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2019年8月17日土曜日

香港人に英国籍付与、英議員の提案は香港問題の流れをどう変えるか?―【私の論評】コモンウェルズの国々は、香港市民に国籍を付与せよ(゚д゚)!

香港人に英国籍付与、英議員の提案は香港問題の流れをどう変えるか?

立花 聡 (エリス・コンサルティング代表・法学博士)

 多発デモや混乱、情勢の混迷を深める香港(参照『香港問題の本質とは?金融センターが国際政治の「捨て駒」になる道』)。中国による武力介入が懸念されるなか、打開策として様々なシナリオが描かれている。

1997年6月30日、香港コンベンション&エキシビション・センターで行われた香港政権引き渡しの式典

香港人に英国籍を与えよ!

 300万人規模、半数近くの香港市民が一夜にしてイギリス人になった場合。――あり得ない仮説のようだが、実はあり得ない話ではないのだ――。

 「香港市民には英国籍を与えるべきだ。香港の抗議運動を支援する英国の姿勢を見せるときだ」

 英国国会議員、外交委員会委員長のトム・タジェンダット(Tom Tugendhat)氏は、1997年香港撤退(中国返還)の際に放置されてきた市民の国籍問題の解決を促し、英国籍付与の範囲を香港の中華系市民(ホンコン・チャイニーズ)にも及ぶべきだとし、英国が香港から引き上げた当時そうしなかったのは間違いであって、それを是正すべきだ(wrong that needs correcting)と主張した(8月13日付け英字紙デイリー・メール Online版)。

英国国会議員、外交委員会委員長のトム・タジェンダット(Tom Tugendhat)氏

 周知のように、香港はすでに1997年にその主権が中国に返還された。中国の一特別行政区になった香港は中国の一部であることは言うまでもない。こうして中国領土に居住する「香港人」に勝手に外国籍(英国籍)を与えることはできるのか。たとえ与えられたとしても、「君たちはもうイギリス人だから、香港から出て行け。イギリスに帰れ」と言われないのか。

 現にイギリスに移住できる香港人はわずか一部の富裕層にとどまっている。ほとんどの香港人はたとえ英国籍を取得しても、生計を立てる基盤である香港から離れ、実際にイギリスに移住することは経済的にまず不可能だ。

 一連の疑問に答えを出すには、まず「香港人」というステータスを若干説明する必要がある。

「香港人」という特別な存在

 まず、文化的ステータス。

 「Borrowed place, Borrowed time(借りた場所、借りた時間)」という言葉(中国人の父とベルギー人の母の間に生まれる女医ハン・スーイン(韓素音)の小説を映画化した『慕情』の中での名ゼリフ)ほど香港人の心境を的確に表現したものはないだろう。

 借りた場所は返さなければならないが、借りた時間は返せるだろうか。場所を返すのに1日もあれば十分。1997年7月1日という瞬間に香港が中国に返された。しかし、そこに住む一人ひとりの香港人の中にある時間(記憶)はそう簡単に抹消されることはない。50年をかけてもだ。

 「借りた場所、借りた時間」という言葉の主語。場所を借りたのはイギリスだが、時間を借りたのは誰だ。イギリス人か、香港人か、あるいは両方か。互いに借りたり貸したり、そうした関わり合いのなかに、香港人とイギリス人のいささか相思相愛ともいえる微妙かつ濃密な関係があったのだ。それは決して正議論的に植民地統治の悪という一言で片づけられるものではない。

 借りた時間の影響は一代にして終わらず、97年返還の前後に生まれた次の世代も間接的ではありながら、何らかの形でその影響を受け続けている。「時間を取り返す」という命題を掲げる中国は50年あるいはもっと長い時間をかけ、香港人の心から承認と共鳴を引き出さなければならない。それは決して容易なタスクではない。中国本土と異なった歴史的背景を無視して威嚇や武力だけで屈服させようとすると、逆効果にほかならない。

 「香港人は、中国人ではない」と訴え、自己主張する香港人の心境はどんなものだろうか。彼らは決して「チャイニーズ」というアイデンティティに抵抗しているように思えない。単純にイデオロギーや政治体制、統治手法などの面において懸命に中国本土と一線を画し、その相違を自他とも確認できるような明確な形にしようとしているだけである。そうした香港人の頑強な姿が見え隠れする。今回の「逃亡犯条例」に対する激しい反発はまさにその表れといえよう。

 国籍に関しては、チャイニーズたちの柔軟な、時には無節操とも思わせる捉え方も周知のとおりである。自由のために、生計のために、事業のために、外国籍を気軽に取得しても、アイデンティティまで変えようとするチャイニーズはわずかだ。その外国籍もまさに「借りた場所」や「借りた時間」と同じように、「借りた国籍」と考えているだろう。
香港人が持つ2種類の旅券

