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2020年4月17日金曜日

国が「休業補償」を実施しても財政破綻の心配などない カネケチらず国民の命守れ! ―【私の論評】財務省の緊縮病に愛想よく付き合っていれば、日本経済は確実に破壊される(゚д゚)!

国が「休業補償」を実施しても財政破綻の心配などない カネケチらず国民の命守れ! 
高橋洋一 日本の解き方

新型コロナウイルスの緊急事態宣言に伴う休業要請の補償について、東京都は独自に行う方針だが、国は実施に消極的だ。東京以外の道府県は必ずしも財政事情が良くないので、国が出てきてくれないと大規模な補償は難しいのが実情だ。

 これについて安倍晋三政権で首相補佐官をしていた磯崎陽輔参院議員は、ツイッターで「全額休業補償をすれば、国は、財政破綻します。国名を挙げれば失礼ですが、イタリアと同じような状況になります。それは、医療崩壊へとつながるのです」と書いていた。


 これに対し、筆者は「もしこのような間違った財政破綻論にとりつかれていたら確実に『Z(財務省)緊縮病』患者。全額休業補償に必要なのはせいぜい数兆円レベル。これで財政破綻といいきるのは、1、2、…9、10、『たくさん』という人笑笑。その程度の財源作りなら教えますよ笑」と書いた。

 一般論だが、事業が厳しくなると、事業主は経費を減らそうとする。これが人件費にまで及ぶと休業や従業員の解雇となる。解雇の場合、労働者には失業保険が手当てされ、休業の場合には事業主には手当てに要した費用が雇用調整助成金として支給される。ともに、雇用を守るためのセーフティーネットだ。どちらも不正受給はいけないが、法律に基づくものは大いに活用すべきだ。

 国は、休業補償には及び腰であるが、雇用調整助成金の枠組みの中ではある程度の対応をしようとしている。

 ということは、経費のうち人件費以外の固定費などについては補償したくないという意思表示がうかがえる。ここでも、「Z緊縮病」のケチケチ根性丸出しなのだ。

 一体どれくらいの金額が必要なのか。大ざっぱな計算であるが、緊急事態宣言の区域である7都府県の国内総生産(GDP)合計はほぼ250兆円。休業要請するのは、経済活動別分類でいえば、宿泊・飲食サービス業、教育、その他のサービスが中心だ。それらの付加価値額は全体の10%程度として、経費と利益を全て補償したとすれば年間ベースで25兆円となる。

 仮に補償期間を3カ月(0・25年)として経費率8割とすれば、経費全てを補償する場合、25×0・25×0・8=5兆円。補償期間1カ月で全額でなく8割補償とすれば、必要金額は1・3兆円にしかならない。この程度であれば、国債を発行し、日銀が買いオペ対象にするだけで、インフレを起こすこともなく、簡単に捻出できる。

 一方、地方公共団体には、日銀の通貨発行益という奥の手はない。財政余裕度を示す財政調整基金(2018年度末)について、東京都は8428億円だが、大阪府は1489億円、神奈川県が591億円、千葉県が465億円という状況で、1兆円を超す支出を地方公共団体に求めることはできない。

 新型コロナウイルスに対しては、人と人との接触率を減らすのが当面の課題だ。早く打ち勝つためにもカネをケチってはいけない。国民の命を守るのは国の責務だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省の緊縮病に愛想よく付き合っていれば、日本経済は確実に破壊される(゚д゚)!

私達は今、二つの危機に直面しています。一つは、新型コロナウイルス感染拡大の危機です。この危機に対して安倍首相は4月7日、7都府県を対象に「緊急事態」を宣言し、外出自粛によって感染拡大を抑制する方針を示しました。経済的損失を覚悟のうえで国民の大半は「政府の要請」に協力するでしょう。

もう一つは、「日本経済は戦後最大の危機に直面している」(安倍首相)ことです。この危機を乗り切るため、同じ日に、安倍首相はGDPの2割に相当する「108兆円」の緊急経済対策を発表しました。


それでなくとも昨年10月の消費増税で景気は悪化していました。そこに新型コロナの影響で日本経済は本年度GDPでマイナス10%、実に55兆円もマイナスになるのではないかと言われています。

その穴埋めを政府の財政出動でしておかないと、国民経済は致命的な打撃を受ける。このため政府は今回、108兆円もの緊急経済対策(補正予算)を打ち出したのです。

ただしこの数字はこのブログでも以前述べたように、「事業規模」です。多くの経済学者が指摘しているように「真水」、つまりGDPを押し上げる効果がある政府の財政支出がいくらかが重要なのです。

実はこの108兆円には昨年12月に閣議決定された26兆円の経済対策の未執行分が入っています。よって、新規対策は82兆円。しかも中小企業向けに実施する納税や、社会保険料の支払い猶予のための26兆円は「財政支出」ではありません。

実際の「真水」に相当するのは「大変困難な状況に直面している家庭(一世帯30万円)、児童手当の上乗せ、中小・小規模事業者に対する現金給付と地方税減免」8兆円、「医療体制の整備と治療薬の開発」2.5兆円、「観光や農林水産業への補助金」8.5兆円などで、総計で20兆円に満たないと言われています。

