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2018年11月3日土曜日

苦境の習氏、トランプ大統領にすり寄りか 米中首脳が電話会談 藤井氏「米国は甘い顔を見せない」―【私の論評】内需を拡大できない中共の宿痾で中国は凡庸なアジアの独裁国家に成り果てる(゚д゚)!

苦境の習氏、トランプ大統領にすり寄りか 米中首脳が電話会談 藤井氏「米国は甘い顔を見せない」

トランプ大統領と習近平主席

 ドナルド・トランプ米大統領は1日、中国の習近平国家主席と電話会談を行った。「米中新冷戦」が顕在化するなか、苦境に陥った中国としては、米国にすり寄った面もある。トランプ氏としても、中間選挙(6日)の直前に、硬軟織り交ぜた外交手腕をアピールする意図もありそうだ。

 《習氏と貿易に重点を置き、長い時間、多くの議題をめぐり協議した。(11月末に)アルゼンチンで開かれるG20(20カ国・地域)首脳会議での会談予定も順調だ》《(北朝鮮情勢についても)良い協議ができた》

 トランプ氏は1日、ツイッターにこう書き込んだ。両首脳の電話会談は、貿易摩擦が深刻化する前の今年5月以来。

 中国の国営中央テレビ(CCTV)などによると、習氏は会談で「世界2大国が、安定的で健全な関係を促進することを望んでいる。過去に経済貿易で立場の違いもあり、両国の産業と世界貿易はマイナスの影響を受けた。今後は、双方で受け入れ可能な案で通商協議を進め、2カ国間貿易での協力を拡大したい」と発言。

 これに対し、トランプ氏は「習氏との良好な関係構築を重視している。両国で頻繁に意思疎通することが重要だ」と語ったという。

 トランプ政権は、中国が、米国のハイテク技術を不当に入手しているなどとして、これまでに、中国からの総額2500億ドル(約28兆円)の輸入品に対し、高額の関税をかけた。

 背景には、米国に挑戦するように、軍事的覇権を強めている共産党一党独裁の中国を牽制(けんせい)する意図がある。米国はこの先、米中協議などが不調に終われば中国に追加制裁を発動する構えだ。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「トランプ氏は、中国が実際に結果を出さなければ、妥協はしない。習氏としても、これ以上、関税をかけられたり、トランプ氏から『G20での首脳会談もないぞ』と言われると困る。米国に泣きつき、今回の電話会談になったのだろう。すべては、マイク・ペンス米副大統領が10月4日、ワシントンで、中国を念頭に『宣戦布告』といえる演説をしたことに始まっている。トランプ氏は、中国にはそう簡単には甘い顔を見せない」と語った。

【私の論評】内需を拡大できない中共の宿痾で中国は凡庸なアジアの独裁国家に成り果てる(゚д゚)!

中国はもうすでに、八方塞がりです。中国がまともな国であれば、たとえ米国から貿易戦争を挑まれても、金融制裁をくらってもやりようがあるどころか、潜在能力としては世界一なのですが、現在の体制ではその能力を十分活かすことができません。

それは何かといえば、内需拡大策です。本来はこれを実行し、それに成功すれば、別に米国と貿易などしなくても、やりようはあります。ただし、先進国並みに内需拡大ができるような体制の国であれば、そもそも中国は米国などと貿易摩擦を起こすこともありませんでした。

記者会見する中国国家発展改革委員会の連維良副主任(右端から2人目)ら=9月25日、北京

中国のマクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会の連維良副主任は9月25日の記者会見で、米国による対中制裁関税の影響について「中国経済には強靱性と内需の潜在力がある。リスクは全体として抑制できる」と述べました。消費促進などの内需拡大策を強化し、貿易摩擦の影響を相殺する方針と語りました。

実際、中国政府は内需刺激策を順次打ち出しています。しかし、かつては中国でしばしば景気刺激策の柱となったインフラ投資の拡大については、比較的抑制的な水準にとどめられています。

