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2019年7月2日火曜日

米国を怒らせてただで済むか。中国にすり寄る日本にトランプ激怒―【私の論評】米保守派の歴史観を多くの日本人は理解していない(゚д゚)!


トランプ氏の発言は選挙目当てのディールと見て良いのか?

G20直前の6月27日、「日米安保条約における同盟関係が片務的」だと日本に対して露骨に不満を表明したトランプ大統領。なぜこのタイミングだったのでしょうか。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、最近のタンカー砲撃事件や、日本の対中政策に対して「米国が抱くであろう不満」を解説するとともに、日本が70年前と同じ過ちを起こさぬよう警鐘を鳴らしています。

G20、トランプは、なんで怒ってるの???

G20で、世界のリーダーたちが、日本に集結していますね。いろいろありますが、もっとも気になるのは、トランプさんの言動でしょう。
トランプ氏「米国が攻撃されても日本は助ける必要はない」安保条約に不満
毎日新聞 6/27(木)0:44配信
トランプ米大統領は26日、米FOXテレビの電話インタビューで、日米安全保障条約について「もし日本が攻撃されたら、米国は第三次世界大戦を戦う。あらゆる犠牲を払って戦う。しかし、米国が攻撃されても日本は助ける必要はない。ソニーのテレビで、攻撃されているのを見ていられる」と述べ、防衛義務の片務性に関し不満を述べた。
これ、選挙戦中はよくいっていましたが、大統領になってからはいわなくなっていた。G20前にいいだしたのは、偶然とは思えません。日本に来てからも。
トランプ大統領来日「日豪の面倒みてきた」同盟が片務的と強調
毎日新聞 6/27(木)22:20配信
トランプ米大統領は27日、主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)に出席するため大統領専用機で大阪の伊丹空港に到着した。市内のホテルでモリソン豪首相と会談し、3日間の滞在日程をスタートさせた。会談冒頭、日本や豪州との関係について「とてもよく面倒をみてきた」と発言。「巨額の貿易赤字を抱え、軍事面でも助けている」と述べ、貿易、安全保障両面で同盟国との関係が片務的との主張を繰り返した。
なんだか「不機嫌」ですね。思い出されるのは、トランプさん、5月に来日した時は「幸せそうだった」ということ。5月末時点で、安倍―トランプ、日米関係は大変良好だった。

しかし、トランプさんは今、日米関係にいろいろ文句をいっている。ということは、1か月間の日本、あるいは安倍さんの行動に不満だということでしょう。何が?

日本は、「タンカー攻撃イラン犯行説」を疑う

この1か月で、もっとも目立ったできごとは、安倍さんがイランにいったことでしょう(6月12~14日)。アメリカとイランの仲を好転させようとした。しかし、うまくいきませんでした。このことは、問題ないでしょう。正直、「安倍総理の仲介で、アメリカとイランの仲は劇的に改善される」と思っていた人はいません。

問題は、訪問中におきた「タンカー攻撃」です(6月12日)。トランプさんは、即座に「イランがやった!」と断定しました。アメリカは、証拠らしきものも出した。
タンカー攻撃、「機雷除去するイラン軍」の映像 米が公開
6/15(土)6:04配信
【AFP=時事】中東のオマーン湾(Gulf of Oman)でタンカー2隻が攻撃を受けた問題で、米政府は、イラン革命防衛隊(IRGC)がうち1隻の攻撃に関与したことを示すとする低画質の映像を公開した。米中央軍(US Central Command)のウェブサイトで13日に公開された映像は、イラン巡視船の乗組員が不発の吸着型機雷を船腹から除去する様子を捉えたものとされる。船体についているマークは、攻撃を受けた日本のタンカー「コクカ・カレイジャス(Kokuka Courageous)」を撮影した過去の映像や写真と一致しているように見える。
しかし、「イラン説」を支持したのは、イギリス、イスラエル、サウジなどわずか。ほとんどの国は、「ほんとにイランがやったんですか~~~」という反応だった。さて、わが国はどのような反応だったのでしょうか?
タンカー攻撃、米に証拠提示要求 政府、「イラン関与」同調せず
共同 6/16(日)6:00配信
政府がホルムズ海峡付近で起きたタンカー攻撃を巡り、イランが関与したとする米国の説明に同調せず、裏付けとなる証拠を示すよう米側に求めていることが分かった。米側主張は説得力に欠いているとの受け止めが背景にある。
なんと日本政府は、アメリカの主張を信じなかった。それで、「証拠だせ!」と要求した。「安倍はトランプのポチ論者」に「どこがポチだ!?」と質問してみたいものです。

