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2017年11月12日日曜日

米WSJ紙、文大統領を激烈批判「信頼できる友人ではない」 韓国メディアは狂乱状態―【私の論評】「北朝鮮版ヤルタ会談」から締め出された韓国(゚д゚)!

米WSJ紙、文大統領を激烈批判「信頼できる友人ではない」 韓国メディアは狂乱状態

韓国文在寅大統領(右)との会談を終え、記者会見するトランプ米大統領
 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対し、米有力紙の「ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)」が激烈な批判を見舞った。北朝鮮に融和的かつ、中国に擦り寄る文氏の行動について、「文氏が信頼できる友人だとは思えない」などと社説で指摘したのだ。同紙の記事を、韓国メディアは相次いで取り上げ、狂乱状態となっている。

 ドナルド・トランプ米大統領の訪韓(7~8日)について、韓国紙は社説で好意的な評価を示していた。

 《トランプ大統領初来韓、韓米同盟の新たな契機に》(朝鮮日報)

 《深い共感を得たトランプ訪韓…「力を通じて平和を守る」》(中央日報)

 だが、トランプ氏の訪韓成功との見方は、韓国側の一方的な思い込みに過ぎなかったようだ。米保守層に支持されるWSJは7日付の社説でこんな見出しを掲げた。

 《South Korea’s Bow to Beijing(韓国、中国にひざまずく)》

 米軍の最新鋭迎撃システム「THAAD(高高度防衛ミサイル)」をめぐり、中国から“報復”を受けていた韓国は最近、中国と、(1)米国のミサイル防衛システムに加入しない(2)日米韓の安全保障の協力は3カ国軍事同盟に発展しない(3)THAADを韓国に追加配備しない-ことで合意したとされる。

WSJは、こうした文氏の「媚中外交」と、北朝鮮に融和的な「従北」姿勢を徹底批判した。文氏の掲げる「バランス外交」を「中国の圧力に直面し、自国や同盟国の安全保障に関して譲歩もいとわない姿勢は、バランス外交とは程遠いものだ」とし、「文氏が取った一連の行動は、(北朝鮮の)金正恩(キム・ジョンウン)氏を包囲するための同盟関係を損なうものとなった」と指摘した。

 韓国紙は、米国側の真意を知り驚いたのか、相次いでWSJの記事を取り上げた。

 中央日報は「トランプ大統領が訪韓した際には『偉大な協力』『非常に大きな進展』などの発言が出てきたが、最近の(文氏や文政権の)行動を見ると望ましくないということだ」と分析。朝鮮日報は同紙に寄せられたネットユーザーの賛否両論を掲載した。

【私の論評】「北朝鮮版ヤルタ会談」から締め出された韓国(゚д゚)!

「握手のため右手を出した文氏をトランプ氏が無視」
とささやかれるシーン=7日、ソウルの青瓦台
韓国内で衝撃的な映像が話題を集めています。7日に開催された米韓首脳会談で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がドナルド・トランプ米大統領に握手をしようと右手を差し出したところ、トランプ氏が“無視”。そのまま別の場所に移動する瞬間が捉えられています。

これに敏感に反応したのが韓国のネットユーザーでした。同国の掲示板「イルベ」では「(握手を)意図的に無視した」に始まり、「トランプ、文在寅パッシング」「ついに文在寅にキレた」ときて、とどめに「どれだけ(文氏が)嫌われてるんだよ」とてんやわんや。

ミサイル、核実験と国際社会をおびやかす北朝鮮に対して、金融支援の検討を表明するなど空気を読めない自国のトップ。国民も「無視されてやむなし」の印象なのでしょうか。この点では、韓国マスコミより、韓国民のほうが正しく状況を把握していたといえると思います。

この日の早朝文氏は、トランプ氏の最初の訪問先の米軍基地で待ち受けるサプライズを演出していました。様子を携帯電話で動画撮影していた韓国側報道官が米側にトランプ氏を撮るなと制止されました。本来、前線の将兵らと分かち合うべき時間に割り込んだ文氏一行への不信感とも読み取れます。