これは、過去のインフラ投資拡策が生み出した弊害を踏まえたものです。10年前のリーマン・ショック後に中国政府が実施した、インフラ投資中心の4兆元(当時の為替レートで約56兆円)の景気対策やその他のインフラ投資拡大策は、後に企業、地方政府の過剰債務問題をもたらし、金融システムの安定を損ねる事態に発展してしまいました。

また、過剰投資は鉄鋼、セメントなどの過剰生産を生み出し、米中貿易戦争の遠因の一つともなりました。さらに、道路や居住用建築物でも過大で無駄な投資プロジェクトが次々と発覚していくことになりました。

そこで今回の景気対策では、預金準備率引き下げなどの金融緩和策と並んで、減税措置がその中核を担っています。中国政府は2018年10月から、中間層の消費底上げを狙って個人所得減税策を実施しました。

減税規模は年間3,200億元(約5兆1千億円)です。個人所得税の課税最低限を現在の3,500元から5千元に引き上げるのが柱となります。子供の教育費や住宅ローンの利息などを課税所得から差し引ける仕組みも併せて導入されます。2018年10月から実施されたましたが、法改正を踏まえた全面実施は2019年年初からです。

しかし、この所得減税措置の景気刺激効果については、慎重な見方も多いです。そもそも、インフラ投資と比べると、所得減税策は短期的な景気刺激効果は小さくなるのが通例です。減税の相当部分が貯蓄の増加に回されるためです。野村證券は、今回の措置による個人消費の押し上げ効果は0.2%程度、GDPの押し上げ効果は0.1%弱にとどまると試算しています。

こうした点を踏まえて、中国政府が追加的な所得税減税を実施するとの見方も多くなされています。中国人民銀行・金融政策委員会の委員で、清華大学金融発展研究センター主任の馬駿氏は、2019年の減税及び手数料の引き下げ規模がGDPの1%を超える可能性があると指摘しています。GDPの1%規模は8,000億人民元強であることから、2018年の所得減税を相当上回る規模となります。

米中貿易戦争は、長期化する可能性が高まっています。それは、この問題が単なる貿易不均衡の問題ではなく、2大大国の経済、先端産業、軍事を巡る覇権争いがその背景にあり、さらに政治・経済体制間の争いにも発展しているためです。両国ともに簡単には譲歩できない事態にまで発展しています。

マイク・ペンス副大統領が2018年10月4日に米国の保守系シンクタンクのハドソン研究所で行った演説は、激しい中国批判に終始し、米中が経済、政治、軍事で全面的な対立の構図に陥った可能性、いわば「米中新冷戦」の始まりを宣言したに等しい内容になっています。

演説をするペンス大統領。2018年10月4日に米国の保守系シンクタンクのハドソン研究所似て。

このように米中貿易戦争が長期化すれば、中国の輸出環境は長期間厳しい状況に置かれる可能性があります。そのもとでも相応の成長率を維持するには、より内需主導型への経済構造を転換していく必要があるでしょう。

しかし、インフラ投資、あるいは一般に公的・民間投資の拡大は、すでに見たような深刻な問題を再び生じさせるおそれがあります。そこで、内需のけん引役としては個人消費が期待されます。すでに見た所得減税策も、こうした考えに基づいて実施された側面もあると考えられます。

しかし、税制改革だけで持続的な個人消費主導の経済に転換していくことは、難しいです。個人消費の増加率を高めるには、個人貯蓄率の継続的な引き下げが必要になりますが、それを阻んでいるのが、社会保障制度の未整備に基づく将来不安です。

そうであれば、大幅な社会保障制度が、消費刺激の観点からも求められます。さらに、労働者の地域間移動の活性化を通じた所得引き上げを促すには、戸籍制度の見直しも必要にです。

中国・上海の古い街並みに座る高齢の男性

こうした点から、長期化が見込まれる米中貿易戦争は、社会制度も含めた中国の構造改革を必然的に促すようになる可能性があります。

この構造改革については、以前からもこのブログに掲載しています。この構造改革は幅も奥行きも広いものとなりますが、その中でも根底にあるのは、民主化、政治と経済の分離、法治国家化です。これなしに、他の構造改革を実行したとしても、すべて積木くずしのように崩れてしまうことでしょう。