私は、この対応、正しかったと思います。アメリカは、イラク戦争時も、2013年8月のシリア攻撃の時も大きなウソをつきました。だから、ごく一部以外の国は、日本と同じ対応です。

しかし、それはそれとして、トランプさんは、おもしろくなかったでしょう。「イギリス、イスラエル、サウジのように支持してほしかった」ことでしょう。そのせいか、後でトランプさんは、「タンカーは自分で守れ」と発言しました。

日本は、アメリカの敵に接近する

こちらは、イラン問題よりもっと深刻。アメリカは2018年、中国と「覇権戦争」を開始しました。これは、ただの「貿易戦争」ではありません。「世界の覇権」をかけた戦争です。

もちろん「戦争」といっても、「戦闘」ではありません。情報戦、外交戦、経済戦。それでも、米ソ冷戦と同じように、「世界の覇権をかけた戦争」であること、間違いありません。

ところで日中関係は、2010年の尖閣中国漁船衝突事件、2012年の尖閣国有化以降、ず~~~と悪かった。しかし、2018年に米中覇権戦争が起こったら、とたんによくなった。これ、わかりますね。アメリカにたたかれた中国が、日本にすり寄ってきたのです。

日本は、この動きを大歓迎した。わかります。中国は、「日本には、尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない!」と宣言している。日中関係がよくなれば、中国が尖閣、沖縄を侵略する可能性は減るでしょう。

しかし、アメリカから見るとどうでしょうか?「日本は、アメリカと中国を戦わせて、漁夫の利をえようとしているのではないか??」と疑念をもちます。日本としては、「ただすべての国と仲良くしたいだけ」かもしれない。しかし、アメリカから見ると「安倍は、狡猾な野郎だ!」とうつるに違いない。
安倍氏「日中、完全に正常軌道」 習氏「来春訪日いい考え」 日中首脳会談
6/27(木)21:38配信
安倍晋三首相は27日夜、主要20カ国・地域(G20)首脳会議のために来日した中国の習近平国家主席と大阪市内のホテルで会談した。中国の国家主席の来日は、2010年11月の胡錦濤氏以来9年ぶり。首相は「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」とし、「来年の桜の咲く頃、習主席を国賓として日本に迎えたい」と表明。習氏は「来春の訪問は極めていいアイデアだ。外交部門で具体的な時期について調整してほしい」と応じた。両国は首脳往来を軌道に乗せ、日中関係を発展させる方針だ。
日本の同盟国アメリカは、覇権をかけて中国に戦いをいどんでいる。そんな時アメリカの同盟国は、アメリカの敵中国と、「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」と大喜びしている。アメリカから見れば、これは「深刻な裏切り行為」に見えるでしょう。

日本の問題はなんでしょうか?トランプさんがなぜ不機嫌なのかわからないことです。

日本は「いつか来た道」をいくのか?

現在の世界は、「米中覇権戦争」を中心にまわっています。平時であれば、「善隣友好外交」はよいことでしょう。しかし、戦争がはじまったら、どっちにつくか選ばなければなりません。

中国は、「日本には尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない!」と宣言している。アメリカは、日本の領土を狙っていない。そして、アメリカは日本の同盟国である。だから日本は、はっきりとアメリカの側につくべきなのです。

第2次大戦中、日本は愚かにも負ける側のドイツを同盟国に選んでしまいました。今回は、中国を選び、アメリカを怒らせ、また敗戦国になるのでしょうか?

安倍総理は、ここまで外交を非常にうまくされています。しかし、最後の最後で選択を間違えば、すべて台無し。せめて、「同盟国(米)は、日本の領土を狙う国(中国)より大事」という常識を忘れないでいただきたいです。

【私の論評】米保守派の歴史観を多くの日本人は理解していない(゚д゚)!

