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2020年4月3日金曜日

中国で飛び交い始めた「習近平政権ピンチ」の噂―【私の論評】習近平は本当に国賓として日本を訪問できるのか?失脚は十分にあり得る筋書きとなった(゚д゚)!


続々と表面化する習近平政権批判の動き
新型コロナウイルスが発生し感染が拡大した武漢を視察に訪れた習近平国家主席(2020年3月10日)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 習近平がG20の特別サミットテレビ会議(3月26日)で重要演説をし、「ウイルスに国境はない。感染症はわれら共同の敵。各国は手を取り合って立ち上がり、最も厳密な共同防衛ネットワークをつくらねばならない」と、世界に呼びかけた。

 翌日のトランプとの電話会談では、米国に中国側の新型コロナ肺炎対策に関する詳細な経験を紹介し、「米国の困難に陥っている状況を理解している。できる限りの支持を提供したい」と、あのトランプに習近平がいろいろとアドバイスして差し上げたようだ。米国が中国以上の新型コロナ肺炎の感染者を出し、ニューヨークの医療崩壊に直面している中で、習近平がトランプに「助けてあげようか? その代わり・・・」と上から目線で問いかけ、世界のリーダー然として見せた。

 果たして、このパンデミックを契機に米中新冷戦構造の対立が大きく変わるのか。このパンデミックを機に対立が解消され、米中が手を取り合うG2時代の到来を習近平は予感しただろうか。米国の脆弱さが露呈され、習近平の中国に次なる国際社会のルールメーカーとなるチャンスを与えるのだろうか。

 私の希望的観測からいうと、NOだろう。習近平はそのころ、国家主席でも総書記でもないかもしれないからだ。

政権を批判し失踪した「中国のトランプ」

 噂を信じるわけではないのだが、3月12日以来“失踪”していた任志強が釈放された、という情報が3月末に中国のネット上で飛び交った。それが本当ならば、次の党大会で習近平退陣の可能性はかなり強いだろう。

任志強は、中国情勢をそこそこ知っている人ならば心当たりのある名前だ。王岐山が夜中に愚痴の電話をするほどの親友関係だった元華遠集団総裁の共産党員。父親は元商業部副部長まで務めた高級官僚・任泉生で、いわゆる「紅二代」(毛沢東らと共産革命に参加した政府指導部の子弟)だ。

任志強

 中国のドナルド・トランプとあだ名される「放言癖」があり、王岐山という背景がある強気もあって、2016年には、習近平が中央メディアに対して「党の代弁者」であることを要請したことに対して痛烈に批判した。このときの騒動は「十日文革」などとも呼ばれ、それまで反腐敗キャンペーンという習近平政権の主要政策の陣頭指揮をとり習近平の片腕とみなされた王岐山と習近平の関係に亀裂を入れたといわれている。

 任志強はあわや党籍をはく奪されそうになったが、そこは紅二代で王岐山の親友であるから、なんとか回避した。が、表舞台からは退き、趣味の木彫りなどをやりながら隠遁生活をしていた。

 だが2月23日、任志強は米国の華字サイト「中国デジタル時代」に習近平の新型コロナ肺炎対応を批判する文章「化けの皮がはがれても皇帝の座にしがみつく道化」を発表し、習近平の“文革体質”を再び激しい言葉で批判。この文章は中共内部が執政危機に直面し、言論の自由を封じていることが、感染対応任務の阻害になり、深刻な感染爆発を引き起こしたと、批判するものだった。

 何よりも表現が過激で、「あそこに立っているのは、自分の新しい衣服を見せびらかそうとしている皇帝でもなく、衣服すら脱ぎ捨てても皇帝の地位にしがみつく道化である。自分が丸裸であるという現実を隠すために、恥部を隠す布切れを一枚、一枚掲げてみせるが、自ら皇帝の野心にしがみついていることは一切隠さない。私が皇帝になるわけではないが、あなたを滅亡させる決心はしている」「遠くない将来、執政党はこの種の愚昧の中で覚醒し、もう一度“打倒四人組”運動を起こし、もう一度鄧小平式の改革を起こし、この民族と国家を救うかもしれない」などと書いていた。

 “打倒四人組”運動とは、文化大革命を主導し、毛沢東死後も文革路線を堅持しようとした江青、張春橋、姚文元、王洪文の4人を、文革穏健派の華国鋒、李先念ら周恩来系の中間派官僚、王震ら復活幹部グループ、葉剣英ら軍長老グループが連合して電撃逮捕した、「政変」である。これをもって文革は完全に終結し、鄧小平による改革開放路線によって中国は再出発したのだった。つまり、任志強の文章は暗に政変を呼び掛ける「檄文」だった、というとらえ方もある。

 その後、任志強は失踪した。少なくとも3月12日以降、連絡がとれていない。任志強の知り合いは、彼が中国当局に連行されたことを証言している。任志強の親友の女性企業家、王瑛がロイターに語ったところによれば、「任志強は知名度の高い人物で、彼が失踪したことはみんな知っている。責任ある関連機関は一刻も早く、合理的で合法的な説明をしなければならない」という。

習近平を批判する動きが続々と表面化

 今の習近平に政権の座から退場願いたい、と思っているのは何も任志強だけではない。

 3月21日ごろ、ネットでは「緊急中央政治局拡大会議招集の提案書」なるものが拡散していた。これは陽光衛星テレビ集団(香港SUNテレビ)主席の陳平がSNSの微信(ウィーチャット)で転載した公開書簡だった。内容は、「新型コロナ感染により中国経済と国際関係情勢が厳しくなったことを鑑み、習近平が国家主席、党総書記の職務を継続することが適切かを討論する政治局緊急拡大会議を開くべきだ」という。

 提案書は、中国が世界で四面を敵に囲まれている状態での討論テーマとして、次の諸問題を挙げている。

・鄧小平の主張した「韜光養晦」(とうこうようかい:才能を隠して内に力を蓄える)路線について明確な回答をすべきか否か。
・政治上、党が上か法が上か、執政党は憲法を超越できるか? を明確にするか否か。
・経済は、国進民退(国有企業を推進して民営企業を縮小する)か、民進国退(民営化を進めて国有企業を解体していく)か?
・治安維持のために公民の基本権利を犠牲にするか否か。
・民間がメディアを運営することを認めるか?
・司法が独立すべきか、公民が政府を批判していいか、世論監督が必要かどうか、党の政治を役割分担した方がよいか、公務員の財産は公開すべきか否か?
・台湾との関係において、本当に統一が重要か、それとも和平が重要か?
・香港の問題において、繁栄が重要か、それとも中央の権威が重要か、香港の地方選挙完全実施を許してよいか否か?