 次に、法的ステータス。

 香港の市民は2種類の旅券(パスポート)を保有することが出来る。1種類は中華人民共和国香港特別行政区が発行する旅券(青色)、もう1種類は英国政府が発行するBNO(British National Overseas=英国海外市民)旅券(赤色)である。

 BNO旅券の表紙には英国の国章が入っているが、イギリス人がもつ本国の旅券とは異なり、言ってみれば、海外植民地の「二等国民」がもつ旅券である。BNO旅券保有者が英国入国の際に、「British Citizen」の列に並ぶことは許されていないし、外国人同様の入国審査を受けなければならない。イギリスの入国審査当局の説明によれば、BNO旅券は英国旅券ではなく、「英国政府が発行した渡航文書(Travel document)」に過ぎないのである。

 「旅券」は国籍証明機能を有しているが、「渡航文書」は必ずしもそうではない。自国民以外の者に対しても発行可能で、通過許可を求める証明書類等は包括的に「渡航文書」とされている。「渡航文書」は「旅券」の上位概念である。BNO旅券はつまりそのような「渡航文書」であり、決して英国国民であることを認証するものではない。

 1997年の香港返還に際して、「一国二制度」の下で、香港市民は英国海外領国民ではなくなり、中国国民となる。しかしながら、英国は1987年から1997年返還までの間にBNO旅券を300万人以上の香港市民に発給した。つまり、1997年の返還前の香港に居住、申請した人は、現在でもBNO旅券を保有・更新することができる。

 在香港英国総領事館のウェブサイトによれば、2012年現在約340万人の香港市民がこのBNO旅券を所持しているという。つまり、これはとても重要なことだが、英国政府がBNO旅券保有者に英国市民権を与えると決めた場合、理論上ではあるが、総人口740万人の香港の半数近くの市民がイギリス人になることが可能となる。

 英国国籍法に基づき、他国籍を有しない英国海外市民、英国国民(海外)は帰化ではなく、「登録」により英国籍を取得することができる。法的基盤がある程度整っている以上、政治的判断があれば、実行は可能であろう。さらにBNO旅券保有者の子女(1997年7月1日以降生まれた人)にも特例的に市民権付与を認めた場合、半分以上の香港市民がイギリス人となり得る。

国籍選択、半数近くの香港人がイギリス人になった場合

 前出のトム・タジェンダット議員は、「英国は『中英連合声明』に定められた義務を負っている。1997年返還当時にやるべきだったが、やらなかったことで、この間違いを是正しなければならない。それはつまり、香港人(ホンコン・チャイニーズ)に完全なる英国市民権を付与することだ」と、政治的決断を呼びかけている。

 BNO旅券保有者の香港人が英国籍の取得にあたって、中国籍の放棄手続を行わなければならない。祖国に返還された香港で、数百万人規模の香港人が祖国の国籍を捨て、旧宗主国であるイギリスから与えられる英国籍を進んで取得する。香港市民の国籍選択、このトップニュースが世界中に発信されたとき、世界トップクラスの大国を志す中国にとっての敗北感は屈辱的であろうし、到底耐えられるものではないだろう。

 では、イギリス人となった数百万人の香港人は香港から退去しなければならないのかというと、まったくその必要はない。彼たち全員が香港永久居民(永住権保有者)でもあるからだ。

 仮に、香港デモの参加者の3人に1人がイギリス人である場合、軍や武装警察の投入どころか、催涙ガスやゴム弾も今のように使えなくなるかもしれない。同じような顔をした市民を香港人とイギリス人に区分することはそう容易ではない。イギリス人のデモ参加者に死傷者でも出た場合、英国総領事館が直ちに介入してくる。国際問題になるのがオチだ。さらに、自国民保護のため在香港英国総領事館の規模が現在の数倍や数十倍にも膨れ上がれば、香港政府と対峙する「第2の政府」、あるいは野党的な存在になり得るだろう。

 トム・タジェンダット議員の香港人への英国籍付与案は、実施可能な仮説として、対中交渉における大きなカードになるだろう。

【私の論評】コモンウェルズの国々は、香港市民に国籍を付与せよ(゚д゚)!

実は、香港人の中にはすでに、外国籍を取得している人も大勢います。香港で生まれ、その後、1997年の香港の中国返還を前にカナダ国籍を取得しながら、仕事の関係で香港に生活している香港在住者が1996年以来最高の30万人(香港人口の4%)に達しています。そうした中、直近の5年間で、約8000人のカナダ国籍の香港居住者がカナダに生活の拠点を移していることがカナダの国勢調査結果から明らかになっています。

これは2014年の民主化を要求した雨傘運動や、最近の「逃亡犯引き渡し条例」の改正案をめぐる大規模な抗議行動などで、中国の脅威が香港に直接迫っていることを危惧する動きとみられます。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じています。

香港人のカナダ国籍取得者は、おもにカナダのブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバー市やリッチモンド市に居を構えています。