その場で、トランプ氏は「文氏と貿易について会談する。米国に多くの雇用が創出されること。それが私が来た一番の理由の一つだ」とぶち上げました。会談後の記者会見では「韓国は数十億ドル(数千億円)に達する米国製兵器を発注する」と成果を強調しました。

トランプ米大統領は訪韓中、盛んに韓国を持ち上げ、韓国の頭越しに日中首脳とだけ北朝鮮問題を論議する「コリア・パッシング」は「ない」と明言しました。しかし、2者会談は26分間で終了しました。通訳を除くと実質的な協議は十数分間にすぎず、初日のゴルフだけで2時間半以上を費やした安倍氏とは比ぶべくもありませんでした。

トランプ大統領は、ビジネスライクな姿勢を隠しもしませんでした。安倍晋三首相との“蜜月”との格差を図らずも浮き彫りにしました。

この傾向は前からありました。韓国政府は、北朝鮮問題で韓国だけ疎外されるという、いわゆる「コリアパッシング」の懸念は決してないと強調していました。

北朝鮮が発射した弾道ミサイルが今年日本領空を最初に通過した後、トランプ米大統領と安倍首相は二日連続通話し緊密な対応策を議論しました。

しかし、北朝鮮問題の最大の当事者ある韓国首脳の話し合いは後回しでした。今年7月に、北朝鮮がICBM発射訓練をした時も、韓米首脳間の即時通話はありませんでした。

これに対して、多くの韓国人は「コリア・パッシングではなく、文在寅・パッシングだ」と受け取ったようですが、本当にそうなのでしょうか。1950年の朝鮮戦争当時から、停戦協定には米中北は、含まれていますが、韓国は含まれていないという事実があります(実際署名はこの三国による)。

北は、当時のソ連の傀儡とみて間違いないですから、実際には米中露によってなされたものとみるべきでしょう。いずれにせよ、韓国は含まれていないとみるべきでしょう。

それにしても、その後韓国が日米韓の関係を緊密にして、北朝鮮への対峙姿勢を露わにして、旗幟を鮮明にしていれば、少なくとも今回の「北朝鮮版ヤルタ会談」に関与できたかもしれません。

トランプ大統領が8日の国会演説で「世界4大女子ゴルフ選手は皆、韓国出身だ」と韓国女子プロゴルファーの活躍を称賛すると、議場は拍手に沸きました。「奇跡」の経済発展など韓国をたたえるのに言葉を惜しまず、拍手は20回を超えました。

トランプ大統領の韓国国会での演説
演説前には、前大統領、朴槿恵被告の釈放を訴えるプラカードを持ち込もうとした議員が警備員につまみ出される一幕もありました。

国会前では、トランプ氏の訪韓に反対する団体が「韓国から出ていけ!」と叫びました。反対派はトランプ氏の行く先々でデモを計画しましたが、2万人近い警察を動員し、トランプ氏の目にとまらないよう力で押し込めたのが現実でした。これは、日本ではほとんどみられない光景でした。

韓国国会前ではトランプ大統領訪韓反対デモが開催さた
文政権を悩ませたのは親米・反米に二分した国論だけではありません。拉致被害者家族との面会を実現させ、対北圧力で一枚岩を見せつけた訪日と比べ、1泊だけの訪韓に不満を抱く韓国世論の突き上げを受けていました。

文氏の提案で、トランプ氏は8日早朝、南北軍事境界線がある板門店の非武装地帯(DMZ)のサプライズ視察を試みたのですが、トランプ大統領は悪天候で断念。先回りしていた文氏が待ちぼうけを食いました。

文氏と対北観で大きな違いを見せてきたトランプ氏は「韓国は単なる長年の同盟国以上」とのリップサービスで表向き韓国世論を安心させ、先端兵器の売りつけという実益を手に、北朝鮮問題で最大の協議相手である中国に向かったのです。

これでは、どうみてもドナルド・トランプ米大統領の訪韓(7~8日)について、韓国紙は社説で好意的な評価を示したのは間違いです。最初から、最後まで失敗であったとみるべきです。