 提案書は、李克強、汪洋、王岐山による政治局拡大会議指導チームをつくり、会議の各項目任務の責任を負うべきだとした。さらに、「この会議の重要性は、決して『四人組逮捕』に劣るものではない。習近平の政治執政路線に対し評価することの意義は、(華国鋒が失脚し鄧小平が権力を掌握した)十一期三中全会の歴史的意義よりずっと高い」という。

 ここの提案書は、任志強の習近平批判文章に呼応したものとみられる。提案書を出した人物は不明である。紅二代(太子党)が関連していると思われるが、監視が厳しい中国のSNS微信で発信されていることは驚くべきことだろう。

 提案書を転載して拡散した陳平は香港定住者だが、紅二代出身の開明派とみなされる人物。父親は習近平の父親の習仲勲の部下で、習仲勲の深圳視察に同行したこともある。習近平とは40年来の付き合いともいわれ、王岐山とともに1984年の莫干山会議(この会議により経済の改革開放プロセスが一気に推進した)を組織した。この提案書は微信で拡散しただけでなく、実際に中央に提出されたという噂もあった。陳平は「自分が書いたわけではないが、党内でこの意見に賛同するものは少なくない」と語っている。

 武漢で新型コロナ肺炎がアウトブレイクしたのち、習近平の執政路線、政策の過ちを批判する知識人も続出している。

 まず、清華大学教授の許章潤が2月に書いた「怒りの人民はもう恐れない」という文章では、「習近平の統治が中国を世界の孤島に徐々にしている」「30年以上前の改革開放の苦労によって切り開いた開放性が、習近平によってほとんど破壊された。中国の統治状態は前近代状態だ。門は閉ざされ、野蛮な人道的災難が絶えず発生し、中世のようだ」と書いた。許章潤は目下、軟禁状態らしい。

 また憲法学者で公民運動家の許志永は「退任勧告書」を出した。「権力狂人」の習近平は国家統治能力の実力がなく、「妄議罪」(ありもしないことを議論した罪)をでっち上げ、社会における諫言や改善のための意見を許さなくなった、習近平に中国のこれ以上の“安売り”を許さず早々に退任させよ、と主張している。許志永も公安に身柄を拘束されている、という。

 これほどの批判を受けて、習近平も当然、四人組逮捕や第十一期三中全会を念頭において警戒はしているだろうから、外部からはっきりそうとわかる形の「政変」や「クーデター」が起こる可能性は低いに違いない。だが、習近平の党内における責任論が高まり、求心力が急激に弱まっていることはいえるだろう。

中国の感染状況は?専門家の見方

 3月29日に習近平は「企業・工場再稼働」をアピールするために浙江省を視察、このとき地方の村で習近平がマスクをしないで、農民と歓談している様子の写真が配信された。浙江省はまだ感染状況が落ち着いてるとは言いがたい。その中で、あえてマスクをしない習近平は、指導者みずから感染のリスクに身をさらしてみせて、経済回復のために君たちも命をかけろ、と言いたいかのようだ。習近平は2月3日から3月27日まで57回も「企業・工場の再稼働」を指示し、表面上は浙江省は2月末に企業再稼働率98%を宣言している。にもかかわらず、実際の経済の再稼働はなかなか進んでいない。

 実のところ習近平の「大丈夫アピール」とは裏腹に、中央感染予防工作チームトップの李克強はいまだ感染状況について「複雑で厳しい」と言い続けており、党内で中国の感染状況に対する評価が割れている。

 李克強は3月23日の感染予防コントロール会議の席上で、感染状況の各地の報告に隠蔽がある可能性をほのめかせながら、「専門家たちは、この感染症が、かつてのSARSのように突然終息する可能性は低いとみている」と訴え、慎重な姿勢をみせている。1月に李克強が感染予防コントロール工作の指揮を執ることになってから、習近平と李克強の仕事ぶりが党内の間でもメディアの間でも比較され、全体としては李克強の言動の方が評価されているふうに私には見える。

「習近平の退陣決定」という噂は本当か

 こうした党内不協和音の中で、任志強に関する次のような噂がネット上で流れた。

 「アリババの元CEOの馬雲(ジャック・マー)ら民営企業の“5大ボス”が“任志強釈放”を求める連名の意見書を出した」

 「任志強の親友である王岐山が、自分の進退をかけて、任志強を釈放し、習近平に“国家主席終身制”を放棄するように迫った。秋の五中全会(第五回中央委員会総会)で、李強(上海の書記、習近平の浙江省書記時代の党委員会秘書長)と胡春華(副首相)を政治局常務委員会入りさせ、後継者指名することも迫った」

 「任志強は身柄拘束されたが、絶食して抵抗している」・・・。

 3月28、29日にはこんな噂も飛び交っている。「王岐山、王洋、朱鎔基ら長老らが手を組み、習近平に任志強の釈放と、習近平自身の退陣を迫った。習近平は“終身制”を放棄し、李強と胡春華を後継者に認定し、秋の五中全会で2人が中央委員会入りし、次の第二十回党大会でそれぞれ総書記と首相に内定している。そして任志強は釈放された」というものだ。

 その“噂”が本当なら、これは事実上の「ソフト政変」といってもいいかもしれない。四人組逮捕や十一期三中全会のように過激さはないが、ひそやかな形でアンチ習近平派が圧力をかけ、習近平に個人独裁終身路線を放棄させた、ということになる。多くの人たちは、にわかには信じられない、と言っている。ネットではマスクをつけた任志強の写真が流れているので、釈放は本当のようにも思えるが。

 真偽はともかく、国際社会で大演説をぶって、米国にも上から目線の習近平が国内では、かなり強い圧力を受けて窮地にいるとは言えそうだ。とすれば、来る国際社会の大変局で、中国がルールメーカーの座を米国から奪う局面になったとしても、それは習近平の中国ではあるまい。ひょっとすると、共産党政権の中国でもないかもしれない。

【私の論評】習近平は本当に国賓として日本を訪問できるのか?失脚は十分にあり得る筋書きとなった(゚д゚)!

