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2020年4月3日金曜日

中国で飛び交い始めた「習近平政権ピンチ」の噂―【私の論評】習近平は本当に国賓として日本を訪問できるのか?失脚は十分にあり得る筋書きとなった(゚д゚)!


続々と表面化する習近平政権批判の動き
新型コロナウイルスが発生し感染が拡大した武漢を視察に訪れた習近平国家主席(2020年3月10日)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 習近平がG20の特別サミットテレビ会議(3月26日)で重要演説をし、「ウイルスに国境はない。感染症はわれら共同の敵。各国は手を取り合って立ち上がり、最も厳密な共同防衛ネットワークをつくらねばならない」と、世界に呼びかけた。

 翌日のトランプとの電話会談では、米国に中国側の新型コロナ肺炎対策に関する詳細な経験を紹介し、「米国の困難に陥っている状況を理解している。できる限りの支持を提供したい」と、あのトランプに習近平がいろいろとアドバイスして差し上げたようだ。米国が中国以上の新型コロナ肺炎の感染者を出し、ニューヨークの医療崩壊に直面している中で、習近平がトランプに「助けてあげようか? その代わり・・・」と上から目線で問いかけ、世界のリーダー然として見せた。

 果たして、このパンデミックを契機に米中新冷戦構造の対立が大きく変わるのか。このパンデミックを機に対立が解消され、米中が手を取り合うG2時代の到来を習近平は予感しただろうか。米国の脆弱さが露呈され、習近平の中国に次なる国際社会のルールメーカーとなるチャンスを与えるのだろうか。

 私の希望的観測からいうと、NOだろう。習近平はそのころ、国家主席でも総書記でもないかもしれないからだ。

政権を批判し失踪した「中国のトランプ」

 噂を信じるわけではないのだが、3月12日以来“失踪”していた任志強が釈放された、という情報が3月末に中国のネット上で飛び交った。それが本当ならば、次の党大会で習近平退陣の可能性はかなり強いだろう。

任志強は、中国情勢をそこそこ知っている人ならば心当たりのある名前だ。王岐山が夜中に愚痴の電話をするほどの親友関係だった元華遠集団総裁の共産党員。父親は元商業部副部長まで務めた高級官僚・任泉生で、いわゆる「紅二代」(毛沢東らと共産革命に参加した政府指導部の子弟)だ。

任志強

 中国のドナルド・トランプとあだ名される「放言癖」があり、王岐山という背景がある強気もあって、2016年には、習近平が中央メディアに対して「党の代弁者」であることを要請したことに対して痛烈に批判した。このときの騒動は「十日文革」などとも呼ばれ、それまで反腐敗キャンペーンという習近平政権の主要政策の陣頭指揮をとり習近平の片腕とみなされた王岐山と習近平の関係に亀裂を入れたといわれている。

 任志強はあわや党籍をはく奪されそうになったが、そこは紅二代で王岐山の親友であるから、なんとか回避した。が、表舞台からは退き、趣味の木彫りなどをやりながら隠遁生活をしていた。

 だが2月23日、任志強は米国の華字サイト「中国デジタル時代」に習近平の新型コロナ肺炎対応を批判する文章「化けの皮がはがれても皇帝の座にしがみつく道化」を発表し、習近平の“文革体質”を再び激しい言葉で批判。この文章は中共内部が執政危機に直面し、言論の自由を封じていることが、感染対応任務の阻害になり、深刻な感染爆発を引き起こしたと、批判するものだった。

 何よりも表現が過激で、「あそこに立っているのは、自分の新しい衣服を見せびらかそうとしている皇帝でもなく、衣服すら脱ぎ捨てても皇帝の地位にしがみつく道化である。自分が丸裸であるという現実を隠すために、恥部を隠す布切れを一枚、一枚掲げてみせるが、自ら皇帝の野心にしがみついていることは一切隠さない。私が皇帝になるわけではないが、あなたを滅亡させる決心はしている」「遠くない将来、執政党はこの種の愚昧の中で覚醒し、もう一度“打倒四人組”運動を起こし、もう一度鄧小平式の改革を起こし、この民族と国家を救うかもしれない」などと書いていた。

 “打倒四人組”運動とは、文化大革命を主導し、毛沢東死後も文革路線を堅持しようとした江青、張春橋、姚文元、王洪文の4人を、文革穏健派の華国鋒、李先念ら周恩来系の中間派官僚、王震ら復活幹部グループ、葉剣英ら軍長老グループが連合して電撃逮捕した、「政変」である。これをもって文革は完全に終結し、鄧小平による改革開放路線によって中国は再出発したのだった。つまり、任志強の文章は暗に政変を呼び掛ける「檄文」だった、というとらえ方もある。

 その後、任志強は失踪した。少なくとも3月12日以降、連絡がとれていない。任志強の知り合いは、彼が中国当局に連行されたことを証言している。任志強の親友の女性企業家、王瑛がロイターに語ったところによれば、「任志強は知名度の高い人物で、彼が失踪したことはみんな知っている。責任ある関連機関は一刻も早く、合理的で合法的な説明をしなければならない」という。

習近平を批判する動きが続々と表面化

 今の習近平に政権の座から退場願いたい、と思っているのは何も任志強だけではない。

 3月21日ごろ、ネットでは「緊急中央政治局拡大会議招集の提案書」なるものが拡散していた。これは陽光衛星テレビ集団(香港SUNテレビ)主席の陳平がSNSの微信(ウィーチャット)で転載した公開書簡だった。内容は、「新型コロナ感染により中国経済と国際関係情勢が厳しくなったことを鑑み、習近平が国家主席、党総書記の職務を継続することが適切かを討論する政治局緊急拡大会議を開くべきだ」という。

 提案書は、中国が世界で四面を敵に囲まれている状態での討論テーマとして、次の諸問題を挙げている。

・鄧小平の主張した「韜光養晦」(とうこうようかい:才能を隠して内に力を蓄える)路線について明確な回答をすべきか否か。
・政治上、党が上か法が上か、執政党は憲法を超越できるか? を明確にするか否か。
・経済は、国進民退(国有企業を推進して民営企業を縮小する)か、民進国退(民営化を進めて国有企業を解体していく)か?
・治安維持のために公民の基本権利を犠牲にするか否か。
・民間がメディアを運営することを認めるか?
・司法が独立すべきか、公民が政府を批判していいか、世論監督が必要かどうか、党の政治を役割分担した方がよいか、公務員の財産は公開すべきか否か?
・台湾との関係において、本当に統一が重要か、それとも和平が重要か?
・香港の問題において、繁栄が重要か、それとも中央の権威が重要か、香港の地方選挙完全実施を許してよいか否か?

 提案書は、李克強、汪洋、王岐山による政治局拡大会議指導チームをつくり、会議の各項目任務の責任を負うべきだとした。さらに、「この会議の重要性は、決して『四人組逮捕』に劣るものではない。習近平の政治執政路線に対し評価することの意義は、(華国鋒が失脚し鄧小平が権力を掌握した)十一期三中全会の歴史的意義よりずっと高い」という。

 ここの提案書は、任志強の習近平批判文章に呼応したものとみられる。提案書を出した人物は不明である。紅二代(太子党)が関連していると思われるが、監視が厳しい中国のSNS微信で発信されていることは驚くべきことだろう。

 提案書を転載して拡散した陳平は香港定住者だが、紅二代出身の開明派とみなされる人物。父親は習近平の父親の習仲勲の部下で、習仲勲の深圳視察に同行したこともある。習近平とは40年来の付き合いともいわれ、王岐山とともに1984年の莫干山会議(この会議により経済の改革開放プロセスが一気に推進した)を組織した。この提案書は微信で拡散しただけでなく、実際に中央に提出されたという噂もあった。陳平は「自分が書いたわけではないが、党内でこの意見に賛同するものは少なくない」と語っている。

 武漢で新型コロナ肺炎がアウトブレイクしたのち、習近平の執政路線、政策の過ちを批判する知識人も続出している。

 まず、清華大学教授の許章潤が2月に書いた「怒りの人民はもう恐れない」という文章では、「習近平の統治が中国を世界の孤島に徐々にしている」「30年以上前の改革開放の苦労によって切り開いた開放性が、習近平によってほとんど破壊された。中国の統治状態は前近代状態だ。門は閉ざされ、野蛮な人道的災難が絶えず発生し、中世のようだ」と書いた。許章潤は目下、軟禁状態らしい。

 また憲法学者で公民運動家の許志永は「退任勧告書」を出した。「権力狂人」の習近平は国家統治能力の実力がなく、「妄議罪」(ありもしないことを議論した罪)をでっち上げ、社会における諫言や改善のための意見を許さなくなった、習近平に中国のこれ以上の“安売り”を許さず早々に退任させよ、と主張している。許志永も公安に身柄を拘束されている、という。

 これほどの批判を受けて、習近平も当然、四人組逮捕や第十一期三中全会を念頭において警戒はしているだろうから、外部からはっきりそうとわかる形の「政変」や「クーデター」が起こる可能性は低いに違いない。だが、習近平の党内における責任論が高まり、求心力が急激に弱まっていることはいえるだろう。

中国の感染状況は?専門家の見方

 3月29日に習近平は「企業・工場再稼働」をアピールするために浙江省を視察、このとき地方の村で習近平がマスクをしないで、農民と歓談している様子の写真が配信された。浙江省はまだ感染状況が落ち着いてるとは言いがたい。その中で、あえてマスクをしない習近平は、指導者みずから感染のリスクに身をさらしてみせて、経済回復のために君たちも命をかけろ、と言いたいかのようだ。習近平は2月3日から3月27日まで57回も「企業・工場の再稼働」を指示し、表面上は浙江省は2月末に企業再稼働率98%を宣言している。にもかかわらず、実際の経済の再稼働はなかなか進んでいない。

 実のところ習近平の「大丈夫アピール」とは裏腹に、中央感染予防工作チームトップの李克強はいまだ感染状況について「複雑で厳しい」と言い続けており、党内で中国の感染状況に対する評価が割れている。

 李克強は3月23日の感染予防コントロール会議の席上で、感染状況の各地の報告に隠蔽がある可能性をほのめかせながら、「専門家たちは、この感染症が、かつてのSARSのように突然終息する可能性は低いとみている」と訴え、慎重な姿勢をみせている。1月に李克強が感染予防コントロール工作の指揮を執ることになってから、習近平と李克強の仕事ぶりが党内の間でもメディアの間でも比較され、全体としては李克強の言動の方が評価されているふうに私には見える。