現に、この補正予算に伴う新規国債発行額は16.8兆円です。量としては不十分です。この財政出動の出し渋りをした事務方のトップは、財務省の岡本薫明事務次官です。

財務省の岡本薫明事務次官

しかもこの財政出動の恩恵を直に受けることができるのは、一部の人に限られます。今回の2つの危機は、国民すべてに襲いかかってきています。よって、「給付金を一律10万円配布すべきだ」という案が与党や野党の一部からも出されていたのだが、これを否定したのが麻生太郎財務大臣でした。

公明党代表山口氏の要請もあり、政府・与党は4月16日、減収世帯限定の30万円給付を取り下げ、「国民1人あたり一律10万円給付」という異例の決定をしました。これは、当然といえば当然です。

緊急経済対策をめぐって、公明党は来週から審議予定の今年度の補正予算案を組み替えて現金10万円を一律に給付するよう求め、15日に自民党幹部と協議し、また山口代表が16日朝、安倍総理に電話で実現を改めて求めました。

これを受け安倍総理は、麻生副総理兼財務大臣と会談したほか、自民党の二階幹事長、岸田政調会長らを呼び、公明党との協議内容の報告を受けた上で、引き続き調整に努めるよう指示しました。山口氏としては、減額世帯限定の30万円給付だけでは、与党支持者の不興を買うのは必至であるとみたのでしょう。正しい判断でした。

一方、「日本の尊厳と国益を護る会」など自民党の若手議員約100人が消費税を一時的に減税すべきだと主張しましたが、これを却下したのが甘利明・自民党税制調査会会長でした。

甘利明・自民党税制調査会会長

ところが、今回の危機は簡単に収まりそうもないです。よって改めて真水の追加、つまり「一律給付」だけではなく、「消費減税」に踏み切ることで、国民一丸となって2つの危機に立ち向かう態勢を整えるべきではないでしょうか。自民党若手と野党の一部の奮闘を期待したいです。

一律給付が実現したのですが、消費税減税もしくは撤廃も実現すべきです。復興税もやめるべきです。コロナ禍は長期戦なので、給付金は必要とあれば何度でも実施すべきです。消費税減税も絶対必要です。一度の給付金では低所得層が持ち堪えられません。今後必要があれば、何度か実施すべきです。

財務省の緊縮に愛想よく付き合っていれば、日本経済は確実に破壊されることになります。

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2020年4月11日土曜日

【日本の解き方】カネ出し渋る「緊縮病」財務省に丸め込まれ…情けない議員たち あまりにみすぼらしい経済対策 「真水」はコロナ・ショックには力不足だ―【私の論評】緊急事態宣で暴露された、財務官僚とその取り巻きたちの日本をダメにする寄生虫ぶり(゚д゚)!

【日本の解き方】カネ出し渋る「緊縮病」財務省に丸め込まれ…情けない議員たち あまりにみすぼらしい経済対策 「真水」はコロナ・ショックには力不足だ


 政府は7日、新型コロナウイルス感染対策として7都府県を対象とする緊急事態宣言を発令した。

筆者の立場は、政府の緊急事態宣言が遅れたというものだ。改正された新型インフルエンザ等対策特別措置法(新型コロナ特措法)施行日の3月14日に、宣言していてもよかった。

16日には、政府は東京と大阪で感染者数急増となる兆候をつかんでいたが、14日には東京都心で桜の開花宣言が出され、花見気分で、20~22日の3連休前に自粛ムードが緩んでいた。その時に緊急事態宣言が出されていたら、緩みが締め直され、今のような感染者数急増にならなかった可能性もある。緊急事態宣言そのものは、法的根拠があるとはいえ、強制力が乏しいので、あえて発動を抑制することもなかったともいえる。

しかも、緊急事態宣言の遅れは経済対策の遅れともパラレルになっている。一部では、経済への悪影響を気にして緊急事態宣言が遅れたという見方もあるが、「緊縮病」にかかった財務省らが主導して政府の経済対策を渋り、休業補償などでカネのかかりうる緊急事態宣言を出し渋ったというのが実態だろう。

これは、今回の経済対策が、あまりに遅れたうえ、シャビー(みずぼらしい)であることからもうかがえる。

シャビー(みずぼらしい)=Shabby

まず、事業費108兆円といわれ、国内総生産(GDP)の2割に相当するというが、事業費とGDPは、売上高と利益ほどの概念の違いがあるので比率を計算すること自体、筆者に違和感がある。重要なのはGDPを押し上げる効果がある「真水」だ。

この真水について、おおよその数字すら、経済対策を検討た与党議員もよく知らない。財務省は補正予算の検討をしているはずなので、与党議員に積極的に知らせなかったのだろう。そんな状態で議論に応じる与党議員も情けない。重要情報を知らずに、意思決定しているからだ。

新聞報道によれば、財政支出は39兆円だという。このうち、昨年度の未執行分が10兆円であり、今年度補正予算で手当てされるのは29・2兆円だという。そのうち、財政投融資が12・5兆円とされ、真水は16・7兆円だ。これは、今年度補正予算で新たに発行される国債16・8兆円とほぼ見合っている。

そもそも年度当初の補正であれば、使い残りの資金はないはずなので、新規国債発行額がそのまま真水になるはずだ。正確な数字は、補正予算書が国会に提出されないとわからないが、この程度の真水であると、GDP比3%程度でしかなく、今回のコロナ・ショックには力不足になる。そもそも日本は、昨年10月の消費増税により、既に経済は痛めつけられている。それにコロナ・ショックの追い打ち、さらには東京五輪の1年延期も決まっている。

筆者は、消費増税の悪影響がGDP比で4%減、コロナ・五輪延期で4%減で、合わせて8%減程度とにらんでいる。となると、今回の経済対策では足りずに、いずれ追加措置が必要になるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】緊急事態宣で暴露された、財務官僚とその取り巻きたちの日本をダメにする寄生虫ぶり(゚д゚)!

