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2017年4月29日土曜日

焦点:初飛行迎える中国初の大型旅客機、欧米2強脅かすか―【私の論評】いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わり高速鉄道と同じ運命をたどる(゚д゚)!


中国産狭胴型ジェット旅客機「C919」
中国が同国初となる国産大型ジェット旅客機の受注を2010年の国内航空ショーで発表した時、同国航空事業の転換点となるこのイベントには地元メディアのみが招かれ、欧米の記者は取材を許されなかった。

関係者によると、国産狭胴型ジェット旅客機「C919」は5月5日にも初飛行に臨む見通しだが、今回は外国メディアやバイヤーが大挙して招かれる。今後20年で2兆ドル(約219兆円)が見込まれる世界のジェット旅客機市場での競争に向け、中国政府がいかに体制を整えているかを示している。

だが、開発着手からほぼ10年、3年の遅延を経て、ボーイング737型機の競合機となるC919とその開発担当は、米ボーイング(BA.N)と欧州のエアバス(AIR.PA)が牛耳る世界のジェット機市場にいかに売り込みをかけるか、という正念場を迎える。

中国側は価格競争を仕掛けるだろうが、相手の建造スピードはより早く、経験も豊富だ。競争で搾り取られるリスクがある」と、ティール・グループ(米バージニア州)の航空アナリスト、リチャード・アボラフィア氏は指摘する。

C919の開発を担う国有中国商用飛行機(COMAC)にはいくつか切り札があるという。西側製のエンジンと航空電子工学機器を搭載し、新デザインを起用。パイロット訓練プログラムを始動しており、外国人スタッフを増員。水面下では、中国政府からの強力な支援も受けている、と航空業界幹部は説明する。

まだ確証はないものの、COMACは、自国の巨大な航空機市場と長期的には海外市場の双方において、今後数十年でボーイングとエアバスの独占を脅かす唯一最大の脅威となり得る。C919は、その最初の一歩となる。

中国政府がこの単通路機を後押しすることで、COMCは、世界最速で成長する国内市場において飛躍することができる。とはいえ同社は、世界市場でのハードルの高さは認識している。

「われわれをボーイングやエアバスと比較することはできない。戦略的ステージが違う。(航空機開発という)最初の戦略的課題を解決するのに半世紀かかった。市場攻略という第2の課題を解決するためには、また何年もかかるだろう」と同社広報担当のジェフ・チェン氏は語る。「初飛行の後は、C919とCOMACの市場競争力を高めることに集中しなければならない」

エアバス中国法人のエリック・チェン社長は、COMACの参入を歓迎。また、ボーイングの中国広報担当者は、C919の開発を祝福した。

<国際的サポート網>
C919は、主に中国政府系の航空会社やリース会社など23社から計570機を受注したが、その内訳を明らかにしていない。それに比べ、ボーイング737最新型機は、昨年1月の初飛行までに3000機以上の受注があった。

ボーイングとエアバスという2大メーカーが大規模受注を実現できるのは、数十年に及ぶコスト削減と市場への売り込みの実績があるからだ。両社は、航空機が故障した場合にいつどこでも対応できる世界規模のサポートネットワークを持つ。運航中の機体が多いため、航空会社も、購入のための融資を取り付けやすい。

中国資本が世界の航空機市場に攻勢をかける一方、COMACは国際航空ショーで比較的目立たない姿勢を取り、C919は国内向けと説明してきた。だが、同社がより積極的な戦略を取り始める兆しも見える。

2007年に初飛行を行ったCOMCの地域路線用小型ジェット機ARJ21のマニュアルは中国語で書かれたが、C919のマニュアルは、売上を伸ばすため英語で書かれている。

広報担当によると、COMACの営業やサポート部門には50人以上が在籍しているが、エアバスやボーイングと比較するとほんの一部に過ぎない。

とはいえCOMACの本拠地での優位は重要だ。中国の航空各社は今後20年で航空機7000機近くを主にボーイングやエアバスから購入する見通しで、世界の航空機需要のけん引役となる見込みだ。

「営業担当は中国政府だ」とある中国系航空会社の幹部は指摘する。「政府が国営航空会社に(COMAC機を)購入するよう指示すれば、その通りになる」

航空業界幹部は、COMACが実際に手付金や契約締結の商談に入れるようになるタイミングは、初飛行だと指摘する。初飛行後も、納入までに何年もの試験が必要になる。

「まだ手付金は支払っていない。(購入)意志を示した段階だ」と、 厦門(アモイ)航空のチャ・シャンルン会長は言う。同社は中国南方航空(600029.SS)(1055.HK)の子会社で、158席のC919を最大50機購入するとしている。 

