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2020年2月6日木曜日

新型肺炎、ついに中国国内で習近平主席の稚拙な対応への批判高まる…共産党内部や国民から―【私の論評】常軌を逸した習近平の行動は、何を意味するのか?

新型肺炎、ついに中国国内で習近平主席の稚拙な対応への批判高まる…共産党内部や国民から

1月23日、中国共産党の祝賀会に出席する習近平氏

新型肺炎への対応の不備を中国共産党指導部が初めて認めた。共同通信は3日、『習近平指導部、対応の誤り認める 新型肺炎で初動に遅れ』と題する記事を配信。「中国共産党の習近平総書記(国家主席)ら党最高指導部が新型コロナウイルスによる肺炎に関する会議を開き、感染症対応に誤りがあったことを認めた」と伝えた。中国の国家指導部が誤りを認めるのは非常に異例だ。共産党一党支配体制の揺らぎなのか、2日にはYouTube上に感染源となった武漢市に「臨時政府樹立」を訴える動画がアップロードされるなど、中国国内の混乱に拍車がかかっている。

「武漢臨時政府樹立」?

 動画は『緊急直播:武漢臨時政府湖北獨立宣言 605』と題し、2日にアップロードされた。4日正午現在でも視聴可能できた。動画では中国人男性が「武漢でSARSに似たウイルスの情報をネット上に流した医学生8名が警察に逮捕された」などと述べ、新型肺炎に対する中国当局の対応を批判。救援物資の公平な分配、感染予防策の適切な実施など5項目を中央政府に要求した。合わせて、普通選挙の実施、直接選挙による大統領の選出の必要性や、香港、チベットの独立を訴えた。

 この動画が武漢市の市民が作成したのか、語られている内容が事実なのか確認は取れていない。一方で、中国では当局への批判や、共産党の支配体制に対する批判、そして分離主義と呼ばれる「一つの中国」を否定する言論が厳しく統制されてきた。

 そもそも中国政府は「金盾」というインターネット上の検閲システムを使って、中国国内でのYouTubeやグーグルの利用を制限している。ウィーチャットやウェイボーなど中国国内で普及しているSNSではなく、YouTubeという媒体を使って動画が投稿されているため、この動画の信ぴょう性に難はある。一方で政府が動かずに、こうした習近平指導体制を真っ向から批判する動画が2日以上も野放しになっていること自体が異常な感を受ける。

習近平の身に何かが起きている

 中国情勢に詳しい評論家の石平氏は4日、Twitterに以下のように投稿した。

「習近平の身に何か起きているのではないかという観測が出ている。先月28日に彼がWHO事務局長と会談して以来公の場に姿をいっさい現していない。昨日、習が政治局会議を主宰したと報じられるが、テレビ局は会議の映像をいっさい流さないし、今日の人民日報も関連写真を掲載していない。何か変である」

「昨日の中共政治局常務委員会議にかんし、日本の一部報道に『中央指導部誤り認める』が出ている。確かに、会議の公式発表には『疫情対策における欠点と不足』を認めた個所があるが、それが中央政府の問題か地方政府の問題かを明確にせず、中央指導部が自分自身の誤りを認めたことになっていない」

石平氏「習氏の強力な指導者の虚像が崩壊」

 当サイトでは、石平氏に今回の投稿と新型肺炎の対処失敗に伴う習近平指導体制への影響に関して聞いた。

【石平氏の見解】

 今回の新型肺炎拡大の対処失敗で、習近平氏が就任以来7年間、宣伝機関などをフル活用して描いてきた「強力な指導者」の虚像が完全に崩れたと思います。初動対応の遅れや情報の隠蔽などは明らかで、「深刻な状況になってやっと動き出した」というイメージは拭えません。

 1月25日、新型肺炎の対策のための指導小組(対策本部)が立ち上がりました。本来であれば国家主席であり党総書記の習氏がトップになるべきところを、トップに就任したのは李克強首相でした。

 共産党にはさまざまな小組がありますが、習はすべての小組のトップに就任し、権力を集中させてきました。伝統的に本来、首相の李氏が就任するポストの中央財経指導小組ですら、習氏が就任したほどです。

 ところが、国民の生命がかかるまさに国家存亡の事態に際して、その対策の責任者につかないというのは明らかにおかしいです。少なくともこれまで、自然災害や疫病が発生した際、中国共産党のトップは必ず現地に入って最前線で激励してきました。江沢民も胡錦濤もそうでした。ところが、今回はその役目を李氏に押し付け、責任を放棄しました。

 こうした行動に対して、今まで国家主席の任期延長など、習氏の指導に疑問があった共産党幹部や国民の不満が暴発しつつあります。先日、中国中央電視台の生放送で取材を受けた武漢市幹部が党指導部の隠蔽工作を批判しました。また精華大の教授が党の対応を批判する文書を公表するなど、習近平指導部に対する批判の声が高まっています。

 一方で、李氏の評判は高まるばかりです。習氏は7年間、李氏の台頭を押さえつけていましたが、これでそれも終わりです。李氏の仕事ぶりは毎日、報道で伝えられています。

 この状況が続けば、習氏の権威体制に変化が生じてくるでしょう。新型肺炎が小康状態になるまで、共産党内には今回の失態に関して責任を追及する余裕はないでしょうが、ある程度、収まった時期に責任を問う声は上がると思います。少なくとも、習氏の個人独裁体制が崩れる可能性はあると思います。

(文=編集部)

【私の論評】常軌を逸した習近平の行動は、何を意味するのか?

冒頭の記事では、習近平の無責任体制を批判していますが、一方日本では、習近平が2月3日の会議で「初動対応の遅れを認めた。反省を表明するのは異例」という報道がなされて、いますが、これは日本の報道機関による、歪曲報道のようです。

それについては、遠藤誉さんのニューズウィーク日本版の記事で完璧に否定さています。その記事のリンクを以下に掲載します。
習近平は「初動対応の反省をして」いないし「異例」でもない

この記事より、以下に一部を引用します。

"
2月3日に習近平総書記が中共中央政治局常務委員会委員を招集し会議を開催した。筆者は「中共中央政治局常務委員会委員7人」に対して「チャイナ・セブン」という名前を付けたので、この後は便宜のため「チャイナ・セブン会議」と略称することにする。

2月3日のチャイナ・セブン会議で討議された内容は2月4日のコラム<習近平緊急会議の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」>でも述べたが、日本のメディアは異口同音に北京共同の報道<習近平指導部、対応の誤り認める 新型肺炎で初動に遅れ>の線でしか報道していないので、それが如何に間違っているかを、単独に取り上げて考察したい。

以下に示すのは、共同通信の報道をはじめとして日本のメディアが一斉に報道しているチャイナ・セブン会議の内容の中の、根拠としている部分の文章である。

これをご覧いただければわかるように、会議では赤線で囲んだ一文は、その後に書いてある「5つの要」を指している。 

まず、赤線囲みの中を丁寧に翻訳すると「このたびの感染は我が国の統治システムと能力に対する大きな試練だ。われわれは必ず経験を総括し、そこから教訓を学ばなければならない」となる。

そのためには、何をしなければならないかということが、この赤線囲みの下に列挙された5つの「要」である。この「要」とは「~しなければならない」という意味で、政府文書でそのように書けば、「~せよ!」ということに相当する。

要1:今回の疫病伝染対応で露わになった短所や不足に対して、国家応急管理システムを強化し、危機処理能力(緊急・困難・危険という重要任務に対処する能力)を高めよ!

要2:公共衛生環境に対して徹底的にローラー作戦を実施し(しらみつぶしに不衛生な部分を捜査せよ)、公共衛生の短所を補え!

要3:市場監督を強化せよ!どのようなことがあっても、違法な野生動物市場と貿易を徹底的に打撃して取締り、源から重大な公共衛生のリスクを制御せよ!

要4:法治建設を強化し、公共衛生の法治を保障せよ!

要5:システマティックに(系統的に)国家の備蓄物システムの欠点を整理し、備蓄物の効能を高め、肝心な物資生産能力と布陣を向上させよ!

以上である。

この指示のどこに、「初動対応の遅れを反省する」などという言葉があり、またまるで習近平が「謝罪の意思を表明した」ような要素があろうか。
"
これを見る限り、習近平は初動対応の遅れを認めてもおらず、反省も表明していません。「初動対応の遅れを認めた。反省を表明するのは異例」という日本の報道機関の報道は、忖度以外の何ものでもないようです。それも、悪しき忖度です。

私自身は、この期に及んでも、日本への国賓待遇での訪問に固執する習近平が、「初動対応の遅れを反省したり、異例の反省を表明することなどあり得ないと思っていましたが、まさにその通りです。

日本では、ガールズグループ「TWICE」が31日、公式サイトを更新。2月1、2日に東京ドームシティ内で開催を予定していたCDお渡し会を、新型コロナウイルスによる肺炎患者拡大の問題を受けて中止すると発表しました。

ちなみに、「TWICE」は、2015年に韓国で結成された韓国人5人、日本人3人、台湾人1人の9人で構成された多国籍のアイドルグループです。

サイトで「新型コロナウィルスについて、WHO=世界保健機関による『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態』宣言および日本政府が当該感染症を『指定感染症』とする政令について施行日を2月1日に前倒しする方針を示しましたことを受けまして、再度協議をいたしました結果、お客様およびメンバーならびにスタッフの健康および安全を最優先に考慮し、本イベントの開催を両日とも中止させていただくこととなりました」と説明しました。

