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2020年6月24日水曜日

傲慢な中国は世界の嫌われ者— 【私の論評】米国による中国への本格的な金融制裁実施は時間の問題になってきた!(◎_◎;)

傲慢な中国は世界の嫌われ者

ブラマ・チェラニ(インド・政策研究センター戦略問題専門家)



<初動ミスへの批判に耳を貸さず、強硬姿勢で国際社会の信頼を失い孤立の道へ。本誌「中国マスク外交」特集より>

このところ世界中で中国批判の大合唱が起きている。新型コロナウイルス発生初期における情報隠しがパンデミック(世界的大流行)を招いたとして中国の責任が問われているのだ。だが中国は批判に耳を貸さず、香港への締め付けを強めるなど強硬姿勢一点張りで、火に油を注いでいる。

他国にマスクや防護服を提供し、暗黙のうちに政治的な見返りを求める、ウイルスの発生源に関する調査をかたくなに拒んだ揚げ句、国際世論の圧力に負けて渋々受け入れる──習近平(シー・チンピン)国家主席率いる中国政府のこうした迷走ぶりは信頼を失墜させ、自国を孤立に追い込むばかりだ。

習に良識があれば、中国はパンデミックで低下したイメージを立て直せたはずだ。破綻寸前に陥った「一帯一路」の参加国に債務の返済を免除するなり、貧困国に見返りを求めずに医療援助を行うなり、大国にふさわしい寛大さを示せばよかった。だが習政権にそんな度量はなかった。

けんか腰の外交姿勢にせよ、周辺地域での拡張主義的な活動にせよ、中国のやり方に世界は警戒を募らせている。にもかかわらず習は今の危機を覇権拡大の好機と見なしている。

実際、中国はパンデミックを最大限利用しようとした。1月時点で防護服などを買い占め、その後に価格をつり上げて暴利を得た。欠陥品のマスクや検査キットを売り付けたことも国際社会の怒りを買った。

習のワンマン支配の危うさ

世界がコロナ禍と闘っている隙に、中国軍は国境地帯でインド軍に小競り合いを仕掛け、尖閣諸島周辺の海域で日本の漁船を追尾するなど挑発行為を繰り返している。南シナ海の島々を管轄する行政区を新たに2つ設定し、この海域の支配を既成事実化する動きも関係国の神経を逆なでした。

オーストラリアが新型コロナウイルスの発生源に関する調査を呼び掛けると、中国はこれに猛反発。オーストラリア産の大麦に高関税をかけるなど報復措置に出て、両国の関係は急速に悪化した。

中国のかたくなな調査拒否は、2011年の東日本大震災で起きた福島第1原子力発電所の事故に関するIAEA(国際原子力機関)の調査を躊躇なく受け入れた日本とは対照的だ。それでもWHO(世界保健機関)の総会で調査を求める決議案が採択される形勢になると、習はメンツを失うまいとして土壇場で調査受け入れに転じた。

コロナ後の世界は元の姿には戻らない。国際政治の在り方も変わるし、経済も変わる。危機をきっかけに世界は中国頼みのサプライチェーンの危うさに気付き、既に生産拠点の分散化に着手している。

サプライチェーンの一極集中もさることながら、コロナ禍が浮き彫りにしたより根本的な問題は習のワンマン支配の危うさだ。中国は初動対応についての批判をかわそうと事実をごまかし、外交攻勢や情報操作で大国の面目を保とうとした。対外的な隠蔽工作や他国に対する恫喝といった習政権の恥知らずなやり方は今に始まったものではないが、今回ばかりはそれが全て裏目に出たようだ。

アメリカの世論は今、中国とその指導層にかつてなく厳しい見方をしている。日米など主要国は製造業の「脱中国」を促すため、生産拠点を中国から移す企業に補助金を出す意向だ。インドは中国からの直接投資を事前に政府が審査する制度を初めて導入した。

1970年代末の改革開放以降、今ほど中国に対する世界の風当たりが強まったことはない。習の過剰な支配欲はブーメランのように自国に跳ね返ってきた。中国発のパンデミックが国際社会における中国の地位低下を招き、将来の成長を阻む事態はもはや避けられそうにない。