昨年は、日本の総理大臣による7年ぶり中国公式訪問がなされました。昨年10月25日からの安倍総理中国訪問を日本の各メディアは「歓迎」という言葉で報じましたが、日本人の多くは、なぜ歓迎できるのかがわからなかったようです。

首脳会談に際し安倍総理を迎えた習近平国家主席の表情が「柔らかかった」のも話題となり、メディアはその理由を躍起になって解説しました。そしてたどりついたのが「『米中貿易戦争』で中国が日本にすり寄ってきた」という理屈でした。

つまり、米国との深刻な対立を抱えた中国が日本の理由価値を見出して寄ってきたというわけです。

安倍総理の訪中いあわせて天安門前で翻る日の丸

これは、現在でも、最も説得力のある解説として市民権を得ているようです。そして同じ文脈で語られるのが、「日本が利用されないように……」という警戒です。ブログ冒頭の記事もまさにこのことを指摘しています。

しかし、この解釈は必要条件の一部は満たしているようですが、十分条件にははるかに及ばないと言わざるを得ないです。

日本人が好む「1+1=2」という公式的な思考ですが、逆算して、日本との関係を改善した中国が、それを理由に対米関係を改善できるかといえば、その可能性はほとんどゼロに近いことを考えれば無理のある理屈です。

そもそも昨年の首脳会談の実現は、中国が「すり寄ってきた」ことで実現したのでしょうか。

首脳会談前後の歓迎ぶりを見る限り、中国が対日関係の改善に前向きであるのは疑いないようではありました。しかしそれは、中国式表現を借りて「氷は解けたのか?」と言われれば、明らかにそうではないです。周辺の氷は確かに解けたのですが、真ん中の氷はまだ解けてはいないからです。

例えば、日本側は当初、安倍総理の訪問を日中平和友好条約40周年に合わせた10月23日を希望し、それに合わせて調整されてきていたのですが、最終的に中国側の都合で25日からに変更されましたた。

いったいどんな重要な用事でそうなったのかといえば、それはなんと同時期に開通した「港珠澳大橋」の式典への習近平氏の出席と広東省視察のためでした。中国が何が何でも日本を取り込もうとするならば、日程は調整できたのではないでしょうか。

昨年10月23日「港珠澳大橋」の式典に参加した習近平
安倍総理との首脳会談に臨んだ習近平国家主席は、広東省の南部戦区の視察から駆け付けたということで、テレビ番組によってはそっちがトップニュースで、2番目に日中首脳会談という扱いのところもありました。


とても死活的、短期的に日本との関係を改善したい国の行いではありません。

このことは首脳会談とそれに絡む行事を詳細に見てゆくと、なお鮮明となります。

例えば、習近平国家主席が首脳会談で述べた言葉ですが、日中の現状を評して「双方の共同の努力の下で、目下の中日関係は正常な軌道に戻りつつあり」と語っています。注目点はあくまで「戻りつつあり」と表現していて、「戻った」とは言っていなかったことです。中国の文面を確認しても同じく「勢頭」という言葉がついていました。

とはいいながら、中国が日本のとの関係を突き放しているのかと言えば、それも違います。

李克強総理は日中平和友好条約40周年招待会でのスピーチで、「正常な軌道に戻ったうえで積極的な発展の勢いを呈している中日関係」と評していたからです。

総理が「(正常な軌道に)戻った」と語っているのに、国家主席が「戻りつつある」としたのは単なるミスではありませんでした。「言葉の国」と表現される中国がそんな雑なことをしたはずはありません。

では、どういうことだったのでしょうか。

考えられることは、経済を担当する国務院総理は「戻った」と言い切ることができても、政治を担当する国家主席(党中央総書記)はまだ現段階で「戻った」とは言い切れなかったということです。

これは国民の目を意識しつつ、手放しで日本との距離を詰めるのには、ほんの少し慎重でなければならないということを意味していたのです。

日本との関係を深めたい動機は、早くから中国に芽生えていたのですが、その歩度は石橋を叩いて渡る如くというわけです。

そもそも日中の接近は、中国が2016年の末にその必要性を認識したからでした。理由は、安定した経済発展を続けるためには、外国と対立を抱えることが大きなマイナスになることを中国自身が実感したからです。


