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2019年6月1日土曜日

【日本の解き方】著名エコノミストが主張する日本の「基礎的財政赤字拡大論」 財政より経済を優先すべきだ ―【私の論評】増税で自ら手足を縛り荒波に飛び込もうとする現世代に、令和年間を担う将来世代を巻き込むのだけは避けよ(゚д゚)!


オリビエ・ブランシャール氏

 元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのオリビエ・ブランシャール氏が、日本の財政政策について、プライマリーバランス(基礎的財政収支)赤字を拡大すべきだというツイートを日本語で行ったことが話題になっている。

 ブランシャール氏と田代毅氏の連名によるペーパーも日本語で読める。筆者は田代氏と面識はないが、経済産業省の官僚という経歴のようだ。

 そのペーパーでは、「現在の日本の環境では、プライマリーバランス赤字を継続し、おそらくはプライマリーバランス赤字を拡大し、国債の増加を受け入れることが求められています。プライマリーバランス赤字は、需要と産出を支え、金融政策への負担を和らげ、将来の経済成長を促進するものです。要するに、プライマリーバランス赤字によるコストは小さく、高水準の国債によるリスクは低いのです」との結論が書かれている。

 そこでは、中央銀行を含めた「統合政府」による分析がなされており、「総債務ではなく純債務が正しい概念です(少なくとも良い概念です)」との前提なので、財政省がしばしば行っている総債務について狭義の政府の分析から導き出す結論より筆者にとっては信頼できる。

 その内容も、筆者がかねてより主張している財政政策と金融政策の一体運用に基づいて、まだ財政政策の余地があるというもので、おおよその方向性について異論はない。

 インフレ目標に達していないという現実については、金融政策でまだ余地があるとともに、財政政策でも余地がある。というのは、インフレ目標は、新たな財政規律としての意味があるからだ。

 統合政府では、政府が発行した国債を中央銀行が購入するのは、統合政府の負債として国債とマネタリーベース(中央銀行が供給するお金)の交換でしかない。ここで、マネタリーベースは基本的には無利息無償還である。この場合、国債発行がやりすぎかどうかはインフレ率に出てくる。インフレ目標が財政規律になりうるのだ。

 日本では、こうした政府と中央銀行の連携を、「財政ファイナンス」として、禁じ手だと断定するが、あまりに不勉強だ。インフレ目標の範囲であれば、実体経済に弊害はなく、否定する理由もない。現状の日本経済を考えると、プライマリーバランス赤字を過度に恐れる必要はなく、それによる成長の成果を目指したほうが、結果として、経済やその一部である財政にとっても好影響になると思う。

 こうしてみると、財務省を中心にマスコミや一般国民に垂れ流された考え方は、「財政再建至上主義」ともいえることがわかる。財政が経済を動かすという世界観で、プライマリーバランスの均衡化が最優先になる。

 一方、ブランシャール氏らの議論は、財政は経済の一部であり、マクロ経済学の基本に基づいて経済運営すれば、財政はおのずと後からついてくるという経済主義だ。このため、日本経済にとっては一時的なプライマリーバランス赤字は問題ではなく、経済再建のほうが優先される。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】増税で自ら手足を縛り荒波に飛び込もうとする現世代に、令和年間を担う将来世代を巻き込むのだけは避けよ(゚д゚)!

オリヴィエ・ブランシャール氏 についてWikipediaでは「現在はIMFとのチーフエコノミストとして活躍している」とありますが、 2015年10月に退任しているようです。ブランシャール氏については、池田信夫氏が「超低金利では政府債務のコストは小さい」と主張していると紹介しており、あの池田氏も同様の主張を最近はしています。そのブランシャール氏の主張を、IMFが批判しています。
IMFはブランシャールの財政赤字提言を「危険なステップ」と批判。「低金利がいつまでも続く保証はない」。IMF warns nations to limit public debt | Financial Times http://ow.ly/6HNd30oueUM 


記事では、ポルトガルの経済学者でIMF財政局代表のVítor Gaspar氏が「財政赤字の拡大に警告(IMF warns nations to limit public debt)」しています。

要するに、低金利がいつまで続くか分からない。金融危機を起こす要因は複数あり、そのときに備えて「今は財政赤字は拡大すべきではない」ということのようです。そのときとは、リーマンショックのような世界的な金融危機のことを想定しているのだと思います。

記事中にもあるように、IMFは伝統的に正統派の財政政策を支持してきており、それを踏襲した発言のようです。世界経済の権威であるブランシャール氏や、最近話題になっている「財政赤字の提言」には反対の立場をIMFとしては取らざるを得ないのでしょう。

ところでブランシャール氏は、2016年時点では日本の財政へ警笛を鳴らしていました。



【新着記事】小黒 一正: オリヴィエ・ブランシャール教授の日本財政への警鐘 http://agora-web.jp/archives/2019301.html 

しかしながら、ブランシャール氏は今や立場をかえました。これに関しては、以下の2つの記事を読むとよくわかります。

長期停滞の時代には財政赤字が必要だ(池田氏ブログより)
マクロ経済政策再考(田中秀臣氏ブログより)

ブランシャール氏は「日本は今後もプライマリー赤字を続けることが望ましい」といいます。したがって今の日本で消費税を増税することは望ましくないということになります。

経済に関しては、大雑把に緊縮派、反緊縮派と別れていますが、 ブランシャール氏やリフレ派の主張するところの「金利/インフレ率が過度に上昇しなければ、財政赤字は問題ない」というコンセンサスはとれていると思います。

そうなった場合の問題は、本当に低金利、低インフレ率が今後も続くかどうかに絞られます。個人的には、先進国では史上最低水準の金利、インフレ率のときに暴騰するリスクを叫ぶのはいかがなのかと思います。それより、「人々がどうすればより豊かなで幸せな人生を送れるのか」に集中すべきときなのではないでしょうか。

ブランシャール氏の主張する、財政より経済を優先すべきとは、現実の世界では、財政が赤字になることをおそれるがため、緊縮財政や金融引き締めなどをしないで、まずは積極財政や金融緩和をして、経済を良くすべきだということです。

その結果経済が良くなれば、税収が増えて、財政赤字も自ずと解消されるということです。しかし、平成年間の日本はその逆ばかりやってきました。特に財政では、消費増税と復興税など緊縮財政ばかりやってきました。

一昨日は、国債の金利が極端にあがったりしない限り、財政破綻などすることはないことを日本国を4人の家族にたとえて解説しました。政府の信用がなくなれば、国債の金利が極端にあがって、財政破綻する可能性もでてきます。

では、実際の国債の長期金利はどのような推移をしているのか以下にグラフを掲載します。


このような状況では、どう考えてみても財政破綻などありえないです。ただし、「日本の国債発行残高はGDPの200%を超えており、破綻の危機にある」と危機を煽る人々も多いです。昨日の記事をご覧いたたげれば、そのようなことはないことがご理解いただけるものと思います。

しかし、現実に市場は10年先の国債を金利がほぼつかない状態でも買いたがっています。どうして破綻が危惧されているはずの国債が買われるのかを、メディアが報じないのかが大きな問題だと思います。

バブル崩壊後、日銀の金融緩和のあるなしに関わらず、金利は右肩下がりに低下してきました。その理由は簡単で、民間に資金需要がないため、銀行は国債でしか有り余る銀行預金を運用できないからです。いくら政府債務が膨らもうとも、株や外貨、外国の国債より日本の国債の方が相対的に安全性が高いと市場はみているのです。