早期に経済を立て直さないと国民の収入が増えず税収も増えないという当たり前のことがわからない財務省に呆然とします。そうして、多くの国民が、生活保護を受けざるを得ない立場に立たされた場合、財務省はどうするつもりなのでしょうか。それも緊縮で乗り越えるつもりなのでしょうか。本当に恐ろしいです。これでは、いずれ経済苦で死人がでるかもしれません。

そもそも特措法自体に大欠陥があります。知事に自粛要請させて、政府は金の責任は一切負わなくて済むのです。とはいいながら、調整の名の下に知事の行動に口を挟むことができるのです。口を出すなら金も出すべきです。

このような法律を作ったのはコロナ禍などでも、給料がびた一文減らない国会議員と官僚です。特措法の正体は、民間だけが苦しむ法律なのです。

日本国には日本銀行という中央銀行があるので非常事態に備える資金はいくらでも手当することができるはずです。その上で、実際の執行は都道府県知事に全権委任が緊急事態おける基本です。それと同時に憲法で非常事態条項がないと、背骨がないのと同じで、非常時には混乱をきたすので、憲法にも非常事態条項を盛り込むべきです。

財務省がなぜこんなときまで、緊縮にこだわっているのか、全く理解不能です。

大阪の吉村知事は以下のような、ツイートをしています。
吉村洋文(大阪府知事)

国には通貨発行権あります。国債の発行権もあります。ですから、お金を沢山刷ることもできます。今はデフレ気味なので、お金を沢山剃っても全く問題ありません。そうして、国債がマイナス金利の現状なら、100兆円くらいは国債を発行しても、損をするのではなく2兆円くらいも逆に儲かるので、簡単に用意できるはずです。

そうして、これだけ国債を発行しても、以前もこのブログに掲載したように、これは将来世代の付けになどなりません。無論財政破綻もしません。

にもかかわらず、資金を手当しないのは酷すぎます。私自身は、総力戦のような戦争や、今回のような世界的な感染爆発のような危急存亡のときは、さすがの財務省ですら、そのときだけは緊縮はやめるのではないかという淡い期待を持っていました。

しかし、その期待は今回見事に裏切られました。財務省は、国民の命を守る義務を放棄しているとしか思えません。無論政府が悪いという部分はあります。それは、否定しません。しかし、平成年間のほとんどを緊縮で押し通しても、財務省は何らの咎めを受けることはありませんでした。


つけあがった財務官僚は始末に負えなくなってきた

それが、財務官僚らをつけあがらせたのです。そもそも、政府の金とは、税金が源泉です。それは、国民から徴収したものであり、彼らのものではありません。税金は、国民の安全、生命、財産を守るためにこそ使われるべきものです。この非常時のときにはなおさらそうです。しかし、財務省の官僚は平時のときのように、緊縮を続けようという腹です。

マスコミもこれらの事実を全く報道しようとしません。これでは、財務官僚やその取り巻き政治家たちと同様に「日本をダメにする寄生虫」といっていいでしょう。

彼らが肥え太れば、太るほど日本はダメになります。今回のコロナ禍を奇貨として、彼らを100年かかっても、1000年かかっても、日本から除去すべきです。

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2020年4月6日月曜日

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この国の中枢に蔓延する「緊縮病」


あまりに酷すぎる
 コロナショックは、もはやそう簡単に収まりそうにない。

 経済において、最も守るべきは雇用だ。しかし、すでに雇用が大変なことになっている。

 厚生労働省が3月31日に発表した2月の有効求人倍率は1.45倍(季節調整値)と、2年11ヵ月ぶりの低い水準になった。

 今年1月には1.49(前月比▲0.08)、2月は1.45(前月比▲0.04)だった。2ヵ月間の低下幅▲0.12は、ここ30年間では、リーマンショック後の2008年12月-2009年2月の▲0.14に次ぐ低下幅だ。

 厚労省は「この1月から、企業の出す求人票の記載項目を増やした影響」という。それもあるだろうが、今年1月と2月の低下は、昨年10月の消費増税により景気の先行きが危うくなったからだろう。コロナショックは基本的には含まれていないのに、このありさまだ。

 というわけで、2月の統計数字はまだ「序の口」だ。コロナショックの悪影響が出てくる3月、4月の統計では、どえらい数字になる予感がする。リーマンショックを超える悪影響があるのは確実だ。


 こうした雇用の悪化は、もちろんGDPの下落と大いに関係がある(オークンの法則)。雇用の悪化を防ぐ意味でも、減少するGDPを補うほどの有効需要を経済対策で作らなければいけない。

 そうした中、コロナショックの経済対策の骨格がようやく出てきたが、その内容があまりに酷すぎる。

話にならない
 事業費60兆円というが、GDPに影響を与える「真水」ベースでは20兆円程度以下になってしまうことは、先週の本コラムで書いた。しかし、対策の内容が明らかになるにつれて、はたして「真水20兆円」すら確保できるかどうか、心配になってきた。

 例えば、「現金給付を1世帯あたり30万円」と報道されているが、その中身は、「所得が減少している」という条件が付されている。その結果、給付金総額は3兆円程度に抑えられるという(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57651530T00C20A4EA3000/)。

