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2019年6月2日日曜日

もう一度言う「岩屋防衛相を罷免せよ」 ―【私の論評】相当のショックがない限り韓国政治家の宿痾である権力闘争や、統治の正当性を高めるための反日利用は継続される(゚д゚)!

門田隆将

岩屋毅防衛相

もはやこの大臣を更迭しなければ、安倍政権の致命傷、いや日本全体の痛恨事となるだろう。昨日(6月1日)、シンガポールで開かれている国際会議に出席中の岩屋毅防衛相が、韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相と会談した。

その中で、岩屋氏は、去年12月の韓国海軍によるレーダー照射問題について「照射はなかった。事実無根だ」と強弁する韓国側に対して「再発防止」は求めたものの、今後はこの問題を「事実上棚上げ」し、防衛交流をつづける考えを示したという。

仰天した。それは「絶対にやってはならないこと」だからだ。韓国は「日本には何をやってもいい」と思い込んでいる。その国に「そのとおりです」という誤ったメッセージを送ってしまったのである。

これまでの日韓関係の不幸は、韓国が日本に対して、本来、国と国が持つべき「節度」と「敬意」を持ってこなかったことに発している。中国やアメリカに対して持っている「節度」と「敬意」を韓国は日本には払ってこなかった。

もし、日本に対する態度と同じものを中国やアメリカにとったら、たちまち韓国は大反撃を食らうだろう。そのことを熟知している韓国は、絶対にそんな非礼な態度を米・中にとることはない。

これこそが強いものにはひれ伏し、弱いものには居丈高になる韓国の特色である「事大主義」だ。そして、この韓国の態度を改めさせないかぎり、真の日韓関係が訪れないことは明らかだ。

これを改めさせる方法は「たった一つ」しかない。韓国に対して、アメリカや中国と同じように毅然とした態度をとることである。絶対にレーダー照射事件を許さず、防衛交流もストップさせ、「日本は怒っている」「これからの日本はこれまでとは違う」ということを示すのが不可欠だ。

だが、岩屋氏はそれと真逆なことをやってのけた。韓国は日本に対して、これまでと同様、「何をやっても構わない」ということを再認識しただろう。しかも、この会談は岩屋氏自身の強い要請によるものだった。産経の報道によれば経緯はこうだ。
〈事務方の調整でも折り合わず「会っても建設的な議論にならない」(防衛省幹部)と判断した。それでも岩屋氏は「ぜひお目にかかりたい」と秋波を送り、約30分の非公式会談に臨んだ〉
この会談を岩屋氏は「未来志向」と語ったそうだ。もはや、お笑いというほかない。未来の真の日韓関係のために日本は「毅然とした態度」をとらなければならないのに、岩屋氏は逆のことをやってしまったのだ。

課題を棚上げすることが未来志向になるというお粗末な思考――国際間の常識やあり方を何ひとつ理解していないレベルの防衛大臣を私たち日本国民はありがたく戴いているのである。あまりの情けなさに、私には言葉もない。

岩屋氏は、政界では有名な「パチンコ族」である。パチンコチェーンストア協会の有力アドバイザーだ。ちなみに、日本のパチンコ業界は、韓国のハンギョレ新聞の報道によれば、「全体の6割」が朝鮮半島出身者であるそうだ。

つまり、これほど異常なまでに韓国にすり寄る岩屋防衛相の背景には、自らの支援者が多い韓国への氏の特別な意識、親密度が考えられるのである。

私は2月の当欄で〈岩屋毅防衛相を罷免せよ〉と題して、〈果たして制裁を受けるべきなのは「韓国」なのか、それとも「安倍政権」なのか。韓国に毅然としたメッセージも発せられず、それと逆のことしかできない政府に対して、国民が「愛想を尽かせる時期」が着実に迫っている〉と書いた。

安倍政権は、未だに韓国への制裁に踏み切れず、さらに、ことここに至っても岩屋防衛相を更迭できないでいる。情けない野党への反発のお蔭で安倍政権は辛うじて国民の支持を得ている。しかし、その国民の怒りも頂点に近づいている。

来たるべき選挙で安倍政権が手厳しいシッペ返しを受けるキーワードは「韓国である」ことをあらためて申し上げたい。一刻も早い「岩屋防衛相の更迭」を、そして真の日韓関係のために速やかな「制裁発動」を望む。

【私の論評】相当のショックがない限り韓国政治家の宿痾である権力闘争や、統治の正当性を高めるための反日利用は継続される(゚д゚)!

