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2017年11月12日日曜日

米WSJ紙、文大統領を激烈批判「信頼できる友人ではない」 韓国メディアは狂乱状態―【私の論評】「北朝鮮版ヤルタ会談」から締め出された韓国(゚д゚)!

米WSJ紙、文大統領を激烈批判「信頼できる友人ではない」 韓国メディアは狂乱状態

韓国文在寅大統領(右)との会談を終え、記者会見するトランプ米大統領
 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対し、米有力紙の「ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)」が激烈な批判を見舞った。北朝鮮に融和的かつ、中国に擦り寄る文氏の行動について、「文氏が信頼できる友人だとは思えない」などと社説で指摘したのだ。同紙の記事を、韓国メディアは相次いで取り上げ、狂乱状態となっている。

 ドナルド・トランプ米大統領の訪韓(7~8日)について、韓国紙は社説で好意的な評価を示していた。

 《トランプ大統領初来韓、韓米同盟の新たな契機に》(朝鮮日報)

 《深い共感を得たトランプ訪韓…「力を通じて平和を守る」》(中央日報)

 だが、トランプ氏の訪韓成功との見方は、韓国側の一方的な思い込みに過ぎなかったようだ。米保守層に支持されるWSJは7日付の社説でこんな見出しを掲げた。

 《South Korea’s Bow to Beijing(韓国、中国にひざまずく)》

 米軍の最新鋭迎撃システム「THAAD(高高度防衛ミサイル)」をめぐり、中国から“報復”を受けていた韓国は最近、中国と、(1)米国のミサイル防衛システムに加入しない(2)日米韓の安全保障の協力は3カ国軍事同盟に発展しない(3)THAADを韓国に追加配備しない-ことで合意したとされる。

WSJは、こうした文氏の「媚中外交」と、北朝鮮に融和的な「従北」姿勢を徹底批判した。文氏の掲げる「バランス外交」を「中国の圧力に直面し、自国や同盟国の安全保障に関して譲歩もいとわない姿勢は、バランス外交とは程遠いものだ」とし、「文氏が取った一連の行動は、(北朝鮮の)金正恩(キム・ジョンウン)氏を包囲するための同盟関係を損なうものとなった」と指摘した。

 韓国紙は、米国側の真意を知り驚いたのか、相次いでWSJの記事を取り上げた。

 中央日報は「トランプ大統領が訪韓した際には『偉大な協力』『非常に大きな進展』などの発言が出てきたが、最近の(文氏や文政権の)行動を見ると望ましくないということだ」と分析。朝鮮日報は同紙に寄せられたネットユーザーの賛否両論を掲載した。

【私の論評】「北朝鮮版ヤルタ会談」から締め出された韓国(゚д゚)!

「握手のため右手を出した文氏をトランプ氏が無視」
とささやかれるシーン=7日、ソウルの青瓦台
韓国内で衝撃的な映像が話題を集めています。7日に開催された米韓首脳会談で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がドナルド・トランプ米大統領に握手をしようと右手を差し出したところ、トランプ氏が“無視”。そのまま別の場所に移動する瞬間が捉えられています。

これに敏感に反応したのが韓国のネットユーザーでした。同国の掲示板「イルベ」では「(握手を)意図的に無視した」に始まり、「トランプ、文在寅パッシング」「ついに文在寅にキレた」ときて、とどめに「どれだけ(文氏が)嫌われてるんだよ」とてんやわんや。

ミサイル、核実験と国際社会をおびやかす北朝鮮に対して、金融支援の検討を表明するなど空気を読めない自国のトップ。国民も「無視されてやむなし」の印象なのでしょうか。この点では、韓国マスコミより、韓国民のほうが正しく状況を把握していたといえると思います。

この日の早朝文氏は、トランプ氏の最初の訪問先の米軍基地で待ち受けるサプライズを演出していました。様子を携帯電話で動画撮影していた韓国側報道官が米側にトランプ氏を撮るなと制止されました。本来、前線の将兵らと分かち合うべき時間に割り込んだ文氏一行への不信感とも読み取れます。

その場で、トランプ氏は「文氏と貿易について会談する。米国に多くの雇用が創出されること。それが私が来た一番の理由の一つだ」とぶち上げました。会談後の記者会見では「韓国は数十億ドル(数千億円)に達する米国製兵器を発注する」と成果を強調しました。