 もしそうなら、これはGDPのわずか0.6%程度であり、GDP低下分を埋める有効需要を作るという政府の責務とはかけ離れたものとなり、話にならない。

 消費減税もなしで、直接家計消費に働きかける政策にはなっておらず、GDPへの影響でも一桁小さい。論外の政策だ。

 例えば、米国のセントルイス地区連邦準備銀行のブラード総裁は、米国の失業率が今後30%と大恐慌時を上回るとともに、第2四半期の国内総生産(GDP)が半減してもおかしくないと危機感を表している。日本でも雇用やGDPの急落があり得るので、万全の経済対策をとるべきなのに、政府はいったいどうしたのだろうか。

 しかも、「1世帯あたり30万円の現金給付」のやり方が、元官僚の筆者からみると、おそろしく稚拙で驚いてしまう。

稚拙な制度設計

 現金給付の前例は、麻生政権時、2009年の定額給付金だ。これを麻生財務相は「失敗例」としているが、効果がなかったのは給付金額が少なすぎたからだ。国民一人あたり1万2000円、総額2兆円弱なら、0.2%程度のGDP押し上げ効果しかないのは当然だ。当時は世界でも日本だけが金融緩和せず、円高になって外需が失われたことも大きい。

 さらに当時のマスコミは、「バラマキ」との批判を展開していた、国民への直接交付を毛嫌いする財務省のシナリオどおりに動いていたフシもある。

 その反省を生かすなら、給付額を上げると同時に金融緩和をセットすることだが、今回は事前の所得制限に走ってしまった。

 今年(2020年)の所得に基づいて「困っているかどうか」を判断しないといけないので、自己申告にしたというが、この制度設計をした者は、当局がいつ今年の所得を把握できるのかわかっているのだろうか。現時点で、昨年(2019年)の所得を当局は把握できていない。要するに、今年の所得が把握できるのは、少なくとも1年以上先だ。

 自己申告制には「虚偽申告が相次ぐのではないか」(与党幹部)との懸念があるので、政府は、証明書類の添付や不正申請に罰則を設ける案も含めて検討する方針だという。

 いつの段階で、当局が所得を把握できるかもわかっていないから、罰則を設けるという筋違いの対応が出てくる。しかも、給付金は非課税措置にするという。

 こういう危機の時には、思いつきの案ばかりが出てくる。原則は、既存の制度や海外の事例を参照することだ。原則を知らないと、今回のような稚拙な制度になる。

「マスク2枚」との関連性

 そもそも、今年の所得を当局が把握するのは1年以上先なので、事前の所得制限はできない。もし所得制限したければ、事後的にならざるを得ない。既存の制度で利用できるのは税制だ。つまり、給付金を非課税措置にしなければ、一時所得になって、事後的な所得制限が可能になる。

 あとは、給付を最速で行う方法さえ考えればいい。

 麻生政権時の定額給付金は地方事務であったために、給付に時間がかかったことは先週の本コラムで書いた。そのときも書いたように、最速の処理方法は政府小切手である。補正予算が通れば、2週間ほどで可能だ。

 これについて、安倍首相が「国民にマスクを2枚配布する」と発表したこととの関連を考えてみよう。

 米ブルームバーグは2日、「アベノミクスからアベノマスクへ マスク配布策が冷笑を買う」とし、「アベノマスク」が日本のツイッターでトレンド1位になったことを紹介した。米FOXニュースも、「エイプリルフールの冗談ではないかと受け止められている」と報道した。

 いずれもマスク配布について冷ややかに報じている。筆者も3日、「マスクと一緒に、10万円政府小切手を送ればいいのに」とツイート(https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/1245858252400644096)し、4日の朝日放送「正義のミカタ」でも「2枚のマスクの間に、政府小切手があればよかったのに」と発言したところ、大いに受けた。

「財務省緊縮病」が蔓延している
 かつて危機の対策として、筆者は政府小切手の政策提言を出したことがある。実際に米国などで実施されていたからだ。ところが、ある政府関係者は「全国民に配布するのが実務上困難」と言っていた。

 そこで筆者は、第一次安倍政権のときに全国民へ送付する「ねんきん定期便」を企画して実施した。これは国民の住所確認の役割もある。すでに実施されてから10年もたつので、今なら国民の住所管理も十分にできており、政府小切手を配布できるはずと思っていたが、しかし今回もやはり政府は「全国民には無理」と言っていた。

 そうこうしているうちに、冒頭のように、突然安倍首相が「マスクを全国民に配布する」と言いだした。やはり全国民へ配布できるのだ。

 であれば、補正予算が成立した後に、政府小切手、正確にいえば、記名式政府振出小切手を送付すればいい。記名式政府振出小切手には受取人の名前があるので、誤配達や盗難にあっても記名人以外は銀行で換金できない。というわけで、郵送では危ないという人も心配無用だ。

 いずれにしても、今回の経済対策のシャビーさは、政府与党が財務省の「緊縮病」にかかったみたいだ。この「財務省緊縮病」には強力な感染力があり、財務官僚と話しただけで感染してしまう。政府与党、マスコミ、学者、財界人みんなが感染してしまったようだ。