「習近平の退陣決定」という噂は本当か

 こうした党内不協和音の中で、任志強に関する次のような噂がネット上で流れた。

 「アリババの元CEOの馬雲(ジャック・マー)ら民営企業の“5大ボス”が“任志強釈放”を求める連名の意見書を出した」

 「任志強の親友である王岐山が、自分の進退をかけて、任志強を釈放し、習近平に“国家主席終身制”を放棄するように迫った。秋の五中全会(第五回中央委員会総会)で、李強(上海の書記、習近平の浙江省書記時代の党委員会秘書長)と胡春華(副首相)を政治局常務委員会入りさせ、後継者指名することも迫った」

 「任志強は身柄拘束されたが、絶食して抵抗している」・・・。

 3月28、29日にはこんな噂も飛び交っている。「王岐山、王洋、朱鎔基ら長老らが手を組み、習近平に任志強の釈放と、習近平自身の退陣を迫った。習近平は“終身制”を放棄し、李強と胡春華を後継者に認定し、秋の五中全会で2人が中央委員会入りし、次の第二十回党大会でそれぞれ総書記と首相に内定している。そして任志強は釈放された」というものだ。

 その“噂”が本当なら、これは事実上の「ソフト政変」といってもいいかもしれない。四人組逮捕や十一期三中全会のように過激さはないが、ひそやかな形でアンチ習近平派が圧力をかけ、習近平に個人独裁終身路線を放棄させた、ということになる。多くの人たちは、にわかには信じられない、と言っている。ネットではマスクをつけた任志強の写真が流れているので、釈放は本当のようにも思えるが。

 真偽はともかく、国際社会で大演説をぶって、米国にも上から目線の習近平が国内では、かなり強い圧力を受けて窮地にいるとは言えそうだ。とすれば、来る国際社会の大変局で、中国がルールメーカーの座を米国から奪う局面になったとしても、それは習近平の中国ではあるまい。ひょっとすると、共産党政権の中国でもないかもしれない。

【私の論評】習近平は本当に国賓として日本を訪問できるのか?失脚は十分にあり得る筋書きとなった(゚д゚)!

「習近平政権ピンチ」の噂は、上の記事の内容以外も、中国ではいろいろな方面で囁かれているようです。

新型肺炎の拡大が止まらない先月の中国では、習近平国家主席に異変が起きていたのか。“失脚説”や“コロナ感染説”が飛び交っていました。

SNS上では「#習近平感染」と「#習近平失脚」のハッシュタグがつき、盛り上がっていました。

事の発端は、このブログでもお伝えしたように、1月29日から2月4日まで、習近平が1週間も公の場に姿を見せなかったことです。国営新華社通信は3日、最高指導部が新型肺炎について会議を開いたと報じたのですが、テレビニュースの画面にはアナウンサーの姿しかなく、最高指導部のメンバーは誰も映っていませんでした。

5日、習主席がカンボジアのフン・セン首相と会談したことで、ひとまず“失脚説”や“重病説”は沈静化しています。

習近平が姿をくらますこと自体は、珍しいことではなく、2012年9月15日にも、2週間姿をくらました後で、姿を現しています。中華民国の評論家、経済史研究者黄文雄氏は、これについて「古巣の浙江省に籠もり、反日デモと尖閣強奪作戦を指揮していたようだ」としています。

今回も、いずれかに籠もり、武漢ウイルス禍を奇貨として、何ができるかを検討して、動きだしたのかもしれません。

そのためか、武漢肺炎の拡大自体は、実は習主席にはむしろ追い風になった可能性もあります。中国人民の怒りの矛先は、中央政府ではなく、湖北省や武漢市の役人に向けられているからです。これは、習近平が意図的にそうした可能性があります。

中央政府は、中国人民に、武漢肺炎での不手際を謝罪するどころか、水戸黄門のように、地方役人を叱りつける役回りを演じています。武漢肺炎前からの中国経済の悪化も、新型肺炎を理由にできます。米国に冷戦を挑まれた結果、経済が落ち込み続けて八方塞がりになっていた習近平にとって、おもっても見なかった僥倖かもしれません。

それどころか、このブログにも掲載したように、中国共産党は、最近はもっぱら「ウイルスとの戦いにいち早く勝利した中国」が、パンデミックと戦う世界各国の模範となり、救世主となる、という大プロパガンダを展開中です。今や世界で一番安全なのは中国国内で、感染源になっているのは欧米だ、というわけです。

中国、イタリア支援の医療チーム第3陣を派遣

これに対して米国は「ヒーロー気取り」の中国に対してこのブログでも解説したように、怒りの鉄槌を下そうとしています。

米国連邦議会の上院のジョッシュ・ホーリー議員(共和党)、下院のセス・モールトン議員(民主党)、エリス・ステファニク議員(共和党)ら約10人の超党派議員グループは3月23日、コロナウイルス感染症に関して中国政府の責任を法的に追及し、感染の国際的拡散によって被害を受けた諸国への賠償支払いを求める、という趣旨の決議案を上下両院に提出しました。

同決議案に署名した1人、ジム・バンクス下院議員(共和党)は議場での発言で、中国の責任追及のためには、単なる決議ではなく、米国として強制力を持つ法律を作って、中国政府への損害賠償を法的に迫るべきだという提案を明らかにしました。

それは以下のような提案でした。
全世界に被害をもたらした中国政府の法的な責任を明確にして、中国に賠償金を支払わせる方法として、第1には、中国政府が保有する莫大な額の米国政府債券の一部を放棄させる方法、第2には、中国からの輸入品にこの賠償のための特別な関税を新たにかけて、「コロナウイルス犠牲者賠償基金」を設けさせる方法、などが考えられる。
こうした方法の実効性は現時点では不透明ですが、米議会にここまで具体的な中国政府への賠償請求の動きが広がっていることは注視すべきです。

米国をこのように激怒させ、具体的に賠償責任を追求する姿勢をとらせたのは、習近平の大きな誤算だったかもしれません。これでは、中国内で批判されるのは当然といえば当然です。

中国人民が中央政府に対して声を上げるとしたら、コロナウイルスの感染拡大が収まった後でしょう。いまはまだ身を守るのに精いっぱいです。ただし、中国政府は武漢肺炎は終息しつつあるとしてますから、これが本当なら、そろそろ各地で頻繁に暴動が起こるかもしれません。

冒頭の元記事では、「アリババの元CEOの馬雲(ジャック・マー)ら民営企業の“5大ボス”が“任志強釈放”を求める連名の意見書を出した」というのが本当だったとすれば、これはかなり習近平政権が深刻な事態に陥っているとみるべぎす。

私はジャック・マー氏のアリババ退任の裏側について、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
アリババ創業者突然の引退宣言、中国共産党からの「身の危険」…企業家が次々逮捕・亡命―【私の論評】習近平がすぐに失脚すると見誤った馬会長の悲運(゚д゚)!
Forbsの表紙を飾った馬雲会長

この記事は、2018年9月13日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、マー氏のアリババ退任の裏側を私が分析した部分を掲載します。
おそらく変わり身の早い馬雲氏は、様々な出来事から判断して、習近平はすぐにも失脚すると踏んだのではないかと思います。実際7月には、上記にも掲載したように、習近平周辺で様々な異変がありました。 
習近平が失脚するとなると、上記のように習近平と近い関係を保ってきたことが今度は裏目に出ます。今度は、反習近平派の江沢民派などと、手を組まなければ、中国内ではうまく商売ができなくなります。 
だから、まずは"サウスチャイナ・モーニングポスト"あたりで、習近平を批判させ、さらに様子を見て、徹底的に批判しようとしたのでしょう。そうして、なんとか反習近平派に取り入る機会をつくろうと画策したのでしょう。 
しかし、習近平は意外にしぶとく、少なくともここ1年くらいは失脚することはありえないというのが実体なのでしょう。 
ここを馬雲会長は、見誤ったのでしょう。そのため、習近平側からの報復を恐れて、はやばやと引退する旨を明らかにしたのでしょう。以前はこの変わり身の速さが、馬雲を救ったのでしょうが、今回はこれが災いしたようです。
マー氏(馬雲氏)が、かなり変わり身が早いのは事実です。というより、中国では権力構造が変わるときに、乗り遅れれば企業は事業を円滑に継続することはできません。だから、優れた経営者ほど権力構造の変化には、敏感すぎるほど敏感です。

もし、権力構造の変化に乗り遅れた場合、会社を放逐されるのは当然としても、命を失う可能性も否定できず、敏感になるのは当然といえば、当然です。

この変わり身の早いマー氏が、「“任志強釈放”を求める連名の意見書を出した」ということが本当であれば、近いうちに中国で権力構造の変化があるかもしれないことが俄に現実味を帯びてきたといえると思います。

過去、中国の王朝は、疫病の流行で崩壊しています。習主席は人民の不満を最後まで抑えられるのでしょうか。私としては、中国共産党が崩潰するまでのことは、すぐにはないとは思いますが、少なくとも習近平の失脚は多いにありえると思います。

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2020年2月17日月曜日

中国企業が従業員を大量解雇!習主席が最も恐れる事態に… 「物不足&ハイパーインフレ」でついに暴動も? 政府措置に人民反発「人命軽視だ!」―【私の論評】中国の高物価と人民解放軍が、習近平を失脚させるかもしれない(゚д゚)!