トランプ米大統領は訪韓中、盛んに韓国を持ち上げ、韓国の頭越しに日中首脳とだけ北朝鮮問題を論議する「コリア・パッシング」は「ない」と明言しました。しかし、2者会談は26分間で終了しました。通訳を除くと実質的な協議は十数分間にすぎず、初日のゴルフだけで2時間半以上を費やした安倍氏とは比ぶべくもありませんでした。

トランプ大統領は、ビジネスライクな姿勢を隠しもしませんでした。安倍晋三首相との“蜜月”との格差を図らずも浮き彫りにしました。

この傾向は前からありました。韓国政府は、北朝鮮問題で韓国だけ疎外されるという、いわゆる「コリアパッシング」の懸念は決してないと強調していました。

北朝鮮が発射した弾道ミサイルが今年日本領空を最初に通過した後、トランプ米大統領と安倍首相は二日連続通話し緊密な対応策を議論しました。

しかし、北朝鮮問題の最大の当事者ある韓国首脳の話し合いは後回しでした。今年7月に、北朝鮮がICBM発射訓練をした時も、韓米首脳間の即時通話はありませんでした。

これに対して、多くの韓国人は「コリア・パッシングではなく、文在寅・パッシングだ」と受け取ったようですが、本当にそうなのでしょうか。1950年の朝鮮戦争当時から、停戦協定には米中北は、含まれていますが、韓国は含まれていないという事実があります(実際署名はこの三国による)。

北は、当時のソ連の傀儡とみて間違いないですから、実際には米中露によってなされたものとみるべきでしょう。いずれにせよ、韓国は含まれていないとみるべきでしょう。

それにしても、その後韓国が日米韓の関係を緊密にして、北朝鮮への対峙姿勢を露わにして、旗幟を鮮明にしていれば、少なくとも今回の「北朝鮮版ヤルタ会談」に関与できたかもしれません。

トランプ大統領が8日の国会演説で「世界4大女子ゴルフ選手は皆、韓国出身だ」と韓国女子プロゴルファーの活躍を称賛すると、議場は拍手に沸きました。「奇跡」の経済発展など韓国をたたえるのに言葉を惜しまず、拍手は20回を超えました。

トランプ大統領の韓国国会での演説
演説前には、前大統領、朴槿恵被告の釈放を訴えるプラカードを持ち込もうとした議員が警備員につまみ出される一幕もありました。

国会前では、トランプ氏の訪韓に反対する団体が「韓国から出ていけ!」と叫びました。反対派はトランプ氏の行く先々でデモを計画しましたが、2万人近い警察を動員し、トランプ氏の目にとまらないよう力で押し込めたのが現実でした。これは、日本ではほとんどみられない光景でした。

韓国国会前ではトランプ大統領訪韓反対デモが開催さた
文政権を悩ませたのは親米・反米に二分した国論だけではありません。拉致被害者家族との面会を実現させ、対北圧力で一枚岩を見せつけた訪日と比べ、1泊だけの訪韓に不満を抱く韓国世論の突き上げを受けていました。

文氏の提案で、トランプ氏は8日早朝、南北軍事境界線がある板門店の非武装地帯(DMZ)のサプライズ視察を試みたのですが、トランプ大統領は悪天候で断念。先回りしていた文氏が待ちぼうけを食いました。

文氏と対北観で大きな違いを見せてきたトランプ氏は「韓国は単なる長年の同盟国以上」とのリップサービスで表向き韓国世論を安心させ、先端兵器の売りつけという実益を手に、北朝鮮問題で最大の協議相手である中国に向かったのです。

これでは、どうみてもドナルド・トランプ米大統領の訪韓(7~8日)について、韓国紙は社説で好意的な評価を示したのは間違いです。最初から、最後まで失敗であったとみるべきです。

そうして、このような報道ぶりからみれば、何に失敗したのかも理解していないようです。最大の失敗は、もう韓国は北朝鮮有事の後の新たな東アジアの秩序づくり、いわば「北朝鮮版ヤルタ会談」には実質的に参加できないということです。