「習近平政権ピンチ」の噂は、上の記事の内容以外も、中国ではいろいろな方面で囁かれているようです。

新型肺炎の拡大が止まらない先月の中国では、習近平国家主席に異変が起きていたのか。“失脚説”や“コロナ感染説”が飛び交っていました。

SNS上では「#習近平感染」と「#習近平失脚」のハッシュタグがつき、盛り上がっていました。

事の発端は、このブログでもお伝えしたように、1月29日から2月4日まで、習近平が1週間も公の場に姿を見せなかったことです。国営新華社通信は3日、最高指導部が新型肺炎について会議を開いたと報じたのですが、テレビニュースの画面にはアナウンサーの姿しかなく、最高指導部のメンバーは誰も映っていませんでした。

5日、習主席がカンボジアのフン・セン首相と会談したことで、ひとまず“失脚説”や“重病説”は沈静化しています。

習近平が姿をくらますこと自体は、珍しいことではなく、2012年9月15日にも、2週間姿をくらました後で、姿を現しています。中華民国の評論家、経済史研究者黄文雄氏は、これについて「古巣の浙江省に籠もり、反日デモと尖閣強奪作戦を指揮していたようだ」としています。

今回も、いずれかに籠もり、武漢ウイルス禍を奇貨として、何ができるかを検討して、動きだしたのかもしれません。

そのためか、武漢肺炎の拡大自体は、実は習主席にはむしろ追い風になった可能性もあります。中国人民の怒りの矛先は、中央政府ではなく、湖北省や武漢市の役人に向けられているからです。これは、習近平が意図的にそうした可能性があります。

中央政府は、中国人民に、武漢肺炎での不手際を謝罪するどころか、水戸黄門のように、地方役人を叱りつける役回りを演じています。武漢肺炎前からの中国経済の悪化も、新型肺炎を理由にできます。米国に冷戦を挑まれた結果、経済が落ち込み続けて八方塞がりになっていた習近平にとって、おもっても見なかった僥倖かもしれません。

それどころか、このブログにも掲載したように、中国共産党は、最近はもっぱら「ウイルスとの戦いにいち早く勝利した中国」が、パンデミックと戦う世界各国の模範となり、救世主となる、という大プロパガンダを展開中です。今や世界で一番安全なのは中国国内で、感染源になっているのは欧米だ、というわけです。

中国、イタリア支援の医療チーム第3陣を派遣

これに対して米国は「ヒーロー気取り」の中国に対してこのブログでも解説したように、怒りの鉄槌を下そうとしています。

米国連邦議会の上院のジョッシュ・ホーリー議員(共和党)、下院のセス・モールトン議員(民主党)、エリス・ステファニク議員(共和党)ら約10人の超党派議員グループは3月23日、コロナウイルス感染症に関して中国政府の責任を法的に追及し、感染の国際的拡散によって被害を受けた諸国への賠償支払いを求める、という趣旨の決議案を上下両院に提出しました。

同決議案に署名した1人、ジム・バンクス下院議員(共和党)は議場での発言で、中国の責任追及のためには、単なる決議ではなく、米国として強制力を持つ法律を作って、中国政府への損害賠償を法的に迫るべきだという提案を明らかにしました。

それは以下のような提案でした。
全世界に被害をもたらした中国政府の法的な責任を明確にして、中国に賠償金を支払わせる方法として、第1には、中国政府が保有する莫大な額の米国政府債券の一部を放棄させる方法、第2には、中国からの輸入品にこの賠償のための特別な関税を新たにかけて、「コロナウイルス犠牲者賠償基金」を設けさせる方法、などが考えられる。
こうした方法の実効性は現時点では不透明ですが、米議会にここまで具体的な中国政府への賠償請求の動きが広がっていることは注視すべきです。

米国をこのように激怒させ、具体的に賠償責任を追求する姿勢をとらせたのは、習近平の大きな誤算だったかもしれません。これでは、中国内で批判されるのは当然といえば当然です。

中国人民が中央政府に対して声を上げるとしたら、コロナウイルスの感染拡大が収まった後でしょう。いまはまだ身を守るのに精いっぱいです。ただし、中国政府は武漢肺炎は終息しつつあるとしてますから、これが本当なら、そろそろ各地で頻繁に暴動が起こるかもしれません。

冒頭の元記事では、「アリババの元CEOの馬雲(ジャック・マー)ら民営企業の“5大ボス”が“任志強釈放”を求める連名の意見書を出した」というのが本当だったとすれば、これはかなり習近平政権が深刻な事態に陥っているとみるべぎす。

私はジャック・マー氏のアリババ退任の裏側について、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
アリババ創業者突然の引退宣言、中国共産党からの「身の危険」…企業家が次々逮捕・亡命―【私の論評】習近平がすぐに失脚すると見誤った馬会長の悲運(゚д゚)!
Forbsの表紙を飾った馬雲会長

この記事は、2018年9月13日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、マー氏のアリババ退任の裏側を私が分析した部分を掲載します。
おそらく変わり身の早い馬雲氏は、様々な出来事から判断して、習近平はすぐにも失脚すると踏んだのではないかと思います。実際7月には、上記にも掲載したように、習近平周辺で様々な異変がありました。 
習近平が失脚するとなると、上記のように習近平と近い関係を保ってきたことが今度は裏目に出ます。今度は、反習近平派の江沢民派などと、手を組まなければ、中国内ではうまく商売ができなくなります。 
だから、まずは"サウスチャイナ・モーニングポスト"あたりで、習近平を批判させ、さらに様子を見て、徹底的に批判しようとしたのでしょう。そうして、なんとか反習近平派に取り入る機会をつくろうと画策したのでしょう。 
しかし、習近平は意外にしぶとく、少なくともここ1年くらいは失脚することはありえないというのが実体なのでしょう。 
ここを馬雲会長は、見誤ったのでしょう。そのため、習近平側からの報復を恐れて、はやばやと引退する旨を明らかにしたのでしょう。以前はこの変わり身の速さが、馬雲を救ったのでしょうが、今回はこれが災いしたようです。
マー氏(馬雲氏)が、かなり変わり身が早いのは事実です。というより、中国では権力構造が変わるときに、乗り遅れれば企業は事業を円滑に継続することはできません。だから、優れた経営者ほど権力構造の変化には、敏感すぎるほど敏感です。

もし、権力構造の変化に乗り遅れた場合、会社を放逐されるのは当然としても、命を失う可能性も否定できず、敏感になるのは当然といえば、当然です。

この変わり身の早いマー氏が、「“任志強釈放”を求める連名の意見書を出した」ということが本当であれば、近いうちに中国で権力構造の変化があるかもしれないことが俄に現実味を帯びてきたといえると思います。

過去、中国の王朝は、疫病の流行で崩壊しています。習主席は人民の不満を最後まで抑えられるのでしょうか。私としては、中国共産党が崩潰するまでのことは、すぐにはないとは思いますが、少なくとも習近平の失脚は多いにありえると思います。

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2020年2月4日火曜日

「新型肺炎」と「鳥インフルエンザ」、どっちが怖い?―【私の論評】この4月に日本を訪問する習近平は、失脚の可能性を自ら高めている(゚д゚)!