新型肺炎の影響を鑑み、週末に開催予定の芸能イベントは続々と中止、延期を発表しています。

この日、アイドルグループ「日向坂46」は2月1日開催予定のイベントと、2日に東京ビッグサイトで予定していた握手会の延期を発表。「SKE48」「NMB48」もこの日、2月2日に大阪で予定していた握手会を延期しました。

日向坂46

ハロー!プロジェクト所属の「こぶしファクトリー」も同日、2月1日に予定していたミニライブと握手会の中止を発表しました。

このように、様々なイベントが日本国内でも中止されています。習近平の国賓待遇での来日を実行すれば、天皇皇后両陛下は無論のこと、安倍総理等を含めた日本の政府要人等が、習近平ならびにその随行員などをもてなすことになります。それをもてなすために、それ相当の人数の人々が接遇にあたるわけです。

習近平に天皇皇后両陛下、政府要人、ならびに接遇スタッフの健康および安全を最優先するという配慮ができるなら、今回の訪問は中止するか、延期するのが当たり前だと思います。習近平としては、天皇陛下にも謁見して、日本を味方につけ、何とか苦境を打開したいと目論んでいるのでしょう。

過去においても、現上皇陛下が天皇陛下であった時に、中国を訪問して、当時天安門事件で世界中からそっぽを向かれて孤立していた中国が、日本の天皇を迎えたということで、また世界に受け入れられたということがありました。これは、まさに中国共産党による天皇陛下の政治利用でした。

今回の、習近平の国賓待遇での日本訪問も、まさにこのような政治利用であり、日本ではほとんど報道されていないのですが、このブログで解説したように米中貿易交渉の完全敗北等の失地回復のための方策の一つなのでしょうが、それにしても時期が悪すぎます。

このような危機的な状況の時に一国のリーダーが母国を離れ、他国に国賓待遇で招かれるなどのことがあれば、いずれの国でも、そのリーダーへの信頼は著しく失墜するでしょう。

習近平は、昨年(2019年)9月3日、青年幹部らに重要講話を行っています。その際、習主席は55回以上も「闘争」と言う言葉を使用しています。目下、習主席は、共産党で党内闘争を行っていると見られています。

その原因は(1)一向に改善されない中国経済(2)いつまでも続く「米中貿易戦争」(3)収束しない香港デモ(4)5Gを巡る覇権争いで、ファーウェイ(華為技術)が限界(5)アジアに蔓延する「アフリカ豚コレラ」等が、当時から習近平政権の足を引っ張っていました。それに今年は、新型コロナウィルスの問題が加わったわけです。まさに、習近平政権の危急存亡の時と言っても過言ではありません。

ましてや、中国では、反習近平派が、習近平が来日すれば、その隙きを狙って何をするかもわかりません。クーデターが起きても不思議ではありません。そのような時期に訪日する習近平にはとても常人の常識があるとは思えません。

習近平が、このように社会常識が欠如しているのは、中国共産党という異常な組織に安住して埋没しているからでしょう。中国の歴代の主席の中でも、鄧小平あたりまでは、中国国内の自分たちの常識と、海外の常識は違うということは、認識していたでしょう。しかし、長い間中国の非常識に浸って生きてきた習近平はそうではないようです。

中国共産党は、国内外で非道の限りをつくし、反対するものは、暴力で弾圧し、WTOやWHOなどのような国際組織においても札束にものをいわせ、我が物がを振る舞い、他国の領土(チベット、ウイグル等)にも平気で侵略して我が物にし弾圧し、挙げ句の果てに世界唯一の超大国である米国の怒りを買っています。

そのような中国ですが、実は中国のGDPは虚偽であり、実は日本以下どころか、ドイツよりも下であるという識者などもいます。それも、かなり信憑性があります。

それはさておき、日本が、GDPが米国に次いで、二位と公式に言われていた時代でも、多少浮かれていたところはあったかもしれませんが、中国のような酷い振る舞いは、さすがにありませんでした。

やはり、中共は常識外れです。その中でも、習近平は非常識極まりありません。日本の報道機関も、習近平に忖度するというのなら、日本訪問中にクーデターが発生する危険もありえることなど報道すべきです。そのほうが、よほど習近平の身のためです。

いや、日本のメディアはもうそのようなことは十分承知しているのかもしれません。習近平は相当追い詰められていて、その時期ではないとわかっていながら、日本を国賓待遇で訪問して、事態を打開する以外に道はないのかもしれません。

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2019年6月22日土曜日

【G20大阪サミット】大阪から世界が動く 米中貿易摩擦で歩み寄り焦点 日本、初の議長国―【私の論評】G20前後の安倍総理の意思決定が、安倍政権と国民の運命を左右することになる(゚д゚)!


G20サミット等開催地

主要国の首脳が一堂に会する20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が28、29日、大阪市で開かれる。貿易摩擦、海洋プラスチックごみ問題など、さまざまな課題で議論が交わされ、初の議長国を務める日本の手腕が注目される。会場となる大阪では2025年大阪・関西万博の開催やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を控えており、G20を契機に世界への魅力発信を目指す。一方、市内は大規模な交通規制が行われ、全国から警察官が集まるなど厳戒態勢を敷き、会議の成功へ万全の態勢を取る。


 ■米中貿易摩擦、歩み寄り焦点 日本、初の議長国

 G20大阪サミットでは、米中貿易摩擦をめぐる議論が注目を集めそうだ。対中貿易赤字を問題視するトランプ米大統領は5月、制裁関税「第4弾」として、中国からのほぼ全ての輸入品に高関税を課す準備を開始。中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)への輸出禁止措置も決めた。トランプ氏は大阪で中国の習近平国家主席と会談することを表明、摩擦が緩和されるか注目される。

 世界経済の成長持続もテーマ。その一環として日本はデータの自由な流通を促すルール作りを提案する。

 安倍晋三首相は、消費者や産業活動が生むビッグデータなどへの規制を各国でそろえて広く活用できれば、新たな富を生むと説く。根底には、外国企業に対し、顧客データの国外持ち出しに厳しい制約を課す中国に圧力をかける思惑もある。米グーグルなど巨大IT企業に対する「デジタル課税」の統一ルールの方向性も確認する。

 自由貿易の維持に向け、世界貿易機関(WTO)改革も取り上げるが、各国の主張は入り乱れている。WTO上級委員会が韓国による福島県産などの水産物禁輸を容認したことも踏まえ、日本は紛争解決機能の向上を主張。欧州連合(EU)も機能強化を求める一方、中国の不公正貿易に対するWTOの態度が甘いと批判する米国は上級委の人事を拒むなど議論はまとまりを欠く。

 また、世界で年間800万トンに上るとされる海洋プラスチックごみ問題も議論する。政府はプラごみ削減に向けた「プラスチック資源循環戦略」を策定し、安倍首相も「途上国の支援や実態把握に取り組む」と明言。海洋プラスチックごみの流出元の多くは中国やインドネシアなどで、議長国として問題解決に取り組む姿勢をアピールする。


【用語解説】G20

 先進国と新興国の20カ国・地域が入る国際会議の枠組み。源流はアジア通貨危機後の1999年に開かれた財務相・中央銀行総裁会議。リーマン・ショックの起きた2008年に初めて首脳会議が開かれ、定例化した。日米欧の先進7カ国(G7)のほか、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、南アフリカ、サウジアラビア、トルコ、欧州連合(EU)で構成している。参加国のGDP合計は世界の8割以上、人口は約6割を占める。

【私の論評】G20前後の安倍総理の意思決定が、安倍政権と国民の運命を左右することになる(゚д゚)!

トランプ米大統領は、28─29日の20カ国・地域(G20)首脳会議(大阪サミット)で中国の習近平国家主席と会談したいとの考えを表明しています。しかし現時点では、万一会談が実現しても貿易摩擦解消に向けた進展があるとの期待は乏しいです。

ワシントンと北京の外交官や政府高官などによると、貿易協議が物別れに終わった先月以来、米中両国の関係がとげとげしさを増す一方となっているため、会談を行うための準備作業すら十分ではないそうです。

逆に会談が不調に終われば、両国の関税合戦は激しさを増し、トランプ氏が中国の通信機器大手華為技術(ファーウェイ)と取引する企業の免許を取り消したり、中国側がレアアースの対米輸出禁止に動く可能性もあります。

ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は19日、20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)に先立ち、中国側の対米首席交渉官、劉鶴副首相と会談する見通しを示しました。

ライトハイザー代表は議会で、一両日中に劉鶴副首相と電話で協議した後、G20サミット開催地の大阪でムニューシン財務長官と共に会うと見通しました。


米中通商協議がいつ再開されるかはまだ分からないとしながらも、米国には中国と取り組んでいく明確な意思があると表明。通商合意を得ることは米中両国の国益にかなうとの考えを示しました。

ただし、米中貿易摩擦に関して、G20で何らか解決策が出て、一気に解決するということにはならないのははっきりしています。
米国は昨年夏から秋にかけて、まず対中制裁の第1弾、第2弾として計500億ドル(約5兆5000億円)分の中国産品に25%の追加関税を発動。第3弾として2000億ドル分に10%の追加関税を上乗せし、この2000億ドル分については5月10日、税率を10%から25%に引き上げました。

13日には「第4弾」の対中制裁措置の詳細を発表。対象となるのは3000億ドル分の輸入品で上乗せする税率は最大25%。最短で6月末にも発動可能な状態になる見込みです。