そうして、このような報道ぶりからみれば、何に失敗したのかも理解していないようです。最大の失敗は、もう韓国は北朝鮮有事の後の新たな東アジアの秩序づくり、いわば「北朝鮮版ヤルタ会談」には実質的に参加できないということです。

「北朝鮮版ヤルタ会談」については、このブログでも紹介したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮危機「アメリカには安倍晋三が必要だ」―【私の論評】北朝鮮版「ヤルタ会談」のキーマンは安倍総理(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、「北朝鮮版ヤルタ会談」に関係している部分のみを以下に引用します。
北朝鮮問題に関しては、今年の末から、来年の前半あたりには必ず何らかの動きがあります。最悪の場合は、米国による爆撃などの武力行使があることでしょう。この場合、中国の参戦もあるかもしれません。あるいは、制裁に北朝鮮が折れて何らかの進展があるかもしれません。 
いずれになるにしても、間違いなく、来年前半あたりには必ず動きがあります。
安倍総理とトランプ大統領
その前に、11月に日米首脳会談、米中首脳会談があります。また、APECでの各国首脳会談には、ロシアも出てくるでしょう。それらの国際会議では、北朝鮮問題が話し合われるのは間違いありません。これらは、北朝鮮版「ヤルタ会談」ともいうべきものです。 
「ヤルタ会談」とは無論のこと、第二次世界大戦終了直前の当時のアメリカ合衆国イギリスソビエト連邦による首脳会談です。ソ連対日参戦国際連合の設立について協議されたほか、ドイツおよび中部・東部ヨーロッパならびに極東における米ソの利害を調整することで、大戦後の国際レジームを規定したものです。これが、後に東西冷戦の端緒ともなりました。 
こうした北朝鮮版ヤルタ会談ともいえる、会議において、安倍首相は大きな役割を果たす可能性が高まってきました。これらの会議では、北朝鮮が最終的に戦争に突入した場合と、制裁に屈した場合の両方について、協議が行われることでしょう。
「北朝鮮ヤルタ会談」では、ポスト北朝鮮有事(北朝鮮の危機が去ったあとの体制)が話し合われれることになります。

というより、日本にトランプ氏が訪問し、もうすでにその一部は話されているはずです。そうして、韓国ではトランプ氏はこの話はほとんどしなかったでしょう。だからこそ、首脳会談の時間が異常に短かったのです。

米中会談でも当然その話をしたことでしょう。さらにその後のAPECでもその話は継続されたとみて間違いありません。

このAPECでは番狂わせもありました。

ベトナム中部ダナンで開催されたアジア太平洋経済協力会議(SPEC)首脳会議に出席したプーチン露大統領とトランプ米大統領による正式な米露首脳会談が11日、見送られました。インタファクス通信によるとプーチン氏は同日、会談見送りは米露が外交文書の内容で一致しなかったことなどが背景にあったと会見で明かし、関係者を「処分する」とまで述べて強い不満を示しました。

両首脳は当初、正式会談の実施に前向きな姿勢を見せていました。会談見送りについては双方とも日程の問題などを挙げていますが、米国でロシアの米大統領選介入疑惑をめぐる捜査が進展する中、世論の反発が必至のプーチン氏との会談をトランプ氏が避けた格好です。ラブロフ露外相も10日、会談見送りの見通しを受け、米側を激しく批判していました。

一方、露大統領府によると両首脳は11日、共同声明を発表しシリア情勢での協力継続を表明しました。両首脳は、APEC首脳会議での記念撮影前に短時間協議したとみられ、その際合意したもようです。プーチン氏は必要なことは話せたとも語り、会談見送りの影響は少なかったと強調しました。

この会談でも、当然のことならが、北朝鮮情勢についても話されたと考えるのが妥当でしょう。とはいいながら、プーチン大統領としては、この重要な会談にあまり時間がさけなかったことに対して不満を表明したと考えられます。

