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2020年7月14日火曜日

“帝国主義的覇権国家”の異常ぶり…中国とまともに付き合うのは限界だ! 日本は欧米諸国と安保・経済の連携を— 【私の論評】世界の中国の全体主義との戦いの終わりに、日本は新世界秩序の理念を提唱せよ!(◎_◎;)

“帝国主義的覇権国家”の異常ぶり…中国とまともに付き合うのは限界だ! 日本は欧米諸国と安保・経済の連携を 

高橋洋一 日本の解き方

習近平国家主席
自民党は中国による「香港国家安全維持法(国安法)」に対する非難決議を了承した。習近平国家主席の国賓来日に関し、「党外交部会・外交調査会として中止を要請せざるを得ない」としている。沖縄県の尖閣諸島にも連日中国船が接近するなかで、日本の国益を守るためには、対中外交でどのようなスタンスが得策なのか。

 最近の中国は、周辺国と数々のトラブルを抱えている。英エコノミスト誌に掲載された風刺漫画で、ドラゴンに見立てられた中国が、右手でインド、右足で南シナ海諸国、左足で台湾とそれぞれ押し合い、尻尾は香港の自由を奪っている様子が描かれている。今のところ、左手は地面をつかんでいるが、筆者には日本の尖閣を伺っているように思えた。

 先日の本コラムで、国安法のことを書いたが、香港での国際公約である50年間の「一国二制度」を破ったことにとどまらず、同法の域外適用は異常である。域外適用とは、逆にいえば他国の国家主権を無視することであり、全世界を支配下にするという宣言のように筆者には見える。また、それは世界は中国のものという「中華思想」そのものだ。

 当然、隣国である日本も警戒すべきだ。尖閣での日本の主権侵害も放置できない。国安法を前提とすれば、わが国固有の領土である尖閣諸島で領有権を主張することは、世界のどこで言っても同法違反になってしまう。

 仮に、習主席を日本に招いて、安倍晋三首相が同氏に尖閣諸島の領有権を主張しても、同じく安倍首相は同法違反となりかねない。安倍首相が日本にいれば、中国と日本との間には犯罪人引き渡し条約はないので問題ないが、例えばフランスのように中国との同条約締結国に安倍首相が行ったとき、中国は国安法違反を理由として中国への引き渡しを求める可能性すらあるのだ。

 もう西側民主国家の常識では想像できないくらい、中国は帝国主義的国家になっている。国安法について、ポンペオ米国務長官は、自由のない言論統制を「全体主義的」と批判したが、世界制覇をもくろむ拡張覇権主義といってもいい。

 当然日本は各国の主権を尊重し、自国主権を守る立場なので、帝国主義の拡張覇権国家と付き合うのには限界がある。中国が国安法の自由抑圧・拡張覇権主義を取り下げないと、まともに対中外交はできないと言ったほうがいい。

 もちろん習主席の国賓としての訪日などありえず、今の中国とは一線を画したほうがいいのは明らかだ。でないと、西側民主主義国に間違ったメッセージを送ってしまう。

 その上で、日本の取るべき外交は、中国の周辺国で困っている国と連携して、中国の拡張覇権主義をどのように食いとどめるかだ。さらに、民主主義の欧米諸国とも共通の価値観を確認しつつ、安全保障と経済の連携を図り、その他の国へ民主主義を広めることも重要になる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】世界の中国の全体主義との戦いの終わりに、日本は新世界秩序の理念を提唱せよ!(◎_◎;)

日本の取るべき外交は、良くも悪くも米国の外交にかなり影響されます。日本は、まずは米国の姿勢を理解しておくべきです。

貿易戦争で始まった米中対立は、ハイテク覇権、香港問題、ウイグル人弾圧問題など、中国共産党の基本路線と真っ向からぶつかる展開となっています。米国としてもハイテク覇権の維持、民族自決、宗教の自由といった、国家の基本理念に関わる問題だけに、米中の歩み寄りは難しいです。

中国共産党旗の前で記念撮影する中国の人々
私は、米中対立における米国の究極の目的は中国共産党の壊滅にあるのではないかとみています。1983年にアメリカのレーガン大統領は「スターウォーズ計画」を発表し、当時のソ連に宇宙軍拡競争を仕掛け、ソ連の国力の消耗を狙いました。

その結果8年後の91年、ソ連は崩壊しました。宇宙軍拡競争をソ連に仕掛けた段階で、米国はソ連共産党の壊滅を目的としていたと考えられます。米国は日本に対しても、日露戦争終結直後から日本攻略を目的とした「オレンジ計画」という長期戦略を策定し、40年後にはこれが実現することになりました。

米国は自らの世界覇権を守るためには、長期で慎重な戦略を策定し、これを挙国一致で実行に移す能力のある国であることを忘れるべきではありません。

日本としては米中対立の中で、「和を以って尊しとなす」という聖徳太子以来の和の精神を基に、日本独自の共存共栄の世界観を世界に示し、対立を回避したいところですが、特に「国安法」の施行の後からは、もうこの争いは単なる覇権争いではなく、日本をも直接脅かす中国の全体主義的価値観と米国の自由・平等・人権などの西欧的価値観の戦いになってきました。

西欧的価値観は、長期間にわたって醸成され、今日に至っています。その中の一つにウェストファリア体制というものがあります。

ミュンスター条約(ウェストファリア条約)締結の図
ウエストファリァ体制とは、1648年のウェストファリア会議で成立した世界最初の近代的な国際条約とされている、三十年戦争の講和条約による体制です。66か国がこの条約に署名し、署名までに4年の歳月を費やしています。

この体制によって、プロテスタントとローマ・カトリック教会が世俗的には対等の立場となり、カルヴァン派が公認され、政治的にはローマ・カトリック教会によって権威付けられた神聖ローマ帝国の各領邦に主権が認められたことで、中世以来の超領域的な存在としての神聖ローマ帝国の影響力は薄れたました。

スイス、オランダの正式な帝国離脱が認められ、フランスはアルザス地方を獲得しました。

現代の世界を見渡せば「ウェストファリア体制」がどれぐらい残っているでしょうか。

主権国家の並立体制は、建前上は残っています。その意味でいえば、世界はいまだに「ウェストファリア体制」と言えます。

「ウェストファリア体制」とは、煎じ詰めると以下の3点です。
一 心の中では何を考えてもよい
二 人を殺してはならない
三 お互いの存在を認めあおう
という三要素です。そして、これらは最も確立された国際法であり、法則なので否定のしようがありません。

しかし、現実はどうでしょうか。

この三要素が当然だという価値観を持った国はどれぐらいあるのでしょうか。日米、そのた西欧先進国は、全てこの価値観を持っている言って良いでしょう。

ところが中国もロシアも、そうして無論北朝鮮もこのような価値観は持っていません。習近平、プーチン、金正恩共通しているのは、自分が殺されなければ、やっていいと考えるところです。むしろ、すでにバンバンやっています。

どっちつかずなのが韓国です。無論、韓国では中国やロシアのように人を殺すことはありませんが、それにしても、歴代の元大統領の多くは、無残な死に方をしています。

日本としては、明治以来西欧的価値観を受け入れ、全体主義的に陥ったこともなく(大東亜戦争中の日本の体制をナチズムと似たような全体主義というのは歴史を真摯に学んだことのないものの妄想です)、どちらかといえば、米国の方に与し易いのは事実です。

日本は米国の意図を汲み、強い方に従う劣位戦の発想ではなく、あくまで中国共産党の全体主義との戦いに挑み、日本人独自の世界観と歴史観に基づいた平和への道を世界に提示すべきです。

西欧諸国等の中国の全体主義との戦いは、中国共産党の崩壊によっていずれ終焉します。その後の世界は、日米やその他の戦勝国によって決められることでしょう。そうして、その時も結局「ウェストファリャ体制」は温存されることになるでしょう。特に上記で示した、三要素は必ず温存され、その上に新たな世界秩序が構築されることになるでしょう。

第二次世界大戦の終焉直前のヤルタ会談などでは、結局その後ソ連や中国、北朝鮮を台頭させ、ソ連時代の東欧の悲劇、アジア地域の不安定を招く結果となりました。日本は、独立国でありながら、そうではないような状況に悩むことになりました。

ヤルタ会談
今後の新世界秩序づくりにおいては、無論日本が積極的に関与し、リードし当面の世界にとって最も良い秩序を構成すべきです。おそらく、米国主導では、他国が反発してまとまらないでしょう。

その時に、日本が米国と他国との橋渡しとなり、まともな新世界秩序を作る架け橋となるべきです。そのようなことは、日本でなければ、なかなかできないことです。なぜなら、日本は自由主義陣営においては、経済力は第二位でありながら、第二次世界大戦後、一度も戦争したり、地域紛争などに介入したことがないからです。

さらに、最近ではTPPや欧州とのEPA協定を結ぶなど、世界に先駆けて大規模な自由貿易協定を結んだという実績もあります。インド太平洋地域では、日本は米国と当該地域の国々との橋渡しをしました。日本の安倍首相による橋渡しがなければ、米国のインド太平洋戦略など成り立たなかったことでしょう。

日本は第一次大戦後のパリ講和会議において、史上初めて国家として人種平等を提唱し、この時は米国の先日もこのブログに掲載したように、非常に問題のあるウィルソン米大統領の独断により廃案とされましたが、第二次世界大戦を経て、人種平等の世界が実現したのです。日本は歴史をリードする理念を提唱できる国家であることを日本人は忘れてはならないです。

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2018年12月18日火曜日

中国の微笑外交の限界―【私の論評】微笑外交の裏に日米離反の意図、北朝鮮に対する敵愾心、台湾に対する領土的野心あり(゚д゚)!