©Project Syndicate

<2020年6月30日号「中国マスク外交」特集より>

【私の論評】米国による中国への本格的な金融制裁実施は時間の問題になってきた!(◎_◎;)

中国の風当たりが強くなるくらいなら、鉄面皮の習近平は何も気にせず、これからも傲慢な態度を改めないでょう。

しかし、米国においては、詰将棋のように対中政策を次から次へと厳しくしています。その際タイルものは、ファーウエイ潰しでしょう。現状では、ファーウエイは、半導体の供給停止で5Gスマホ開発が不可能になっています。



それでも、なんとか新しいスマホを開発をしていますが、現状では基本的にはアンドロイでありながら、Googleからソフトの供給が絶たれ、Googleなしのスマホを開発しています。いずれは、アンドロイドとは一線を画したスマホを開発するつもりなのかもしれません。

現在、半導体生産はファブレスの設計会社とファウンドリ(受託生産会社)による分業が進んでいます。また、設計に関しても、アームなどのCPUの基本回路、半導体版CADに該当するシノプシス、ケイデンス・デザイン・システムズ、メンター・グラフィックスのアメリカ3社の協力なしでは、新規の開発はできません。

また、設計だけでなく、TSMCなどからの半導体の販売を禁止することで製造の部分も押さえているため、ファーウェイは最先端プロセスでの半導体が手に入らなくなりました。これに対応するために、中国は中芯国際集成電路製造(SMIC)にオランダのASMLの半導体製造装置の輸入を画策していたのですが、これも米国に止められています。そのため、現行の14nmプロセスが最新ということになるわけですが、これでは低消費電力と小型化が求められる5G対応の最新スマートフォンなどに使用することはできません。

その上で、米国の規制を破った企業にはドル決済禁止や巨額の罰金などの厳しい制裁が課されることになっており、それは企業の倒産を招くことになります。中国は巨額の報酬で人を集めていますが、これは製品販売だけでなく技術移転の禁止でもあるため、人も制裁対象になります。

そうして、制裁の対象になった人は、得た利益と個人資産を没収され、長期の懲役刑が待っています。外国であっても、犯罪人引き渡し条約があれば米国に身柄が引き渡されることになり、同時に米国ドルは基軸通貨になっていることもあり、米国は世界中の銀行口座を監視できるため、外国資産であっても凍結や没収の対象になります。

さらに、米国の大学内では“スパイ狩り”が始まっています。中国は「千人計画」の名のもとに世界中の研究者に資金援助を行い、技術移転を求めてきたのですが、これは本来、米当局への許可や報告が伴わなくてはならないものです。現状では、最先端分野の研究に関して許可が下りる可能性はないに等しく、多くは無許可無報告で行われていたわけです。これに対して、順次調査が進んでおり、摘発が相次いでいます。

また、米国は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、中国に滞在する約7万人の自国民に帰国命令を出しましたが、そのほとんどがホワイトカラーであり、技術者や研究者です。

通信業界では、NTTが主導する形で2025年に5.5G、30年に6Gの採用が始まる予定になっていて、日本の通信および半導体メーカー復活に向けての希望となっています。そうして、これはインテルやマイクロソフトなど米企業との協力と連携によるものであり、日米両政府が支援するプロジェクトです。必然的に、この枠組みからファーウェイをはじめとする中国企業が外されることは必至です。

米国の一連のファーウェイ対応は、まるで詰将棋を見ているかのようです。

さらに、米国はコロナ以前から、様々な対中国関連の法律を施行させていましが、コロナ禍の最中においても、「ウイグル人権法」を施行しました。

6月17日トランプ大統領は、中国でウイグル族への人権侵害があるとして、これに関わった中国の当局者に制裁を科す「ウイグル人権法案」に署名し、法律が成立しました。

「ウイグル人権法」は、中国の新疆ウイグル自治区で、大勢のウイグル族の人たちが不当に拘束されているとして、アメリカ政府に対しウイグル族の人権侵害に関わった中国の当局者に制裁を科すよう求める内容で、先にアメリカ議会の上下両院で可決されていました。

