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2018年8月1日水曜日

米中貿易戦争、中国に“勝ち目”なし…国際社会「一帯一路、既に失敗」 習近平体制、いよいよ黄信号 ―【私の論評】貿易戦争の過程で、台湾問題で中国に揺さぶりをかける米国(゚д゚)!

米中貿易戦争、中国に“勝ち目”なし…国際社会「一帯一路、既に失敗」 習近平体制、いよいよ黄信号 

高橋洋一 日本の解き方

7月25日新興5カ国(BRICS)首脳会議に
おいて「貿易戦争に勝者なし」と演説した習近平

 米トランプ政権が中国に仕掛けている貿易戦争が習近平政権に打撃を与えている。習政権の肝いりの政策である「一帯一路」や、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、「中国製造2025」などはもくろみ通りに進むのか。

 本コラムでも指摘したが、この争いは中国に勝ち目がない。関税引き上げは、自由な資本主義国間では百害あって一利なしだが、対社会主義国では政治的には意味があるためだ。

 そもそもモノの取引の自由化は互いの利益になるが、その前提としてヒトやカネの自由化が必要だ。ところが、社会主義国ではその体制維持のためにヒトとモノの自由化は制限される。となると、モノの自由化は社会主義国のいいとこ取りになることもありうる。中国は実際、自国への投資を制限しつつ、資本主義国への投資を自由に行い、その結果、投資とともに見返りに技術を導入していた。技術面での内外非対称的な対応が経済成長を後押ししてきた。

 ところが、トランプ政権が関税引き上げという思わぬ手を使ったことで、習政権が対応に苦慮しているのが実情だ。

 最近、中国国内でも、習批判が出ているようだ。これは今後の経済成長を疑問視することと同じで、トランプ政権の対中貿易戦争のこれまでの成果と関係なしとはいえない。

 トランプ政権が対中強硬路線を打ち出してきたのは、前のオバマ政権が対中融和的であったのと好対照だ。トランプ大統領は生粋のビジネスマンであり、自由資本主義者である。社会主義的な覇権主義の中国とは基本的な価値観が合わないのだろう。

 米国は貿易戦争を中国だけに猛烈に仕掛けており、欧州連合(EU)や日本には今のところ厳しい対応はない。これは、やはりトランプ流の中国包囲網であろう。

 一方、中国の対外的な覇権主義を象徴するのが、AIIBを通じた一帯一路構想だ。以前に本コラムで、その無謀性や失敗になる可能性を指摘したが、当時のマスコミは「バスに乗り遅れるな」の大合唱だった。

 その後の展開をみると、パキスタンの地下鉄建設などで一帯一路は既に失敗だったと国際社会から評価されている。

 「中国製造2025」は、国内向けの産業政策である。中国製造業の2049年までの発展計画を3段階で表し、その第1段階として「25年までに世界の製造強国入り」することを掲げている。第2段階は、35年に「世界の製造強国陣営の中位に位置させる」。第3段階は、45年には「製造強国のトップになる」というものだ。



 ある程度の工業化がないと、1人あたり国内総生産(GDP)1万ドルの壁を突破するのは難しいというのが、これまでの発展理論であるが、中国は今その壁にぶち当たっている。

 貿易摩擦によって輸出主導経済が崩れると、中国の経済発展に行き詰まりが出て、「中国製造2025」の達成も危うくなる。

 これも、習体制にとっての黄色信号だといえるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】貿易戦争の過程で、台湾問題で中国に揺さぶりをかける米国(゚д゚)!

中国が貿易戦争に勝てる見込みは全くありません。かといって、これで習近平体制がすぐに潰れるかといえば、その可能性は小さいです。

何しろ中国は自由自在に統計改竄できる国なので、実体は苦しく破綻状態になったにしても表には出にくいからです。

旧ソ連は70年間も騙し続けました。中国も同じで破綻と分かるのは実際に体制崩壊した時でしょう。それまではピンピンにみせかけたゾンビ状態を続けることでしょう。

中国のゾンビ「キョンシー」

米ブルームバーグ通信は7月31日、米政権が2000億ドル(約22兆2000億円)相当の中国製品に追加関税を課す制裁について、関税の税率を10%から25%に引き上げる検討をしていると報じました。貿易問題で対立する中国政府への圧力を、制裁強化によって一段と強める狙いがあるといいます。

ブルームバーグは同日、米中両国が対立緩和に向けて協議の再開を模索しているとも伝えました。2000億ドル相当の輸入品を対象とする対中制裁の強化検討は、協議の席に戻るよう中国に迫る狙いがあるとしています。

トランプ米政権は中国の知的財産侵害に対抗するため、計500億ドル相当に25%の追加関税を課す制裁を表明。7月上旬にまず340億ドル分を発動し、今月にも残り160億ドル分を実施する可能性があります。

米政権はさらに2000億ドル相当に10%を課す制裁を準備中でした。同通信によると、税率25%への引き上げは最終決定されていません。

協議再開に向けた動きをめぐっては、ムニューシン米財務長官と中国の劉鶴副首相が非公式な意見交換を継続していますが、具体的な日程や協議の形式は固まっていないといいます。

