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2019年11月24日日曜日

消費税10%ショック! やはり「景気後退」が始まったかもしれない―【私の論評】インバウンド消費等元々微々たるもの、個人消費に勝るものはない(゚д゚)!

消費税10%ショック! やはり「景気後退」が始まったかもしれない

麻生財務相はわかっていない

不可解な「麻生発言」

「安倍晋三首相から経済対策の指示は出ておらず、現時点でその必要性も感じない」

11月1日の閣議後、会見でこう述べたのは麻生太郎財務相である。だがこの発言が密かに、周囲の混乱を生んでいる。


麻生財務大臣

というのも麻生財務相は、今年7月の参院選当時、10月の消費増税後に世界経済が大幅悪化した場合などを念頭に「必要な事態が起きれば、それなりの対応をしようと財政当局として考えている」と発言。

今秋に追加経済対策を実施する可能性を示唆していたからだ。

奇しくも同日付の日経新聞では、「安倍晋三首相は大規模災害や来年夏の五輪後の経済成長を底上げするため、経済対策の策定を近く指示する」と報じられた。

麻生氏の発言とは正反対の趣旨である。

おまけに、こんな数字も同日、厚労省から発表された。9月の有効求人倍率で、その数値は前月比0・02ポイント低下の1・57倍となった。これだけで景気後退は断言できないが、見逃していい数字でもない。ますます麻生氏の発言の真意を計りかねるところだ。


景気後退のサイン

景気停滞について、その兆候を示す調査がちらほらと出始めている。

NHKは、消費増税から1ヵ月が経過し、小売りや外食などの主な企業50社に調査を行った。その結果は、6割の企業が増税のあと、売り上げが前の年の同じ時期よりも減少したと回答したのだ。



また、日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査では、同じく消費増税から1ヵ月で、家計支出について「変わらない」と回答したのは76%、「減らした」と回答したのは21%だった。

ちなみに'14年の消費増税時は、「変わらない」は66%「減らした」は31%だった。今回の増税は8%から10%、前回は5%から8%と、増税割合は前回のほうが大きい。増税幅と消費減少の連動を示している数字といえよう。

さらに、総務省が発表した、10月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)も見てほしい。前年同月比0・5%上昇で9月から横ばいだが、増税による押し上げを除くと0・34%で、2年3ヵ月ぶりの低い伸びだった。

また、実質消費支出でいうと、'14年は前年比マイナス2・5%であった。

ここから今回の消費増税の影響を算出してみると、およそ1・8%の消費支出マイナスになることが想定される。

先の読めない金庫番

あまりインパクトを感じない数字かもしれないが、消費以外の需要項目、民間住宅、民間設備投資、公的部門、外需がかなり頑張らないと実質GDP成長率がゼロ近辺に落ち込むレベルといえる。

米中貿易戦争にブレグジット、ホルムズ海峡の緊張や日韓関係悪化と、地政学リスクは7月の参院選時より明らかに増えている。となれば、外需だのみは通用しない。

大規模の景気対策を打たないと、来年の中盤から、つるべ落としの景気悪化になるかもしれない。にもかかわらず麻生財務相が「経済対策は不要」と言い切るのは不可解としか言いようがない。

今の臨時国会は、経産相と法相の二人が辞任する異常事態だ。その中で、補正予算を通さなければいけない。財務相ならその厳しさをわかっているはずだが、どうも先の読めない金庫番、という顔をしているのは愚かだ。

『週刊現代』2019年11月16日号より

【私の論評】インバウンド消費等元々微々たるもの、個人消費に勝るものはない(゚д゚)!

さて、国内景気に関しては、もう一つ不安要因もあります。11月20日に発表された10月分の訪日外客数は前年同月比-5.5%と、8月分と同様に昨年の実績を下回りました。

訪日客によるインバウンド消費金額は2018年に4.5兆円と、2012年(約1兆円)から3.5兆円増えました。個人消費全体が約300兆円ですから、その1%相当を超える消費需要が過去6年で現れました。

インバウンド消費の拡大に加えて、訪日客到来によるビジネス機会の広がりが促した設備投資需要などの波及効果を含めると、インバウンド消費は2013年以降の日本経済の成長を支える牽引役となっていました。その牽引役が、足元で勢いを失っているといえます。

実際に、足元ではインバウンド需要の停滞により、旅行、化粧品関連などの企業で業績悪化が目立っています。個別企業、そして観光需要に依存している地方などには、無視できない悪影響がみられています。