ブリティシュ・コロンビア大学で香港の移民問題を研究しているダニエル・ヒルバート教授は「香港の人々のカナダ移民は1990年代に最初のピークを迎えた。その人たちは大半が40~45歳の働き盛りの年代だった。カナダは物価も安く自然も豊かで、生活そのものは穏やかだったが、仕事のチャンスには恵まれないことから、移住した人々の大半は再び香港に戻って、働くようになった」と説明しています。

ヒルバート教授によると、その人たちも今では65歳から70歳と引退の年齢に達しており、静かな環境が必要になっているそうです。

「もともと香港人は、反中国だとか中国共産党が嫌いということだけでなく、政治的な影響が自分の日常生活に入り込んでくることを嫌う傾向が強い。ここ数年の民衆の反中的な運動の盛り上がりとともに、香港から離れようとする気持ちが強くなっていったと考えられる」と分析しています。

また、香港の移民問題を研究している同大研究員のケネディ・ウォン氏も「香港の政治問題は、幽霊のように市民にまとわりついてくる。民主化や政治的自由を要求する雨傘運動や、今回の『逃亡犯引き渡し条例』改正案への反対運動には最高で200万人の市民がデモに参加するなど広範な香港住民を政治運動に巻き込んだ。多くの香港住民は、生活に余裕がある階層ほど、香港は住みにくくなったと考えているのではないか」と指摘しています。

香港が英国から中国に返還される直前には、多くの香港人が、英国やカナダ、オーストラリアや南アフリカなどに移住してそれぞれの国の「パスポート」を取得していました。英国は返還前に大盤振る舞いで香港人に上の記事にもあるとおり、BNO旅券を発行していましたが、カナダ、オーストラリア、南アフリカなど一部のコモンウェルスの国(旧英植民地)では、一定期間移住して暮らせばパスポートが発行されました。そのため、数年それらの国で暮らしてから香港に戻ってきたり、97年直前に引っ越していったりということが日常茶飯事だったのです。

香港国際空港のロビーで座り込むデモ隊=8月13日

パスポートを持っているということはイコール、その国の国籍をもっているということです。ビザなしで居住することはもちろん、投票もできますし、政治家として立候補もできます。何よりも、世界中どこに行ってもそのパスポートを発行した国が守ってくれるということがパスポート保持の最大のメリットです。

日本人が事故や犯罪などに巻き込まれたときに真っ先に安否確認をするのは各国の大使館の義務ですし、昨年のネパール地震の際にはシンガポール政府は航空機をチャーターして希望するシンガポール人を全員、帰国させました。

中国返還前の香港人が将来を不安に思い「何が起こっても自分と家族を守ってくれる国の国籍がほしい」と考え、仕事を辞めるなど相応の覚悟で移住した気持はよくわかります。実際、昨年にはスウェーデン国籍の香港書店主がタイで中国政府によって拉致され、現在も明らかに冤罪とわかる罪で拘束されていますが、スウェーデン政府は現在も粘り強く中国政府と交渉を続けています。

英国も、希望する香港人にはBNOをパスポートに変え、国籍を付与るというのは、良い考えだと思います。カナダ国籍を有する香港人が4%は存在するとはいいながら、これらは高齢の人たちが多いです。おそらく、今回の香港のデモにもあまり参加していないでしょう。

しかし、英国ならびに、カナダ、オーストラリア、南アフリカなど一部のコモンウェルスの国々(旧英植民地)が、国籍取得の条件を緩めてかなりの数の香港人を外国籍化すれば、香港の将来を左右する多くの若者が外国籍を取得することになるのではないでしょうか。

これが実現すれば、香港の問題など英国及びコモンウェルズの国々(旧英植民地)が関与しているというのが何よりも力になると思います。

何しろ英国連邦の国々は今でも、多いです。


これらの国々が、香港人に国籍を付与し、自国民である香港人に不利益が生じた場合、逐一それに関与した場合、中国はかなりやりにくくなるはずです。

英国の新首相ボリス・ジョンソン氏はどう考えるでしょうか。私としては、EUを離脱した後も英国のプレゼンスを発揮するためにも、是非これを実行してほしいと思います。

香港人への英国連邦諸国の国籍付与案は、実施可能な仮説として、英国だけの国籍付与よりも、対中交渉におけるはるかに大きなカードになるでしょう。

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2017年7月20日木曜日

完全に終わる日銀の旧体制 経済の状況認識読み違えた時代錯誤な提案なくなるか―【私の論評】反アベノミクス的な経済政策が実施されれば『失われた20年』の再来に(゚д゚)!