「50機購入を表明したが、実際に欲しいのは30機だ。実際に生産できるか確認しなければならない。COMAC側は非常に熱心で、毎月のように開発状況を説明してくれる」

<安全性は>

中国の航空会社2社の幹部は、C919を発注する前に、安全記録を確認し、世界規模のサポートチームを構築してほしいと語る。

航空当局から機体の安全認証を得ることが、C919が国際市場に参入するための最大の課題の1つとなりそうだ。国営メディアによると、C919の価格は一機5000万ドル(約55億円)で、ボーイング737やエアバスA320の半値以下となる。

旅客機として飛ぶのに必要な安全認証を取得するのは、西側の航空機メーカーにとっても容易ではない。航空機の構造がより複雑になり、サプライチェーンも拡大しているからだ。C919が中国国外で飛ぶために必要な許可を取得できるかは、まだ不確実な部分がある。米国と欧州連合(EU)が、この分野で最大の影響力を持っている。

EUは、中国当局が行う審査の一部をそのまま認証することで同意したものの、安全認証の発行に向け、EU基準の審査にこだわる部分もあるとみられている。EUは現在、中国の認証基準との違いを検証している。

「まだ手続きは始まったばかりだ」と欧州航空安全局のエグゼクティブディレクター、パトリック・キー氏は語る。米連邦航空局は、コメントの求めに応じなかった。

欧米当局の認証が得られなければ、中国の認証基準を承認している国にしかC919を売れなくなる。ジンバブエとボリビア、タジキスタンは、過去に中国機を購入した実績がある。

欧米当局の認証がなければ、「先進国や、多くの新興国への売り込みは困難または不可能になる」と航空・防衛関連出版アビエーション・ウィークのブラッドレー・ペレット氏は話す。

これまでのところ、C919を購入する国外勢は、実質的にリース会社のGEキャピタル・アビエーション・サービスだけだ。親会社の米ゼネラル・エレクトリック (GE.N)は、仏航空宇宙大手サフラン (SAF.PA)とともに、同機のエンジンを開発した。

「われわれの飛行機が市場に参入し、実際に使われてみて初めて、何が足りないかが分かるだろう」と、COMACのチェン氏は言った。

【私の論評】いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わり高速鉄道と同じ運命をたどる(゚д゚)!

C919は158座席、航続距離4075キロでボーイングB737やエアバスA320と競合する長さです。

中国には今までもMA60というプロペラの国産旅客機がありましたが、「世界で最も危険な旅客機」として有名でした。それについては、以下の記事をご覧になって下さい。
中国製小型航空機で事故多発 中国人「国産怖くて乗れない」
MA60
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部分だけ引用します。
 中国の航空機メーカー、西安飛機工業が製造した旅客機「新舟60」が25日、降着装置の異常が表示されたために着陸できなくなった。同機は目的地の瀋陽桃仙空港の上空で旋回を繰り返し、低空飛行をして地上から降着装置が出ていることが確認されたとして、午後8時17分に着陸した。新舟60は4日にも、降着装置の問題で事故を起こしていた。西安飛機工業は航空当局に新船60の一時飛行停止を申請した。中国新聞社などが報じた。 
C919はすでに21社から計517機を受注したのですが、全て中国の航空会社と、開発に関わったりした企業からの発注です。

最大航続距離は5555キロでボーイング737に匹敵し、北京や上海からアジア主要都市へ、無着陸で飛行できます。

このクラスの中型機はB737とA320の2機が独占しており、他社が参入する隙が無いようにも見えます。

B737は1967年に初飛行以来、モデルチェンジを重ね3世代で8300機以上を販売したベストセラーです。

最近まで危険な旅客機しか作れなかった中国が、短期間に欧米に匹敵する数値を実現できたのは、驚くべき進歩だと言えます。

しかし、この国産旅客機を開発したのは中国自身ではなく、実質的にはGEなどの欧米メーカーなのでした。以下にC919がどのような部品を用いているのか示すチャートを掲載します。