 筆者は幸いにも抗体があったが、この病は政策を決める主要な人々の間に蔓延しているので、困ったものだ。コロナウイルスよりも財務省緊縮病のほうがこわいかもしれない。

100兆円基金を

 ここで、改めて筆者の経済対策案を述べておこう。いずれも既存の制度を利用したり、海外事例のあるものばかりだ。

 「○○兆円規模」などと数字の大きさを競うのは芸がない。数字は、コロナショックで予想されるGDP減少分を補う有効需要に合わせるので、現段階で正確に予測するのは困難だ。そこで、どんな数字にも対応できる仕組みを考えておくのがいい。

 もともと、筆者の経済対策には基本フレームがあり、そこから導出される具体的な対策を本コラムなどでも述べてきた。この基本フレームは、昨年9月9日の本コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67075)で披露したものの応用問題だ。

 筆者の提言は「100兆円基金」である。100兆円あれば、かなりの経済ショックに対応できる有効需要を作れる。これには予算総則の改正が必要であるが、そのとき同時に日銀引受も可能にしておけば、財政問題はなくなる。一方、100兆円程度であれば、酷いインフレを心配することもない。

 その中で、時限的な消費減税、現金給付、納税・社会保険料の減免を行えばいい。5%への消費減税なら、全品目軽減税率採用で有効需要15兆円。全国民へ20万円現金給付を政府小切手で行えば、有効需要20兆円。社会保険料の半年免除で、有効需要20兆円。こうした即効性のある対策を打ち出せばいい。

休業補償をケチっているのか?
 筆者には、経済対策のモタモタ感が、政府が「緊急事態宣言」をなかなか打ち出せないこととパラレルになっているように感じる。

 緊急事態宣言を出すと、法的根拠が伴うので、休業補償という話になるはずだ。それをケチって、なかなか緊急事態宣言が出されないように思えるのだ。各都道府県知事や医師会は緊急事態宣言を求めている。

 3月13日に改正された新型インフルエンザ等対策特別措置法の内容を整理しておこう。

 首相が行う緊急事態宣言の要件は、「新型コロナウイルスの全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態が発生したと認めるとき」(特措法第32条)。その場合、検疫のための停留施設の使用、医療関係者への医療等の実施の要請等、不要不急の外出の自粛要請、学校、興行場等の使用等制限等の要請等、臨時の医療施設の開設のための土地等の使用、緊急物資の運送等、特定物資の売渡しの要請などの強力な措置ができる。

 首相は緊急事態宣言を行い、総合調整を担うが、実際の要請または指示を発出する権限は、緊急事態宣言が出された区域の都道府県知事にある。ただし、その結果に対するコストは、一定程度国が負担するだろう。

 政府行動計画によると、緊急事態とは「緊急事態措置を講じなければ、医療提供の限界を超えてしまい、国民の生命・健康を保護できず、社会混乱を招くおそれが生じる事態」を示すとされている。

 実は、特措法が改正される直前に、筆者はあるネット番組で「ヒゲの隊長」こと佐藤正久参院議員と対談したが、一刻も早く緊急事態宣言をすべきとの意見で一致した。筆者は特措法が施行された3月14日か、厚労省情報が大阪などに伝えられた16日か、コロナ専門家会合があった19日のどこかで緊急事態宣言を出すべきだったと考えている。

感染爆発してからでは遅い

 政府では、感染症予測モデルの予測結果はどこまで共有されているのだろうか。政府高官は現状を「ギリギリ」と表現するが、そうであれば予測が上振れしたらオーバーシュートすると考えられるので、緊急事態宣言を出しておかないといけない。法律では、「おそれ」と書いているが、現実にそうなってからでは遅い。


 筆者が本コラムで毎週出している上の図のようなデータは、トランプ大統領の会見のときにも出されていた。これを虚心坦懐に読めば、上振れしたら、もうオーバーシュートになる。今でさえ緊急事態宣言は遅すぎるという状況だ。

髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】緊縮病が亢進し、認知症になった財務官僚に日本経済は救えず破壊するだけ(゚д゚)!

このブログでも何度か紹介したように、各種統計によれば、コロナ禍以前に、昨年10月の消費増税が日本経済を悪化させていることが明らかでした。結局、昨年10-12月の日本経済は「かなり悪かった」という結果でした。

2019年10-12月期のGDP(1次速報)の公表は2月17日でしたが、案の定2019 年 10-12 月期のGDP成長率(季節調整済前期比)は、実質は▲1.6%(年率▲6.3%)と 5 四半期ぶりのマイナス成長となりました。 名目は▲1.2%(年率▲4.9%)となりました。

2次速報値では、さらに下方修正されて、実質GDP成長率は前期比年率▲7.1%に第1次速報値同▲6.3%から下方修正されました。民間設備投資は法人企業統計を受け前期比▲4.6%に同▲3.7%から下方修正。個人消費は前期比で0.1ポイント上方修正、公共投資は0.4ポイント下方修正されました。

10月の消費増税は、ボイント還元なる制度等を導入したりしましたが、これらは全く効果はなく、大失敗という結果でした。

その前に補正予算は成立しているので、政府としても手を打っていたとはいえました。しかし、本来であれば昨年の臨時国会で補正予算を成立させておくべきでした。これは与党だけでなく、「桜を見る会」などに国会の議論を費やした野党の責任もあります。

消費増税は8%から10%に上がったので、おおよそ5.6兆円の有効需要を奪う計算になりました。軽減税率で1兆円、ポイント還元で0.3兆円程度戻すので、ネットでみれば4兆円強です。補正予算はそれと同規模なので、マクロ的には増税分を吐き出したともいえますが、タイミングが遅れたため、それだけでは不十分でした。