完全に終わる日銀の旧体制 経済の状況認識読み違えた時代錯誤な提案なくなるか

佐藤健裕氏(左)と木内登英氏(右)
 19、20日の日銀金融政策決定会合で、木内登英、佐藤健裕両審議委員の最後の会合となる。

 特に木内氏は、現在の黒田東彦(はるひこ)総裁体制で反対票を投じてきたことで知られている。

 速水優総裁時代に審議委員を務めた中原伸之氏も、やはり反対意見を出していたが、それは量的緩和など、当時の日銀が採用していなかった政策を主張し、時代を先取りしていたもので、意義あるものだった。

 木内氏は、現在の日銀が実施している金融政策では副作用が大きいとして、年間80兆円程度のマネタリーベース増加額を45兆円程度へ減額すべきだと主張してきた。

 月刊資本市場2016年1月号の「『量的・質的金融緩和』再考」によれば、その前提として、「需給ギャップが2013年末頃にほぼ解消され、その後も概ね中立的な状態が維持されていること」をあげ、「金融機関の収益悪化が金融システムの不安定性に繋がりうるリスク」「金融政策の正常化の過程での金利上昇リスク」「財政ファイナンスとの認識が高まる可能性」「金利による財政規律メカニズムが損なわれるリスク」「国債購入の持続性と金利の安定性のリスク」を副作用としている。

 まず需給ギャップ(実際の国内総生産=GDP=から完全雇用状態の潜在GDPを引いたもの)の状況認識が間違っている。需給ギャップがほぼ解消されたように見えたのは、14年4月からの消費増税で需要が減少したからで、木内氏は需給ギャップを過大評価した。実際、インフレ率は14年5月に見かけ上の消費増税効果を除き1・6%となったのをピークとして、その後急速に低下した。

 なお、需給ギャップは、自然利子率(完全雇用のもとで貯蓄と投資をバランスさせる実質金利水準)や構造失業率(これ以上下げられない完全雇用水準)と密接な関係がある。需給ギャップを過大評価すると、自然利子率は過小評価、構造失業率は過大評価となる。いずれの場合でも、まだ金融緩和すべき時に引き締めるべきだと間違ってしまう。その結果、誤った金融引き締めを提言し続けたわけだ。

 佐藤氏も木内氏と似ている。日本経済の潜在成長率から考えても2%のインフレ目標は高すぎるとした。これも潜在GDPを間違って捉えたもので、木内氏の需給ギャップに関する認識の誤りと同じである。この誤った認識から、インフレ目標2%は無理だと主張していた。

 日銀は安倍晋三政権とインフレ目標2%を約束した。佐藤氏を任命した民主党政権との関係からいえば問題なしであっても、安倍政権になってからも本当に無理だと思うのなら、その時点で審議委員を辞めてもよかったのではないか。

 木内氏と佐藤氏が退任すれば、民主党政権時代に任命された人はいなくなる。その時代に任命された人はこれまで、需給ギャップの過大評価、自然利子率の過小評価、構造失業率の過大評価などで現実と違っていた。しかし、これからの日銀はこれらに染まっていない人たちになる。時代を先取りする提案はあっても、時代錯誤な提案はないはずである。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】反アベノミクス的な経済政策が実施されれば『失われた20年』の再来に(゚д゚)!

確かに、木内登英、佐藤健裕両審議委員が日銀審議委員から姿を消せば、上の記事で、経済の状況認識読み違えた時代錯誤な提案なくなるかもしれません。

この両者に関しては、上の記事で高橋洋一氏が指摘するように、いつも時代錯誤というか、頓珍漢な主張を繰り返してきました。

その最たるものは、2014年10月31日に日銀が発表したハロウィーン緩和と呼ばれる、追加金融緩和です。以下にこの時の産経新聞の号外の紙面を掲載します。


これは、当然のことです。2014年4月から、あの悪しき、今では完璧に大失敗だったと誰もが認める8%増税が行われました。そうして、増税推進派が主張していたように、日本経済への影響は軽微という、予測とは裏腹に、導入当初から日本経済は低迷しました。このような状況に対応するため、日銀が追加金融緩和をするのは当然といえば当然でした。

しかし、日銀の審議会がこれを決定するにおいては、4名の反対者がいました。ちなみに、審議会の正式名称は、政策委員会であり、これは総裁、副総裁(2人)および審議委員(6人)で構成されます。これら9人のメンバー(政策委員会委員)は、いずれも国会の衆議院および参議院の同意を得て、内閣が任命します。

4名の反対派は以下の4人です。これらは、全員が民進党政権時代に審議員に任命された人々です。


この委員会において、4人が反対したのですから、委員会のメンバーは9人ですから、あと一人が反対していたら、真っ二つに割れたわけで、この追加金融緩和は危ういところで決まったということです。

もしこのハロウィーン緩和が見送られたとしたら、どうなっていたかといえば、これは当初から予想されたことですが、当然のことながら、現在のかつてないほどの雇用状況の良さは実現されおらず、かなり雇用状況が悪化しており、アベノミクスの金融緩和は完璧に頓挫していてとんでもない状況になっていたことでしょう。