ただ、韓国からの訪日客の大幅な減少だけで日本経済全体が失速する可能性は低いと、私は思います。日韓関係修復の時期は予想できませんが、訪日客全体に占めるシェアが最も大きい中国だけではなく、アジア以外からの訪日客数も順調に伸びています。足元で訪日客は一時的に減っていますが、年間ベースで減少に転じる可能性は低いとみています。

平成29年の日本人国内旅行消費額は、21兆1,130億円(前年比0.8%増)となり、うち宿泊旅行が16兆798億円(前年比0.3%増)、日帰り旅行が5兆332億円(前年比2.3%増)です。

日本人国内延べ旅行者数は、6億4,751万人(前年比1.0%増)となり、うち宿泊旅行が3億2,333万人(前年比0.7%減)、日帰り旅行が3億2,418万人(前年比2.8%増)です。



なぜか、インバウンドばかりに目がいきますが、やはり日本人の旅行者のほうが圧倒的に実数も、消費もはるかに大きいです。現状のインパウンドの4.5兆円と比較すると、20兆円規模です。



少子高齢化の影響もあってか、日本人の延べ旅行者数は、減る傾向にはありますが、消費額の推移をみると、だいたい20兆円台で推移しています。インバウンド消費(18年で4.5兆円)よりもはるかに大きいことがわかります。

インバウンド消費停滞の経済全体へ影響は限定的である一方、日本経済の成長をはっきり押し下げるのは消費増税による緊縮財政政策の悪影響です。当然日本人の国内旅行での消費も減ることになるでしょう。

インバウンド消費は、GDPの1%に過ぎないのですが、日本人による個人消費はGDPの60%を占めます。個人消費が冷え込めば、インバウンド消費がかなり増えたとしても、それは帳消しになります。

11月14日に判明した7~9月実質GDP(国内総生産)成長率は前期比年率+0.2%と、ほぼゼロ成長でした。個人消費は前期比+0.4%と消費増税前の駆け込み消費があったにも関わらず、低い伸びにとどまりました。

個人消費がやや伸びた一方で、在庫投資が成長押し下げ要因になっていましたが、これは駆け込み消費によって積み上がっていた在庫が大きく減少したことを示しています。このため、10~12月には個人消費が落ち込み、GDP成長率は大幅なマイナス成長になる可能性が高いとみられます。

なお、前述した訪日客の8月以降の急減は、GDP統計上では輸出にカウントされますが、輸出全体を前期比-0.3%ポイント押し下げ、7~9月の経済成長に関して若干足を引っ張った格好になります。

インバウンド消費という牽引役が勢いを失う中で、消費増税による悪影響によって2020年前半まで日本経済の停滞が鮮明になり、東京五輪の年となる2020年度のGDP成長率はほぼゼロまで減速する可能性が大きいです。ゼロどころか、マイナス成長になる可能性すらあります。

最近、一部の政治家から10兆円規模の補正予算を求める声があがっていますが、消費増税による緊縮財政を覆すような財政政策を、麻生財務大臣の発言からもうかがえるように、現在の安倍政権が行う可能性はかなり低いことでしょう。

このため、2020年にかけて日本国内には成長を押し上げる要因はほぼ見当たらず、停滞局面に入った日本経済の底入れは、米中を中心とした海外経済の減速に歯止めがかかるタイミングが決定的に影響するでしょう。10月以降勢い良く上昇してきた日本株の2020年にかけての先行きも、海外の経済・株式市場次第の状況が続くことになりそうです。

このような状況を麻生財務相はわかっていないようです。補正予算は真水10兆円で与党と財務省の間で攻防中です。この決着がつくのは、今の臨時国会か、年明けの通常国会冒頭かは今のところ不明です。

年明けになれば、通常国会の召集日が1月下旬から1月上中旬になります。現状の国債がマイナス金利なら真水10兆円なんてチマチマしたことをいわずに、国債を金利がゼロになるまで発行しつづければ、103兆円分は刷れるはずと高橋洋一氏が試算しています。

これは、以前の記事にも掲載したことなのですが、国債を擦りまくり100兆円基金を創設して、今後の有効需要確保するという手があり、実際それを実行すれば、たとえ増税したとしても、令和年間はデフレにならなくてもすむ可能性があるのですが、麻生財務大臣には、期待できそうもありません。

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2016年11月22日火曜日

日本の景気は良くなったのか 消費弱くデフレ突入の瀬戸際 財政と金融の再稼働が必要だ―【私の論評】何としてでも、個人消費を改善しなければ、景気は良くならない(゚д゚)!