「北朝鮮版ヤルタ会談」については、このブログでも紹介したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮危機「アメリカには安倍晋三が必要だ」―【私の論評】北朝鮮版「ヤルタ会談」のキーマンは安倍総理(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、「北朝鮮版ヤルタ会談」に関係している部分のみを以下に引用します。
北朝鮮問題に関しては、今年の末から、来年の前半あたりには必ず何らかの動きがあります。最悪の場合は、米国による爆撃などの武力行使があることでしょう。この場合、中国の参戦もあるかもしれません。あるいは、制裁に北朝鮮が折れて何らかの進展があるかもしれません。 
いずれになるにしても、間違いなく、来年前半あたりには必ず動きがあります。
安倍総理とトランプ大統領
その前に、11月に日米首脳会談、米中首脳会談があります。また、APECでの各国首脳会談には、ロシアも出てくるでしょう。それらの国際会議では、北朝鮮問題が話し合われるのは間違いありません。これらは、北朝鮮版「ヤルタ会談」ともいうべきものです。 
「ヤルタ会談」とは無論のこと、第二次世界大戦終了直前の当時のアメリカ合衆国イギリスソビエト連邦による首脳会談です。ソ連対日参戦国際連合の設立について協議されたほか、ドイツおよび中部・東部ヨーロッパならびに極東における米ソの利害を調整することで、大戦後の国際レジームを規定したものです。これが、後に東西冷戦の端緒ともなりました。 
こうした北朝鮮版ヤルタ会談ともいえる、会議において、安倍首相は大きな役割を果たす可能性が高まってきました。これらの会議では、北朝鮮が最終的に戦争に突入した場合と、制裁に屈した場合の両方について、協議が行われることでしょう。
「北朝鮮ヤルタ会談」では、ポスト北朝鮮有事(北朝鮮の危機が去ったあとの体制)が話し合われれることになります。

というより、日本にトランプ氏が訪問し、もうすでにその一部は話されているはずです。そうして、韓国ではトランプ氏はこの話はほとんどしなかったでしょう。だからこそ、首脳会談の時間が異常に短かったのです。

米中会談でも当然その話をしたことでしょう。さらにその後のAPECでもその話は継続されたとみて間違いありません。

このAPECでは番狂わせもありました。

ベトナム中部ダナンで開催されたアジア太平洋経済協力会議(SPEC)首脳会議に出席したプーチン露大統領とトランプ米大統領による正式な米露首脳会談が11日、見送られました。インタファクス通信によるとプーチン氏は同日、会談見送りは米露が外交文書の内容で一致しなかったことなどが背景にあったと会見で明かし、関係者を「処分する」とまで述べて強い不満を示しました。

両首脳は当初、正式会談の実施に前向きな姿勢を見せていました。会談見送りについては双方とも日程の問題などを挙げていますが、米国でロシアの米大統領選介入疑惑をめぐる捜査が進展する中、世論の反発が必至のプーチン氏との会談をトランプ氏が避けた格好です。ラブロフ露外相も10日、会談見送りの見通しを受け、米側を激しく批判していました。

一方、露大統領府によると両首脳は11日、共同声明を発表しシリア情勢での協力継続を表明しました。両首脳は、APEC首脳会議での記念撮影前に短時間協議したとみられ、その際合意したもようです。プーチン氏は必要なことは話せたとも語り、会談見送りの影響は少なかったと強調しました。

この会談でも、当然のことならが、北朝鮮情勢についても話されたと考えるのが妥当でしょう。とはいいながら、プーチン大統領としては、この重要な会談にあまり時間がさけなかったことに対して不満を表明したと考えられます。

トランプ、プーチン両大統領、歓迎夕食会で握手 APEC首脳会議
今回のトランプ大統領のアジア歴訪により「北朝鮮版ヤルタ会談」はかなり進んだものと思います。さらに、必要があれば、この会談は継続されるかもしれません。この話し合いに、北朝鮮と国境を接している中国とロシアが入るのは当然のことです。

さらに、この話し合いに朝鮮半島に海峡を挟んで接している日本と、その同盟国である米国が参加するのも当然のことです。

しかし、本来ならば韓国がこの会談において、大きな働きをすべきでした。しかし、THHADの配備では中国から不信感をいだかれ、米国側からは「媚中外交」と、北朝鮮に融和的な「従北」姿勢で不信感を抱かれ、日本に対する反日的な行動から、日本にも不信感をいだかれてしまった韓国は、当然のことながら、ロシアからも不信感を抱かれていることと思います。