増税による経済への悪影響もさらに大きなものになっており、おそらく日本は完璧に再度デフレに突入していたことでしょう。

市場はこの状況に失望し、2015年の安保法制審議のときには、安倍政権はかなり支持を落としていたことでしょう。

これに関しては、一昨日のブログにも、この追加金融緩和によって、安倍政権は2015年にあれほどのネガティブキャンペーンにあいながらも、支持率をさほど落とさなくてもすんだ可能性があるということを示唆しました。

以下に昨日の記事のリンクを掲載します。
加計問題を追及し続けるマスコミの「本当の狙い」を邪推してみた―【私の論評】安倍政権支持率低下の原因はネガティブキャンペーンだけではない(゚д゚)!
2014年10月31日の「ハロウィーン緩和」を発表する日銀黒田総裁
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では市場は安倍総理は本当に、景気を回復できるのか疑心暗鬼になっており、最近の安倍政権の支持率の低下はこれも大きな要因の一つになっていることを掲載しました。以下、その部分を中心に以下に一部を引用します。
実際に、消費増税が行われた14年以降においては、政府が実施してきた中で、消費増税の先送りや毎年の最低賃金引き上げ、そして昨年度末の補正予算ぐらいが「意欲的」な政策姿勢だったという厳しい評価もできます。2%のインフレ目標の早期実現を強く日銀に要請することはいつでもできたはずです。ある意味で、雇用の改善が安倍首相の経済政策スタンスの慢心をもたらした、ともいえます。
さらに、自民党内には、安倍首相と同じリフレ政策の支持者は、菅義偉官房長官はじめ、自民党内にはわずかしかいません。ただし、二階派は、プライマリーバランスは先送り、景気が先としています。しかし、石破氏はもとより他の派閥は全部増税派です。 
そうして、次の日銀の正副総裁人事が来年の3月に行われるはずですが、そのときに最低1人のリフレ政策支持者、できれば2人を任命しないと、リフレ政策すなわちアベノミクスの維持可能性に赤信号が点灯することになります。 
このリフレ政策を支持する人事を行えるのは、安倍首相しかいないのです。それが安倍政権の終わりがリフレ政策のほぼ終わりを意味するということです。 
もちろん日銀人事だけの問題ではありません。仮に日銀人事をリフレ政策寄りにできたとしても、政府が日銀と協調した財政政策のスタンスをとらないと意味はありません。デフレを完全に脱却するまでは、緊縮政策(14年の消費増税と同様のインパクト)は絶対に避ける必要があります。デフレ脱却には、金融政策と財政政策の協調、両輪が必要なのです。 
ここにきて、直近では財務省人事や産業経済省の人事などで、増税派が順調に出世したことなどから、市場関係者には安倍政権は経済を立て直しができないかもしれないという、ある種の失望感が生まれるようなっていたのだと思います。
この記事では、「次の日銀の正副総裁人事が来年の3月に行われるはずですが、そのときに最低1人のリフレ政策支持者、できれば2人を任命しないと、リフレ政策すなわちアベノミクスの維持可能性に赤信号が点灯することになります」と掲載しました。


日銀は来年4月にかけて、黒田東彦総裁ら5人の政策委員が相次いで任期切れを迎えます。現状の新議員がすべてまともだったにせよ、5人もの委員が入れ替わるのですから、確かに1人のリフレ政策支持者で、既存の4人とあわせて何とかリフレ派が多数派ですが、中には中立的立場の人も1人(中曽根氏)いるのでこれでも安心できません。やはり、少なくとも2名が金融緩和に肯定的な人である必要があります。
こう考えると、確かに来年の4月までは、「完全に終わる日銀の旧体制」ということはできるとは思いますが、4月以降に金融緩和に否定的な人々が日銀の審議委員の多数派になれば、これは崩れるわけです。ただし、安倍政権が崩れない限り、安倍政権は金融緩和を支持する人事を行うことになるので、これは何とかなるものと思います。

そうして、現在安倍政権がおこなわなけばならないのは、財務省とのガチンコ対決に勝利を収めることです。

安倍政権では、経産官僚が力を持ち、かつて「最強官庁」と呼ばれた財務省は冷遇されてきました。安倍首相や菅義偉官房長官は消費税増税に消極的ですが、財務省は麻生太郎副総理兼財務相とともに抵抗してきました。現在の安倍政権の支持率が低下している状況は、財務省にとっては主導権奪還の好機です。

そうして、石破氏を含めポスト安倍の面々は、いずれも財務省を筆頭とする官僚依存の傾向が強いです。2度の増税延期で財務省と闘ってきた安倍首相との違いは大きいです。

安倍政権としては今後、支持率下落を受けて「経済重視に回帰する」とみられます。ただ、経済政策は今後の政治スケジュールとも密接にかかわってきます。

秋の臨時国会では、経済政策の強化のために補正予算が打ち出されることになるでしょう。

現状では、有効求人倍率や失業率、企業業績は改善していますが、14年4月の消費税率8%への引き上げ後の消費低迷の悪影響が尾を引き、デフレの完全脱却や2%のインフレ目標実現にはほど遠い状況です。日銀の量的緩和継続とともに、財政面での手当ても必要になります。