中国発の新型肺炎がどんどん広がっている。新型コロナウイルスによるものだといわれている。本書『知っておきたい感染症―― 21世紀型パンデミックに備える』 (ちくま新書)は近年たびたび世界を揺るがしている厄介な感染症について手際よくまとめた解説書だ。未然に防ぐために私たちは何をするべきなのか? 副題にもあるように、今後さらに強力な感染症が出現した場合、膨大な犠牲者が出て全世界が未曽有の大混乱に陥りかねないと警告している。

 著者の岡田晴恵さんは1963年生まれ。専門は、感染免疫学、公衆衛生学。ドイツ・マールブルク大学医学部ウイルス学研究所、国立感染症研究所研究員などを経て、本書刊行時の肩書は白鷗大学教育学部教授。『人類vs感染症』 (岩波ジュニア新書)など感染症関連では多数の著書がある。今回の新型肺炎に関してもメディアにしばしば登場している。
症状が重篤で致死率が高い

 エボラウイルス病、二つのタイプの鳥インフルエンザ、SARS、MERS、...本書は主にこれら新しいタイプの感染症を軸に、デング熱や破傷風・マダニ感染症などについて、それぞれ一章を設けて詳述している。いずれもこの20年ほどの間に世界や日本を震撼させた感染症だ。

 中でも著者が怖さを強調するのは「H5N1型鳥インフルエンザ」だ。これこそが人類史上最悪のパンデミックを引き起こす可能性があるという。

 すでに1997年、香港で発生して18人の感染者のうち6人が死亡した。香港政府は、人への感染源とされた家禽140万羽をわずか3日間で殺処分するなどして、人への感染を絶った。ただし、この火種となったウイルスはその後も中国南部の野鳥などに存在し続け、2003年以降も世界各地の鳥に飛び火して流行が続いているという。15年までに人の感染者844人、死者449人が報告されている。散発的に発生しているので、大きく報じられることは少ないが、鳥から人への感染が続いているということであり、不気味だ。

 このウイルス感染の最大の特徴は、症状が重篤で致死率が高いこと。通常の季節性インフルエンザとは性質が全く異なる。全身の臓器がやられる。もしも感染が拡大すると、各国の社会機能や経済活動が麻痺状態に陥り、地球規模の危機となる。そのため国際機関と各国の農業行政当局は、鳥における流行の制圧と新型インフルエンザの発生を阻止する行動を続けている。日本でもH5N1型鳥インフルエンザが発生するたびに、大量の家禽を処分するなどの緊急対応がとられてきた。つい最近も中国・湖南省の養鶏場で発生、すでに約1万7千羽を殺処分したことが報じられている。

 H5N1型でパンデミックが起きた場合、2億人前後の死者が推定されているという。

遺伝子の突然変異を起こしやすい

 鳥インフルエンザは、もともとは鳥を宿主とするので人には感染しにくい。ところがインフルエンザのウイルスは、遺伝子の突然変異で、その性質を変化させやすい性質を持つ。変異は一定の割合で起きる。鳥の間で感染が拡大すれば、ウイルスが増殖するから変異ウイルスも増える。「人型」のウイルスが出現することがあるのだ。そうなるともはや鳥型のウイルスではなくなり、人に感染する「新型インフルエンザウイルス」になる。人はこのウイルスに対する防御免疫機能を持っていないので、感染すると重症化しやすいというわけだ。

 インフルエンザウイルスには多数の種類がある。たいがいは「弱毒型」。ところが、その中で「H5亜型」「H7亜型」は「強毒型」に変化する可能性がある。したがって「H5亜型」「H7亜型」の鳥インフルエンザが見つかった場合は、その段階では弱毒型でも、強毒型に変化する可能性があるので厳しい措置が取られることになる。

 強毒型に感染した家禽は1日か2日で100%死ぬ。しかし不思議なことに、水禽類(カモ、アヒル、ガン、ハクチョウなど)の多くは感染してもほとんど症状が出ないのだという。その理由はわかっていないそうだ。

 本書では、もう一つのタイプの怖い鳥インフルエンザ「H7N9型」についても一章設けて詳述している。

 ウイルス変異の仕組みはなかなか難しい。本書で詳しく説明されているが、先日、BOOKウォッチで紹介した『猛威をふるう「ウイルス・感染症」にどう立ち向かうのか』(ミネルヴァ書房)はカラー図解入りなのでわかりやすい。

「クラミジアによる肺炎」と発表

 新型肺炎との関連では、「SARS」が再び注目されている。ともにコロナウイルスとされ、中国が震源地。SARS は2002年11月から03年6月までに32か国で感染者8098人、死者774人の被害が出た。原因とされるSARSコロナウイルスは21世紀になって最初に流行した新型ウイルスだった。

 発生後、中国当局の対応は鈍かった。03年2月中旬になって、ようやく広東省における「非定型性肺炎」の流行を認め、病原体は「クラミジア」と発表した。

 しかし、香港では早くから「新型インフルエンザ」ではないかと心配の声が出ていた。ベトナムや台湾、シンガポールなど各地で類似の患者が見つかったこともあり、WHOが調査団を中国に派遣、3月中旬に「SARS」(重症急性呼吸器症候群)と命名、4月になって病原体は新たなコロナウイルスだということが特定された。新型インフルエンザではなかった。