昨年の最後の取引となった28日の東京債券市場で、長期金利の指標である10年物国債の流通利回りがマイナス0.010%に低下(債券価格は上昇)しました。これは、2017年9月8日以来、約1年3カ月ぶりの低い水準でした。

この長期国債のマイナス金利も、日本の株価が大幅に下がったことも影響しています。株価が下がれば、株式市場から逃げるお金がどこか別の投資先を求めることになります。高い利率が魅力の新興国に向かうお金もあるし、リスクを避け絶対に破綻などあり得ない米国国債や日本国債も買われます。

米中貿易戦争による景気減速が株下落の主因のように報じられていましたが、米国債の利上げも株から国債へお金を流入させる要因になっていました。それは、米国の株価と国債金利の動きをみれば明らかです。


国債金利の推移をみるだけで、「日本は財政危機にある」との認識がどれほど間違っているのかが理解できるはずです。それなのに、SNSでは「日本は終わった」と思っている人の多さに驚きます。有効な手段があるにも関わらず、その手段の有効性を多くの人が理解していないため、政策に結びつかないという馬鹿馬鹿しい状況にあるのが日本の今です。

国民の意見など関係ない一党独裁の中国は、景気の減速に伴い「財政出動」と「減税」という有効で当たり前の手段をとろうとしています。彼らは、日本のバブル崩壊後の失敗から十分学んでいるのです。

ただし、現在の中国はこのブログにも以前掲載したように、国際金融のトリレンマにはまってしまっているため、金融緩和はやりたくてもできない状況にあります。もし、金融緩和ができるなら、彼らは躊躇することなく実行するでしょう。

本当は日本も、彼らのように、デフレを完全脱却するためには、できることはなんでもやるという姿勢でなければならないのです。そうして、現在の日本にはできることはいくらでもあるのに、それをやろうとしていないという奇妙な状況にあるのです。

消費増税により自ら手足を縛り荒波に飛び込もうとしている日本の現世代に、令和年間を担う将来世代を巻き込むのだけは絶対避けなければなりません。

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財政破綻論が、降水確率0%で「外出を控えろ」と言う理由―【私の論評】確率論でなくても、日本国を家族にたとえれば、財政破綻するはずがないことがわかるが・・・(゚д゚)!



2018年2月22日木曜日

国会公聴会で話した「アベノミクス擁護」の理由―【私の論評】雇用の主務官庁は厚生労働省だと思い込む人には、雇用も財政も理解不能(゚д゚)!

国会公聴会で話した「アベノミクス擁護」の理由

高橋洋一

 2月21日に衆議院予算委員会公聴会に公述人として呼ばれた。公聴会というのは、予算案採決を前に、各党がそれぞれ推薦する有識者が意見を述べ、参考にするのだが、筆者は自民党推薦の公述人だった。

 話したのは、予算案作成のバックボーンとなっている財政金融政策などについてだ。

マクロ政策の中心は雇用確保安倍政権が支持される理由だ

 今回の30年度予算案に関連して、主に話したのは次のことだ。
第一に、政府のマクロ経済政策は雇用確保を中心とすべきこと、
第二に、財政事情は統合政府(政府と中央銀行を会計的に一体と見て考える)で見るべきこと
第三に、規制改革をもっと徹底すべきこと
 この3つだ。

  まず確認されるべきなのは、政府のマクロ経済政策の中心は雇用の確保ということだ。

 政府はすべての人に職があることを目指すべきだ。職があれば、社会の安定にもつながる。

 職があることは、就業者数で見てもいいし、失業率でもいい。

 例えば、失業率が低くなれば、自殺率は顕著に下がるし、犯罪率も下がる。社会問題のいくつかは、失業率を低下させることで、ある程度解決する。

 さらに、若者にとって職があることは重要だ。例えば、大学の新卒者の就職率は1年前の失業率に連動する。

 一流大学の就職率は常にいいが、筆者が教える大学では雇用事情の影響をもろに受ける。5、6年前には就職率は良くなかったが、今では全員が就職できるまで上昇している。

 この5年間、学生の学力が目立って上昇したわけではない。ただ、アベノミクスに異次元金融緩和があっただけだ。

 学生は就職が自分たちの“実力”のせいでないことをリアルに感じている。就職は学生の一大関心事なので、だから安倍政権の人気が高いのだ。

 マクロ経済政策が雇用政策であることは、欧米では常識だ。

 そして、このことは「左派政党」がいち早く主張した。ところが、日本では、保守の安倍政権が初めて主張して、結果を出している。一部の野党が、いまの金融緩和策を否定しているのは、世界から見れば雇用の確保を無視しているわけで、海外では理解不可能なのではないか。

 マクロ政策で雇用確保に熱心でない一部の野党が、労働法制の議論で細かい話をしているのは、かなり奇異に見える。

 雇用と物価、マクロ政策の関係を示すフィリップス曲線というのがある。

 図表1の横軸はインフレ率、縦軸は失業率を示し、インフレ率と失業率は逆相関の関係であることがわかる。



 これをフィリップス関係という。一般的な経済学の教科書では、横軸が失業率、縦軸がインフレ率なので、縦と横が逆になっているが、内容は同じだ。

 インフレ率がマイナスの時には、失業率が高く、インフレ率が高くなるにつれて失業率が下がる。しかし、失業率はある率から下がりにくくなる。

 この失業率の下限を「NAIRU(インフレを加速しない失業率)」という。実際の値を推計するのは簡単な作業ではないが、私は「2%台半ば」と推計している。

 経済学は精密科学でないので、小数点以下に大きな意味はないが、あえてイメージをハッキリさせるために、図では2.5%と書いた。これは、2.7%かもしれないし2.3%かもしれない。2.5%程度と言うと、2.5が一人歩きするので、「2%台半ば」と言っている。

「インフレ目標」というのは、このNAIRUを実現する最小のインフレ率で、これが現状は、2%程度だ。目標なので2%と言ってもいい。

 こうしたフレームワークは、先進国では共通だ。


インフレ目標は「2%」には根拠がある


 先日のダボス会議(「世界経済フォーラム」)の黒田日銀総裁が出席したセッションで、こんなやり取りがあった。

 ダボス会議は、経済の専門家らも討議を聞いいる。フロアから、「インフレ目標は2%がいいのか」という質問があった。

 これに対して、黒田総裁は、

 <インフレ目標の物価統計には上方バイアスがあるので、若干のプラスが必要なこと、ある程度プラスでないと政策の対応余地が少なくなること、先進国間の為替の変動を防ぐことなどの理由で、先進国で2%インフレ目標が確立されてきた。>

 と答えた。

 国会答弁ならこれでいいのだが、ダボス会議ではこれでは通用しない。会場には妙な空気が流れた。

 「正解」は、

<インフレ目標は、フィリップス曲線上でNAIRUを達成するための、最低のインフレ率である。日本では、NAIRUは2.5%程度なので、インフレ目標は2%。これ以下だと、NAIRUが達成できずに失業が発生する。これ以上だと、無駄なインフレ率で社会的コストが発生する。>