中国の微笑外交の限界

岡崎研究所

ミンシン・ペイ教授

11月19日付のProject Syndicateのサイトに、米国カリフォルニア州にあるクレアモント・マッケナ大学のミンシン・ペイ教授が、「中国の魅力攻勢の限界」と題する論説を寄稿した。その要旨、以下の通り。

・中国は過去10年間、東アジア諸国に対し強い態度で接してきたが、ここ数か月、微笑外交をするようになった。何が変わったのか。

・2013年、中国は日本の尖閣列島を含む東シナ海に一方的に防空識別圏を設定した。翌年には、領有権争いのある南シナ海に人工島を建設した。そして、2016年には、在韓米軍にミサイル防衛システムを設置することに対抗して韓国に制裁を課した。

・しかし、今、様相は変わってきた。先月、安倍総理は、日本の首脳としては7年ぶりに、北京を訪問した。そして、習近平の訪日は来年予定されている。中国首脳の訪日は10年振り以上である。

・先週、中国の李克強首相はシンガポールを訪れ、両国間の新FTAに署名した。中国は、TPPに対抗して、RCEPの署名も望んでいる。

・中国の新たな非対立的アプローチは、中国指導部の心や目的が変わったからではない。それは、地域の地政学的環境の変化による。この6か月間で、米国は40年間の中国関与政策を止め、中国封じ込め戦略に転じた。中国は、米国との競争激化で、地域の友人を得ようと必死である。

・このような中国の微笑外交の中身は明確である。多くのアジア諸国の第1の貿易相手国である中国は、シンガポールとこの程行なったように、魅力的貿易項目を提示する。

・中国のもう一つのやり方は、首脳レベルの外交を展開することである。韓国、インドネシア、ベトナム、日本等地域の主要国に焦点を当てている。11月20-21日には習近平がフィリピンを訪問する。これらを通じて中国は友好ムードを作りたい。その間、宣伝機関には、攻撃的広報を止めさせる。

・一時的に中国は領有権の主張を抑制するかもしれない。例えば、2012年にフィリピンから奪ったスカボロー礁への人工島建設を中断したり、尖閣諸島への船舶派遣を抑えて日本との対立を避けたりするかもしれない。

・東アジア諸国は中国の新外交を今の所プラスに受け止め、中国の攻撃的態度の一時停止を歓迎している。が、だからと言って、これら諸国が米中対立の中で、どちらか一方に付きたがっているわけではない。ただ、中国覇権の蔭にいたいという国はほとんどない。いざ米中対立が激化すれば、日本、韓国、ベトナム、マレイシア、シンガポールは米国を支持するだろう。

・もし中国が頼れる友人を得たいなら、安全保障、特に領土問題で譲歩すべきである。例えば、尖閣問題で、中国が脅威とならないことを日本に理解してもらうとか、南シナ海問題で仲裁裁判所の判決を受諾して東南アジア諸国を安心させるとか、である。

・今のところ、習近平から譲歩の様子は見られない。中国が戦術的アプローチに固執する限り、その程度の果実しか得られないし、米中対立の中では、まだまだ不十分である。

出典:MINXIN PEI ‘The Limits of China’s Charm Offensive’ Project Syndicate, November 19, 2018

 ペイ教授の指摘は、鋭い。米中対立が激化すると、中国は、アジア諸国に対して微笑外交になり、米中が協調しているか米国が強く出ない時は、近隣諸国に対して、強圧的態度で臨む。日本を含むアジア諸国は、米中対立を決して好むわけではないが、中国が脅威となって行動することは困る。ここにジレンマが生じる。

 この中国外交のアプローチの変化には、騙されないことが重要である。ペイ教授も指摘しているように、中国の表面的変化に惑わされるのではなく、真の意図、目的を見失なわないことが重要である。

 実際に、中国の動きを見ていると、微笑外交に転じても、反日教育がなくなったわけでもなければ、尖閣諸島周辺への船舶の出入りが少なくなったわけでもない(この点、ペイ教授の観察は必ずしも正しくない)。

 甘い経済の提案も、いつそれが変化してしまわないか、気を付けながら慎重に進めるべきだろう。

【私の論評】微笑外交の裏に日米離反の意図、北朝鮮に対する敵愾心、台湾に対する領土的野心あり(゚д゚)!

米国と貿易問題をめぐる対立が深まる中、中国はインドと日本に歩み寄りを見せてきました。習近平国家主席は今年4月、インドのモディ首相と握手し、関係改善を印象付けました。

また、李克強(リー・カーチアン)首相は就任以来初めて、中国の首相としては8年ぶりに今年の5月に日本を訪問しました。10月には、安倍総理は、日本の首脳としては7年ぶりに、北京を訪問しました。

トヨタ自動車北海道の訪問を終え、沿道の同社社員らに
手を振る中国の李克強首相=5月11日、北海道苫小牧市

これは、明らかに米中関係の悪化によるものです。アメリカは昨年末から国防などの安全保障面でも対中強硬策に転じていましたが、さらに対中国貿易戦争を開始しました。

ここで、一見中国の微笑み外交とは関係なくもみえる、北と中国との関係が悪化した要因などを分析します。

2002年9月、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)(元)総書記は、中国遼寧省丹東と隣接する北朝鮮の新義州(シニジュ、しんぎしゅう)を特別行政区(特区)と定めて経済開発を試みようとしました。

それは中国からの「改革開放をしろ」という絶え間ない要求に応じたものでしたが、それでいて「中国外し」のために通貨は米ドルにして、おまけに特区長官の任命に当たり、中国には一切相談せずに、敢えてオランダ籍の中国人(楊斌)を選びました。

楊斌氏

オランダ籍であることから、新義州経済開発特区には、中国以外に西側諸国を招いて、中国が中心にならないように仕掛けをしていたのです。

このことを知った中国は激怒し、楊斌を脱税や収賄など多数の違法行為により逮捕投獄してしまったのです。それにより新義州経済開発特区構想は潰れてしまったのですが、注目しなければならないのは、このとき金正日は日本に対して何をしたかです。

小泉元首相の訪朝を、金正日は受け入れたのです。そして拉致被害者を一部返し、また拉致行為に関しては「特殊機関の一部が妄動主義、英雄主義に走って日本人を拉致した」と認めて謝罪しました。

ここで重要なのは、北朝鮮の最高人民会議常務委員会が新義州特区設立の政令を発布したのが2002年9月12日で、小泉元首相が平壌(ピョンヤン)を訪問して金正日元総書記に会ったのが2002年9月17日であるという事実です。

つまり、北朝鮮が「中国外し」をするときは、日本に対しては門戸を開こうとするのです。

楊斌が拘束されたのは2002年10月4日で、11月27日には逮捕投獄されました。小泉元首相が訪朝した9月17日には、楊斌が逮捕されるとはまだ思っていなかった金正日は、経済特区を開発するに当たり、「中国外し」をしておいて、対日融和策に出たということになります。

それを知っている中国は、今回もまた北朝鮮が対日融和策を取る可能性があることを見越して、北朝鮮に先手を打たれまいとして「対日融和策」に出ようとしているのです。

事実5月4日、習近平国家主席は安倍首相からの電話会談申し入れを受け入れ、日中首脳としては初めての電話会談を行いました。

電話をする安倍総理

これは5月2日から3日にかけて、王毅外相が訪朝し、金正恩(キム・ジョンイル)委員長と会談したことと深く関係しています。

王毅外相訪朝の真の目的は、あくまでも4月27日の南北首脳会談で採択された板門店(パンムンジョム)宣言の中で謳われた「中国外し」を回避させることにありました。

すなわち宣言では、「南と北は、休戦協定締結65年となる今年、終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制を構築するため、南北米3者、または南北米中4者会談の開催を積極的に推進していくことにした」とある。中国を外す3者会談の可能性を示唆しました。

中国にとって、中国を排除することなど絶対にあってはならないのです。王毅外相は「中国を外すな」と説得するために金正恩委員長に会ったのです。表面上は熱い抱擁を交わし、非核化など、聞こえの良い「きれいごと」に関して意思確認をしたと言っているのですが、実際は違います。

事実、5月3日の聯合ニュースは「訪朝の中国外相 朝鮮半島問題での「中国外し」回避に総力」と報道しており、中国国内でも、板門店宣言以来、「3者会談とは何ごとか」といった趣旨の報道がめだちます。

中国の外交部などを通した発表としては、せいぜい「中国は半島問題の解決に長いこと大きな貢献をしてきた」という類のことしか言ってないですが、中国政府系あるいは中国共産党系メディアは、識者のコメントとして多くのことを書かせていまする。中朝蜜月を披露した手前、政府自身がストレートに北朝鮮を責めるわけにはいかないのです。

そこで、「3者」と言い出したのが北なのか南なのかに注目が集まる中、「北である」という確信を持っている論評を数多く掲載させています。その主たる論拠を以下に列挙します。
1.1984年1月、北朝鮮は中央人民委員会と最高人民常設会議の連合会議を開催し、「朝米韓」3ヵ国による平和体制への移行を協議すべきだと決議した。朝米の間で平和協定締結を論議し、朝韓の間で北南相互不可侵条約を結んだ後に、朝韓が政治協商会議を開催し「高麗連邦国家」建国を論議すべきとしている。 
2.1994年、北朝鮮は中国に対して「軍事停戦委員会」の駐板門店・中国代表が中国に撤退するように要求してきた。北朝鮮は中国が安全保障上北朝鮮に介入する法的地位を保有することを望んでいない((筆者注:1991年12月に旧ソ連が崩壊すると、1992年8月、中国は韓国と国交を樹立。北朝鮮、「戦争中の敵国(韓国)と国交を樹立した」と中国に激怒)。
3.1996年4月、クリントン米大統領と韓国の金泳三(キム・ヨンサム)大統領が韓国の済州(チェジュ)島で共同声明を発表し、北朝鮮が唱える「3者会談」による平和体制以降を否定し、「中国を入れた4者会談」を提案した。
4.しかし2007年の第2回南北首脳会談において発表された共同声明では、再び「3者または4者による首脳会談を通して休戦体制を平和体制に転換させる」とした。 
5.従って、今般の板門店宣言における「3者会談」の可能性を提起したのは、明らかに北朝鮮側であることが明確である。
以上が、中国政府が識者らに論じさせた根拠の骨格です。