新型コロナウイルスは中国経済も直撃している

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。中国本土では17日朝時点で、新型肺炎(COVID19)の感染者は7万人以上、死者は計1765人となった。日本国内で確認された感染者も16日夜時点で、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の355人を含め、計414人。日本政府は16日、「新型コロナウイルス感染症専門家会議」の初会合を官邸で開いたが、遅すぎではないか。米国やオーストラリアのように、入国拒否の対象地域を「中国全土」に広げるべきとの声も強い。専門家会議は日本の現状を「国内発生の早期」との認識で一致したが、初動対応に失敗した中国の二の舞にしてはならない。中国事情に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏が「中国経済の危機」「習近平政権の危機」に迫る緊急寄稿第4弾-。


 例年より長い春節(旧正月)休暇から明けた中国だが、多くの人民は日常生活に戻るどころか、「封鎖された都市」のなかで、不安と恐怖と怒り、そして悲壮感などを抱えながら過ごしている。

 ロイター通信や、台湾紙・自由時報(2月11日)などによると、北京市市場監督管理局は「先週、北京市内で営業していたレストランは約1万1500軒で、全レストランのわずか13%だった」という。

 都市部で360店舗以上を経営するチェーンレストラン大手「西貝」は、「従業員約2万人の給料の支払いが危うくなった」と報じられ、北京の大手カラオケチェーンの「K歌之王KTV」もすべて閉店したまま、従業員約200人が雇用契約を打ち切られた。

 職業教育チェーン企業の「IT兄弟連」北京校は、学生募集をストップして職員の解雇も決め、エレベーター内の電子広告などを展開する「中国新潮伝媒」は従業員500人の解雇を発表している。

 感染を阻止するため、生産現場で工場労働者が医療現場と同じ防護服を着ている映像も出回っているが、それも含め、企業側の経済的な負担としてのしかかっている。

 一説には、現状で「全国の30%の企業が解雇や縮小を決断した」というが、新型肺炎の発生地である湖北省武漢市のみならず、全国各地の中小企業が、経営危機に直面し、すでに多くの人民が失職や給料の遅配、減給の憂き目に遭っていることが推測される。

 皮肉なのは、武漢市において目下、人手不足で「4時間で4000元(約6万2800円)」などの好条件を提示し、求人に奔走しているのが葬儀場である。ある葬儀場の募集要項には「幽霊を恐れず、大胆で強いこと」と記されていたと拡散された。

 また、12日には台湾などのメディアが、「中国政府が、死体を収める袋を100万個、至急作るよう繊維工場に命じた」といった噂話まで報じた。

 中国の習近平国家主席が最も恐れる事態が「大規模解雇による社会不安の広まり」である。

習近平

 習氏の要請を受けて、中国発展改革委員会は11日の記者会見で、「企業の早期生産再開を促す9つの措置」を発表した。

 そこには、(1)物資輸送の保護に全力を注ぐこと(2)産業チェーンの修復、リアルタイムの監視と分析で人口移動を把握すること(3)換気・消毒、体温の監視など必要な措置で流行の広がりのリスクを効果的に軽減すること(4)科学的かつ医学的な観察による集団隔離-などの措置が掲げられた。

 さらに、12日には、「共同防衛・管理メカニズムに関する記者会見」が開催された。運輸部交通服務事業部長が「高速道路の出入り口、地方の幹線道路、農村道路などの無許可の閉鎖や分離、緊急輸送車両の通行妨害などを厳重に禁じる」と述べ、高速道路のサービスエリア、料金所、省・地方の幹線道路にアウトブレーク(集団発生)予防と管理検疫所、または検査ステーションを設置することも公にした。

 だが、北京政府が打ち出すこれらの措置に、武漢市はじめ地方の役人、経営者や人民が素直に喜ぶかは大いに疑問だ。それどころか、専門家の「感染者数のピークはまだこれから」との予測から、「中国当局は、経済安定のために外国人投資家の撤退を阻止し、経済的利益に重きを置いている」「政権の維持が最優先で人命軽視だ」といった反発につながっているのだ。

 しかも、中国全土では依然、消毒液やマスクなどの物資不足に直面しているが、湖北省の病院は医療廃棄物が山積し続け、武漢市の医療従事者は一説には3分の1が感染し、心身ともに限界に近づいているとされ、「医療現場の崩壊」が危惧されている。

 国内外の専門家はさらに、習政権が恐れる、もう1つの事態を指摘し始めている。「物不足によるハイパーインフレ」である。今後、職も食も得られない人民が、暴動を起こすか、餓死者が大量に出回る可能性は捨てきれない。

 習政権は崖っぷちにある。安倍晋三政権も、東京五輪・パラリンピックを中止にさせないためにも、「国家の緊急事態」として迅速かつ大胆な措置を断行すべきだ。


 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『米中新冷戦の正体-脱中国で日本再生』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)など。

【私の論評】中国の高物価と人民解放軍が、習近平を失脚させるかもしれない(゚д゚)!

確かに、中国のインフレは深刻です。1月の消費者物価指数(CPI)上昇率は5・4%と8年3カ月ぶりの高水準でした。物流や市場が整っている北京市でさえ、市場によっては白菜は1月の春節前の3倍、大根とキュウリは2倍の値をつけています。


上昇の主因は二つの疫病です。まずアフリカ豚熱(ASF)の流行で豚肉が品薄となり、1月の豚肉価格は前年比2倍以上の水準になりました。CPI上昇率でみても、昨年12月はASFを主因に4・5%まで上がりました。



これに、追い打ちをかけたのが1月下旬以降に急拡大した新型肺炎。国家統計局の董莉娟・高級統計師は10日発表の1月のCPI上昇について「春節と新型肺炎が影響した」と解説しました。

感染拡大で人々が外出を控えようと、物資の買い占めが各地で起きました。各地方政府は感染拡大を防ぐため人の移動を制限。外との人の往来を一切遮断する地区もあり、産地からの出荷を含め物流が滞りました。

春節明けの2月も働き手が郷里から元の職場に戻りきらず、物流網の回復は鈍いです。多くの地方政府が10日には工場の操業を解禁したのですが、人手不足や感染拡大への恐怖から生産再開が遅れています。

マスクなど感染防止に必要な品だけでなく、白菜など生鮮食品も大幅高です。国営新華社通信によると、河南省鄭州市のスーパーは白菜1個を63・9人民元(約1千円)で販売。

上海市のスーパーはレタス価格が8倍。山東省政府は高騰を防ごうと、感染防止グッズや生活必需品を仕入れ値から35%超値上げして売れば処分するとの通知を出しました。

中国情勢では、こうした庶民を苦しめるハイパーインフレと、人民解放軍の動向も見逃せません。

事実上、中国国内は「パンデミック(感染爆発)」状態といえ、最前線に立つ、人民解放軍の医療部隊も疲弊しつつあります。「政権は銃口から生まれる」(毛沢東)という国柄だけに、「死のウイルス」が解放軍内にまで広がれば、初動対応に失敗した習近平政権への怒りが爆発しかねないです。もともと、習政権に不満を抱えていた最精強の「北部戦区」などの動きが注目されています。

「依然として非常に厳しい」「大規模な措置が必要だ」

習国家主席は10日、北京市内の医療施設などを視察し、新型コロナウイルスをめぐる状況について、こう語りました。中国国営中央テレビ(CCTV)が伝えました。

今回の感染拡大以降、習氏は公の場にほぼ姿を現しておらず、「最高権力者の身に何かが起きているのでは」との憶測も流れました。日本でも、福島原発事故後、一時行方不明となった大物政治家がいましたが、マスクに白衣姿で登場したことで、新型肺炎を心底警戒していることをうかがわせました。

ネット上では、「どうして、(新型ウイルスが発生した湖北省)武漢市に行かない?」といった批判も見られているといいます。

その武漢市では、突貫工事で「火神山医院」と「雷神山医院」が建設され、人民解放軍の医療部隊が運用しています。病床が足りず、体育館などに簡易ベッドを大量に設置して、感染者らを集中収容する方針が出されましたが、これは解放軍の「野戦病院」の手法です。

日本ではあまり知られていませんが、人民解放軍は、先進国などのような、国の軍隊ではなく中国共産党の軍隊(というか私兵)です。。「党が鉄砲を指揮する」というのが、中国のシビリアン・コントロール(文民統制)であり、軍を指揮する「最高実力者」は党中央軍事委員会主席です。

一方で、人民解放軍は歴史的成り立ちから、軍中央の支配が届きにくい半ば独立した軍閥の集まりでもあります。習氏に忠誠を誓う軍閥と、習氏と距離を置く軍閥があります。背景に、利権と政争が複雑に絡みあっています。

習氏は2012年、党総書記と党中央軍事委員会主席に選出された後、「軍の腐敗撲滅」や「統合作戦能力の向上」などを掲げて、軍改革を進めてきました。「7大軍区」から「5大戦区」に再編し、軍人を30万人削減しました。狙いの1つは、軍閥と一体化した反習派の軍区の解体といわれています。



習政権となって、解放軍は弱体化させられ、機能を奪われています。不満がかなり鬱積しているはずです。『隙さえあれば何かやってやろう』というのが軍の特性といえます。習氏が最も恐れるのは、人数が多く、軍事的にも充実している「北部戦区」でしょう。

北部戦区は16年2月、人民解放軍で最精強とされた旧瀋陽軍区と、旧北京軍区の内モンゴル自治区、旧済南軍区の山東省を統合して誕生しました。ロシアと朝鮮半島に接するため、軍事費が優遇され、最新兵器が集積されてきました。

司令部は瀋陽市に置かれています。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権と近く、北朝鮮利権の見返りに、武器やエネルギー、食糧などを極秘支援しているとの見方もあります。反習派の牙城とされています。

北朝鮮は1月下旬、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、中国人観光客の入国を無期限で禁止しました。盟友関係にある北部戦区から連絡でもあったのでしょうか。

新型肺炎の感染拡大で、中国国内では武漢市をはじめ、「70都市以上」「4億人」が封鎖・隔離されているという報道があります。封鎖都市の中には、北部戦区の管轄区域である山東省臨沂市(人口約1140万人)や、黒竜江省ハルビン市(同約960万人)も含まれています。

習政権の初期対応の遅れが、中国全土から世界各国に「死のウイルス」をバラまく結果となっています。軍人にも被害者が続出する出る事態となれば、解放軍、特に北部戦区はどう動くでしょうか。

新型肺炎の感染拡大阻止に解放軍が駆り出されていますが、軍人は集団生活をしているため、集団感染してもおかしくはないです。「人民解放軍内で感染拡大」という事態に陥れば、軍人も自分たちを守るために命令に背いたり、独自の道を進む可能性もあるでしょう。習氏の『個人崇拝』は崩れつつあります。最悪の場合、中国全土で暴動が起き、共産党体制が揺らぎかねないです。

特に、先にあげたハイパーインフレによる国民の鬱積と、人民解放軍の鬱積がたまり、憤怒のマグマが形成された場合、その憤怒のマグマが習近平に向いて大爆発した場合、習近平の失脚等も十分あり得るでしょう。

2019年6月13日木曜日

習近平氏“失脚”危機!? 香港流血デモ、負傷者70人超…中国共産党は“内紛”状態 専門家「G20前にヤマ場」―【私の論評】習近平が、かつての華国鋒のような運命をたどる可能性がかなり高まった(゚д゚)!

