まとめ
- 歴史的寄港:2025年7月9日、米海軍の原潜「USS Newport News」がアイスランドのグンダルタンギに初停泊し、米国とNATOの北極海での安全保障強化を示した。
- 戦略的背景:ロシアと中国の北極海活動増加に対抗し、GIUK海峡の監視を強化。アイスランドはNATO加盟国として戦略的要衝の役割を担う。
- 日本の安全保障との関連:直接的影響はないが、米国のグローバル戦略が日本の安全保障環境を安定させ、北極海の経済・安全保障的関心とつながる。
- 環境と地元反応:地元住民や環境団体は海洋生態系や放射能リスクを懸念。米国は核兵器非搭載を明言し、安全対策を強調する。
- 今後の展望:日本は北極海航路やケーブルプロジェクトを活用し、米国との同盟を強化。環境問題と安全保障のバランスが課題となる。
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アイスランドのグンダルタンギに寄港した米海軍のロサンゼルス型攻撃原潜(USS Newport News) |
2025年7月9日、米海軍のロサンゼルス型攻撃原潜(USS Newport News)がアイスランドのグンダルタンギに寄港した。これはアイスランドの岸壁に米国の原潜が初めて停泊した歴史的な出来事であり、北極海の安全保障を強化し、米国とNATOの結束を示す動きだ。潜水艦は乗員約143名で、トマホークミサイルやMK-48魚雷を装備するが、核兵器は搭載していない。この寄港は、ロシアや中国の北極海での活動増加に対抗する米国とアイスランドの戦略的協力の象徴であり、日本の安全保障にも間接的に影響を与える可能性がある。以下、この出来事の背景、意義、そして日本との関連を詳しく解説する。
しかし、地元では議論も起きている。一部の住民や環境団体は、原潜の寄港が海洋生態系や放射能リスクを高めると懸念し、アイスランドの核兵器非保有方針にも注目が集まる。米国は核兵器非搭載を明言し、安全対策を強調するが、北極の軍事化に対する不安は根強い。過去には2023年4月にUSS San Juanがアイスランド沖で補給を行ったが、岸壁での停泊は今回が初であり、米国とアイスランドの協力が新たな段階に入ったことを示している。
日本の安全保障とのつながり
日本の安全保障は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍事拡張への対応に重点を置いており、2022年に策定された国家安全保障戦略(NSS)は、ミサイル防衛、サイバーセキュリティ、国際協力を強化している。アイスランドへの原潜寄港は直接的に日本に影響しないが、米国のグローバルな安全保障戦略を通じて間接的な関連がある。まず、米国が北極海でロシアの活動を牽制することで、グローバルな安全保障環境が安定し、日本を含む同盟国に利益をもたらす。特に、北朝鮮や中国の脅威に対抗する米国のプレゼンスは、日本にとって重要な後ろ盾だ。
また、冷戦期に日本は北太平洋で対ソ連の潜水艦監視に協力した経験があり、現在の米国の行動はこれと類似の戦略的枠組みと見なせる。NATOとの関係も重要だ。日本はNATOのパートナー国であり、アイスランドでの米国とNATOの活動は、日本の安全保障に間接的に寄与する。たとえば、2025年8月の大阪万博でのNATO参加は、日米同盟とNATOの連携強化を示す(出典: NATO公式サイト, 2025年7月)。米国のアイスランドでの行動は、こうしたグローバルな協力網を強化し、日本の安全保障環境を安定させる一助となる。
この寄港は、北極海の地政学的競争が激化する中、米国とNATOのプレゼンス強化を示す。ロシアはこれをNATOの拡張と批判し、中国も対抗措置を取る可能性がある。一方、日本は北極海の安全保障や経済的機会を注視し、米国との同盟を基盤に戦略を進める必要がある。たとえば、北極海航路の活用は日本のエネルギー安全保障や貿易に影響し、米国の活動はこれを支える基盤となる。しかし、環境や地元住民の懸念も無視できない。日本も海洋環境保護に取り組んでおり、アイスランドでの議論は日本の政策に教訓を与える。米国との協力深化は、日本の安全保障を強化するが、同時に北極海の軍事化や環境問題へのバランスが求められる。日本は、サイバーセキュリティやミサイル防衛の強化に加え、北極海での国際協力を通じて、グローバルな安全保障に積極的に関与すべきだ。
2025年7月9日のUSS Newport Newsのアイスランド寄港は、北極海の安全保障を強化し、米国とNATOの結束を示す歴史的な出来事だ。日本には直接的影響はないが、米国のグローバル戦略や北極海の経済・安全保障的関心を通じて、日本の安全保障に間接的に寄与する。ロシアや中国の動向、環境問題への対応を注視しつつ、日本は米国との同盟を強化し、北極海での協力を深めるべきだ。この寄港は、変わりゆく世界の安全保障環境の中で、日本が新たな役割を模索するきっかけとなるだろう。
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寄港の背景と北極海の戦略的意味
アイスランドはNATO加盟国であり、北大西洋の戦略的要衝として冷戦時代から重要な役割を担ってきた。近年、気候変動による海氷の減少で北極海の商業航路や資源開発が活発化し、ロシアが軍事基地を拡張し、中国が「極地シルクロード」構想を進める中、GIUK(グリーンランド、アイスランド、英国)海峡の監視が一層重要になっている。2023年初頭、アイスランドは米国の核動力潜水艦の訪問を許可し、今回の寄港はその7回目にあたる。米国海軍のムンス提督は、この寄港が「同盟国へのコミットメントと対抗勢力への抑止力」を示すと強調した。アイスランド政府も、監視能力の強化や水中インフラの保護に寄与すると評価している。