ほとんどが米国製です。これで、本当に中国国産といえるのでしょうか。このような疑問については中国メディアですら報道しています。以下にそのニュースのリンクを掲載します。
中国の旅客機「C919」 誇るべき国産品か、ただの組立品か=中国メディア
 中国商用飛機(COMAC)が開発を行ってきた旅客機「C919」が2日に上海市内でラインオフしたことについて、中国メディアの騰訊は3日、C919は「誇るべき国産品か、それとも低レベルな組立品に過ぎないのか」の見出しで記事を掲載した。
ただし、このようなことは、中国だけのことではありません。たとえば、トランプ米大統領は2月17日、米南部サウスカロライナ州ノースチャールストンにあるボーイングの旅客機工場を視察し、日本でも就航する中型旅客機ボーイング787ドリームライナーを前に「米国人労働者が、米国の工場で、米国製の製品を造ることを望んでいる」と訴え、787旅客機を「夢を実現した」旅客機と絶賛しました。

しかし、787は、日本のほか英仏伊などが参加した国際共同開発機です。海外製部品の割合は7割近くに達する。中でも日本は35%を担当。三菱重工業、川崎重工業、富士重工業の3社が主翼、胴体パネルなどを担当します。

またこの日、トランプ氏が「カーボンファイバーを使っているんだ!」と褒めたように、世界で初めて炭素繊維複合体(日本の東レが製造)を機体の多くに使用し軽量化を実現しました。
トランプ氏は「米国製品を購入せよ! 米国人を雇用せよ!」がキャッチフレーズ。今回、その主張に最適の地を選んだはずでしたが、図らずも日本製など海外製品の優秀性を強調することになってしまいました。

サウスカロライナ州ノースチャールストンにあるボーイングの旅客機工場を視察したトランプ大統領
ただし、これは元々国際共同開発であり、しかも米国が主導して各国をコーディネートして作り上げたものです。そうして、日本のカーボンファイバーなどごく一部を除き、米国でも製造することができるものです。しかし、各国にはそれぞれ得意分野があり、国際共同開発をすることにより、迅速で低コストで実現したものです。

しかし、中国に関して、元々技術水準が低いですから、C919の開発は、このようなこのような国際共同開発に近いようなものではなく、単に中国の技術水準の低さをカバーするためのものであると考えられます。

それを裏付けるものとして、米国製の部品の比重がかなり高いです。
中国は今後20年で約6000機の旅客機を就航させる計画で、一部を国産機で充当する考えを持っています。

6000機の多くは小型から中型機で、C919が1割を占めるとして600機、2割なら1200機は確実に売れます。

エアバスは既に中国に工場を建設し、200機以上のA320を生産しています。ボーイングB737の工場を中国に建設し、300機を生産する計画を発表しています。

エアバスとボーイングに突きつけられた条件が「技術の開示」や「技術移転」「技術協力」なのは確実でした。

自動車でもスマホでもパソコンでも、中国で販売する商品は何でも製造技術を中国に開示しなければなりません。

C919は当初2015年には初飛行している予定でしたが、遅れた原因はアメリカ製の主用部品が届かない事だったと考えらます。

エンジン、航空電子システムといった中枢システムは、GEと中国航空工業集団公司 (AVIC)の合弁会社である昂際航電から納入されました。

787や777-Xに匹敵するシステムだと説明していますが、実際の所はどうだか分かりません。

ところで、中国国内では、C919を哨戒機や電子戦偵察機に改造するとこんな形になるというような画像がネット上で出回っていました。


このようなことは実際あり得ることだと思います。しかし、米側は当然のことながら、部品の中や、他の電子部品やそれを運用するソフト部分に、中国側には知らさない何らかの秘密を持ったままで、中国に提供しているものと思います。

中国としては最初のうちは欧米に儲けさせておき、技術を盗んだら完全国産化して輸出攻勢を掛けるつもりでしょう。しかし、この秘密を解読するのは至難の技のようです。

中国は1970年代から、国産ジェット旅客機の自主開発に取り組んでいました。1992年、国営の上海飛機製造有限公司(上飛公司)と当時の米大手航空機製造会社マクドネル・ダグラス社が40機のMD-90の共同生産の契約を結んだのですが、結局その一基あたりの製造コストは米直輸入のMD-90より1000万ドルも高く、巨額な赤字を出しました。

共同開発ですらこの有様なのですから、中国が部品を安直にコピーしようとしても、そううまくいくとは思えません。

このような観点から、この飛行機が目論みどおりの成果を挙げるか、いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わるのかは注目です。

そうして、いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わる確率が高いように思います。なぜなら、中国は高速鉄道輸出でも結局大失敗しているからです。それについては、以前のこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【ビジネス解読】中国製車両が海外で初の大規模リコール シンガポール都市鉄道が故障だらけ 鉄道受注合戦さらに暗雲―【私の論評】中国高速鉄道には元々安全性に問題!導入すれば大惨事を招くだけ(゚д゚)!