 不思議だったのは、中国滞在経験がない人も感染していたことだった。のちにその理由がわかる。感染者の共通項をたぐると、いずれも同時期に香港の同じホテルの9階の部屋に滞在していたのだ。その後の調べで、当時この9階に、中国で問題の肺炎治療にあたっていた広州の医師が宿泊していたことが判明する。激しくせき込み、高熱を出していた。この医師はその後SARSと診断され死亡している。

 中国政府が情報を隠蔽したとか、後手に回ったともいわれるが、「新型」ゆえにWHOをはじめ、各国の専門家らも戸惑ったようだ。

 SARSウイルスは中国南部のコウモリが元々の宿主。それが何かの拍子に中間宿主を経て、人に侵入したとみられている。そして、重症肺炎を引き起こす新興感染症になった。その後の研究では、サル、ネズミ、ネコ、ハクビシンなどはSARSコロナウイルスの感染を受けてもほとんど発病しないことがわかった。さらに中国南部で野生動物を扱う人たちについて調べたところ、約20%がSARSもしくは類似ウイルスの抗体を持っており、彼らも発病しないか、軽傷ですんでいたという。不思議なウイルスだ。

韓国でも被害

 その後に発生した類似の感染症にMERSがある。2012年にサウジアラビアで第一例が見つかり、16年1月までに感染者1626人、死者が少なくとも586人。ウイルスの名称はMERSコロナウイルス。韓国での感染者186人、死者38人が目立った。最初の患者に、サウジアラビア滞在歴があった。

 MERSコロナウイルスは、ヒトコブラクダが人に伝播させたとみられている。ラクダ飼育者は、このウイルスの抗体を持つ率が高く、軽症で推移する場合が多いらしい。かつて中東の人は幼少のころからラクダと共生していたが、都市化が進み、ラクダと接しない人が増えたこととの関連が想定されている。

 動物はそれぞれ特有のコロナウイルスを持つ。人間の場合も、普通の風邪の5%は人のコロナウイルスによるものだという。通常、コロナウイルスは動物の種の壁を越えて感染することはほとんどないが、ウイルスの突然変異によって、種を越えるようになる。今回の新型肺炎の詳細は不明だが、似た経路をたどったのだろうか。

 近年の新種の感染症流行の背景には、交通網の発達や急激な都市化の影響があるとされる。エボラウイルス病はアフリカのごく一部の地域の風土病だったが、僻村と都市との交流が進んだことから疫病が都市部に波及、世界に拡散した。

 かつてインディアンやアイヌが、「文明社会」と接したことで、未知の病気を持ち込まれ苦しんだことはよく知られている。BOOKウォッチで紹介した『鎖塚――自由民権と囚人労働の記録』(岩波現代文庫)によると、明治政府は北海道の開拓で、樺太アイヌ人を動員しようとしたが、コレラや天然痘で大量の病死者が出たことなどから無理と判断、囚人に切り替えたそうだ。

 SARSやMERS、エボラ出血熱はその逆の話のような気もする。これからも「文明社会」が未知のウイルスと遭遇し、混乱に陥る可能性が大いにありそうだ。地震や噴火などの天変地異、核管理、温暖化などと並んで、感染症に対しても備えが必要だと痛感する。すでに医療や畜産関係者の間では周知のことと思われるが、政治家や行政一般、マスコミ関係者も日ごろから知識を深めておくべきだろう。本書はその一助となる良書だ。

【私の論評】この4月に日本を訪問する習近平は、失脚の可能性を自ら高めている(゚д゚)!


中国農業農村部(日本の農林水産省に相当)は2月1日、湖南省邵陽市の養鶏場で、ニワトリがH5N1型の鳥インフルエンザウイルスに感染しているのが確認されたと発表。この養鶏場には7850羽のニワトリが飼育されていましたが、そのうち4500羽がウイルスに感染して死亡したといいます。同省は「地元当局が感染の確認を受けて、予防的に1万7828羽を殺処分するなど、感染が広がらないよう処理をした」ことを明らかにしました。

冒頭の記事では、「H5N1型鳥インフルエンザ」こそが人類史上最悪のパンデミックを引き起こす可能性があるとしています。「H5N1型鳥インフルエンザ」のほうが、危機なようです。

米国疾病管理予防センターによると、鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染した例は2003年から19年の16年間で、世界中で計861例が報告されています。その原因となっているのは、養鶏場などで働いていて、感染したニワトリと密接に接触したためであることがほとんどです。致死率は50%以上と極めて高く、感染した861人のうち、455人が死亡。中国だけでは過去16年間に53件の鳥インフルエンザ感染が報告されており、31人が亡くなっているといいます。

これに対して、2002年から03年にかけて流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の場合、感染による致死率は約10%。武漢が発生源の新型コロナウイルス感染の場合は約2%となっており、これらに比べるとH5N1型の鳥インフルエンザウイルスによる人間への毒性は極めて強力なことがわかります。

同センターは「ヒトからヒトへの感染はほとんど報告されていない」としていますが、中国では一緒に生活していた「きょうだい」や「親子」間での感染が原因で死亡したケースも報告されており、鳥インフルエンザが今回の新型コロナウイルスのようなヒトからヒトへの感染がまったくのゼロとはいえないようです。

新型コロナウイルスの場合も、中国政府は発生当初には「ヒト・ヒト感染はない」と報告していましたが、感染者の死亡例が増えるにつれて、前言を撤回しています。人間の体内に入ったウイルスが突然変異して、ウイルスの感染力が強くなった可能性も考えられます。

鳥インフルエンザ流行の兆しが見えたことで、中国への国際的な警戒感は強まりこそすれ、弱まることはないです。SARSの場合、02年秋に発生が確認され、感染の終結宣言が出されたのは03年7月でした。このため、SARSのコロナウイルスは暑さに弱いとの見方が強いですが、新型コロナウイルスがSARSと同じ性質かどうかは現段階では不明。これから半年間は油断できません。

新たな鳥インフルエンザの流行で、国際社会の対中警戒感は一層強まることは確実なので、習近平国家主席を最高指導者とする中国共産党政権は、その存立をかけて、年初から大きな危機を迎えているのは間違いないです。

現在、中国で新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大しています。中国動物疫病予防管理センターは、今回の鳥インフルエンザの発生は、中国の公衆衛生資源の負担をさらに増大させると指摘しています。