4月29日に韓国政府筋が韓国メディアに一斉に「2007年の南北首脳会談で"3者"を提起したのは金正日」と報道させていました。これは今般の板門店宣言における「3者」提起が、決して韓国側ではないということを韓国政府が中国に知らせたかったためだと考えられます。

ただし、中国はもっと詳細に、「犯人」が北朝鮮であることを十分に分析し、知っていたということができると思います。

そのようなことから、今年3月25日から27日にかけて北京を電撃訪問して中朝蜜月を演じた金正恩に対して、中国は心の奥では不信感を拭えていなかったようです。

金正恩は「朝鮮半島の非核化と平和体制構築のプロセスにおいて、北朝鮮だけでは北朝鮮の自国の利益を保持することはできないので、何としても中国の後ろ盾が必要だ」というせっぱ詰まった気持から習近平に会い、その救いを求めたはずだと中国は言います。だというのに、その一方では、結局金正日以来の北の考え方は変わってはいない、というのが中国の大方の見解です。

何しろ江沢民時代から北朝鮮が表面上見せた中国への熱烈な友好的姿勢は際立っており、最高指導者となってからの金正日は7回にもわたって訪中しています。その間、江沢民や胡錦濤と、どれだけ熱い握手を交わしてきたことでしょう。

だからこそ、金正恩の電撃訪中に当たって、中国は「中国が主導する6者会談」復帰を前提として金正恩に要求したわけです。またもや「3者」に持っていこうとする北朝鮮の策略を防いだはずでした。
しかし金正恩の方が、策略において上手だったことになります。

このようなこともあり、さらに最近の米国による対中政策が厳しさを増してきたことから中国は勢い、日本に本格的に秋波を送るようになったのです。

中国の日本に対する微笑み外交は、すでに昨年から実施されていました。日中両政府は、沖縄県・尖閣諸島のある東シナ海での偶発的な衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の構築と早期運用に向けて「前向きな進展」があったと発表しました。

「海空連絡メカニズム」とは、自衛隊と中国軍が接近時の連絡方法などをあらかじめ定め、衝突を防ぐ仕組みです。中国・上海で昨年12月5、6日開かれた、日中の外務、防衛、海上保安当局などの高級事務レベル海洋協議で、主要論点がほぼ一致したといいます。

現在習政権と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権の関係は上でも述べたように、劣悪で『事実上の敵』といえます。加えて、習氏は2020年以降、本気で台湾を取りに行こうとしています。

こうなると、中国人は『敵の敵は味方』のフリをするモードになります。日本政府や自衛隊に笑顔で接近して、話し合いの環境をつくろうとします。彼らの本音は、日本人を油断させて『日米同盟の分断』と『自衛隊内のシンパ構築』を狙っているのです。

習氏は昨年10月の共産党大会で、「3つの歴史的任務の達成」を宣言しました。この1つに「祖国統一の完成」があり、武力侵攻も含めた「台湾統一」と受け止められています。

「核・ミサイル開発」を強行する北朝鮮に対しては、米国の軍事的制圧も視野に入ってきています。中国は、緊迫する東アジア情勢の中で巧妙に立ち回り、台湾統一の邪魔になる「日米同盟の分断」に着手したのかもしれません。

習氏にとって、安倍晋三首相とドナルド・トランプ大統領が体現している『日米同盟の絆』は脅威です。ここにクサビを打ち込もうとしているのです。中国人は『台湾は中国の一部。尖閣諸島は台湾の一部』と考えています。

無人島の尖閣諸島は後回しにして、台湾を先に取ろうと考えているのかもしれません。

このようにみていくと、中国の日本に対する微笑外交の背後には、様々なものが隠されていることがわかります。特に、中国の北朝鮮に対する敵愾心、台湾に対する領土的野心、日米離反の意図を忘れるべきではありません。

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2018年10月13日土曜日

【田村秀男のお金は知っている】相次ぐ謎の要人拘束は習主席の悪あがき? 米との貿易戦争で窮地に追い込まれた中国―【私の論評】要人拘束でドルを吐き出させるも限界!金融戦争では中国に微塵も勝ち目なし(゚д゚)!

【田村秀男のお金は知っている】相次ぐ謎の要人拘束は習主席の悪あがき? 米との貿易戦争で窮地に追い込まれた中国

范氷氷(ファン・ビンビン) 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 中国では要人の行方不明、拘束、さらには引退劇が相次いでいる。謎だらけのようだが、拙論は米中貿易戦争で追い込まれた習近平政権の悪あがきだとみる。

 ここ数カ月間で行方をくらましていた多くの要人のうち、何人かの消息が最近判明した。注目度ナンバーワンが、人気女優の范氷氷(ファン・ビンビン)氏(37)で、今月3日、脱税などの罪を認め、追徴金など8億8300万元(約146億円)を支払うことで赦免された。

 中国のネット情報によれば、彼女は北京市内などに保有する約40軒の超豪華マンションを売却して支払いに充当する。「カネで刑務所行きを免れるとは許せない」との批判がネットで渦巻いている。

 中国政府は7日、国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)の孟宏偉総裁の身柄を拘束していると発表した。中国の公安省(警察)次官でもある孟氏は、ICPO本部があるフランスのリヨンから中国に向けて9月25日に出発した後、行方不明となっていた(10月8日付の英BBCニュースから)。

孟宏偉氏

 フランス・リヨンに本部のあるICPOのトップを拘束するという異常ぶりに、世界があぜんとしているが、習政権にはそんな国際的反響などに構っていられない事情がある。

 孟氏は隠然とした影響力を持つ江沢民元党総書記・国家主席派に属するといわれる。習氏が追及する党長老たちの巨額資金の対外持ち出しに関与していると疑われたのだろう。

 9月10日頃には、ネット・ビジネスで大規模な流通革命を起こした中国を代表する民営企業、アリババ集団の馬雲(ジャック・マー)氏が来年9月に会長を退任するという衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。巨万の富を築いた本人は後継者も指名し、あとは大学教授として後進の育成にあたると言い、もっともらしいが、真に受けてはいけない。馬氏もまた、巨額の金融資産を海外でも築き上げている。

Forbes氏の表紙を飾った馬雲氏
 
 女優の范氏の資産も中国国内の超豪華マンションだけというはずはない。海外に莫大(ばくだい)な資産を配置しているに違いない。

 范氏、馬氏に限らず、中国の大富豪、実力者たちがよく使う資産逃避ルートは必ずといってよいほど、香港経由である。香港こそはICPOによるマネーロンダリング(資金洗浄)の最大の監視ポイントである。孟氏がその職権を利用して、要人たちの資金逃れを手助けしていたと習政権が疑っているかもしれない。このシナリオからすれば、孟氏を拘束する目的はただ一つ、中国からの資金逃避ルートを暴き、遮断することだろう。

 習政権はトランプ米政権による貿易制裁を受け、苦境にさらされている。株価の急落に歯止めがかからないばかりではない。制裁関税に伴う輸出競争力減を補うために人民元安が不可避だが、資本逃避が加速する。それを止める最後の手段は何か。答えは上記の「事件」にあるはずだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】要人拘束でドルを吐き出させるも限界!金融戦争では中国に微塵も勝ち目なし(゚д゚)!

米中貿易戦争悪化に伴い人民元相場が急落しました。その原因はキャピタルフライトであると予想され、これに対応する形で中国当局は国有銀行に通貨防衛のための為替介入をさせました。

「貿易戦争悪化」→「中国の輸出の冷え込み」→「企業業績悪化」→「株価下落→海外投資家の離脱」→「人民元売りドル買い」という負の連鎖が起きているわけです。

また、これに連動する形での国内勢の動きもあるのでしょう。中国政府は2015年の中国株式バブル崩壊以降、外貨規制を強化し、国内からのドルの持ち出しを厳しく規制しました。

個人の両替規制を年間5万元(83万円程度)に制限し、破ったものに対して制裁を課すようにしました。企業に対しても、基本届け出制にして、500万ドル以上の取引に関しては、より厳しい審査を課すことにしました。

これにより、一旦は収まったかに見えた人民元に対する不安が、再び市場を襲っているのです。中国の対外債務は1兆7,106億ドル(2017年末)、それに対して外貨準備高が3兆1106億ドル(2018年5月末)。

外貨準備とは、自国通貨売りなどに備え、外貨が不足したときに使う保険のようなもので、これがなくなると、通貨危機が発生します。そのため、対外債務に合わせた額が必要とされます。中国の場合、表面的な数字だけを見れば、対外債務の2倍近い外貨準備があるので、全く問題がないように見えます。

ところが、実は中国の場合、外貨準備の質がわからず、実際に使える額が全く見えないのです。日本の場合、外貨準備のほぼすべてが米国債で構成され、保有者は政府と日銀であるため、全額を為替介入などに利用することができます。

それに対して、中国の場合、米国債は1,2兆ドル程度しかなく、国有銀行保有分が含まれています。基本的に、外貨準備というのは外貨をいくら持っているかであり、それが借金であろうとも外貨である限り、外貨準備にカウントされます。中国の場合は、国有銀行保有分の多くが海外からの借り入れが原資であると思われ、信用不安の際には一気に失われる可能性があります。

実は、下のグラフご覧いただくと、おわかりになるように、中国の外貨準備の減少は2017年初頭に底を打っています。しかし、外貨準備のトレンドは2014年後半以降は下向きであり、対外負債は増加し続けています。