私自信は、制裁がどうのこうのというより、すぐにでも韓国とは国交断絶をしたほうが良いと思っています。その理由については、以前このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】日本の「対韓国制裁シナリオ」 仲裁委応じなければ提訴へ! カネでの締め付けが有効に―【私の論評】日本は、文政権時に断交していればポスト文政権と有利に交渉がすすめられる(゚д゚)!
文在寅氏

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみ引用します。 
最近は、分政権の支持率は、落ちており、文政権は、どう考えてみても長期政権にはならず、近い将来に文政権は崩壊する可能性もあるものと思います。韓国の大統領は1期5年なので、朴槿恵大統領のように弾劾罷免されない限り、2022年5月9日までは大統領として任期が設定されています。文大統領の任期は最大限そこまで終わるでしょう。

いずれにせよ、文政権が終了したときに、すでに日本が韓国と断交していれば、ポスト文政権は、日本との関係を回復しようとするでしょう。日本としては、それでもしばらくは様子をみて、本気て相手が回復するつもりがあれば、国交断絶を解除すれば良いのです。おそらく、いままで一番交渉がしやすくなるでしょう。

もし、文政権が崩壊したときに、日韓が国交断絶していなければ、新たな政権も、文政権の反日を引き継ぐだけになり何も変わりません。その時になって、国交断絶するよりは、文政権時代に断絶しておくことのほうが、日本にとって有利なのは言うまでもありません。
最近では、やはり国交を断絶したほうが良いとさらに強く思うようになりました。それは、まずは韓国利権を得ている政治家は日本には相当数おり、今のままだと、それこそ岩屋防衛大臣のような行動をする議員が他もでてきて、結局日韓関係はなし崩し的に韓国のペースで進められてしまう可能性が大きいからです。

次に、文在寅のようなポピュリスト(大衆迎合主義者)は特定の国や集団を敵としながら、国内の権力闘争を有利に進めます。ヒトラーにとってのユダヤ人がそれです。韓国や中国が、日本を攻撃対象にする構図も、酷似しています。

結局、ヒトラーや文、習のような連中は、まともに行動していては、国民からいつ統治の正当性を疑われて、没落するかわからないので、統治の正当性を獲得するために、いつも敵を用意して、国民の憤怒のマグマを自分ではなく敵にむけるように仕向けるのです。

韓国の首都圏京畿道(キョンギド)の議会で3月、小中高校の一部の日本製備品に「日本の戦犯企業が生産した製品」と記したステッカーを貼るよう義務付ける条例案が提出されました。文在寅大統領の与党「共に民主党」議員らが起こした騒動です。

「生徒への正しい歴史認識を確立させる」「戦犯企業への教育が必要だ」

同党議員らはこういって条例案を正当化しましたが、京畿道の教育部局が混乱の恐れを理由に反対し、康京和(カン・ギョンファ)外相も難色を示しました。ネットでも「やり過ぎだ」との非難が殺到し、審議は保留になっています。とはいえ、1945年に日本の朝鮮半島統治が終わり70年以上を経た今も、歴史問題での日本たたきは韓国で幅を利かせています。

伏線はあった。日本統治に抵抗して起きた19年の「三・一独立運動」100周年に当たる3月1日、文氏はソウルでの記念式典で元慰安婦らを含む約1万人の参加者を前に訴えました。

「チニル(親日)は反省され、独立運動には礼が尽くされるべきだという価値を正しく確立する。これが『親日残滓(ざんし)の清算』だ」

韓国で「親日派(チニルパ)」といえば、日本統治時代に日本に協力した売国奴を指す。国会では3月、文政権を批判した保守系野党「自由韓国党」の羅卿瑗(ナギョン・ウォン)院内代表を「共に民主党」議員が「親日派!」と罵倒しました。

羅卿瑗(ナギョン・ウォン)院内代表

羅氏は韓国が不法占拠する竹島(島根県)への上陸経験もある人物です。実際に親日か否かに関係なく、「親日派」という言葉は政敵攻撃に使われるのです。

日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2018年に日本を訪れた外国人客約3119万人のうち、韓国は約754万人で、トップの中国の約838万人に次いでいます。日本は韓国人旅行者をひきつけ、毎年のように訪問客は過去最高を更新しています。とこが「反日」は力を失っていないです。

今世紀に入り、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)の両左派政権で反日の歴史教育を受けた世代は20~30代となりました。過去の歴史から遠い世代ながら、日本への好感度は若年層ほど低いというのが実情です。

韓国の政治家は世論の支持を得るために反日を利用してきました。17年大統領選では、文在寅(ムン・ジェイン)大統領をはじめ主要候補全員が、慰安婦問題をめぐる日韓合意の撤回を公約しました。反日には異論をはさめない雰囲気があり、日本製品へのステッカー騒動もそれに便乗した一例です。