さらに、15日には、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への部品の輸出禁止措置を発動し、関税以外の手段でも締め付けを強化。これに対し、中国は6月1日、米国からの輸入品600億ドル分に対する追加関税率を従来の最大10%から最大25%に引き上げました。

米中互いの対抗措置がエスカレートすれば、短期的には日本企業にもダメージが及びます。

華為の日本企業からの調達額は昨年、66億ドルに達し、今年は80億ドルに増える見通しでした。華為排除の動きが広がる中、同社との取引を停止する日本企業が続出しているほか、第4弾の対中制裁を見据えて中国から生産拠点を移す「脱中国」の動きも出てきた。

「10月時点で海外経済が減速を続けている場合、わが国経済を下押しする影響が大きくなる可能性はある」

日本銀行の桜井真審議委員は5月30日、静岡市での講演で増税の影響をこう分析し、警戒感を示しました。

日本銀行の桜井真審議委員

経済協力開発機構(OECD)は5月21日、世界全体の実質GDP成長率が2018年から縮小し、19年は3.2%、20年は3.4%との経済見通しを発表しました。日本については、19年と20年のGDP成長率をそれぞれ0.7%、0.6%とし、3月の前回予測から0.1ポイントずつ下方修正しました。米中貿易摩擦の影響が大きく、OECDは「持続可能な成長を取り戻すべく、各国政府は共に行動しなければならない」と強調しました。

そのような中、日本が初めて議長国を務めるG20サミットが開かれます。日本は議長国として、機動的な財政政策などを各国に呼びかける可能性が高いです。それにもかかわらず、日本のみが増税すれば、日本発の経済不況が世界を覆うことになる可能性を指摘されることにもなりかねません。

平成28年5月下旬、三重県で開かれた主要国首脳会議(伊勢志摩サミット、G7)で、安倍首相は「リーマン・ショック級」の危機を強調しながら、増税延期の地ならしを進め、直後に延期を正式表明しました。

伊勢志摩サミットで「リーマン・ショック級」の危機を強調した安倍総理

果たして、G20はG7の再来となるのでしょうか。もし今回増税すれば、日本経済は再びデフレスパイラルの底に沈み、内閣支持率がかなり落ちるのは目に見えています。

それでも、増税を実施した場合、安倍政権は憲法改正どころではなくなります。それどころか、野党はもとより与党内からも安倍おろしの嵐が吹き荒れレームダックになりかねません。

まさに、G20前後の安倍総理の意思決定が、安倍政権と国民の運命を左右することになります。

【関連記事】

2019年5月22日水曜日

【国家の流儀】日本企業の多くが中国に買収され、中国人経営者のもとで日本人が働き… それでいいのか? 今こそデフレ脱却に全力を―【私の論評】過去20年にもわたって世界で日本だけが経済成長しなかったことに国民はもっと怒りを顕にすべき(゚д゚)!


安倍総理は消費税増税を強行するのか

「10月に予定されている消費税率引き上げを実施すれば、デフレ脱却が難しくなるだけでなく、日本発のリーマン・ショック級の危機誘発になりかねず、増税凍結が適切だ」

 国際金融の専門家である本田悦朗前スイス大使は16日、ロイターとのインタビューの中でこう述べた。

 たった2%でも消費税増税は、景気に大きなダメージを与える。

 日本自動車工業会の豊田章夫会長(トヨタ自動車社長)は昨年9月20日、「消費税を3%から5%に引き上げた際は国内需要が101万台ほど減り、二度とそれ以前のレベルに戻っていない」と指摘したうえで、今年の消費税増税によって30万台の需要減、経済効果マイナス2兆円、9万人の雇用減につながる可能性があると訴えた。

 買い物をするたびに“罰金”を科すような消費税という制度は、日本のGDP(国内総生産)の6割を占める個人消費を縮小させてきたのだ。しかも、この個人消費の縮小とデフレが地方の衰退を加速させてきた。

 2014年の時点で、国内の企業数は382万社を数えるが、大企業は1万1000社に過ぎない。これまで380万社に及ぶ中小企業が地方経済を支えてきたのだが、このままだと、その3分の1にあたる127万社が25年までに廃業し、約650万人の雇用と約22兆円のGDP(国内総生産)が失われると言われている。実に、就業者の10人に1人が失業する計算だ。

 そこで、政府も事業承継に伴う税負担の軽減など、中小企業対策に力を入れている。アベノミクスに伴う緩やかな景気回復とともに廃業率は低下する一方、開業率は上昇して17年には5・7%と、1992年以来、25年ぶりの高水準に達した(2019年度版『中小企業白書』)。

 ところが、ここで消費税増税に踏み切ると、再びデフレ、つまり「消費税増税→個人消費の縮小→売り上げ減少→雇用や設備投資の縮小と中小企業の減少→地方経済の衰退→失業率の上昇」という悪循環が再発することになりかねない。

 しかも、このデフレの再発は「日本没落への道」なのだ。

 民主党政権の末期の12年4月、日本経団連は「グローバルJAPAN~2050年 シミュレーションと総合戦略」という報告書を出した。この中で、日本経済が今後も低迷するならば、50年時点で「中国、米国、次いでインドが世界超大国の座につく一方で、日本のGDPは中国・米国の6分の1、インドの3分の1以下の規模となり、存在感は著しく低下する」と指摘した。

 日本がデフレ脱却に成功しなければ、いずれ中国の6分の1の経済規模になりかねない。それは「日本の香港化」、つまり日本企業の多くが中国に買収され、中国人経営者のもとで多くの日本人が働くようになることを意味する。

 果たしてそれでいいのか。いまはデフレ脱却に全力を傾けるべきである。

 ■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、現職。安全保障や、インテリジェンス、近現代史研究などに幅広い知見を有する。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞した。他の著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『天皇家 百五十年の戦い』(ビジネス社)など多数。

【私の論評】過去20年にもわたって世界で日本だけが経済成長しなかったことに国民はもっと怒りを顕にすべき(゚д゚)!

世界は過去20年で平均2.4倍の経済成長をしています。その中で20年以上全く経済成長をしなかった唯一の国が日本です。その結果、日本は世界の中で著しく存在感を低下させました。他国と比して国力を維持して行くためには、他国並みの経済成長は絶対に必要です。日本人は国力と経済成長の関係を軽視しているのではないでしょうか。以下国力と経済成長の関係を考えてゆくことにします。

国力とは

国力とは国際関係において、その国が持つ様々な要素を総合したものをいいます。要素として考えられるものは、自然、国民、軍事力、経済力、技術力等であると、ジョージタウン大学のレイ・クライン教授は次のような式を提唱しています。
国力=[(人口、領土)+(経済力+軍事力)×(戦略目的+国家意思)]
これら諸要素の中で経済力が最も重要であると私は思います。なぜなら軍事力の内訳を見ると軍の戦闘能力(兵員数、兵器の性能、兵站基盤等)は経済力と不可分です。最近、チャイナが軍事大国になっていますが、それはチャイナのGDPが急速に拡大し、その経済力が強大な軍事力を生み出していることからも分かります。

技術力について見ると、日本は従来から技術大国でしたが、これを支えていたのは経済力でした。20年間経済成長をしなかった日本は急速に技術力を低下させています。一例を挙げれば各大学への基礎研究費は文科省が決めるのですが、日本が20年間経済成長をしなかったため、その間日本の各大学の基礎研究費は増えることなくむしろ減少しています。

研究開発費の推移 国際比較

上のグラフは「主要国の研究開発費総額の推移:名目額(OECD 購買力平価換算)」を示しています。1996年から2016年までの推移を見ると、米国は35兆円から50兆円と約1.4倍、チャイナは3兆円から45兆円と実に15倍です。EU、ドイツ、フランス、イギリスも着実に増やしています。その中で日本のみが15兆円で殆ど増えていません。10年前の2006年と比べると減少していることがわかります。

この結果、基礎的な研究、例えば、国際的な論文数、特許件数等、国際的技術力評価で日本は劣勢となっています。


分かり易いのが上の表です。引用される頻度の高い論文数の推移ですが、2002年ごろまで日本は世界第4位であったのが、10年後チャイナだけでなくイタリアやスペインにまで抜かれ10位に転落しています。おそらく最近はもっと順位を落としているのではないかと、情けない気分になります。

論文の数に代表される日本の基礎的な技術力は急速に落ちているようです。精神力だけではどうにもならないのです。世界は平均で約2.4倍の経済成長をしており、各国の研究費は数倍に増えている。日本も他国並みに経済成長をして研究費を増やしていかなければ、早晩技術力を失い、先進国から脱落することになるでしょう。

国力とは経済力

誤解を恐れずに言えば、技術力の例でも分かるように、国力=経済力と言っても間違いはないと思います。政治力、外交力、軍事力、技術力、文化力もその根底には経済力があるのです。

つまり国力の最も基盤のところにあるのが経済力なのです。その大事な経済力が日本の場合、20年以上にわたり停滞していたのです。この責任は政治にあるのは当然ですが、一方で国民にもその責任があるのではないかと思います。

日本は民主主義国です。国民に主権があるのだから、政治が間違っていれば国民が声を上げそれを正さねばならないです。経済の本質を国民が理解していれば政府・財務省・日銀や誤れる経済学者らの誤りに気付いて、これを正すことが出来た筈です。

無論、一部の人たちは、これに対して意見を述べたり、抗議をしていました。私はそれを否定するつもりはありません。しかし多くの国民は20年以上声を上げませんでした。国民も経済の本質が分かっていなかったようです。それこそが本当の問題なのでしょう。