これは、よりわかりやすくいうと、ウィグルの迫害に関連した、中国の政府高官の資産を凍結したり、米国への入国を禁止するものです。

この動きはますます加速しています。たとえば、

「日本の尖閣諸島への中国の領有権を認めてはならない」「中国の尖閣海域への侵入には制裁を加えるべきだ」

このような強硬な見解が米国議会で超党派の主張として改めて注目され始めたのです

尖閣諸島(沖縄県石垣市)に関して、これまで米国政府は「領有権の争いには中立を保つ」という立場を保ってきました。ところが、中国が米国にとって最大の脅威となったことで、東シナ海での膨張も米国は阻止すべきだとする意見が米国議会で広まってきたのです。

尖閣諸島 手前航空機は海自P3C哨戒機

2019年5月に、ミット・ロムニー(共和党)、マルコ・ルビオ(共和党)、ティム・ケイン(民主党)、ベン・カーディン(民主党)など超党派の14議員が「南シナ海・東シナ海制裁法案」を上院に提出しました。

同年6月には、下院のマイク・ギャラガー議員(共和党)とジミー・パネッタ議員(民主党)が同じ法案を下院本会議に提出しました。今回の下院共和党研究委員会の報告書は、その法案に米国議会の立場が表明されているとして、法案への支持を明確にしました。

なお上院でも下院でも法案は関連の委員会に付託されましたが、まだ本格的な審議は始まっていません。今回、下院共和党研究委員会は改めてこの法案の重要性を提起して、その趣旨への賛同と同法案の可決を促したのです。

今回、新たな光を浴びた「南シナ海・東シナ海制裁法案」の骨子は以下のとおりです。
・中国の南シナ海と東シナ海での軍事攻勢と膨張は、国際的な合意や規範に違反する不当な行動であり、関係諸国を軍事的、経済的、政治的に威嚇している。 
・中国は、日本が施政権を保持する尖閣諸島への領有権を主張して、軍事がらみの侵略的な侵入を続けている。この動きは東シナ海の平和と安定を崩す行動であり、米国は反対する。 
・米国政府は、南シナ海、東シナ海でのこうした不当な活動に加わる中国側の組織や個人に制裁を科す。その制裁は、それら組織や個人の米国内での資産の没収や凍結、さらには米国への入国の禁止を主体とする。
同法案は、中国に対する経済制裁措置の実行を米国政府に義務付けようとしています。つまり、米国は尖閣諸島に対する中国の領有権も施政権も否定するということです。米国政府は、中国当局の東シナ海での行動は、米国の規準でも国際的な基準でも不当だとする見解をとり、従来の「他の諸外国の領有権紛争には立場をとらない」という方針を変更することになります。

「ウイグル人権法案」も「南シナ海・東シナ海制裁法案」もその制裁は、当該法案に抵触した組織や個人の米国内での資産の没収や凍結、さらには米国への入国の禁止を主体としています。

今後米国は、ありとあらゆる中国の個人や、組織を対象にして、資産凍結や入国禁止の措置が取れるようにし、実行していくことになります。

最初は、共産党幹部から始まり、もっと下の層や、地方の幹部にまで制裁が及ぶ可能性があります。

「中国当局者の資産凍結」や「渡航制限」以外にも、「査証の取り消し」「中国人に対する学生査証の発給停止」「米金融機関による中国企業への融資制限」「中国企業の米証券取引所への上場禁止」などもあります。

この制裁に中国は耐えられるのでしょうか。たとえ、耐えたとしても、さらに厳しい制裁もあり得ます。それは、本格的な金融制裁です。

トランプ大統領

トランプ大統領は関税戦争以来、米国と中国の隔離を進めてきたといえます。モノ、人、金の相互依存を引き離すべく、米国企業に中国を去るよう勧めてきました。トランプ大統領は2020 年の大統領選挙への関心のあまり、ニューヨークの株価が気になりすぎていると批判されていますが、関税賦課については、米国経済への悪影響を最小限にしながら、2018 年から、2 年をかけて行ってきたとも言えます。

金融制裁については、大統領も議会も米中間の金融分離が十 分進んで米国への被害が少な区なる状況を待っているようです。大統領は米国企業に中国から離れろと言い続けています。まず、米国の中国への資金貸与を制約するでしょう。さらなる関税賦課も在中米国企業を中国のサプライチェーンから外す効果はあります。あとは時期を待ち、正当な理由を見つけることです。

