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中国産狭胴型ジェット旅客機「C919」 |
中国が同国初となる国産大型ジェット旅客機の受注を2010年の国内航空ショーで発表した時、同国航空事業の転換点となるこのイベントには地元メディアのみが招かれ、欧米の記者は取材を許されなかった。
関係者によると、国産狭胴型ジェット旅客機「C919」は5月5日にも初飛行に臨む見通しだが、今回は外国メディアやバイヤーが大挙して招かれる。今後20年で2兆ドル(約219兆円)が見込まれる世界のジェット旅客機市場での競争に向け、
中国政府がいかに体制を整えているかを示している。
だが、開発着手からほぼ10年、3年の遅延を経て、ボーイング737型機の競合機となるC919とその開発担当は、米ボーイング(
BA.N)と欧州のエアバス(
AIR.PA)が牛耳る世界のジェット機市場にいかに売り込みをかけるか、という正念場を迎える。
「
中国側は価格競争を仕掛けるだろうが、相手の建造スピードはより早く、経験も豊富だ。競争で搾り取られるリスクがある」と、ティール・グループ(米バージニア州)の航空アナリスト、リチャード・アボラフィア氏は指摘する。
C919の開発を担う国有
中国商用飛行機(COMAC)にはいくつか切り札があるという。西側製のエンジンと航空電子工学機器を搭載し、新デザインを起用。パイロット訓練プログラムを始動しており、外国人スタッフを増員。水面下では、中国政府からの強力な支援も受けている、と航空業界幹部は説明する。
まだ確証はないものの、COMACは、自国の巨大な航空機市場と長期的には海外市場の双方において、今後数十年でボーイングとエアバスの独占を脅かす唯一最大の脅威となり得る。C919は、その最初の一歩となる。
中国政府がこの単通路機を後押しすることで、COMCは、世界最速で成長する国内市場において飛躍することができる。とはいえ同社は、世界市場でのハードルの高さは認識している。
「われわれをボーイングやエアバスと比較することはできない。戦略的ステージが違う。(航空機開発という)最初の戦略的課題を解決するのに半世紀かかった。市場攻略という第2の課題を解決するためには、また何年もかかるだろう」と同社広報担当のジェフ・チェン氏は語る。「初飛行の後は、C919とCOMACの市場競争力を高めることに集中しなければならない」
エアバス
中国法人のエリック・チェン社長は、COMACの参入を歓迎。また、ボーイングの中国広報担当者は、C919の開発を祝福した。
<国際的サポート網>C919は、主に
中国政府系の航空会社やリース会社など23社から計570機を受注したが、その内訳を明らかにしていない。それに比べ、ボーイング737最新型機は、昨年1月の初飛行までに3000機以上の受注があった。
ボーイングとエアバスという2大メーカーが大規模受注を実現できるのは、数十年に及ぶコスト削減と市場への売り込みの実績があるからだ。両社は、航空機が故障した場合にいつどこでも対応できる世界規模のサポートネットワークを持つ。運航中の機体が多いため、航空会社も、購入のための融資を取り付けやすい。
中国資本が世界の航空機市場に攻勢をかける一方、COMACは国際航空ショーで比較的目立たない姿勢を取り、C919は国内向けと説明してきた。だが、同社がより積極的な戦略を取り始める兆しも見える。
2007年に初飛行を行ったCOMCの地域路線用小型ジェット機ARJ21のマニュアルは
中国語で書かれたが、C919のマニュアルは、売上を伸ばすため英語で書かれている。
広報担当によると、COMACの営業やサポート部門には50人以上が在籍しているが、エアバスやボーイングと比較するとほんの一部に過ぎない。
とはいえCOMACの本拠地での優位は重要だ。
中国の航空各社は今後20年で航空機7000機近くを主にボーイングやエアバスから購入する見通しで、世界の航空機需要のけん引役となる見込みだ。
「営業担当は
中国政府だ」とある中国系航空会社の幹部は指摘する。「政府が国営航空会社に(COMAC機を)購入するよう指示すれば、その通りになる」
航空業界幹部は、COMACが実際に手付金や契約締結の商談に入れるようになるタイミングは、初飛行だと指摘する。初飛行後も、納入までに何年もの試験が必要になる。
「まだ手付金は支払っていない。(購入)意志を示した段階だ」と、 厦門(アモイ)航空のチャ・シャンルン会長は言う。同社は
中国南方航空(
600029.SS)(
1055.HK)の子会社で、158席のC919を最大50機購入するとしている。
「50機購入を表明したが、実際に欲しいのは30機だ。実際に生産できるか確認しなければならない。COMAC側は非常に熱心で、毎月のように開発状況を説明してくれる」
<安全性は>中国の航空会社2社の幹部は、C919を発注する前に、安全記録を確認し、世界規模のサポートチームを構築してほしいと語る。
航空当局から機体の安全認証を得ることが、C919が国際市場に参入するための最大の課題の1つとなりそうだ。国営メディアによると、C919の価格は一機5000万ドル(約55億円)で、ボーイング737やエアバスA320の半値以下となる。