 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国の高速鉄道は壮絶な売り込みをして、一見勝利をおさめたように見えた時期もあったのですが、結局失敗しそうです。

中国の高速鉄道の技術は日本の新幹線の古い技術のコピーですが、結局コピーではなかなかうまくいかずどうしても、自主開発の部分がでてくるのですが、その部分はなかなか難しいのでしょう。

以上のようなことから、中国初の大型旅客機は失敗し、欧米2強を脅かすような存在にはならないでしょう。いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わり高速鉄道と同じ運命をたどりそうです。

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2016年2月1日月曜日

【ジャカルタ高速鉄道】受注した中国の書類ずさん過ぎ… 事業契約も調印できず 「中国語だけでは評価しようもない…」―【私の論評】中国の国際高速鉄道事業の背後の軍事的意図(゚д゚)!


バンドン郊外で開かれた高速鉄道の着工式典に出席したジョコ大統領(左から2人目)
と中国鉄道公司の盛光祖社長(中央)ら=21日、インドネシア
インドネシア・ジャワ島の高速鉄道整備工事が、監督官庁の許認可が下りず、足踏みを続けている。中国が日本との受注合戦に競り勝ち、21日に着工式典が開かれたが、提出書類が中国語で担当官が理解できないなど準備不足が露呈。事業契約もまだ調印できず、工事の“出発”にすらこぎ着けられない状況だ。

■空軍基地の敷地に駅を予定

整備計画では、首都ジャカルタと西ジャワ州バンドンの約140キロを結び、2019年前半の開業を目指す。事業費約は55億ドル(約6420億円)で、インドネシア政府は負担や保証はしない。事業権期間は50年で、終了後は政府に引き渡される。

着工式典で、インドネシアのジョコ大統領は「インドネシア、中国の両国政府が協力して着工に至った」と胸を張った。だが、式典を欠席したジョナン運輸相は26日、議会公聴会の質疑で、「評価が終わっていない」として、建設許可はまだ出していないとした。

運輸省幹部は、地元英字紙ジャカルタ・ポストに、「5キロ区間の式典向け使用だけ許可した」と説明。必要書類が未提出なうえ、提出された書類も多くはインドネシア語や英語ではなく中国語で記載されており、「評価のしようがない」とし、事業契約も調印できない状況を明かした。

中国側の計画では、4駅が整備されることになっているが、うち1駅はジャカルタ東部にあるハリム空軍基地の敷地を予定。このため、一部政治家から、「首都防衛のための不可欠な施設だ」と、計画見直しを求める声もあがっている。

■「反対を力で排除、慣れてしまっている」

東南アジア研究所(シンガポール)の趙洪氏は、28日の英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)に、中国の国有企業は母国で、反対や障害を力で排除することに慣れてしまっていると指摘。インドネシアのような民主主義下では違った対応が必要だとして「地域社会をもっと深く理解する必要がある」としている。

インドネシアの高速鉄道計画をめぐっては、日本が受注を前提に地質調査などを長年進めてきたが、昨年3月、中国が参入を発表。インドネシアは同9月、費用が安い「中速度」の鉄道にプランを変更し、日中両案を不採用としたが、その後、事業費を丸抱えする中国の新提案の採用を決定。日本は選考過程の不透明さをインドネシアに抗議するなど波紋を呼んだ。

 【私の論評】中国の国際高速鉄道事業の背後の軍事的意図(゚д゚)!