対外負債は2017年9月時点で外貨準備高の1.6倍、そうして対外負債の一部が外貨準備高に流用されているのです。

つまり、中国という国は外部からの借金なしには(対外負債を増加させなければ)、習近平の目論見どおりに国を回すことができない状況になっていました。

ちなみに、中国の対外債務1兆7106億ドルの内、1兆ドル程度が短期の債務とされており、一気に返さなくてはいけなくなる可能性もあるのです。そして、中国の外貨準備の内、米国債は1兆2000億ドル程度(米国財務省)しかなく、ドルだけで見ればその差額は2000億ドル程度しかないのです。実際には他国資産をドルに換えることができるので、それ以上の規模になるのですが、その中身が全くわからないのです。

そして、最近の通貨防衛の介入も非常にイレギュラーな形で行われました。それは中央銀行ではなく、国有銀行がNDF市場(ドル建てデリバティブ)でドル先物を買い、ほぼ同額を現物市場に流す形で行われたのです。

これは中央銀行が自由に使える外貨準備を持っていないことの傍証であるといえます。そして、これを続ける限り、外貨準備が失われ続け、通貨危機のリスクは上がってゆくことになります。

為替介入でも、自国通貨売り外貨買いの介入(通貨安)であれば、自国通貨は自由に手に入るため、何の問題もないですが、通貨防衛のための介入は、他国の通貨を必要とするため限界があります。

人民元とドルの場合は、上の円を元とみたてて理解してください

さらに、為替介入で自国通貨高をするにしても、自国内で自国通貨を際限なしに多くすれば、インフレになるので、いつまでも続けることはできません。そのため、通貨戦争なる概念は本当は虚構です。いくら自国の通過防衛をしたとしても、それでハイパーインフレにでもなってしまえば、本末転倒です。

そして、中国がこの状況から抜け出すには、基礎的条件の改善(対米貿易の拡大など)や通貨スワップによる他国の通貨保証が必要になるわけですが、現在の米中の状況からすれば非常に厳しいです。

それ以外の方法としては、人民元を完全に自由化し、為替介入をせず、人民元を温存するという方法がありますが、この場合、人民元は暴落し、外貨建て債務を持つ企業などの破綻と輸入品の高騰によるインフレと国内の混乱が待っているでしょう。

しかし、国が破たんするよりはその方が痛みは少ないのでしょう。米中貿易戦争、次のステージは金融戦争であり、これは米国が圧倒的に有利な戦いです。

このような状況ですから、習近平としては現在国内にあるドルは一銭たりとも海外に逃避させたくはないですし、海外に逃避したドルも一銭でも自分たちの手元に呼び返したいのです。

だからこそ、ドルを海外に逃避させた人物やさせそうな人物はすぐにでも身柄を拘束して、ドルを吐き出させて自分たち中共のものにするという悪あがきにでた のです。今後も、要人の身柄拘束は続くでしょう。ただし、それにも限界はあります。

これが、基軸通貨国であれば、金がなくなれば、お金を刷り増せば良いだけの話ですが、中国は、米国のお金ドルを勝手に刷り増すことはできないです。為替介入や、一対一路などの海外でのプロジェクトを実行するためにはドルは必要不可欠です。

それに、国際的な元の信用は、中国が米国債権やドルそのものを大量に抱えていたから、創造されてきたのであって、ドルなし中国の人民元は、このままだと紙切れになるおそれもあります。

この状況では、中国がいくら頑張ったとしても、米国には金融戦争では勝つことはできないことは最初からわかりきっています。巷では貿易戦争で騒いでいますが、貿易戦争自体は米中にとって、あまり悪影響はなく、中国が米国に屈するにはいたらないでしょう。

ただし、金融戦争になれば話が違ってきます。ドルを自分で必要なだけ刷り増すことができるし米国は世界の金融を握っているといっても過言ではありません。米国のほうが圧倒的に有利です。中国は屈する以外に道はありません。

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2016年9月28日水曜日

【朝日新聞研究】「君が代」否定の根拠とされる五輪憲章 現実とはなはだしく乖離している―【私の論評】朝日もNHKもネガキャン手法に限界?左翼・リベラル・中国にさえ見放される(゚д゚)!

【朝日新聞研究】「君が代」否定の根拠とされる五輪憲章 現実とはなはだしく乖離している

8月20日NHK「おはよう日本」が報道した「五輪開催5つのメリット」
ブラジル・リオデジャネイロ五輪の代表選手団の壮行会(7月3日)で、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(元首相)が「国歌も歌えないような選手は日本の代表ではない」と苦言を呈したことから、また国歌・君が代が話題になった。

国歌国旗法が成立したときに大反対した朝日新聞は、8月23日朝刊のオピニオン欄「耕論」で、「スポーツと国歌」と題して、3人の意見を載せている。元サッカー日本代表主将の宮本恒靖氏と、元プロ野球選手で元参院議員の江本孟紀氏、もう1人は女性の憲法学者である。

宮本氏は、国際試合で君が代が演奏されるとき、初めは歌わなかったが、次第に歌うようになったという。江本氏は「スポーツ選手は君が代を歌うべきだと思います」と明言する。両者ともに肯定的である。

否定的なのは女性学者で、憲法学者らしく五輪憲章を持ち出して、第6条で「オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない」と明記されているといい、「同憲章では、国際オリンピック委員会と組織委員会が国別のランキングを作成することを禁止しています」と指摘する。

朝日新聞としては珍しく感じる2人の肯定論に対し、間もなく読者からの反論を、投書欄「声」に採用している。

8月29日、32歳の牧師からのもので、「耕論『スポーツと国歌』(23日)を読み、国歌を歌わない五輪選手に苦言を呈した森喜朗氏を擁護する意見に違和感を持ちました」とあり、その理由を「なぜなら、私はクリスチャンであり、天皇(陛下)を賛美する歌詞の君が代を歌えません。聖書に記されている神以外を賛美することはできないのです」という。

このような強固な宗教的見解に立脚した反対論はともかく、女性学者の持ち出した五輪憲章の規定は、現実とはなはだしく乖離(かいり)しているのではないか。

どの競技でも、メダルを獲得した選手は、国旗をまとって歓びを表している。スポーツを国威発揚の手段とする国は、いくらでも存在する。国別メダル獲得数については、憲章の精神は無視されているし、朝日新聞自身が掲載している。

五輪より、さらに国家やナショナリズムと関係が深いのが、サッカー・ワールドカップ(W杯)で、これこそ明白に「国と国との戦い」である。テレビでサッカーの国際試合を見ていると、ピッチの脇に朝日新聞の広告が出てくる。

朝日新聞が、日本代表チームの「サポーティングカンパニー」になっているからである。もし、ナショナリズムを忌避するなら、朝日新聞は速やかに公式スポンサーを解約すべきではないか。

【私の論評】朝日もNHKもネガキャン手法に限界?左翼・リベラル・中国にさえ見放される(゚д゚)!

ブログ冒頭の写真で掲載したように、8月20日NHK「おはよう日本」が報道した「五輪開催5つのメリット」ですが、これは著しく五輪憲章を逸脱していると言わざるを得ません。

以下に、この番組の動画を掲載します。



これはオリンピック憲章の「オリンピック競技大会は、 個人種目または団体種目での選手間の競争であり、 国家間の競争ではない」とした理念と真っ向から対立する考え方となっており、NHKがオリンピックの理念を何ひとつ理解できていないことを明確に示しているか、わざわざこのように事実を曲げて報道する背後に何らかの意図があるのではないかと思います。

ではなぜIOCは、オリンピック憲章に敢えて「国家間の競争ではない」と明記し、国家の威信や指導者の権力を披露する事を固く拒んでいるのでしょうか?それには苦い過去の経験があります。

オリンピックを 「国威発揚」のために徹底的に「政治利用」したのがヒトラー率いるナチスドイツでした。1936年にナチスドイツ下で開催されたベルリンオリンピックでは、国家の総力を挙げてスタジアムや選手村、各種インフラの整備が行われ、実験段階だったテレビ中継が実施されました。後にヴェネツィア国際映画祭で金賞を獲得するオリンピックの記録映画「民族の祭典」がナチスお抱えのレニ・リーフェンシュタール監督によって撮影されています。


レニ・リーフェンシュタール監督による「民族の祭典」

今ではオリンピック前の恒例行事として知られるようになった初の聖火リレーが行われたのもベルリンオリンピックで、この際の経路の詳細な調査結果が第二次世界大戦でのドイツ侵攻に活用されました。

このように、オリンピックが結果的にナチスドイツの「国威発揚」に荷担させられる結果になってしまったことから、オリンピック憲章ではオリンピックを国家のプロパガンダの場として政治利用することを拒んでいます。

ヒトラー 当時としては珍しいカラー写真
つまり、今回NHKが堂々と放映したオリンピック開催のメリットの筆頭に「国威発揚」を挙げるという行為は、近代オリンピックが過去の苦い経験への反省から作り上げたオリンピックの精神を土足で踏みにじるもの。どこぞのまとめサイトが書き散らしたのならともかく、仮にも次期オリンピック開催国の公共放送が全国ネットで放映していい内容では断じてありません。

さて、朝日新聞の8月23日朝刊のオピニオン欄「耕論」を朝日新聞デジタルから引用します。
(耕論)スポーツと国歌 宮本恒靖さん、江本孟紀さん、志田陽子さん

2016年8月23日05時00分 


 「国歌を歌えないような選手は日本の代表ではない」。選手団壮行会で、来賓からこんな発言も飛び出したリオ五輪が閉幕した。スポーツと国家、個人のかかわりを、改めて考えたい。

