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2019年7月20日土曜日

中国が"米国を圧倒すること"はあり得るか―【私の論評】日本は中国に対しては表では親和的に、裏では習近平が最も恐れる輸出制限・制裁の準備を粛々と進めよ(゚д゚)!

中国が"米国を圧倒すること"はあり得るか

日本は中国に対する幻想を捨てよ

静岡大学教授/文化人類学者 楊 海英
楊 海英氏

米中覇権争いが繰り広げられるが、中国の実力とはどれほどのものか。静岡大学教授で文化人類学者の楊海英氏は「中国が将来、米国を圧倒することはあり得ない」という。その理由とは――。

日本は将来、米中のどちら側につくのか

米中2大国の覇権争いが世界から注目されている。経済の分野では「貿易戦争が発動された」とか、先端科学技術分野では、「5世代移動通信システム(5G)開発の主導権をめぐって対立している」といった報道が多い。そして、将来はどちらが勝つのかという結果まで、日本では予想され始めた。結果を予測する際の隠れた目的は、日本は米中のどちら側につくのかという死活の問題も絡んでいるのではないか。

私は中国が将来、米国を圧倒することはあり得ない、と判断している。そう考える理由を以下に述べておく。私が依拠している情報はすべて、中国で生まれ育ち、そして30年間にわたって、研究者として現地で調査してきた経験に基づいている。

本末転倒の使命感が中国のウソの発展を支えた

第1に、中国は国内総生産(GDP)の数字が世界第2位だ、と自他ともに認めているが、実際は水増しされた統計によって得られた数字である。1991年からほぼ毎年のように中国の各地方で現地調査に行ってきたが、その都度、知人の幹部(公務員)はいかに上級機関から言われた「任務を達成」するかで頭を抱えていた。

天災や社会的動乱など、どんな理由があっても、前年度より「成長」していなくてはならなかった。北部中国の場合は旱魃(かんばつ)が数年間続いたり、民族問題が勃発(ぼっぱつ)して生産ラインが止まったりすることはよくあるが、それでも「成長」し続けなければならない。南部には水害がある。それでも、「成長」は幹部の昇進に関わるだけでなく、社会主義中国の「発展」を示す指標とされている。

「中国の共産党政府が13億もの人民を養っている」という独特な使命感を誇示するためにも、「成長」と「発展」は欠かせない。人民が政府と党を養っているとは、とうてい考えられない。この本末転倒の使命感が虚偽の統計とウソの発展ぶりを支えてきたし、これからも変わらない。つまり、中国には米国と対峙しうる充分な国力は備わっていないということである。

近代社会は米国も日本も、そして西洋諸国も、産業革命以来に数百年の歳月を経て、少しずつノウハウを蓄積して発展してきたが、中国はそうしたプロセスを無視しようとしている。共産党の指導部の野心が正常な発展を阻害していると判断していい。

あらゆる経済活動の権利を握っているのは共産党

第2に、中国が口で言っていることと、実際に実行していることとは、すべて正反対であると世界は認識すべきである。このことは、「大国」としての中国に世界をリードできるソフト・パワーがあるかどうかを試す試金石でもあるからだ。

例えば、「米国は自由貿易を阻害している」とか、「中国は世界の自由貿易の促進に貢献している」とか、中国はよく国際会議の場で主張する。ここ数年、トランプ政権が誕生してからは、さらにこうした主張を広げている。ときにはまるで前政権のオバマ大統領の自由貿易促進演説を剽窃(ひょうせつ)したかのような言い方を中国の習近平国家主席は口にする。しかし、事実はむしろ逆である。

 まず、中国は国内で自由貿易を実施していない。あらゆる経済活動の権利を握っているのは、中国共産党の幹部たちとその縁故者たちで、一般の庶民が中小企業を起こすのも、厳しい審査が設けられている。国営の大企業は共産党の資金源である以上、中小企業や個人の経済活動はすべて国営企業を支えるために運営しなければならない。
ジャック・マーはなぜ引退せざるを得なかったのか