習近平氏“失脚”危機!? 香港流血デモ、負傷者70人超…中国共産党は“内紛”状態 専門家「G20前にヤマ場」

香港で、学生らと警官隊が激しく衝突した。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回を求め、立法会(議会)を包囲していた学生らに対し、警官隊が12日、多数の催涙弾やゴム弾などを撃ち込んだのだ。負傷者は79人に上ったという。30年前の「天安門事件」の悪夢は繰り返されるのか。香港は13日朝も緊迫している。「自由」と「法の支配」を守ろうとする学生らの抗議運動に対し、中国共産党幹部が香港入りしたとの報道もある。米国務省は、学生らの行動に理解を示した。今後の展開次第では、習近平国家主席の政権基盤が揺らぐ可能性もありそうだ。

「学生らの自発的行動(デモ)は『雨傘革命』以上だ」「香港の良さ(=自由や権利の保障、公平な裁判など)を、破壊しているのは、今の香港政府と中国共産党政権だ」

香港の民主化を求めた2014年の「雨傘革命」で学生団体幹部だった周庭(アグネス・チョウ)氏(22)は12日、東京・神田駿河台の明治大学での講演で、こう語った。その内容は後述するとして、香港の現状は深刻だ。

2018年12月に来日した周庭(アグネス・チョウ)氏

「逃亡犯条例」改正案の成立を阻止するため、立法会周辺の道路を占拠していた学生らに対し、12日午後、盾や警棒などを持った警官隊が出動し、催涙弾やゴム弾を発射した。頭から血を流して倒れ込む学生。SNSでは、無抵抗の学生らに襲いかかる警官隊の動画も拡散されている。

催涙弾の発射は「雨傘革命」以来で、市民や民主派らが強く反発するのは確実だ。緊張が高まっており、さらなる衝突が起きる懸念も強まっている。改正案は当初、立法会で20日にも採決される予定だったが、今回の衝突を受けて、不透明な状況になった。

中国共産党政権が支持する香港政府トップ、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は12日、地元テレビ局のインタビューで、改正案を撤回しない方針を改めて表明した。同日夜には声明を発表し、デモについて「公然と暴動を起こした」と非難し、催涙弾の発射などを正当化した。

これに対し、国際社会の見方は違う。

米国務省のモーガン・オルタガス報道官は12日の記者会見で、「根源的な権利をめぐって中国の支配下に入りたくないから抗議している」といい、若者らの行動に理解を示した。香港政府に対しては表現や集会の自由を守るよう求めた。

 EU(欧州連合)の欧州対外活動庁(外務省に相当)の報道官も同日、多くの負傷者が出たことを受けて、「平和的で自由に集まり、意見を表現する権利は尊重されなければならない」「香港市民の多くの懸念を共有する」とする声明を発表した。

香港は1997年に中国へ返還された後も、「一国二制度」に基づく「高度な自治」を約束されてきた。ところが、共産党独裁の習政権による強権支配が強まっており、「自由」や「司法の独立」が奪い取られようとしている。

前出の周氏は、明治大学での講演で「中国は法治国家でもなく、人権の保証もない」と訴え、続けた。

「香港は法治社会だったが、(『逃亡犯条例』改正案の可決で)身の安全すら保障されなくなる可能性がある。国際金融都市としての『特別な地位』もなくなる。社会や経済にも悪影響を及ぼす」「香港に来る外国の観光客や記者が逮捕されて、中国本土に引き渡される可能性がある。日本にも無関係でない法案だが、日本政府は意見を言っていない。日本の政府や政治家も、改正案に(反対の)意思をはっきり示してほしい」

共産党独裁国家にのみ込まれる危機に直面した、切実な訴えというしかない。

中国事情に詳しいノンフィクション作家の河添恵子氏は「学生たちは、香港にあったはずの『人権』と『自由』と『民主』がなくなってきていることを実感している。ここ数年、(共産党に批判的な)出版社店主などが次々と拘束されている。香港が監視社会になってきている」と語る。

習氏は今月末、大阪市で開かれるG20(20カ国・地域)首脳会合に出席するため来日する予定だが、激化するデモの展開次第で、どうなるか。

河添氏は「現在、中国共産党は内紛状態にある。習氏がデモ制圧のために軍を動かす判断をしなくても、反習派によって動く軍はたくさんある。万が一、軍が動いて大きな被害が出れば、国際社会は習政権を厳しく批判することになる。そのなかで、習政権の責任論が浮上する可能性もある。国内でクーデターが起こる可能性もある。G20前にヤマ場が来るのではないか」と分析している。

【私の論評】習近平が、かつての華国鋒のような運命をたどる可能性がかなり高まった(゚д゚)!

米国は、今回の香港の流血デモの直前に、習近平を追い詰める措置をとっていました。それは、事実上台湾を国として認めたことです。

米国防総省が最近発表した「インド太平洋戦略報告書」で、台湾を協力すべき対象「国家(country)」と表記しました。これは、米国がこれまで認めてきた「一つの中国(one China)」政策から旋回して台湾を事実上、独立国家と認定することであり、中国が最も敏感に考える外交政策の最優先順位に触れ、中国への圧力を最大限引き上げようという狙いがうかがえます。

ちなみにこの報告書では、昨日もこのブログに掲載したように、「北朝鮮による日本人拉致事件の解決への支援」も明記しています。トランプ政権の日本人拉致事件解決への支援はすでに広く知られてきましたが、政府の公式の文書で明記されたことはこれが初めてだといいます。

また同文書は同時に北朝鮮を「無法国家」と断じ、米朝間で非核化交渉を進めているにもかかわらず、同国が相変わらず日米両国にとって軍事脅威であることを強調していました。

インド太平洋戦略報告書の表紙

国防総省は報告書で、「インド太平洋地域の民主主義国家として、シンガポール、台湾、ニュージーランド、モンゴルは信頼でき、能力がある米国のパートナー」とし、「4国は世界で米国のミッション遂行に貢献しており、自由で開かれた国際秩序を守護するために積極的な措置を取っている」と強調しました。

これらの国は、米国のインド太平洋戦略のパートナー国家として、既存の同盟国家である韓国、日本、オーストラリア、フィリピン、タイに触れ、追加で協力を拡大・強化する対象国として言及されました。

米国は1979年、中国との国交を正常化した後、「一つの中国」政策に基づいてこれまで台湾を国家と認定しませんでした。その米国が事実上、米国に対抗する公式報告書で台湾を国家と表記したのです。

香港サウスチャイナ・モーニン・ポストは7日、関連内容を報じ、「米国が一つの中国政策を事実上、廃棄した」と指摘しました。同紙は、「これは中国を狙った最近の米国の挑発的な措置の一つ」とし、「米中両国が貿易、セキュリティ、教育、ビザ、技術だけでなく『文明』競争を行う過程でトランプ政権が出した奇襲攻撃」と強調しました。

これに先立ち、ロイター通信によると、米国は台湾に対戦車兵器など20億ドル規模の兵器販売も推進しています。台湾との外交関係修復と協力強化、軍事的支援を通じて、台湾を中国封鎖政策に参加する域内プレーヤーに引き込むということです。米中間の覇権競争が激化する状況で、中国の激しい反発が予想されます。

トランプ米大統領は6日(現地時間)、今月末の大阪での主要20ヵ国・地域(G20)首脳会議で、中国の習近平国家主席と首脳会談を行った後、中国製品に追加関税をするかどうか決めると明らかにしました。ロイター通信によると、欧州を歴訪中のトランプ氏は同日、フランスのマクロン大統領との昼食前に記者団に、中国に3千億ドル(約354兆ウォン)規模の新たな関税を課す時期を問われ、「G20の後、2週間以内に決定する」と話しました。

米国が、中国の世界貿易機関(WTO)内の開発途上国の地位剥奪を推進中という報道もあります。7日、「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)の中国語版によると、米下院外交委員会所属のテッド・ヨーホー議員(共和党・フロリダ州)は同日、米外交政策委員会(AFPC)の主催で開かれた中国関連会議で、「米議会は政府とともに中国の開発途上国地位の剥奪を推進しており、ポンペオ長官と議論した」と明らかにしました。


今回の混乱により、香港立法会(議会)の梁君彦議長は、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を13日に審議しないことを決めました。立法会がウェブサイトで発表しました。改正案は当初、12日に審議が再開される予定でしたが、13日に延期されていました。審議日程は議長が決定し次第、発表されるとしています。

混乱がさらに続き、「逃亡犯条例」改正の審議が長引き、米国により対中国冷戦が発動されるとともに、台湾が事実上米国に国家として認められたことなどから、習近平は相当追い詰められています。

上の記事にあるように、今回の出来事ですぐにクーデターが起きて、習近平がすぐに失脚ということもあり得るとは思いますが、もしそうならなくても、習近平がかつての華国鋒のような運命をたどる可能性は、今回の一連の出来事でかなり高まっ

華国鋒

1976年10月、毛沢東の後継者として中国の最高指導者の地位に就いた華国鋒は、自らに対する個人崇拝の提唱や独断的な経済政策を推進したため、当時の党内の実力者、鄧小平ら長老派と対立しましたた。

78年末に開かれた党の中央総会で華が推進する政策が実質的に否定されたあと、影響力が低下し始めました。華はその後も党内から批判され続け、側近が次々と失脚するなか、約3年後に自らが辞任する形で政治の表舞台から去りました。

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2018年9月13日木曜日

アリババ創業者突然の引退宣言、中国共産党からの「身の危険」…企業家が次々逮捕・亡命―【私の論評】習近平がすぐに失脚すると見誤った馬会長の悲運(゚д゚)!