■プレーで応えるのが使命 宮本恒靖さん(元サッカー日本代表主将、ガンバ大阪ユース監督) 
宮本恒靖さん 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 初めて国際試合に出たのは高校2年になる春です。17歳以下の日本代表に選ばれました。自分のアイデンティティーというものを強く感じたのを覚えています。国民の代表として戦うんだ。このユニホームを着て戦う限り、ふがいないプレーはできない。そんな責任感が生まれました。 
 サッカーの国際試合では、キックオフ前に両チームの国歌が流れます。その初めての代表戦のときもそうでしたが、僕は歌いませんでした。歌いたくなかったということではないんです。理由は特になくて、慣れていないことが大きかったような気がします。その後、A代表にも選ばれ、何十試合と国際試合を経験していくなかで、歌うようになりました。 
 国歌が流れるのは、国際試合ならではのこと。そう考えると、聞きながら燃えてこないわけがない。今からこの国のために戦うということ、代表のユニホームを着られる喜び、誇り。そういうことを感じる瞬間です。自然と声が出るようになりました。 
 僕の場合、ゲームに向かう準備の最終段階で、心を整えるという意味合いもありました。歌いながら心を落ち着かせ、ほどよい高揚を持って戦いに出て行く。いわば、ルーティンです。 
 ただ、胸の中の思いは選手それぞれだし、どう表現するかも人によるものです。黙って目を閉じて、国歌を聞く選手もいます。その瞬間にどう振る舞うかは、意思の自由。心を一つにするためにみんなで歌うという方法もあるかもしれませんが、ルールを決める必要はないと思います。代表にいたとき、協会や監督から言われたことはないし、自分が主将のとき、決まりを作ろうとも思いませんでした。 
 いいプレーをしたり勝ったりすると、国中のみんなが喜ぶ。そういう日本代表の力を、地元開催の2002年W杯では実感しました。直接会うことはなくても手紙をくれたり、「病気だけど気分がよくなった」と言ってくれたりした人もいました。 
 たくさんの人にプラスのものをもたらせる立場にあるわけだから、もっとがんばらない手はない、となる。サッカー以外の代表も、同じなんじゃないでしょうか。 
 五輪の表彰式で、一番真ん中に国旗が掲揚されるという場面は、まさに喜びをもたらせた瞬間です。それを見ながら、誇らしいとか良かったとか、さまざまな思いがわくでしょう。その感情をどう表に出して、そして国歌を歌うか歌わないかも、選手それぞれですよね。見守ってあげてほしいなと思います。
選手としては、使命や期待に応えるのはプレーです。いかにチームや個人としてしっかり力を出すか。代表の役割もそこに尽きると思います。(聞き手・村上研志) 
* 
みやもとつねやす 77年生まれ。2002年と06年のW杯、04年アジア杯(優勝)で日本代表主将を務めた。11年に現役引退。

■競技と社会の関係、考えて 江本孟紀さん(プロ野球解説者、元参院議員) 
江本孟紀さん
 スポーツ選手は君が代を歌うべきだと思います。国際試合であれば、なおさら。相手の国への敬意を示す意味でも、自分の国の国歌に対して知らん顔というのはおかしいことになるでしょう。 
 民主党の参院議員だった1999年、国旗・国歌法案に賛成しました。党内には反対の議員も多かったのですが、国旗・国歌特別委員会でも、賛成の主張をしました。 
 教育現場で混乱が起きるのは国旗・国歌の法制化をしなかったからであり、過去の政治家と国民の間で、長くあいまいにされていた問題と考えたのです。
君が代の歌詞がわかりにくいとの批判がありましたが、そもそも校歌や社歌等も同じで私の出身高校の校歌だって明治時代の歌詞でさっぱりわからない。それでも、甲子園で校歌が流れれば故郷を思い感激しますといった持論を特別委で展開しました。首相だった故・小渕恵三さんから、「素晴らしい質問だった」と後で電話をもらいましたよ。 
 当時、国歌を歌うよう強制はしないと政府は答弁していました。しかし、その後、東京で石原慎太郎都知事、大阪で橋下徹府知事がそれぞれ登場したことなどもあって、教育の現場では強く指導する流れになっていますね。 
 何が強制にあたるかという問題でしょうが、学校で毎日歌わせるのならともかく、年に1回か2回の儀式と、そのための何回かの練習が強制にあたるとは思えません。 
 スポーツの世界で、戦時の経緯を考え、政治的に歌いたくないという選手が歌わないのなら、それでいいと思うんです。 
 ただし最近、スポーツ選手が「日の丸を背負って」「国を背負って」といった言い方をしきりにする傾向があると感じています。大げさな感じであまり好きじゃない表現ですが、そのように言う以上は、君が代を歌えないのは矛盾するでしょう。 
 根底にあるのは、選手も指導者も、ここぞという国際試合の場で国歌にどう向き合うかしっかり考えていないことだと思います。さらに言えば、国や政治とスポーツは関係ないと思っている当事者が多すぎるのではないか。 
 国歌を歌わない選手に苦言を呈した森喜朗さんも「選手にはもっと、競技活動と国との関係を考えてほしい」と言いたかったのではないか、と受けとめています。 
 五輪での選手のコメントは、コーチや親など、身の回りにいる人たちへの感謝の言葉がほとんどでした。それはそれで結構ですが、活動できたのは税金で助成してもらったり、税制上の優遇を受けた学校などのスポーツ施設を使ったりしたからのはず。もう少し社会や政治とのかかわりに心を寄せてほしいものです。(聞き手・池田伸壹) 
* 
えもとたけのり 47年生まれ。プロ野球の阪神、南海で投手として113勝した。92年から参院議員に2期連続で当選。

■公人の発言、萎縮招く恐れ 志田陽子さん(武蔵野美術大学教授) 
志田陽子さん
  リオデジャネイロ五輪で、日本人選手を応援し、感動するのは自然なことです。表彰式で君が代が流れ、感激した人も多かったでしょう。 
 開催中、五輪憲章を読んでみました。日本国憲法と通じる点が多いことに驚きました。 
 オリンピックは、平和な社会と「人間の尊厳」を推進することを目的としていて、憲法と共通する精神を持っています。さらに、憲章は第6条で「オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない」と明記し、競技者個人を参加主体としています。 
 国別のメダル獲得数が報道されていますが、同憲章では、国際オリンピック委員会と組織委員会が国別のランキングを作成することを禁止しています。国ではなく、選手とチームが主体なのです。 
 日本国憲法では、第13条が保障する「個人の尊重」がこれに通じるでしょう。選手は個人の自己決定幸福追求権)をもとに全力を尽くしているのです。 
 歴史を振り返れば、第2次世界大戦にいたるナチスドイツに顕著に見られたように、国民感情を都合よく操作するために、権力者が芸術とスポーツを利用してきました。日本でも総力戦体制で、文学、美術、音楽、映画やスポーツが国威発揚や戦意高揚に動員されました。個人より国家を重視していたのです。 
 五輪憲章も日本国憲法も、こうした反省の上に立っているのだと思います。
そんな流れを知ってか知らずか、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相が、リオ五輪へ向けた代表選手の壮行会で「国歌を歌えないような選手は日本の代表ではない」と発言しました。大変残念なことです。オリンピックの精神からも憲法の理念からも、権力が個人の心の中に入り込むことがあってはならない。国歌を歌うか歌わないかは、選手に任されるべきです。 
 例えば実業団チームを持つ企業の経営者が「わが社の商品を知らないようでは、うちの選手ではない」と言うのは許されるかもしれない。しかし、政治家など公的な立場にある人の発言は、選手だけでなく社会を構成する一般の人たちにも影響します。直接批判されていない人にも、発言を忖度(そんたく)し、レッテル貼りを恐れることによる迎合や萎縮をもたらす効果がある。公的立場にある人は、自らの影響力を自覚し、個人的選好を強制する発言は慎まなければなりません。 
 スポーツや文化活動にはお金もかかります。民主的な決定に基づいて国が公的にサポートするのはすばらしいこと。しかしその場合も、国はあくまでも応援団に徹するべきです。(聞き手・池田伸壹) 
* 
しだようこ 61年生まれ。専門は憲法。編著書に「表現者のための憲法入門」「映画で学ぶ憲法」。講演と歌唱の活動も。
NHKの報道も、朝日新聞の報道も、一見コインの表裏のように異なるようにも見えますが、 結局目指すところは同じなのだと思います。

NHKの報道に関しては、オリンピックそのものにナチスばりのネガティブな印象を強調し、安倍政権批判に結びつけるということだと思います。

朝日新聞のほうは、五輪憲章を強調し、森喜朗会長(元首相)が「国歌も歌えないような選手は日本の代表ではない」と苦言を呈したことを強調し、あたかもこの発言が、五輪憲章を踏みにじるかのように印象付け、ネガティブな印象を強調し、安倍政権批判に結びつけるということであると考えられます。

どちらも、安倍政権批判に結びつけようとしています。しかし、オリンピックそのものをネガティブに仕立てようと、国歌を歌えない選手に苦言を呈したもと総理大臣のことをことさら強調しようと、多くの人の国歌に対する考え方や、オリンピックに対する考え方を変え、さらにそれをもって、多くの国民に対して、安倍政権に対して、ネガティブな意識を植え付けることなどできるのでしょうか。

ほとんど、無理ですね。ほとんどの人は、このようなキャンペーンに影響されることはないでしょう。にもかかわらず、なぜこのような姑息なことをするのでしょうか。

もう、NHKも朝日新聞も、多くの国民に見透かされネガキャン手法に限界がきているのではないでしょうか。もっと、もっとやり方はあるはずです。

どうせやるなら、もっと効き目のあるまともなキャンペーンはできないものなのでしょうか。彼らの立場に立って物事を考えてみても、情けないの一言です。この有様では、両方共左翼・リベラルそうして中国からさえ、効き目のないメデイアとして相手にされなくなるのではないでしょうか。

中国は、このまま効き目のないメディアを放置しておいて良いはずがありません。日本のメディアがまともに日本政府を貶められるように、まともなネガキャンができるわように、督戦隊を送り込むべきです。

無論、これは冗談ですよ。たまに、真に受ける人がいるので、念のため掲載しておきます。

結局いいたいことは、朝日も、NHKもなぜか日本や、日本政府を貶めるような報道をするのですが、それがほとんど効果がなくなっているということです。これでは、いずれ、左翼・リベラル、中国にも見放されることになるのは必定です。

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2016年8月2日火曜日

日銀の資金供給 8か月連続で過去最高を更新―【私の論評】金融緩和政策は限界でなく、まだまだ不十分なだけ(゚д゚)!