 だ。日本でも国会は、日銀総裁らに「日本のNAIRUはどの程度なのか」と質問したらいいだろう。これが答えられないようでは、中央銀行マンとして失格ということだ。

 図表1で示したことは、先進国で共通だ。

 アメリカでは、NAIRUは4%程度、インフレ目標は2%だ。

 現在、アメリカの失業率は4.1%、インフレ率は2.1%なので、ほぼ最適点。その上で、トランプ政権は大減税しようとしている。それは経済を右に動かす、つまりインフレ率を高めるから、FRBが金融引き締めするのは理にかなっているのだ。

 日本では2016年9月に、量的緩和から長期金利の誘導目標を「0%程度」とする、「イールドカーブコントロール(長短金利操作)」という金利管理に移行した(図表2)。


 量と金利の関係は、コインの裏表の関係なので、上手くやればスムーズに移行するはずだった。しかし、実際には、10年金利は実勢のマイナス0.2%から0%へと引き上げられた。これは、ちょっとした逆噴射になった。この政策のこれからに注目したいと思っている。


適切なGDPギャップは「プラス2%」まだ需要追加策が必要

 話は戻るが、インフレ率と失業率がどう動くかは、実は、GDPギャップの数字がポイントだ(図表3、図表4参照)。


 ここでのGDPギャップは、内閣府が計算した数字を出している。具体的な算出は、現実のGDPと、完全雇用で供給能力がフルに使われた場合の潜在GDPの差額を潜在GDPで割ることによって求められる。

 (現実のGDP-潜在GDP)/潜在GDP

 政策効果としては、積極的な財政政策をすると、公的部門の有効需要が高まるので、GDPギャップは増える。また、金融緩和すると、実質金利が下がり、設備投資などの民間部門の有効需要が高まり、やはりGDPギャップは増える。

 すると、半年くらいのラグがあって、インフレ率は高まり、失業率は低下する。

「2%のインフレ率、2.5%の失業率」を達成するためには、どうすればいいのかというと、GDPギャップをプラス2%程度にすれば達成できる。

 今のGDPギャップは0.7%なので、あと1.3%程度、需要を増やす必要がある。

 現在の日本経済は、GDPギャップはプラスになったので、もういいと言う人もいるが、それでは、インフレ目標2%と、NAIRU2.5%は達成できない。

 なお、その状態になると、賃金は顕著に上がり始める。人手不足になるので、企業でも賃金を上げざるを得なくなる。

 有効需要を作るには、財政政策だけが手段ではない。金融政策もその手段となり得る。

 なので、政府と日銀は、インフレ目標、その裏にあるNAIRU2.5%を共有する必要がある。

 その結果、マクロ経済の良好なパフォーマンスは、経済の一部門である財政にも好影響を及ぼすのだ。


「統合政府」論で考えれば財政再建はできている


 財政の健全化度合いを示すフローのプライマリー収支(基礎的財政収支)は、前年の名目GDP成長率と高い相関がある(図表5)。これは日本に限らず先進国で見られる現象だ。

 であれば、財政健全化を進めるには名目成長率を高くすればいいとなる。

 しばしば、日本は財政状況が悪いという声を聞くが、筆者にはかなり疑問だ。

 経済学では、政府と中央銀行を会計的に合算した「統合政府」という考え方がある。もちろん、行動として中央銀行は、政策手段の独立性があるが、あくまで法的には政府の「子会社」なので、会計的には「連結」するというわけだ。


 この場合、財政の健全化を考える着目点は、統合政府BS(バランスシート)のネット債務ということになる。図6は、財務省ホームページにある連結政府BSに日銀BSを合算し、「統合政府BS」として、私が作成したものだ(図表6)。

 統合政府BSの資産は1350兆円。統合政府BSの負債は、国債1350兆円、日銀発行の銀行券450兆円になる。

 ここで、銀行券は、統合政府にとって利子を支払う必要もないし、償還負担なしなので、実質的に債務でないと考えていい。

 また国債1350兆円に見合う形で、資産には、政府の資産と日銀保有国債がある。

 これらが意味しているのは、統合政府BSのネット債務はほぼゼロという状況だ。

 このBSを見て、財政危機だと言う人はいないと思う。

 もっとも、資産で売れないものがあるなどという批判があり得る。しかし、資産の大半は金融資産だ。天下りに関係するが、役人の天下り先の特殊法人などへの出資金、貸付金が極めて多いのだ。

 売れないというのは、天下り先の政府子会社を処分しては困るという、官僚の泣き言でもある。もし、政府が本当に大変になれば、関係子会社を売却、民営化する。このことは、民間会社でも同じだ。

 例えば、財政危機に陥ったギリシャでは政府資産の売却が大々的に行われた。道路などの資産は売れないというが、それは少額であり、数字的に大きなモノは、天下り先への資金提供資産だ。

 海外から見れば、日本政府はたっぷりと金融資産を持っているのに売却しないのだから、財政破綻のはずはないと喝破されている。

 もちろん、海外の投資家は、政府の債務1000兆円だけで判断しない。バランスシートの右側だけの議論はしない。あくまで、バランスシートの左右を見ての判断だ。

 この「統合政府」の考え方からすれば、アベノミクスによる量的緩和で、財政再建がほぼできてしまったといえる。

 かつて、私のプリンストン大での先生である前FRB議長のバーナンキが言うっていた。

「量的緩和すれば、デフレから脱却できるだろう。そうでなくても、財政再建はできる」

 まさにそのとおりになった。

 実際に、財政再建ができたということを、統合政府BSに即して、具体的に示そう。

 資産が900兆円あるが、これは既に述べたように大半は金融資産である。その利回りなどの収益は、ほぼ国債金利と同じ水準であり、これが統合政府には税外収入になる。

 また、日銀保有国債450兆円は、統合政府にとっては財政負担はない。この分は、日銀に対して国が利払いをするが、日銀納付金として、統合政府には税外収入で返ってくるからちゃらだ。

 つまり、負債の1350兆円の利払い負担は、資産側の税外収入で賄われる。この意味で、財政再建がほぼできたといってもいい。

 フローの毎年度の予算では、それほど税外収入はない。これは、政府子会社や特別会計で、資産化して税外収入を減らすという会計操作をしているからだろう。かつて、私は「埋蔵金」として、そうした資産化したものを吐き出させた経験がある。

 この問題は、本来なら経済財政諮問会議などにおいて政府内できちんと議論すべきだと思っている。

日本の財政緊縮度先進国に比べて高くはない





 いずれにしても、ネットで債務を見れば、日本の財政はそれほど悪くない。ちなみに、ネット債務額の対GDP比を日米で計算してみよう(図表7は中央銀行を含まないベース、図表8は中央銀行を含む統合政府ベース)。これを見れば、日本の財政状況はアメリカより悪くないことがわかる。

 また図表9は、先進各国での財政政策の「緊縮度」を見ようとしたものだ。

 各国でのマクロ経済でGDPギャップがあるときに、財政政策でどこまでそれを解消しようとしているかがわかる。 

 例えば、GDPギャップがマイナス3%のとき、プライマリー収支をマイナス4%にすれば、つまり財政赤字を出して需要を増やせば、GDPギャップとプライマリー収支の差額を算出して、▲3-(▲4)=1となる。この数字が大きいほど、経済状況に応じて財政緊縮度は少ないと判断していい。

 それで見ると、日本は他の先進国に比べて、緊縮度が高いというわけではない。

 ただし、2014年の消費増税以降は、やや緊縮的な財政運営になっているようだ。

最後に、規制改革を述べたい。

 昨年は、加計学園問題が国会で取り上げられたが、はっきりいって時間の無駄だった。

 そもそも、大学の設置申請すらさせないという文科省告示はいかがなものか。認可制度があるのだから、申請は自由なはずで、ダメなら認可で落とせばいい。その申請をさせるというのが、特区の成果だと聞くと、正直あきれ果てる。

 たとえていえば、自動車の運転免許は別に受けてもらうが、自動車学校への入校を特区で認めるといわれるようなものだ。

 だがこうした中身のない規制改革でも、加計学園問題のように社会問題になると、規制改革自体の推進力が衰える。

 しかも、認可申請をさせないという文科省告示は依然として有効であり、それを使って、都心の大学設置も規制するという。驚きを通り越してしまう。

 政府は規制改革のネジを巻き直してもらいたい。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)

【私の論評】雇用の主務官庁は厚生労働省だと思い込む人には、雇用も財政も理解不能(゚д゚)!