日本の景気は良くなったのか 消費弱くデフレ突入の瀬戸際 財政と金融の再稼働が必要だ

グラフ、写真、図表はブログ管理人挿入 以下同じ

 今年7~9月期の国内総生産(GDP)1次速報値は、実質季節調整値で前期比0・54%増、年率換算で2・2%増となった。3四半期連続のプラスで、その水準もなかなかのものだ。ただし、その中身をみると喜べない。

 GDPを構成する主要項目別にみると、7~9月期の実質季節調整値で民間消費が前期比0・1%増、民間住宅が2・3%増、民間企業設備が0・03%増、政府最終消費が0・4%増、公的資本形成が0・7%減、輸出が2・0%増、輸入(控除)が0・6%減だった。

 住宅と輸出が伸びたのはよかったが、消費は微増、設備投資は横ばい、政府投資はマイナス、輸入もマイナスと今一歩だ。景気という観点では、消費と設備投資が伸びてこそ、ちゃんと成長しているといえるわけで、現状は不十分だ。

 2014年4月からの消費増税の影響はかなりなくなってきているが、消費の力強さがないために、景気回復はまだしっかりしていない。そうなってくると、設備投資にも慎重になるのはやむをえず、横ばいにとどまった。(注:太字としたのはブログ管理人)

 政府投資も16年度当初予算などを前倒し執行した4~6月期の反動が出て、マイナスになった。内需が弱い反映として輸入のマイナスもある。

 その中で、住宅は、住宅ローン金利の低下が購入を促した形だ。金融機関はマイナス金利に猛反対しているが、内需を増加させるということが示された。

 輸出が増えたのは、GDP統計で輸出に分類される訪日外国人(インバウンド)消費等に支えられたものだ。

 以上のように、個々の項目を見ると、日本の景気が良くなっていると胸を張るのは難しい。

 それにもまして、気になるのがGDPデフレーターの動きだ。GDPデフレーターとは名目GDPから実質GDPを算出するために用いられる物価指数だ。消費者物価と卸売物価を合わせたような性質で、その推移によってデフレ脱却しているかどうかの判断基準にもなる。


 四半期デフレーターの前年同期比をみると、1年前の15年7~9月期からの推移は、1・7%、1・5%、0・9%、0・7%と徐々に低下し、ついには今期は0・1%低下とマイナスになってしまった。

 国内需要デフレーターも1年前からマイナス圏に落ち込んでいる。この数字は1995年頃から、マイナスになっており、これがデフレ転落を示すともいわれていた。

 第2次安倍晋三政権誕生後の2013年当初から急速に上昇し、14年からはプラス圏内で推移していたが、今期は13年10~12月期以来、11期ぶりにマイナスになった。つまり、一時デフレから脱却したかに見えたが、再びデフレ突入の瀬戸際になっているのだ。

 原油価格の下落は言い訳にならない。原油価格下落によって輸入デフレーターが低下するため、逆にGDPデフレーターの上昇要因となるからだ。

 雇用は相変わらず好調だが、GDPについては、積極財政と金融緩和のミックスというアベノミクス再稼働が必要な状況である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】何としてでも、個人消費を改善しなければ、景気は良くならない(゚д゚)!

高橋洋一氏のブログ冒頭の記事において、やはり太字にした部分は、重要です。

 2014年4月からの消費増税の影響はかなりなくなってきているが、消費の力強さがないために、景気回復はまだしっかりしていない。そうなってくると、設備投資にも慎重になるのはやむをえず、横ばいにとどまった。

消費増税の悪影響を如実に示すグラフを以下に掲載します。

この統計は、総務省「家計調査」のなかの一つです。この統計は、全国約9000世帯を対象に、家計簿と同じように購入した品目、値段を詳細に記入させ、毎月集めて集計したものです。


増税から一年半以上たっても消費税引き上げ直後の“反動減”の時期に当たる4月95.5、5月92.5とほとんど変わらない数字です。特に2015年11月は91.8と増税後最悪を更新しました。

増税前後のグラフを見ていただければ、L字型となっていて、数値が底ばい状態であることが判ります。これは反動減などではなく、構造的な減少です。現時点でも、2015年の平均を100とした指数で90台の後半をさまよい続けています。データでみれば一向に個人の消費が上向く兆しはありません。