豊かさを取り戻そう

経済の目的は経世済民、即ち国民を豊かに幸せにすることです。憲法第13条にすべての国民は幸福追求の権利があり、政治はこれを最大限尊重すべしとあります。その観点から過去20年間の日本の政治を見ると、完全に失敗だったと言えます。

20年間経済成長をしなかったと言うことは、20年間日本国民の所得が増えなかったと言うことなのです。安倍政権になり多少持ち直していますが、それでもピークの時より国民の所得は減少しています。言い換えれば国民は貧乏になっているのです。このことを指摘する識者は少ないです。

国民が幸せに感じるのは、今日より明日、明日より明後日、所得が増えることで実感するのです。日本の政治は20年間、国民からこの豊かさを奪ってきたのです。今からでもよいプライマリーバランスの達成・緊縮財政などと言うインフレ対策をやめ日銀がさらなる金融緩和を実施し、財務省が財政支出を増やし需要を喚起するという正しいデフレ対策を実行すべきなのです。

今年の10月に増税などやっている場合ではありません。そうしてデフレを脱却すれば他国並みに経済成長が可能となります。国力の元は経済力、経済力の指標は経済成長・GDPの増加であることを認識し、財務省や経済学者のいう「国の財政赤字で財政破綻」という大嘘に騙されることなく、正しいデフレ対策を早く実施すべきなのです。一日も早く政治家は勿論のこと国民が目を覚ますことを願ってやまないです。

以下のグラフは世界主要国が過去20年間にどれだけ経済成長をしたか示したものです。チャイナは13倍、インドは5.7倍、イタリア、ドイツは1.4倍、日本は1.0倍であることが分かります。日本だけ全く成長していないのです。このグラフを見て怒りを感じない日本人が多いのには驚きです。



この期に及んで、未だに増税しようなどと言っている政治家や官僚に対して私達はもっと怒るべきなのです。多くの人々が、幸福をなかなか実感できないとすれば、そのほとんどは自己責任ではなく、実はデータが示すように、少なくとも過去20年間については、大部分が政府の責任なのです。日本人は奥ゆかしいところがあり、なかなかそのようなことはいいませんが、現実はそうなのです。

それは以下のグラフ自殺者数の推移からみてもうかがえます。


最近は、安倍政権が成立してから、自殺者数は2万人台ですが、デフレが深刻だった時期は、毎年の自殺者数のが3万人台で推移していました。

経済政策のまずさは、科学技術の発展を遅らせるだけではなく、人の命まで奪うです。これについては、以前このブログにも詳細に掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
“安倍辞めろ”の先にある「失われた20年」とデフレの再来 雇用悪化で社会不安も高まる―【私の論評】安倍首相が辞めたら、あなたは自ら死を選ぶことになるかも(゚д゚)!
自民党候補の応援演説を行った安倍晋三首相=17年7月1日午後
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、ソ連崩壊後のロシア政府の経済政策がまずすぎて、いっとき男性の平均寿命が、57.6歳にまで落ち込んだことがあります。これは、自殺者やアルコール依存症が増えたためです。経済政策のまずさは、人を殺すこともあるのです。

先に、国力=経済力と言っても間違いはないと書きましたが、経済はいっとき悪くなったにしても、極端に悪くならなければ、優秀な人が存在すれば、いずれ復活することはできます。しかし、人がいなくなれば、それもかないません。

ちなみに、冒頭の記事の江崎氏は、日本経済が今後も低迷するならば、50年時点で「中国、米国、次いでインドが世界超大国の座につく一方で、日本のGDPは中国・米国の6分の1、インドの3分の1以下の規模となり、存在感は著しく低下する」という事実をしてきしています。

この中にロシアはでてきません。どうしてかといえば、現在のロシアの経済規模は、かなり縮小して、GDPは日本の東京都を若干下回っているからです。これは、韓国を下回る水準です。このロシアが今後日本をしのぐような経済大国になることはないです。

やはり、人を大事にしなかったつけがまわって来たのではないかと思います。人を大事にするためにも、経済を落ち込ませせるとか、デフレにしてはいけないのです。

なにやら、日本では、デフレが当たり前になってしまっていますが、日本が過去にデフレでさえなけば、日本も他の国々の平均くらいの成長ができたはずなのです。デフレは、通常の経済循環を逸脱した経済の病です。

通常の経済循環では、良い時と悪い時が交互に訪れます。常時良い状態を保つことはできません。しかし、デフレは悪い状態ではなく、明らかに異常な状態なのです。デフレになっても、物価が下がるのは緩慢なので、多くの人々はなかなか気づきませんが、これは人間の病気でいえば癌のようようなものです。放置しておば、徐々に病気が進行して、取り返しがつかないことになります。

放置することは許されません。しかし、過去には放置するどころか、増税したり、金融引き締めをするというとんでもない対処法してきたのです。これは、病人や老人に対して、休みを与えないどころか、過度な運動を続けさせるようなものです。

こんなことをすれば、経済が伸びることはありません。もし少なくとも、日本が他国のような政策をとらなくても、増税や、金融引き締めなどの余計なことをせずに何もしなければ、日本はまだまだ成長していたはずです。日本はデフレから脱却さえできれば、これからかなり伸びるのは確実です。

これらのデータをみれば、これだけ、日本では過去の経済政策の失敗が明々白々なのに、また増税などと誤った政策を実行すれば、日本はまたデフレから脱却できず、同じことの繰り返しになってしまうことは明らかです。そのようなことをさせて良いはずはありません。

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2018年7月31日火曜日

日銀官僚の理不尽な行動原理 金融機関重視する裏に天下り…政策に悪影響なら本末転倒だ―【私の論評】日銀は銀行ではなく日本国民のために、金融政策に集中すべき(゚д゚)!

日銀官僚の理不尽な行動原理 金融機関重視する裏に天下り…政策に悪影響なら本末転倒だ

高橋洋一 日本の解き方

日銀は31日の金融政策決定会合で、「0%程度」としている長期金利の
誘導目標の柔軟化を正式決定した。一定の金利上昇を容認する。写真は
記者会見する黒田東彦総裁=同日午後、日銀本店

日銀は30、31日の金融決定政策会合で、「金融政策を柔軟化する」「緩和長期化が金融機関に与える副作用の対策を検討する」などと報じられた。マスコミ報道で「副作用」といっても、「市場機能の低下」「金融機関経営に及ぼす影響」など抽象的な表現しか出てこないことがほとんどだ。

 「金融機関経営に及ぼす影響」とは、マイナス金利になっていることで、この運用金利では調達金利との利ざやが小さく、金融機関は儲からないということだ。

 「市場機能の低下」と、もっともらしいことをいうが、これも金融機関の儲けがなくなると、金融資本市場がうまく回らないという市場関係者の思い込み(自己保身)に過ぎない。

 実際には、日銀が金融機関から「この金利水準では儲からないから何とかしてくれ」と常日頃、愚痴を聞かされているので、それを「副作用」と表現しているだけだ。「市場機能の低下」は付け足しでしかないのだが、日銀としては金融機関のために金融政策を行うとは言えない建前があるので、市場機能の問題を前面に出して「副作用」を説明してきた。こうした複雑な背景があるので、一般の人には日銀が何を言っているのか理解できないだろう。

 日銀が金融機関を重視するのは、金融政策を行う主体であるとともに、金融機関の監督という準行政的な機能もあるからだ。前者をマネタリー、後者をプルーデンスという。

 実は、日銀内の仕事としてはマネタリーの部分はごくわずかで、多くは「銀行の中の銀行」として金融機関との各種取引を通じたプルーデンスである。プルーデンスは「日銀官僚」が天下るときにも有用であるため、日銀マンの行動に金融機関重視がビルトインされているとみたほうがいい。

 筆者は役人時代、プルーデンスは金融庁に任せればいいという考え方であったが、日銀はプルーデンス重視だった。銀行の収益悪化は、人工知能(AI)対応が遅れたという構造的な側面もあり、必ずしも低金利だけが原因とはいえない。

 プルーデンス重視が、マネタリーに悪影響を与えては本末転倒だ。マネタリーではマクロの物価と雇用だけをみていればよく、ミクロの金融機関経営は考慮されるべきではない。

 報道では副作用対策で日銀内に温度差というが、日銀プロパーはプルーデンスばかり見ているので、外部から日銀に来た人とプロパーの間でマネタリーに対する意見の差があるだけではないか。日銀は「副作用」という言葉で金融機関を支援するのはやめたほうがいい。

 現在でも、日銀は金融機関向けの当座預金に付利している。金融機関による一般事業者向けの当座預金は、臨時金利調整法により無利息であるにもかかわらずだ。日銀の付利により、金融機関は2000億円ほどの小遣いをもらっていることになる。これは、政府特権である通貨発行益の一部を金融機関に移転していることであり、国会での議論が必要だ。いずれにしても、日銀はマネタリーに特化すべきである。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日銀は銀行ではなく日本国民のために、金融政策に集中すべき(゚д゚)!