新型コロナウィルスの肺炎拡大は、もうすでに起こってしまったことなので、起こったもに対する対処しかないわけです。これは、中国をはじめ感染者が出た国々で最大限の努力で封じ込めていただき、なるべくはやく終息させていただきたいものです。

そうして、「H5N1型鳥インフルエンザ」に関しては、中国が全力で人への感染を防いでいただきたいものです。新型肺炎に加えて、「H5N1型鳥インフルエンザ」が人に感染して、蔓延してしまえば、中国はとんでもないことになりそうです。

このような時期に習近平氏らが日本を訪問をしているときに、中国内で政変が起こり、習近平氏を失脚させ、新たな政権を樹立ということも十分起こりえます。

楊潔チ氏

中国の外交担当トップである楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(よう・けつち)中国共産党政治局員が、今月下旬に来日する方向で日中両政府が調整していることが分かりました。

北村滋国家安全保障局長と会談し、4月上旬に予定する習近平国家主席の国賓来日に向け詰めの調整を行います。ただ、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスに対処するため、習氏が来日を見送る可能性も指摘されています。楊氏の来日は、政府がこだわってきた春の国賓来日の有無を左右する重要なポイントになりそうです。

「影響があるとは聞いていない。予定通り準備を粛々と進めていきたい」

菅義偉官房長官は4日の記者会見で、現時点では新型肺炎の問題が習氏来日に向けた調整に影響を与えていないと強調しました。

ただ、習指導部にとって目下の最重要課題は国内での感染の封じ込めです。習氏は当面対応に追われ、とても外遊に出る余裕はないのではないはずです。中国側はメンツがあるので、今の時点では『訪日計画に影響しない』と言わざるを得ないでしょうが、直前でのキャンセルは十分あり得ると思います。

習氏の来日について、政府関係者は「楊氏が来たときの状況次第だ」と慎重な見方も示しています。本来は習氏の露払い役として来日する楊氏がどう対応するのか注目されるところです。

このような時期に、来日すれば、先にも述べたように、中国の反習近平派は、この機会を逃さず、真っ先に人民開放軍を掌握して、新政府樹立に走るかもしれません。今頃、反習近平派は鵜の目鷹の目(ウノメタカノメ)で、習近平の来日日程等を探って、クーデター計画などを練っているかもしれません。



実際中国には、クーデターの噂もありました。習近平が来日中に、クーデターが起こるか、来日から帰国した途端反逆者として逮捕されることも考えられます。そこまで行かなくても、習近平が帰国してから間もなく、政変が起こるということも十分考えられます。

何しろ、これだけ酷い伝染病の蔓延しているさなかに、苦しんでいる人民を尻目に、日本で国賓待遇を受けるといういうのですから、多くの人民の怒りは頂点に達することでしょう。場合によって、人民の憤怒のマグマが、習近平だけではなく、日本に向かって大爆発する可能性もあります。

ただでさえ、中国ではこのブログで以前掲載したように、毎年暴動が10万件も起こっており、それこそ、中国人民や本来外国であるはずの自治区等の人々の憤怒のマグマがいつ大爆発してもおかしくは無い状況です。それが、今回の新型肺炎騒ぎで、さらに頂点に達しています。反習近平派は、当然このような状況も利用するでしょう。

そのような状況にもかかわらず、習近平が日本を訪問するのは、自ら失脚する確率を高めているようなものです。楊氏訪問で、来日時期を延期するのが正常な判断だと思います。

ただし、中国は、香港や台湾に対してかなり強力な工作を行ったにも関わらず、香港の選挙で負け、その後台湾の選挙でも負け、新型肺炎では、当初の対処方法を間違い、国内で蔓延するだけではなく、海外にも患者を発生させてしまうような不手際を繰り返しています。

これは、当然のことながら、習近平の自身の大きな読み違いという側面もあると思います。そうして、習近平の取り巻きは、独裁政権にありがちな、とにかく現実を見るのではなく、上をみて仕事をして、おべっかばかり使っていて、現実が見えなくなっているかもしれません。であれば、習近平は裸の王様で、やはり予定通り来日して、あつさり失脚という道を自ら選んでしまうのかもしれません。今後の趨勢を見守っていきたいと思います。

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2020年1月24日金曜日

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歴史も証明。中国という国を滅ぼしかねぬ新型肺炎という「疫病」

体温検査を受ける武漢を出て列車で移動する乗客。1月23日、杭州市

中国の武漢市を中心に猛威を振るう新型肺炎。1月25日の春節を含む大型連休には億単位の中国人が移動するとも言われ、パンデミックの可能性も囁かれていますが、過去にも中国から多くの疫病が世界に広がったとするのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、中国の「疫病史」を紹介するとともに、現在も複数存在する「中国発の疫病」が世界に広がる要因を記しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年1月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】「中国発パンデミック」はなぜ厄介なのか

新型肺炎、発症者540人超に拡大 死者は17人

中国湖北省武漢市を中心として広がる新型肺炎の感染が止まりません。ついに死者は17人、発症者540人超にも拡大しました。ついにアメリカでも武漢を訪れていた男性1人の感染者が確認されました。中国以外では、アメリカ、日本、韓国、タイで発症者が出ています。WHO(世界保健機関)が緊急事態宣言を出す可能性も出てきました。

死亡率は現在のところ2%でまだ低いですが、これから上昇していく可能性もあります。ちなみに、SARS(重症急性呼吸器症候群)も中国の広東省を発端として各国に広がりましたが、このときは発症者8,096人のうち774人が死亡しています(致死率9.6%)。

Summary of probable SARS cases with onset of illness from 1 November 2002 to 31 July 2003

また、2012年から中東やヨーロッパで発症例が報告され、2015年には韓国でも流行したMERS(中東呼吸器症候群)は、2,494人が発症し、そのうち死者は858人(致死率34.4%)でした。

Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)

これに比べれば、まだまだ致死率は低いものの、前回のメルマガでも書いたように、これから旧正月によって一気に拡大する可能性があります。

また、かつてユーラシア大陸で流行った疫病は、必ずといっていいほど日本に入ってきています。江戸時代には天然痘(疫病)、麻疹(はしか)、赤痢が見られ、このうち天然痘は18世紀前期に大流行。麻疹も同時期に2~3回大流行し、赤痢は18世紀から19世紀にかけて大流行しました。いうまでもなく、中国からの伝染です。