これは、先進国でもどの国でも完璧ではないとはいいながら、中国などの発展途上国から比較すれば、かなり進んでいます。中国に限らず、これらが整備されていない国では本来自由貿易などできません。

ただし、中国以外のこれらがあまり整備されていない発展途上国の場合は、人口もさほど大きいわけでもなく、大きな産業もないため、先進国と貿易をしたとしても、そもそも取引量ならびに額が低いのでほとんど問題にはなりません。

しかし、中国はそういうわけにはいきません。社会構造はとてつもなく遅れているにもかかわらず、人口が多く、中国の経済統計は出鱈目なので本当はどうかはわかりませんが、GDPは一応世界第二位といわれています。これが嘘だとしても、他の発展途上国と比較すると、かなり大きいことは確かです。さらに、軍事も経済もこれからまだ伸びる余地があるということで、先進国と同列にみられがちですが、その実社会構造はとてつもなく遅れています。

なぜこんないびつなことになってしまったかといえば、中国の将来性に期待して海外からかなり投資が増えたからです。そのため、中国は遅れた社会構造を維持したまま、インフラを整備し、軍隊を強化して現在に至っています。

この中国が遅れた体制を維持したまま、米国や他の先進国と貿易をしたので、必然的に不公正、不正などが生じたのです。それが今日、米国の対中国冷戦へとつながったのです。

これを是正して、日米をはじめとする先進国とまともな貿易をするには、中国はまずは、ある程度の民主化、経済と政治の分離、法治国家化を進めなければならいですし、内需を拡大するにもこれを実施しなければなりません。

内需を拡大するには、構造改革をして、現在のように極一部の富裕層とその他大勢の貧乏人という状況を崩して、多数の中間層が自由に社会・経済活動を営めるようにして、経済的に豊かにする必要があります。

しかし、中国共産党にとっては、これをすすめると、統治の正当性が失われることになります。なぜそのようなことになるかといえば、まずは民主化を進めるためには、選挙など実施しなければならなくなりますが、それを実施すれば、共産党一党独裁は崩れる可能性があります。

政治と経済の分離をしてしまえば、現在のような人治による経済活動は崩れてしまいます。人脈はあまり大きな意味を持たなくなります。そうなると、中国の人脈に基づいた派閥政治は崩れることになります。

法治国家化を進めれば、当然のことながら、現在のように憲法や人民解放軍が共産党の下に位置づけられるということはなくなり、憲法に縛られ、人民解放軍は他の先進国ではあたりまえの、国民国家の軍隊ということになり、中国共産党の私兵ではなくなります。

そうなると、当然のことながら、共産党の統治の正当性が崩れ、他の勢力にとって変わられることになります。

そのような状況を中国共産党が望むはずもありません。中国の将来は中共が支配し続けるか、内乱によって、構造改革を進めようとする他の勢力が中共にとってかわるかしかないと考えられます。

中共が支配しつづけることになれば、中国は内にこもるしかなくなり、図体が大きいだけの凡庸なアジアの一独裁国家に成り果てることになります。そうして、確率としてはこちらのほうが高いと思います。私としては、中国が何か変わるとすれば、この状態を経て、中共の力が弱まり、最終的にいくつかの国に分裂するときだと思います。

中国がいずれの道を選ぶにしても、そこまで行き着くには短くても、10年、長ければ20年はかかるでしょう。はっきりしているのは、その時がくるまで、米国による対中国冷戦が続くということです。そうして、その時は必ず来ます。

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2017年2月2日木曜日

トランプ氏、豪首相に暴言連発=電話会談、険悪な雰囲気―【私の論評】豪政府の尻拭い?オバマの旧悪露見(゚д゚)!