最早、日米露中は、韓国を信頼していません。となると、韓国は「北朝鮮版ヤルタ会談」では完璧に排除されたとみなすべきです。そうして、もしこれからも会談があったとしても、実質的に排除されることでしょう。

結局、ポスト北朝鮮有事は、韓国にとって死活的に重要でありながらも、「北朝鮮版ヤルタ会談」から事実上締め出されたのです。

韓国は、最早自らの運命を大きく左右するかもしれない、会談に参加できないのです。しかし、これは韓国自身が招いてしまったことであり、欠局これからの新しいアジアの新秩序に全く関与することはできず、日米中露で定めた新秩序の中で生きていくしかなくなってしまったのです。

このことを文在寅も、韓国政府、国民もほとんど理解していないようです。

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2012年5月20日日曜日

創業150年以上の老舗企業は中国にわずか5社、日本に大きな後れ―中国メディア―【私の論評】日本に多くの老舗企業が存在するのは、「信頼」「規範」「ネットワーク」という社会の基盤からあるからである!!

創業150年以上の老舗企業は中国にわずか5社、日本に大きな後れ―中国メディア

 2012年5月18日、中国メディア・網易は日本に多く存在する老舗企業について分析した。中国には創業150年を超える企業はわずか5社しかなく、日本に大きな後れを取っている。

中国最古の企業、漬物店の「六必居」
韓国銀行が発表した報告書「日本企業の長寿の秘密と啓示」によると、日本には創業200年を超える企業が3146社あり、世界最多となっている。7社は1000年以上の歴史を持つ。世界最古の企業トップ3はすべて日本企業だ。東京商工研究機構のデータでも、創業100年以上の日本企業は2万1666社に上り、1975年以降に創業した会社はわずか620社しかない。創業100年以上の日本企業の89.4%は従業員300人未満の中小企業であり、多くが家族経営で、大部分は食品製造、酒蔵、薬品、伝統文化関連の経営である。

200年を超える歴史を持つ企業はヨーロッパにも多く、ドイツには837社、オランダには222社、フランスには196社存在する。しかし中国は、最古の企業は1538年創業の漬物店「六必居」、続いて1663年創業のハサミメーカー「張小泉」、漢方薬局「陳李済」と「同仁堂」、飲料「王老吉」と、150年以上の歴史を持つ老舗企業はわずか5社。中国中小企業の平均寿命はわずか2年半、グループ企業であっても7~8年と、欧米企業の平均寿命40年に遠く及ばない。

日本の家族経営企業の多くは「終身雇用制」と「年功序列制」といった特徴を持ち、血縁を超えて継承者を選定する。家族経営企業は往々にして婿を取り、養子とすることで財産が分散しないようにし、血縁関係がなくても後を継げるようになっている。また、目先の利益を追わずに細く長く経営するという理念を持っているため、日本の家族経営企業には多角経営が少ない。さらに、100年という歳月をかけて特定の領域に注力し信頼を勝ち取っているため、この信頼を最も貴重な財産として、企業リスクに対抗できる力を高めている。誠実な経営に加え、徹底した職人気質、さらに保守的な企業経営などが日本企業の長寿の秘訣となっている。対して、脚光を浴びつつある中国の家族企業は、均等分割制の継承方法、会長や社長が一手に握る人事システム、社員の極めて低い忠誠度が相対的に見劣りしてしまう。

なぜ中国には長寿企業が存在しないのか?一企業として、創業者が苦労して立ち上げ、困難を克服してきたところに大きな差はない。いかに次世代に引き継ぎ発展させるかがが最大の挑戦なのである。

【私の論評】日本に多くの老舗企業が存在するのは、「信頼」「規範」「ネットワーク」という社会の基盤からあるからである!!

日本最古の企業金剛社の本社
上の記事を読んでいて、まずは、中国には、創業150年以上の会社が、わずか5社しかないことに驚愕するとともに、納得しました。また、「会社の寿命は何で決まるのか?潰れない会社の持続力の源を探る」をテーマに、世界的に珍しいという老舗企業大国ニッポンの実体をレポートした新書本があったことを思い出しました。数年ほど前に読んで印象に残っていたのですが、あらためて拾い読みしてみました。

昭和初期の金剛社

その書籍は、『千年働いてきました~老舗企業大国ニッポン』(野村進著、角川書店 2006年11月)という本です。東京商工リサーチのデータベースによれば、当時創業100年以上の企業は、全150万社中1万5,207社(2002年現在)、個人商店や小規模企業を加えると10万以上と推定されるということでした。