安倍政権の『20年の憲法改正』という目標から逆算すると、憲法改正の是非を問う国民投票は、18年後半に衆院選とのダブルで実施される可能性が高いです。19年10月に予定されている消費税率10%へ増税の是非も争点となります。

最善の手は「消費税の増税に対して消費税の減税を行なうこと」です。次善の手は「増税によって税収が入ったら、そのお金をすべて国民に撒くこと」です。冗談だと思う人もいるかもしれないが、ロジックでいえば当然で、増税しなかったのと同じ効果を与えるからです。

もちろん増収分を国民に撒くといっても、財政支出一辺倒だと供給制約が発生してしまいます。公共事業に予算をつけても、事業を行なう技能をもった人や組織には限りがあるからです。さらに減税や追加の大幅金融緩和に踏み切るなど、ダメージを緩和するための第三、第四のサブシナリオを考えることもできます。

石橋と小泉進次郎氏
これからも増税をめぐり、安倍政権の周囲でさまざまな画策が生じるはずです。財務省としては、石破氏や小泉進次郎氏のように、さらに自分の思いどおりになる与党議員を探して懐柔することでしょう。地方議員には「もし増税が潰れたら予算づくりもやり直しになってしまう。あなたの地元の要望も通らない」と脅しをかけ、経団連には「消費税増税なくして法人税減税なし」ということでしょう。

しかし、そもそも、税率と支出が結び付いて予算が青天井になる現行の仕組みは異常です。法人税は個人の所得税と重複する「二重課税」ですから、もともと無駄な税金です。マイナンバーなどで個人の所得をきっちり捕捉して増収を図るのが王道のはずです。

いずれにせよ、こうした動きを誰より注意深く見ているのは安倍総理自身です。マスコミは財務省のプロパガンダやとんでもエコノミストの観測気球ばかり流さず、ロジックとファクトに基づく報道をすべきでしょう。

18年9月には自民党総裁の2度目の任期満了を迎えます。『反安倍勢力が総裁選で勝つ』『衆院選で与党が敗れる』『国民投票で過半数に届かない』のいずれかになれば、10%への消費税増税が実施されることになるでしょう。これまで2度増税が延期されている財務省側にとっては好都合なことです。

反アベノミクス的な経済政策が実施された場合も、日本経済は、再び深刻なデフレに転落し、『失われた20年』の再来となるでしょう。歴代政権でも最高レベルになっている雇用環境も次第に悪化していくようになります。失業率が上昇すれば、自殺率が上昇し、強盗などの犯罪も増えるという統計もあり、社会不安が高まるのは避けられないことになります。

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2017年6月26日月曜日

【米韓首脳会談】トランプ烈火に油“北朝鮮と五輪”提案…「4悪」目は文大統領自身か 「おとぎの国」住人との声も―【私の論評】日本をはじめとする諸外国に振り回され続ける韓国の政権は短命に終わる(゚д゚)!

【米韓首脳会談】トランプ烈火に油“北朝鮮と五輪”提案…「4悪」目は文大統領自身か 「おとぎの国」住人との声も

テコンドー世界選手権大会の会場で、北朝鮮の張雄IOC委員(右)
と握手する韓国の文在寅大統領=24日、韓国中部、茂朱
 米韓首脳会談が29日、米ワシントンで始まる。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、さすがに初外遊先を平壌でなくワシントンとし、米韓の絆をアピールする方針のようだが、側近のトンデモ発言や米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備の遅れなど、「3大悪材料」(韓国紙)といわれる事態が出来。大統領府スタッフは直前まで火消しや釈明に追われたが、文氏自身が平昌冬季五輪での南北合同チーム結成まで提案する始末。自国民が非業の死に追い込まれ、北朝鮮に激怒するトランプ米大統領の目にはそれこそ「4大悪材料」と映る恐れもある。

 ■「米韓軍事訓練縮小」を一方的に提案

 「学者として話しただけだ。それが大きな問題になることだろうか」

 米国から帰国し、空港に到着した直後の21日、記者団にこう言い放ったのは文大統領の側近で統一外交安保特別補佐官の文正仁・延世大教授。

文大統領の側近で統一外交安保特別補佐官の文正仁・延世大教授
 文教授はワシントンで16日開かれたセミナーで「北朝鮮が核・ミサイル開発を凍結すれば、米国の韓半島(朝鮮半島)での戦略資産や米韓軍事訓練の縮小も可能だ」との持論を披露した。

 米国側はもちろん激怒。韓国大統領府も文教授に厳重警告をし、発言から50時間後に関係者が記者に弁明の背景説明を行った。

 しかし、この場でも「文教授と文大統領の考えは違うのか」との質問に明確な説明がされなかったことから、「2人の考えはそれほど変わらないのだ」との米国の疑念を深めてしまい、特別補佐官の地位を返上するよう求める声も韓国内で出ているという。