日銀は、本日の金融決定政策会合の結果を受けて以下の文章を公表しています。以下にその文書のリンクを掲載します。
強力な金融緩和継続のための枠組み強化
この日銀公表文を全部読むと、消費増税もあり物価が上がりそうにないから金利引き上げを(準備)するというふうに見えます。しかしこれでは、ロジックが真逆です。日銀の金融機関擁護の金利引き上げと増税擁護の姿勢を変えなければ、これからも物価がこれからも上がりそうもありません。

物価が上がったから、金利を引き上げるというのが当たり前でというか、これが常道です。日銀は、これからも常道を踏まないつもりなのでしょうか。

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は、マネタリーではマクロの物価と雇用だけをみていればよく、ミクロの金融機関経営は考慮されるべきではない。日銀はプルーデンスではなく、マネタリーに特化すべきとしています。

この日銀は、プルーデンスに注力するあまり、過去においてはマネタリーで大失敗をしています。

GDPの伸び率がゼロだった「失われた20年」

日本はバブル崩壊後、長らくデフレに悩まされ、経済成長率も他の先進国と比して著しく低く「一人負けの状態」が続き、また失業率も高く「失われた20年」とも呼ばれてきました。その要因は何であったかといえば、結論からいえば、バブルという羹に懲りてデフレを長引かせた日銀の誤りによるものです。

①日本のバブル期は、一般的に1987(昭和62)年から1990(平成2)年までを言います。
 この間の経済指標は 経済成長率(実質)が4~5%、失業率が2~2.7%、インフレ率が0.5~3.3%とまったく問題ないレベルであり、「失業する人も少ないし、給与も上がり、みんながハッピー」の「理想的な経済」でした。

東京株式市場は1989年12月29日に3万8916円という過去最高値を付けた

②一方、資産価格である株や土地の価格だけが異常に上昇しました。

バブルとは、「資産価格の上昇」と定義できます。株価は89年末がピーク、地価はタイムラグがあり91年頃がピークとなりました。

③インフレ率が上がらず、株や土地という資産価格だけが上がる場合は、金融政策で見ると何か別の理由があると考えられます。

④その頃、証券会社は税制の抜け穴を利用した「財テク」の営業を行い、株価が異常に上昇していました

当時、大蔵省証券局は、証券会社が損失補填する財テクを営業自粛(事実上の禁止措置)させる大蔵省証券局通達を89年12月26日に出しました。これにより、その年の大納会で3万8915円となった株価は、1990年の終わりにかけて2万3000円くらいまでに下がりました

⑤他方、1990年3月に大蔵省銀行局長通達「土地関連融資の抑制について」が出されました。

これは、不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑える措置(いわゆる総量規制)でした。これにより地価は、その後、下落しました。

上記の④と⑤によりバブルは沈静化していきました。ところが、一方で日本銀行が同じ時期に金融引き締めをしてしまったのです。

今から考えれば、これがバブル処理における最大の失敗でした。この致命的な間違いにわってバブルの後遺症が大きくなったのです。そもそもバブルの原因は金融緩和ではありませんでした。

だから、バブルつぶしのために金融引き締めすることが正しかったはずもありません。資産バブルを生んだ原因は、法の不備を突いた営業特金や土地転がしなどによる資産売買の回転率の高さでしたが、日銀は原因分析を間違え、利上げという策を実施してしまったのです。

日銀は物価の番人ですが、物価に株や土地の資産価格は含まれていません。本来、日銀は消費者物価指数のような一般物価を眺めながら対策を講じていれば良いのですが、株価の値上がりが自分たちの金融緩和のせいだと思ってしまったのです。
ここで公定歩合と日銀の金融引き締めの経緯を辿ってみます。

公定歩合は、1980(昭和55)年8月に日銀が9%から8.25%に引き下げて以来、87年2月に3%から2.5%に引き下げるまで10回にわたり引き下げられました。これは、多分に大蔵省の要請(実態は指示に近い)によるものです。

しかし日銀は、バブル当時の1989年5月に公定歩合を2.5%から3.25%に引き上げ、同年10月も引き上げました。さらに、バブル退治の「平成の鬼平」と言われた三重野康氏が同年12月に日銀総裁となり、就任直後の12月に引き上げ、さらに90年3月にも引き上げました。バブルがほぼ沈静化した8月にも引き上げ、公定歩合は6%となりました。

バブル退治の「平成の鬼平」と言われた三重野康氏

一般物価ではなく、株や土地の値上がりに対しては、日銀ではなく大蔵省や国土庁(現・国土交通省)がまず対応すべきものです。少なくとも、90年8月の利上げは不要だったと言わざるを得ないですが、さらに大きな問題は91年7月に6%から5.5%に下げるまでに時間がかかったことです。

下げのタイミングが遅れると、その後の引き下げは後追いとなって景気が回復に寄与することはありません。このように大蔵省との対抗心から、バブル期に日銀は金融引き締めという間違った金融政策をしました。このような経緯から、かつては大蔵省は金融緩和が好き、日銀は金融引き締めが好き、という本当にバカげた話が語られるようになってしまいいました。

過去にこのような大失敗をした日銀です。銀行に泣付かれてまたまた、マネタリーを間違えるということもなきにしもあらずです。マネタリーは雇用と物価、特に物価の上昇・下降速度をみていれば、間違いようがありません。少なくとも上記のような、とりかえしのつかない「失われた20年」を招いてしまうようなことはあり得ません。

にもかかわらず、日銀は、間違えってしまったのですから、いかに日銀のマネタリーの部分に、プルーデンスの部分が大きく影響していたかを示すものです。

二兎を追う者は一兎も得ずという諺もあります。もともとの日銀官僚は、まともに数字も読めず、20年間も金融政策を間違えてきたのですから、日銀にはそういう体質が深く染み付いていると考えるべきです。政治家や国民がぼんやりしていると、日銀はまた「失われた20年」どころか、「失われた40年」を招いてしまうかもしれません。

これから、ふたたび誤った金融政策が行われないためにも何とかして、日銀を金融政策に集中させ、過去の間違いを繰り返させるべきではありません。

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2018年7月3日火曜日

もはや国民はだまされない「増税で財政再建」という虚構―【私の論評】2014年前後の経済記事を読めば、誰が正しかったかは一目瞭然(゚д゚)!

もはや国民はだまされない「増税で財政再建」という虚構


 2017年度の一般会計税収が、当初見込みを約1兆円上回ると報じられている。だが、メディアの報道は「国債依存は変わらない」「財政再建は厳しい」といった論調に終始している。

 税収が増えた理由は単純で、経済成長したからだ。2017年度の名目国内総生産(GDP)成長率は2次速報値で1・7%だった。

 この名目成長率に対して、税収がどの程度伸びるかを税収弾性値という。財政当局は、この値を「1・1」と見積もっているが、実際の数字は「3」程度である。今回も税収は5%程度も伸びており、やはり財政当局の数字は過小だったことがわかってしまった。

 経済の伸び以上に税収が伸びるのはなぜか。一つは所得税が累進税率であるためだが、もう一つは、それまで赤字で法人税を払っていなかった企業が払うようになるからだ。

 これは、財務省で税務の執行を経験した人なら誰でも知っていることなのだが、税収弾性値の議論となると、かたくなに低めに設定しており、意図的だといわれても仕方ないだろう。

 税収弾性値を低めに見積もるのは、「経済成長しても財政再建はできないので増税が必要だ」とのメッセージだといえる。これに国民は納得しているのだろうか。マスコミをだませたとしても、そのマスコミを信じない人が多くなりつつある。いつまでこの虚構がもつだろうか。

 ほとんどのマスコミは財務省が取材のネタ元なので、はっきりいえば財務省の言いなりである。マスコミとの財務省の関係をみるうえで、今回の報道では別の問題も抱えている。

 16年度の税収は昨年7月5日に発表された。それが17年度の税収見込みは多くのマスコミで6月26日に報じられた。これは、財務省からのリークの可能性がある。

 筆者がその意図を邪推すると、「ちょっと早めに教えるけど、『財政再建はやはり必要だ』と書いてほしい」ということではないだろうか。

 本コラムのように、財政状況について中央銀行を含む統合政府のネット債務残高対GDP比でみるという世界標準のまともな報道は、今の日本のマスコミではほとんどない。

 統合政府のネット債務残高は実質的にほぼゼロであるが、一部の政府関係者は「日銀の日銀券などは債務なので、ネット債務額は450兆円程度あり、筆者の意見が間違っている」と主張しているようだ。

図表、写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 日銀券などは確かに形式的には債務である。しかし、本来無利息、無償還のものであるので、経済的にみて債務にカウントする必要はない。ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授は「日銀の国債保有分は、政府の国債が無効化されている」と表現している。

 そういえば、このスティグリッツ教授の意見もマスコミはほとんど取り上げない。財政当局に対して軽減税率導入などをめぐる恩義や思惑があるのかと勘ぐられることのないように、国民に正しい情報を伝えてほしい。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】2014年前後の経済記事を読めば、誰の説が正しかったかは一目瞭然(゚д゚)!