インドネシア高速鉄道計画は、2015年7月にインドネシア政府が発表した高速鉄道計画です。首都ジャカルタと西ジャワ州バンドン間150kmを結ぶ計画で、将来的にインドネシア第二の都市である東ジャワ州スラバヤへの延伸が計画されています。東南アジアにおいて最初に開通する高速鉄道となる予定です。

この計画には、日本および中国が高速鉄道システムの売り込みに興味を示し、入札を競っていました。

2015年9月3日、インドネシア政府は高速鉄道計画の撤回を発表し、入札を白紙化しました。 9月29日、インドネシア政府は財政負担を伴わない中国案の採用を決定しました。

2015年中に着工し、2019年に開業する予定でした。

それにしても、中国の国際事業の展開の仕方は、非常にお粗末なものです。インドネシアという相手国に対して、必要書類が未提出なうえ、提出された書類も多くはインドネシア語や英語ではなく中国語で記載されており、「評価のしようがない」とは、お粗末の極みです。国際的な事業をするというのなら、最低限英語の書類は用意するというのが当たり前です。

確かにこの状況では、事業契約も調印できないのはもっともなことです。

ここで少し、このインドネシアの高速鉄道計画の受注に関してふりかえっておきましょう。

日本の新幹線E5シリーズ
さて、2008年より, 日本はインドネシアに対し新幹線の輸出を働きかけてした。2009年には、ジャカルタ - スラバヤ間730kmを時速300kmで結ぶ高速鉄道計画のフィジビリティスタディが行われました。

当区間はインドネシアで最も人口密度が高い区間であり、旅客および貨物輸送において慢性的な渋滞が発生しています。国際協力機構により、高速鉄道の建設費を円借款による低金利の融資で賄うことが提案されました

新提案では複数の期間に分けて建設することになりました。第一期はジャカルタ - バンドン間150kmを35分で結ぶ計画となり、建設費は50兆ルピアとされました。2014年1月、国際協力機構は詳細な事業化調査を開始しました。

当初、日本案は有利であるとみられていました。2014年10月にインドネシアにおける政権交代によりユドヨノ政権からジョコ政権に代わると、2015年1月、ジョコ政権は高速鉄道計画を費用がかかりすぎるとして中止を表明しました。

それでも日本案の有利は揺るがないと見られていましたが、2015年3月に中国が受注競争に参加することを表明しました。

2015年3月、ジョコ大統領は東京と北京を訪問。3月22日から25日までの東京滞在期間中、日本の安倍晋三首相と会談を行い、ジャカルタの都市鉄道路線ネットワークにおいて日本の支援を得ることで合意をしましたが、高速鉄道計画においては進展が見られませんでした。

中国案のCRH380A
2015年4月、中国はインドネシア高速鉄道計画の入札を表明しした。

2015年3月26日、ジョコ大統領が北京を訪問し、中国の習近平国家主席と会談を行った。中国側はインドネシア高速鉄道計画への支援を大々的に発表した。

2015年7月、インドネシア政府はジャカルタ - バンドン間の高速鉄道建設計画において競争入札を行うことを発表した。2015年8月、中国はジャカルタのショッピングモールにおいて高速鉄道技術展示会を行った。

日本案と中国案の競争は熾烈なロビー活動に及んだ。高速鉄道計画の受注は経済的理由に留まらず、東南アジアにおける両国の戦略的影響力を競うものとなっていました。

日本側としては、全く納得のいかない結果となりましたが、結局のところインドネシアは、安物買の銭失い的な行動をしてしまったようです。しかしこんなことになるのは、最初からわかっていたことです。

そもそも、中国の現在の高速鉄道の技術は日本から盗みとったものです。というか、盗ませてしまったというのが正しいかもしれません。

新幹線技術を供与した張本人は、JR東日本(東日本旅客鉄道)の松田昌士・元会長&社長です。中国はもともと、国産技術と僭称して米国やアジア諸国に売り込みをかけていました。

中国から技術を盗まれると確信していたJR東海の葛西敬之会長は技術を出しませんでした。JRの経営トップでもこれだけ対中国観が違ったということです。さらに、JR東日本と組んで新幹線の車輌(技術)を提供した、川崎重工業の契約が「技術を盗んで下さい」といわんばかりに杜撰だったことが、新幹線技術を中国に盗まれる原因ともなりました。

とはいいながら、現在の中国の鉄道技術は、前世代の古いものです。現在の最新の新幹線の技術ではありません。

盗みとったものであるからこそ、中国はインドネシアに対して、高速鉄道を安く提供できるということです。この技術日本は、自主開発でそれこそ何十年もかけて培ったものです。

とはいいながら、所詮自主開発したものと安直に盗みとったものとでは、自ずから差がつきます。実際中国では、2011年にあの高速鉄道の大事故が起こっています。この事故、中国はあろうことか、事故列車を地面を掘り起こしそこに埋め、事故の原因を隠蔽してしまいました。

