoneを中国で組み立てることは大した脅威ではありません。米国にとって脅威なのは、中国がiPhoneのようなスマートフォン技術の研究開発に成功し、その技術を掌握することです。

中国に対して米国は、「目には目を、歯には歯を」という戦略を採るべきです。例えば、中国当局が米国製品の輸入、米国企業の投資を禁止すれば、米国も同様な政策を採るべきです。米国も同様に中国製品の輸入と中国企業の投資を禁止すべきです。

この戦略を採れば、米国製造業の先端技術と機密技術が中国当局に流れることがなくなります。実に、米国連邦議会はすでに、中国企業による米国企業の買収について審議しています。

現在、米国の工業から農業、しかもハリウッド映画産業まであらゆる産業で中国企業を見かけることができます。米中経済・安全保障検討委員会(U.S.-China Economic and Security Review Commission)がその役割を担っています。

トランプ大統領も中国企業による買収案に否定的な姿勢を示しています。以上のようなことから、米中貿易戦争が本格的に勃発すれば、負けるのは中国共産党政権です。

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