中国では、1880年に広東と寧波でコレラが大流行。翌81年には北京でも大流行しました。この感染経路は、発源地を広東とする2003年のSARS流行とそっくりです。そして、中国でのコレラ大流行直後の1882年10月~11月の中旬、日本でもコレラが大流行することになります。北里柴三郎や初代内務省衛生局長であった長与専斉によれば、その日本侵入経路の起点は中国で、これがまず長崎に入り、そうして日本全国へ広がったといいます。

日本では、これに対処するため、1885年に函館、新潟、横浜、神戸、下関、長崎の港に常設の消毒所を設置。その後、1899年に「海港検疫法」が公布されるなどして、検疫制度が確立していきます。こうした取り組みが中国からの疫病侵入を防ぐ力となったのは言うまでもありません。しかし、一方の中国は、現在に至るまで根本的な対策は取られないままできているのです。

この日本と中国の衛生観念や防疫意識の違いは、台湾にも如実に見て取れます。日本植民地時代の台湾には、疫病の大々的な流行がほとんど見られませんでした。というのも、総督府は1900年代に入ってすぐに、都市計画に始まって衛生教育に至るまでを徹底して実施。北里柴三郎に依頼して、その一番弟子を台湾に呼んでまで、防疫をはじめとする公衆衛生に取り組んできたからです。

それが終戦で一変しました。日本が台湾から引き上げ、かわりに中国軍が台湾に進駐したとたん、すでに絶滅していたはずのコレラ、天然痘、ペスト、チフス、マラリアといった疫病の大流行が台湾全島を急襲したのです。1946年にはペストとコレラの、翌47年には天然痘の大流行に見舞われています。台湾から見た中国人とは、まさに疫病神以外の何者でもありませんでした。

中国でも日本軍が進出した際、地方の農民が大歓迎するケースも少なくありませんでした。それは、日本軍が通過した地方は、かならず伝染病が消えていき、衛生の問題と課題が消えるからでした。

中国の疫病流行は、すでに史前から甲骨文に刻まれています。現在、その甲骨文から確認できる殷周時代の古代人の疫病は約16~20種類もあります。そして、周初から漢代に至る「大疫」(疫病大流行)の記録では、しきりに「死者万数」「人多死」「士卒多死」「其死亡者三分有─」と、多くの死者を出したことを示す文言が繰り返し出ているのです。

中華帝国以後の中国は二千余年間、周期的、加速的に水害、旱魃等の天災に見舞われてきました。そして、旱魃の後に大飢饉が、水害の後に大疫病が発生するというのが、いわば「定番」になっています。歴代王朝の「正史」には疫病の大流行が数年ごとに、時には連年で記録されていることが、それを証明しています。

中国の歴代王朝は、実際には「大飢」や「大疫」によって滅ぼされた場合が多くあります。「大飢」によって生まれた流民が「大疫」の媒介や運び役となって世界へ拡散していくのです。

たとえば明の滅亡については、政治腐敗と、それに蜂起した農民反乱軍によって滅亡したと語られていますが、実は、それだけが要因ではありません。明末には「大疫」や「大飢」が間断なく襲い、餓死者や疫死者が続出。流民、流賊、流寇もあふれていたのです。これもまた、農民が反乱する要因にもなっていました。

ことに明末の万暦、崇禎年間(1573~1644年)には、華北地方で疫病が猛威をふるい、少なくとも1,000万人の死者が出ました。主にペストや天然痘です。明王朝は、実はこの大疫によって倒れたのであり、清に滅ぼされたわけではないのです。

また、黒死病(ペスト)といえば、中世のヨーロッパを襲った恐るべき流行が、史上でもっとも有名で、1348~51年の3年間で、人口の3分の1を死に至らしめています。その伝染経路については諸説があありますが、もっとも有力なのは中国大陸を発源地とするものです。

下の版画はパウル・フュルスト(Paul Fürst)の『Doktor Schnabel vonRom(ローマの嘴の医者)』(1656年)です。

当時はペストの原因として瘴気(悪性の空気)が考えれており、ハーブやスパイスが詰められた この独特のマスクは、ガスマスクの役割を果たしていました。ちなみに、当時の主な治療法は蛭(ヒル)による瀉血でした。


最初に大流行したのは南宋王朝です。この時、南征中だったモンケ・カーン(チンギス・カーンの孫、フビライ・カーンの兄)が病死していますが、その病気がペストだったとも指摘されています。南宋と戦っている間にモンゴル軍に伝染したのです。

このモンゴル軍の遠征を通じて、ペストは西アジア、クリミア、ベネチア、北アルプスを経て北上し、やがて全ヨーロッパに伝わっていきました。

元末の至正年間(1344~62年)の間には、「大疫」だけでも11回も起こっています。中華帝国の人口は、1200年には1億3,000万人いたとも推定されていますが、ペストの大流行によって、すでに1331年の時点で3分の2が死んでいます。ユーラシア大陸の東西ともにペストに襲われ、人口が大量に減ったのです。

また、それより以前、隋の煬帝末期の610年から唐初の648年の約40年間には、7回も疫病が大流行。隋も瘟疫で倒れています。

その他、インフルエンザ系の疫病はSARSに限らず、その発源地はほとんどが中国です。たとえば、1918年の秋に全世界で猛威を振るったインフルエンザ。感染者は地球人口の20~40%にも及び、感染からわずか4ヵ月で2,000万人が死亡し、その死亡率は約2.5%でした。日本でも2,000万人以上が感染し、死者は約40万人に上っています。

これが「スペイン風邪」と呼ばれるインフルエンザで、名称からスペインが発源地であると誤解する人が多いですが、実は、これも中国が発生源でした。そもそもは、1917年に中国の南方で発生したものが、船便を通じて世界各国へと拡散したのです。

中国で医療衛生が制度化されたのは、なんと20世紀になってからのこと。義和団事件後に変法派官僚によって、やっと天津に衛生総局が設立(1902年)されたのです。それも、中国から世界にペストがばら撒かれることを危惧した列強からの強い要請があって、ようやく重い腰を上げたというのが本当のところです。外国人を排斥する大事件が引き金になって、その外国の圧力によってようやく医療衛生が制度化されるという、皮肉な話です。

一方、儒教の影響が現在も色濃い中国では、医師の社会的地位は非常に低いものです。たとえば日本と台湾では、通常、成績がいい学生が大学の医学部へ進みますが、中華の世界ではまったく逆で、成績の悪い学生が医師になるのです。だから、中国では現在も医者は軽んじられる存在なのです。