ホワイトハウス執務室でオーストラリアターンブル首相と電話会談するトランプ米大統領=1月28日
米紙ワシントン・ポスト(電子版)は1日、トランプ米大統領が1月28日にオーストラリアのターンブル首相と電話会談した際、難民引き受けに関する米豪合意をめぐり激しい言葉を首相に投げつけ、険悪な雰囲気に陥ったと報じた。政敵やメディアだけでなく、意見が合わなければ同盟国の首脳にも攻撃的態度に出るトランプ氏の姿勢が表れたと言えそうだ。

 豪政府はオバマ前米政権との間で、難民認定を求め豪州へ密航後、国外の施設に収容された人々について、一部を米国へ移住させる一時的措置で合意している。同紙によると、ターンブル氏が電話会談で、トランプ政権もこの合意を守ることを確認しようとしたところ、トランプ氏は「これまでで最悪の取引だ」とこき下ろした。

 トランプ氏はさらに、豪州が「次のボストン(マラソン大会)爆弾テロ犯」を輸出しようとしていると非難。同じ28日に安倍晋三首相やプーチン・ロシア大統領らとも電話で話したことを挙げ、「この(豪首相との)電話が飛び抜けて最悪だ」と吐き捨てるように言った。1時間を予定していた電話は、25分で切り上げられたという。
 
 米政府高官はポスト紙に、豪首相とのやりとりが険悪だったと認めた上で、安倍首相らとの協議は生産的で心地良いものだったと強調した。

 ターンブル氏は30日の記者会見で、トランプ氏との電話会談で難民移送に関する合意が引き継がれることを確認したと述べた。一方、トランプ氏は1日、ツイッターに「オバマ前政権は、何千人もの不法移民を豪州から引き受けると約束した。なぜだ? このばかな取引について調べる」と投稿した。

【私の論評】豪政府の尻拭い?オバマの旧悪露見(゚д゚)!

トランプ米大統領は2日、ツイッターで、イラクやイランなどからオーストラリアに亡命を希望して密航した数百人を米国へ移住させるという米豪間の取り決めを「ばかげた合意」と評し、再検討する意向を示しました。

米紙ワシントン・ポスト(WP)はこれより先、ブログ冒頭の記事にもあるとおり、トランプ大統領が1月28日に行われたターンブル豪首相との電話会談で首相を激しく非難し、1時間の予定だった会談を25分で切り上げたと報じました。

ターンブル首相は会談について記者団に、率直かつ腹を割った話し合いだったと述べましたが、「プライベート」な会話の詳細については明らかにしませんでした。

WP紙は米国に最も近い同盟国の1つである豪の指導者との会談についてトランプ大統領が「これまでの中で最悪」と評したとも報じました。

密航者の米国への移住合意は、豪政府とオバマ前政権との間で昨年11月に結ばれたもののです。

これに関しトランプ大統領はツイッターに「これが信じられるか。オバマ政権は豪から何千人もの不法移民を引き取ることに合意した。なぜか。このばかげた合意を調査する」と投稿しました。

合意の一環として、米政府は豪政府がパプアニューギニア・マヌス島とナウルの施設に収容している最大1250人の密航者を米国に移住させ、引き換えにエルサルバドル、グァテマラ、ホンジュラスからの難民を豪に移住させることになっています。

パプアニューギニア・マヌス島にあった難民収容施設内の2段ベッド(2014年2月18日)
さて、豪政府による移民に扱いは以前から国際的な問題になっていました。

オーストラリアへの定住を求める難民認定申請者が、同国本土から遠く離れたパプアニューギニアや、太平洋の島国ナウルなどで隔離される形で収容生活を送っている現実は、15年前からオーストラリアの国内外で大きな議論となってきました。

昨年の8月、英紙ガーディアンが、以前から入手していたナウルの収容所における劣悪な環境を記した文書を公開しました。子供に対する性的虐待が日常化している現状などを報じたことによって、オーストラリア政府が難民認定申請者を自国内に入れようとしないどころか、経済援助という名目で近隣の貧しい国に難民認定申請者の収容を肩代わりさせている実態が再び議論になっていました。

ガーディアン紙が10日に報じたナウルにある難民認定者収容施設の劣悪な環境。同紙は8000ページ以上に及ぶ文書を入手し、その中で2013年5月から2015年10月までの間に施設内で2100件以上のトラブルや事件が発生していたと伝えています。


太平洋に浮かぶ島国ナウル共和国は世界で3番目に小さな国家で、約1万人が暮らしています。この小さな島国に、オーストラリアでの定住を希望する難民認定申請者が送られ、島に作られた収容施設で生活をしています。