日銀の資金供給 8か月連続で過去最高を更新



日銀が市場に供給しているお金の量を示す「マネタリーベース」は、大規模な金融緩和を続けていることから先月末時点で403兆円余りとなり、8か月連続で過去最高を更新しました。

マネタリーベースは、世の中に出回る紙幣と硬貨、それに、民間の金融機関が日銀に預けている資金「当座預金」の残高を合わせたもので、日銀が市場に供給している資金の量を示します。

日銀の発表によりますと、先月末時点のマネタリーベースは403兆9463億円で、前の月と比べて91億円増え、8か月連続で過去最高を更新しました。これは、日銀が、目標としている2%の物価上昇率の実現に向けて、国債などを買い入れて市場に資金を供給する大規模な金融緩和を続けているためです。

ただ、大規模な緩和にもかかわらず物価上昇率は先月下旬に発表された最新の統計で4か月連続のマイナスとなっていて、目標の達成は遠い状況です。このため、日銀は、来月開く次の金融政策決定会合で今の金融緩和策の効果を総括的に検証することにしています。

【私の論評】金融緩和政策は限界でなく、まだまだ不十分なだけ(゚д゚)!

先月の29日から、31日まで、私は札幌から函館、仙台まで行っていましたので、その間の出来事などこのブログに掲載できませんでした。知事選関連はいろいろと掲載していましたが、日銀関連は掲載していませんでした。そのため、この間の重要な出来事であった、先月日銀の金融政策決定会合について掲載することにしました。

先月29日開催された日銀金融政策決定会合 中央奥は黒田日銀総裁
ブログ冒頭の記事では、マネタリーベースは8か月連続で過去最高を更新したことを伝えており、これだけだと、金融緩和は十分であるかの印象を受けます。しかし、そんなことはありません。実は、日銀の金融緩和政策は、まだまだ不十分です。

このような報道の仕方は、2012年のWBSという報道番組が報道したように、かなりのミスリーディングなものです。その報道番組についてはこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日銀総裁、インフレ目標に否定的 「現実的でない」―【私の論評】インフレ目標を否定する、白川総裁本音炸裂!!マスコミはその協力者!!
この記事は、2012年11月13日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、WBSの紛らわしい報道に関する部分のみ以下に抜粋します。
たとえば、昨日のWBSでは、以下のような画像が流されました。 
この画像驚くべきことに、日本のマネタリーベース(市場に出回っているお金)が世界一であるかの印象を植え付けるようなものです。これをみると、大方の人は、あたかも日銀がかなりの金融緩和をやっているように曲解すると思います。これは、実額を示しているものなのでしょうか、それとも・・・・・・。とにかく、実額にしても、対比にしてもあり得ないことです。WBSは、このような誤解を招くような報道をしたことを謝罪するべきです。
わかりやすくするには、どこかを基準として、そこからどのように伸び率が変わったかを複数の国で比較すべきで。たとえば、2000年を100とすると、以下のようになります。このような表示の仕方が一番わかりやすいです。こうしてみると、いかに、日銀が金融緩和をしていないか、一目瞭然です。こういう表示をすべきです。

それにしても、WBSの表示、なぜあのようになるのか、理解に苦しみます。そうして、WBSでは日本は、流動性の罠にはまっているので、財政出動をしても効き目はなく、規制緩和や金利の引き上げをしろと報道しています。需要がないので、現状では金利が下がっているのに、無理やり金利を引き上げれば、需要はますます冷え込むだけです。WBSは、リチャード・クー氏などがでているときは、本当に良い番組だったのですが、最近は日銀御用メディに成り下がってしまったようです。

ブログ冒頭の記事は、このWBSの報道のように酷くはないですが、それにしても誤解を招くような報道です。まるで、現在の日本が金融緩和は十分にすぎるほどに実施されているかのような印象を与えます。それは全く違います。本日は、それについて掲載します。

日銀は先月29日、金融政策決定会合を開き、追加金融緩和を賛成多数で決めました。緩和は1月のマイナス金利政策の導入決定以来、6カ月ぶり。株価指数連動型の上場投資信託(ETF)の買い入れを現在の年3.3兆円から6兆円に増額します。企業や金融機関の外貨調達の支援強化も決めました。金融機関が預ける日銀当座預金の一部に適用するマイナス金利は現行水準のマイナス0.1%に据え置きました。

日銀は政府が8月2日閣議決定する総合的な経済対策と「相乗効果を発揮する」と表明。政府と日銀が連携し、デフレ脱却へ向け、2%の物価上昇目標の実現を目指す強い決意を示しました。

ETF買い入れの増額は政策委員9人のうち、賛成7人、反対2人でした。通貨供給量を増やすため実施している現在の年間80兆円の国債購入は増額を見送りました。

今回の会合でまとめた日銀の最新予測である「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、2%の物価上昇目標の実現時期について、従来通りに「2017年度中」としながらも「海外経済の不透明感から不確実性が大きい」との文言を加えました。

しかし、二年ほど(2015年終わり)でインフレ目標2%を達成するはずが、いまや2017年真ん中を見込むという一年半も後倒しになっている状況があります。




これは日本銀行の政策への信頼性・やる気を毀損していることは疑いありません。その原因は、消費税増税と国際環境の不確実性にあります。政府は消費増税の悪影響を回避するために、今回再延期に踏み切りました。当然にその認識を日銀が共有しているのなら、早期に追加緩和により積極的な対応を準備すべきでした。ところが、それをしていませんでした。

その認識の甘さが、今回のようなほとんど政策効果がないような、「追加緩和」に帰結しまった主な原因です。これは、やらないよりはましな、まさに政府の圧力への官僚的回答に過ぎません。

日銀は追加緩和の理由に関し、英国の欧州連合(EU)離脱問題や新興国経済の減速など海外経済の不透明感が高まり、金融市場は不安定な動きが続いていることから「企業や家計のコンフィデンス(心理)悪化につながるのを防止する」のが狙いだと説明しました。

展望リポートでは、16年度の消費者物価(除く生鮮食品)上昇率見通しを前年度比0.1%(従来0.5%)に下方修正。17年度は1.7%と従来見通しを維持しました。

今後の金融政策に関しては「必要な場合は追加的な金融緩和措置を講じる」と改めて強調。次回9月の決定会合で、現行の大規模緩和政策の効果などについて、総括的検証を行うことを明らかにしました。

しかし、この追加金融緩和策は、市場の期待を裏切る内容でした。黒田東彦(はるひこ)総裁は9月にも一段の緩和を示唆していますが、後がありません。専門家は、黒田総裁が対応を誤れば次期総裁人事に影響が出てくるほか、日銀内での「クーデター」の可能性についても言及しています。

日銀は上記のように、上場投資信託(ETF)の買い入れ額を年3・3兆円から6兆円に増やした一方で、市場に供給するお金を年間80兆円のペースで増やす「量的緩和」は拡大せず、出し渋りの感は否めません。

上武大学教授 田中秀臣氏
日銀の金融政策をウオッチし続けてきた上武大教授の田中秀臣氏は、「批判の矢面に立たないようにETFを増額するが、量は増やさないというやり方は、昔の日銀の発想に戻ってしまったようだ」と批判しています。

黒田総裁は、2013年以降の金融緩和について「総括的な検証」をしたうえで、9月にもさらなる緩和を実施する可能性があるとしました。サプライズ狙いから、市場との対話路線に転じる構えですが、効果は不透明です。

しかし、この「総括な検証」の指示でも、いまのインフレ目標2%達成の遅れが、消費増税などの悪影響という国内要因ではなく、あくまで国外要因の責任にしています。これではいつまでたっても国内の経済低迷の原因について真摯な「総括的な検証」は行われないのではないでしょうか。

このまま黒田日銀が政府とのポリシーミックスに適応不全を続けるようであるならば、日銀法の改正やまたそれに伴う幹部の一掃が要される事態になるのではないでしょうか。 いまの日本では財務省出身や日本銀行プロパーにこだわる人材選択、または悪しきエリート主義への信奉こそ、政策の実現を遅らせるものはないと思います。黒田日銀にはその病理がいま集中して現れているように思えてなりません。

本田悦朗スイス大使
前出の田中氏は「日銀の組織防衛的なスタンスが続けば、安倍政権自体も追い込まれかねない。次の決定会合に政府側の委員として位の高い人物を送り込むほか、日銀法改正をちらつかせるなど政治的なプレッシャーをかけることがありうる。18年の次期総裁人事では、積極的な緩和論者である本田悦朗スイス大使を起用する可能性も高まったのではないか」と指摘します。

田中氏は、黒田総裁や日銀事務方のスタンスが変わらない場合、理論上は、決定会合で「クーデター」を起こせるという大胆な仮説を立てています。

「リフレ政策に理解のある委員は(9人中)5人いる。1回限りであれば、総裁らが反対しても大胆な量的緩和を可決することは可能だ」

黒田総裁にとっては、9月が信頼を取り戻すラストチャンスなのかもしれません。

田中氏は、本日以下のようなツイートをしています。
本当に、マスコミも識者でも、日銀の政策決定に関する批判について勘違いしている人が大勢います。特に田中氏のツイートの中の"1)政策手段や手段が尽きたから批判する"不思議な人が大勢いて困ります。そういう人の中には「アベノミクスは限界」などという、頓珍漢、奇妙奇天烈な批判をする人がいるので困ります。私は、こういう人々の仲間ではありません。