アリババ創業者突然の引退宣言、中国共産党からの「身の危険」…企業家が次々逮捕・亡命

プーチン露大統領(左)と、アリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)会長(右)
写真はブログ管理人挿入

「そこに座ってロシアのお菓子を食べている若い方に質問したい。馬雲さん、あなたはまだ若いのに、なぜ引退するのか」

「大統領閣下、私は若くありません。昨日、ロシアで54歳の誕生日を迎えました。私は創業して19年間、一生懸命働いてきました。でも、もっと多くの好きなことをやりたいと思っています。例えば、教育や慈善事業です」

これは9月11日、ロシア・ウラジオストクで開かれた「東方経済フォーラム」でのひとこま。フォーラムに参加した企業家の円卓会議に出席したプーチン大統領が進行を遮って、冒頭の発言を行ったのだ。大統領が質問をした相手は、中国電子商取引(EC)最大手、アリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)会長だった。

馬氏は前日の10日にはロシア入りしていたのだが、その当日に「教師の日、おめでとう!」と題する声明を発表し、「1年後の来年9月10日に会長を辞任する」と電撃的に宣言したのである。このニュースは世界中を駆け巡り、多忙を極めるプーチン氏の耳に入り、大きな関心を抱いたであろうことは冒頭の質問でもわかる。質問された馬氏は、一瞬きょとんとした表情をしたというが、さすがに当意即妙の返事をするところは、大企業のトップらしい。

プーチン氏は「私は若くはない」との馬氏の返事を聞いて、「あなたは私よりも若い。私はすでに66歳」と切り返したのだが、「66歳の俺が大統領を務めているのに、俺よりも若いお前が、なぜ現役を退くのか」というのが正直な感想だろう。

プーチン氏と同じ疑問は、多くの人が抱いているのではないか。3万6000人もの従業員を抱え、時価総額4200億ドル(約46兆円)の巨大企業トップの座から簡単に降りることはできるのかという疑問は、誰でも感じるだろう。その答えは、馬氏の10日の声明にある。

「東方経済フォーラム」では他にもハプニングがあった・・・

ちなみに、重大発表を行うのに9月10日を選んだのには、3つの意味がある。

まず、馬氏がプーチン氏に答えたように、54歳の誕生日であり、19年前の1999年のこの日に、馬氏を含めて18人がアリババを立ち上げた。さらに、この日は中国の「教師節(教師の日)」でもあり、今後教育に取り組みたいとしている馬氏にとっては特別な日ともいえる。

「私は教育に戻りたい」

10日の声明によると、馬氏が会長職辞任を考えるようになったのは10年前だったという。

「誰であれ、永遠に会社の最高経営責任者(CEO)と会長の仕事を続けることは不可能だ。10年前、私はこの問題を自分に問いかけてみた。馬雲が辞めた後、アリババは依然として健全に発展していけるだろうか? (中略)こう考えて、この10年間、私は絶え間なく努力、実践してきた。(中略)5年前にCEOを譲ったあとも、これまで5年間、順調に推移してきた」

そして後継者の張勇CEOについて触れ、「張勇は卓越した商才と堅実で沈着冷静なリーダーシップを持つ」として、張勇氏がCEOとして13四半期連続で業績を伸ばし続け、2018年の中国で最高経営者の栄誉を受けたとして、張勇氏を後継者に指名することは「私が現在なさなければならない、もっとも正確な決定である」と結論づけている。

そのうえで、馬氏は「私は教育に戻りたいと思う。私が最もやりたいことをするのは、私を非常に興奮させ、この上もない幸福を感じさせるのである」として、最後に「私は皆さんに請け負うことができる。アリババは馬雲だけに属するものではないが、馬雲は永遠にアリババに属していることを――馬雲 2018年9月10日」と結んでいる。

このように読んでみると、「優秀な後継者ができたから、これまでやりたくてできなかった教育の道に戻りたい」ということに尽きるのではないか。

ちらつく中国共産党の影

いわば、馬氏らしからぬ「逃げ」という印象を受ける。というのも、このところ中国では有能な若手経営者が続々と職を追われているからだ。なかには“塀の中”に落ちた者もいる。彼らは例外なく、多かれ少なかれ党中枢の幹部と密接な関係を持っている。

例えば、中国最高指導者だったトウ小平の孫娘と結婚した安邦保険の呉小暉元会長は、のちに離婚したもののその関係を利用して同社を巨大化させた。呉氏は派手な海外投資でニューヨークの著名なホテルなどを買収していったが、いまや詐欺と職権乱用などの罪で懲役18年の実刑判決を受け、個人資産105億元(約1800億円)を没収された。

また、曾慶紅元国家副主席と親しいとされる政商の郭文貴氏は現在、米国に事実上の亡命状態だ。同じく曾氏と親密な関係にあった実業家の肖建華氏は香港の最高級ホテルのスィートルームに滞在中、何者かによって拉致され、中国大陸に連れていかれたと伝えられる。

また、逮捕などはされていないが、やはり海外のホテルなどを買収するなど多額の海外投資を展開してきた大連万達(ワンダ)グループ総帥の王健林会長は、傘下のホテルを売却するなど業績が急速に悪化している。“香港の超人”と呼ばれる李嘉誠長江実業会長もさきごろ引退した。さらに、アリババのライバルでEC第2位の京東集団の劉強東CEOが性犯罪の容疑で米国で起訴されたと伝えられる。一説にはハニートラップに引っかかったとの噂も出ている。

彼らは派手な海外投資で外貨を浪費しているなどとして、中国共産党当局から目をつけられていたとの情報も伝えられていただけに、同じように海外でのビジネスを拡大してきた馬氏も、身に危険を感じたとしても不思議ではない。

馬氏のバックには習近平国家主席が付いているとされる。習氏はかつてトップを務めた浙江省に赴任していたことがあり、浙江時代の腹心は多数、中央の幹部に取り立てられているが、いまや馬氏のアリババは国有企業を差し置いて、中国有数の企業に成長したことで、馬氏と習氏の関係が微妙になっているとも伝えられている。よって、今回の唐突な馬氏の「引退宣言」は、共産党一党独裁体制下の中国という特殊なビジネス環境が大きな原因となったことは間違いないところだろう。

企業家が政治家と癒着するとろくなことがないのは、資本主義国も同じだが、中国では政治家のコネがないと成長できないのは周知の事実であり、中国の企業家は常に危険と隣り合わせているといっても過言ではないだろう。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

【私の論評】習近平がすぐに失脚すると見誤った馬会長の悲運(゚д゚)!

石平氏は、馬雲会長の引退について以下のようなツイートをしていました。

このツイートにある、香港紙とは英字新聞の"サウスチャイナ・モーニング・ポスト"のことです。この新聞は7月に、「中国共産党支配の正統性は好調な経済に支えられてきた。貿易戦争で経済危機が起これば、その正統性は確実に揺らぐ」とする上海の政治学者のコメントを引用し、米中貿易摩擦で効果的な手を打てない習氏は「体制発足後最大の試練を迎えた」と報じています。

この香港氏の報道にもあるように、中国では習近平体制をめぐり“異変”が起きているようです。国家主席の任期を撤廃し長期政権を可能にした今春以降、加速していた個人崇拝の動きに歯止めがかかっているようです。

2012年に発足してから最大の失点と目される貿易問題の影響が及んだ形のようです。先日もこのブログでお伝えしたように、8月上旬から開始された中国共産党の重要会議「北戴河(ほくたいが)会議」にも異変がありました。

これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国急変!習氏“最側近”王氏、8月恒例の「北戴河会議」に姿なし…政策失敗の全責任を負わせ失脚か? ―【私の論評】日米リベラルの中国報道を鵜呑みにすれば末は時代に取り残された化石になる(゚д゚)!
中国の習近平国家主席。米中「貿易戦争」に頭が痛い=7月、南アフリカ・ヨハネスブルク
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、「北戴河(ほくたいが)会議」の異変に関連する部分のみ以下に引用します。
「北戴河に(チャイナセブンの1人)王滬寧(オウ・コネイ)の姿がない」「1カ月近く雲隠れしている」「失脚か?」「影響力を失った」などの内容が、反共産党系中国メディアから噴出している。
歴代中国共産党トップの理論的支柱を務めてきた
王滬寧氏。習近平思想も彼が骨格をつくりあげた。
序列5位の王氏は、「3つの代表」「科学的発展観」「中華民族の偉大なる復興」など、江沢民、胡錦濤、習近平という国家主席3代の重要理論の起草に関与し、中南海の“知恵袋”と言われてきた。第16回党大会(2002年11月)で中央委員入りし、党中央政策研究室主任に就いて16年、現在に至るまで、その地位を維持してきた。
だが、第2次習政権は、その王氏に一連の政策失敗の全責任を負わせ、習政権の“イメージ転換”を図るのだろうか?
海外の中国人ジャーナリストらの弁によれば、「鄧小平時代の『韜光養晦』(とうこうようかい=才能を隠して、内に力を蓄える)の時代とは一変し、習政権が傲慢に『見える』ことで、世界から不評を買ってしまった。その責任が彼(=王氏)にある」という論理だ。2月下旬に封切られた中国の自画自賛映画『すごいぞ、わが国』も4月に突如、上映禁止が報じられた。
習国家主席(党総書記)は3月の全国人民代表大会(国会に相当)で国家主席の任期を撤廃、23年以降の続投に道を開きました。

以後、党規約や憲法に明記された習氏の政治思想は全国の学校や職場での学習が推進され、習氏の著作はベストセラーになりまし。「習主席語録」も一部で出回るなど建国の父、毛沢東以来の個人崇拝が広がっていました。

こうした中、7月、屋内外の習氏の写真やポスターを即刻撤去するよう警察が指示したとする文書がインターネット上で拡散していました。同じく7月初めには、ある女性が上海市内で「独裁、暴政に反対する」と叫びながら、習氏の写真に墨汁をかける動画が公開されていました。

また、陝西(せんせい)省の政府系研究機関、社会科学院で同時期に、習氏の思想・業績を研究するプロジェクトが突然中止されました。同様のケースが相次いでいました。

党機関紙、人民日報の“変調”も指摘されいました。ちょうどその頃1面の見出しの中に習氏の名前が含まれていない日がたまにあることに、"サウスチャイナ・ポスト"が注目し、「単なる偶然ではない」と背景に関心を寄せ、上記のような報道をしたのです。

しかし、馬雲会長はそもそも当初から、習近平と対立していたわけではありませんし、どちらかといえば、習近平を擁護していました。

アリババが香港英字紙である"サウスチャイナ・モーニングポスト(南華早報)"を買収したのは、2015年12月11日のことでした。

サウスチャイナ・モーニングポストはイギリス占領時代の1903年に設立された英字新聞で、創設時はまだ清王朝時代だったため、「南清早報」という中国名を号していました。1912年に「中華民国」が誕生すると「南華早報」に改名し、現在に至っています。

中文版もあり、中英文ともウェブサイトがあります。

政治的立場としては、激しい中国政府批判はしないものの、やや民主的で、2014年の雨傘革命のときには「普通選挙」を支持する報道をしたこともあります。そのため中国の国家的ネット検閲機関である「防火長城(万里のファイヤーウォール、Great Fire Wall)」により中英文ウェブサイトとも完全に遮断されて、中国大陸のネット空間では見ることができなくなりました。

解禁されたのは2015年の9月になってからでした。しかしなお、「港澳台(香港、澳門、台湾)」に関する報道は大陸では封鎖されたままです。

香港の雨傘革命
そのサウスチャイナ・モーニングポストをアリババが買ったのです。

それは何を意味するものだったのでしょうか?