この構造的な個人消費の低下は、当然のことながら平成14年4月からの消費税増税によるのです。

平成14年3月までは、105円出して買えていたものが増税で108円出さなければ買えなくなりました。その一方で、多くの消費者の給料は消費税増税分をまかなえるほど上昇していません。それは以下のグラフをみてもわかります。


名目賃金は、2013年あたりで下げ止まり、若干上昇傾向です。実質賃金は、2015年あたりで下げ止まり16年からは上昇傾向にはあります。ただし、実質賃金は日銀の金融緩和政策によって、雇用状況が改善して、パート・アルバイトや正社員であっても、比較的賃金の低い若年層が多く雇用されると、一時的に下がります。このグラフだけ見ていていては、現実を認識できません。

そこで、例を挙げると、たとえば昨年2015年の春闘で、日産自動車は大手製造業最高の賃上げを記録しました。そのベースアップ(基本給の賃上げ分)を含む1人当たり平均賃金改定額は1万1千円、年収増加率は3・6%。しかしベースアップ分だけなら、月5千円で、2%を切ります。他にも物価上昇が起きている中で、これでは消費増税増加分すらまかなえません。日産という自動車大手最高の賃上げでもこういう状況でした。

日本中のサラリーマンの給料が実質的に目減りをしたのです。これが2014年4月から続く「消費不況」の大きな原因です。

さらに、あまりにも長く続いたデフレの悪影響で貯蓄率も減っています。以下にそのグラフを掲載します。


これだけ、貯蓄ゼロの世帯が増えると、元々消費を控えているのに、増税されれば、当然のことながら、これらの世帯の人たちは、将来不安で一層消費を控えるようになるでしょう。

上の高橋洋一氏の指摘と、このような統計資料を合わせて考えてみると、どう考えても財政政策として、増税をしたのは全くの間違いです。財政政策として実施するなら、まずは増税などせずに、給付金対策をするとか、あるいは減税などをすべきでした。

8%増税は全くの間違いで、これを放置しておけば、景気は良くなりません。日銀による金融緩和によって、雇用はかなり改善しましたが、これも今のままではいずれ悪くなる可能性もあります。

やはり、高橋洋一氏が上記で指摘したように、GDPについては、積極財政と金融緩和のミックスというアベノミクス再稼働が必要です。それも、貯蓄ゼロの世帯を減らすには、中途半端な政策では成就できないでしょう。

日本のGDPに占める個人消費の割合は、60%でありこれが最大です。これを上昇させないかぎり、GDPは上昇しません。政府、日銀とも、これを伸ばすための政策を実行すべきです。特に、積極財政の緊急度は高いです。何をさておいても、なるべくはやく、大型の積極財政策を打つべきです。

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2015年10月17日土曜日

【米韓首脳会談】韓国トホホ… TPP参加にオバマ大統領から言及なし 朴氏は「緊密協力」―【私の論評】中韓は、個人消費をないがしろにする愚かな経済劣等生、TPP加入は全く無理(゚д゚)!


16日、ホワイトハウスで記者会見する韓国の朴槿恵大統領(左)とオバマ米大統領

韓国の朴槿恵大統領は16日、オバマ米大統領との首脳会談後の記者会見で、交渉が大筋合意した環太平洋連携協定(TPP)への韓国の参加問題について「(米韓は)今後緊密に協力していくことにした」と述べた。ただ、オバマ氏は記者会見で韓国の参加問題には言及しなかった。

韓国では日本との輸出競争上の危機感から、5日の大筋合意直後から参加を急ぐべきだとの論調が目立ち、政府も積極姿勢を示してきた。一方で韓国メディアは、議会での批准手続きが残っていることを理由に、米国がすぐには韓国と本格的な論議に入れないとの姿勢を見せていると報じている。

朴氏は米韓が「既に高い水準の自由貿易協定(FTA)を締結している」と述べ、TPPでも米韓が「自然にパートナーになれる」と主張した。

【私の論評】中韓は、個人消費をないがしろにする愚かな経済劣等生、TPP加入は全く無理(゚д゚)!