日本最古の宮大工《金剛組》にて修理がおこなわれた太田地車


歴史の古いヨーロッパや中国でも創業100年以上の企業は稀だということです。これだけ老舗企業の数が多いのは、日本だけです。

その中に調査結果の分析から得られた「老舗製造業五つの共通項」が、なぜ、日本にこれほどまでに、老舗企業が多いのか非常に参考になります。以下にその部分を掲載しておきます。
1.同族企業は多いものの、血族に固執せず、企業存続のためなら、よそから優れた人材を取り入れるのを躊躇しないこと。 
2.時代の変化にしなやかに対応してきたこと。 
3.時代に対応した製品を生み出しつつも、創業以来の家業の部分は、頑固に守り抜いていること。 
4.それぞれの"分"をわきまえていること。 
5.哲学者で鳥取環境大学学長の加藤尚武氏が言う「町人の正義」を実践してきたこと。
1,2,3の各項は企業の継続性を考えれば、当然の意義があるものでしょう。しかし日本が世界に稀な長寿企業大国であることを納得させられる鍵は、4と5の中に隠されています。


分とは何かを語る、老舗企業の経営者の言葉が記録されています。
西川会長
「僕らは株なんかも一切やってません。本業で社会に貢献する。それに反するものをやったら、長続きしないという理念があるんです。」(ふとんの西川産業、1566年創業、西川甚五郎会長) 
「儲かればいいと思って、本道からはずれたらあかん。どんな商売でも、なぜそういう商売をするのかという説明がつかんといかんわね。説明のつかん商売をしたら絶対潰れますわ。」(金箔製造から転写箔メーカーになったカタニ産業、1899年創業、蚊谷八郎社長)
平成バブルの崩壊を記憶に留めている私たちにとっては、この単純明解なことが巨大企業にも通用する真理であることが理解できると思います。

では5の「町人の正義」とは何でしょうか。前述の加藤尚武氏によれば、「売り手と買い手とが、公正と信頼を取引の基盤に据えてきた」ということです。考えてみれば、江戸時代の我が国は封建的な社会でありながら当時の世界でも珍しいほど高度に近代化した全国規模での物流と金流の経済システムを完成させていました。

江戸時代のジオラマ

法律の整備も曖昧な社会で公正と信頼を基盤にしなければ経済は成り立たなかったわけですし、これを破る者に対する社会的な制裁もたいへん厳しいものでした。しかし大切なことはこの町人の正義、お天道様に顔向けができないことはしない、という考え方が法律的な規制によるからというのではなく、自発的な経営規範として老舗と呼ばれる企業経営者たちには代々受け継がれてきたということです。

江戸時代の町人の服装


著者は「よく人間は遺伝子の"乗り物"にたとえられるが、人間は文化の"乗り物"でもある。老舗企業を語る際にも『企業のDNA』といった表現がしばしば使われるけれど、この『DNA』とは『文化』と同義語ではあるまいか。」と、老舗企業の永続性の秘密を解いています。

こうした、「町人の正義」何か、最近の社会学における、最新のテーマでもある、ソーシャル・キャピタルという概念を思い起こさせます。ソーシャル・キャピタルとは、日本語に直訳すると、「社会資本」となりますが、日本語で、単に、「社会資本」というと、いわゆる、道路、空港、港湾、鉄道、電気、水道などのインフラを指すことが多いので、これと区別するために、ソーシャル・キャピタルと言われることが多いです。



では、ソーシャル・キャピタルとは、どのうよなものかといえば、詳細は、wikipediaなどで検索して調べていたたくものとして、このブログで以前とりあげたことがありますので、そこから以下にコピペさせていただきます。

