2025年7月21日月曜日

落選に終わった小野寺勝が切り拓いた「保守の選挙区戦」──地方から始まる政党の構図変化

 まとめ

  • 日本保守党は結党から2年足らずで衆参5議席を獲得し、比例だけでなく選挙区(北海道)にも挑戦。百田尚樹氏が参院比例で当選し、存在感を確立した。
  • 北海道選挙区で落選した小野寺勝氏は、保守党として初の地方区本格挑戦を果たし、国防やアイヌ政策を訴えて一定の得票を得るなど、今後に向けた布石となった。
  • 参政党は4~5年かけて勢力を拡大し、2025年参院選で8議席を獲得。だが、神谷宗幣氏は「参政党は保守ではない」と発言したとされ、保守党との立ち位置の違いが明確に。
  • 両党は急成長する一方で、飯山あかり氏や保守系雑誌など、同じ保守陣営からの批判にも直面してきた。
  • 日本保守党は明確な保守主義と党首の高い知名度を武器に、参政党は大衆政党としての浸透力で、それぞれ異なる方向から「新しい保守」の形を模索している。
百田尚樹の参院当選と日本保守党の異例の急成長
 

2025年7月21日、日本保守党代表の百田尚樹氏が、前日に投開票された参議院選挙の比例代表で当選した。同党からは弁護士・北村晴男氏がすでに当選しており、百田氏はこれに続く2人目の当選者となった。日本保守党にとって、これは参議院での初の議席獲得である。

百田氏はもともとテレビ放送作家として活躍し、「探偵!ナイトスクープ」などの人気番組を手がけた。50歳で作家デビューを果たすと、「永遠の0」でベストセラー作家となり、「海賊とよばれた男」では本屋大賞を受賞するなど、文壇でも強い存在感を示した。そんな百田氏が、ジャーナリストの有本香氏らとともに2023年10月に日本保守党を立ち上げたのは、自民党が左傾化する現状への明確な異議申し立てであった。翌2024年の衆議院選挙では、結党からわずか1年足らずで3議席を獲得し、今回の参院選ではさらに2議席を積み上げた。わずか2年も経たぬうちに、同党は衆参あわせて5議席を有する国政政党に成長したのである。

小野寺勝氏

また今回、日本保守党は比例区だけでなく選挙区にも初挑戦しており、北海道選挙区に立候補した小野寺勝氏の動きは注目に値する。落選こそしたものの、地方選出の新人としては異例の得票を記録し、保守党が地方区でも一定の存在感を示した初の事例となった。小野寺氏は国防・教育・アイヌ政策に関する問題を真正面から訴え、既存政党が触れようとしない論点を堂々と争点化。北海道という難しい選挙区で戦いながらも、党の全国的な支持拡大の「突破口」としての役割を果たしたといえる。

保守党と参政党──成長スピードと立ち位置の違い
 
参政党代表 神谷氏

この躍進は異例である。特に比較すべきは、2020年に結党された参政党だ。参政党は結党から2年後の2022年参院選で初の国政議席(比例1議席)を獲得。その後、2024年の衆院選で3議席、2025年6月には梅村みずほ議員が合流し、議員数は5名に達した。そして同年7月の参院選では、東京・茨城などの選挙区で初めて候補者が当選し、比例と合わせて計8議席を獲得。まさに急伸と言える結果である。

だが、ここで注目すべきは、両党の“成長の質”である。参政党が議席拡大までに4〜5年を要したのに対し、日本保守党はわずか2年足らずで衆参両院に足場を築いた。しかも、その原動力は党首自身の圧倒的知名度と発信力であった。

百田氏は、結党前から国民的知名度を有していた稀有な存在だ。作家としての成功に加え、言論活動を通じて保守層から圧倒的な支持を得ていたことが、党勢拡大を強く後押しした。一方、参政党の神谷宗幣氏は地方議員出身で、当初の知名度は限られていたが、YouTubeやオンライン講座などを駆使して地道に支持層を広げた。この点で両者は対照的である。

支持層の性質にも決定的な違いがある。日本保守党は、既存の自民党に失望した保守層、特に安倍晋三元首相の政治姿勢に共鳴する層を中心に支持を広げた。政策も伝統重視・国益重視が明確で、理念がぶれていない。一方、参政党は「反ワクチン」や「オーガニック志向」といった、保守・リベラルの枠組みを超えた主張を打ち出し、政治未経験層やスピリチュアル層にも広がりを見せた。

実際、神谷氏自身が「参政党にはリベラルな人もおり、参政党は保守ではない。保守は日本保守党に任せる」と語ったとされる発言が、SNS上などで注目を集めた。これは、参政党がイデオロギーにとらわれない保守も含めた大衆政党を目指している姿勢を示す一方で、日本保守党があくまで保守主義に軸足を置いているという違いを如実に浮かび上がらせる発言である。

支持と批判の狭間で──試される“保守の新興勢力”
 

もっとも、両党ともその急成長の裏で、同じ保守系の内側から厳しい視線を浴びてきた点は共通している。日本保守党に対しては、飯山あかり氏をはじめとする保守系評論家や、『Hanada』『WiLL』といった保守系メディアからの批判が相次ぎ、百田氏の言論姿勢や党の運営体制に疑問が呈された。一方、参政党もまた、結党当初から陰謀論的な主張やスピリチュアル色の濃い発信が、保守論壇から冷ややかに見られてきた。

つまり、両党はともに、既成政党に見切りをつけた有権者の受け皿となりながら、同時に保守陣営内部からの試練にもさらされてきたのである。その中で、日本保守党は知名度と明確な国家観を武器に、参政党は草の根運動と非主流層への共感を力に、それぞれ異なる道筋で台頭してきた。

今後、この二つの新興勢力が保守再編の中でどう存在感を強めていくのか。理念か大衆か、論戦か情念か──その行方は、日本政治の未来そのものを映す鏡となるだろう。

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  まとめ 日本保守党は結党から2年足らずで衆参5議席を獲得し、比例だけでなく選挙区(北海道)にも挑戦。百田尚樹氏が参院比例で当選し、存在感を確立した。 北海道選挙区で落選した小野寺勝氏は、保守党として初の地方区本格挑戦を果たし、国防やアイヌ政策を訴えて一定の得票を得るなど、今後...