最近の武官ウイルスにの隠蔽や、ウイグルでの人権非難や香港での弾圧事件、南シナ海や台湾海峡、尖閣諸島での事件は、金融制裁の十分な口実となります。

上の記事でも指摘されているように、最近の傲慢不遜な態度ばかりとる中国は、米国に金融制裁をされても、他国はそれを真っ向から批判するということはないでしょう。

コロナ禍が、全ての国際情勢の変化を促進しています。もう時間の問題でしょう。

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2020年4月17日金曜日

国が「休業補償」を実施しても財政破綻の心配などない カネケチらず国民の命守れ! ―【私の論評】財務省の緊縮病に愛想よく付き合っていれば、日本経済は確実に破壊される(゚д゚)!

国が「休業補償」を実施しても財政破綻の心配などない カネケチらず国民の命守れ! 
高橋洋一 日本の解き方

新型コロナウイルスの緊急事態宣言に伴う休業要請の補償について、東京都は独自に行う方針だが、国は実施に消極的だ。東京以外の道府県は必ずしも財政事情が良くないので、国が出てきてくれないと大規模な補償は難しいのが実情だ。

 これについて安倍晋三政権で首相補佐官をしていた磯崎陽輔参院議員は、ツイッターで「全額休業補償をすれば、国は、財政破綻します。国名を挙げれば失礼ですが、イタリアと同じような状況になります。それは、医療崩壊へとつながるのです」と書いていた。


 これに対し、筆者は「もしこのような間違った財政破綻論にとりつかれていたら確実に『Z(財務省)緊縮病』患者。全額休業補償に必要なのはせいぜい数兆円レベル。これで財政破綻といいきるのは、1、2、…9、10、『たくさん』という人笑笑。その程度の財源作りなら教えますよ笑」と書いた。

 一般論だが、事業が厳しくなると、事業主は経費を減らそうとする。これが人件費にまで及ぶと休業や従業員の解雇となる。解雇の場合、労働者には失業保険が手当てされ、休業の場合には事業主には手当てに要した費用が雇用調整助成金として支給される。ともに、雇用を守るためのセーフティーネットだ。どちらも不正受給はいけないが、法律に基づくものは大いに活用すべきだ。

 国は、休業補償には及び腰であるが、雇用調整助成金の枠組みの中ではある程度の対応をしようとしている。

 ということは、経費のうち人件費以外の固定費などについては補償したくないという意思表示がうかがえる。ここでも、「Z緊縮病」のケチケチ根性丸出しなのだ。

 一体どれくらいの金額が必要なのか。大ざっぱな計算であるが、緊急事態宣言の区域である7都府県の国内総生産(GDP)合計はほぼ250兆円。休業要請するのは、経済活動別分類でいえば、宿泊・飲食サービス業、教育、その他のサービスが中心だ。それらの付加価値額は全体の10%程度として、経費と利益を全て補償したとすれば年間ベースで25兆円となる。

 仮に補償期間を3カ月(0・25年)として経費率8割とすれば、経費全てを補償する場合、25×0・25×0・8=5兆円。補償期間1カ月で全額でなく8割補償とすれば、必要金額は1・3兆円にしかならない。この程度であれば、国債を発行し、日銀が買いオペ対象にするだけで、インフレを起こすこともなく、簡単に捻出できる。

 一方、地方公共団体には、日銀の通貨発行益という奥の手はない。財政余裕度を示す財政調整基金(2018年度末)について、東京都は8428億円だが、大阪府は1489億円、神奈川県が591億円、千葉県が465億円という状況で、1兆円を超す支出を地方公共団体に求めることはできない。

 新型コロナウイルスに対しては、人と人との接触率を減らすのが当面の課題だ。早く打ち勝つためにもカネをケチってはいけない。国民の命を守るのは国の責務だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省の緊縮病に愛想よく付き合っていれば、日本経済は確実に破壊される(゚д゚)!