"8月3日 訂正:上のツイートで、ヘッドダイン寄生は「ヘッドライン寄生」の間違いでした。田中氏自身も間違えていたのでそのまま掲載しました。田中氏も本日ご自身で訂正されています"

あくまで、田中氏もそうですが、私も"2)政策手段や手段はあるのにやらないことを批判"しているのです。

そうして、その根拠は以前にもこのブログに掲載しました。それを以下に再掲します。その記事のリンクを以下に掲載します。
日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定―【私の論評】日銀は批判を恐れずなるべくはやく追加金融緩和を実行せよ(゚д゚)!
この記事は、今年の6月のものです。やはり、6月の金融政策決定会合が開催され、この時も追加金融緩和が見送られました。今回の追加見送りも、結局このときの見送りと同じような理由によるものと考えられます。以下に一部引用します。
結論からいうと、日銀は追加金融緩和を行うべきでした。以前このブログにも掲載したように、いくら金融緩和しても下げられない失業率を「構造的失業率」といい、実際の失業率が構造的失業率まで下がらないと、物価や実質賃金は本格的に上昇せず、インフレ目標の達成もおぼつかないことになります。
構造的失業率などについて以下に簡単に解説しておきます。 
総務省では、失業を発生原因によって、「需要不足失業」、「構造的失業」、「摩擦的失業」の3つに分類しています。 
  • 需要不足失業―景気後退期に労働需要(雇用の受け皿)が減少することにより生じる失業 
  • 構造的失業―企業が求める人材と求職者の持っている特性(職業能力や年齢)などが異なることにより生じる失業 
  • 摩擦的失業―企業と求職者の互いの情報が不完全であるため、両者が相手を探すのに時間がかかることによる失業(一時的に発生する失業)
日銀は、構造失業率が3%台前半で、直近の完全失業率(4月時点で3・2%)から下がらないので、これ以上金融緩和の必要がないという考えが主流のようです。 
過去の失業率をみてみると、以下のような状況です。
過去20年近くは、デフレなどの影響があったので、あまり参考にならないと思ういます。それより前の過去の失業率をみると、最低では2%程度のときもありました。過去の日本では、3%を超えると失業率が高くなったとみられていました。
このことを考えると、日本の構造失業率は3%を切る2.7%程度ではないかと考えられます。 
であるとすれば、現在の完全失業率3.2%ですから、まだ失業率は下げられると考えます。だとすれば、さらに金融緩和をすべきでした。

しかし、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は、すでに実際の失業率が構造失業率に近い水準まで下がっているのに、なぜ賃金が上昇しないのか、疑問を持っていたようです。にもかかわらず、今回は追加金融緩和を見送ってしまいました。
構造的失業率が2.7%程度あろうことは、高橋洋一氏も述べていますし、他のまともな経済学者もそう考えている人が多いです。無論、マスコミや日本の主流の経済学者や民間エコノミストたちはそう考えていないようですが、彼らは8%増税の影響は軽微などとしていたくらいですから、全く信用できません。

本来は、この時期に追加金融緩和を実施すべきでした。大規模な追加金融緩和を行えば失業率は2.7%程度にまで下がり、そこからほとんど下がらなくなり、賃金が本格的に上昇することになります。そうなると、物価上昇が始まることになります。

「アベノミクス」の特に金融緩和政策は、限界に来たのではなく、8%増税などを実行してしまっため、まだやり足りないのです。もし、8%増税をしていなければ、物価上昇2%はもうすでに達成できていたかもしれません。とにかく、失業率が2.7%まで下がらないようでは、十分とはいえないのです。

この認識ができない、黒田総裁にはやめていただく以外に道はないのかもしれません。あるいは、日銀法を改正して、日本国の金融政策の目標は政府が定めて、その目標を実現するための手段を日銀が専門家的立場から自由に選ぶことができるという具合に改めるしかないかもしれません。

【関連記事】

日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定―【私の論評】日銀は批判を恐れずなるべくはやく追加金融緩和を実行せよ(゚д゚)!






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2015年6月8日月曜日

憲法学者の限界! アメリカが「世界の警察官」をやめた今、日本はどう生きるのかを考えるべき―【私の論評】米国分裂後日本はいかに生き残るのか?ありえるシナリオに備えよ(゚д゚)!


中国の南シナ海での埋め立てに抗議する人びと(フィリピン、マニラ)

憲法審査会で、与党の参考人が、安保法制を「憲法違反」とする異例の事態があった。4日の衆議院憲法審査会で、憲法学の専門家3人の参考人質疑が行われた。自民党が推薦した長谷部恭男教授は、今国会で審議されている安保法制を憲法違反とした。

そもそも参考人質疑とは?

国会での参考人は、各党の推薦で決まる。実際には、各党国会議員や担当者から本人に都合などの打診があって、その後に国会担当者からの実務的な連絡があることが多い。法案を推す省庁からの要望を与党が受けて参考人にすることもある。

各党国会議員や担当者は、参考人に頼む人をよく知っているので、参考人の意見も当然知っているのが普通である。各党の推薦する参考人が各党の意見と異なるのはまず考えにくい。この意味で異例である。

ただし、これは自民党国会議員のミスである。なお、参考人については与野党筆頭幹事協議での合意を経て幹事懇談会で決定しているので、誰がどこの党の推薦という言い方は若干不正確である。この人選には、公明党は関与していないと言っている。

一般論として、憲法学者に限らず法律学者は、「法律にこう書いてあるから○○だ」や「この法律はこう解釈すべきだから××だ」という論法をとる人たちの集まりで、今ある法律や法解釈を金科玉条のように扱うので、法改正や解釈変更には消極的なことがしばしばある。

一方、国会議員は、今の法律では現場として不都合である場合、法律改正することに拘りはない。まして、国会議員は法律を作るのが仕事であるので、現場を知らずに法律改正に反対する法律学者とは意見が合わないことも少なくない。

また、国会での審議過程において、法案を憲法違反とする意見は、反対者のほうから出されることが多いが、実際に違憲を決めることができるのは、最高裁である。法案が成立した後に、訴訟が実際に行われて、初めて司法が判断して、違憲になるわけだから、国会の参考人質疑は単なる学者の意見でしかない。

財務省で学んだ法律観

筆者のような理系出身者は学生時代に法律を勉強しなかった。財務省に入省してから、法律について仕事をやりながら学んだ。国会議員ではなく、役人が法律を書くのかと驚きながらだ。

その時に、財務省の東大法学部出身者から法律を勉強した結果、法律はその時の決まりなので、ちょっとした争いごとの解決のツールとしては役に立つが、社会的に望ましいことをやるためにはあまり役立たないと思った。

何か問題が起こった時、裁判でもあれば、それで片がつくこともある。しかし、社会問題では、そのときの法律では解決策にならない場合もあり、そうした問題のほうが大きい。その場合、新たに法律を作るか、法改正で対処するのだ。

そうした新規立法や法改正では、法律の知識より経済の知識などが、望ましい解のためには有用であった。

法律学者は「上から目線」

役人をしている間に、法律学者の生態もわかってきた。

筆者のように理系だと、学問の世界では多数意見というのは何の権威でもない。特に、筆者が学んだ数学ではロジックだけが唯一の判断基準であり、間違っていれば、どんな権威のある人でも間違いである。「学問に王道なし」だ。

法律では、一定の権威のある人の意見が尊重される。そして、多数の考えのほうがよりマシとされることが多い。

ただし、権威のある人の意見がいいというのは、今でも違和感がある。

そうした法律学者は、バカな政治家に判断させないために、権威がある自分たちの意見が正しいという「上から目線」である。

立憲主義というロジックの謎
そうした権威のある憲法学者が、安保法制が憲法違反であると言うときのロジックが「立憲主義」というものだ。

憲法の中に、侵略戦争放棄のように時代を超えた普遍的な原理があり、それを守るというのであれば、わからなくないが、そうではない。

さらに、「憲法96条の改正なんて、立憲主義からはトンデモナイ」と言われることもある。かりに「憲法96条」を改正しても、日本の憲法改正難易度は世界的に見て低くない。むしろ最高難易度の国のままだ。ようは、憲法改正をしたくないというだけだ(2013年5月6日付け本コラム http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35686)。

安全保障について、今国会で議論されているのは、集団的自衛権の行使である。そもそも、個別的も集団的も自衛権は、時代を超えてどこの国にもある個人における正当防衛のように不可分である。

何にもまして、立憲主義の先生方は、本コラムで書いているような南シナ海の情勢や尖閣諸島への中国の潜在的な侵略のおそれをまったく考えていない。

世界の常識

民主党もお花畑のような思考に凝り固まっており、戦後日本が平和だったのは個別的自衛権のみだったからという、驚くべき意見も出ている。

戦後日本が大丈夫だったのは、日本の再軍備を恐れたアメリカが守ってきたからだ。集団的自衛権を持っているが行使しないというのは、世界では馬鹿げた意見だが、なにより日本の無力化を図りたいアメリカにとっては、その方便も好都合だっただけだ。

その上で、二国間の安全保障条約があれば、集団的自衛権は当然となる。米軍に基地を使わせておきながら、戦争に加担していないなんて言えるはずないのが世界の常識だ。それでも日本が侵略されなかったのは、背後にアメリカがいたからだ。つまり、集団的自衛権のおかげでもある。

アメリカがかつて「世界の警察官」であったので、盤石であった。それでも、自国に弱点があって日本でできることであれば、日本に頼んで来たことがある。朝鮮戦争の時、朝鮮半島での機雷掃海だ。占領下で占領軍指令に基づくとはいえ、当時の海上保安庁は特別掃海隊を韓国領海内に派遣し、機雷掃海を行い、作業中に死傷者も出ている。