旅客機として飛ぶのに必要な安全認証を取得するのは、西側の航空機メーカーにとっても容易ではない。航空機の構造がより複雑になり、サプライチェーンも拡大しているからだ。C919が
中国国外で飛ぶために必要な許可を取得できるかは、まだ不確実な部分がある。米国と欧州連合(EU)が、この分野で最大の影響力を持っている。
EUは、
中国当局が行う審査の一部をそのまま認証することで同意したものの、安全認証の発行に向け、EU基準の審査にこだわる部分もあるとみられている。EUは現在、中国の認証基準との違いを検証している。
「まだ手続きは始まったばかりだ」と欧州航空安全局のエグゼクティブディレクター、パトリック・キー氏は語る。米連邦航空局は、コメントの求めに応じなかった。
欧米当局の認証が得られなければ、
中国の認証基準を承認している国にしかC919を売れなくなる。ジンバブエとボリビア、タジキスタンは、過去に中国機を購入した実績がある。
欧米当局の認証がなければ、「先進国や、多くの新興国への売り込みは困難または不可能になる」と航空・防衛関連出版アビエーション・ウィークのブラッドレー・ペレット氏は話す。
これまでのところ、C919を購入する国外勢は、実質的にリース会社のGEキャピタル・アビエーション・サービスだけだ。親会社の米ゼネラル・エレクトリック (
GE.N)は、仏航空宇宙大手サフラン (
SAF.PA)とともに、同機のエンジンを開発した。
「われわれの飛行機が市場に参入し、実際に使われてみて初めて、何が足りないかが分かるだろう」と、COMACのチェン氏は言った。
【私の論評】いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わり高速鉄道と同じ運命をたどる(゚д゚)!
C919は158座席、航続距離4075キロでボーイングB737やエアバスA320と競合する長さです。
中国には今までもMA60というプロペラの国産旅客機がありましたが、「世界で最も危険な旅客機」として有名でした。それについては、以下の記事をご覧になって下さい。
中国製小型航空機で事故多発 中国人「国産怖くて乗れない」
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MA60 |
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部分だけ引用します。
中国の航空機メーカー、西安飛機工業が製造した旅客機「新舟60」が25日、降着装置の異常が表示されたために着陸できなくなった。同機は目的地の瀋陽桃仙空港の上空で旋回を繰り返し、低空飛行をして地上から降着装置が出ていることが確認されたとして、午後8時17分に着陸した。新舟60は4日にも、降着装置の問題で事故を起こしていた。西安飛機工業は航空当局に新船60の一時飛行停止を申請した。中国新聞社などが報じた。
C919はすでに21社から計517機を受注したのですが、全て中国の航空会社と、開発に関わったりした企業からの発注です。
最大航続距離は5555キロでボーイング737に匹敵し、北京や上海からアジア主要都市へ、無着陸で飛行できます。
このクラスの中型機はB737とA320の2機が独占しており、他社が参入する隙が無いようにも見えます。
B737は1967年に初飛行以来、モデルチェンジを重ね3世代で8300機以上を販売したベストセラーです。
最近まで危険な旅客機しか作れなかった中国が、短期間に欧米に匹敵する数値を実現できたのは、驚くべき進歩だと言えます。
しかし、この国産旅客機を開発したのは中国自身ではなく、実質的にはGEなどの欧米メーカーなのでした。以下にC919がどのような部品を用いているのか示すチャートを掲載します。
ほとんどが米国製です。これで、本当に中国国産といえるのでしょうか。このような疑問については中国メディアですら報道しています。以下にそのニュースのリンクを掲載します。
中国の旅客機「C919」 誇るべき国産品か、ただの組立品か=中国メディア
中国商用飛機(COMAC)が開発を行ってきた旅客機「C919」が2日に上海市内でラインオフしたことについて、中国メディアの騰訊は3日、C919は「誇るべき国産品か、それとも低レベルな組立品に過ぎないのか」の見出しで記事を掲載した。
ただし、このようなことは、中国だけのことではありません。たとえば、トランプ米大統領は2月17日、米南部サウスカロライナ州ノースチャールストンにあるボーイングの旅客機工場を視察し、日本でも就航する中型旅客機ボーイング787ドリームライナーを前に「米国人労働者が、米国の工場で、米国製の製品を造ることを望んでいる」と訴え、787旅客機を「夢を実現した」旅客機と絶賛しました。
しかし、787は、日本のほか英仏伊などが参加した国際共同開発機です。海外製部品の割合は7割近くに達する。中でも日本は35%を担当。三菱重工業、川崎重工業、富士重工業の3社が主翼、胴体パネルなどを担当します。