米中間ですでに貿易戦争が勃発しました、米中間の通商摩擦はもはや言葉遊びをしていられる段階を過ぎています。

さて、今後米中の対立はどうなっていくのでしょうか。今後の展開として、米国が台湾問題で中国に揺さぶりをかける可能性が大いにあります。

2018年7月13日、米国海軍のイージス駆逐艦2隻が先月、台湾海峡を通過しました。米艦の通過は11年ぶりのことです。独立志向の台湾・蔡英文政権への軍事的圧力を強める中国をけん制する狙いとみられ、中国は「受け入れられない」と反発しています。米中間で激しさを増す貿易戦争とも重なり、「台湾海峡も波高し」という状況です。

台湾国防部によると、航行したのはイージス駆逐艦マスティン(排水量9200トン)とベンフォールド(同8900トン)。いずれも米第7艦隊の母港・神奈川県横須賀基地に配備されています。

台湾海峡を通過したとされる米イージス艦「マステイン」

2隻は7日午前、台湾海峡に南から進入して北東へ向かいました。米国側は2隻が海峡を通過する前に通知。台湾軍は規定に基づき周辺海域と上空を統制し、戦闘機と軍艦を派遣して同行監視しました。米国が艦船を台湾海峡に送ったのは公式的には2007年以来。台湾メディアによると、昨年7月に中国海軍の空母「遼寧」が台湾海峡を航行した際にも米艦船が追跡したとの情報がありますが、公表されていません。

台湾総統府の報道官は7日夜、「台湾はかねてから台湾海峡と地域の平和・安定を重視している。台湾は国際社会の責任ある一員として今後も両岸(台湾と中国)の現状維持に努め、アジア太平洋地域の平和と繁栄、発展を確保していきたい」とコメント。外交部の報道官は台湾への軍事圧力を強める中国を念頭に、「絶えず高まる軍事的脅威に対応するため、国防への投資を加速して防衛能力を強化する」としています。

台湾を中国の一部と見なす「一つの中国」原則を認めない蔡政権に対して中国側は最近、台湾周辺で戦闘機や爆撃機の訓練を繰り返すなどの軍事的威嚇を続けています。今回は米艦船の航行を公表することで、米軍が南シナ海で行っている「航行の自由作戦」と同様に、中国に米軍の存在感を改めて誇示した形です。

さらに2隻の台湾海峡通過は、米国が膨大な貿易赤字を理由に中国に対する高関税措置に踏み切るなど、米中間の摩擦がますます高まっている時期とも重複しています。香港メディアは「トランプ政権をタカ派が掌握し、米議会の与野党ともに中国に対して強硬な立場を前に出している」とし、「米国は今後、外交軍事手段を強化し、台湾問題と東シナ海、南シナ海問題への介入を強化するだろう」との見方を示しています。

これに対して、中国側はどう反応・対応するでしょうか。様々な考え方をするでしょうが、どれも外れると思います。

何やら中国は勘違いをしているようです。トランプ政権による対中国貿易戦争の目的は、中国をまともな相手とみなして、中国市場の開放や、人民元の完全な変動相場制への移行などで終了するようなものではないです。

先日もこのブログで指摘したように、典型的なピューリタニズムの原理に基づき行動する典型的な米国の保守層に属するトランプ氏はもともと、中国とは価値観を共有することはできません。

トランプ氏にとっては、ピューリタニズム的な勤勉が報われるような社会にしたいとこですが、それを邪魔するのが、中国なのです。中国による、知的財産権の侵害はもとより、中国の現体制下における米国との貿易は、そもそも米国の勤労者にとって不利益をもたらすものであるというのが、トランプ大統領の考えです。

そんな中国の体制を変更させるか、変更できないというのなら、二度と米国を頂点とする戦後秩序に対する挑戦をできないくらいまでに、中国の経済を弱体化させることです。

習近平や中国の共産党幹部は、米国の保守層に息づくピューリタニズムの原理を全く理解できません。米国の連中も自分たちと五十歩百歩であり、綺麗事のベールを剥げば、結局拝金主義に塗れた連中に違いなく、どこかで気脈を通じることができるに違いないと考えていることでしょう。

実際、クリントン夫妻など、気脈を通じやすい人物が米国にも多数存在することは確かです。しかし、それがすべてでもありませんし、大部分でもありません。米国の人口のおそらく半分は占めるであろう、保守層の中にはピューリタニズムの原理が息づいています。そうして、トランプ大統領はその代表格であります。

習近平がこれを無視して、トランプ氏をただの金持ち爺さんくらいに思うと、とんでもない目にあうこことになります。そうして、実際にとんでもないことになりつつあるのです。

トランプ氏は中国が民主化、政治と経済の分離、法治国家化をある程度すすめるというような大胆な構造改革を行わない限り、次の段階では台湾問題で中国に揺さぶりをかけるのは必至です。

中国は、今後米国に貿易戦争で負け、台湾で負け、東シナ海で負け、尖閣で負け、さらに南シナ海で負け、世界中で負け、数十年後に気がついたときには図体が大きいだけの、国際的には何の影響力もない凡庸なアジアの独裁国家に成り果てていることでしょう。

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