とくに南シナ海問題で袋叩きに遭った直後から全方位的に各国との関係改善に乗り出したころに始まり、日本側は2017年4月のマール・ア・ラーゴの米中首脳会談でトランプ大統領と習近平国家主席の間に良好な関係が築かれたことで対中包囲網という途方もないアイデアに終止符を打ったことに始まり、その後も駐日中国大使館主催の国慶節イベントに総理が出席してラブコールを送るなど、双方の動きは1年以上も前から活発で米中対立の前からのことでした。

つまり米中対立は日中接近の動機の一つの要素として指摘することは間違いではないのだですが、十分な説明とはならないのです。

ところが、おそらく日本では単純化されて「『米中貿易戦争』で中国が日本にすり寄ってきた」という解説だけが残ったようです。

この小さな誤差は、間違いとははっきりとは言えないものだけにやっかいで、最終的には日本人の対中国観を大きく歪めてゆくことになることが心配です。

しかし、「中国が日本に対してすり寄りしていない」証拠として一つはっきりしていることがあります。中国による尖閣付近での示威行動が未だに続いているということです。

沖縄県・尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で2日、中国海警局の船4隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認しました。尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは17日連続です。

第11管区海上保安本部(那覇)によると、1隻は機関砲のようなものを搭載。領海に近づかないよう巡視船が警告しました。

このようなことがなくならない限り、日本は中国が日本にすり寄ってきているなどとみなすべきではないのです。

「『米中貿易戦争』で中国が日本にすり寄ってきた」等というのは、一部の財界人と、いわゆる親中派・媚中派の政治家のみととらえるべきでしょう。

そうして、このような勢力が日本に存在していることが、トランプ大統領を苛立たせているのです。

米国では、このブロクでも何度か解説したように、メディアのほとんどがリベラル派によって占められています。大手新聞は、すべてリベラルです。ウォールストリート・ジャーナルなどを保守系のメディアとする人もいますが、歴史が古いだけで、やはりリベラルです。

テレビ局も大手は、ほとんどリベラルで、例外的にフォックスだけが、保守です。

そのため、表立って保守派が声を大にしてものを語っても、メディアは取り上げずかき消されることが多いです。しかし、米国の少なくとも人口の半分は保守派です。そうでなければ、トランプ大統領は誕生していなかったはずです。米国には、トランプ大統領の誕生の原動力ともなった、草の根の保守運動が息づいています。

そのリーダー的存在だった、フィリス・シェラーフリー女史(2016年逝去)は、以下のように語っています。
我々がルーズベルト外交の再検証をしているのは日本を見直すためにしているのではない。 
なぜ我々アメリカ人は今、中国共産党の台頭に苦しまなければいけないのか。なぜ我々は北朝鮮の核に悩まなければいけないのか。 
なぜ我々は今、こんな状況なのか。なぜ今、アジアはこんな状況なのか。 
それらを過去にさかのぼって調べていくと、ルーズベルトのヤルタ外交に行き着くのだ。ヤルタの見直しは過去の問題ではない。今の外交政策を見直すためにルーズベルト外交の徹底的総括は乗り越えなければいけない。
また、以下のようにも語っています。
私たちの草の根運動は60年代に反共運動としてスタートした。当時の反共アメリカ人はヤルタ会談は間違いでルーズベルトは裏切り者と考えていた。 
ヴェノナ文章のおかげで自分たちが正しいと言うことが分かった。 
アメリカの保守主義者はルーズベルトの工作によって、当時日本が真珠湾攻撃をせざるを得なかったと理解している。そのことを日本に知ってほしい。
米国の保守派は、反共の防波堤としてソ連と対峙して日本と戦争をしたのは間違いであったという歴史観を持っています。このようなことは、米国のメディアのほとんどが、リベラルであるため、つい数年前まではほとんどの日本人は知りませんでした。今でも、知っているのは一部の人だけでしょう。

ルーズベルト

米国の保守派は、ルーズベルトにより、米国はかつてはソ連の台頭をゆるし、今は中国の台頭を許し、北朝鮮の核に悩むことになったという歴史観を持っているのです。

そうして、現在米国は保守派だけではなく、超党派で中国と対峙し、冷戦を戦っています。そんな中で、同盟国であるはずの日本の一部の財界人、与党内にも存在している親中派、媚中派の政治家が存在するということに、トランプ氏は怒りが収まらなかったのでしょう。