 それでも、個人が持続的に努力してある程度裕福になると、政府からつぶされる危険性が迫ってくる。利益を党に寄付し、経営者も党員にならなければならない。従業員の数も一定程度に達すると、共産党の支部を設け、党の指導を受けなければならなくなる。いわゆる「党の指導」とは、企業の利潤を政府と結びつけることである。経営者個人の自由意思で経済活動が行われていないのが実体である。
アリババの創業者 ジャック・マー会長
 世界的なIT企業に成長したアリババの経営者、ジャック・マーの例が典型的だ。まだ、50代半ばという若さで経営権をすべて譲って、引退せざるを得なくなった。引退しなければ、腐敗だの、汚職だので逮捕される危険性があったからだろう。言い換えれば、政府はこれ以上、アリババのようなIT企業が国際舞台で成長しつづけるのに危機感を覚えたからである。

米中の対峙は異なる体制の深刻なイデオロギー戦だ

 次に、当然、中国は国際貿易の面でも自由なやりとりを許していない。例えば、外国企業が中国で投資して得た利益を自国には持ち出せない。引き続き中国国内で投資し、事業を拡大せざるを得ない。本国への資金の還流は厳しく制限されている。

 そして、情報化時代の現在、データの流通はさらに厳しく制限されている。中国で蓄積されたデータを国際社会で運用しようとすると、「安全性に問題がある」としてあの手この手で阻止される。

 このように、資金・データ、物流など、あらゆる面で中国こそ自由貿易に逆行する活動を白昼堂々と展開しているにも関わらず、米国を批判するのは、自国の汚い手口を隠すためだと理解しなければならない。

 実は、日本を含む国際社会も中国の手口、言行不一致を知っていながら、あえて批判したり、反論したりしないのも、これ以上不利益を被らないようにするためだろう。中国も国際社会の弱みを知っているから、自国の行動を是正しようとは思っていない。

 しかし、トランプ大統領はちがった。国内において自国民の自由な経済活動を制限し、少数民族を抑圧し、国際的には自由主義陣営に脅威を与えているのは、一党独裁が原因である、と認識している。トランプ政権の本音は、ペンス副大統領の演説やその側近たちのスピーチから読み取れる。

 つまり、米国と中国との対峙は決して「貿易戦争」だけではない。異なる体制がもたらす、深刻なイデオロギー戦である。そして、このイデオロギー戦はどちらかが体制を転換しない限り、解決の見通しは立たない。

独裁政権に媚びを売っても日本の国益にならない

 では、日本はどうすべきか。2大国の対立の陰に潜みながら、勝った側につこうという戦術は無意味である。どちらが人類の歩む道を阻害しているかを判断して、二者択一の決断を早晩しなければならないだろう。そのためには、現在の日本で流行っている軽薄な言説を改めるべきであろう。それは以下の2点である。

 第1は、トランプ大統領は商人だから、なんでも利益優先で「取引」しようとしている、という誤読である。日本には日本の国益、中国には共産党の党利党益があるのと同様に、米国にも国益があって当然だ。世界の多くの国々が米国を指導者とする自由と人権、民主と平等という理念を共有している以上、日本も米国と歩調を合わせ、同盟を強化するしかない。同盟関係を裏切って、独裁政権に媚(こ)びを売っても、日本の国益にはならない。

歴代の共産党指導者は真の友好を求めてきたか

 第2に、ツイッターなど最新の技術を駆使するトランプ大統領は「変幻自在」で先行き不透明で、内心が読み取れない、と日本のメディアはよく語る。これも同盟国としてあるまじき批判といえよう。

 では、毛沢東をはじめ、歴代の中国共産党の指導者は日本国民に胸襟(きょうきん)を開いて、真の友好を求めてきたことがあるのか。ツイッターも電子メールが出現した時代と同様で、一種のツールでしかない。日本は米国に対する先入観と、中国に対する幻想を放棄しない限り、米国が中国を完全に圧倒した暁には、見放されるかもしれない。

 もちろん、自発的に「中国の朝貢(ちょうこう)国」になる道も残されている。そうなれば、100万人単位で強制収容されているウイグル人のように、おおぜいの心ある日本人は自国の領土内で、中国共産党の刑務所に閉じ込められるだろう。

今こそ、日本人に「第2の維新」が迫ろうとしている。
楊 海英(よう・かいえい)
静岡大学教授/文化人類学者
1964年、南モンゴル(中国・内モンゴル自治区)出身。北京第二外国語学院大学日本語学科卒業。1989年に来日。国立民族学博物館、総合研究大学院大学で文学博士。2000年に帰化し、2006年から現職。司馬遼太郎賞や正論新風賞などを受賞。著書に『逆転の大中国史』『独裁の中国現代史』など。

【私の論評】日本は中国に対しては表では親和的に、裏では習近平が最も恐れる輸出制限・制裁の準備を粛々と進めよ(゚д゚)!