収容所はオーストラリア移民国境警備省の委託を受けた民間企業が管理・運営を行っており、2014年に1200人を超えた収容者は、昨年の時点では460人程度にまで減少していました。

オーストラリアでは1970年代初頭まで、白人以外の移民流入を認めない、いわゆる「白豪主義」で知られていましたが、1972年に発足したホイットラム政権によって白豪主義は廃止され、オーストラリアは多文化主義を国策として掲げ、アジアからの移民にも門戸を開きました。

1990年代前半、ボートでオーストラリアに入国した難民認定申請者は年間数百人レベルだったのですが、密航業者によってインドネシアといった地域からのルートが開拓されたことで、90年代後半からボートを使った入国が急増。2001年には5500人超がオーストラリアに入国しました。

難民認定を求める申請者の急増にオーストラリア政府が対応しきれなくなり始めたことや、海上ルートでオーストラリアにやってくる難民認定申請者が事故などで命を落とす危険性、密航業者の台頭を抑える必要性など、「ボートピープル」への早急な対応を迫られた中道右派のハワード政権は2001年秋に「パシフィック・ソリューション」という対ボートピープル政策を開始しました。

この政策は難民認定申請者を乗せた船を海上で拿捕し、彼らをオーストラリア本土に立ち寄らせないまま、他国に作られた施設に収容し、そこで難民として生活させる仕組みです。

前述のナウルや、パプアニューギニアのマヌス島、オーストラリア本土から2000キロ以上離れたクリスマス島(オーストラリア領)に収容施設が作られ、難民認定申請者はオーストラリアから遠く離れたこれらの場所で新たな生活を始めることになりました。

収容施設の暴動で亡くなった青年を追悼するオーストラリアの人たち
アムネスティは2013年末にパプアニューギニアのマヌス島にある収容施設を訪問しました。収容されている人びとは口々に「まるで刑務所のようだ」と話したそうです。鍵のかかったフェンスに囲まれ、出入口には守衛が立っていました。

居住施設は過密状態で、仕切りはなく、プライバシーはまったくありませんでした。一番ひどい所では、50畳ほどの広さに61の2段ベッドが並でいました。ベッドの間隔はわずか20センチ。112人が毎日を過ごすこの建物は、まるで戦時中の格納庫のようなかまぼこ型のトタンづくりで、風は通らず、窓もありませんでした。

蒸し暑いマヌス島では極めて不快でした。トイレとシャワーの数は限られ、しかもよく壊れるそうです。当然、列をつくって並ぶはめになるのですが、待つのは炎天下です。そして着替えの支給はわずかだそうです。

こうした肉体的にも精神的にも不衛生な環境では病人が出ても不思議ではないのですが、医療の設備もスタッフも不足しています。

職員による暴力や人種差別的な中傷も起きています。2014 年2月には、あまりの劣悪さに一部が脱走を試みたことがきっかけで暴動になり、死者まで出ました。

ただし、オーストラリア政府は毎年一定数の難民受け入れを行っており、毎年1万人を超える難民にオーストラリアでの定住許可が与えられています。2015年から2016年にかけて、オーストラリア政府は当初約1万3000人の難民受け入れを予定していたのですが、シリア内戦の激化とそれが原因となった難民の増加に対応するため、難民受け入れ数を2万5000人にまで増やしています。

多くの難民船がオーストラリアに向かう途中で沈没
(2010年12月、クリスマス島沖)
オーストラリア政府がパシフィック・ソリューションの対象としているのは、船を使ってオーストラリア入国を試みる難民認定申請者で、空路でオーストラリアに入国した者は対象外となっています。

ヨーロッパのケースとは異なり、オーストラリアに陸路で入国することは物理的に不可能で、空路か海路のどちらかになります。オーストラリア政府はヨーロッパ諸国よりも入国を試みる難民認定申請者の数をより把握できており、空路でやってきた多くが審査を経て在住資格を得ていると主張しています。しかし、難民認定を受けているか否かに関係なく、船で入国を試みた者は基本的にオーストラリア本土に住むことはでません。