私達は今、二つの危機に直面しています。一つは、新型コロナウイルス感染拡大の危機です。この危機に対して安倍首相は4月7日、7都府県を対象に「緊急事態」を宣言し、外出自粛によって感染拡大を抑制する方針を示しました。経済的損失を覚悟のうえで国民の大半は「政府の要請」に協力するでしょう。

もう一つは、「日本経済は戦後最大の危機に直面している」(安倍首相)ことです。この危機を乗り切るため、同じ日に、安倍首相はGDPの2割に相当する「108兆円」の緊急経済対策を発表しました。


それでなくとも昨年10月の消費増税で景気は悪化していました。そこに新型コロナの影響で日本経済は本年度GDPでマイナス10%、実に55兆円もマイナスになるのではないかと言われています。

その穴埋めを政府の財政出動でしておかないと、国民経済は致命的な打撃を受ける。このため政府は今回、108兆円もの緊急経済対策(補正予算)を打ち出したのです。

ただしこの数字はこのブログでも以前述べたように、「事業規模」です。多くの経済学者が指摘しているように「真水」、つまりGDPを押し上げる効果がある政府の財政支出がいくらかが重要なのです。

実はこの108兆円には昨年12月に閣議決定された26兆円の経済対策の未執行分が入っています。よって、新規対策は82兆円。しかも中小企業向けに実施する納税や、社会保険料の支払い猶予のための26兆円は「財政支出」ではありません。

実際の「真水」に相当するのは「大変困難な状況に直面している家庭(一世帯30万円)、児童手当の上乗せ、中小・小規模事業者に対する現金給付と地方税減免」8兆円、「医療体制の整備と治療薬の開発」2.5兆円、「観光や農林水産業への補助金」8.5兆円などで、総計で20兆円に満たないと言われています。

現に、この補正予算に伴う新規国債発行額は16.8兆円です。量としては不十分です。この財政出動の出し渋りをした事務方のトップは、財務省の岡本薫明事務次官です。

財務省の岡本薫明事務次官

しかもこの財政出動の恩恵を直に受けることができるのは、一部の人に限られます。今回の2つの危機は、国民すべてに襲いかかってきています。よって、「給付金を一律10万円配布すべきだ」という案が与党や野党の一部からも出されていたのだが、これを否定したのが麻生太郎財務大臣でした。

公明党代表山口氏の要請もあり、政府・与党は4月16日、減収世帯限定の30万円給付を取り下げ、「国民1人あたり一律10万円給付」という異例の決定をしました。これは、当然といえば当然です。

緊急経済対策をめぐって、公明党は来週から審議予定の今年度の補正予算案を組み替えて現金10万円を一律に給付するよう求め、15日に自民党幹部と協議し、また山口代表が16日朝、安倍総理に電話で実現を改めて求めました。

これを受け安倍総理は、麻生副総理兼財務大臣と会談したほか、自民党の二階幹事長、岸田政調会長らを呼び、公明党との協議内容の報告を受けた上で、引き続き調整に努めるよう指示しました。山口氏としては、減額世帯限定の30万円給付だけでは、与党支持者の不興を買うのは必至であるとみたのでしょう。正しい判断でした。

一方、「日本の尊厳と国益を護る会」など自民党の若手議員約100人が消費税を一時的に減税すべきだと主張しましたが、これを却下したのが甘利明・自民党税制調査会会長でした。

甘利明・自民党税制調査会会長

ところが、今回の危機は簡単に収まりそうもないです。よって改めて真水の追加、つまり「一律給付」だけではなく、「消費減税」に踏み切ることで、国民一丸となって2つの危機に立ち向かう態勢を整えるべきではないでしょうか。自民党若手と野党の一部の奮闘を期待したいです。

一律給付が実現したのですが、消費税減税もしくは撤廃も実現すべきです。復興税もやめるべきです。コロナ禍は長期戦なので、給付金は必要とあれば何度でも実施すべきです。消費税減税も絶対必要です。一度の給付金では低所得層が持ち堪えられません。今後必要があれば、何度か実施すべきです。

財務省の緊縮に愛想よく付き合っていれば、日本経済は確実に破壊されることになります。

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2017年7月20日木曜日

完全に終わる日銀の旧体制 経済の状況認識読み違えた時代錯誤な提案なくなるか―【私の論評】反アベノミクス的な経済政策が実施されれば『失われた20年』の再来に(゚д゚)!

