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2018年10月13日土曜日

【田村秀男のお金は知っている】相次ぐ謎の要人拘束は習主席の悪あがき? 米との貿易戦争で窮地に追い込まれた中国―【私の論評】要人拘束でドルを吐き出させるも限界!金融戦争では中国に微塵も勝ち目なし(゚д゚)!

【田村秀男のお金は知っている】相次ぐ謎の要人拘束は習主席の悪あがき? 米との貿易戦争で窮地に追い込まれた中国

范氷氷(ファン・ビンビン) 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 中国では要人の行方不明、拘束、さらには引退劇が相次いでいる。謎だらけのようだが、拙論は米中貿易戦争で追い込まれた習近平政権の悪あがきだとみる。

 ここ数カ月間で行方をくらましていた多くの要人のうち、何人かの消息が最近判明した。注目度ナンバーワンが、人気女優の范氷氷(ファン・ビンビン)氏(37)で、今月3日、脱税などの罪を認め、追徴金など8億8300万元(約146億円)を支払うことで赦免された。

 中国のネット情報によれば、彼女は北京市内などに保有する約40軒の超豪華マンションを売却して支払いに充当する。「カネで刑務所行きを免れるとは許せない」との批判がネットで渦巻いている。

 中国政府は7日、国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)の孟宏偉総裁の身柄を拘束していると発表した。中国の公安省(警察)次官でもある孟氏は、ICPO本部があるフランスのリヨンから中国に向けて9月25日に出発した後、行方不明となっていた(10月8日付の英BBCニュースから)。

孟宏偉氏

 フランス・リヨンに本部のあるICPOのトップを拘束するという異常ぶりに、世界があぜんとしているが、習政権にはそんな国際的反響などに構っていられない事情がある。

 孟氏は隠然とした影響力を持つ江沢民元党総書記・国家主席派に属するといわれる。習氏が追及する党長老たちの巨額資金の対外持ち出しに関与していると疑われたのだろう。

 9月10日頃には、ネット・ビジネスで大規模な流通革命を起こした中国を代表する民営企業、アリババ集団の馬雲(ジャック・マー)氏が来年9月に会長を退任するという衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。巨万の富を築いた本人は後継者も指名し、あとは大学教授として後進の育成にあたると言い、もっともらしいが、真に受けてはいけない。馬氏もまた、巨額の金融資産を海外でも築き上げている。

Forbes氏の表紙を飾った馬雲氏
 
 女優の范氏の資産も中国国内の超豪華マンションだけというはずはない。海外に莫大(ばくだい)な資産を配置しているに違いない。

 范氏、馬氏に限らず、中国の大富豪、実力者たちがよく使う資産逃避ルートは必ずといってよいほど、香港経由である。香港こそはICPOによるマネーロンダリング(資金洗浄)の最大の監視ポイントである。孟氏がその職権を利用して、要人たちの資金逃れを手助けしていたと習政権が疑っているかもしれない。このシナリオからすれば、孟氏を拘束する目的はただ一つ、中国からの資金逃避ルートを暴き、遮断することだろう。

 習政権はトランプ米政権による貿易制裁を受け、苦境にさらされている。株価の急落に歯止めがかからないばかりではない。制裁関税に伴う輸出競争力減を補うために人民元安が不可避だが、資本逃避が加速する。それを止める最後の手段は何か。答えは上記の「事件」にあるはずだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】要人拘束でドルを吐き出させるも限界!金融戦争では中国に微塵も勝ち目なし(゚д゚)!

米中貿易戦争悪化に伴い人民元相場が急落しました。その原因はキャピタルフライトであると予想され、これに対応する形で中国当局は国有銀行に通貨防衛のための為替介入をさせました。

「貿易戦争悪化」→「中国の輸出の冷え込み」→「企業業績悪化」→「株価下落→海外投資家の離脱」→「人民元売りドル買い」という負の連鎖が起きているわけです。

また、これに連動する形での国内勢の動きもあるのでしょう。中国政府は2015年の中国株式バブル崩壊以降、外貨規制を強化し、国内からのドルの持ち出しを厳しく規制しました。

個人の両替規制を年間5万元(83万円程度)に制限し、破ったものに対して制裁を課すようにしました。企業に対しても、基本届け出制にして、500万ドル以上の取引に関しては、より厳しい審査を課すことにしました。

これにより、一旦は収まったかに見えた人民元に対する不安が、再び市場を襲っているのです。中国の対外債務は1兆7,106億ドル(2017年末)、それに対して外貨準備高が3兆1106億ドル(2018年5月末)。

外貨準備とは、自国通貨売りなどに備え、外貨が不足したときに使う保険のようなもので、これがなくなると、通貨危機が発生します。そのため、対外債務に合わせた額が必要とされます。中国の場合、表面的な数字だけを見れば、対外債務の2倍近い外貨準備があるので、全く問題がないように見えます。