しかも昨年の消費増税は、世界経済が(1)米中貿易戦争、(2)ブレグジット、(3)ホルムズ海峡リスク、(4)日韓問題の要因で地合の悪いなか行われたので、2%増税でも3%増税した2014年と同程度の悪影響が予め予想されていました。となれば、東京五輪が終わった後、秋口に再び補正予算が必要になる可能性がかなり大きい状況でした。

この状況だと、財務省の「緊縮病」が気になるところでした。それは、1月17日に公表されたばかりの、内閣府「中長期の経済財政試算」にも垣間見えていました(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0117/shiryo_03-3.pdf)。

政府は国・地方の基礎的財政収支(PB)を2025年度に黒字転換する目標を掲げましたが、この資料では、実現がさらに厳しくなったと強調されていまし。試算の成長実現ケースで、2025年度のPBは3.6兆円の赤字。昨年7月時点の試算(2.3兆円の赤字)より悪化したとし、麻生太郎財務相も、17日の閣議後の記者会見で「歳出改革の取り組みをさらに進めなければならない」と語りました。

しかしそもそも、なぜPBを黒字化させなければいけないのか、目標を決めた政府もその理由がわかっているとは思えません。

日本政府のバランスシートをご覧になれば、債務だけを気にするのではなく、資産も考慮すべきであることをこのブログでは何度か主張してきました。そうすると、日本政府の財政状況は悪くはなく、欧米よりも良いくらいです。

それどころか、日銀も含む日本政府のバランスシート、でみれば、2018年度あたりに、黒字になっており、日本政府の財政は、世界でもトップクラスの良さです。

日本政府は世界でも有数の資産を持っています。ただし、それが財務省が特別予算などの複雑怪奇な方法を用いて、隠匿しているのです。統計資料では、どのような隠蔽の仕方をしているか細部まではわかりませんが、資産が計上されているので、それらは確かに存在していることがわかります。

この状況が、今年のはじめの状況で、そこに日本にコロナ禍が襲ったわけです。消費税の大失敗と、コロナ禍のダブルパンチで、日本経済は坂道を転がり落ちるように悪化するのは目に見えています。

ところが、財務省自身が、日本の財政状況は危機的状況にないことを公表しています。

下記引用は、財務省が過去に発表した外国の格付け会社への意見書です。現在も、財務省のホームページで見ることができます。

下記は財務省のホームページからの引用です。
外国格付け会社宛意見書要旨 
 貴社による日本国債の格付けについては、当方としては日本経済の強固なファンダメンタルズを考えると既に低過ぎ、更なる格下げは根拠を欠くと考えている。
貴社の格付け判定は、従来より定性的な説明が大宗である一方、客観的な基準を欠き、これは、格付けの信頼性にも関わる大きな問題と考えている。
 従って、以下の諸点に関し、貴社の考え方を具体的・定量的に明らかにされたい。
  
(1)日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。
 
(2)格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。
 例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。
・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国
・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている
・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高
にもかかわらず、財務省は緊縮路線を崩そうとしません。もう30年以上も緊縮を貫いてきたので、彼らは緊縮病が亢進し、認知症になったとしか思えません。

それにしても、財務省だけではなく緊縮といえば日本人の大部分は大好きなようです「もったいない」の精神です。これらが、多くの政治家や、マスコミや識者まで、財務省の緊縮路線に迎合する理由なのかもしれません。

緊縮した脳(右)は正常な脳に比べ「隙間」が多い(MRI画像)

ところが、一個人の財産と国家の財政とはまるで違います。本来政府に借金が全くない状態というのは、決して良い状態ではありません。それは、政府が何もしていないことを意味するからです。

日本政府の資産状況をバランスシートでみると、借金などあまりないことがはっきりします。それは、過去の政府があまりにも仕事をしてこなかったことの証左であり、実際ここ30年で、日本のインフラはかなり老朽化し、政府が有効需要を作り出す政策をとってこなかったので、日本のGDPの伸び率は今でも韓国よりも低い有様です。

せっかくの低金利(国債はマイナス金利傾向)なのですから、上の記事で高橋洋一氏が主張するように、マイナス金利の国債を大量発行し100兆基金を儲けて、政府は発行益で儲けて消費税減税や、コロナ対策、さらには昨年も発生した自然災害への対応や、古くなったインフラ整備に用いれば良いのです。

もう財務省は、日本経済を良くするどころか、破滅させるだけです。安倍政権としては、次の選挙で、消費税減税、新たなコロナウイルス対策を公約に掲げて勝利していただきたいものです。大勝利すれば、財務省の緊縮脳官僚も従わざるを得ないでしょう。

それと、安倍政権ならびにその後継政権は、すでに日本にとって必要のない財務省を破壊していただきたものです。100年かけても、日本のために破壊すべきです。本当に今回のコロナ対応のお粗末さで、愛想がつきました。

2017年6月16日金曜日

骨太方針から消えた「消費税」 財政再建は事実上終わっている、英政権は「緊縮病」で失敗―【私の論評】度々財政を間違える英国だが、日本はいつも間違えてばかりだった(゚д゚)!