実は2015年6月にも、アリババは「第一財経日報」およびその系列のウェブサイトなどに対して、30%の株を取得して発言権を獲得していました。表面上は「ビッグデータ処理」など、ビジネスが目的だとしていましたが、実際は違うようです。

第一財経のウェブサイトが発信する情報は、中国政府を客観的にではありますが、ときには堂々と批判することもあり、とても中国大陸のウェブサイトとは思えないような大胆さがありました。

ということは、どうもアリババは「民主化的傾向のあるメディア」あるいは、ともすれば「中国政府を批判する可能性のあるメディア」を、次々と買収したり大株主になったりして、その発信内容をコントロールしようという意図があったようにみえます。

特にサウスチャイナ・モーニングポストは、2013年7月に馬雲をインタビューした記事を4日連続で掲載したことがあります。そのときアリババで起きた不祥事に関して責任問題を問うたとき、馬雲は「六四事件(天安門事件)のときにも鄧小平は国家最高の責任者として決断をしなければならなかった。あの決断(民主を叫ぶ若者を武力鎮圧したこと、筆者注)が正しかったように、最高責任者は毅然と決断をしなければならない」という趣旨の回答をしました。

この回答をサウスチャイナ・モーニングポストがウェブサイトに載せると、香港の若者たちが激しい抗議を発信し始め、またたく間に大陸のネット空間へと広がっていっきました。

馬雲は1964年に浙江省杭州市で生まれています。1982年に高校を卒業しましたが、大学受験で数学の点数が悪く(1回目の受験で1点、2回目の受験で19点)、大学受験に失敗。そこで三輪車で雑誌社の本を運ぶ仕事に就きました。その後杭州師範学院で英語と対外貿易を学び、訪米したことからインターネット・ビジネスに興味を持ようになりました。

1999年にアリババを立ち上げるや、爆発的な成功を収め、2000年には雑誌『フォーブス』の表紙を飾るに至りました。大陸にいる中国籍の中国人がフォーブスの表紙に載ったのは、中華人民共和国建国以来、初めてのできごとで、馬雲は一躍有名になりました。

Forbsの表紙を飾った馬雲会長

2002年から2007年まで浙江省の書記をしていた習近平は、「民間企業振興」に力を注ぎました。当然ながら、浙江省で成功した馬雲のアリババを重視していました。2007年から上海市書記になると上海市政府の指導層を引き連れて浙江省視察に出かけ馬雲に会い、「上海市に活動の拠点を移してくれないか」と頼んだほどです。

それくらい馬雲を高く評価していました。だから、国家主席になった後の海外訪問では、馬雲を大規模な企業集家代表団の筆頭として随行させることが多くなりました。たとえば2015年7月の韓国訪問で習近平国家主席がスピーチをした時には、馬雲は代表団の第一列目に並んで「中国を代表する企業」としての存在感を見せつけていました。

中国の経済力によって韓国を中国側に惹きつけておきたい習近平としては、『フォーブス』の表紙を何度か飾っている馬雲は、言うならば中国経済成功のシンボルのようなものだったのでしょう。

では、馬雲と習近平の仲が非常に順調に行っていたかというと、必ずしもそうではありませんでした。

実は2015年1月15日、習近平は中共中央紀律検査委員会第三回全体会議閉幕に当たって、「私人会所」の取締りを厳しくしろという指示を出しています。「私人会所」とはどういうことかというと、党や政府の組織でなく、私人が勝手に団体を作り、富豪のクラブのようなつながりで利益を追求していく行動を指しています。

胡錦濤政権時代、中央司令塔の事務方のトップだったような令計画が当時「西山会」を作って暴利をむさぼり逮捕されていました。

このとき馬雲が浙江省杭州市に作っていた「江南会」も調査の対象になることを、馬雲は事前にキャッチしていました。この「江南会」は2006年に浙江商人8人が発起人となって作った「会所」で、入会費20万元(約400万円)。厳格な入会審査があります。この江南会も西山会同様、捜査の対象になりそうだという情報が入ってきたのです。

2015年1月21日のダボス会議では、李克強首相に随行して、やはり李克強のスピーチの最前列に陣取っていた馬雲でしたが、演台から下りた李克強は、馬雲の顔を見ず、その隣に座っていた企業家代表から握手を始め、立ち去ってきました。

3日後の1月24日、中国国家工商総局はアリババが販売するネットショップ商品の62%以上が偽商品であると発表しました。あらゆるネットショップの中で、最低の評価を受けてしまいました。続けざま、1月28日に国家工商総局は初めて『アリババ集団に対する行政指導状況に関する白皮書(ホワイト・リポート)』(2014年)を刊行しました。

窮地に追いやられ危機を感じ取った馬雲は、変わり身早く、「江南会」を「湖畔大学」に変身させ、私立の「創業者のための大学(専科)」を設立しました。入学資格は3年以上創業経験があり、30人以上の規模の企業を経営していた者。2015年3月からの開校で、150人が受験し、30人が合格しました。学費は3年間で28万元(約500万円強)。

湖畔大学創設メンバーは、「江南会」創設メンバーの8人と同じだ。この8人の中に、2015年12月10日から連絡が取れず「消息不明」となった復星集団のCEO郭広昌がいます。郭広昌は、2015年11月に北海道上川管内占冠村にある星野リゾートトマムを買収したことで注目された人物です。

失踪した原因は、どうやら光明集団の元CEO王宗南と関連があるらしいとされました。王宗南は公金横領により上海市第二中級人民法院(地方裁判所)で判決を待つ身でしたが、審査過程で復星集団と便宜供与などに関する不正な利害関係があったことが判明しています。

郭広昌氏

馬雲も一歩まちがえれば危ないことになったかもしれません。

令計画が捕まり、「私人会所」が取り調べの対象となることを知った瞬間から、馬雲の機転はフル回転し始めたようです。

イノベーションに国運をかける習近平政権の泣き所を突いて「湖畔大学」を設立させただけでなく、北京政府にとって頭が痛い香港の民主化運動を抑えるためのメディアを買収してしまうという戦略に出たのです。

今年9月の習近平訪米のときに随行した馬雲は、経済フォーラムにおける講演の寸前に、26か所も講演原稿を修正して、「習近平国家主席を讃える文言」に変換させたと言われています。

さすが、創業1年で『フォーブス』の表紙を飾っただけのことはあります。

消息不明になった郭広昌のような目に遭わないよう、危機を回避する身変わりの速さを心得ていたようです。

2015年11月11日に、中国の独身者のためのネットショップフェアがあったが、大成功した馬雲に、李克強が祝電を送るという、こちらも変わり身の速さを見せていました。

このようなことから、馬雲の傘下にあるはずの"サウスチャイナ・モーニングポスト"なぜ、習近平指導部の失策を批判するような記事を掲載したのか今のところ謎です。

ここから先は、推測ですが、おそらく変わり身の早い馬雲氏は、様々な出来事から判断して、習近平はすぐにも失脚すると踏んだのではないかと思います。実際7月には、上記にも掲載したように、習近平周辺で様々な異変がありました。

習近平が失脚するとなると、上記のように習近平と近い関係を保ってきたことが今度は裏目に出ます。今度は、反習近平派の江沢民派などと、手を組まなければ、中国内ではうまく商売ができなくなります。

だから、まずは"サウスチャイナ・モーニングポスト"あたりで、習近平を批判させ、さらに様子を見て、徹底的に批判しようとしたのでしょう。そうして、なんとか半習近平派に取り入る機会をつくろうと画策したのでしょう。

しかし、習近平は意外にしぶとく、少なくともここ1年くらいは失脚することはありえないというのが実体なのでしょう。

ここを馬雲会長は、見誤ったのでしょう。そのため、習近平側からの報復を恐れて、はやばやと引退する旨を明らかにしたのでしょう。以前はこの変わり身の速さが、馬雲を救ったのでしょうが、今回はこれが災いしたようです。

中国では、政治と経済が不可分に結びついているので、馬雲会長を単純に批判することはできません。何しろ、中国では、時の政府とうまくつきあえなければ、発展することはあり得ないからです。馬雲会長のような行動をするのは当然といえば、当然です。

このブログでも以前から掲載しているように、中国は民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされおらず、これでは他国と自由貿易もままならないですし、中間層が多数輩出し、それらが自由に社会・経済活動をして富を築くというようなことはできません。

中国の社会構造がこれだけ、遅れていたのに、なぜ経済発展することができたかといえば、中国が他国に対して莫大な人口を抱える中国は、すぐにかなり経済発展するだろうという、幻想を振りまき他国から潤沢な投資を得て、それで盲滅法で巨額のインフラ整備などをしたためです。

しかし、インフラ整備だけでは、いずれ限界がきます。さらに社会構造が遅れた中国では、インフラ整備以外には、新たな産業を生み出すのは至難の業です。それは、現体制の中国では無理です。

今回のアリババ創業者突然の引退宣言は、そんな中国を象徴しているようにみえます。

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2018年8月17日金曜日

中国急変!習氏“最側近”王氏、8月恒例の「北戴河会議」に姿なし…政策失敗の全責任を負わせ失脚か? ―【私の論評】日米リベラルの中国報道を鵜呑みにすれば末は時代に取り残された化石になる(゚д゚)!

中国急変!習氏“最側近”王氏、8月恒例の「北戴河会議」に姿なし…政策失敗の全責任を負わせ失脚か? 