最近トランプ大統領が、日米安保見直しの可能性を示唆したのも、こうしたことの延長線上にあるものとみるべきです。

まさに、「同盟国(米)は、日本の領土を狙う国(中国)より大事」という常識を忘れないでいただきたいですし、米国保守派は先の大戦で、日本と米国が戦ったのは間違いであり、そのためにソ連を台頭させ、現在では中国を台頭させ、北朝鮮の核に悩むことになったという歴史観を持っているのです。

このような歴史観に立脚すれば、日本の一部の財界人、親中派、媚中派の政治家など裏切り者と見えるのは当然のことです。この歴史観を理解していないからこそ、大方の日本人はトランプ氏の怒りを理解できないのです。

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2018年11月3日土曜日

苦境の習氏、トランプ大統領にすり寄りか 米中首脳が電話会談 藤井氏「米国は甘い顔を見せない」―【私の論評】内需を拡大できない中共の宿痾で中国は凡庸なアジアの独裁国家に成り果てる(゚д゚)!

苦境の習氏、トランプ大統領にすり寄りか 米中首脳が電話会談 藤井氏「米国は甘い顔を見せない」

トランプ大統領と習近平主席

 ドナルド・トランプ米大統領は1日、中国の習近平国家主席と電話会談を行った。「米中新冷戦」が顕在化するなか、苦境に陥った中国としては、米国にすり寄った面もある。トランプ氏としても、中間選挙(6日)の直前に、硬軟織り交ぜた外交手腕をアピールする意図もありそうだ。

 《習氏と貿易に重点を置き、長い時間、多くの議題をめぐり協議した。(11月末に)アルゼンチンで開かれるG20(20カ国・地域)首脳会議での会談予定も順調だ》《(北朝鮮情勢についても)良い協議ができた》

 トランプ氏は1日、ツイッターにこう書き込んだ。両首脳の電話会談は、貿易摩擦が深刻化する前の今年5月以来。

 中国の国営中央テレビ(CCTV)などによると、習氏は会談で「世界2大国が、安定的で健全な関係を促進することを望んでいる。過去に経済貿易で立場の違いもあり、両国の産業と世界貿易はマイナスの影響を受けた。今後は、双方で受け入れ可能な案で通商協議を進め、2カ国間貿易での協力を拡大したい」と発言。

 これに対し、トランプ氏は「習氏との良好な関係構築を重視している。両国で頻繁に意思疎通することが重要だ」と語ったという。

 トランプ政権は、中国が、米国のハイテク技術を不当に入手しているなどとして、これまでに、中国からの総額2500億ドル(約28兆円)の輸入品に対し、高額の関税をかけた。

 背景には、米国に挑戦するように、軍事的覇権を強めている共産党一党独裁の中国を牽制(けんせい)する意図がある。米国はこの先、米中協議などが不調に終われば中国に追加制裁を発動する構えだ。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「トランプ氏は、中国が実際に結果を出さなければ、妥協はしない。習氏としても、これ以上、関税をかけられたり、トランプ氏から『G20での首脳会談もないぞ』と言われると困る。米国に泣きつき、今回の電話会談になったのだろう。すべては、マイク・ペンス米副大統領が10月4日、ワシントンで、中国を念頭に『宣戦布告』といえる演説をしたことに始まっている。トランプ氏は、中国にはそう簡単には甘い顔を見せない」と語った。

【私の論評】内需を拡大できない中共の宿痾で中国は凡庸なアジアの独裁国家に成り果てる(゚д゚)!