下に、2月21日の衆議院予算委員会公聴会で高橋洋一氏が公述したときの動画を掲載します。


この動画の内容といい、ブログ冒頭の記事といい、高橋洋一氏のこれらの発言や、記事に私のようなものが付け加えたり、批判するなどのことは全くありません

さすがに、元大蔵官僚であり、その後さまざまな機会に、具体的なエビデンスを元に政治家にアドバイスしたり、書籍を書いたり、様々なソースに対して記事を書いたりしてきた人だけに、簡潔に誰にでも理解しやすく、現状の政府がマクロ政策を実施すべきときの留意点など、まとめています。

これ以上理解しやすくまとめたものは、他にはないかもしれません。すべての政治家は高橋洋一氏の話に虚心坦懐に耳を傾けるべきです。特に財政政策と、金融政策については、これを本当に理解すべきです。

そうすれば、現在の政府の金融・財政の課題などすぐに理解できるはずです。これは、与党は国民から支持を受ける上で、理解していなければならない基本的な事項です。

野党からすれば、国民から支持を受けるため、与党の力の及ばないところをみつけ、まともな政策論争をしていく上で必要不可欠な事項です。

しかし、現実にはこれを理解したり、理解しようとする政治家は少ないです。現状では、野党ではほとんど皆無であり、与党でも安倍首相とその側近やブレーンなど限られた人しかいません。

なぜそのようなことになってしまうのでしょうか。

私は、まずはブログ冒頭の高橋洋一氏の記事の中の図表1の内容が理解されていないことに原因があると思います。


これを理解していれば、日本のマクロ経済を考えるときに、さほど大きな間違いをおかしたりすることはありません。

そうして、この図を理解する前提として、特に雇用に関して、大雑把にいうと長期的には金融政策が、短期的には財政政策が大きくかかわってくることを理解していなければならないと思います。これが理解されていなければ、ブログ冒頭の記事のように、高橋洋一氏がエビデンスをもとに、わかりやすい説明をしても、右の耳から入って、左の耳から抜けていくだけになります。

さらにもっと話を単純化にすると、雇用に責任のある官庁はどこなのかといことを理解しているかいなかというところまで遡ると思います。

日本で、雇用関係統計数値の主務官庁というと、厚生労働省ということになると思います。主務官庁とは、ある行政事務を主管する行政官庁のことです。失業率など雇用に関する統計事務の主務官庁は確かに厚生労働省です。

では、雇用そのものの主務官庁は、どこなのでしょうか。多くの人は、雇用の統計数値の主務官庁が厚生労働省なので、雇用の主務官庁も厚生労働省だとみなしているのではないでしょうか。

これは、大きな間違いです。雇用そのものの主務官庁は日本銀行です。厚生労働省は、企業の労務管理などの主務官庁です。

実際、厚生労働省は雇用そのもの、特に雇用自体を生み出すことに関してはほとんど何もできません。

そもそも、厚生労働省とは、社会福祉、社会保障および公衆衛生、また労働に関する行政を主務する国の行政機関です。そうして、労働に関する行政とは、労務管理に関する行政と言い換えても良いと思います。

労務管理などの標準的テキストには、確かに雇用という項目もありますが、それは企業などが人を採用するときに関わるものであって、雇用そのものを増やしたり、減らしたりなどということは関係ありません。

昔、確か年末になると派遣村が日本のあちこちにできていたような時期に、ハローワークで働いていたある女性がサイトに「自分の上司である、課長が"私は正直、雇用というものがどういうものなのか良くわからないんだ"と語っていたのでショックを受けた」ということがサイトに掲載されて、話題になったことがあります。

私自身は、この課長さんの語ったことは、正しいと思います。無論、この課長さんは、雇用事務とか雇用や労務にかかわる法規のことなどはそれなりに知っていたと思います。しかし、当時の雇用情勢が非常に悪かった時期に、雇用を増やすために具体的に何をやるべきなのか、わからないという意味で、「雇用というものがどういうものかわからない」と語ったのだと思います。そうして、それは正しいです。

確かにハローワーク自体そうして、それを主管する厚生労働省は、雇用にはかかわっていますが、それは雇用事務、雇用のミスマッチングの是正、失業率等の労務関係の統計の計算事務などに関わっているだけの話であって、雇用を増やすことには関わりがないです。

厚生労働省は雇用そのもの主務官庁ではない
雇用を増やすことに直接関わっているのは、日本であれば日本銀行です。簡単に言ってしまえば、金融緩和をすれば、雇用が増え失業率が下がります。実際、インフレ率を数%高めば、日本や米国などでは、他には何をせずとも、一夜にして数百万の雇用が生まれことが経験的に確かめらている事実です。

金融政策を実施できない、厚生労働省は雇用そのものの主務官庁でないことは明らかです。

特に、中央銀行は、「雇用の最大化」つまりは事実上の完全雇用を達成することに責務をもつものといって良いでしょう。これについては、欧米のように法制化されているところもありますし、いまの日本でも議論され始めている点でもあります。

残念ながら日本では法制化はされていないが、日銀は「雇用の最大化」を責務とする官庁である
日本では、経済といえば、雇用が最も重要であるという観念が少ないようであることと、さらに雇用とくにその時々の経済状況における「雇用の最大化」に責任があるという、観念も希薄なのだと思います。

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は「マクロ政策で雇用確保に熱心でない一部の野党が、労働法制の議論で細かい話をしているのは、かなり奇異に見える」と掲載していますが、彼らはそもそも「日銀が雇用そのものの主務官庁」であるという意識が全くないのでしょう。

そうして、雇用の主務官庁は厚生労働省であると考えているからこそ、労働法規の議論で細かい話をしているというか、せざるを得ないのでしょう。

まずは、雇用そのものの、主務官庁は日銀であるという認識がなければ、上で高橋洋一述べていたようなことは、何一つ理解できず、馬の耳に念仏ということになると思います。

もし、このような認識があれば、雇用における問題も正しく認識できるはです。たとえば、アベノミクスで当初実質賃金が下がったことなど、日銀が金融緩和をしたために、雇用が増えたことが原因であることがすぐに理解できるはずです。

要するに、雇用が増えるときには、最初は企業がパート・アルバイトのような人をまず積極的に採用するため全体を平均すると賃金が低くなるのは、当然といえば当然です。そうして、雇用を増やせば、当初は企業は教育・訓練をしなければならいので、労働生産性も落ちます。