中国の習近平国家主席。米中「貿易戦争」に頭が痛い=7月、南アフリカ・ヨハネスブルク

中国共産党最高指導部メンバーと長老らが毎年8月、河北省の避暑地、北戴河に集まる非公式・非公開の「北戴河会議」が終わった。今回は「米中貿易戦争」の激化や、広域経済圏構想「一帯一路」の限界など、難題山積で紛糾したとみられている。揺らぐ習近平国家主席の立場と、「チャイナセブン」(中央政治局常務委員7人)の失脚情報、狙われた日本の元首相2人について、ノンフィクション作家の河添恵子氏が緊急リポートする。

「この夏の休暇は、これまでと雰囲気が異なる」「形勢が緊迫し、緊張が張りつめている」

中国共産党の機関紙「人民日報」傘下の新メディア「人民日報中央厨房」は9日、北戴河で休暇を取った人物の発言を、こう報じた。難題山積、北戴河会議の異変は確実なようだ。

難題といえば、ドナルド・トランプ米政権が仕掛けた米中貿易戦争だろう。これは、「中国=最大の脅威」とみなした対応で、中国経済の息の根を止めかねない。そして、世界の製造強国を目指す「中国製造2025」計画も、欧米諸国は「軍事覇権に拍車をかける」と警戒態勢に転じた。

「一帯一路」構想についても、関係国からは「債務の罠」であり、国が借金まみれになり、政治がコントロールされ、港湾など戦略的軍事拠点が奪取されるとの非難が噴出している。北極海航路を狙われているロシア、中央アジアも「一帯一路」への警戒感を強めている。

さらに、野党連合を率いる、93歳のマハティール・モハマド首相の再登板によって、マレーシアなどでは“脱中国”の動きが急速に進行中である。

中国国内でも、党幹部を含めて、習独裁体制への懸念が高まり、人民解放軍や人民の不満も爆発寸前…。内憂外患の習政権は、まさに崖っぷちにある。

党最高幹部の動向にも“異変”がある。

「北戴河に(チャイナセブンの1人)王滬寧(オウ・コネイ)の姿がない」「1カ月近く雲隠れしている」「失脚か?」「影響力を失った」などの内容が、反共産党系中国メディアから噴出している。

歴代中国共産党トップの理論的支柱を務めてきた
王滬寧氏。習近平思想も彼が骨格をつくりあげた。

序列5位の王氏は、「3つの代表」「科学的発展観」「中華民族の偉大なる復興」など、江沢民、胡錦濤、習近平という国家主席3代の重要理論の起草に関与し、中南海の“知恵袋”と言われてきた。第16回党大会(2002年11月)で中央委員入りし、党中央政策研究室主任に就いて16年、現在に至るまで、その地位を維持してきた。

だが、第2次習政権は、その王氏に一連の政策失敗の全責任を負わせ、習政権の“イメージ転換”を図るのだろうか?

海外の中国人ジャーナリストらの弁によれば、「鄧小平時代の『韜光養晦』(とうこうようかい=才能を隠して、内に力を蓄える)の時代とは一変し、習政権が傲慢に『見える』ことで、世界から不評を買ってしまった。その責任が彼(=王氏)にある」という論理だ。2月下旬に封切られた中国の自画自賛映画『すごいぞ、わが国』も4月に突如、上映禁止が報じられた。

世界各国が本気モードで中国を警戒するなか、この“新潮流”からズレまくっているのが、日本の元首相たちである。

鳩山由紀夫元首相は11日、北京で開かれた国際シンポジウムに出席し、「一帯一路」構想について、「習近平主席は、目的は平和をもたらすことだと述べた」「日本は大いに協力すべきだ」と強調したという。

福田康夫元首相も6月、江蘇省南京市の「南京大虐殺記念館」を訪問し、「日本人はもっと過去の事実を正確に理解しなければならない」などと語ったことが報じられた。

2015年全国戦没者追悼式で献花をする(左から)福田康夫、鳩山由紀夫、菅直人の歴代首相経験者

1989年6月の天安門事件で、「自由と民主」「法の下の平等」「人権」という価値観を重視する欧米諸国から一気に四面楚歌(そか)となった中国は、日本へすり寄ってきた。

歴史は繰り返す。欧米諸国に危険視された習政権がいくら微笑み外交に転じようと、中国は、沖縄県・尖閣諸島も台湾も「我がもの」と考えており、軍事超大国となり世界覇権を目指しているのだ。

日本はもういい加減、だまされてはならない。

■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『中国・中国人の品性』(ワック)など。

河添恵子氏

【私の論評】日米リベラルメディアの中国報道を鵜呑みにすれば末は時代に取り残された化石になる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事に掲載されていること以外にも、揺らぐ習近平国家主席の立場を象徴するような事件が起こっています。

その最大のものは、退役軍人のデモの拡大です。中国では、年金削減など退役後の待遇に不満を抱いた元軍人によるデモが続発し、沈静化の兆しが見られません。

このブログでも紹介したように、6月13日に四川省徳陽で最初のデモが勃発したのを皮切りに、江蘇省鎮江で19~24日、湖南省長沙で7月9日、河北省石家荘で12日、山西省太原で17日、内モンゴル自治区赤峰では19日、山東省煙台で24日にと、各地に飛び火しています。

以下に煙台市でデモに関する、動画つきのツイートを掲載します。


79年に中越戦争に参加した60代の退役軍人を先頭に、デモ参加者の年齢層は幅広いです。元軍人たちは相互に呼び掛け、地域を超えてデモを行っています。

彼らは労働者や農民の抗議と異なり、自分たちで選んだ「指揮官」の号令に従って隊列を組み行進し、政府庁舎前で抗議を行うときも整然としています。警察と機動隊を前にしても一致団結して抵抗し、簡単には退きません。

かつて国家の「暴力装置」だった軍人は、鎮圧する政府側の出方を知り尽くしているだけに厄介です。デモ隊に退官後の己の姿を重ね合わせて見てしまうのか、鎮圧側も強くは出られず、事態は深刻化しつつあります。

退役軍人は中国全土に5700万人以上いるといわれます。習政権になってから国有企業の改革が進まず、経済が悪化の一途をたどり、地方政府の予算も潤沢ではなくなりました。

もともと地方政府は経済統計の水増しを繰り返して業績を偽り、発展を装ってきました。ここに至って地方財政は破綻し、退役軍人に支払うべき年金も削減されているのです。

16年には退役軍人数千人が待遇改善を求め、首都北京の国防省を包囲しました。習政権は今年4月に再就職支援などを行う退役軍人事務省を発足させ不満解消を図ったのですが、情勢は好転していません。

待遇がひどくなっている背景の1つに、習の進めた軍改革があります。人民解放軍は広大な大陸を舞台にした20年代から40年代にかけての国共内戦から発展しました。国民党との長い内戦から次第に4つの野戦軍が形成。毛沢東を最高指導者と認めながらも、それぞれ独自の派閥と地域に立脚した組織が維持されていました。

毛が死去し鄧小平時代になっても、派閥と地域性は基本的に残されました。4つの野戦軍はさらに複数の軍区に分割されることがあっても、旧来の人事・指揮系統は不動のままです。それぞれの軍区内で退役軍人の面倒を見る伝統もそれなりに機能していました。

しかし、総司令官となった習は16年2月から従来の7大軍区を廃止し、5大戦区に整理統合し、人事と指揮は党中央に吸い上げられました。こうした改革で、実戦の際には指揮系統を統一したことで命令伝達はうまくいくかもしれません。ところが、軍と地方の関係を薄めたことで、平時において軍内部の福祉政策は麻痺してしまったのです。

共産党は「党が軍を指揮する」と主張するのですが、それは建前に過ぎません。実際は軍を掌握できた者だけが党を動かし、国家の最高指導者として人民に君臨するのです。

まさに毛沢東が語ったように「政権は銃口より生まれる」わけなのです。この「伝家の宝刀」は毛や鄧の時代はうまく使えましたが、江沢民(チアン・ツォーミン)時代から次第に軍に対する党の権威が衰えました。

胡錦濤(フー・チンタオ)から習に至って威光は一層低下しました。そもそも人民解放軍は27年に中国南部で結成された中国工農紅軍を祖としています。一方、習の父・仲勲(チョンシュン)は中国中部の陝西省を拠点とするゲリラ部隊の出で、しかも文官だったので毛並みはよくないです。そして、習は反腐敗運動を利用して高級将校を多数摘発してきたので、軍に不満がたまっています。

共産党大会の開幕式で拍手する習近平総書記(中央)、江沢民元国家主席(右)、胡錦濤前国家主席(左)

党の軍隊から国家の軍隊に改編すべきであり、人民解放軍を共産党の私兵から国軍に改造すべきだとの意見は昔から改革派知識人から出されていました。ただ、その改革は私兵に守られた共産党の命脈を絶つことを意味しています。

こうして抜本的な軍改革に手をこまねくうちに、退役軍人という時限爆弾は刻々と暴発へと近づいているようです。

現在はオバマ以前の大統領のときとは全く異なり、完璧に反中国派のトランプ大統領が、大統領選挙線のときから「中国を叩く」とはっきり公約を宣言して、その通りの実行しています。

現在の総理大臣は、中国包囲網を構築するという「安全保障のダイヤモンド」を提唱する安倍総理大臣ですから、良かったものの、鳩山由紀夫や福田康夫のような親中派が総理大臣だったら大変なことになっていたかもしれません。

それこそ、中国に利するような発言や行動をして、米国から利敵行為をしているとみなされ、米国から貿易戦争を挑まれたり、金融制裁をくらったりして大変なことになっていたかもしれません。

それこそ、1980年代の貿易摩擦よりも酷いことになっていたかもしれません。

しかし、この歴史上の大転換ともいえる、この時代を理解していないのは、過去の総理大臣らのみではありません。政治家の中はもとより、マスコミは未だ親中派で染まっているようです。

中国国営テレビCCTV(中国名称は中国中央電視台)といえば、反日の評論や報道、そして日本人を殺人鬼のように描く反日ドラマの放映で知られています。

その中国国営テレビの日本支局というのが、なんとわが日本国の公営放送のNHKの内部に存在しているのです。

中国中央電視台(中国国営テレビCCTV 日本支局)のオフィスは未だに、渋谷区神南2-2-1 のNHK放送センタービル内にあります。このようなことで、重要な情報が中国に漏れたりした場合、米国から目の敵にされたりすることもあり得ます。

それにしても、世界のどこの放送局でも、特に国営の放送局などに、中国中央電視台の支局があるなどとは聞いたことがありません。それだけ、NHKは、異常だということです。

米国では、自身に批判的な記事を「フェイク(偽)ニュース」と非難し、一部メディアを「国民の敵」と断じたトランプ大統領に抗議するため、全米の350を超える新聞社が16日、報道の自由を訴える社説を一斉に掲載しました。

ただし、日本ではあまり知られていないことですが、米国のマスコミのほとんどはリベラル派で占められています。特に大手新聞は100%がリベラルであり、日本でいえば「産経新聞」のような保守派の大手新聞は存在しません。

デレビはフォックスTVだけが大手保守系テレビ局ですが、他はすべてリベラルで占められています。そのため、米国では過去数十年間にわたり、少なくとも米国の総人口の半分は存在すると考えられる保守層の考えは、リベラルメディアによってかき消されてきたというのが現実です。

日本のメデイアが米国の報道をするときは、米国メディアの報道を垂れ流すため、多くの日本人は米国のリベラル派の考えや文化ばかりをみて、後の半分の保守派のことは見過ごしてきたというのが現実です。