米国は、韓国だけではなく、中国に関してもTPPに加入させるつもりは全くありません。それは、下の記事をご覧いただければ、お分かりいただけるものと思います。
中国のTPP参加「基準達成に長い道のり」「時期尚早」 フロマン米通商代表
内閣府でフロマン米通商代表部代表(左)を迎える甘利明内閣府特命担当大臣
 米通商代表部(USTR)のフロマン代表は15日の電話会見で、交渉が大筋合意に達した環太平洋連携協定(TPP)に中国が参加するのは時期尚早との認識を示した。「TPPが求める貿易や投資の高い自由化水準を中国が満たすには長い道のりが必要だ」と述べた。 
 フロマン氏は「TPP参加を望む国は、高い水準を受け入れることができると証明しなければならない」と強調。米中で交渉中の投資協定の成否が、中国のTPP参加資格の有無を測る「絶好の試金石になる」と述べた。米国は投資協定交渉で、TPPに匹敵する自由化を迫っているが、中国が難色を示し、協議は難航している。 
 フロマン氏は、TPPはオバマ政権が掲げる「アジア重視戦略」の要だと説明。「米議会のメンバーもTPPの重要性をよく分かっている」と述べ、協定発効に必要な議会の承認獲得に自信を示した。(共同)
米国は、なぜ中韓をTPPに入れなかったのか、そうして時期尚早としたのでしょうか。それに対するはっきりとした声明などありませんが、私のわかる範囲で分析してみます。

おそらく、以下の二点において、アメリカは中韓はふさわしくないと考えているのだと思います。

中国はなぜ加入できないのか

まずは、中国の個人消費がGDPに占める割合は、35%に過ぎないということです。これは異常に低いです。日本などの先進国では60%前後というのが普通です。アメリカは、70%台です。個人消費が低いということは、本来の意味ではそれだけ経済があまり発展していないことを意味します。

中国のGDPのほとんどは、インフラ投資によるものであり、個人消費は、2000年くらいまでは、もともと低いものの40%くらいはあったのが、GDPが伸びても消費は伸びなかったので、35%程度にまで落ちています。

中国では大規模インフラ投資案件がなくなれば、GDPもかなり小さくなるということです。実際、昨年あたりから不動産バブルが崩壊し、実体経済がかなり悪くなっています。政府は、7%成長を新常態として、これを守るといっていますが、中国の経済統計はそもそもデタラメなので、イギリスのある調査会社では、マイナス成長だったのではという推計をだしているくらいです。

中国は、個人消費をなおざりにして、インフラ投資ばかり繰り返し、それがおしまいになると、経済は悪化するばかりです。

韓国も中国ほど低くはないですが、これもかなり低いです。50%台です。これは、ロシアと同程度です。

この程度では、あまりに他国と水準が異なり過ぎます。これでは、TPP加入はかなり無理であるといわざるをえません。

韓国はなぜTPPに加入できないのか

さらに、輸出がGDPに占める割合を平成14年度の数字でみてみると、韓国は43.87%、中国は韓国ほどではないですが、22.28%です。興味のあるかたは、世界の輸出依存国別ランキングをご覧になってください。

これに比較すると、米国は9.32%です。日本は、15.24%です。日本より、輸出の低い国は米国くらいなものです。

個人消費が少ない、輸出が多いということは何を示すかといえば、経済の脆弱であるということです。個人消費が少なければ、実体経済もかなり問題があることは容易におわかりになると思います。

輸出に関しては、何やら輸出が多ければ良いことのようにとらえている人もいますが、実体はそうではありません。GDPに占める輸出の割合が多いということは、外国の情勢に大きく左右されるということです。個人消費が多くて、内需が大きいということは、外国経済に左右されにくいということです。

まさに、韓国は輸出にあまりにも大きく頼りすぎていて、外国で何かあれば、途端にとんでもないことになります。実際、日本が2013年から金融緩和に踏み切ったところ、それまで、ウォン安、円高だったのですが、今や逆転してしまい、韓国の経済はすっかりおかしくなってしまいました。

韓国といえば、とにかくグローバル化戦略などとして、輸出を振興してきましたが、内需を高める努力は怠りました。それがアダとなって、今では経済が悪化しています。

結局中韓は個人消費をないがしろにしている

韓国も、個人消費はなおざりにして、インフラ整備やグローバル化ばかり繰り返し、外国の影響をもろにかぶる体質になってしまい、今や元は本来高くしなければならないのですが、それをしないため中国はインフレ、韓国はウォン高で苦しんでいます。

TPP 加盟国のうち、経済があまり良くない国もありますが、経済の規模にもよりますが、いずれにしても中韓のようにこれだけ、個人消費を犠牲にして偏った経済の国はありません。

そんなことから、中韓のTPP加入はまだまだ時期尚早です。

中韓の経済を良くする処方箋はあるのだが・・・・・

中韓の経済をまともにする処方箋は決まりきっています。両国とも、中間層をもっと増やしそれらが、社会・経済活動を活発にできるようにすれば良いのです。

中国であれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めれば、中間層が増えて、社会経済活動も活発化します。今までが、今までだったので、少しでもこの方向に進めば、実体経済は必ず良くなります。