またこの日、トランプ氏が「カーボンファイバーを使っているんだ!」と褒めたように、世界で初めて炭素繊維複合体(日本の東レが製造)を機体の多くに使用し軽量化を実現しました。
トランプ氏は「米国製品を購入せよ! 米国人を雇用せよ!」がキャッチフレーズ。今回、その主張に最適の地を選んだはずでしたが、図らずも日本製など海外製品の優秀性を強調することになってしまいました。
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サウスカロライナ州ノースチャールストンにあるボーイングの旅客機工場を視察したトランプ大統領 |
ただし、これは元々国際共同開発であり、しかも米国が主導して各国をコーディネートして作り上げたものです。そうして、日本のカーボンファイバーなどごく一部を除き、米国でも製造することができるものです。しかし、各国にはそれぞれ得意分野があり、国際共同開発をすることにより、迅速で低コストで実現したものです。
しかし、中国に関して、元々技術水準が低いですから、C919の開発は、このようなこのような国際共同開発に近いようなものではなく、単に中国の技術水準の低さをカバーするためのものであると考えられます。
それを裏付けるものとして、米国製の部品の比重がかなり高いです。
中国は今後20年で約6000機の旅客機を就航させる計画で、一部を国産機で充当する考えを持っています。
6000機の多くは小型から中型機で、C919が1割を占めるとして600機、2割なら1200機は確実に売れます。
エアバスは既に中国に工場を建設し、200機以上のA320を生産しています。ボーイングB737の工場を中国に建設し、300機を生産する計画を発表しています。
エアバスとボーイングに突きつけられた条件が「技術の開示」や「技術移転」「技術協力」なのは確実でした。
自動車でもスマホでもパソコンでも、中国で販売する商品は何でも製造技術を中国に開示しなければなりません。
C919は当初2015年には初飛行している予定でしたが、遅れた原因はアメリカ製の主用部品が届かない事だったと考えらます。
エンジン、航空電子システムといった中枢システムは、GEと中国航空工業集団公司 (AVIC)の合弁会社である昂際航電から納入されました。
787や777-Xに匹敵するシステムだと説明していますが、実際の所はどうだか分かりません。
ところで、中国国内では、C919を哨戒機や電子戦偵察機に改造するとこんな形になるというような画像がネット上で出回っていました。
このようなことは実際あり得ることだと思います。しかし、米側は当然のことながら、部品の中や、他の電子部品やそれを運用するソフト部分に、中国側には知らさない何らかの秘密を持ったままで、中国に提供しているものと思います。
中国としては最初のうちは欧米に儲けさせておき、技術を盗んだら完全国産化して輸出攻勢を掛けるつもりでしょう。しかし、この秘密を解読するのは至難の技のようです。
中国は1970年代から、国産ジェット旅客機の自主開発に取り組んでいました。1992年、国営の上海飛機製造有限公司(上飛公司)と当時の米大手航空機製造会社マクドネル・ダグラス社が40機のMD-90の共同生産の契約を結んだのですが、結局その一基あたりの製造コストは米直輸入のMD-90より1000万ドルも高く、巨額な赤字を出しました。
共同開発ですらこの有様なのですから、中国が部品を安直にコピーしようとしても、そううまくいくとは思えません。
このような観点から、この飛行機が目論みどおりの成果を挙げるか、いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わるのかは注目です。
そうして、いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わる確率が高いように思います。なぜなら、中国は高速鉄道輸出でも結局大失敗しているからです。それについては、以前のこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【ビジネス解読】中国製車両が海外で初の大規模リコール シンガポール都市鉄道が故障だらけ 鉄道受注合戦さらに暗雲―【私の論評】中国高速鉄道には元々安全性に問題!導入すれば大惨事を招くだけ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国の高速鉄道は壮絶な売り込みをして、一見勝利をおさめたように見えた時期もあったのですが、結局失敗しそうです。
中国の高速鉄道の技術は日本の新幹線の古い技術のコピーですが、結局コピーではなかなかうまくいかずどうしても、自主開発の部分がでてくるのですが、その部分はなかなか難しいのでしょう。
以上のようなことから、中国初の大型旅客機は失敗し、欧米2強を脅かすような存在にはならないでしょう。いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わり高速鉄道と同じ運命をたどりそうです。
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