たとえば、中国では医者に対する患者の暴力行為が頻発しており、「医閙(イナオ)「医傷」などと呼ばれています。その件数は年間数万件にも及ぶため、中国政府は2018年に、毎年8月19日を「中国医師の日」にすることを定め、医者を尊重するよう呼びかけているほどです。

また、2012年の調査によると、臨床医の初任給は1カ月あたり平均2,339元ですが、中国の新卒の平均的な初任給は1カ月あたり3,051元であり、医師と看護師がもっとも低水準なのです(「中国網」2013年10月8日付)。このような状態であるため、誰も医師になりたがらないし、医療体制も低いままなのです。

また、日本のような医療保険制度がほとんど普及していない中国では、高額な医療費のために、病気になっても医者にかからない人民も多い。そのため、疫病が拡大してしまうのです。

もちろん、中国は言論統制の国であり、また、WHOまでもカネの力で牛耳っているため、事実隠蔽が平然と行われ、そのために被害が大きくなってしまうという点も重要です。

このように、中国発の疫病が世界に広がる要因は複数存在しています。日本人にとって、これからもっとも注意すべきは、パンデミックの流行です。中国への渡航、あるいは中国人観光客が多く集まる場所へ出かけていく場合には、十分に気をつける必要があります。

【私の論評】感染拡大で、習近平の国賓待遇での日本訪問は難しくなった(゚д゚)!

約20年前に流行したSARSは当初、ハクビシンが感染源と疑われましたが、現在はキクガシラコウモリが感染源であると考えられています。今回の新型肺炎の感染源は竹ネズミかアナグマ、蛇と説が分かれています。いずれもジビエ(野生の鳥獣食)として食されており、市場での取引を通じて人間に伝染したとの見方が強いです。

キクガシラコウモリのスープ
無論、他国の食文化を単純に否定するつもりはないですが、こうした食文化にも、病気を蔓延させる原因がある可能性ず大きいです。日本では、欧米では食べないクジラや、魚の刺し身を食すという食習慣がありますが、そもそも海産物であること、さらに細心の注意をはらった調理などにより、それが大規模な感染症の原因になったということは聞いたことがありません。

いくら食文化といっても、それが大規模な感染症を招くというリスクがあるなら、中国としてもそのような食文化は廃するか、それが不可能なら感染症を防ぐ方向で議論をすすめるべきです。


      竹ネズミの調理の動画。このくらいの衛生的な環境で調理されるなら
      問題はないのかもしれないが、劣悪な環境下での調理もあり得る

それに中共政府の対応も悪すぎです。もともと中国では、2019年12月の時点で、武漢で原因不明の肺炎患者が出ているとの情報がSNS上で出回っていました。その後も「海外で患者が出ているのに、国内の他地域にいないわけがない」との声があがっていました。

それから1カ月あまりで情報公開が始まったのは遅きに失した感が否めないです。中国の報道機関「財新メディア」は、現地からの報道として「複数の医師が最終的な感染者は6000人を超える可能性があると推計している」と報じました。財新はかつて当局によるSARS情報隠ぺいをスクープして名を馳せたジャーナリストの胡舒立氏が率いる独立系メディアです。

一方で当局寄りの論調が強い「環球時報」も、「武漢の対応の遅さを教訓とし、その他の地方での対応を急げ」という社説を掲げました。「早くから患者の全面隔離を実施し、伝染の経路をふさぐべきだった」と主張し、武漢当局を厳しく批判する内容ですが、こちらは責任を地方政府に押しつけ、中央への波及を防ぐ算段と見えなくもありません。

中国では24日から、春節に合わせた大型連休が始まりました。延べ約30億人が大移動する見込みで、日本など海外への旅行客も700万人を超える見通しです。

中国共産党機関紙、人民日報(電子版)によると、新型肺炎の発症者は24日朝までに31の省・自治区・直轄市のうち29で確認されており、武漢市だけ封鎖しても、新型肺炎が一気に国内外に拡散する危険性があります。

習近平は「(感染防止の取り組みが)非常に差し迫って重要だ」「(感染に関する情報は)直ちに発表しなければならない」と指示していますが、「社会全体の安定を断固として守らなければならない」とも述べており、パニックを阻止するための情報統制を示唆しました。

今後、日本国内で感染拡大・死者発生という事態になれば、初期の封じ込めに失敗した中国のトップ、習氏を「国賓」として歓迎できるのでしょうか。特に、仮に日本でも多くの人々がなくなることがあった場合、その責任者ともいえる人物を国賓として迎え入れるということは、国民感情が許さないと思います。

習近平

これ以外にも、元々中国は尖閣諸島付近の艦船による示威行動がますます過激になっているということもあります。これらをやめたというなら、国賓として迎えるということも筋が通りますが、そうでなければ、日本政府がいかに、丁寧に説明してもどう考えても無理筋です。

安倍首相は22日、衆院本会議での代表質問で、習氏の「国賓」招聘(しょうへい)について「日本と中国は地域や世界の平和と繁栄に大きな責任を有しており、その責任を果たす意思を内外に示す機会としたい」「同時に、中国との間には懸案が存在している。主張すべきは主張し、中国側の前向きな対応を強く求めていく」と語っています。

新型肺炎の拡大は、習氏の「国賓」来日に直撃するのでしょうか。もしそうなれば、無論習近平は国内の疫病の問題を放置して、来日することは許されないでしょう。やはり、常識的に国内に陣取り、疫病対策の陣頭指揮をとるべきです。

仮に、日本で同じようなことがおこったとして、総理大臣がそれを無視して外遊ということになれば、とんでもないことになります。

日本としても、新型肺炎が蔓延している中、その当事者であり責任者でもある元首を国賓として迎え入れるなどということは、常識的にあり得ないです。

新型肺炎をめぐる中国の情報統制のような対応を見る限り、中国は発生国として国際的責任を果たしているとは思えません。習近平が国賓として来日すれば、天皇陛下も含めて日本全体で歓迎しなければならないですが、これまでの経緯もあり、祝賀ムードで迎えることを国民が許すとは考えにくいです。新型肺炎の感染拡大で、さらに習近平の国賓待遇での日本訪問は難しくなったのではないでしょうか。

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