トランプ、プーチン両大統領、歓迎夕食会で握手 APEC首脳会議
今回のトランプ大統領のアジア歴訪により「北朝鮮版ヤルタ会談」はかなり進んだものと思います。さらに、必要があれば、この会談は継続されるかもしれません。この話し合いに、北朝鮮と国境を接している中国とロシアが入るのは当然のことです。

さらに、この話し合いに朝鮮半島に海峡を挟んで接している日本と、その同盟国である米国が参加するのも当然のことです。

しかし、本来ならば韓国がこの会談において、大きな働きをすべきでした。しかし、THHADの配備では中国から不信感をいだかれ、米国側からは「媚中外交」と、北朝鮮に融和的な「従北」姿勢で不信感を抱かれ、日本に対する反日的な行動から、日本にも不信感をいだかれてしまった韓国は、当然のことながら、ロシアからも不信感を抱かれていることと思います。

最早、日米露中は、韓国を信頼していません。となると、韓国は「北朝鮮版ヤルタ会談」では完璧に排除されたとみなすべきです。そうして、もしこれからも会談があったとしても、実質的に排除されることでしょう。

結局、ポスト北朝鮮有事は、韓国にとって死活的に重要でありながらも、「北朝鮮版ヤルタ会談」から事実上締め出されたのです。

韓国は、最早自らの運命を大きく左右するかもしれない、会談に参加できないのです。しかし、これは韓国自身が招いてしまったことであり、欠局これからの新しいアジアの新秩序に全く関与することはできず、日米中露で定めた新秩序の中で生きていくしかなくなってしまったのです。

このことを文在寅も、韓国政府、国民もほとんど理解していないようです。

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2017年10月1日日曜日

中韓メディアが警戒、小池氏は「安倍首相より右寄り」 日本政治の右傾化懸念する声続出―【私の論評】北朝鮮版ヤルタ会談に参加することが安倍首相の真の狙い(゚д゚)!

中韓メディアが警戒、小池氏は「安倍首相より右寄り」 日本政治の右傾化懸念する声続出


2005年総務省が作成した動画「希望の党」後編は

 韓国、中国メディアが、小池百合子都知事率いる「希望の党」に強い関心を寄せている。安倍晋三首相よりも「右寄り」との批評もあり、日本政治の右傾化を懸念する声が続出している。

「関東大震災朝鮮人虐殺を否定し、平和憲法改定に賛成する極右志向の小池百合子・東京都知事が代表を務める党だ」

韓国紙、ハンギョレ新聞は9月28日、希望の党への警戒心をあらわにした。

中央日報は、小池氏が安倍首相よりも右寄りの評価を受けているとし、「野党側も改憲論者一色で、平和憲法の価値を守ろうとする勢力の影響力が落ちている」と指摘し、「日本政治の右傾化がさらに加速すれば、東北アジアの緊張が一層高まる」と危ぶんだ。

中国メディアでも、同様の懸念が上がっていると報じられている。

【私の論評】北朝鮮版ヤルタ会談に参加することが安倍首相の真の狙い(゚д゚)!

中国メディアは、小池百合子氏が国政参加の意図を示す前から、小池氏に対して警戒感を露わにしていました。

以下にそれに関連した、チャイナ・レコードの日本語版の記事を引用します。これは、今年の3月4日のものです。
中国メディアが小池都知事の発言にかみつく=「右翼の女知事が…」
3日、中国共産党系の環球網は、東京都の小池百合子知事が「靖国参拝に異論はない」と発言した
ことについて、「右翼の女知事が宣言」との見出しで批判的に伝えた。写真は小池都知事。
2017年3月3日、中国共産党系の環球網は、東京都の小池百合子知事が「靖国参拝に異論はない」と発言したことについて、「右翼の女知事が宣言」との見出しで批判的に伝えた。

小池知事は2日の都議会で靖国神社の参拝について問われた際、「私たちが享受している平和と繁栄が戦没者の方々の尊い犠牲のうえに築かれている。終戦の日の靖国参拝に異論はない」と答えた。