そのようなリベラルメディアが、トランプ氏をまるで気狂いピエロのように報道してきたのは事実です。日本での報道もこれに右に倣えです。

米国メディアはトランプ氏をまるで気狂いピエロでもあるかのように
報道し、日本のマスコミはそれに右ならえをしたが・・・・・・・・・

米国ではトランプ氏のメディア敵視の姿勢に非難が集まる一方、メディアの信用低下も加速している。とくに共和党支持者の間で著しく、米調査機関ピュー・リサーチ・センターの昨年6月の調査によると、メディアが自国にマイナスの影響を与えていると答えた共和党支持者は85%となり、2010年の68%から大幅に増えた。

共和党支持者というより、米国の保守層の多くは、もう米国のメディアをほんど信用してないでしょう。米国メデイアのほとんどが、トランプ大統領誕生の予測ができなかったように、トランプ大統領による中国成敗がどうなるのかも予測できないでしょう。

そうして、それは日本のマスコミも同じです。日本でも似たような現象があります。いわゆる「アベニクシーズ」「アベノセイダーズ」の存在です。あれだけ「もりかけ」で過去一年間以上も「疑惑は深まった」などと主張したり報道しつづけてきたのに、現在に至るまで何らのエビデンスもあげられないでいます。

安倍総理の件でなくても、どのような件であっても、過去1年以上も「疑惑が深まった」として追求してあげくのはて何らの確証もあげられなければ、無能のそしりを受けるのは当然です。

今後、日米のメデイアなどの中国報道を単純に信じ込んで、米国のトランプ政権による対中国叩きをみていては、世界情勢の変化についていけなくなります。

それこそ、鳩山氏のようになってしまい、時代に取り残された化石のような存在になってしまうことになるでしょう。

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2018年7月20日金曜日

貿易戦争で中国を待つ未来 外資系企業が資本を逃避、EUや韓国は投資見直しも―【私の論評】習近平が失脚しようがしまいが、米国の対中国貿易戦争は目的を達成するまで継続される(゚д゚)!

貿易戦争で中国を待つ未来 外資系企業が資本を逃避、EUや韓国は投資見直しも 

米中両国の報復合戦で苦しくなるのは一般的にみれば中国だ 写真はブログ管理人挿入以下同じ

 米国は中国に対して追加制裁を行う方針を打ち出した。中国も報復する方針だ。両国が報復合戦をすると、それぞれの国への輸出量の差から、一般的には中国が苦しくなる。

 一方、関税と言っても、米国にとっては自国民への課税であるので、中国の輸出業者が先に音を上げるか、それとも中国製品を購入する米国民が先に参るかという我慢比べの側面もある。

 中国としては、報復関税の対象を米国で政治的パワーを持つ農産物に絞るなどして政治的な揺さぶりをかけるが、それでも、輸出量の差から不利にならざるを得ない。

 中国が報復関税ではなく、人民元の為替レートを操作すると、米国が為替や資本の自由化を持ちだしてくるので、これも中国にとって分が悪くなる。こうして中国が不利な状態で米国と貿易戦争をしている限りでは、日本が漁夫の利を得る可能性もある。

 そうなると、米中貿易戦争は、欧州連合(EU)、韓国など米中以外の国にどのような影響が出てくるのか。これらの国も、基本的には米中間で報復関税をしている間は静観の姿勢であり、米中のとばっちりが自国に来ないように注意するだけだ。

 そこで、まず、米国の対中輸入品目をみよう。従来の軽工業品に加え、近年、電気機器(電話用アプリ、テレビ受像機など)、機械類(自動データ処理機械、コンピューター部品など)のシェアが増加している。これらの中国製品の大半は、中国に進出した外資系企業によって生産されている。

 トランプ大統領が中国から米国への輸出品に関税をかけ続けると、これらの外資系企業は、どうなるだろうか。もともと、安価な労働力を利用して対米輸出するために中国に進出したのであるから、その目的が達成できないとなると、中国進出をあきらめ、他の国へ資本を振り向けるだろう。

 中国の安価な労働力も、中国が経済発展するにつれてそれほど魅力的な水準ではなくなっている。しかも、中国に進出した外資系企業についても、習近平思想を強要する動きもある。企業内に共産党委員会の設置を義務付けたことだ。

 こうした状況になると、中国ではなく、東南アジアなどに進出先を変更する動きも出てくるだろう。実際、日本企業でも、中国リスクを考慮して、ベトナムで展開するという動きがある。

 対中国への投資を国別に見ると、7割が香港、次いで台湾、シンガポール、日本、韓国、米国となっている。香港を経由して多くの国から対中国投資が行われている。その中には、EUからの対中投資も少なくない。先日の本コラムで書いたように、中国は人民元を安く操作しているが、これも中国からの資本逃避を促す。

 EUや韓国などは対中投資を見直すだろう。そうした資本逃避は、中国の成長エネルギー源を失わせるので、長い目で見れば中国経済に打撃を与えるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】習近平が失脚しようがしまいが、米国の対中国貿易戦争は目的を達成するまで継続される(゚д゚)!

今月6日、トランプ米大統領が知的財産権侵害に対する報復の第1弾として340億ドル分の対中輸入品に対して25%の追加関税を発動したのに対し、習近平政権はただちに同額の対米輸入品に同率の報復関税をかけました。

報復品目には農産物が多く、大豆やトウモロコシが代表的ですが、よほど品目探しに苦労したのか、鶏の足や豚の内臓まで加えました。いずれも米国内ではほとんど消費者に見向きもされずに、廃棄されていたのですが、巨大な中国需要に合わせて輸出されるようになりました。

米国ではゴミとして捨てられていた鳥足が、中国ではごちそうになる・・・・

習政権は、屑(くず)に値がついて、ほくほく顔だった米国の養鶏農家に打撃を与え、養鶏地帯を選挙地盤とするトランプ支持の米共和党議員への政治的メッセージになると踏んで、報復リストに加えたのでしょうが、これは中国人民の胃袋も直撃することになります。

どのくらいの量の鶏足が米国から対中輸出されているのかは不明ですが、国連食料・農業機構(FAO)統計(2016年)では鶏の飼育数は中国の50億羽に対し、米国は20億羽に上ります。そのうち約1割の足が中国向けだとすると、約4億本が中国人の胃袋におさまる計算になります。

それに対して高関税が適用されると、輸入が減り、かなりの品不足に陥ることになります。13億羽の鶏を生産するブラジルが代替源になるかもしれないですが、増産態勢が整うまでには長い時間がかかるはずです。すると、需給の法則で鶏足の値が上がることになります。

さらに、中国人民全体の食にもっと広汎で深刻な影響が及びそうなのは、もちろん大豆です。米国の対中大豆輸出量は昨年3300万トンで、同5000万トンを超えるブラジルに次ぎますが、中国の国内生産は1400万トンに過ぎないです。


米国産は中国の大豆総需要のうち、約3割を占めています。輸入大豆は搾って食用油になり、粕が豚や鶏の餌になります。米国の大豆産地が鶏と同様、中西部のトランプ支持基盤とはいえ、その輸入制限は、中国人民の胃袋と家計を直撃することになります。

折も折、中国経済は減速局面に突入し、上海株価の急落が続いています。トランプ政権は10日には2000億ドルに上る追加制裁品目を発表しました。中国の対米輸入1600億ドルを大きく上回り、報復しようとすれば対米輸入全品目を対象にするしかなくなります。

17日付の産経新聞朝刊によれば、中国の国営メディアは習氏への個人崇拝批判を示唆、習氏の名前を冠した思想教育も突然中止されるなどの異変が相次いでいるといいます。米国との貿易戦争に伴って景気悪化で所得が下がるうえに、胃袋も満たせないと大衆の不満は募ることになります。そこで独裁権力を強める習氏への党内の批判が噴出する気配です。

ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事にあるように、米中貿易戦争は、中国からの資本逃避を促し、中国の成長エネルギー源を失わせ、さらに人民の胃袋と家計を直撃することになります。

米中戦争がさらにエスカレートすれば、米国は金融制裁に打って出ることになります。貿易戦争でも、金融制裁でも中国には全く勝ち目はありません。勝ち目のない戦にいどまなければならなくなったのは習近平の自業自得といえるます。

こういう事態を招いた、責任の大きな部分は習近平の対米戦略を見誤ったことにあります。オバマ政権の初期が中国に対して非常に融和的であったことから、習近平政権が米国をみくびった結果、鄧小平が続けてきた「韜光養晦(とうこうようかい:「才能を隠して、内に力を蓄える)」という中国の外交・安保の方針)」戦略を捨て、今世紀半ばには一流の軍隊を持つ中国の特色ある現代社会主義強国として米国と並び立ち、しのぐ国家になるとの野望を隠さなくなりました。

オバマの戦略的忍耐は美しい空言にすぎず、中国を増長させることになった

このことが米国の対中警戒感を一気に上昇させ、トランプ政権の対中強硬路線を勢いづけることになりました。

1976年10月、毛沢東の後継者として中国の最高指導者の地位に就いた華国鋒は、自らに対する個人崇拝の提唱や独断的な経済政策を推進したため、当時の党内の実力者、鄧小平ら長老派と対立しました。

78年末に開かれた党の中央総会で華が推進する政策が実質的に否定されたあと、影響力が低下し始めました。華はその後も党内から批判され続け、側近が次々と失脚するなか、約3年後に自らが辞任する形で政治の表舞台から去りました。

華国鋒

今年7月末から8月中旬にかけて、河北省の避暑地、北戴河で党長老も参加する党の重要会議があります。習派と反習派が激しく衝突する可能性があります。

ただ、現在は、78年当時と違って、いまの党内の反対派の中に、鄧小平のような軍内でも影響力がある大物政治家がいません。直近で習近平降ろし成功するとはとても思えません。

しかし、そのことがさらに中国内での習近平派と反習近平派の争いを激化させる可能性もあります。

まもなく観光シーズンのピークを迎える北戴河 昨年7月27日

反習近平派は、米国の対中国貿易戦争を習近平叩きに利用することでしょう。ただし、それが功を奏し、習近平を失脚させたとしても、米国による貿易戦争は継続されることでしょう。

なぜなら、米国トランプ政権の今回の貿易戦争の目的は、中国の現在の体制では民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされていないので、そもそも自由貿易などはできない体制であり、この体制を変えさせるか、変えないままであれば中国を経済的に凋落させ、影響力のない存在にすることだからです。

習近平体制であろうが、なかろうが、この米国の路線は継続され、中国はいずれかの道を選ばなければない状況に追い込まれます。

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