海上で拿捕された船に乗っている難民認定申請者は、そのままパプアニューギニアのマヌス島かナウル共和国に連行され、そこに作られた収容所に入れられるという話は先に述べた。収容所に入った難民認定申請者には、収容所で暮らすか、出港した国に戻るか、定住先を第三国に求めるかの選択肢しかありません。

 2007年12月に労働党政権が誕生すると、翌年に当時のラッド首相はパシフィック・ソリューションの廃止を発表したが、与党のエバンス移民・市民権大臣は「馬鹿げており、社会により負担がかかり、成功する見込みすらない試みだ」と批判した。

廃止後、海上ルートでオーストラリアを目指す難民認定申請者は急増。対応に頭を抱えたオーストラリアは、ギラード政権誕生後の2012年8月にマヌス 島とナウルの難民収容施設の再開を発表。ギラードの辞任を受けて再び首相に就任したラッドは、以前に示した方針を180度転換する形で、「ビザを持たずに船でオーストラリア入国を試みる難民認定申請者をオーストラリアに住まわせることは決してない」と発言していました。

ナウルの地元住民から攻撃を受けた難民。
(アムネスティ・インターナショナル提供)
マヌス島とナウルの収容施設は、それぞれ2004年と2008年に閉鎖されましたが、オーストラリア政府は緊急事態に備えて、両施設の取り壊しは行ないませんでした。ギラード政権下で2012年に収容施設が再開されると、オーストラリア政府は2012年からの4年間で両施設の維持費として約2400億円を使っており、パプアニューギニアとナウルにとっては貴重な収入源となっていました。

これに加えて、オーストラリアから両国への経済援助も行われており、それらの見返りとしてこれまで両国は難民収容の“アウトソーシング”を引き受けてきた経緯があります。

ナウルの人口は1万人足らずですが、リン鉱石の採掘事業が成功し、リン鉱石の輸出によってナウル経済は繁栄を続け、20世紀には世界で最も豊かな国の1つとして知られていました。税金も存在せず、世界でもトップクラスの社会福祉制度を設けていたナウルですが、20世紀末に国家収入の大部分を占めていたリン鉱石が枯渇すると、国内経済に混乱が発生するようになりました。

かつてはナウル国民全員をオーストラリアが受け入れする案も出されたほど、国内の景気低迷は出口の見えない状態となっており、他国からの経済援助なしでは国家が崩壊しかねない状態にあります。ナウルにとっては、収容所運営はまさに渡りに船なのです。

オーストラリア政府が現在も実施しているボートピープル収容のアウトソーシング化には人権・倫理上の問題から批判が多く、パプアニューギニアの最高裁判所は昨年4月に「マヌス島の収容施設では収容者の人権が侵害されており、非合法と判断する」との判決を下しました。

ナウルの収容所での
以上のことを知った上では、トランプ大統領がターンブル首相に苦言を呈したのはもっとなことだと考えられます。

結局のところ、オバマ前大統領は何のことはない、オーストラリア政府の不手際の尻拭いをしようとしたいうことです。

オーストラリア政府は、難民の数が増え過ぎて、国内では受け入れ不可能な程になったのですが、難民を受け入れなければ国際社会から非難されることを恐れてパシフィック・ソリューションなる姑息な手段を講じたのです。とにかく、キレイ事、事なかれ主義で体裁を繕おうとしたのです。全く無責任です。


そうして、頭のネジの緩んだオバマは、こうしたオーストラリア政府の言い分を聞いて、難民認定を求め豪州へ密航後、国外の施設に収容された人々について、一部を米国へ移住させる一時的措置で合意したのです。

そうして、これに関して、トランプ大統領は、「オバマ前政権は、何千人もの不法移民を豪州から引き受けると約束した。なぜだ? このばかな取引について調べる」とTwitterに投稿したのです。

まさに、オバマの旧悪が露見した形です。どうしてこのようなことになってしまったのか、トランプ大統領はこれを詳しく調査して公表していただきたものです。そうして、無論のことオバマの責任を追求すべきです。

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