こうした事実について、法律学者は、降伏条項による占領軍指令なのでやむを得ないが、憲法違反とか法律違反だという立場であろう。

犠牲者が出たのは本当に残念であるが、日本が機雷掃海をしなかったら、大きく国益を損ない、場合におっては、九州あたりまで朝鮮戦争の戦火に巻き込まれ、日本の安全も脅かされていたかもしれない。犠牲者を出したが、その当時の貢献があったので、それ以降の日本の安全がおおいに高まったと思われる。

「世界の警察官」が不在の世界をどう生きるか

今現在でも、中国の南シナ海でもオーバープレゼンスは国際問題だ。ドイツで7、8の両日に開催される先進7ヵ国(G7)首脳会議(サミット)でも、取り上げられるだろう。

それを見越して、3日に来日したフィリピンのアキノ大統領は、参院本会議場で中国の横暴を訴えた。これを日本が世界に伝えるのは当然だろう。

安倍首相と欧州連合(EU)のトゥスク大統領らが5月29日に発表した共同声明にも、「東シナ海・南シナ海の現状を変更し、緊張を高める一方的行動を懸念している」とある。これは中国のことだ。

アメリカのオバマ大統領は、2013年9月10日、シリア問題への対処の中で「もはや世界の警察官ではない」とテレビ演説した。その直後から、中国は南シナ海に出てきた。これは、中国がアメリカは軍事行動しないと高を括ったからだ。

警察官は、相手が見返りなしでも助けてくれる。「世界の警察官ではない」という意味は、同盟国なら相互主義で正当防衛は行使する、つまり同盟国間で集団的自衛権を相互に使うのであれば助けるという意味だ。

もはや世界が変わっているときに、日本でしか通用しないような「立憲主義」を振りかざすのは、国益を損なうだろう。

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】米国が分裂後世界に日本はいかに生き残るのか?ありえるシナリオに備えよ(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の主張、最もです。憲法学者や、野党議員それにマスコミには上記で示した、当たり前の常識を理解していないのか、理解していながら、中国の代弁者として日本国内を引っ掻き回しているだけだということに全く気づいていないようです。全く愚かです。

上の記事で、高橋氏が「米軍に基地を使わせておきながら、戦争に加担していないなんて言えるはずないのが世界の常識だ」と述べています。全くそのとおりです。

戦後日本は、日本国内に米軍基地を設置したということで、米軍の兵站機能を担ってきました。兵站とは、戦闘地帯から後方の、軍の諸活動・機関・諸施設を総称したものです。

この兵站を米軍に提供したということで、日本は十分に戦争の当事国であり、他国の軍民をこれまでも殺し、そして今後も殺す可能性があるのだという認識に立つべきです。

こうした認識をしない限り、護憲改憲論議をしても全く無意味です。そもそも、日本人の多くには兵站という言葉を知らないか、知っていてもそれが軍事的にどの程度重要なものか理解しない人も大勢いるようです。

負けるはずのなかった、大東亜戦争において日本が負けたのも、戦線をあまりに拡大しすぎて、兵站が十分でなかったことが、大きな理由です。

兵站こそ戦争の勝ち負けを左右する重要な要であることは、大昔から現在に至るまでの真実です。

米軍の兵站を担っているというだけで、戦後日本は戦争の当事者であったし、これからもそうであり続けるという認識のない輩は、そもそも安保法制がどうのこうのという資格は全くありません。

東日本大震災で流された橋の応急復旧など、自衛隊施設団の出動
戦時においては、これも重要な兵站設置作業の一環である。
ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事でも触れられていたように、日本もアメリカが「世界の警察官」をやめた後の世界を考えて行動しなければなりません。まさしく現在の安保法制の国会の審議は、これに備えるものでもあるのです。

アメリカは、「世界の警察官」を完璧にやめるということは、十分に想定できることです。それどころか、アメリカにはもっと大きな変化が起こる可能性もあります。

それは、アメリカの分裂です。その可能性については、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
アメリカ合衆国分裂の筋書き-我々の生きている時代、もしくは当面はありえない話か?
分裂後のアメリカ地図
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事ではロシアの学者らによる、アメリカ分裂の筋書きを掲載しました。以下に一部のみをコピペさせていただきます。
ロシアの学者が「2010年にアメリカは6つの国に分裂する」という説を唱えて話題になっているとウォール・ストリート・ジャーナルが伝えています。(参考記事:英文) 
この説を主張しているアイゴア・パナーリンは元KGBのアナリストで現在はロシア外務省の外交官養成アカデミーの学長を務めています。概要では以下のように分裂するそうです。 
・カリフォルニアは「カリフォルニア共和国」となり、中国の庇護を受ける
・テキサスは「テキサス共和国」となりメキシコの庇護を受ける
・ワシントンDCとニューヨークは「アトランティック・アメリカ」としてEUと連携
・中西部は「中西部アメリカ共和国」としてカナダの庇護を受ける
・ハワイは日本もしくは中国の庇護の下に収まる
・アラスカはロシアの一部となる
その論拠としては、以下にようなことが言われています。 
アメリカがこれほどの貿易赤字と財政赤字を生んでいても繁栄してこれたのは、ドルが基軸通貨であり、貿易の際に全ての国がドルを決済のために一旦買って、 資金がアメリカに流れ込んで貿易収支の赤字が補填されたためと、それからアメリカに輸出を行う日本や中国などが為替レートを維持するために大量のアメリカ 国債を買い込んでアメリカの財政赤字が補填されたためである。 
わかりやすく言うと、アメリカは基軸通貨ドルを刷りさえすればいくら赤字を垂れ流していても大丈夫だったわけである。 
しかし、ドルが基軸通貨で無くなれば、これらの資金は全くアメリカに入ってこなくなる。そしてそれは論理必然的にアメリカ経済の完全な崩壊を意味しているわけだ。
ポンドが基軸通貨でなくなった、イギリスは今でも健在です。ドルが基軸通貨でなくなったとしても、アメリカは衰退するかもしれませんが、分裂するというのは甚だ疑問です。

実際、このブログ記事で、私は「 我々の生きている時代、もしくは当面はありえない話か」と結論づけています。この予測では、2010年にアメリカが分裂するとしていましたが、実際アメリカは2010年になっても分裂しませんでしたし、これから先もすぐには分裂しそうにもありません。

しかし、現在のアメリカを見ていると、あながちこのシナリオはなきしにもあらずと思うようにもなりました。

特に昨日もこのブログで掲載したように、アメリカ大統領の権限は平時にはなかり限定的であるという事実があります。

軍事力で勝てない、ロシアや中国、その他の敵対勢力は、平時ではアメリカ大統領の権限がかなり弱いということを利用して、アメリカに対して様々な情報戦を仕掛けています。これに対してアメリカ側の体制は全く整っていません。

そうして、米国は第二次世界大戦直前までに、当時のソ連のスパイがアメリカの中枢部に浸透していたことが、ベノナ文書によって明らかにされています。これに対して、アメリカ国内ではマッカーシー上院議員が戦後に、これらスパイをあぶり出そうとしたのが、「マッカーシー旋風」です。

しかし、この試みは「中世の魔女狩り裁判と変わらない」と批判され、結局頓挫して、マッカーシーは非業の死を遂げてしまいました。

正しい主張をしたマッカーシー上院議員

しかし、この頃から、アメリカの体質は今でも変わっていません。政界、国会議員、マスコミもまともな保守派はほんの一割程度しか存在せず、残りの9割は頭がお花畑的なリベラル派であり、昔アメリカ中枢部にソ連スパイが浸透していったときのように、あまりにも無防備です。

このあたりの事情については、私が解説するよりも以下の動画をご覧頂いたほうが、わかりやすいと思います。



 いくら、現在のアメリカが軍事力でも経済力でも他国から比較すれば、突出した唯一の超大国であったにしても、相対的には力は弱まっています。さらに、まともな保守が少なく、頭がお花畑リベラルの多いアメリカは、今後も従来通りの「世界の警察官」であり続けるとは難しいです。近いうちに、アメリカが「世界の警察官」をやめることは、十分に予想のつくことです。

さらに、長期的には、アメリカのお花畑頭が改善されなければ、第2次世界大戦直前のように、アメリカ中枢にまで、ソ連スパイが浸透したように、これからも浸透され続け、これらの画策によって、第二次世界大戦がそうであったように、戦う必要もない国々と戦い自ら疲弊することになるかもしれません。

アメリカはもはや世界の警察官ではない
こんな危険な状況に、アメリカ国民はもとより、日本国民の多くも気づいていないようです。日米双方の軍人である若者が、大東亜戦争ではあれだけ血を流して多数死亡し、日本には原子爆弾が投下されたり、大空襲で大勢の民間人が多数死んでも気づかず、まるで中国の代弁者のように、馬鹿な議論を繰り返す、頭からお花畑の憲法学者、政治家、官僚やマスコミにはほとほと愛想がつきました。

現実にはあり得ないような、お花畑的世界観でものを語り、日本国を守るために法整備をしなくても良いと思い込むようなことは、アメリカが2010年に分裂するという予想よりも、はるかにあり得ない妄想です。

お花畑の住人たち
今のアメリカが未来永劫にそのままあり続けるという考えは、単なる妄想です。アメリカは近いうちに、やりたくても世界の警察官をできなくなります。そうして、2010年には分裂はしなかったものの、今から10年、20年後には保証の限りではありません。

アメリカが分裂すれば、アメリカも超大国ではなくなり、分裂したそれぞれの国が、ドイツや日本のように、経済的にはある程度良い程度の普通の国になります。普通の国は、世界の警察官にはなり得ません。そのような時には、複数の国による集団的自衛権が重要になります。そういうシナリオも想定して、今から準備しておかなければ、とても日本の安全保証など考えることなどできません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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