しかし、さらに日銀が金融緩和をして、企業の雇用が増えれば、やがて賃金をあげなければ、人を採用できなくなるし、採用してから時間がたてば、労働生産性も上がることになります。企業としては、人手不足になっている昨今将来のことを考えれば、一時労働生産性が下がっても、人を採用するのは当然のことです。

このあたりのことは、図表1の内容がしっかりと頭に入っていなければ、ほとんど理解できませんが、入っていればすぐに理解できます。

さらに、このくらいのことがわからない人は、雇用におよばず、日本政府の財政をみるときに、まずはBSで見るべきこと、それと企業ではすでに法制化されてるように、親会社と子会社の連結でみなければならないのと同じように、政府と日銀をあわれせた統合政府ベースでみるべきことも気づかないのだと思います。

雇用の主務官庁は、厚生労働省ではないことは当たり前といえば、当たり前なのですが、この当たり前のことを理解していない人がここ日本ではあまりにも多すぎるように感じます。

これは、ある意味目印にもなると思います。雇用のことを話している人で、雇用の主務官庁が厚生労働省と思い込んでいる人とは、まともに雇用の話などできません。そのような人は、雇用のことなど全くわかってないとみなすべきです。何かもっともらしいことを言っていても本当はわかっていません。

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2017年7月23日日曜日

「空母大国」に突き進む中国に待ち受ける「財政の大惨事」 米専門家指摘に反論「偉業を快く思っていない」―【私の論評】日本は既に戦闘力では米空母と同等ものを建造できる(゚д゚)!

「空母大国」に突き進む中国に待ち受ける「財政の大惨事」 米専門家指摘に反論「偉業を快く思っていない」

大連港で進水した中国初の国産空母(今年4月26日撮影)
【国際情勢分析】

 4月26日、中国初の国産空母が遼寧省大連の建造ドックから進水し、軍当局は「わが国の空母建造は重大な段階的成果を得た」(国防省報道官)と自賛した。上海では2隻目の国産空母が建造中で、原子力空母の建造も視野に入れるなど中国は「空母大国」に向け突き進んでいる。一方で巨費を投じる空母の建造が中国の財政を圧迫するとの指摘も米国の専門家から出ている。

将来、中国の空母戦力が「財政的な大惨事」を招く-。米ニュースサイト「ワシントン・フリービーコン」は新空母の進水にあたり、米軍事専門家の分析を紹介した。

「計画が見直されない限り、中国の空母は大きな財政的難題となるだろう。空母への資源の投入は米国においても巨大な財政負担となっている」

こうした専門家の見方の背景にあるのが、中国における空母建造の進め方だ。新空母は中国初の空母「遼寧」の前身である旧ソ連の未完成空母「ワリヤーグ」を元に設計、改良したもの。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、艦載機の殲(J)15の収用数は遼寧の18~24機から8機程度増える見通しだ。一方、スキージャンプ方式の甲板によって艦載機自らの推力で発艦する方式を踏襲しており、艦載機の搭載燃料や武器重量が制限される課題は残されたままだ。

上海で建造中の空母は、まったく別タイプの設計とみられている。現在の米原子力空母に設置されている、高圧蒸気で艦載機を発進させる装置「カタパルト」(射出機)を備えていると同サイトは予測。さらに次世代の空母は、リニアモーターによる電磁式カタパルトが設置され、原子力による動力システムが導入されると分析する。

ただ日本の軍事アナリストによれば、中国は現在、蒸気カタパルトよりも高度な技術が必要な電磁式カタパルトを優先的に開発しているもようだ。通常動力型の空母に蒸気カタパルトを搭載すれば、船の動力の相当部分をカタパルトが消費してしまうためだ。

いずれにしろ、大連と上海の空母は設計思想が根本的に異なっており、それぞれを運用させた上で設計を統一するとみられている。

こうした中国のやり方に対して、米国の空母設計の専門家は同サイトにこう指摘している。「甚だしく設計が異なるタイプの艦隊を運用するのは、効果的な空母戦力を形成する方法ではない。いずれ後方支援上の悪夢であることが明らかになるだろう」

また別の米研究者は「海軍の艦船の維持には巨額のコストがかかる。それ(空母の建造)は絶え間なく拡大を続ける資源の消耗であり、手遅れになるまで中国側は気づかないだろう」と警告した。

ロシアメディアは2013年、中国初の国産空母の建造費用が約30億ドル(約3300億円)に上るとの建造関係者の話を報じている。空母打撃群としての運用・維持には、さらに数千人の空母乗組員や数十の艦載機、さらには一体運用する駆逐艦や潜水艦などが必要となり、莫大(ばくだい)な費用がかかることは間違いない。

「空母に投じられた資金は、ただの浪費ではなく投資だ」

中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語版)は、ワシントン・フリービーコンへの反論を掲載した。中国人専門家は「国産空母には8000もの革新的技術が使用されている」として、空母の建造が電子設備や動力、鋼材などの製造分野での技術向上につながったと主張した。

また別の専門家は、今後数年間で中国が空母を複数建造した場合、投資額は計1300億元(約2兆800億円)に上り、中国の経済成長を刺激すると指摘。ハイテク分野での雇用創出や、コンピューター・通信産業などの発展をもたらし、国内総生産(GDP)への直接的な貢献額は数千億元に上ると楽観的な見方を示した。

米国は現在10隻の空母を保有しており、さらに2隻を建造中だ。中国はそこまで多くの空母を建造するつもりはないとして、中国の専門家は同サイトの「財政危機説」を否定する。「そうした考え方は完全に間違っている。米国の専門家が中国をよく理解していないか、われわれの偉業を快く思っていないかだ」(中国総局 西見由章)

【私の論評】日本は既に戦闘力では米空母と同等ものを建造できる(゚д゚)!

中国初の国産空母とされる、最新鋭のものとあまり変わりがないともいわれている空母「遼寧」のボロ船ぶりについては、このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下掲載します。
【中国空母、太平洋進出】遼寧は台湾南部を抜け南シナ海へ―【私の論評】ボロ船「遼寧」で中国の国内向けイッツ・ショータイムが始まる(゚д゚)!
中国の空母は、日米や台湾にとつても全く脅威でも何でもありません。結論から言ってしまうと、西側の空母は「実用品」ですが、中国の空母は見世物にすぎないからです。 
昔日本のある軍人が「空母の性能は艦載機で決まる」と言ったそうですが、現代でもこの言葉は当てはまります。 
高性能な艦載機を安定して運用できる空母が高性能なので、空母自体は極論すれば、飛行機の入れ物に過ぎないのです。 
アメリカの空母は地上基地と同じような性能の大型戦闘機を80機以上も搭載可能で、カタパルト(射出装置)によって数十秒ごとに離陸させることができます。平常時は航空機55機程度とヘリコプター15機程度を運用しています。
米空母「ニミッツ」
離陸の際には蒸気式カタパルト4基が1分ごとに艦載機を射出するので最大15秒で一機ずつ離陸できます。この蒸気式カタパルト4基を稼動させるのに原子力機関の電力が必要で、通常エンジンで運用するのは困難とされています。 
アメリカが空母に原子力機関を用いる一番の理由がこの電力確保ではないかとも言われています。良く言われる「地球を何周も出来る航続距離」についてはアメリカ軍自身が、あまり実用的な意味は無いと認めています。 
船の燃料だけ無限でも、航空機燃料や乗組員の食料や飲料が先に尽きてしまうからです。収容の際も数十秒間隔で着艦し、2機同時に昇降できる大型エレベーター3基で艦内に格納することができます。 
艦載機は同じ時代の地上用戦闘機と比較しても、遜色の無い性能が確保されている。現在のFA-18はF-15と同等とされていますし、今までの艦載機もずっとそうでした。今後もF-35ステルス機を海軍と空軍で運用する事が予定されています。 
アメリカの空母はまさに空母の理想形といえ、一隻の空母を50年間運用するのに1兆円以上掛けているとされます。他国の空母はアメリカよりぐっと下がり「とりあえず飛ばせる」のを目的にしている事が多いです。 
実戦で役に立ちそうなのはフランスとイギリスの空母くらいで、他は地上の基地から飛び立つ敵機と交戦するのは厳しいです。欧米先進国はハリアーや将来はF-35のような優れた艦載機を運用できるのですが、他の国は「とりあえず飛べる」程度のものしか確保できないからです。