記事は小池知事について「2016年7月31日に初の女性都知事に就任。日本のタカ派の政治家として繰り返し靖国神社に参拝し、平和憲法の改正、集団的自衛権の解禁などを叫び、強硬な対外政策を主張している」などと紹介している。

また、靖国問題については「靖国神社には第2次世界大戦の多くのA級戦犯が合祀(ごうし)されている。同神社への参拝は、長年、日本の一部の政治家たちの票集めや右翼思想を展開するための“個人のパフォーマンス”になっている。日本の政治家のたび重なる参拝が、日本と中国、韓国などのアジアの国との関係を破壊している」などとしている。
このように、中国は小池百合子氏を「右翼の女知事」などとして忌み嫌っています。それは、そうでしょう。靖国参拝は当然のこととして、元々改憲論者でもあり、核武装論者でもあります。

もし、日本が改憲して、普通の国並に安全保障ができるようになれば、中国としては国家戦略の変更を迫られます。さらに、日本が核武装したりすれば、国家戦略を根底から変えなければならなくなります。

だから、中国としては小池氏が国政に参加することについても、危惧の念を抱いていることでしょう。

ただし、中国は現在のところ、この憎いはずの、小池氏をあまり批判しようとしません。実際、中国の意思を最優先にする、朝日新聞は以下のような記事を掲載しています。
「希望の党、中間層に新たな選択肢」 中国メディア分析
 国営中国中央テレビは、特派員が東京から報告。安倍晋三首相の狙いについて「北朝鮮情勢の緊迫で回復した支持率と野党の準備不足を利用して、自らの政権基盤を固め直して憲法改正の主導権を回復すると同時に、森友学園と加計学園のスキャンダルの追及から逃れようとした」と紹介した。 
 だが小池百合子東京都知事が率いる「希望の党」の登場で状況が一変したと指摘。「安倍政権に不満を持ちながら、力のある野党がないと考えていた中間層に新たな選択肢を与えた」と述べ、安倍首相の狙い通りにはいかない可能性が高いと分析している。 
 また「世論調査で安倍首相への不信感が高まっており、政治的な寿命は長くない」という日本の専門家の言葉も伝えた。 
 一方、「小池新党は急ごしらえで、多くの現実問題にぶつかっている」(新華社ネット版)との指摘や、小池氏らの保守的な政治理念を指摘し、「最大野党も右翼政党になる可能性があり、東アジアの平和と安定への危険信号を意味する」と警戒する専門家の分析も出ている。(北京=延与光貞)
このように、中国では今のところ、表立って小池百合子氏を徹底的に糾弾しようという様子はありません。それはどうしてなのでしょうか。

本日は、それついて掲載します。まずは、これを理解するためには、すでに米国等による北朝鮮への攻撃はすでに規定事実であることを知らなければなりません。これを前提にしないと理解できません。

北朝鮮問題はいよいよ膠着状態に陥ってきています。トランプ政権は手詰まりになる一方、中国は躊躇し、ロシアが主導権を握りつつあります。そうして、現状ではほとんど金正恩の勝ちと言えるほどです。

しかし、北朝鮮のような弱小国が核とミサイルを手にしつつあるからと言って、周辺の大国がそろって不満を募らせている状態が長続きするはずはないです。いずれ必ず均衡は崩れます。周辺大国が共通の利害を見極めて、不満があっても妥協の解決策が成立する可能性は高いです。

北朝鮮のミサイル
加えて、中国やロシアにとっては、いまが事態を動かす絶好のチャンスでもあります。なぜなら、韓国に親北容共の文在寅(ムン・ジェイン)政権が誕生したからです。中ロが北朝鮮を無難な緩衝材に戻すには、金正恩後の北朝鮮に自分たちに都合の良い政権を作らなければならないです。それには文政権の下で韓国と北朝鮮が統一されるのが、もっとも望ましいのではないでしょうか。

先の大戦の後、旧ソ連の後押しで誕生した北朝鮮という国はなぜこれまで生き延びられてきたのでしょうか。それは、米国の圧力にさらされたソ連や中国が、それぞれ自国の「緩衝材」として北朝鮮に利用価値を見出してきたからに他なりません。