韓国の場合は、民主化、政治と経済の分離、法治国家化に関しては、中国よりは進んでいますが、それでも先進国から比較すれば、遅れているので、それを推進すべきです。それとともに、グローバル化の推進一辺倒から、内需を拡大する方向に舵を切り直すべきです。

サムスンなどのグローバル企業ばかり育成しようとしても、結局は脆弱な経済になるだけです。まずは、内需を拡大させるべきです。そのための方策はいくらでもあるはずです。

しかし、両国の首脳も、政府もこのようなことは、わかりきったことなのに、この方向に向かっての動きはまったくしようとしません。習近平は、反日とインフラ投資、朴槿恵は反日とグローバル化とりわけ、中国接近を馬鹿の一つ覚えのように繰り返すばかりです。愚かとしか言いようがありません。

であれば、中韓がTPPに参加すれば、とにかく韓国は、自国民を犠牲にしても、安い製品で他国から儲けることばかり考え、中国は外国へのインフラ投資をすることで儲けようとし、それを繰り返し、結局中韓もダメになり、他の国も悪影響を及ぼしてしまいます。

結局、両国ともその方向性は異なりますが、結局のところ個人消費をなおざりにしています。両国とも、一般国民の社会・経済活動はなおざりにして、経済がひどく偏り、今や破綻の一歩手前です。であれば、米国が中国や韓国をTPPに受け入れないのは当然のことです。

中韓をみていれば、内需をなおざりにする国は、一時経済が良くなったようにみえても、いずれ萎んでしまいます。

米国のように、個人消費を煽りに煽って、サブプライム・ローン問題のような過ちを犯すこともありますが、それにしても、こういう過ちさえ防ぐことができれば、強力な経済を維持することができます。

日本も、過去の酷いデフレなどもありますから、偉そうなこともいえないですが、それでも個人消費はGDPの60%前後をずっと維持してきていますから、中韓とは根本的に経済の構造が異なります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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【関連書籍】

中韓のTPP加入などあり得ません。それどころか、中韓の経済はもう瀬戸際です。崩壊するのは予定帳場となりました。もう、秒読み段階です。今後、日本が気をつけなければならないのは、経済だけではなく、中韓からの偽装難民です。以下に、それらを納得していただける書籍を掲載しました。

韓国経済阿鼻叫喚~2016年の衝撃~
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2014年8月14日木曜日

大型増税で個人消費は落ち込む――総需要安定化政策を徹底すべき 村上尚己 / エコノミスト―【私の論評】2012年の再来を目指し、年末には10%増税の見送りと、積極財政をぶち上げるのがベストか?

大型増税で個人消費は落ち込む――総需要安定化政策を徹底すべき 村上尚己 / エコノミスト

4月以降、大手メディアを中心に消費増税後の日本経済の落ち込みは想定内であると度々伝えられてきた。ただ、「想定内」という判断は、事前の想定がどの程度なのか、それを語る人による主観的な認識にすぎず、景気動向を客観的に判断する上でほとんど役には立たない。

また、百貨店などの販売落ち込みが和らいでいることを材料に、大手メディアは、消費増税の悪影響は軽微で、日本経済が早期に回復に転じていると伝えた。確かに一部の百貨店や専門店の販売復調が大々的に取り上げられたが、個々の百貨店や専門店の販売から把握できるのは広範囲な消費活動の一部にしか過ぎない。こうしたメディアの報道は、消費増税後の日本経済の状況をミスリーディングに伝えていた。

日本経済回復のドライバーを抑えこんだ大型増税

日本経済は2014年1-3月に、増税前の駆け込み需要で年率7%近い高成長となった。しかし、4-6月にはその反動減から、1-3月の高成長分がほぼそのまま失われ、年率-7%前後の大幅なマイナス成長となったとみられる[*1]。

[*1] なお、8月13日には、内閣府が4-6月の実質GDP成長率を発表する。実際には現段階の限られたマクロ統計で、経済全体の動向は実は正確に把握できない大きな問題がある。このため、本稿で論じる4-6月GDP成長率の落ち込みは、実態をやや過小推計している可能性があるがこの点について本論説では論じない。足元のGDP統計の過小推計の問題を考慮しても、本稿の主張の骨子は変わらないと考えている。