中国はもうすでに、八方塞がりです。中国がまともな国であれば、たとえ米国から貿易戦争を挑まれても、金融制裁をくらってもやりようがあるどころか、潜在能力としては世界一なのですが、現在の体制ではその能力を十分活かすことができません。

それは何かといえば、内需拡大策です。本来はこれを実行し、それに成功すれば、別に米国と貿易などしなくても、やりようはあります。ただし、先進国並みに内需拡大ができるような体制の国であれば、そもそも中国は米国などと貿易摩擦を起こすこともありませんでした。

記者会見する中国国家発展改革委員会の連維良副主任(右端から2人目)ら=9月25日、北京

中国のマクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会の連維良副主任は9月25日の記者会見で、米国による対中制裁関税の影響について「中国経済には強靱性と内需の潜在力がある。リスクは全体として抑制できる」と述べました。消費促進などの内需拡大策を強化し、貿易摩擦の影響を相殺する方針と語りました。

実際、中国政府は内需刺激策を順次打ち出しています。しかし、かつては中国でしばしば景気刺激策の柱となったインフラ投資の拡大については、比較的抑制的な水準にとどめられています。

これは、過去のインフラ投資拡策が生み出した弊害を踏まえたものです。10年前のリーマン・ショック後に中国政府が実施した、インフラ投資中心の4兆元(当時の為替レートで約56兆円)の景気対策やその他のインフラ投資拡大策は、後に企業、地方政府の過剰債務問題をもたらし、金融システムの安定を損ねる事態に発展してしまいました。

また、過剰投資は鉄鋼、セメントなどの過剰生産を生み出し、米中貿易戦争の遠因の一つともなりました。さらに、道路や居住用建築物でも過大で無駄な投資プロジェクトが次々と発覚していくことになりました。

そこで今回の景気対策では、預金準備率引き下げなどの金融緩和策と並んで、減税措置がその中核を担っています。中国政府は2018年10月から、中間層の消費底上げを狙って個人所得減税策を実施しました。

減税規模は年間3,200億元(約5兆1千億円)です。個人所得税の課税最低限を現在の3,500元から5千元に引き上げるのが柱となります。子供の教育費や住宅ローンの利息などを課税所得から差し引ける仕組みも併せて導入されます。2018年10月から実施されたましたが、法改正を踏まえた全面実施は2019年年初からです。

しかし、この所得減税措置の景気刺激効果については、慎重な見方も多いです。そもそも、インフラ投資と比べると、所得減税策は短期的な景気刺激効果は小さくなるのが通例です。減税の相当部分が貯蓄の増加に回されるためです。野村證券は、今回の措置による個人消費の押し上げ効果は0.2%程度、GDPの押し上げ効果は0.1%弱にとどまると試算しています。

こうした点を踏まえて、中国政府が追加的な所得税減税を実施するとの見方も多くなされています。中国人民銀行・金融政策委員会の委員で、清華大学金融発展研究センター主任の馬駿氏は、2019年の減税及び手数料の引き下げ規模がGDPの1%を超える可能性があると指摘しています。GDPの1%規模は8,000億人民元強であることから、2018年の所得減税を相当上回る規模となります。

米中貿易戦争は、長期化する可能性が高まっています。それは、この問題が単なる貿易不均衡の問題ではなく、2大大国の経済、先端産業、軍事を巡る覇権争いがその背景にあり、さらに政治・経済体制間の争いにも発展しているためです。両国ともに簡単には譲歩できない事態にまで発展しています。

マイク・ペンス副大統領が2018年10月4日に米国の保守系シンクタンクのハドソン研究所で行った演説は、激しい中国批判に終始し、米中が経済、政治、軍事で全面的な対立の構図に陥った可能性、いわば「米中新冷戦」の始まりを宣言したに等しい内容になっています。

演説をするペンス大統領。2018年10月4日に米国の保守系シンクタンクのハドソン研究所似て。

このように米中貿易戦争が長期化すれば、中国の輸出環境は長期間厳しい状況に置かれる可能性があります。そのもとでも相応の成長率を維持するには、より内需主導型への経済構造を転換していく必要があるでしょう。

しかし、インフラ投資、あるいは一般に公的・民間投資の拡大は、すでに見たような深刻な問題を再び生じさせるおそれがあります。そこで、内需のけん引役としては個人消費が期待されます。すでに見た所得減税策も、こうした考えに基づいて実施された側面もあると考えられます。

しかし、税制改革だけで持続的な個人消費主導の経済に転換していくことは、難しいです。個人消費の増加率を高めるには、個人貯蓄率の継続的な引き下げが必要になりますが、それを阻んでいるのが、社会保障制度の未整備に基づく将来不安です。