ソ連や中国が米国等に攻められたとき、北朝鮮は身代わりの戦場となって敵の侵攻を食い止める。いざとなったら、北朝鮮が中ソの鉄砲玉となって突撃する。中ソはそのような役割を北朝鮮に期待してきました。

ところが、いま北朝鮮は中ロなどお構いなしで、核とミサイルの開発にまい進しています。これは、中ロから見れば「子分が親分の言うことを聞かず、勝手に怖い飛び道具を手に入れようとしている」ようなものです。

北朝鮮が核ミサイルを手にすると、北の照準はソウルと東京、ワシントンだけに向くとは限らないです。その気になれば、北京とモスクワだって狙えるのです。北朝鮮は中ロにとっても潜在的な脅威になっているのです。

現在の北朝鮮は米国はもとより、中国やロシアをも潜在的な敵に回しています。中ロは表向き、北朝鮮を舞台裏で支援しているかのように見えます。ところが、実はいつ金正恩を裏切ってもおかしくないです。

金正恩と核・ミサイルを除去、あるいは自分たちが完全に支配したうえで、北朝鮮を元の無害な緩衝材状態に戻す。それが中ロにとってベストシナリオのはずです。

ロシアには、そもそも北朝鮮という国を金日成を使って建国したのは自分たちだ、という思いがあります。中国も、金日成は大口を叩いて朝鮮戦争を始めてみたものの、米国に押し返されて敗北寸前だったのを人民解放軍を派遣して救ったのはオレたちだ、と思っています。実際、中国は当時、戦死者数十万人ともいわれる大変な犠牲を払いました。

ロシアや中国は「金正恩がそんな恩義も忘れて、オレたちの言うことを聞かず、核ミサイルを手に入れようとするのは許せない」と内心、思っているはずです。

ヤルタ会談
戦争の勝敗が決しようとするとき、優勢にある勝者の側は最後の一戦を交える前に、あらかじめ敗者の扱いを決めておくものです。先の大戦では1945年2月のヤルタ会談がそうでした。これは当時の米英ソ連の首脳が占領後の日本の取扱いについて協議するため、クリミア半島の避暑地、ヤルタに集まった会談です。

ルーズベルト米大統領とチャーチル英首相、スターリン・ソ連首相の3人は戦後の国連創設とともに、ドイツ降伏後3カ月以内のソ連による日本に対する参戦(秘密条項)、戦後ドイツの米英ソ仏4カ国による分割統治、ポーランドの扱いなどを決めました。

その結果、千島列島や南樺太のソ連帰属が決まり、ドイツは4つに分割されました。一方、朝鮮半島については当面、連合国の信託統治とすることで3首脳が合意しました。日本が降伏した後、同12月に開かれた米英ソ3国外相会談で中国を加えた4カ国が最長5年間、信託統治することが決まりました。

この信託統治案は朝鮮人の間で激しい反対運動が起きて挫折してしまいました。朝鮮半島は結局、45年から3年間の連合軍軍政期を経て、南北に分断したまま48年、韓国と北朝鮮が建国されました。これが朝鮮半島の歴史です。

この例にならえば、金正恩を除去した後の北朝鮮をどうするか、について米中ロが合意できれば、金正恩や核とミサイルの除去が現実になるかもしれません。朝鮮半島に関して、米中ロによる現代版の「ヤルタ協定」が成立する可能性があるのです。

1945年当時とは違って、いま中ロが露骨に朝鮮半島に介入して傀儡政権を作るわけにはいきません。そんな企てには米国も乗れないです。しかし、文政権による南北統一であれば民族自立の大義名分が立ちます。

中ロが後ろ盾になって文政権による南北統一を目指すのです。米国もこれなら容認します。そのような合意ができれば、そのプロセスの前提として金正恩除去という選択肢も現実味を帯びてくることでしょう。

米国は文政権による南北統一シナリオを容認できるでしょうか。「核ミサイルの本土到達阻止」こそが米国の最優先事項である点を考えれば、金正恩と核・ミサイルさえ確実に除去できるのなら、米国が同意する可能性は小さくないでしょう。