 そもそも軍事訓練の規模を米国側の同意なしに変えることは不可能であり、対北配慮のための「縮小」は地域に何のメリットももたらさないことを政権関係者のうち果たして何人が理解しているのだろうか…。

 ■おとぎの国の大統領

 韓国紙朝鮮日報によると、他の2つの悪材料は、THAAD配備をめぐる問題と米国要人冷遇説だ。

 文政権がTHAADに反対する中国の顔色をうかがっているため、配備が遅れたり配備計画をめぐる両国の認識に大きなズレが出たりしていることにトランプ大統領は「激怒した」と伝えられている。

 米国要人冷遇説は、共和党のマケイン上院議員の訪韓予定をめぐるもので、「訪韓が大統領府の冷遇で取り消された」との日本メディアの報道に韓国の大統領府側は次のように反論した。

共和党のマケイン上院議員 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 「大統領との昼食会の約束を設定したが、マケイン氏側から改めて調整してほしいと要請があり、さらに訪韓が難しくなったと伝えられた」

 3月に訪韓したティラーソン米国務長官との夕食会問題では、「疲労のために夕食会を長官が断った」との韓国メディアの報道を「もともと韓国側から招待がなかった。それを隠すため韓国側が自国メディアにそう説明した」(米政権側)と暴露される一件があり、そのときの不手際をほうふつとさせる。

 しかし、これらの3悪をさらに上塗りしそうなのが文氏の北発言だ。

 「平昌五輪に北朝鮮選手団が参加すれば、人類の和合と世界平和推進という五輪の価値を実現するのに大きく寄与する」

 北を正統なパートナーとし、国際社会で花を持たせようとしている。

 米社会には、北朝鮮に拘束された大学生、ワームビア氏の非業の死で北朝鮮に対する怒りが沸騰している。異母兄を外国の空港で殺害した疑いも濃厚な金正恩政権になぜ手をさしのべようとするのだろう。

 文氏はまさに、「北朝鮮との関係にファンタジーを夢想する」(武藤正敏元駐韓大使著「韓国人に生まれなくてよかった」 http://www.goku-books.jp/book/b287625.html )「おとぎの国の王子様」(同)といえるだろう。


【私の論評】日本をはじめとする諸外国に振り回され続ける韓国の政権は短命に終わる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では「文氏自身が平昌冬季五輪での南北合同チーム結成まで提案する始末」とありますが、これには後日談があります。

韓国を訪問している北朝鮮の国際オリンピック委員会(IOC)委員、張雄(チャン・ウン)氏が、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が提案した2018年平昌冬季五輪での南北合同チームの結成と南北合同入場行進に難色を示していたことが26日、明らかになっています。国際世論を無視して親北路線を鮮明にしている文在寅政権ですが、その北朝鮮側からはしごを外された格好になりました。

北朝鮮の国際オリンピック委員会(IOC)委員、張雄(チャン・ウン)氏
文氏は24日、中部の茂朱(ムジュ)で開幕した世界テコンドー選手権大会の開会式で行った演説で、「平昌五輪に北朝鮮選手団が参加すれば、人類の和合と世界平和推進という五輪の価値の実現に大きく寄与する」と述べ、南北合同チームと開会式での合同行進の実現を訴えました。

20日には都鍾煥(ト・ジョンファン)文化体育観光相が、一部競技の北朝鮮での分散開催などを検討していることを表明。IOCは「五輪ムーブメントは常に橋を懸けるためにあり、壁を築くものではない」などとコメントしていました。IOCの前向きな態度を受けて、文氏は張氏と握手をかわし、直接、北朝鮮側にも協力を求めました。

ところが、韓国紙、東亜日報(日本語電子版)によると、張氏はそれからわずか2時間後に、南北合同チームや南北合同行進について懐疑的な見方を示したというのです。

張氏は開会式後に開かれた晩さん会の前に、東亜日報が運営するケーブル&衛星チャンネル「チャンネルA」のインタビューに応じた際、「スポーツの上に政治がある。政治的環境が解決されなければならない」と主張しました。

その上で、文在寅政権が南北のスポーツ交流を望むならばまず、2010年3月に発生した北朝鮮による海軍哨戒艦「天安」撃沈事件を受けて、韓国が取っている独自の対北制裁措置「5・24措置」などを解除しなければならない、と強調したといいます。

文氏は演説で、「敵対国だった米国と中国が『ピンポン外交』で平和を成し遂げた。茂朱で新羅と百済が一つになったように、今日ここで南北が一つになり、世界が一つになることを願う」とも述べました。

これについても張氏は、「ピンポン外交が中米関係を改善したというが、政治的地盤が固まったため。政治に五輪のようなものを引っ張り出してはならない」とバッサリ。スポーツの政治利用をいとわない北朝鮮から、逆にいさめられるという想定外の展開になってしまったのです。