3月と、4月の売上推移を見ると、消費税増税による駆け込み需要は明らか
グラフはブログ管理人が挿入
特に、駆け込み需要が顕著だった個人消費は「1-3月に増えた以上」に、4-6月に落ち込んだとみられる。駆け込み需要からの反動減だけなら、個人消費は1-3月に増えた分以上は減らないはずだ。このことは、「駆け込み需要の反動減」以外の要因で、足元で個人消費が抑えられていることを意味する。個人消費を抑制しているのは、3%ポイントの消費税率引き上げによって実質可処分所得(消費に使える収入)が大きく目減りしたためとみてよいだろう。

グラフはブログ管理人が挿入


現在、脱デフレ過程で起きる、労働市場の需給改善で名目賃金がようやく上がり始めたばかりの段階にもかかわらず、早すぎる大型増税が実現してしまったために、2013年度の日本経済回復のドライバーだった個人消費を抑え込んでいるということだ。

日本経済最大のリスク

なお、インフレ率上昇自体は、個人消費を底上げする効果がある。経済学の用語を使うと、実質金利低下で支出性向を高めるというメカニズムが働くからである。期待インフレ率上昇によるこの現象を、我々の身近な消費行動に当てはめていえば、欲しいモノの値段が1か月後に高くなると人々が予想すれば、購入を先送りするよりも即時購入した方がよいと選択する場面が多くなる、ということである。

日本では過去20年も、長らく繰り返されてきた金融政策の失政によってデフレが解消されないという異常な経済状況が恒常化した。こうした中で、人々はいずれ価格が今後下がり続けるかもしれないと予想し、消費を先送りするインセンティブが常に働いた。日本銀行の金融政策の判断ミスにより、実質金利が高すぎる状況が続き、総需要が抑制され続けていたわけである。

しかし2013年のアベノミクス発動で政策転換が起こり、日本銀行が米FRBなどと同様の「標準的な金融緩和政策」を実行するに至り、ようやくデフレが終わるのではないかと多くの日本人が認識し始めた。そして株高・超円高修正がもたらす金融資産拡大による資産効果が重なり、2013年度に個人消費は2%以上伸びた。個人消費の牽引で日本は潜在成長率を上回る経済成長を実現した。

なお、金融緩和政策の効果に懐疑的な見方も多く、アベノミクスによる景気回復は第二の矢(つまり公共投資拡大)によって実現しただけ、などの声も多い。ただ、2013年度の実質GDP成長率は2.3%で、公共投資が直接寄与した分は0.6%ポイントである。公共投資で説明できるのは2013年度の経済成長の4分の1に過ぎない。

しかも、2013年末まで、建設セクターで働く就業者はほとんど増えていない。人手不足のこの業界では、公共投資をいくら増やしてもそれで所得が増える人は限られる。それにもかかわらず、2013年度に個人消費は回復した。

以上のような客観的なデータを踏まえずに、アベノミクスがもたらした日本銀行の金融緩和政策に対して、根拠が乏しい批判的な意見は多い。安倍政権が続く限りは大丈夫だろうが、データを踏まえない非科学的な思想が再び広がってしまった上でマクロ経済安定化政策が運営されることが、日本経済の最大のリスクとなろう。

上の記事は、若干要約してあります。詳細はこちらから。

【私の論評】2012年の再来を目指し、年末には10%増税の見送りと、積極財政をぶち上げるのがベストか?

さて、直近の経済の状況は、まさに上の記事の通りです。上の記事に特に付け加えるべきこともありません。

私は、もっと大括りな観点から、最近の経済の動きについて掲載したいと思います。

今から思い返してみると、2012年の末には、安倍政権がスタートしましたが、それ以前より安倍総理の経済対策に対して市場は好感して、株価があがり続けていました。安倍政権誕生後も上がり続けました。

奇蹟の第二次安倍内閣誕生

それ以前は、長きにわたり、日銀は金融引き締め政策、政府は緊縮財政ということで、日本はデフレ・スパイラルの泥沼に落ち込んでいました。

昨年の4月より、日銀の黒田体制ができあがり、異次元の包括的金融緩和を実施し、株価もあがり、雇用状況もどんどん改善していきました。

日銀は、金融緩和をしつつ、政府は特に積極財政ではありませんでしたが、特に緊縮ということもなく、経済は少しずつ好転していきました。この状況をそのまま維持していれば、日本は2年後から、遅くても4年後くらいには、デフレから脱却できたものと思います。