しかし、地元では議論も起きている。一部の住民や環境団体は、原潜の寄港が海洋生態系や放射能リスクを高めると懸念し、アイスランドの核兵器非保有方針にも注目が集まる。米国は核兵器非搭載を明言し、安全対策を強調するが、北極の軍事化に対する不安は根強い。過去には2023年4月にUSS San Juanがアイスランド沖で補給を行ったが、岸壁での停泊は今回が初であり、米国とアイスランドの協力が新たな段階に入ったことを示している。
日本の安全保障とのつながり
日本の安全保障は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍事拡張への対応に重点を置いており、2022年に策定された国家安全保障戦略(NSS)は、ミサイル防衛、サイバーセキュリティ、国際協力を強化している。アイスランドへの原潜寄港は直接的に日本に影響しないが、米国のグローバルな安全保障戦略を通じて間接的な関連がある。まず、米国が北極海でロシアの活動を牽制することで、グローバルな安全保障環境が安定し、日本を含む同盟国に利益をもたらす。特に、北朝鮮や中国の脅威に対抗する米国のプレゼンスは、日本にとって重要な後ろ盾だ。
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ロシア太平洋艦隊旗艦 ミサイル巡洋艦「ワリャグ」 |
さらに、日本は北極海に戦略的関心を持つ。2015年の「日本の北極圏政策」では、気候変動、航路活用、資源開発、安全保障を重視し、北極海経由の海底ケーブルプロジェクトも進行中だ。このケーブルはアイスランドと日本を結ぶもので、経済的・安全保障上の協力を強化する可能性がある。たとえば、2022年に報じられたプロジェクトは、データ通信の高速化とサイバーセキュリティの向上を目指している(出典: Reykjavik Grapevine, 2022年7月13日)。
今後の展望と日本の対応
この寄港は、北極海の地政学的競争が激化する中、米国とNATOのプレゼンス強化を示す。ロシアはこれをNATOの拡張と批判し、中国も対抗措置を取る可能性がある。一方、日本は北極海の安全保障や経済的機会を注視し、米国との同盟を基盤に戦略を進める必要がある。たとえば、北極海航路の活用は日本のエネルギー安全保障や貿易に影響し、米国の活動はこれを支える基盤となる。しかし、環境や地元住民の懸念も無視できない。日本も海洋環境保護に取り組んでおり、アイスランドでの議論は日本の政策に教訓を与える。米国との協力深化は、日本の安全保障を強化するが、同時に北極海の軍事化や環境問題へのバランスが求められる。日本は、サイバーセキュリティやミサイル防衛の強化に加え、北極海での国際協力を通じて、グローバルな安全保障に積極的に関与すべきだ。
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オホーツク海上を飛行する日本のP3C哨戒機 |
2025年7月9日のUSS Newport Newsのアイスランド寄港は、北極海の安全保障を強化し、米国とNATOの結束を示す歴史的な出来事だ。日本には直接的影響はないが、米国のグローバル戦略や北極海の経済・安全保障的関心を通じて、日本の安全保障に間接的に寄与する。ロシアや中国の動向、環境問題への対応を注視しつつ、日本は米国との同盟を強化し、北極海での協力を深めるべきだ。この寄港は、変わりゆく世界の安全保障環境の中で、日本が新たな役割を模索するきっかけとなるだろう。
参照
Reykjavik Grapevine: Submarine Cable Will Give Iceland Direct Telecommunications Access to Japan, 2022年7月13日
https://grapevine.is/news/2022/07/13/submarine-cable-will-give-iceland-direct-telecommunications-access-to-japan/Reykjavik Grapevine: US Nuclear Submarine Docks In Hvalfjörður, 2025年7月9日
https://grapevine.is/news/2025/07/09/us-nuclear-submarine-docks-in-hvalfjordur/Submarine Cable Map, 2025年
https://www.submarinecablemap.com/The Diplomat: Taiwan’s Subsea Cable Security and China’s Growing Regional Influence, 2023年3月
https://thediplomat.com/2023/03/taiwans-subsea-cable-security-and-chinas-growing-regional-influence/The Arctic Institute: Japan Steps Up Its Arctic Engagement, 2025年
https://www.thearcticinstitute.org/japan-steps-up-arctic-engagement/Stimson Center: Back to the Future? The Implications of Growing Strategic Competition in the Arctic for the US-Japan Alliance, 2025年
https://www.stimson.org/2025/implications-strategic-competition-arctic-us-japan-alliance/NATO: NATO to participate at World Expo 2025 in Osaka, Japan, 2025年7月
https://www.nato.int/cps/en/natohq/news_236850.htm
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