文在寅
一方、中ロの長期的な戦略目標は東アジアにおける米国の影響力排除です。金正恩除去によって自国に対する潜在的脅威を取り除くとともに、それに乗じて米国の影響力も減らせれば言うことはないです。具体的に言えば、韓国からの米軍撤退です。

中ロは米国が金正恩と核・ミサイルの除去を求めるなら、この際、値段を釣り上げて、朝鮮半島からの米軍撤退を取引条件に言い出す可能性もあります。

文政権の親・中ロ路線を考えれば、文政権が米軍撤退に傾く可能性がゼロとは言えないです。韓国が中ロ側につくというのは、本質的にそういう話です。そうなると、日本は戦後最大の危機に陥ります。

基地を受け入れる側の韓国が米軍撤退を言い出せば、米国は同盟国とはいえ旗色が悪くなります。文政権は朝鮮半島を統一した民族の正統政権として、米軍撤退も掲げて装いも新たに一躍、東アジアのど真ん中に登場する形になります。

こんなシナリオは日本にとって、どんな意味を持つでしょうか。核を持つ中ロと、核・ミサイルを廃棄したところで、開発能力を維持する韓国が日本海を挟んで日本に対峙するのです。日本には、安全保障環境が一変する「戦後最大の危機」と言っても良いです。

習近平は秋の共産党大会を終えれば、フリーハンドを握ります。プーチンのロシアは北朝鮮との定期航路を開設し、硬軟両用の構えを整えています。秋から事態は動き出す公算が高いです。

しかし、ここで状況を一変させる方法があります。それは、「北朝鮮版ヤルタ会談」に日本も参加するということです。

米国一国では、確かに北朝鮮問題では立場が弱いです。なぜなら、中国やロシアは北朝鮮と国境を接する国々です。米国はそうではありません。北朝鮮の核と核ミサイルが一掃されれば、米国が北朝鮮問題に強く関わることには根拠が薄弱になります。

しかし、日本は違います。日本は現在でも中国と対峙しています。さらに、ロシアとは対峙はしていませんが、北方領土問題もあります。それに朝鮮半島は海を挟んではいますが、日本は隣国です。

日本が、半島情勢に大きな影響を受けることは中ロともあからさまに否定はできません。そうなると、日本と安保条約を結んでいる同盟国である米国は、北朝鮮崩壊後も半島情勢に関わることは、不自然なことではありません。

米国は文在寅政権は、すでにあてにしていません。そもそも、北朝鮮情勢に対する対応が、ハチャメチャです。先日も北朝鮮人道支援で、米国の不興を買いました。

特に、現状ではトランプ大統領の安倍総理に対する信頼はかなり厚いです。日米が協調して、「北朝鮮版ヤルタ会談」をすすめれば、日米にとって有利にならないまでも、日米にとって不利になるような会談内容にはならないことが考えられます。

中ロを相手に米国と半島問題について、「北朝鮮版ヤルタ会談」を行うときには、日本が参加していれば、米国としても交渉をすすめやすいです。

また、ロシアは日本に対して、中国封じ込めを期待しています。9月28日ロシア紙イズベスチヤは「与党の基盤を強化すれば、安倍晋三首相は不満を持つ憲法の改正に取り組める」と指摘しました。また北朝鮮の核・ミサイル問題に関連し、「日本海にロケットが飛べば飛ぶほど、過去の軍事力を復活させようとする安倍首相の努力を、日本人は必要なものだと考えるようになる」と報じました。

欧米諸国は、ウクライナ問題でロシアとは疎遠になっていますが、安倍総理はプーチン氏と会談をするなどして、今でも友好を保っています。

このようなことから、「北朝鮮版ヤルタ会談」に、安倍総理が参加すれば、中国封じ込めという観点から、日・米・露の三者を安倍総理がまとめて、「北朝鮮版ヤルタ会談」を中国封じ込めに有利な内容にできる可能性が高まります。