2011年温州市鉄道衝突脱線事故
この事故、中国側はいろいろ理由をつけていますが、私自身は線路の敷設なとを含む鉄道システムの突貫工事も大きな原因の一つではないかと思います。何しろ、中国は日本なら一年かけて工事するところを3ヶ月くらいでやってしまいます。

経済再優先では、安全性は二の次です。そうして、中国は比較的領土が広いので、線路も直線が多く、日本と比較すると、カープや勾配などが少ないです。インドネシアも、領土が狭く、谷あり山ありで、日本と同じようにカーブや勾配などが多いです。

突貫工事をやる中国が、インドネシアに限ってまともな工事を実施とも考えられません。

それと、上の記事で、4つある駅のうち1駅はジャカルタ東部にあるハリム空軍基地の敷地を予定しているとありますが、これは、中国の軍事的な意図がありありです。

そもそも、中国では駅は軍事施設の一つともみられています。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
中国の高速鉄道には重要な軍事的意図が隠されている―米誌―【私の論評】敵に塩をくれてやっただけではなく、軍事力の増強にも手をかしている平和ボケ日本!!
中国高速鉄道と女性乗務員
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より米誌による、中国の高速鉄道には、重要な軍事的意図が隠されているという指摘の部分のみを以下に掲載させていただきます。
2011年5月14日、米ジェイムズタウン財団が発行する雑誌チャイナ・ブリーフは、中国人民解放軍総後勤部・軍事交通運輸部の話として、中国の1000を超える鉄道駅には軍事輸送施設が備わっていると報じた。以下はその概略。 
国際社会における中国の台頭に伴い、中国の軍事力も大幅に増強。中国指導者たちの理想は日増しに膨らみ、さらに積極的に自国の利益保護を追求するようになった。中国が鉄道網の整備に全力を挙げているのも、人民解放軍の移動能力を向上させるため。それらはさらに周辺地域にまで延伸しており、米国を始めとする西側諸国の同地域における利益に重大な影響を及ぼしている。 
中国は現在、チベットとネパールに続く高速鉄道路線を開通させており、さらにラオス、シンガポール、カンボジア、ベトナム、タイ、ミャンマーにも伸ばす予定。また、昨年11月には新疆ウイグル自治区−キルギスタン−タジキスタン−アフガニスタン−イランを結ぶ路線を建設することで各国と合意。このほか、イラク−シリア−トルコ−欧州を結ぶ路線の開通も計画している。 
これらは国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が提唱するアジア横断鉄道(TAR)の理念に基づいたもの。これは中東を中枢としたアジア間およびアジアと欧州を結ぶ鉄道路線網である。こうした鉄道網の充実に加え486.1キロという世界最高速度が、中国の遠征能力を格段に向上させるだろう。現代版の「シルクロード」が米国および西側諸国の脅威になることは間違いない。
鉄道が軍事的にも意味を持つというのは、本来は常識です。日本でも、戦車など今でも鉄道で運ぶこともありますし、今の日本ではほとんど見かけなくなりましたが、兵員を鉄道で運ぶということもあります。

鉄道は、他の輸送機関から比較すると、鉄道網が破壊されなければ、もっとも確実で安価な輸送手段です。

鉄道輸送中の中国59式戦車。トラベリング・ロックで100mm砲を固定している

インドネシアの空港の敷地内に、中国が鉄道の駅を設置するというのは、やはりこのような考え方にもとづいていると考えられます。

空港の敷地内に鉄道の駅があれば、いざというときに、中国は空港に兵員や兵器、戦車や車両など送り込み、そこから高速鉄道で、それらを迅速に展開することができるわけです。

中国としては、インドネシアで高速鉄道事業に成功して、アジア一帯に中国の高速鉄道網を張り巡らし、この地域で、どこにでも人民解放軍を迅速に展開できるようにするという意図があるのでしょう。

それにしても、インドネシアはどうしてしまったのでしょうか。これでは、本当に安物買いの銭失いどころか、敵に塩をくれてやるようなものです。

それも、今から10年前などというのならまだ理解できますが、最近の中国の南シナ海での暴虐ぶりをみて、それでも中国に高速鉄道を発注するというその、考えが全く理解できません。

それにしても、中国の国際鉄道事業、まだ実際に着工する前からこの体たらくです。何やら、先がみえてきたように思います。いずれ、その軍事的意図も多くの国々に知られるところとなり、いずれの国も発注しなくなると思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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