- 日本のLGBT理解増進法は、欧米諸国や台湾に比べても突出して急進的かつ拙速に導入されており、教育現場への影響が懸念されている。
- 欧米では未成年の性転換治療に対する見直しが進んでおり、イギリスのタヴィストック・クリニック閉鎖やスウェーデン・フィンランドの方針転換がその象徴である。
- 保守層は、この法律の裏に「公金チューチュー」的な利権構造が存在すると警戒しており、百田尚樹氏の日本保守党設立もこの危機感に基づく。
- 台湾では「ジェンダーレス」ではなく「男女平等」を原則とし、実用性重視のトイレ制度(ポッティ・パリティ)など現実的な対応を取っている。
- 今回の参院選に限らず、今後のすべての選挙で制度の中身と背後の利権構造を見抜く「有権者の目利き力」が問われている。
拙速すぎたLGBT理解増進法──日本だけが突出する危うさ
文部科学省は近年、「多様性の尊重」や「ジェンダー平等」といった理念を掲げ、教育現場に新たな指導方針を導入しつつある。これは単なる理念ではなく、具体的な制度としてすでに実行段階に入っている。令和4年12月には「生徒指導提要」が改訂され、性的指向や性自認に関する配慮が制服、更衣室、宿泊行事などに明記された。さらに令和5年6月、国会で「LGBT理解増進法」が成立。文科省は教職員の研修や相談体制の整備を全国の教育委員会に要請している。
文部科学省は近年、「多様性の尊重」や「ジェンダー平等」といった理念を掲げ、教育現場に新たな指導方針を導入しつつある。これは単なる理念ではなく、具体的な制度としてすでに実行段階に入っている。令和4年12月には「生徒指導提要」が改訂され、性的指向や性自認に関する配慮が制服、更衣室、宿泊行事などに明記された。さらに令和5年6月、国会で「LGBT理解増進法」が成立。文科省は教職員の研修や相談体制の整備を全国の教育委員会に要請している。
だが、保守層からは「子どもへの過剰な性教育」「家庭の教育権の侵害」といった懸念の声が相次いでいる。こうした拙速な導入は、日本にとって決して無害ではない。欧米ではすでに、同様の流れが深刻な社会問題を引き起こしている。
イギリスでは、未成年への性別移行治療を行っていた「タヴィストック・クリニック」が2023年に閉鎖された。安易に思春期ブロッカーを処方し、後に後悔した若者たちが集団訴訟を起こしたことが引き金となった。スウェーデンでは2021年、カロリンスカ大学病院が18歳未満へのホルモン療法を原則中止。フィンランドも2020年、ガイドラインを改定し「心理的支援の優先」を明記した。
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米フロリダ州では「教育現場での親の権利」により保護者の同意なく子どもに性自認を教えることを制限 |
アメリカでも連邦レベルでLGBT教育を義務づける法律は存在しない。各州に委ねられ、たとえばフロリダ州では2022年に成立した「Parental Rights in Education(いわゆる“Don’t Say Gay”法)」が、保護者の同意なく子どもに性自認を教えることを制限している。
アジアに目を向ければ、同性婚を合法化した台湾ですら、日本のような全国一律の「LGBT理解増進法」は存在しない。法整備は限定的で、教育現場への介入は見られない。日本は、世界でも例を見ないほど“理念先行”の道を突き進んでいるのだ。
理念の裏で進む利権構造──保守層が憂える「公金チューチュー」
このような制度の急進化に、保守派は強く反発している。作家の百田尚樹氏は、「この法律の成立は、自民党が左に大きく傾いた証だ」と断じ、LGBT理解増進法に対する危機感から日本保守党の設立を決意した。氏は「言論の自由を脅かす悪法」と位置づけ、その撤廃を訴えている。杉田水脈氏、小野田紀美氏といった議員たちも、法案の曖昧さや恣意的運用の危険性を早くから警告していた。
さらに深刻なのは、「理解増進」という名目のもとで進行している利権構造だ。実際、各自治体がLGBT関連の啓発事業を外部に委託し、その多くが特定のNPO法人などに流れている。印刷物の制作、講演活動、研修ビデオの配信といった表向きの活動の裏で、「予算獲得のための理念」が一人歩きしているのが実情である。
これは、かつての男女共同参画、慰安婦支援ビジネスと同じ構図だ。国民の税金が、特定の思想を推進する団体に流れ込む「公金チューチュー」の温床になりつつある。
台湾に学ぶ現実主義──理念より「誰が使うか」を考えよ
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トイレ待ちの長蛇の列に並ぶ女性たち 東京駅 ジェンダーレストイレの前に女性トイレを増やすべきでは |
「ジェンダーレストイレ」も、この問題の象徴的な事例である。美辞麗句だけで制度を語るのではなく、誰のための政策かを現実に即して考えなければならない。
台湾では、現在も一部に性別中立トイレが存在するが、その数は全国に約600か所とごくわずかで、男女別トイレは4万か所以上にのぼる。台湾は「ジェンダーレス」ではなく、「男女平等(gender equality)」を原則とし、2006年には女性用便器を男性の2倍以上にすることを定めたポッティ・パリティ(potty parity=トイレの平等)制度を導入した。これは理念ではなく、使用時間の統計や公共空間の利便性を根拠とした現実的な政策である。
また、多目的トイレや個室の設計で、トランスジェンダーや障害者に配慮する構造も整っている。要は、理念を掲げて対立を煽るのではなく、「誰もが不便なく使える空間」を目指すのが本来の公共設計なのだ。
台湾では、現在も一部に性別中立トイレが存在するが、その数は全国に約600か所とごくわずかで、男女別トイレは4万か所以上にのぼる。台湾は「ジェンダーレス」ではなく、「男女平等(gender equality)」を原則とし、2006年には女性用便器を男性の2倍以上にすることを定めたポッティ・パリティ(potty parity=トイレの平等)制度を導入した。これは理念ではなく、使用時間の統計や公共空間の利便性を根拠とした現実的な政策である。
また、多目的トイレや個室の設計で、トランスジェンダーや障害者に配慮する構造も整っている。要は、理念を掲げて対立を煽るのではなく、「誰もが不便なく使える空間」を目指すのが本来の公共設計なのだ。
選挙は未来への責任だ──すべての投票で問われる「目利き力」
いま問われているのは、「理念先行で作られた制度」が、現実社会にどれだけ歪みをもたらすかという視点である。スローガンに踊らされて税金を吸い上げられる構図に、我々はそろそろNOを突きつけるべきではないか。
今回の参議院選挙では、このような制度の実態と背景を見極め、どの候補がそれに対して明確なスタンスを示しているかを重視して投票すべきである。だが、それだけではない。今後の衆院選、地方選挙を含むすべての選挙で、この視点を失ってはならない。
理念の仮面をかぶった制度が、利権や思想の押しつけにすり替わる構図は、教育、福祉、文化、あらゆる分野で広がり得る。だからこそ、有権者には「中身を見抜く力」と「継続的な判断」が求められる。
未来は、表面的なキャッチコピーではなく、政策の背後にある実態を見抜いた者たちの手によって決まる。投票とは、その第一歩である。
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今回の参院選は、単なる政権の勢いを問うものではない。自民党という政党のあり方、その先にある国家の背骨を巡る構造的な転換点なのだ。
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