安倍総理は北朝鮮版ヤルタ会談で中国包囲網をさらに強力にできるか?
そうして、安倍総理が今回衆院解散を決めた大義はここにあります。まさに、「国難突破解散」であり、安倍総理はこの「北朝鮮版ヤルタ会談」に参加することを狙っているのです。

そうして、現状では、「北朝鮮版ヤルタ会談」に参加して、米中ロに伍して、会談を少しでも日本にとって有利になるようにできるのは、安倍総理のみです。

小池百合子氏を他党のリーダーではとても勤まりません。第一、トランプ大統領は、安倍晋三氏以外には、この大役を担うことを許さないでしょう。

中国は、来るべき「北朝鮮版ヤルタ会談」には、安倍晋三首相には是が非でも参加させたくないでしょう。だからこそ、今回の衆院選で、対抗馬である小池「希望の党」が大勝して、安倍総理ではなく小池百合子氏が日本の首相になれば、安倍首相は「北朝鮮版ヤルタ会談」には出られなくなるか、小池百合子氏が会談に出ても、何ら主導力を発揮できないとみているのでしょう。

だからこそ、「右翼の女性知事」が国政に出て、大躍進することは目先では、中国にとっては利益であると考えられるので、小池氏ををあまり批判しないのです。

しかし、中国には誤算があります。おそらく、今回の選挙では、どんなに「希望の党」が善戦したとしても、政権交代には至りません。

たとえ、自民党がかなり議席数を減らしたにしても、「希望の党」与党第一党にはなりません。

どのみち、小池氏はバリバリの保守であることから、安倍総理が「北朝鮮版ヤルタ会談」に参加することには大賛成です。仮に、「希望の党」が野党第一党になったにしても、与党と、野党第一党の両方が日本が「北朝鮮版ヤルタ会談」に安倍首相が参加することには賛成します。

他の弱小野党がいくら反対しても、安倍総理は「北朝鮮版ヤルタ会談」に出席することになるのです。ヤルタ会談に出るためには、日本も北朝鮮に対する制裁にかなり貢献しなければなりません。これにも、「希望の党」は大賛成することでしょう。

この会談は中国にとっては、実りが少ないものになることでしょう。「北朝鮮版ヤルタ会談」は「ヤルタ会談」と同じく歴史に残るものになることは間違いないです。

これによって、アジアの秩序が変わることは間違いないです。この会談により、冷戦が終了した後も、アジアにそのまま残った負の遺産が解消されることを期待しています。

そうしてこれは声を大にして言いたいのですが、日本の政治家はあまりにも平和ボケになりはてたので、安倍総理がこのようなことを目論んでいることなど、少しも思いが至らないようです。まあ、衆院が終わったら、また国会で、どう考えても最初から「筋悪」の「森・加計」問題でもつついて、無駄時間を費やし、重要なことは何もせず、民進党のように滅びの道を歩むことになるでしょう。サヨウナラ😁

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小池新党との距離感を模索するにせよ、すべての道は憲法改正に通ずる―【私の論評】希望の党もマスコミも数年後には、民進党のように破棄される?

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「北朝鮮問題」覚悟を決めた安倍首相と、決められない野党の「大差」―【私の論評】政党が守るべき六つの規律と駄目にす六つの方法(゚д゚)!

小池都知事率いる「希望の党」に全く希望が見えない理由―【私の論評】小池氏と希望の党は真摯さに欠けていないか?

敵基地攻撃、賛成派が上回る 産経・FNN合同世論調査―【私の論評】世界屈指の戦略家の戦略を選ぶ日本国民は賢い(゚д゚)!

トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能性も...「本当に怖い存在」習近平の中国との関係は?―【私の論評】発足もしてない政権に対して性急な結論をだすべきではない

トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能性も...「本当に怖い存在」習近平の中国との関係は? まとめ トランプ次期大統領はNATO加盟国に国防費をGDP比5%に引き上げるよう要求し、ウクライナへの支援は継続すると伝えた。 現在のNATOの国防費目標はGDP比2%であり、ク...