燃料も装備を全部外さないと「遼寧」を離陸できないJ-15
では中国の空母および艦載機はどうなのでしょうか?中国の空母「遼寧」は旧ソ連空母の「ヴァリャーグ」がウクライナの造船所で未完成のまま野ざらしになっていたのを買い取りました。エンジンが無かったので中国製のエンジンを搭載し、搭載装備も間に合わせの中国製や輸入品でできています。 
特徴は速力が遅いこと、カタパルトが無いこと、スキージャンプ方式であることです。滑走路の先端にスキージャンプを取り付けるのはイギリス空母で始まり、垂直離着陸機のハリアーを少ない燃料で離陸させる事ができました。 
このように西側先進国の空母では垂直離着陸機(VTOL機)でスキージャンプを使用しています。本来ジャンプ台を使わなくても離陸できるのです。 
対してソ連やロシアの空母では、元々空母から離陸する能力が無い戦闘機を、ジャンプ台を用いて離陸させています。空母からは飛べない戦闘機を無理やり飛ばしているので、空母のミサイルや爆弾の搭載量は非常に少なく、航続距離も短いのです燃料を多く積むと兵器を減らす必要があるのです。 
ソ連とロシアの艦載機SU-33は、地上運用型のSU-27の改造機に過ぎません。中国が「遼寧」で運用しているJ-15(殲-15)もソ連のSU-27を中国が勝手にコピーして艦載機にしたもので、ロシア側はSU-33の模造品だと言っています。 
J-15はSU-33よりも電子装備などが新しいものの、基本性能はSU-33より劣っています。以前アメリカの軍事メディアが「J-15は2トンしか武器を積載できない」との解説をしていたことがありますしかも実際の運用時には翼の下に増加タンクも装備するので、1トン以下かゼロという可能性すらあります。
「遼寧」を発艦するJ-15
元になったソ連の空母とSU-33は現在もロシアが運用しているのですが「飛行しているのを何度が確認された」という程度で、あまり活動はしていないようです。 SU-33の生産奇数はたった24機で、J-15は11機に過ぎません。これでは、通常では試作機の数程度に過ぎません。 
中国の空母はロシアと同じく、保有しているのを見せびらかす以上の機能を持っていないと考えられています。 
今後新型のJ-31が実戦配備されても空母「遼寧」の戦力はあまり変わらないでしょう。中国は「遼寧」に変わるような10万トン級の大型空母を多数建造するという計画を発表しています。 
しかし、技術的、予算的な裏づけがないのに、大風呂敷を広げるのは中国の伝統芸能ですす。本当に建造したとしたら、やはり専門家の笑いの種になるのでしょう。
下の動画は、蒸気カタパルトで巨大な戦闘機を一気に加速させ、空に放つ米空母の飛行甲板で働く様子を、とある作業員の装着したGoProカメラの視点から眺められる動画です。


船の上の作業は戦闘中に電源を失ってもできるよう、基本的には人力で行われます。こうした発艦作業もオートメーション化はされていません。事故を防止するためにいろいろな人がいろいろな工夫や手順を踏んでいる様子がなかなかおもしろい動画です。

そうして注目転点は、空母「遼寧」の搭載している殲(J)15はミサイルも燃料タンクも搭載していませんが、米国の航空機はミサイルと燃料タンクも搭載していることがはっきりわかります。

米国の空母の専門家は、この有様をみて、「中国が何のためにこのような空母を運用するのか、その理由がわからない」と語ったと言われています。私にも全くわかりません。

中国初の国産空母も、スキージャンプ方式なので、実質は遼寧とあまり変わりないでしょう。ただし、電子機器や兵装が近代化された程度のものでしょう。

それと、次世代の空母は、リニアモーターによる電磁式カタパルトが設置され、原子力による動力システムが導入されると予測しているようですが、中国のリニアモーターの技術もかなり拙いものです。

2027年、東京~名古屋間に世界で初めて超電導技術を採用したリニア中央新幹線が開通します。品川駅から名古屋駅までを最速40分、さらに2045年には大阪までを67分で結ぶ計画です。

「でも、リニアモーターカーって上海にもなかった?」という人もいるかもしれないですが、上海のリニアと日本のリニアとでは技術レベルの次元に雲泥の差があります。そうして、この技術は空母で戦闘機を発艦することに転用できます。

技術的には拙い上海のリニアモーターカー
リニアモーターカーとは、車両側に取り付けた電磁石と地上側の電磁石の、磁界(N極・S極)の反発する力と引っ張る力を利用して進むものをいいます。なかでも日本のリニア中央新幹線の特徴は、超電導技術を導入している点です。

ある種の金属・合金・酸化物を一定温度以下に冷やすと、電気抵抗がゼロになる「超電導現象」が生まれます。超電導状態になったコイルに一度電流を流せば、電流は永遠に流れ続け、強力なパワーをもつ超電導磁石となります。この「超電導現象」を生み出すのが技術的に極めて難しいのです。

日本のリニアは超電導材料としてニオブチタン合金を使用し、液体ヘリウムでマイナス269度まで冷却することで超電導状態を作り出しています。

日本のリニアは“超電導”技術を使い、10センチも浮上して走行します。一方、上海のリニアはドイツが開発したトランスラピッドリニアという方式を採用していますが、これは超電導ではなく“常電導”磁気浮上と呼ばれるものです。超電導に比べて圧倒的に磁場が弱く、浮上する高さは1センチメートル程度しかありません。もしも地震などで軌道が歪めば、すぐに車両と軌道が接触する危険があります。

最高速度も日本のリニアが最高時速581キロなのに対し、上海リニアは430キロが限度です。さらに加減速の性能にも大きな差があります。

上海リニアの常電導では最高時速430キロに到達するのに13.3キロメートルの距離を要していますが、日本の超電導リニアが最高速度581キロを出すまでに必要な距離はわずか8.8キロメートル。時速500キロになら、上海リニアの半分の距離で達することができます。

上海リニアは2002年、中国・上海の浦東空港と郊外の地下鉄駅の間、約30キロの区間を8分弱で結んで話題になりましたが、実際に乗った人は、「加速に時間がかかり、最高速度に到達するとすぐに減速を始めてしまった」と話しています。

技術レベルで見れば、超電導と上海の常電導は“機械とオモチャ”ほどの違いがあることは間違いありません。

中国は、日本の大型ヘリコプター搭載護衛艦の存在をかなり恐れているようですが、それも理解できるような気がします。

海上自衛隊最大の護衛艦「かが」が3月22日、横浜市のジャパンマリンユナイテッド磯子工場で就役しました。

護衛艦「かが」
「かが」は全長248メートル(遼寧は304メートル)で艦首から艦尾までが空母のように平らな「全通甲板」を持つヘリコプター搭載護衛艦です。哨戒ヘリは5機が同時に離着艦でき、対潜水艦戦に従事して強引な海洋進出を続ける中国を牽制します。