完全に終わる日銀の旧体制 経済の状況認識読み違えた時代錯誤な提案なくなるか

佐藤健裕氏(左)と木内登英氏(右)
 19、20日の日銀金融政策決定会合で、木内登英、佐藤健裕両審議委員の最後の会合となる。

 特に木内氏は、現在の黒田東彦(はるひこ)総裁体制で反対票を投じてきたことで知られている。

 速水優総裁時代に審議委員を務めた中原伸之氏も、やはり反対意見を出していたが、それは量的緩和など、当時の日銀が採用していなかった政策を主張し、時代を先取りしていたもので、意義あるものだった。

 木内氏は、現在の日銀が実施している金融政策では副作用が大きいとして、年間80兆円程度のマネタリーベース増加額を45兆円程度へ減額すべきだと主張してきた。

 月刊資本市場2016年1月号の「『量的・質的金融緩和』再考」によれば、その前提として、「需給ギャップが2013年末頃にほぼ解消され、その後も概ね中立的な状態が維持されていること」をあげ、「金融機関の収益悪化が金融システムの不安定性に繋がりうるリスク」「金融政策の正常化の過程での金利上昇リスク」「財政ファイナンスとの認識が高まる可能性」「金利による財政規律メカニズムが損なわれるリスク」「国債購入の持続性と金利の安定性のリスク」を副作用としている。

 まず需給ギャップ(実際の国内総生産=GDP=から完全雇用状態の潜在GDPを引いたもの)の状況認識が間違っている。需給ギャップがほぼ解消されたように見えたのは、14年4月からの消費増税で需要が減少したからで、木内氏は需給ギャップを過大評価した。実際、インフレ率は14年5月に見かけ上の消費増税効果を除き1・6%となったのをピークとして、その後急速に低下した。

 なお、需給ギャップは、自然利子率(完全雇用のもとで貯蓄と投資をバランスさせる実質金利水準)や構造失業率(これ以上下げられない完全雇用水準)と密接な関係がある。需給ギャップを過大評価すると、自然利子率は過小評価、構造失業率は過大評価となる。いずれの場合でも、まだ金融緩和すべき時に引き締めるべきだと間違ってしまう。その結果、誤った金融引き締めを提言し続けたわけだ。

 佐藤氏も木内氏と似ている。日本経済の潜在成長率から考えても2%のインフレ目標は高すぎるとした。これも潜在GDPを間違って捉えたもので、木内氏の需給ギャップに関する認識の誤りと同じである。この誤った認識から、インフレ目標2%は無理だと主張していた。

 日銀は安倍晋三政権とインフレ目標2%を約束した。佐藤氏を任命した民主党政権との関係からいえば問題なしであっても、安倍政権になってからも本当に無理だと思うのなら、その時点で審議委員を辞めてもよかったのではないか。

 木内氏と佐藤氏が退任すれば、民主党政権時代に任命された人はいなくなる。その時代に任命された人はこれまで、需給ギャップの過大評価、自然利子率の過小評価、構造失業率の過大評価などで現実と違っていた。しかし、これからの日銀はこれらに染まっていない人たちになる。時代を先取りする提案はあっても、時代錯誤な提案はないはずである。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】反アベノミクス的な経済政策が実施されれば『失われた20年』の再来に(゚д゚)!

確かに、木内登英、佐藤健裕両審議委員が日銀審議委員から姿を消せば、上の記事で、経済の状況認識読み違えた時代錯誤な提案なくなるかもしれません。

この両者に関しては、上の記事で高橋洋一氏が指摘するように、いつも時代錯誤というか、頓珍漢な主張を繰り返してきました。

その最たるものは、2014年10月31日に日銀が発表したハロウィーン緩和と呼ばれる、追加金融緩和です。以下にこの時の産経新聞の号外の紙面を掲載します。


これは、当然のことです。2014年4月から、あの悪しき、今では完璧に大失敗だったと誰もが認める8%増税が行われました。そうして、増税推進派が主張していたように、日本経済への影響は軽微という、予測とは裏腹に、導入当初から日本経済は低迷しました。このような状況に対応するため、日銀が追加金融緩和をするのは当然といえば当然でした。

しかし、日銀の審議会がこれを決定するにおいては、4名の反対者がいました。ちなみに、審議会の正式名称は、政策委員会であり、これは総裁、副総裁(2人)および審議委員(6人)で構成されます。これら9人のメンバー(政策委員会委員)は、いずれも国会の衆議院および参議院の同意を得て、内閣が任命します。