上の記事では、「日本は米国に対する先入観と、中国に対する幻想を放棄しない限り、米国が中国を完全に圧倒した暁には、見放されるかもしれない」としています。

確かに、日本国内は言うに及ばず、自民党内にも親中派・媚中派の政治家が存在します。しかし、少なくとも安倍総理とその取り巻きは違います。なぜなら、日本の対韓国輸出規制強化は、中国も意識したものであると考えられるからです。

米国のトランプ政権も、日本の対韓国輸出規制強化は、中国に対する牽制にもなるものととらえているでしょう。日本は対韓国規制を公表する前に、当然のことながら同盟国である米国に対して、これについて連絡しているでしょう。その上で韓国に対して、厳しい態度で臨んでいるわけですから、米国はこの制裁を対中国牽制にもなるとみて歓迎しているものと思います。

日本が韓国に輸出する規制対象3品目のひとつ「フッ化水素」の一部が中国に輸出され、韓国の半導体製造大手サムスン電子やSKハイニックスの中国工場で使われています。両社は半導体の10~20%を中国で生産しているとみられます。日本政府が8月末にも韓国をホワイト国指定から外し中国工場への先端材料の供給が滞るなら中国にも影響がでそうです。

このことは、最初から日本政府も当然のことながら理解していたでしょう。

中国メディアの今日頭条は14日、日本による対韓国輸出規制強化問題に関して「日韓の反応から力の差が分かる」と紹介する記事を掲載しました。

記事はまず、今回の日本の制裁があるまでは、韓国の半導体は「世界で揺るがぬ地位」を確立し、「日本を超えた」とも言われていたと紹介。そのため、半導体の3品目が制裁対象になっただけで国を揺るがす問題になったことを意外に感じた中国人は多かったと指摘しました。

韓国国内では、政府や企業が抗議をし、WHOに提訴を発表し、国民は日本製品不買運動に参加しています。「これだけの反応があったということは、日本がそれだけ韓国に打撃を与えた証拠」だと伝えました。それに引き換え、日本では大きな反応は起きていないです。「韓国からの報復は想定内」で、それでも制裁に踏み切ったのは「韓国の手の内にあるカードが少ないことを知っていたから」だと推測しています。

韓国は、日本とは違い決定打になるようなカードを持っていないと言えるでしょう。記事は、韓国の半導体製品でもスマホでも、輸出を止めたところで日本に打撃を与えるには及ばず、日本は他国から輸入すれば良いだけの話だと指摘しています。一方の韓国は、今回規制された3品目のかなりの部分を日本の輸入に依存しており、大きな打撃となるのは明らかです。

記事は結論として、日本の今回の規制に伴う2国間の反応の違いで、「日韓の実力差」が明らかになったと結論付けました。韓国のある分野が日本を超えたように見えたのは表面的で、日本の実力が見えていなかっただけだと分析しています。これは中国も同様で「ピークは過ぎたとはいえ、日本の実力を甘く見てはいけない」と注意を呼び掛けています。

韓国国内では国民の間でも不買運動が行われているようですが、反応が激しければそれだけ日本から受けた打撃の大きさを示してしまうと言えるでしょう。この事実は、日本を落ちぶれた先進国と見くびることさえあった中国人にも、少なからず衝撃を与えているようで、今まで見えにくかった日本の実力の一端を見せつけたと言えるのかもしれないです。

そうして、これは他ならぬ中共の幹部たちも気づいていることでしょう。日本からの部品や素材がなければ、韓国のようにお手上げになることはまだまだあります。特に工作機械など日本の独壇場です。これをストップされれば、韓国も中国もそれこそお手上げになりすま。