輸送ヘリや攻撃ヘリ、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイなども搭載でき、南西諸島をはじめとした離島防衛や災害派遣などでの活躍も期待されています。

この「かが」は見た目は、ほとんど空母です。そうして、甲板をある程度加工すれば、垂直離着陸機(VTOL機)でもあるF35Aを搭載すれば、実質的に空母として運用できます。

航空自衛隊のF35A
それに、日本がリニアモーターカーの技術を、空母のカタパルトに転用することは可能です、そうすると、原子力ではない通常のエネルギーで動く空母でも、原子力空母と同等の攻撃力を持った空母も建造可能です。

中国にはまだない技術を日本は、はるかに先んじて持っているわけで、日本にとってはすでにまともな空母を建造するのは可能なのです。

それにしても、中国は工作技術や、先端技術でかなり劣っていますから、「遼寧」を改装したり、国産空母を建造するのでさえ、莫大な費用がかかります。どの程度かかるのかは、わかりませんが、日本が「かが」や「ひゅうが」を建造したり、リニアモーターによる電磁式カタパルトを備えた本格的空母を建造するよりもはるかに費用がかかるのは間違いないです。

これから、中国が空母大国になりたいと望むなら、莫大な経費を必要として、末期のソ連のようになる可能性は高いです。旧ソ連は、軍事力で米国に追いつき追い越そうとしたため、かなりの軍事費をついやさなければならなくなり、それがソ連崩壊の原因の一つにもなった面は否めません。

日本も、これから空母を建造すべきだと思います。日本が空母を5隻くらいも持つようになれば、アジアの軍事バランスも相当変わると思います。それに、日米に追いつけ、追い越せと中国が空母建造に血道をあげれば、中国が弱体化します。どんどんやってほしいです。

リニアモーターカーによる電磁カタパルトを備えた本格的空母を二隻建造し、あとはヘリコプター護衛艦の甲板を改装して、F35Aを搭載するようにすれば、日本としては無理なくできる範囲だと思います。それと、当然のことながら、オスプレイも搭載すべきです。

日本のリニアモーター技術と省エネ技術をもってすれば、後続距離では米国の原子力空母には到底及ばないものの、戦闘力では同等のものを十分に建造できます。ただし、ブログ冒頭の記事にもあるように、「地球を何周も出来る航続距離」についてはアメリカ軍自身が、あまり実用的な意味は無いと認めています。

船の燃料だけ無限でも、航空機燃料や乗組員の食料や飲料が先に尽きてしまうからです。

日本は、米空母の航空燃料や乗組員の飲食料の搭載分の範囲の航続距離を有し、エネルギーを節約し、米原子力空母と同等の航空機発艦・着艦回数と同等の能力を持つ安全な空母を建造する事が可能です。

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2017年6月16日金曜日

骨太方針から消えた「消費税」 財政再建は事実上終わっている、英政権は「緊縮病」で失敗―【私の論評】度々財政を間違える英国だが、日本はいつも間違えてばかりだった(゚д゚)!

骨太方針から消えた「消費税」 財政再建は事実上終わっている、英政権は「緊縮病」で失敗

「骨太の方針」の表紙

 政府が閣議決定した「骨太方針」から消費税の引き上げに関する言及が消えたと報じられている。

 昨年の「骨太2016」では、「『成長と分配の好循環』の実現に向け、引き続き、『経済再生なくして財政健全化なし』を基本とし、消費税率の10%への引き上げを2019年(平成31年)10月まで2年半延期するとともに、2020年度(平成32年度)の基礎的財政収支黒字化という財政健全化目標を堅持する」との記述があった。

 今回の「骨太2017」では、「『経済再生なくして財政健全化なし』との基本方針の下、引き続き、600兆円経済の実現と2020年度(平成32年度)の財政健全化目標の達成の双方の実現を目指す」とされ、消費税増税については書かれていない。

 もっとも、消費増税については、法律で予定されているものなので、政府としてその方針には変更はない。つまり、骨太方針に書かれていないといっても、新たな法律を制定しない限り、19年10月の10%への消費増税が実行されることになる。

 ただし、財政再建至上主義者にとっては、先日の本コラムで書いたように、財政目標でプライマリーバランス(基礎的財政収支)の重要性が当面なくなったことで、財政健全化の動きが大幅に後退すると心配しているかもしれない。

 ちなみに、「財政健全化」という言葉は、「骨太2016」では12回使われていたが、「骨太2017」では6回に減っている。これも彼らの懸念に拍車をかけていることだろう。

 実際のところは、債務残高対GDP(国内総生産)比とプライマリーバランスの間には密接な関係があり、債務残高比対GDP比を発散させないような経済運営が本来であるので、財政再建至上主義者の懸念は的外れである。

 これまで何度も書いてきたように、財政状況は、連結ベースの統合政府バランスシート(貸借対照表)でみるべきである。であれば、理論的には財政再建目標は、債務から資産を差し引いた「ネット債務残高対GDP」を低位に保つことが重要となる。

 現状において、ネット債務残高対GDPはほぼゼロであるので、そもそも財政を気にする必要がないというのが、理論的な帰結である。

 このような状況を安倍晋三首相はよく把握しているのだろう。ノーベル経済賞学者のジョセフ・スティグリッツ氏やクリストファー・シムズ氏を呼んで講演してもらっているのも、そうした意見を補強するという意味でうなずける。

 安倍首相はさらに、憲法改正で教育無償化を打ち出した。これに必要な財源はざっと見ても4兆~5兆円である。教育投資国債を抜きにして賄うことはまずできない。

 ネット債務残高対GDPはほぼゼロという事実からみれば、消費増税は必要なく、また投資のための国債を発行しても、財政状況を悪化させる要因にならない。

 財政再建至上主義者はこれらに反対だろうが、理論的根拠は乏しく、「緊縮病」を患っているようにみえる。英総選挙で、緊縮財政を指向したメイ政権は過半数を取れなかった。緊縮財政は政治的にも経済的にも失敗することを示した。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】度々財政を間違える英国だが、日本はいつも間違えてばかりだった(゚д゚)!