ある大学の社会学部の紹介をするサイトの扉の画像
民間非営利企業とは、平たくいえば、市民団体など、市民参加の自発的な組織であることが多いです。こうした組織が多くできるようになっていろいろと様変わりしているところがあります。たとえば、イタリアでは、閉鎖的な家族主義社会ということがいわれていましたが、最近は随分様変わりしています。特に、北イタリアでは、昔からの市民活動の動きがあり、南と北では随分と違いがあります。南と北では、料理にも違いがありますが、それ以上に州政府の成果に大きな違いがあるのです。アメリカのパットナムの長年の研究によれば、北のほうが州政府の統治による成果がはるかに高く、この主要な原因として、北のほうが、いわゆるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が充実しているそうです。 
ソーシャル・キャピタルとはアメリカの政治学者のパットナムの定義によれば、「人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴」ということです。ソーシャル・キャピタルを高めるためには、やはり、ありとあらゆる種類のNPO、それも、市民が自発的に参加するものが設立されている必要があります。この、ソーシャル・キャピタルが充実している地方ほど、健康的で、犯罪も少なく、経済的にも恵まれる傾向があるという統計資料もOECD、世界銀行から出されています。 
だからこそ、先進国ではNPOがかなり多く設立されて、実質的に政府がやっていた社会福祉など、いわゆる社会問題の分野に積極的に介入できるような仕組みを構築しているのだと思います。
この記事を書いていた当時、私は、現在のように、政府が、増税するなどということなど思いもよらず、その当時もデフレで、生かさず殺さずという状況にあった、日本の社会をさらに、増税などで、半殺しにすることなどなど思いもよらず、これ以上経済が悪くなることなど、全く想定していませんでした。これから、良くなることは、あっても悪くなるとは想定していませんでした。もともと、民主党は、野党時代に増税に大反対していたはずです。そのため、社会を良くするための方法をいろいろ考えていました。その一環で、日本では、弱小なものしかない、西欧型NPOが日本でも有効であると考えこれに関する記事を良く書いていたものです。



最近は、増税などで、社会が半殺しにされることを懸念しているので、増税反対に関する記事や、増税の根拠となっている、日本国財政破綻の虚偽に関する記事を掲載するようになっています。しかし、私自身としては、あの当時から経済より社会を優先するという考え方は今でも変わっていません。今は、デフレの真っ只中にあり、増税すれば、税収はさらに減り、社会が疲弊することが目に見えているため、増税に反対にする内容うの記事が多くなっているだけです。日本社会のためにも、増税は避けるべきです。

さて、話を本筋に戻すと、日本国では、諸外国と比較すると、このソーシャル・キャピタルが著しく発達していたということです。まさに、日本の社会では、「信頼」「規範」「ネットワーク」が、昔から「町人の正義」などといわれ、尊ばれ、発展してきたということです。「信頼」「規範」については、上記でも説明されていましたが、「ネットワーク」についても、日本では、昔からかなり充実していました。昔から日本全国で、北は、サハリンから、南は沖縄や台湾まで、随分昔からネットワークが張り巡らされていました。また、通信手段も昔から発展していて、のろしなどを使って、江戸と大阪などの遠隔地同士でも、数時間で情報のやりとりをしていました。

遺跡などから、推定された、縄文ネットワーク


そうして、これを模範的に、具体的に具現化してきたのが、創業150年を超える、老舗企業だということです。上の記事では、どちらかというと、企業のDNAとして、老舗企業の側から、説明していましたが、それだけではなく、日本国の社会のDNAとして、多くの人々に受け継がれ、発展してきたからこそ、今日その証として、多くの老舗企業が存続しているのだと思います。

また、先の書籍には日本の老舗企業の特徴として、「職人」の技術に対する最大限の敬意があげられています。講談や落語の世界に江戸時代の名工、名人噺がたくさん残され今なお語り継がれているように、職人の技術に対する信仰にも近い思いが底流となって、我が国の近代化と戦後復興が達成され、世界第二位の経済大国へと発展したことだけは確かです。

漆塗りの職人
それがバブル経済が生み出した拝金主義、単なる交換価値でしかない金が金を生み出すという神話を今も捨てきれないところに、現在の企業不祥事の根本原因があり、また同時にこれが日本人が営々と築いてきた莫大な資産を米国に掠め取られている原因であると考えざるを得ません。また、現在の韓国は、掠め取られるどころか、実質上のアメリカの経済植民地になっていることは、このブログにも以前掲載したことがあります。

この辺りは、NYB嘆きの世直しブラザース長兄平川克美さんの著書『株式会社という病』(NTT出版)に明らかにされていますので、ご一読をお薦めします。また、日本国民の資産が必然的合法的に米国に掠め取られるしくみについては『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』(水野和夫著 日本経済新聞出版社刊)に明らかにされていますのでご興味のある方はどうぞ。