ブログ冒頭の高橋洋一氏の税収に関する話を整理します。昨年度の国の税収は当初の見込みから1兆円ほど上振れし、58兆円台後半となったということですから、一昨年度の税収が55兆円台だったことからすれば、前年比+5%以上の増加ということになります。

一方で、昨年度の名目経済成長率は+1.7%でしたから、政府が1強程度としている税収弾性値は、昨年度は3を超えたことになります。

昨年度の名目経済成長率が政府見通し(+2.0%)を下振れたのに、税収が見通しを上振れたのには、こうした背景があります。

税収弾性値に関しては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】経済成長なくして財政再建なし 歳出カットのみ主張なら財務省の術中―【私の論評】財務省・内閣府の嘘吐き官僚には、徹底した報復人事を行い、政治主導を達成せよ(゚д゚)!
この記事は2015年5月9日のものです。この記事から税収弾性値に関わる部分のみ以下に引用します。
上の記事で、税収弾性値については非常に重要です。これを良く理解していれば、昨年4月の8%増税など全く必要なく、百害あって一利なしであったということが良く理解できたと思います。 
まずは、税収=名目GDP✕税率✕税収弾性値ということを念頭においていただき、時を金融緩和を実施しはじめた2013年に戻して、考えてみます。 
この時点で平成14年4月から増税など決定せずに、増税をせずに現在まで金融緩和のみを続けていれば、2年連続、毎年名目5%程度の経済成長は十分あり得ました。ここで仮に税収弾性値を3(倍)とすれば毎年歳入の15%、6〜7兆円の増収が見込まれ、二年で消費税5%相当の約12兆円となり今頃増税自体不要になっていたはずです。 
下のグラフ2012年のG7諸国の名目GDP成長率の平均値です。ここからデフレ日本を除いた6カ国平均値は3.3%です。日本もデフレを脱却すれば、当時の△0.6%から3.3%程度の名目成長率は十分可能であったはずです。 
この名目GDP平均値と、税収弾性値として3を用いると、上記で掲載したような名目5%成長前提ほどではないですが、それでも毎年歳入の約10%、4兆円で、二年で8兆円程度の増収が見込めたはずです。これでも、昨年4月の増税など全く必要がありませんでした。

各国の名目GDP成長率 (1997-2012)
出所:IMF WEO Apr 2013 縦軸:パーセント

税収弾性率を低く見積もれば、当然このようなことは考えられないということになります。しかし、現実にはブログ冒頭の高橋洋一氏景気の回復局面では税収弾性値は3~4程度になって、景気が巡航速度に達するにつれて低下し、1・1程度に近くなるとしているように、昨年や今年あたり増税さえしていなければ、少なくとも3くらいにはなっていたはずです。
しかし、財務省も内閣府も弾性値を1.1で計算して、それをもとにして、増税やむなしとし、大増税キャンペーンを繰り返し、政治家からマスコミ、識者まで巻き込んでとうとう、一昨年には昨年4月の増税が決められ、そうして本当に増税され、多くの人々が消費税増税の影響は軽微などとしていたにもかかわらず、昨年はマイナス成長となりました。
財務省は、2014年4月の消費税増税のときも、税収弾性値によるトリックにより、増税しなかった場合の税収を低く見積もり、消費税増税の正当化をはかるということをしていました。

今回も、全く同じような論拠で、10%増税の正当化をしようとしているとしか思えません。

しかし、この税収弾性値によるトリックを論拠の一つとして、実行された8%増税はすでに財務省によって、実行され大失敗したことが明らかになったものです。

野口悠紀雄氏

「消費増税の影響は軽微」と言い募ってきた財務省や御用エコノミストや、野口悠紀雄氏のように「1ドル=120円で日本経済は危険水準」と断言した経済学者は無責任といわざるをえないです。いっさい謝罪も釈明もせず、執筆や講演を続けること自体、私には全く理解不能です。

2014年前後のいわゆる識者という人たちの経済記事など今でも読むことができるものがかなりあります。誰の説が正しかったか、間違っていたか、一目瞭然です。

書籍を購入するのは、経済的負担が多いと思いますし、そもそもトンデモ経済論の書籍など誰も購入したくはないと思いますので、是非とも、グーグルなどで、人名で検索して読むことをおすすめします。トンデモ経済論に関しては、まともに読めば時間の無駄でもありますので、立ち読みで結論部分を読むか、流し読みで十分だと思います。

このような事実を目の前にして、まだ税収弾性値の罠にひっかかる、マスコミは愚かですし、その罠にのりかかって再びトンデモ経済論を語る識者は、何らかの悪意があるとしか思えません。

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2018年6月22日金曜日

財務省に尻尾振る「債券村」のポチ 市場が国債発行催促も… 震災被害最小化には投資が必要―【私の論評】自分たちさえ儲かれば国民など無視する債券村の住人(゚д゚)!

財務省に尻尾振る「債券村」のポチ 市場が国債発行催促も… 震災被害最小化には投資が必要


 国債が品薄で取引が成立しない日が相次いでいると報じられているが、その実態はどうなのか。品不足であれば、国債を出して大阪での地震のような災害対策に使うべきではないのか。

 報道によれば、「取引が成立しない日は、去年は1年間で2日、今年はすでに5日と2倍以上に増えている」という。

 ただし、これは国債の取引を仲介する「日本相互証券」によるものだ。国債はこうした仲介なしで、金融機関間で直接取引されるものもあるので、取引がなくなったわけではない。

日本相互証券株式会社

 実際に取引が少なくなっているのは事実だろう。その理由は、報道のとおり「日銀が大規模な金融緩和の一環として大量の国債を買い入れた結果、いわば品薄になっている」のだ。

 これに対して、専門家の意見は面白い。「取引が低調になると、財政悪化に対する市場の懸念が見逃されるリスクも出てくる」と報道されている。一般に財政悪化は国債を大量発行した際に起きることが多いのに、実際には品不足という滑稽さだ。

 報道でいう専門家とは、いわゆる「債券村」の人で、金融機関で債券を主として扱っている。一般的に景気が良くなると株式が上がり、悪くなると株式が下がる。しかし、債券はその逆である。

 これまでのデフレ期では、株式市場関係者はうだつが上がらず、債券市場関係者は収益を上げて金融機関を支えてきた。ところが、アベノミクスで株式市場が良くなり出すと、今度は債券がダメになった。

 「債券村」は、デフレ期の金利低下が好きで金利上昇を嫌うので、財務省からみれば、財政再建キャンペーンで“ポチ”になる人たちだ。その人たちは、日銀が国債を購入することを「財政ファイナンス」だとして批判、ハイパーインフレになるとも言ってきた。

 財政ファイナンスは、デフレ下で心配するどころか、積極的に行うべきことだ。さらに、ハイパーインフレなど全く起こっていない。これだけでも「債券村」の人が言うことがいかにデタラメだったのかわかるだろう。

 本コラムで主張してきたのは、財政悪化は日銀を含めた統合政府のバランスシート(貸借対照表)で見るということだ。それによれば日本は財政悪化を心配する必要はなく、その結果として、国債品不足になっているわけだ。

 米連邦準備制度理事会(FRB)元議長のベン・バーナンキ氏は、かつて筆者に、中央銀行が全ての国債を市場から買い取ってもインフレにならなければ財政再建ができるという意味で結構なことではないか、と語った。

 報道での専門家は「債券村」で、財務省のポチであるためか、国債が品不足の際の処方箋である国債発行を主張できなくなっている。

 折しも大阪北部で直下型の大きな地震があり、社会インフラに被害が出た。こうした震災被害を事前に最小化するために、将来投資が必要だ。今の低金利環境、国債品不足状況など、まさに国債発行しろと市場が催促している状況だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】自分たちさえ儲かれば国民など無視する債券村の住人(゚д゚)!

論評の前に、現状の最新の経済の状況を振り返っておきます。

家庭で消費するモノやサービスの値動きを見る先月・5月の全国の消費者物価指数は、ガソリンの値上がりの影響などで生鮮食品を除いた上昇率が去年の5月と比べ0.7%上昇しました。


総務省によりますと生鮮食品を除いた先月の全国の消費者物価指数は、平成27年を100とした指数で101.0と、去年の5月を0.7%上回りました。

これはガソリンの値上がりが続いていることや、人手不足に伴う人件費の上昇で、外食のメニューが幅広く値上がりするなどしているためで、消費者物価指数のプラスは1年5か月連続です。

ただ、上昇率は0.7%にとどまっており、日銀が目標とする2%の物価上昇率にはなお距離があります。

これについて総務省は「家電やパックの海外旅行など値下がりしている品目もあるが、ガソリンや電気料金の上昇は続いており、物価は今後も緩やかに上昇を続けるとみている」としています。

一方、生鮮食品のほか電気やガス料金などエネルギーを除いた指数は101.1で、去年の5月を0.3%上回りました。

国債が超低金利でかつ品薄であり、物価目標2%には未だ遠い状況にある現在、国債発行(財出)をし、それを日銀買入するという、いわゆるヘリマネがもっとも実行しやすい時期であることは間違いありません。大規模に実行したとしても、ハイパーインフレになる懸念など全くありません。具体的には、数十兆円でもハイパーインフレになりません。

現在はヘリマネのやり時

さらには、大阪北部で直下型の大きな地震が発生、東日本大震災の復興も未だ完璧ではありません。過去の地震の震災の復興のため、あるいはこれから発生するであろう震災被害を事前に最小化するために、将来投資が必要であり、どう考えてみても、今は長期国債を大量に発行すべきときです。そうして、復興税など廃止してしまうべきです。

経済を良くするために、ただお金をばら撒くということであれば、国民の中にもこれをなかなか納得しない、できない人も存在するでしょうが、地震の復興のためや将来の地震の被害を最小限にとどめるためという立派な大義名分があります。

今はヘリマネのやり時なのです。そうして、これを実行すれば、地震の復興や将来の震災被害を最小限にとどめられるだけではなく、現状ではデフレに舞い戻っても不思議でないほどの状況の日本経済も伸びて、日本経済はデフレから完璧に脱却し再び成長軌道にのります。

債券村の住民はブログ冒頭の高橋洋一氏も指摘するように、「取引が低調になると、財政悪化に対する市場の懸念が見逃されるリスクも出てくる」等と語っていますが、債券市場の取引低調になったといいますが、それは債券村の人々が投資で利益を得られなくなったというだけであり、国民生活には良い影響がででいるだけで、悪いことは一つもありません。

債券村の住民はデフレを維持することで債権市場から利益を得続けることができるわけですが、経済政策は国民生活のためにあるものであり、一部の業界の利権を維持するためにあるのではありません。債券村の住人は、デフレ時代に稼ぎ頭だった夢が捨てられないのでしょう。

債券村ははっきりいえば、ブラック部門と言っても良いくらいです。デフレ状況でしか生息できない哀れな人たちです。いわば、ゾンビのような人たちです。このような連中が、日本の経済を語る資格はありません。

かつて、債券村の住民どもは、これを覆い隠すためにトンデモ経済理論として有名な「人口減少デフレ論」まで持ち出していました。恥を知れといいたいです。利己的であるにも程があると思います。自分たちさえ儲かれば、国民などどうでも良く、気にもかけていない連中です。

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2018年3月5日月曜日

朝日新聞「森友新疑惑」事実なら財務省解体、誤りなら朝日が解体危機か―【私の論評】いずれにしても安倍政権と国民にとっては良いことになる(゚д゚)!