骨太方針から消えた「消費税」 財政再建は事実上終わっている、英政権は「緊縮病」で失敗

「骨太の方針」の表紙

 政府が閣議決定した「骨太方針」から消費税の引き上げに関する言及が消えたと報じられている。

 昨年の「骨太2016」では、「『成長と分配の好循環』の実現に向け、引き続き、『経済再生なくして財政健全化なし』を基本とし、消費税率の10%への引き上げを2019年(平成31年)10月まで2年半延期するとともに、2020年度(平成32年度)の基礎的財政収支黒字化という財政健全化目標を堅持する」との記述があった。

 今回の「骨太2017」では、「『経済再生なくして財政健全化なし』との基本方針の下、引き続き、600兆円経済の実現と2020年度(平成32年度)の財政健全化目標の達成の双方の実現を目指す」とされ、消費税増税については書かれていない。

 もっとも、消費増税については、法律で予定されているものなので、政府としてその方針には変更はない。つまり、骨太方針に書かれていないといっても、新たな法律を制定しない限り、19年10月の10%への消費増税が実行されることになる。

 ただし、財政再建至上主義者にとっては、先日の本コラムで書いたように、財政目標でプライマリーバランス(基礎的財政収支)の重要性が当面なくなったことで、財政健全化の動きが大幅に後退すると心配しているかもしれない。

 ちなみに、「財政健全化」という言葉は、「骨太2016」では12回使われていたが、「骨太2017」では6回に減っている。これも彼らの懸念に拍車をかけていることだろう。

 実際のところは、債務残高対GDP(国内総生産)比とプライマリーバランスの間には密接な関係があり、債務残高比対GDP比を発散させないような経済運営が本来であるので、財政再建至上主義者の懸念は的外れである。

 これまで何度も書いてきたように、財政状況は、連結ベースの統合政府バランスシート(貸借対照表)でみるべきである。であれば、理論的には財政再建目標は、債務から資産を差し引いた「ネット債務残高対GDP」を低位に保つことが重要となる。

 現状において、ネット債務残高対GDPはほぼゼロであるので、そもそも財政を気にする必要がないというのが、理論的な帰結である。

 このような状況を安倍晋三首相はよく把握しているのだろう。ノーベル経済賞学者のジョセフ・スティグリッツ氏やクリストファー・シムズ氏を呼んで講演してもらっているのも、そうした意見を補強するという意味でうなずける。

 安倍首相はさらに、憲法改正で教育無償化を打ち出した。これに必要な財源はざっと見ても4兆~5兆円である。教育投資国債を抜きにして賄うことはまずできない。

 ネット債務残高対GDPはほぼゼロという事実からみれば、消費増税は必要なく、また投資のための国債を発行しても、財政状況を悪化させる要因にならない。

 財政再建至上主義者はこれらに反対だろうが、理論的根拠は乏しく、「緊縮病」を患っているようにみえる。英総選挙で、緊縮財政を指向したメイ政権は過半数を取れなかった。緊縮財政は政治的にも経済的にも失敗することを示した。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】度々財政を間違える英国だが、日本はいつも間違えてばかりだった(゚д゚)!

骨太の方針については、以下のリンクからご覧いただけます。


骨太の方針は、本来は「背骨(バックボーン)の方針」とするべきでしょう。背骨から生える各あばら骨という「政策」は、全てバックボーンの影響を受けます。

バックボーンの方針で「プライマリーバランス黒字化」が決定された場合、予算措置を伴う全ての政策が、「新たな支出をするならば、他の予算を削るか、もしくは増税する」という、狂った方針に従わざるをえないことになりかねません。

問題の「財政健全化目標」については、以下の通りとなっています。

『経済財政運営と改革の基本方針2017(略)基礎的財政収支(PB)を2020 年度(平成32 年度)までに黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。このため、「経済再生なくして財政健全化なし」との方針の下、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革という「3つの改革」を確実に進めていく必要がある。(後略)』

結局、2020年までのPB黒字化という狂った目標は、骨太の方針に残ってしまいました。何とか「債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す」を盛り込むことはできましたが、「基礎的財政収支(PB)を2020 年度(平成32 年度)までに黒字化」を削除することはできませんでした。大変、残念です。

PB目標が残ったことで、2017年の日本の再デフレ化の懸念を考えざるを得ない状況になってしまいました。

すでにして、GDPデフレータが対前期比▲0.5%と、デフレ化の方向に突き進んでいるにも関わらず、デフレギャップを埋める財政拡大は難しいでしょう。何しろ、PB目標がある限り、

「財政を追加的に拡大するならば、他の予算を削るか、増税」
 
という話になってしまいます。

ちなみに、経済がデフレ化すると、名目GDPが伸びにくくなります。実際、2017年1-3月期の名目GDPは、対前期比▲0.3%でした。

名目GDPの停滞は、既に2016年から始まっています。GDPデフレータも、2016年からマイナスが始まりました。

つまりは、日本経済は2016年から「再デフレ化」した可能性が濃厚なのです。まだ、推移をみてから判断する必要はありますが、それにしても、厳密にはデフレではなかったとしても、デフレすれすれという現実は変えようがありません。