張氏は23日に韓国入りした際、記者団に対し、「私は(南北合同チームなどの)可否を議論する立場にない」と語りました。しかし張氏は、2015年に独誌シュピーゲルで「多才な外交官」「西側諸国で話すことができる唯一の公式な北朝鮮人」などと報じられた人物。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とも非常に親しいとされています。

そうした張氏の態度は、少なくとも現時点で、金正恩氏が南北合同チーム結成に同意していないことをうかがわせます。もしくは、北朝鮮側が、平昌五輪を「5・24措置」などの解除を引き出すための“道具”に利用しようとしている可能性も否定できません。

結局、文在寅大統領は、外交に関しても全く疎いと言わざるを得ません。このブログでは何度か、文在寅大統領の経済対策のまずさについて述べてきました。今の韓国経済は、何をさておいても、量的金融緩和と積極財政を間髪を入れずにすべきであるにもかかわらず、文在寅大統領はそんなことは思いも浮かばないようです。

外交も、安全保証も、経済も駄目ということになれば、何一つ良いことはありません。本当に韓国民はとんでもない酷い大統領を選んでしまいましした。これなら、朴槿恵も経済も安全保証も、外交も駄目だったとはいえ、文在寅よりは、数段ましだったかもしれません。

おとぎの国の大統領・文在寅
5月10日の大統領就任から、まだ二ヶ月もたっていないのに、もう文在寅は馬脚を現してしまいました。米国を「立会人」とし、世界が注目する中で結んだ慰安婦問題をめぐる日韓合意は、条約にも相当する国際約束ということも全く文在寅の頭の中にはないようです。

韓国は今、まさに自分で自分を難しい状況に追いやっているとしか思えません。中国が嫌がっていた米国の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の導入は決めたものの、やはり中国に配慮して本格配備は先延ばしにする。一方で隣国、日本には無意味な歴史戦を仕掛けてきます。雇用・経済がかなり悪化しているというのに、打つべき手を知りません。

安全保障面でのふらふらと腰の定まらぬ態度は、同盟国である米国の怒りを募らせる半面、中国の満足にもつながりません。日韓合意軽視は間に立った米国の面子をつぶした上、日本との関係悪化は韓国経済を冷え込ませるだけです。韓国の束の間の成長は、日本から先端技術に関わる部品を輸入してそれを組み立て、海外への輸出に成功したことによるところにが大きいです。そのこともすっかり忘れているようです。これでは、喜ぶのは北朝鮮ばかりです。

韓国は盧政権時代も朴槿恵(パク・クネ)前政権当時も、米中を同等に扱い、その仲介役を果たす「東アジアのバランサー」を目指した揚げ句、どちらからも冷遇される結果を招いてしまいまし。八方美人的な姿勢は、誰からも信頼されません。文政権もその轍(てつ)を踏むつもりのようです。

韓国外交では、定見がなく勢力の強いものに従う「事大主義」と、世間を知らぬまま自らの実力や地位を過信する「夜郎自大」の2つの「ジダイ」が目立つ。この傾向が続く限り、東アジアは安定しないことでしょう。

中国映画『夜郎王』のDVD
文在寅は経済・外交・安全保障の面で定見を持ち、まずは諸外国に振り回されることなく、自らの考え、自らの力でこれらを実行すべきです。反日も、日本を振り回しているようにみえながら、結局日本に振り回されているというだけのことです。

韓国が、経済・外交・安全保証の面で安定していれば、1990年代以前のように表立った反日などしないはです。安定していないから、諸外国に様々な形で秋波を発信し、結局諸外国に振り回されるしかないのです。結局反日だって秋波の一種に過ぎないのです。

特に最近の韓国の経済はそうでした。グローバリズムを標榜し、内需を疎かに(GDPに占める個人消費の割合は、韓国は50%台、日本をはじめとする先進国の大半は60%、米国は70%)したつけがまわって今の韓国経済は地獄の様相を呈しつつあります。特に家計の借金はとんでもないことになっています。

そうして、日本が2013年から金融緩和に転ずると、韓国経済は真っ先に大きな影響を受けました。ウォン高傾向になった、韓国経済は大打撃を受けました。韓国では、これを日本のせいにしようとする動きもありますが、それは大きな間違いです。

日本が異常な円高だったおかげて、韓国経済は発展できた面があったのですが、その間日本は金融引締めによる円高とデフレで日本国民は長い間苦しんできました。日本としては、金融緩和をしてまともなマネタリーベースの水準に戻しただけです。

それに、日本が緩和をして韓国経済が苦しいというのなら、韓国も緩和をすれば良いだけです。にもかかわらず、朴槿恵は緩和をしませんでした。そうして、文在寅もしそうもありません。

これらのことに気付かず、外国に振り回され続ける、韓国の大統領、政府は、結局短命に終わります。私は文在寅政権は、朴槿恵政権よりも短いと思います。

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