朝日新聞「森友新疑惑」事実なら財務省解体、誤りなら朝日が解体危機か

元役人の眼で問題の本質を解説しよう


高橋洋一

元官僚の筆者が記者から受けた質問

国会が盛り上がってきている。裁量労働問題もそうだが、週明けからは再び「森友問題」が注目されるだろう。

というのも昨日放送のNHK「日曜討論」において、森友学園に関する財務省の決裁文書が「書き換えられた疑いがある」と報じられたことを受けて、野党の一部から「事実であれば安倍内閣は総辞職すべき」との意見も出たからだ。

この書き換え問題について報じたのは、3月2日の朝日新聞「森友文書、財務省が書き換えか 『特例』など文言消える」(https://www.asahi.com/articles/ASL317533L31UTIL060.html)だ。

書き換え問題について報じたのは、3月2日の朝日新聞 写真はブログ管理人挿入

報じられた当初、野党議員からは「財務省自体が吹っ飛ぶような話」(https://www.minshin.or.jp/article/113185)という声が出ていたが、わずか2、3日で「内閣総辞職すべきだ」とまで話が格上げされる重大事案になっている。

本コラムでこれから書く話は、筆者の役人時の経験やそれに基づく推測であり、今の段階で断定的なことは言えないため、多少もどかしいところがあることを理解していただきたい。6日までには財務省が一定の「調査結果」を出すはずであるので、それを読むときの予備知識、とでも考えていただければ幸いだ。

まず筆者がこの報道を見たときに直感したのは、「この報道が事実であれば、財務省解体、万が一事実でなければ朝日新聞解体」ということである(今の段階では朝日新聞の報道が事実であるという確信が持てないため、このような「直感」となった。この理由は後ほど詳しく述べよう)。

はじめに、朝日新聞の報道を要約しておこう。ポイントは、2016年6月14日付けの決裁文書について、国会議員に開示されたもの(https://www.minshin.or.jp/download/37616.pdf)と、朝日新聞が「確認」したものが異なっていたということだ。

例えば、朝日新聞が「確認」した文書では「特例的な内容となる」などの文言があったが、国会議員に開示された文書では、その文言がなくなっていた、と報じられている。

ちなみに、新聞各社はこの文書について情報公開請求をしており、それによって公開されたものは国会議員に開示されたものと同一になっている。

要するに、朝日新聞の「確認」したものは、同じ決裁文書であるにもかかわらず、国会議員に開示されたもの(と、情報公開請求で開示されたもの)と違っていたというのだ。これが、「森友文書、財務省が書き換えか」というタイトルの意味で、朝日新聞は関係者の話を引用しながら「森友学園の問題が発覚した後に、文書が書き換えられた疑いがある」と指摘している。

この問題で、元財務官僚の筆者は各方面から取材を受けた。そのほとんどは「朝日新聞の報道が事実である」という前提での質問であった。

質問の内容は次のようなものだった。

①財務省が、今回のような決裁文書の書き換えを行うことはあり得るのか。実は、よく行われていることなのか②今回なぜこうした財務省の行為が報道されたのか(どうしてこのような情報が漏れたのか)③こうした財務省の行為は、問題があるといえるのか。

この場でも、ひとつずつ答えていこう。

第一の質問であるが、これはまずあり得ない。決裁文書は典型的な公文書であり、その改ざんは、刑法犯の虚偽公文書作成等の罪にもなりうるものだ。これは入省時にもたっぷり説明されるし、そのようなリスクを冒してまで「書き換え」をやろうとは思わないのが、普通の役人である。

筆者の役人経験のなかでも、「書き換え」についてはほとんど聞いたことがない。たった1回であるが、筆者の仕事の関係で、別の省庁とやり取りする中で、対外的な連絡文書において、省庁間での合意事項に反することが書かれていたことがあった。調べてみると、筆者がやりとりをしていた省庁の担当者が苦し紛れに書いたものだったことが分かった。

こちらから「書き換え」があったことを相手省庁の幹部に申し入れると、その幹部は「あやうく虚偽公文書作成等の罪になるところだった」と筆者に感謝を示したうえで、すぐに適切に対応した。そのくらい、公務員の間では公文書の改ざんはマズいこと、と認識されているのだ。

しかも、今回の決裁文書の場合、決裁者が8人もいたことが開示された文書から分かる。この過程で改ざんを行うには、組織的な関与が必ず必要であり、誰か一人でも口外したらバレるので、かなり実行は難しいだろうと思う。

本当なら、誰が「漏らした」のか
第二の質問であるが、もし決裁文書が報道機関に漏れるとすれば、それを持っていた人から漏れるはずだ。では、誰が持っていたかというと①近畿財務局の内部の人、②書類を捜査資料として保有している大阪地検の人、③書類を会計監査資料として保有している会計検査院の人、しか考えられない。
①の場合、正義感のある人や野党労組関係者が朝日新聞に漏らした可能性がある。筆者の現役時代、筆者のいた部署で、ある資料がファイルごと紛失したことがある。その直後の国会質問で、野党からその資料に関する質問があったこともある。資料管理の不適切例としてあげられていたが、内部から「漏れる」ことはあるのだ。
①の場合には、決裁文書であれば、そのコピーが記者に渡っているはずだ。しかし、②と③の場合には、せいぜいが記者に確認のために見せるだけで、コピーは渡らない。
今のタイミングでこの「文書書き換え疑惑」が報道されたのは、厚労省の裁量労働に関するデータの不適切な処理が問題になっているので、いま報じれば効果的と思ったからだろう。実際、書き換えがあったとされるのは、1年前の話。本来であれば、昨年の総選挙の時に出てきたとしてもおかしくない話だ。
第三の質問であるが、改ざんであれば、その個人は当然刑事罰の対象になる。懲戒免職となり、退職金は出ない。もし、組織的にやっていたとすれば、組織の解体まであり得る話だ。
もっとも、普通に考えれば、近畿財務局の人にとって、本省の局長をかばう義理もないし、そんなリスクを犯すこともない。というのは、今回の場合の国有財産売却の事務を行う人は、本省キャリアではなく、財務局採用の人であるからだ。両者は人事上交わることはなく、はっきりいえば無関係な人だ。近畿財務局の人にとって、本省キャリアのために人生をかける人はまずいないだろう。
しかし朝日新聞の報道が事実であれば、財務省にとっては相当な痛手になる。もちろん、財務省はその場合でも、今回の決裁文書は、近畿財務局内の典型的な委任決裁(近畿財務局長が主管部長に任せているもの)であることを理由として、「近畿財務局の問題であり、本省では関知していない」というだろう。つまり、財務省には責任は(ほとんど)ない、というわけだ。
ただし、そうした言い訳は省庁では通じても、政治的にどこまで通用するのか。やはり財務省を解体せよ、という声が出てきてもおかしくないだろう(もっとも、これは財務省内の問題であって、野党が叫ぶ「内閣総辞職」というのは言い過ぎだ。そんなことを前例にしたら、地方部局の改ざん問題で総理を辞めさせることもできる、というとんでもない世界になる)
朝日新聞はなぜ「画像」を出せないのか

さて、ここまでは「報道が事実であれば」という前提で話してきたが、筆者はどうもその点に引っかかっている。というのも、朝日新聞はこれまでの「モリカケ」報道で、信用しがたい報道をしてきたからだ。

「カケ」…つまり加計学園の問題では、文科省内のどうでもいい文書を金科玉条のごとく取り上げて、安倍首相の「意向」疑惑を激しく追及したが、結局空振りに終わった。「モリ」(森友学園問題)でも、当初は「安倍晋三記念小学校」という名前で小学校を建設予定だったとする煽り報道は、「誤報」であったとも指摘されている(たとえば https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180202/soc1802020013-n2.html)。

思い返すと、朝日新聞は加計学園問題で文科省文書を報じたときには、周辺は黒ぼかしで一部しか見えないとはいえ、それでも文書の画像を掲載していた(https://www.asahi.com/articles/DA3S12940810.html)。

しかし、今回の「森友文書書き換え報道」では、筆者の知る限り文書の画像は一切出されていない(3月4日午後11時現在)。「カケ」の時には、文書の画像を出したばかりに、その出所が詮索されたので、今回、画像を出さないのはその対策なのかもしれない。