ところが、実は中国の場合、外貨準備の質がわからず、実際に使える額が全く見えないのです。日本の場合、外貨準備のほぼすべてが米国債で構成され、保有者は政府と日銀であるため、全額を為替介入などに利用することができます。

それに対して、中国の場合、米国債は1,2兆ドル程度しかなく、国有銀行保有分が含まれています。基本的に、外貨準備というのは外貨をいくら持っているかであり、それが借金であろうとも外貨である限り、外貨準備にカウントされます。中国の場合は、国有銀行保有分の多くが海外からの借り入れが原資であると思われ、信用不安の際には一気に失われる可能性があります。

実は、下のグラフご覧いただくと、おわかりになるように、中国の外貨準備の減少は2017年初頭に底を打っています。しかし、外貨準備のトレンドは2014年後半以降は下向きであり、対外負債は増加し続けています。


対外負債は2017年9月時点で外貨準備高の1.6倍、そうして対外負債の一部が外貨準備高に流用されているのです。

つまり、中国という国は外部からの借金なしには(対外負債を増加させなければ)、習近平の目論見どおりに国を回すことができない状況になっていました。

ちなみに、中国の対外債務1兆7106億ドルの内、1兆ドル程度が短期の債務とされており、一気に返さなくてはいけなくなる可能性もあるのです。そして、中国の外貨準備の内、米国債は1兆2000億ドル程度(米国財務省)しかなく、ドルだけで見ればその差額は2000億ドル程度しかないのです。実際には他国資産をドルに換えることができるので、それ以上の規模になるのですが、その中身が全くわからないのです。

そして、最近の通貨防衛の介入も非常にイレギュラーな形で行われました。それは中央銀行ではなく、国有銀行がNDF市場(ドル建てデリバティブ)でドル先物を買い、ほぼ同額を現物市場に流す形で行われたのです。

これは中央銀行が自由に使える外貨準備を持っていないことの傍証であるといえます。そして、これを続ける限り、外貨準備が失われ続け、通貨危機のリスクは上がってゆくことになります。

為替介入でも、自国通貨売り外貨買いの介入(通貨安)であれば、自国通貨は自由に手に入るため、何の問題もないですが、通貨防衛のための介入は、他国の通貨を必要とするため限界があります。

人民元とドルの場合は、上の円を元とみたてて理解してください

さらに、為替介入で自国通貨高をするにしても、自国内で自国通貨を際限なしに多くすれば、インフレになるので、いつまでも続けることはできません。そのため、通貨戦争なる概念は本当は虚構です。いくら自国の通過防衛をしたとしても、それでハイパーインフレにでもなってしまえば、本末転倒です。

そして、中国がこの状況から抜け出すには、基礎的条件の改善(対米貿易の拡大など)や通貨スワップによる他国の通貨保証が必要になるわけですが、現在の米中の状況からすれば非常に厳しいです。

それ以外の方法としては、人民元を完全に自由化し、為替介入をせず、人民元を温存するという方法がありますが、この場合、人民元は暴落し、外貨建て債務を持つ企業などの破綻と輸入品の高騰によるインフレと国内の混乱が待っているでしょう。

しかし、国が破たんするよりはその方が痛みは少ないのでしょう。米中貿易戦争、次のステージは金融戦争であり、これは米国が圧倒的に有利な戦いです。

このような状況ですから、習近平としては現在国内にあるドルは一銭たりとも海外に逃避させたくはないですし、海外に逃避したドルも一銭でも自分たちの手元に呼び返したいのです。

だからこそ、ドルを海外に逃避させた人物やさせそうな人物はすぐにでも身柄を拘束して、ドルを吐き出させて自分たち中共のものにするという悪あがきにでた のです。今後も、要人の身柄拘束は続くでしょう。ただし、それにも限界はあります。

これが、基軸通貨国であれば、金がなくなれば、お金を刷り増せば良いだけの話ですが、中国は、米国のお金ドルを勝手に刷り増すことはできないです。為替介入や、一対一路などの海外でのプロジェクトを実行するためにはドルは必要不可欠です。

それに、国際的な元の信用は、中国が米国債権やドルそのものを大量に抱えていたから、創造されてきたのであって、ドルなし中国の人民元は、このままだと紙切れになるおそれもあります。

この状況では、中国がいくら頑張ったとしても、米国には金融戦争では勝つことはできないことは最初からわかりきっています。巷では貿易戦争で騒いでいますが、貿易戦争自体は米中にとって、あまり悪影響はなく、中国が米国に屈するにはいたらないでしょう。

ただし、金融戦争になれば話が違ってきます。ドルを自分で必要なだけ刷り増すことができるし米国は世界の金融を握っているといっても過言ではありません。米国のほうが圧倒的に有利です。中国は屈する以外に道はありません。

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