1990年以降の反日教育により韓国には日本による併合が違法な植民地統治だったとの考え方が根本にあり、世論は基本的に日本に批判的です。以前は、反日を訴えさえすれれば国民の支持を集められたまし。

しかし現在の韓国は、反日を訴えさえすれば支持率が上がったり、得票できたりすることはなくなりました。世論の関心事が対日関係より国内の経済不振や格差に向いているからです。

竹島上陸など日本人が反日とみる韓国の政治家の行動も、実際には選挙での支持固めを狙った党内や支持者など内輪向けの「愛国パフォーマンス」にすぎないです。

ただし、韓国の若者層は、子供の時代から体系的、組織的な反日教育を受けたため、未だに若年層ほど日本に低い好感度という世論調査があります。


日本への好感度が低い、若者が多いということは、現状の政治家ですら、日韓関係を悪くする一方であることからも、将来は現在よりさらに、反日が酷くなることが予め予想できるということです。結局のところ何も変わらないどころかますます悪くなるだけです。

であれば、やはり日本としては、文政権の韓国と国交を断絶した上で、ポスト文在寅政権が、どうするのかを注意深く見定めて、国交を復活するかどうかを決定すべきです。なお、国交断絶するのは難しいようなことを語る識者もいますが、常識的に考えて、駐韓大使の召還をすれば、国際的に、日本と韓国は国交を断絶したものとみなされます。

そうなれば、両国民も両国の市場もそのようにみなします。召喚期間が長引けば、長引くほど、人の往来はなくなり、金融や通信のやり取りも少なくなりやがて止まります。駐韓大使を召喚して半年もたてば、さすがに岩屋氏のような行動をする政治家も日本から消えるでしょう。

そうでないと、日本国内では岩屋防衛相のような政治家がはびこり、これを韓国政治家に利用され、韓国の政治家に巣食っている宿痾 である内輪の権力闘争や、自らの統治の正当性を高めるため反日を利用するという姿勢は、永遠になくなることはないでしょう。

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2018年11月3日土曜日

苦境の習氏、トランプ大統領にすり寄りか 米中首脳が電話会談 藤井氏「米国は甘い顔を見せない」―【私の論評】内需を拡大できない中共の宿痾で中国は凡庸なアジアの独裁国家に成り果てる(゚д゚)!

苦境の習氏、トランプ大統領にすり寄りか 米中首脳が電話会談 藤井氏「米国は甘い顔を見せない」

トランプ大統領と習近平主席

 ドナルド・トランプ米大統領は1日、中国の習近平国家主席と電話会談を行った。「米中新冷戦」が顕在化するなか、苦境に陥った中国としては、米国にすり寄った面もある。トランプ氏としても、中間選挙(6日)の直前に、硬軟織り交ぜた外交手腕をアピールする意図もありそうだ。

 《習氏と貿易に重点を置き、長い時間、多くの議題をめぐり協議した。(11月末に)アルゼンチンで開かれるG20(20カ国・地域)首脳会議での会談予定も順調だ》《(北朝鮮情勢についても)良い協議ができた》

 トランプ氏は1日、ツイッターにこう書き込んだ。両首脳の電話会談は、貿易摩擦が深刻化する前の今年5月以来。

 中国の国営中央テレビ(CCTV)などによると、習氏は会談で「世界2大国が、安定的で健全な関係を促進することを望んでいる。過去に経済貿易で立場の違いもあり、両国の産業と世界貿易はマイナスの影響を受けた。今後は、双方で受け入れ可能な案で通商協議を進め、2カ国間貿易での協力を拡大したい」と発言。

 これに対し、トランプ氏は「習氏との良好な関係構築を重視している。両国で頻繁に意思疎通することが重要だ」と語ったという。

 トランプ政権は、中国が、米国のハイテク技術を不当に入手しているなどとして、これまでに、中国からの総額2500億ドル(約28兆円)の輸入品に対し、高額の関税をかけた。

 背景には、米国に挑戦するように、軍事的覇権を強めている共産党一党独裁の中国を牽制(けんせい)する意図がある。米国はこの先、米中協議などが不調に終われば中国に追加制裁を発動する構えだ。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「トランプ氏は、中国が実際に結果を出さなければ、妥協はしない。習氏としても、これ以上、関税をかけられたり、トランプ氏から『G20での首脳会談もないぞ』と言われると困る。米国に泣きつき、今回の電話会談になったのだろう。すべては、マイク・ペンス米副大統領が10月4日、ワシントンで、中国を念頭に『宣戦布告』といえる演説をしたことに始まっている。トランプ氏は、中国にはそう簡単には甘い顔を見せない」と語った。

【私の論評】内需を拡大できない中共の宿痾で中国は凡庸なアジアの独裁国家に成り果てる(゚д゚)!