4名の反対派は以下の4人です。これらは、全員が民進党政権時代に審議員に任命された人々です。


この委員会において、4人が反対したのですから、委員会のメンバーは9人ですから、あと一人が反対していたら、真っ二つに割れたわけで、この追加金融緩和は危ういところで決まったということです。

もしこのハロウィーン緩和が見送られたとしたら、どうなっていたかといえば、これは当初から予想されたことですが、当然のことながら、現在のかつてないほどの雇用状況の良さは実現されおらず、かなり雇用状況が悪化しており、アベノミクスの金融緩和は完璧に頓挫していてとんでもない状況になっていたことでしょう。

増税による経済への悪影響もさらに大きなものになっており、おそらく日本は完璧に再度デフレに突入していたことでしょう。

市場はこの状況に失望し、2015年の安保法制審議のときには、安倍政権はかなり支持を落としていたことでしょう。

これに関しては、一昨日のブログにも、この追加金融緩和によって、安倍政権は2015年にあれほどのネガティブキャンペーンにあいながらも、支持率をさほど落とさなくてもすんだ可能性があるということを示唆しました。

以下に昨日の記事のリンクを掲載します。
加計問題を追及し続けるマスコミの「本当の狙い」を邪推してみた―【私の論評】安倍政権支持率低下の原因はネガティブキャンペーンだけではない(゚д゚)!
2014年10月31日の「ハロウィーン緩和」を発表する日銀黒田総裁
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では市場は安倍総理は本当に、景気を回復できるのか疑心暗鬼になっており、最近の安倍政権の支持率の低下はこれも大きな要因の一つになっていることを掲載しました。以下、その部分を中心に以下に一部を引用します。
実際に、消費増税が行われた14年以降においては、政府が実施してきた中で、消費増税の先送りや毎年の最低賃金引き上げ、そして昨年度末の補正予算ぐらいが「意欲的」な政策姿勢だったという厳しい評価もできます。2%のインフレ目標の早期実現を強く日銀に要請することはいつでもできたはずです。ある意味で、雇用の改善が安倍首相の経済政策スタンスの慢心をもたらした、ともいえます。
さらに、自民党内には、安倍首相と同じリフレ政策の支持者は、菅義偉官房長官はじめ、自民党内にはわずかしかいません。ただし、二階派は、プライマリーバランスは先送り、景気が先としています。しかし、石破氏はもとより他の派閥は全部増税派です。 
そうして、次の日銀の正副総裁人事が来年の3月に行われるはずですが、そのときに最低1人のリフレ政策支持者、できれば2人を任命しないと、リフレ政策すなわちアベノミクスの維持可能性に赤信号が点灯することになります。 
このリフレ政策を支持する人事を行えるのは、安倍首相しかいないのです。それが安倍政権の終わりがリフレ政策のほぼ終わりを意味するということです。 
もちろん日銀人事だけの問題ではありません。仮に日銀人事をリフレ政策寄りにできたとしても、政府が日銀と協調した財政政策のスタンスをとらないと意味はありません。デフレを完全に脱却するまでは、緊縮政策(14年の消費増税と同様のインパクト)は絶対に避ける必要があります。デフレ脱却には、金融政策と財政政策の協調、両輪が必要なのです。 
ここにきて、直近では財務省人事や産業経済省の人事などで、増税派が順調に出世したことなどから、市場関係者には安倍政権は経済を立て直しができないかもしれないという、ある種の失望感が生まれるようなっていたのだと思います。
この記事では、「次の日銀の正副総裁人事が来年の3月に行われるはずですが、そのときに最低1人のリフレ政策支持者、できれば2人を任命しないと、リフレ政策すなわちアベノミクスの維持可能性に赤信号が点灯することになります」と掲載しました。


日銀は来年4月にかけて、黒田東彦総裁ら5人の政策委員が相次いで任期切れを迎えます。現状の新議員がすべてまともだったにせよ、5人もの委員が入れ替わるのですから、確かに1人のリフレ政策支持者で、既存の4人とあわせて何とかリフレ派が多数派ですが、中には中立的立場の人も1人(中曽根氏)いるのでこれでも安心できません。やはり、少なくとも2名が金融緩和に肯定的な人である必要があります。
こう考えると、確かに来年の4月までは、「完全に終わる日銀の旧体制」ということはできるとは思いますが、4月以降に金融緩和に否定的な人々が日銀の審議委員の多数派になれば、これは崩れるわけです。ただし、安倍政権が崩れない限り、安倍政権は金融緩和を支持する人事を行うことになるので、これは何とかなるものと思います。