経済がデフレ化し、名目GDPが伸びなくなると、税収が減ります。理由は、我々は所得から税金を支払っており、所得の合計がGDPになるためです。

そんなことは、あるはずがない! などと思う方々に、残念なお知らせがあります。
国の税収、プラス成長でも7年ぶり減 16年度   
国の2016年度の税収が7年ぶりに減収に転じ、政府の見積もりも2年連続で割り込む見通しだ。所得税収は7年ぶりの前年割れで、法人税収も伸び悩んだ。税収は今年1月時点で55.8兆円と見込んだが、さらに数千億円減るもよう。プラス成長でも税収が減った形で、安倍政権が経済運営の基本に掲げる「成長による税収増」の土台が揺らいでいる。(後略)
これは、現在の「プラス成長(=実質GDPの成長)」は、名目GDPが伸び悩む中、GDPデフレータというインフレ率がマイナスに落ち込んでいる結果を計算しているに過ぎないわけですから、こうなるのが当然のことです。

このような税収の減少は、財政再建至上主義者らの「このままでは財政破綻する! 早期のPB黒字化を!」という声を大きくします。

結果、我が国はデフレ脱却に必要な財政出動ができず、デフレが深刻化し、名目GDPが伸び悩み、税収が減るという悪循環に突っ込む可能性も高くなります。これは、結局のところ昨日のこのブログにも掲載したように、やはり8%増税の悪影響です。以下のグラフを見てもわかるように、消費性向が16年から急激に落ち込んでいます。


一方『骨太の方針』からは、消費税増税という文字は完璧に消えました。これは、安倍総理の増税はしないとの決意の表れともとれます。

これは、ブログ冒頭の記事にある高橋洋一氏が主張する統合政府ベースではすでに、政府の借金はないということからも、明らかです。借金をする必要のない政府が、増税をする必要性など全くありません。

上の記事でも、「英総選挙で、緊縮財政を指向したメイ政権は過半数を取れなかった。緊縮財政は政治的にも経済的にも失敗することを示した」とありますが、全くそのとおりです。

緊縮財政で足をすくわれた英国メイ首相
イギリスは良く財政政策を間違います。このブログでもかなり前に、増税の失敗を掲載したことがあります。これは、日本の8%増税の前に実施されたものですが、これは惨憺た大失敗でした。特に、若者雇用がかなり酷く悪化しました。その失敗を補うために、イングランド銀行(イギリスの中央銀行、日本の日銀にあたる)は大規模な金融緩和に踏み切りました。それでも回復までには、かなりの年月を要しました。それについてはこの記事の最後のほうの【関連記事】のところに掲載しますので、是非ご覧になって下さい。

さて、メイ首相は、前のキャメロン政権で治安対策の責任者である内相を務めました。当時の保守党は緊縮財政を進めるため、警察官を2万人削減。このことで、メイ首相を批判する声が出ています。労働党のコービン党首らは、メイ首相に辞任を求めています。

これに対し、メイ首相は6日の演説の中で、「選挙の数日前には、新たな政策を数多く発表するつもりはないが」と前置きした上で、「テロ行為で有罪判決を受けた人々の刑期を長くするべきだ」「当局が外国人のテロ容疑者を、自国に送り返すことをより容易にすべきだ」と述べ、移民の権利を手厚く保護する「人権法」を改正することで、さらなる対テロ対策を実施する方針を示しました。

 英タイムズ紙は13日、関係筋の話として、有権者による緊縮財政への忍耐が限界に達していることをメイ首相が認めたと報じました。

記事によるとジョンソン外相、デービス欧州連合(EU)離脱担当相や他の与党保守党議員らは、首相に対し、緊縮財政に対する国民のムードを首相は読み違えたと述べたといいます。

首相は前週の総選挙で単独過半数を取れず、北アイルランドのプロテスタント系民主統一党(DUP)との連立協議を開始しました。

このように、緊縮をすれば、経済が落ち込み国民の反発は必至です。緊縮、それも日本経済がデフレに再突入したか、しないかの現在の状況で緊縮をすれば、とんでもないことになるのはわかりきっています。GDPは伸びは更に落ち込み、マイナス成長になりデフレに逆戻りです。

緊縮は本当に高くつくということを日本の政治家は忘れてしまったようです。緊縮財政を続けてきた過去の日本の政権は、全部短期で終わっています。例外はありません。財政再建至上主義の政治家はまたこれを繰り返したいのでしょうか。

どうやらそのようです。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に否定的な自民党有志による「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」(野田毅会長)が15日、2回目の会合を国会内担当で開き、石破茂前地方創生相ら議員約30人が出席しました。講師の早川英男元日銀理事は「デフレ脱却による高成長は幻想だ」とアベノミクスを批判し、石破氏は記者団に「原油安と円安に頼る経済政策であってはならない」と述べました。

石破茂前地方創生相
どうやら、彼らは財政件至上主義で増税などすれば、国民をデフレスパイラルのどん底に落とし、塗炭の苦しみを与えるこになり、そうなれば、国民の反発を招きそもそも政権を維持することすら困難になりかねないということに気づいていないようです。まあ、私達国民としては、どのような政権になったにしても、まずは経済がまともであれば良いということなのですが、では野党はどうなのかといえば、経済に関してはほとんどが落第生です。それ以前に、森友・加計問題で、騒ぎ回る馬鹿集団です。問題外です。

そうなると、やはり経済を考えれば、今は安倍政権を支持するという選択肢しかありません。本当に困ったものです。


上には、英国の例を出しましたが、考えてみれば、日本は英国よりも財政政策を間違えてばかりです。こんなことですから、現在に至っても未だ、GDPの伸びは英国はおろか、韓国すら上回っていない状況です。馬鹿な政治家どもに言いたいです、いい加減に気づけよと・・・・!

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