異次元の包括的金融緩和を発表する黒田氏

この状況がわずか1年しか続かなかったということが、本当に残念なことです。

しかしながら4月からの増税ということで、まだデフレから脱却していないにもかかわらず、政府は緊縮財政の手段でもある増税をしてしまいました。

これにより、日本は今まで経験のない、金融引締めを実施しつつ、緊縮財政をするという状況になりました。

本来ならば、金融引締めを実行し、政府は積極財政をすべきでした。

そうして、4月-6月期は、予想(3月までの駆け込み需要)を下回る景気の悪化ということになったということです。

今後どうなるかといえば、私自身は政府やマスコミなどがいうように、今回4-6月期の景気の悪化は「想定内」のものではないと思います。

7-9月期は、景気は良くなるはずという予測がなされているようですが、そうではないと思います。

そうなると、本来は今のうちから、所得税減税や給付金政策などの対策をするつもりで、計画を立案し速やか実行しなければ、7-9月期には景気がかなり落ち込むことになります。

年末には、これをもとに来年度の消費税増税10%を実施するかどうかを判断することになると思います。

そうなると、今のままでは、7-9月期はかなり景気が落ち込む可能性が大です。そうなると、来年の増税を見送りやすい状況になります。

そこで、10月あたりに、消費税増税見送りを決定し、今度は来年度に向けての所得税減税、給付金政策などの構想を安倍総理がぶちあげます。

そうなると、どうなるでしょう。

2012年の年末の再来です。この直前まで、日銀は金融引締め、政府は緊縮財政を実行していました。そこにきて、安倍総裁が、金融緩和と積極財政というアベノミクス構想をぶちあげだだけで、株価は上昇基調になりました。

2013年の10月に消費税増税の見送り、積極財政をすることを安部総理がぶちあげたとすると、市場はそれを好感して、株価も上昇し、その他の景気指標も良くなることも十分考えられます。

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そうして、2015年4月から、積極財政に転ずれば、今度も2011年の暮れから13年にかけてと同程度に、すさまじい勢いで景気が回復し、そこから2年くらいで、日本はデフレから脱却できます。

ただし、積極財政の手法としては、残念ながら、大規模な公共工事は、現状では、公共工事の供給制約があるため、すぐに経済対策として効果のでるものではありません。そのため、所得税減税、給付金政策を実施すれば、間違いなく景気は回復します。

実際に2013年のように景気が浮揚すれば、安倍政権が長期政権になる可能性も高まります。

安倍政権や、いわゆるリフレ派の人びとも、もうすでにこの路線で動こうとしているのかもしれません。

本来は、いますぐにでも、積極財政をすべきなのですが、政府内の増税派や、財務省は、増税を積極的に進めてきたため、いまさら景気が悪化するから、増税して景気が悪くなったから、景気対策をすべきなどといえば、自分たちが馬鹿だったことを認めることになるのて、それはできません。

とすれば、年末にかけて景気は落ち込んでいきます。そうして、安部首相は、10-12月期のいずれかに、増税見直し、積極財政をすることをぶちあげて、それを来年実行すれば、2013年のように景気は良くなります。

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デフレから脱却すると水着もハイレグになるか?


そうして、これを数年続ければ、日本はデフレから完璧に脱却することができ、安倍長期政権が誕生することになります。

これがベストの道だと思います。上の記事で、リフレ派の村上氏は、"日本経済最大のリスク"などと言っておきながら、「日本の景気を良くするため、デフレからはやく脱却するため、すぐにも所得税減税、大規模な給付金政策をおこなうべき」などとぶちあげてはいません。

経済のみを考えると、そうすべきなのですが、政局を考えるとそうともいかないので、リスクは訴えながらも、すぐに対策をしろなどとは言わないのかもしれません。

もう経済問題は、経済理論ではありません。それは、もうかなりにわたって論議され、新たなことは何もでてきません。倉山満氏も以下のようにツイートしています。
経済論議は、とっくに終わっています。現在は、すでに政局の問題です。いまさら複雑な話をしようという輩は、政局を自分に有利にもっていきたいというだけのことと見るべきです。

デフレの人口減少論、日本と日本人駄目論、日本はもう成長しない論、里山経済論、道徳論、金融緩和無効論、グローバリズム経済論、陰謀論などやこれ以外の複雑なこと言い出す輩がこれからも出で来ると思いますが、それらは単なる政局を有利にもっていくか、小銭稼ぎのための詭弁にすぎないということです。

いずれにしても、デフレから脱却するための、まともな金融緩和、積極財政が日本でもできるようにして、実際に経済を良くし、できれば安倍長期安定経験を築くべきです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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