まとめ
- 中国などの敵対国による農地・不動産取得が、米国の国家安全保障や食料供給体制を脅かすとして、全米26州が規制法を成立させ、連邦政府も対策に乗り出している。
- フロリダ州、テキサス州、南・北ダコタ州などでは、中国など特定国に対して不動産取得を全面的に禁止する法律が相次いで成立し、違反者には罰金や土地没収といった厳罰が科される。
- 2025年7月には、米農務省が全国的な農地取得禁止方針を打ち出し、トランプ政権も中国系企業による農地・住宅取得を封じる法案を推進している。
- 一部では「実態以上の過剰反応」や「人種差別的だ」とする批判もあるが、裁判所でも合憲性が争われつつ、国家主権を守る正当な措置として支持が広がっている。
- 日本でも同様の脅威があるにもかかわらず、メディアの報道は極めて少なく、米国の動きを対岸の火事とせず、自国防衛の課題として捉え直す必要がある。
「気づけば、我々の“国土”が奪われつつある」
そう言えば大げさに聞こえるかもしれない。だが、アメリカではいま、中国をはじめとする敵対国による土地取得に歯止めをかけようと、各州が本気で動いている。標的は、軍事基地周辺、農地、水源といった“国の急所”だ。
南ダコタ、テキサス、フロリダ──次々と法案が成立し、外国資本の不動産取得を全面禁止する動きが加速している。2025年には、米農務省が全国規模の取得禁止方針まで打ち出した。
問題は、日本だ。この危機的状況を報じるメディアは少なく、世論もほとんど動いていない。しかし、これは他人事ではない。むしろ日本こそが最も“無防備な国”なのではないか。
以下に、アメリカの法整備の実態をまとめた。これは対米観察のためではなく、私たち自身の未来を守るための警告である。
外資による土地取得は「国家の急所」に刺さる
アメリカ各州で進む「チャイナマネー排除」の法制化は、保守派にとって見過ごせない国家防衛の一環である。背景にあるのは、中国をはじめとする「敵対国家」が、アメリカ国内の農地や不動産を買い漁ることで、国家安全保障や食料供給体制が侵食されるという深刻な懸念だ。特に軍事基地や重要インフラの近隣での土地取得は、情報収集や監視活動の拠点となりうるとして、強い警戒が広がっている。
すでに26の州が、中国など特定国籍の個人や企業による農地取得を制限する法律を成立させ、さらに13以上の州で関連法案が審議中だ。南ダコタ州やノースダコタ州では、中国、ロシア、イラン、北朝鮮といった国家を名指しして、農地の取得やリース契約までも全面的に禁止する法律が実際に施行されている。とりわけ南ダコタ州は、違反者からの土地没収を法定化するなど、容赦ない姿勢を示している。
テキサス州も、かつて否決された法案を修正のうえ再提出し、2025年6月に「SB17」が成立。9月から施行予定のこの法律は、中国、ロシア、イラン、北朝鮮を「指定国」と定義し、これらの国と関係するあらゆる個人・企業に対し、農地、住宅地、商業地、インフラ施設を含むすべての不動産取得、そして1年以上の長期リース契約までも禁止する。違反には25万ドルの罰金という厳罰が設けられている。
フロリダ州では2023年に成立した「SB264」が注目された。中国など7カ国の国籍を有する者に対し、農地や軍事施設近辺の不動産だけでなく、住宅購入まで原則として禁止するという、全米でも最も厳しい内容を盛り込んでいる。ただしこの法律は、現在違憲訴訟(Shen v. Simpson)により一部執行が差し止められている。
州法を追うように、連邦政府も動き出した
連邦政府も動きを見せている。2025年7月、米農務省(USDA)は「National Farm Security Action Plan(国家農地安全保障計画)」を発表。敵対国による農地取得を全面的に禁止する方針を打ち出し、中国系企業が保有する土地については、将来的な売却や強制的な権利回収(clawback)を含む措置が検討されている。
さらに、トランプ政権下では「Protecting Our Farms and Homes from China Act(中国による農地と住宅の取得を阻止する法案)」を含む複数の法案が提出された。この法案は、中国共産党と関係のある個人や企業による新規取得を2年間凍結し、既に保有されている不動産については1年以内の売却を義務づけるという強硬な内容だ。対象は農地に限らず住宅にも及び、違反者には資産の没収や刑事罰も科される可能性がある。
こうした連邦・州の動きは、特定の国による土地支配への危機感が、法制度にまで及んだ結果である。事実、ノースダコタ州では中国企業が空軍基地近隣の土地を取得しようとした案件が国家安全保障上の懸念として実際に問題化し、中止された事例もある。もはや仮定の話ではない。
「過剰反応」か「当然の防衛」か──問われるのは覚悟
こうした流れに対して、一部では「行き過ぎだ」との批判もある。たとえば、中国系企業が保有する農地は全米の1%にも満たないという報告があり、実態以上に危機を煽っているのではないかという声もある。また、外国籍者への一律な取得制限については、人種差別や平等保護条項に違反するとの憲法上の問題を指摘する意見も少なくない。実際、フロリダ州の法案は、アジア系住民らによる訴訟により連邦控訴裁判所が執行停止を命じるなど、司法の場でも争われている。
それでも、保守派にとってはこの問題は、単なる不動産取引の枠をはるかに超えている。これは国家主権と安全保障の問題であり、敵対国に国土を明け渡すような行為を看過するわけにはいかない、という揺るぎない信念がある。軍事と食料の安全を他国に握られては、主権国家としての自立は成り立たない。だからこそ、アメリカの各州は法整備を急いでいるのだ。
中国人成金と拝金建設会社に麓の森林を不法に伐採され傷ついた羊蹄山 |
そしてこの動きは、日本にとっても無関係ではない。中国の影響力が増す中で、日本国内でも似たような土地取得が進んでいる現実があるにもかかわらず、メディアはこの問題をほとんど取り上げない。これは危機そのものの見落としであり、あるいは意図的な無視とも言える。アメリカの動きは、単なる地方立法の話ではない。これは国家を守るという当たり前の意思表示であり、主権国家であるならば本来当然にとるべき対応なのだ。
今、日本人が学ぶべきは、「自由主義国家を装った経済的侵略」にどう向き合うか、その覚悟の差である。
以下、ご指定のブログ記事を踏まえ、今回の記事にふさわしい関連記事を5本選んでご紹介します。アメリカの土地規制、対中安全保障、そして日本の無防備性というテーマに共鳴する内容です。
【関連記事】【主権の危機】中国の静かな侵略に立ち向かう豪米、日本はなぜ “無防備” なのか(2025年7月13日)
#チャイナマネー排除 #国家安全保障 #日本も他人事ではない
0 件のコメント:
コメントを投稿