この書籍の根本となっている、アメリカのいわゆる社会ではなく、経済至上主義、自由主義の名のもとに、日本をはじめとする多くの国から、富を簒奪する仕組みは、アジア通貨危機の頃から、アメリカのワシントンを根拠地とする、IMFや、世界銀行、ならびに他の金融機関などの間の合意事項であるワシントン・コンセンサスによってかたちづくられていきました。このコンセンサスは、もともとは、金融界出身の人々の自分たちにとって、都合の良い仕組みの構築という意味合いが強いです。これに、関しては、本日は本題ではないので、また、日を改めて掲載します。


日本国は、他国と比較すると、昔から、社会の効率性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴をもっていたということです。いわゆる、文明国などでは、日本ほどではありませんが、これらが、ある程度以上根付いています。日本人は、これが当たり前だと思っているので、しばしば海外では、カルチャー・ショックを受けることがあります。たとえば、中国、韓国などでも、「信頼」「規範」「ネットワーク」意識がない人や、あっても、かなり低い人に遭遇して、驚く人も大勢います。しかし、それは、海外の人が悪いとか、野蛮というのではなくて、日本が特殊であると見るべきです。無論特殊だからといって、日本が遅れているなどと一部の愚かもが主張するようなことはいいません。日本国や、日本人が、高い次元にあると認識すべきです。

そのため、日本では、昔から商売がやりやすいです。特に、明治維新や、戦後の復興などでみせた、日本の急激な成長は、こうした、基盤がなければ、成し遂げられなかったことでしょう。特に、日本の高度経済成長は、そのほとんどが内需拡大によって支えられていたことは、特筆に価します。多くの人は、日本は、貿易大国であるかの幻想をいだいていますが、現在でも、日本においては、GDPにしめる輸出の割合は、16%に過ぎません。10年以上前までは、わずか8%にしか過ぎませんでした。

日本の高度経済成長の象徴でもある新幹線
こうした内需拡大の推進力となったのは、経済の専門家などは、中間層の拡大と指摘しています。その、とおりだと思います。そうして、その根底にあったのは、やはり、「人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高めることのできる、高度な日本独自の、ソーシャル・キャピタルが大昔から形成されていたことだと思います。

そうして、どうして、このようなソーシャル・キャピタルが日本にだけ高度に昔から発展していたのかといえば、それは、日本独自の国柄があると思います。

他国には、ない国柄といえば、日本には、古くから朝廷が存在していて、天皇陛下が存在していて、そのどきどきでの為政者とは、別の権威が存在しており、日ノ本の民に徳を説き、民の安寧を願い祈り続けてきたという古い歴史があるからです。


無論、長い歴史の中では、朝廷の政治利用などということもあり、世の中が乱れたこともありましたが、そうした乱世の中にあっても、多くの人が、徳であるとか、安寧という理想の原型が失われたことはなく、今まで連綿と受け継がれてきました。

カトリックでは、神の偶像が存在します。カトリックに限らず、宗教では、偶像がつきものです。宗教全体からみれば、キリスト教の他の宗派などは、例外的といえるかもしれません。それらだって、十字架というものはあります。人間は、何かはっきりと目に見えるものや、何とかして見ようとすれば、見られるなり、接触することができるものがなければ、そのようなものの存在や価値をなかなか信じることはできません。日本では、まさしく、朝廷や、天皇がそのような役割果たしてきたということです。しかも、それが、2670年以上も続いてきたということです。

上の記事や、上の私が読んだ書籍などでは、日本に老舗企業があることをさまざまな方向から分析していますが、どれも、表層的なことにすぎないと思います。私たちの日本は、このような国柄であるということをもう一度再認識すべきです。


そうして、ワシントン・コンセンサスや、新自由主義などという、歴史の浅い浅薄な考え方に惑わされることなく、日本の国柄を守って、長い間存続してきた、老舗企業のように「信頼」「規範」「ネットワーク」という、すでに日本大昔からある、すぐれた、ソーシャル・キャピタルをますます高度化していくべきと思います。

こうした、私たちの日本の国柄がある限り、たとえ、昨年のように千年に一度ともいわれる、大震災にみまわれようと、今の為政者の誤った政治によって、一時間違った方向に行ったとしても、私たち日本の心は、うちひしがれることなく、日本にあまたある老舗企業のように、これからも悠久の歴史の中に燦然として輝き続けるどころか、さらに輝きを増すことでしょう。




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