そうして、現在安倍政権がおこなわなけばならないのは、財務省とのガチンコ対決に勝利を収めることです。

安倍政権では、経産官僚が力を持ち、かつて「最強官庁」と呼ばれた財務省は冷遇されてきました。安倍首相や菅義偉官房長官は消費税増税に消極的ですが、財務省は麻生太郎副総理兼財務相とともに抵抗してきました。現在の安倍政権の支持率が低下している状況は、財務省にとっては主導権奪還の好機です。

そうして、石破氏を含めポスト安倍の面々は、いずれも財務省を筆頭とする官僚依存の傾向が強いです。2度の増税延期で財務省と闘ってきた安倍首相との違いは大きいです。

安倍政権としては今後、支持率下落を受けて「経済重視に回帰する」とみられます。ただ、経済政策は今後の政治スケジュールとも密接にかかわってきます。

秋の臨時国会では、経済政策の強化のために補正予算が打ち出されることになるでしょう。

現状では、有効求人倍率や失業率、企業業績は改善していますが、14年4月の消費税率8%への引き上げ後の消費低迷の悪影響が尾を引き、デフレの完全脱却や2%のインフレ目標実現にはほど遠い状況です。日銀の量的緩和継続とともに、財政面での手当ても必要になります。

安倍政権の『20年の憲法改正』という目標から逆算すると、憲法改正の是非を問う国民投票は、18年後半に衆院選とのダブルで実施される可能性が高いです。19年10月に予定されている消費税率10%へ増税の是非も争点となります。

最善の手は「消費税の増税に対して消費税の減税を行なうこと」です。次善の手は「増税によって税収が入ったら、そのお金をすべて国民に撒くこと」です。冗談だと思う人もいるかもしれないが、ロジックでいえば当然で、増税しなかったのと同じ効果を与えるからです。

もちろん増収分を国民に撒くといっても、財政支出一辺倒だと供給制約が発生してしまいます。公共事業に予算をつけても、事業を行なう技能をもった人や組織には限りがあるからです。さらに減税や追加の大幅金融緩和に踏み切るなど、ダメージを緩和するための第三、第四のサブシナリオを考えることもできます。

石橋と小泉進次郎氏
これからも増税をめぐり、安倍政権の周囲でさまざまな画策が生じるはずです。財務省としては、石破氏や小泉進次郎氏のように、さらに自分の思いどおりになる与党議員を探して懐柔することでしょう。地方議員には「もし増税が潰れたら予算づくりもやり直しになってしまう。あなたの地元の要望も通らない」と脅しをかけ、経団連には「消費税増税なくして法人税減税なし」ということでしょう。

しかし、そもそも、税率と支出が結び付いて予算が青天井になる現行の仕組みは異常です。法人税は個人の所得税と重複する「二重課税」ですから、もともと無駄な税金です。マイナンバーなどで個人の所得をきっちり捕捉して増収を図るのが王道のはずです。

いずれにせよ、こうした動きを誰より注意深く見ているのは安倍総理自身です。マスコミは財務省のプロパガンダやとんでもエコノミストの観測気球ばかり流さず、ロジックとファクトに基づく報道をすべきでしょう。

18年9月には自民党総裁の2度目の任期満了を迎えます。『反安倍勢力が総裁選で勝つ』『衆院選で与党が敗れる』『国民投票で過半数に届かない』のいずれかになれば、10%への消費税増税が実施されることになるでしょう。これまで2度増税が延期されている財務省側にとっては好都合なことです。

反アベノミクス的な経済政策が実施された場合も、日本経済は、再び深刻なデフレに転落し、『失われた20年』の再来となるでしょう。歴代政権でも最高レベルになっている雇用環境も次第に悪化していくようになります。失業率が上昇すれば、自殺率が上昇し、強盗などの犯罪も増えるという統計もあり、社会不安が高まるのは避けられないことになります。

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