一方、今回の報道で朝日新聞は文書を「確認した」という表現を使っているのがかなり奇妙だ。普通であれば「入手」と書くだろう。そもそも、記事を書く上で明確な「ブツ」がないと、取材をした記者が原稿を書いても、デスクや上司がその原稿を読んだ時に「どこに『ブツ』(証拠)があるんだ」と言われるはずだ。記者がそれを示せないと、原稿が通らないのが普通である。

そのため、筆者は役人時代、記者から「ブツくれ」「カミ(資料)くれ」と記者から執拗に求められ、辟易したくらいだ(もちろん、筆者が役人時代に記者に撒いたのは、筆者の上司もマスコミに渡すことを了解済みの、毒にも薬にもならない「カミ」であったが)。

情報源との関係で難しいところもあるのかもしれないが、こういう報道の場合、ちょろっとでも文書の画像を出さないと、「ブツ」を持っている(あるいは、最低でも確認した)という説得力にも欠ける。

麻生財務大臣はこの朝日報道について、大阪地検の捜査に影響を与えるおそれがあるとして「答弁を差し控えねばならない」と言ったが、これは朝日新聞が文書の画像を出していないからだろう。その一方で、②大阪地検か③会計検査院がリーク元であるなら、朝日新聞はどうしたって画像を出せないので、それへの牽制球でもあるだろう。

もし文書の画像を出したなら、役人経験のある人なら、その文書が本物かどうかを判別できるかもしれない。役所の決裁文書は、今回のものを見てもわかるが、基本的には複数の人がチェックしている。しかも、紙ベースなので、それぞれの手書きのチェックの痕跡があり、それには人それぞれのクセがある。それをみれば、本物かどうかはわかるのだ。

例えば、今回の決裁文書にはいろいろなところに「点」が打たれているが、あれは痕跡の一つである(次ページの写真参照)。

朝日新聞のいうように文書が書き換えられているのであれば、当初のものと今開示されているものではかなり「痕跡」が異なるはずである。それは、これまでの報道のように画像を出せば、ある程度わかることだ。
どんな決着がつくのか
もうひとつ、現時点で指摘しておきたいことがある。それは、朝日新聞が「確認」したという資料は、もしかすると決裁文書でない可能性もある、ということだ。
というのは、決裁文書は、ハンコが並んだ表紙とその添付資料から成っている。実質的な起案者は、添付資料を複数のバージョンで作成していることがしばしばだ。当該記事を執筆した朝日新聞の記者は、決裁文書でないバージョンを見せられた可能性もある。その場合には、「書き換え」ではなく、他の書類だった、ということになるかもしれない。
逆に、朝日新聞の「確認」した資料が本物であり、情報公開や国会議員に開示した資料が別のもの(書き換えられていたバージョンのもの)であった可能性もある。この場合には、財務省の責任は大きい。
なお、決裁文書では起案者に目が行きがちであるが、実は起案者は最も下の者がなるので、今回の場合には、実質的な起案は、担当管理官(ハンコの文字は読めない)か統括官(池田、と書いてあるのか?)であろう。
クリツクすると拡大します
いずれにしても、財務省は6日(火)までに国会に一定の報告をすることになっている。おそらく、この週末には近畿財務局の関係者すべてから事情を聞いているはずだ。それが(邪推であるが)口裏合わせなのか、朝日新聞への反論集めなのかは、筆者にはわからない。

ただし、朝日新聞社説(https://www.asahi.com/articles/DA3S13384911.html)のように、財務省に挙証責任をかぶせるのはいかがだろうか。朝日新聞も、取材先の秘匿はいうまでもないので難しいのかもしれないが、これまでのモリカケ報道のようにしっかりと「ブツ」の画像を出し、自分の情報ソースの正当性をいうべきではないか。

繰り返しになるが、筆者は今のところ、「報道が事実であれば財務省解体、万が一事実でなければ朝日新聞解体危機」が基本スタンスである。今後の報道と財務省の対応に注視したい。

【私の論評】いずれにしても安倍政権と国民にとっては良いことになる(゚д゚)!

もう一度上の記事の内容を簡単にまとめと私の論評を掲載します。

朝日新聞によれば、契約当時の文書に書かれた森友側との交渉経緯に関する記述や、「特例」などの文言が、国会議員へ開示された文書では削除されていたといいますが、財務省が意図的に書き換えたのが事実とすれば、財務省の担当者は刑法上の公文書偽造等罪に問われることになるので、財務省がこういう書き換えを行うということは、通常ではあり得ません。

契約当初の文書とは違うものを国会議員に開示してしまったなど、担当者である官僚のとんでもないミスである可能性も考えられます。または、朝日が違うものを報道したかです。

財務省内で保管されている契約当時のものとされる文書は、すでに一部が情報開示請求を受けて開示されており、法律に基づいて開示されたものなので、財務省としては、そちらのほうが間違っていたとは絶対に言えません。

国会議員に開示されたものと情報開示請求で開示されたものは同じだという情報もあるので、財務省はどう説明するのでしょうか。ひょっとしたら、朝日の報道がおかしいと説明するかもしれません。

本件について、財務省の官僚が安倍政権への攻撃を意図してマスコミや国会議員に情報を流したという見方もあるようですが、これについてはかなり疑問符がつきます。

どのような経緯で朝日が情報を入手したのかはわかりませんが、そうした官僚による“倒閣”的な動きではないでしょう。もし仮に書き換えが事実であれば、あくまで財務省の一官僚のミスとして処理されるでしょうし、法的に罪を問われるのも官僚個人だからです。安倍晋三首相や麻生太郎財務相は関係ないので、そもそも倒閣運動にはなり得ないからです。

そうして、倒閣運動という意味では、2月に発覚した厚労省による裁量労働制に関する調査データ異常問題のほうが注目されるべきです。厚労省のデータ異常問題は、野党による国会での追及で公けになりましたが、その経緯に疑問を感じます。

通常、厚労省の重要な政策や情報の公開についてはまず、すべて厚労省の労働政策審議会(労政審)に並べられ、調査審議されることになっています。

今回のデータ異常は、この労政審を経ずに閣僚答弁されてから、野党が追及し、野党の部会で厚労省からデータ提供されたものですが、このプロセスは通常ではあり得ません。

そもそも、この調査の企画は旧民主党時代にされていますから、こちらのほうがよほど“官僚による倒閣運動”である可能性を感じます。

いずれにせよ、6日までに財務省から発表される報告の内容が焦点となります。そうして、今のところ私自身は、朝日新聞の誤報である可能性が高いと思います。

いずれにしても、森友学園に関する財務省の決裁文書が「書き換えられた疑いがある」と報じられたことを受けて、NHKの日曜討論で、野党の一部から「事実であれば安倍内閣は総辞職すべき」との意見も出たといいますが、これは全くの問題外の外であり、この野党の意見は橋にも棒にもかかりません。

実際にどのような内容だったのか、以下に一部を紹介します。


NHKの「日曜討論」で、「森友学園」への国有地売却に関する財務省の文書が書き換えられた疑いがあると一部で報じられたことについて、野党側は政府に事実関係を明らかにするよう求め、事実であれば安倍内閣は総辞職すべきだという考えを示しました。 
・これについて、立憲民主党の福山幹事長は「公文書を事後に書き換えることは普通はありえない。別の物が出てきたということになれば大問題で、状況によっては罪に問われる問題になってくる」と指摘しました。 
・そして、野党側は政府に対し事実関係をすみやかに明らかにするよう求めるとともに、文書の書き換えが事実であれば安倍内閣は総辞職すべきだという考えを示しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180304/k10011351221000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_006
相変わらず、無茶苦茶な論理です。極端なことをいうと、犯罪者が一人出たら、その責任は警視庁にあるから、警視庁にあるから、警視総監をはじめ、警視庁全体が辞任せよと言っているのと何も変わりありません。

そこまでいかなくても、企業組織で、財務部の部員が何か間違いをしでかしたら、取締役会で、取締役がその問題をとりあげ、社長と財務部担当の役員と財務部長は無条件で辞めよと言っているようなものです。

無論、これらの人々が、大きな不正に直接関わっているというのなら話は別になるのでしょうが、無条件で辞めろなどと、取締役あたりが、発言すれば、それこそその取締役が解任されるかもしれません。

それに、本当に安倍内閣が辞職したとすれば、また選挙ということになります。そうなると野党はボロ負けすることになります。最初は、一見野党が有利なようにみえても、選挙期間中に事実が有権者に理解されるようになり、それこそ、希望の党があっと言う間に勢いを失ったような状態になることでしょう。

野党は、昨年の「もりとも」問題追求から一歩も進歩していないようです。

それにしても、ブログ冒頭の記事の高橋氏が主張するように、財務省解体か朝日新聞の解体かということになれば、どちらに転んでも、安倍政権は無論のこと、国民にとっても良いことになります。

財務省が解体になれば、10%増税は確実に見送られることになると思います。これによって、市場が好感し、株価もあがり、個人消費も伸びることが期待できます。朝日新聞が、解体ということになれば、朝日新聞が、朝鮮人女性を「強制連行」し、「従軍慰安婦」にしたとの吉田清治の虚偽証言報道を2014年まで30年以上にわたって放置、訂正することがなかったことなどに象徴される、朝日のフェイク暴動に煽られるような人が減ることになります。

本当は、両方とも(ついでにNHKも)解体されるのが、一番なのですが、諺に「二兎を追う者は一兎をも得ず」というのがある通りで、今回はどちらか一方が解体されることを期待したいものです。

これから、どうなっていくのか、まずは6日が楽しみです。

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