骨太の方針については、以下のリンクからご覧いただけます。


骨太の方針は、本来は「背骨(バックボーン)の方針」とするべきでしょう。背骨から生える各あばら骨という「政策」は、全てバックボーンの影響を受けます。

バックボーンの方針で「プライマリーバランス黒字化」が決定された場合、予算措置を伴う全ての政策が、「新たな支出をするならば、他の予算を削るか、もしくは増税する」という、狂った方針に従わざるをえないことになりかねません。

問題の「財政健全化目標」については、以下の通りとなっています。

『経済財政運営と改革の基本方針2017(略)基礎的財政収支(PB)を2020 年度(平成32 年度)までに黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。このため、「経済再生なくして財政健全化なし」との方針の下、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革という「3つの改革」を確実に進めていく必要がある。(後略)』

結局、2020年までのPB黒字化という狂った目標は、骨太の方針に残ってしまいました。何とか「債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す」を盛り込むことはできましたが、「基礎的財政収支(PB)を2020 年度(平成32 年度)までに黒字化」を削除することはできませんでした。大変、残念です。

PB目標が残ったことで、2017年の日本の再デフレ化の懸念を考えざるを得ない状況になってしまいました。

すでにして、GDPデフレータが対前期比▲0.5%と、デフレ化の方向に突き進んでいるにも関わらず、デフレギャップを埋める財政拡大は難しいでしょう。何しろ、PB目標がある限り、

「財政を追加的に拡大するならば、他の予算を削るか、増税」
 
という話になってしまいます。

ちなみに、経済がデフレ化すると、名目GDPが伸びにくくなります。実際、2017年1-3月期の名目GDPは、対前期比▲0.3%でした。

名目GDPの停滞は、既に2016年から始まっています。GDPデフレータも、2016年からマイナスが始まりました。

つまりは、日本経済は2016年から「再デフレ化」した可能性が濃厚なのです。まだ、推移をみてから判断する必要はありますが、それにしても、厳密にはデフレではなかったとしても、デフレすれすれという現実は変えようがありません。

経済がデフレ化し、名目GDPが伸びなくなると、税収が減ります。理由は、我々は所得から税金を支払っており、所得の合計がGDPになるためです。

そんなことは、あるはずがない! などと思う方々に、残念なお知らせがあります。
国の税収、プラス成長でも7年ぶり減 16年度   
国の2016年度の税収が7年ぶりに減収に転じ、政府の見積もりも2年連続で割り込む見通しだ。所得税収は7年ぶりの前年割れで、法人税収も伸び悩んだ。税収は今年1月時点で55.8兆円と見込んだが、さらに数千億円減るもよう。プラス成長でも税収が減った形で、安倍政権が経済運営の基本に掲げる「成長による税収増」の土台が揺らいでいる。(後略)
これは、現在の「プラス成長(=実質GDPの成長)」は、名目GDPが伸び悩む中、GDPデフレータというインフレ率がマイナスに落ち込んでいる結果を計算しているに過ぎないわけですから、こうなるのが当然のことです。

このような税収の減少は、財政再建至上主義者らの「このままでは財政破綻する! 早期のPB黒字化を!」という声を大きくします。

結果、我が国はデフレ脱却に必要な財政出動ができず、デフレが深刻化し、名目GDPが伸び悩み、税収が減るという悪循環に突っ込む可能性も高くなります。これは、結局のところ昨日のこのブログにも掲載したように、やはり8%増税の悪影響です。以下のグラフを見てもわかるように、消費性向が16年から急激に落ち込んでいます。


一方『骨太の方針』からは、消費税増税という文字は完璧に消えました。これは、安倍総理の増税はしないとの決意の表れともとれます。

これは、ブログ冒頭の記事にある高橋洋一氏が主張する統合政府ベースではすでに、政府の借金はないということからも、明らかです。借金をする必要のない政府が、増税をする必要性など全くありません。

上の記事でも、「英総選挙で、緊縮財政を指向したメイ政権は過半数を取れなかった。緊縮財政は政治的にも経済的にも失敗することを示した」とありますが、全くそのとおりです。

緊縮財政で足をすくわれた英国メイ首相
イギリスは良く財政政策を間違います。このブログでもかなり前に、増税の失敗を掲載したことがあります。これは、日本の8%増税の前に実施されたものですが、これは惨憺た大失敗でした。特に、若者雇用がかなり酷く悪化しました。その失敗を補うために、イングランド銀行(イギリスの中央銀行、日本の日銀にあたる)は大規模な金融緩和に踏み切りました。それでも回復までには、かなりの年月を要しました。それについてはこの記事の最後のほうの【関連記事】のところに掲載しますので、是非ご覧になって下さい。

さて、メイ首相は、前のキャメロン政権で治安対策の責任者である内相を務めました。当時の保守党は緊縮財政を進めるため、警察官を2万人削減。このことで、メイ首相を批判する声が出ています。労働党のコービン党首らは、メイ首相に辞任を求めています。

これに対し、メイ首相は6日の演説の中で、「選挙の数日前には、新たな政策を数多く発表するつもりはないが」と前置きした上で、「テロ行為で有罪判決を受けた人々の刑期を長くするべきだ」「当局が外国人のテロ容疑者を、自国に送り返すことをより容易にすべきだ」と述べ、移民の権利を手厚く保護する「人権法」を改正することで、さらなる対テロ対策を実施する方針を示しました。

 英タイムズ紙は13日、関係筋の話として、有権者による緊縮財政への忍耐が限界に達していることをメイ首相が認めたと報じました。

記事によるとジョンソン外相、デービス欧州連合(EU)離脱担当相や他の与党保守党議員らは、首相に対し、緊縮財政に対する国民のムードを首相は読み違えたと述べたといいます。

首相は前週の総選挙で単独過半数を取れず、北アイルランドのプロテスタント系民主統一党(DUP)との連立協議を開始しました。

このように、緊縮をすれば、経済が落ち込み国民の反発は必至です。緊縮、それも日本経済がデフレに再突入したか、しないかの現在の状況で緊縮をすれば、とんでもないことになるのはわかりきっています。GDPは伸びは更に落ち込み、マイナス成長になりデフレに逆戻りです。

緊縮は本当に高くつくということを日本の政治家は忘れてしまったようです。緊縮財政を続けてきた過去の日本の政権は、全部短期で終わっています。例外はありません。財政再建至上主義の政治家はまたこれを繰り返したいのでしょうか。

どうやらそのようです。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に否定的な自民党有志による「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」(野田毅会長)が15日、2回目の会合を国会内担当で開き、石破茂前地方創生相ら議員約30人が出席しました。講師の早川英男元日銀理事は「デフレ脱却による高成長は幻想だ」とアベノミクスを批判し、石破氏は記者団に「原油安と円安に頼る経済政策であってはならない」と述べました。

石破茂前地方創生相
どうやら、彼らは財政件至上主義で増税などすれば、国民をデフレスパイラルのどん底に落とし、塗炭の苦しみを与えるこになり、そうなれば、国民の反発を招きそもそも政権を維持することすら困難になりかねないということに気づいていないようです。まあ、私達国民としては、どのような政権になったにしても、まずは経済がまともであれば良いということなのですが、では野党はどうなのかといえば、経済に関してはほとんどが落第生です。それ以前に、森友・加計問題で、騒ぎ回る馬鹿集団です。問題外です。

そうなると、やはり経済を考えれば、今は安倍政権を支持するという選択肢しかありません。本当に困ったものです。


上には、英国の例を出しましたが、考えてみれば、日本は英国よりも財政政策を間違えてばかりです。こんなことですから、現在に至っても未だ、GDPの伸びは英国はおろか、韓国すら上回っていない状況です。馬鹿な政治家どもに言いたいです、いい加減に気づけよと・・・・!

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経産省が素案公表「エネルギー基本計画」の読み方 欧米と比較、日本の原子力強化は理にかなっている 国際情勢の変化を反映すべき―【私の論評】エネルギー政策は確実性のある技術を基にし、過去の成功事例を参考にしながら進めるべき

高橋洋一「日本の解き方」 ■ 経産省が素案公表「エネルギー基本計画」の読み方 欧米と比較、日本の原子力強化は理にかなっている 国際情勢の変化を反映すべき まとめ 経済産業省はエネルギー基本計画の素案を公表し、再生可能エネルギーを4割から5割、原子力を2割程度に設定している。 20...