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2018年10月26日金曜日

安倍首相が習近平主席と会談、日中新時代へ「競争から協調へ」など新3原則確認 李首相には「人権状況注視」言及―【私の論評】習近平は結局安倍総理に鼻であしらわれた(゚д゚)!



    中国を公式訪問中の安倍晋三首相は26日、習近平国家主席と北京市の釣魚台国賓館で会談し、新たな日中関係の構築に向け「競争から協調へ」「脅威ではなくパートナー」「自由で公正な貿易体制の発展」とする3つの新たな原則を確認した。安倍首相はこれに先立つ李克強首相との会談で、ウイグル族への弾圧などを念頭に「中国国内の人権状況について日本を含む国際社会が注視している」と述べた。

 安倍首相は習氏に「私の訪問を契機に競争から協調へ日中関係を新しい時代へと押し上げていきたい。日中はパートナーであり、互いに脅威とはならない。自由で公正な貿易体制を発展、進化させていかなければならない」と述べた。習氏は「中日関係が長期にわたり健全かつ安定的に発展することは両国人民の根本的利益になる」と応じた。

 李氏との会談では、今後5年間で3万人規模の青少年の相互訪問や交流を実施することで一致し、日本側は訪日中国人に対するビザ発給要件の緩和を決めた。両首相は共同記者発表で、金融危機時に互いの通貨を融通し合う通貨スワップ(交換)協定を中央銀行間で締結したことも明らかにした。上限額は平成25年に失効した旧協定の10倍の約3兆4千億円規模とする。

 中国側は東京電力福島第1原発事故後から続く日本産食品に対する輸入規制の緩和について、科学的な評価に基づき積極的に考えると表明した。両国の周辺海域での救難時の協力の円滑化・効率化を図る海上捜索・救助(SAR)協定の締結にも合意。6月に運用開始した防衛当局者間の海空連絡メカニズムに関し、年内の会合開催やホットラインの早期設置も確認した。

 東シナ海での資源開発をめぐっては「交渉の早期再開を目指して意思疎通を強化する」ことで一致するにとどまった。

【私の論評】習近平は結局安倍総理に鼻であしらわれた(゚д゚)!

安倍総理の訪中は、私が予想していた通りの展開となったと思います。これについては、識者の人々が懸念を表明していました。たとえば、石平氏は日本が中国の「一対一路」に協力するという言質を取られるのではないかとか、「自由貿易」の大義名分を振りかざして日本を米中貿易戦争に巻き込もうとするなどの懸念を表明していました。

それについては、詳細は以下の記事をご覧になってください。
【石平のChina Watch】安倍首相を待つ2つの罠
私は、石平氏がこの懸念をツイッターでも表明していたので、「米国が対中国貿易戦争を実行している最中でもあり、世界中の国々と対中国包囲網を築いてきた安倍総理が間違ってもそのようなことをすることはないだろう」とリプライをしました。

さて、今回の習近平主席と李克強首相の会談後の記者会見においては、日中双方から「一対一路」という言葉は一言も出ませんでした。さらに、「自由貿易 」に関しても、具体的には一言も出ませんでした。

安倍総理からは、「自由で公正な貿易体制の発展」という言葉への言及はありましたが、それは原則論を言っただけであって、具体的に中国と自由貿易の促進について話あうだとかすすめるなどの話は一切ありませんでした。

安倍晋三首相は今年1月10日、官邸で自民党の二階俊博、公明党の井上義久両幹事長と面会し、昨年末に中国で行った中国共産党との定期対話「日中与党交流協議会」の報告を受けました。

首相は中国が提唱する経済圏構想「一帯一路」に関し「中国側の考え方もかなり整理されてきている。個別の案件について日本で対応できるものはきちっと対応していきたい」と述べ、協力する姿勢を示したとされています。習近平国家主席との日中首脳交流についても「しっかり取り組む」と意欲を示していました。面会後、両幹事長が記者団に明らかにしました。

結局これは、自民党内の実力のある親中派政治家に対する安倍総理の懐柔策のようなものであり、今回の中国訪問もその延長なのかもしれません。今回の、安倍総理の訪中では、民間レベルでは具体的な話もでていましたが、国レベルでは、何ら具体的な内容はありませんでした。それでも、親中派の大物議員の面子は十分にたったと思います。おそらく、習近平の面子もある程度たったのかもしれません。

ただし、この面子たるや何の裏付けもな、空虚なものであり、実としては何もないようです。

今回の安倍総理の訪中では、特に「一対一路」の話が具体的には何も出てきませんでした。米国との貿易戦争が始まったばかりの中国で、経済の失速感が鮮明です。7~9月期国内総生産(GDP)は減速し、上海株や人民元も下落基調です。経済と外交の柱とした「一帯一路」戦略は丸5年が経過し、各国を借金漬けにする実態が明るみに出て各国から総スカンをくらっています。


習政権の経済外交戦略も行き詰まりが鮮明になってきました。習主席は2013年9月、「シルクロード経済ベルトを建設しよう」と宣言。翌10月には海上ルートの構想を披露、後に合わせて「一帯一路」と命名しました。

港湾や高速鉄道などのインフラ投資に着手し、17年までに累計800億ドル(約9兆円)超を投資し、協力協定を結んだ国や国際機関は8月下旬時点で103に達し、地域は南米や北極に及びます。

しかし、巨額投資を受け入れた国々は財政状況が悪化、潤うのは事業を担う中国企業だけだとの不満が募っています。

マレーシアではマハティール首相が財政悪化懸念を理由に、中国との鉄道建設計画を中止すると発表。モルディブでも大統領選で脱中国依存を訴える野党候補が勝利しました。

中国の投資を歓迎してきた欧州連合(EU)も明らかにスタンスを変えました。アジアと欧州を結ぶインフラの強化に向けた新戦略を打ち出しましたが、一帯一路への警戒心があらわになりました。