中国はもうすでに、八方塞がりです。中国がまともな国であれば、たとえ米国から貿易戦争を挑まれても、金融制裁をくらってもやりようがあるどころか、潜在能力としては世界一なのですが、現在の体制ではその能力を十分活かすことができません。

それは何かといえば、内需拡大策です。本来はこれを実行し、それに成功すれば、別に米国と貿易などしなくても、やりようはあります。ただし、先進国並みに内需拡大ができるような体制の国であれば、そもそも中国は米国などと貿易摩擦を起こすこともありませんでした。

記者会見する中国国家発展改革委員会の連維良副主任(右端から2人目)ら=9月25日、北京

中国のマクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会の連維良副主任は9月25日の記者会見で、米国による対中制裁関税の影響について「中国経済には強靱性と内需の潜在力がある。リスクは全体として抑制できる」と述べました。消費促進などの内需拡大策を強化し、貿易摩擦の影響を相殺する方針と語りました。

実際、中国政府は内需刺激策を順次打ち出しています。しかし、かつては中国でしばしば景気刺激策の柱となったインフラ投資の拡大については、比較的抑制的な水準にとどめられています。

これは、過去のインフラ投資拡策が生み出した弊害を踏まえたものです。10年前のリーマン・ショック後に中国政府が実施した、インフラ投資中心の4兆元(当時の為替レートで約56兆円)の景気対策やその他のインフラ投資拡大策は、後に企業、地方政府の過剰債務問題をもたらし、金融システムの安定を損ねる事態に発展してしまいました。

また、過剰投資は鉄鋼、セメントなどの過剰生産を生み出し、米中貿易戦争の遠因の一つともなりました。さらに、道路や居住用建築物でも過大で無駄な投資プロジェクトが次々と発覚していくことになりました。

そこで今回の景気対策では、預金準備率引き下げなどの金融緩和策と並んで、減税措置がその中核を担っています。中国政府は2018年10月から、中間層の消費底上げを狙って個人所得減税策を実施しました。

減税規模は年間3,200億元(約5兆1千億円)です。個人所得税の課税最低限を現在の3,500元から5千元に引き上げるのが柱となります。子供の教育費や住宅ローンの利息などを課税所得から差し引ける仕組みも併せて導入されます。2018年10月から実施されたましたが、法改正を踏まえた全面実施は2019年年初からです。

しかし、この所得減税措置の景気刺激効果については、慎重な見方も多いです。そもそも、インフラ投資と比べると、所得減税策は短期的な景気刺激効果は小さくなるのが通例です。減税の相当部分が貯蓄の増加に回されるためです。野村證券は、今回の措置による個人消費の押し上げ効果は0.2%程度、GDPの押し上げ効果は0.1%弱にとどまると試算しています。

こうした点を踏まえて、中国政府が追加的な所得税減税を実施するとの見方も多くなされています。中国人民銀行・金融政策委員会の委員で、清華大学金融発展研究センター主任の馬駿氏は、2019年の減税及び手数料の引き下げ規模がGDPの1%を超える可能性があると指摘しています。GDPの1%規模は8,000億人民元強であることから、2018年の所得減税を相当上回る規模となります。

米中貿易戦争は、長期化する可能性が高まっています。それは、この問題が単なる貿易不均衡の問題ではなく、2大大国の経済、先端産業、軍事を巡る覇権争いがその背景にあり、さらに政治・経済体制間の争いにも発展しているためです。両国ともに簡単には譲歩できない事態にまで発展しています。

マイク・ペンス副大統領が2018年10月4日に米国の保守系シンクタンクのハドソン研究所で行った演説は、激しい中国批判に終始し、米中が経済、政治、軍事で全面的な対立の構図に陥った可能性、いわば「米中新冷戦」の始まりを宣言したに等しい内容になっています。

演説をするペンス大統領。2018年10月4日に米国の保守系シンクタンクのハドソン研究所似て。

このように米中貿易戦争が長期化すれば、中国の輸出環境は長期間厳しい状況に置かれる可能性があります。そのもとでも相応の成長率を維持するには、より内需主導型への経済構造を転換していく必要があるでしょう。