そうして、中国の製造技術にはとんでもない未成熟な部分があります。それについては以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【石平のChina Watch】中国製造業のアキレス腱―【私の論評】集積回路、ネジ・ボルトを製造できない国の身の丈知らず(゚д゚)!
深セン市にある「中興通訊」の本社
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
 中国は今、海外から大量の集積回路を輸入しており、2017年の集積回路輸入数は3770億枚に上っている。中国製のラジオ、テレビ、通信機、コンピューターなどのあらゆる電子機器の心臓部分の集積回路は海外からの輸入に頼っているのである。輸入が一旦途切れてしまうと、中国企業はスマートフォンの一つも作れない。それがすなわち、先端領域における中国製造業の「寒い」現状である。 
 しかし中国国内企業は今まではどうして、自国産の集積回路の開発と製造に力を入れてこなかったのか。 
 集積回路の開発には莫大(ばくだい)な資金と時間が必要とされるが、金もうけ主義一辺倒の中国企業からすれば、それなら海外から部品を調達した方が早いし、知的財産権がきちんと保護されていない中国の状況下では、自力で開発した製品も競合業者によって簡単にコピーされてしまう。 
 だから中国国内企業の誰もが自力開発に力を入れたくないのだが、その結果、集積回路のような、製造業が必要とする最も肝心な部品は外国企業に頼らざるをえない。中国製造業の最大のアキレス腱(けん)は、まさにこういうところにあるのである。
さらに、もっと驚くべきことがあります。それを以下に引用します。
中国が製造できないのは集積回路だけではありません、多少とも先端技術などを要するものは製造できません。たとえば、中国はネジやボルトに関しては日本からの輸入に頼っています。 
中国メディアの捜狐は昨年11月10日、空母や戦闘機、高速鉄道に使われているボルトはどれも輸入品という「直視しなければならない現実」に関する記事を掲載しました。 
中国の機械工業の進歩は目覚ましく、利益率・輸出額ともに増加しているといいますが、戦闘機などに使用されるねじ・ボルトなどの部品は「ほぼ100%輸入」に頼っているというのです。記事は、中国で生産されている部品はいずれも精度の低いものばかりで、高速鉄道などに求められる精度や耐久性の高い部品は、日本や他国に頼るしかないと指摘しました。
日本製のネジ
例えば、中国の戦闘機「Jー20」のボルトはどうしても最高級の水準が求められ、ねじはすべて高温・腐食にも耐えるチタン製でなければならないといいます。しかし、中国にはこうした高いレベルのねじの生産技術も生産ラインもないと嘆きました。軍事分野以外でも、高速鉄道、長征7号ロケットにも海外から輸入した高品質のボルトが大量に使われているといいます。 
では、なぜ中国国内では生産できないのでしょうか。記事は、化学工業、冶金、鍛造の技術が遅れていることが原因だと分析。日本などのように「専門分業」ができておらず、製品システムや品質が不健全で、専門分野での研究が不足しており経験も足りないため、製造能力が低いのだとしました。

こうした現状に、中国のネット上では「作れないのではなく作りたくないだけ」、「ボルトなどの部品は買えば良い」などの意見があると紹介。しかし、これらの意見はいずれも現実を直視していないと切り捨てました。
ネジ・ボトルというと、日本では東京の大田区や大阪の東大阪の先端的な中小企業の独壇場です。中国にはそのような中小企業は育っていないのです。

無論、中国でも普通のネジは作成できますが、戦闘機や高速鉄道などの使用に耐えるネジは未だに製造できないのです。

中国や韓国の場合、日米では当たり前のように製造しているもので、製造が困難なものが多くあります。

このあたりを輸出規制すれば、韓国の製造業は崩壊、中国も「製造2025」などといっておられなくなります。このことを中共は良く理解していると思います。今頃習近平は頭を悩ませていると思います。

習近平

日本のマスコミは、中国は最近日本にすり寄ってきているなどと報道していますが、現実はそうではありません。尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で先月10日、中国海警局の船4隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認しました。尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは60日連続で、平成24年9月の尖閣諸島国有化以降で最長の連続日数を更新しました。

このような状況では、とても中国が日本にすり寄ってきたなどとは解釈できません。このようなことがなくならない限り、日本は中国が日本にすり寄ってきたなどと解釈すべきではないのです。

中国はすり寄り姿勢をみせつつ、尖閣での示威行動は改めないわけですから、日本としても中国と表では習近平を招くなどのことをしながら、いつでも中国に対して、輸出制限や、制裁をできるように準備をすすめるべきです。

それを日本が準備していることを米国に知らせれば、米国としても中国に対する大きな牽制になるということで大歓迎することでしょう。

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