欧州連合は、中国など他国と「対抗する考えはない」とするものの、投資や支援の根底にあるのは「自由や民主主義、法の支配、人権の尊重」だとわざわざ説明。経済性や予算、環境などの面で「持続可能」なものにすると述べるなど中国の神経を逆なでするような内容でした。

こうしたなか、26日に予定される日中首脳会談で、日中の中央銀行間で円と人民元を融通し合う通貨交換協定の再開で合意する見通しだ。かつての協定の30億ドル(約3300億円)相当から約10倍の3兆円規模に拡大する方向で調整しています。

この通貨スワップについても、特に保守系の人で問題とする人も多いようですが、これは実は中国というよりも日本の企業に利するところが多いです。

2018年5月9日に行われた日中首脳会談では、以下の3項目で合意したとされています。
  • 中国は日本に対して2000億元(約3.4兆円)のRQFII(Renminbi Qualified Foreign Institutional Investor、人民元適格外国機関投資家)枠を付与する
  • 日中双方は、人民元クリアリング銀行の設置、円‐元の通貨スワップ協定の締結のための作業を早期に完了させる
  • 中国は日系金融機関への債券業務ライセンスを早期に付与するとともに、日本の証券会社等の中国市場参入に関する認可申請を効率的に審査する
通貨スワップ協定とは、この3項目中に2番目に記載されている、「人民元クリアリング銀行の設置」に関連するものです。

中国の通貨・人民元は典型的な「ソフト・カレンシー」であり、中国からは外貨流出リスクがあるため、日本との通貨スワップ締結によって、通貨不安が一時的に鎮静化する効果は得られます。その意味で、「日本が中国を一方的に救済・支援する」という性格があることは間違いありません。

ただ、もう1つの深刻な問題は、日本の銀行が発行した「パンダ債」と呼ばれる債券にあります。三菱UFJ銀行(本稿では以下「BTMU」)と、みずほ銀行(本稿では以下「MHBK」)は今年1月16日、「本邦初のパンダ債」を発行。両社とも、自社のウェブサイトでこのことを誇らしげに報道発表しています。

パンダ債によって資金調達の多様化が図られて良いようにも思えるのだか・・・・・・

2017年日本と中国の金融当局は、日本企業が中国で人民元建ての債券、いわゆる「パンダ債」を発行できるようにすることで合意しました。

端的にいえば、この両社の行動は、とても正気の沙汰とは思えません。というのも、この「パンダ債」とは、「中国国外の企業が中国本土で発行する人民元建ての債券」のことであり、中国の金融市場が未成熟であることなどを考えれば、きわめてリスクの高い行為だからです。

香港あたりのオフショア市場で人民元建て債券を発行するのなら話はわかります。しかし、中国本土の資本市場は外国に解放されておらず、何らかのショックが生じたときに資金調達ができなくなるリスクは先進国と比べて際立って高いのです。

無論発行するのは銀行の自己責任において発行するわけですが、それにしても日本の銀行が資金調達に困難を極めれば、日本国内にも信用不安が及ぶことになります。そのための担保としての通貨スワップという面があるのです。

つまり、今回のスワップは、むしろ日本政府の側に、締結するインセンティブがあるのです。報道機関がなぜこの重要な「パンダ債問題」についてまったく報道しないのでしょうか?報道機関の皆さんが、あまりにも金融のことを知らなすぎるのではないでしょうか。まあ、三菱UFJ銀行やみずほ銀行ですら、ある意味金融に無知ですから、致し方ないのかもしれません。

それに、3.4兆円という金額は、確かに中国内日本の銀行などの企業に融通するには十分でしょうが、中国という国家レベルでの金融にはないよりはましかもしれませんが、焼け石に水にすぎません。これを考えれば、今回の通貨スワップが一方的に中国を利するだけのものであると判断するのは早計でしょう。

さて、一帯一路でも中国のおごりや自国企業優先の姿勢が反感を買っており、貿易戦争があっても味方がおらず、中国はできれば日本に泣きつこうとしていると見て間違いないです。

トランプ政権というより、米国議会は中間選挙後も中国と手打ちにするつもりはなく、徹底的に中国をたたくことでしょう。元々中国の経済統計は出鱈目なのですが、それにしてもごまかしの数値を出すにしてもあまりかけ離れていては矛盾を露呈するので、さすがに成長率は来年には6%を割ることも予想されます。

中国では昔から「保8」という言葉があり、発展途上の中国では成長率が8%を割ると、まともに雇用も吸収できない状態になるので、成長率8%は政府の責任で守るという意味で「保8」という言葉ができたのです。

中共は保8を守れなくなったどころか来年は6%以下になったと公表せざるをえなくなる?

日本感覚だと、6%を割るという成長でも、凄まじい成長率ということになりますが、中国では現在でも6%を割るということは、とんでもない低成長なのであり、鄧小平の改革開放経済以降で最悪の事態になるということです。人民元も大混乱することになるでしょう。

今回は、はっきりいえば、習近平は結局安倍総理に体裁よく鼻であしらわれたということです。習政権の野望はついえてしまうことになるでしょう。

しかし、ここでも中国というか中共の大きな誤算があります。習近平が失脚したにしても、中国の体制が変わらなければ、米国の対中国冷戦Ⅱは、継続されるということです。

中国は、大国(人口の多い国)ゆえに自国内の都合を優先して動くという習性がありますが、今度ばかりはそうはいかないことを思い知らされることになります。

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