しかし、インフラ投資、あるいは一般に公的・民間投資の拡大は、すでに見たような深刻な問題を再び生じさせるおそれがあります。そこで、内需のけん引役としては個人消費が期待されます。すでに見た所得減税策も、こうした考えに基づいて実施された側面もあると考えられます。

しかし、税制改革だけで持続的な個人消費主導の経済に転換していくことは、難しいです。個人消費の増加率を高めるには、個人貯蓄率の継続的な引き下げが必要になりますが、それを阻んでいるのが、社会保障制度の未整備に基づく将来不安です。

そうであれば、大幅な社会保障制度が、消費刺激の観点からも求められます。さらに、労働者の地域間移動の活性化を通じた所得引き上げを促すには、戸籍制度の見直しも必要にです。

中国・上海の古い街並みに座る高齢の男性

こうした点から、長期化が見込まれる米中貿易戦争は、社会制度も含めた中国の構造改革を必然的に促すようになる可能性があります。

この構造改革については、以前からもこのブログに掲載しています。この構造改革は幅も奥行きも広いものとなりますが、その中でも根底にあるのは、民主化、政治と経済の分離、法治国家化です。これなしに、他の構造改革を実行したとしても、すべて積木くずしのように崩れてしまうことでしょう。

これは、先進国でもどの国でも完璧ではないとはいいながら、中国などの発展途上国から比較すれば、かなり進んでいます。中国に限らず、これらが整備されていない国では本来自由貿易などできません。

ただし、中国以外のこれらがあまり整備されていない発展途上国の場合は、人口もさほど大きいわけでもなく、大きな産業もないため、先進国と貿易をしたとしても、そもそも取引量ならびに額が低いのでほとんど問題にはなりません。

しかし、中国はそういうわけにはいきません。社会構造はとてつもなく遅れているにもかかわらず、人口が多く、中国の経済統計は出鱈目なので本当はどうかはわかりませんが、GDPは一応世界第二位といわれています。これが嘘だとしても、他の発展途上国と比較すると、かなり大きいことは確かです。さらに、軍事も経済もこれからまだ伸びる余地があるということで、先進国と同列にみられがちですが、その実社会構造はとてつもなく遅れています。

なぜこんないびつなことになってしまったかといえば、中国の将来性に期待して海外からかなり投資が増えたからです。そのため、中国は遅れた社会構造を維持したまま、インフラを整備し、軍隊を強化して現在に至っています。

この中国が遅れた体制を維持したまま、米国や他の先進国と貿易をしたので、必然的に不公正、不正などが生じたのです。それが今日、米国の対中国冷戦へとつながったのです。

これを是正して、日米をはじめとする先進国とまともな貿易をするには、中国はまずは、ある程度の民主化、経済と政治の分離、法治国家化を進めなければならいですし、内需を拡大するにもこれを実施しなければなりません。

内需を拡大するには、構造改革をして、現在のように極一部の富裕層とその他大勢の貧乏人という状況を崩して、多数の中間層が自由に社会・経済活動を営めるようにして、経済的に豊かにする必要があります。

しかし、中国共産党にとっては、これをすすめると、統治の正当性が失われることになります。なぜそのようなことになるかといえば、まずは民主化を進めるためには、選挙など実施しなければならなくなりますが、それを実施すれば、共産党一党独裁は崩れる可能性があります。

政治と経済の分離をしてしまえば、現在のような人治による経済活動は崩れてしまいます。人脈はあまり大きな意味を持たなくなります。そうなると、中国の人脈に基づいた派閥政治は崩れることになります。

法治国家化を進めれば、当然のことながら、現在のように憲法や人民解放軍が共産党の下に位置づけられるということはなくなり、憲法に縛られ、人民解放軍は他の先進国ではあたりまえの、国民国家の軍隊ということになり、中国共産党の私兵ではなくなります。

そうなると、当然のことながら、共産党の統治の正当性が崩れ、他の勢力にとって変わられることになります。

そのような状況を中国共産党が望むはずもありません。中国の将来は中共が支配し続けるか、内乱によって、構造改革を進めようとする他の勢力が中共にとってかわるかしかないと考えられます。

中共が支配しつづけることになれば、中国は内にこもるしかなくなり、図体が大きいだけの凡庸なアジアの一独裁国家に成り果てることになります。そうして、確率としてはこちらのほうが高いと思います。私としては、中国が何か変わるとすれば、この状態を経て、中共の力が弱まり、最終的にいくつかの国に分裂するときだと思います。

中国がいずれの道を選ぶにしても、そこまで行き着くには短くても、10年、長ければ20年はかかるでしょう。はっきりしているのは、その時がくるまで、米国による対中国冷戦が続くということです。そうして、その時は必ず来ます。

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