そうであれば、大幅な社会保障制度が、消費刺激の観点からも求められます。さらに、労働者の地域間移動の活性化を通じた所得引き上げを促すには、戸籍制度の見直しも必要にです。

中国・上海の古い街並みに座る高齢の男性

こうした点から、長期化が見込まれる米中貿易戦争は、社会制度も含めた中国の構造改革を必然的に促すようになる可能性があります。

この構造改革については、以前からもこのブログに掲載しています。この構造改革は幅も奥行きも広いものとなりますが、その中でも根底にあるのは、民主化、政治と経済の分離、法治国家化です。これなしに、他の構造改革を実行したとしても、すべて積木くずしのように崩れてしまうことでしょう。

これは、先進国でもどの国でも完璧ではないとはいいながら、中国などの発展途上国から比較すれば、かなり進んでいます。中国に限らず、これらが整備されていない国では本来自由貿易などできません。

ただし、中国以外のこれらがあまり整備されていない発展途上国の場合は、人口もさほど大きいわけでもなく、大きな産業もないため、先進国と貿易をしたとしても、そもそも取引量ならびに額が低いのでほとんど問題にはなりません。

しかし、中国はそういうわけにはいきません。社会構造はとてつもなく遅れているにもかかわらず、人口が多く、中国の経済統計は出鱈目なので本当はどうかはわかりませんが、GDPは一応世界第二位といわれています。これが嘘だとしても、他の発展途上国と比較すると、かなり大きいことは確かです。さらに、軍事も経済もこれからまだ伸びる余地があるということで、先進国と同列にみられがちですが、その実社会構造はとてつもなく遅れています。

なぜこんないびつなことになってしまったかといえば、中国の将来性に期待して海外からかなり投資が増えたからです。そのため、中国は遅れた社会構造を維持したまま、インフラを整備し、軍隊を強化して現在に至っています。

この中国が遅れた体制を維持したまま、米国や他の先進国と貿易をしたので、必然的に不公正、不正などが生じたのです。それが今日、米国の対中国冷戦へとつながったのです。

これを是正して、日米をはじめとする先進国とまともな貿易をするには、中国はまずは、ある程度の民主化、経済と政治の分離、法治国家化を進めなければならいですし、内需を拡大するにもこれを実施しなければなりません。

内需を拡大するには、構造改革をして、現在のように極一部の富裕層とその他大勢の貧乏人という状況を崩して、多数の中間層が自由に社会・経済活動を営めるようにして、経済的に豊かにする必要があります。

しかし、中国共産党にとっては、これをすすめると、統治の正当性が失われることになります。なぜそのようなことになるかといえば、まずは民主化を進めるためには、選挙など実施しなければならなくなりますが、それを実施すれば、共産党一党独裁は崩れる可能性があります。

政治と経済の分離をしてしまえば、現在のような人治による経済活動は崩れてしまいます。人脈はあまり大きな意味を持たなくなります。そうなると、中国の人脈に基づいた派閥政治は崩れることになります。

法治国家化を進めれば、当然のことながら、現在のように憲法や人民解放軍が共産党の下に位置づけられるということはなくなり、憲法に縛られ、人民解放軍は他の先進国ではあたりまえの、国民国家の軍隊ということになり、中国共産党の私兵ではなくなります。

そうなると、当然のことながら、共産党の統治の正当性が崩れ、他の勢力にとって変わられることになります。

そのような状況を中国共産党が望むはずもありません。中国の将来は中共が支配し続けるか、内乱によって、構造改革を進めようとする他の勢力が中共にとってかわるかしかないと考えられます。

中共が支配しつづけることになれば、中国は内にこもるしかなくなり、図体が大きいだけの凡庸なアジアの一独裁国家に成り果てることになります。そうして、確率としてはこちらのほうが高いと思います。私としては、中国が何か変わるとすれば、この状態を経て、中共の力が弱まり、最終的にいくつかの国に分裂するときだと思います。

中国がいずれの道を選ぶにしても、そこまで行き着くには短くても、10年、長ければ20年はかかるでしょう。はっきりしているのは、その時がくるまで、米国による対中国冷戦が続くということです。そうして、その時は必ず来ます。

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