グラフ、写真、図表はブログ管理人挿入 以下同じ |
今年7~9月期の国内総生産(GDP)1次速報値は、実質季節調整値で前期比0・54%増、年率換算で2・2%増となった。3四半期連続のプラスで、その水準もなかなかのものだ。ただし、その中身をみると喜べない。
GDPを構成する主要項目別にみると、7~9月期の実質季節調整値で民間消費が前期比0・1%増、民間住宅が2・3%増、民間企業設備が0・03%増、政府最終消費が0・4%増、公的資本形成が0・7%減、輸出が2・0%増、輸入(控除)が0・6%減だった。
住宅と輸出が伸びたのはよかったが、消費は微増、設備投資は横ばい、政府投資はマイナス、輸入もマイナスと今一歩だ。景気という観点では、消費と設備投資が伸びてこそ、ちゃんと成長しているといえるわけで、現状は不十分だ。
2014年4月からの消費増税の影響はかなりなくなってきているが、消費の力強さがないために、景気回復はまだしっかりしていない。そうなってくると、設備投資にも慎重になるのはやむをえず、横ばいにとどまった。(注:太字としたのはブログ管理人)
政府投資も16年度当初予算などを前倒し執行した4~6月期の反動が出て、マイナスになった。内需が弱い反映として輸入のマイナスもある。
その中で、住宅は、住宅ローン金利の低下が購入を促した形だ。金融機関はマイナス金利に猛反対しているが、内需を増加させるということが示された。
輸出が増えたのは、GDP統計で輸出に分類される訪日外国人(インバウンド)消費等に支えられたものだ。
以上のように、個々の項目を見ると、日本の景気が良くなっていると胸を張るのは難しい。
それにもまして、気になるのがGDPデフレーターの動きだ。GDPデフレーターとは名目GDPから実質GDPを算出するために用いられる物価指数だ。消費者物価と卸売物価を合わせたような性質で、その推移によってデフレ脱却しているかどうかの判断基準にもなる。
四半期デフレーターの前年同期比をみると、1年前の15年7~9月期からの推移は、1・7%、1・5%、0・9%、0・7%と徐々に低下し、ついには今期は0・1%低下とマイナスになってしまった。
国内需要デフレーターも1年前からマイナス圏に落ち込んでいる。この数字は1995年頃から、マイナスになっており、これがデフレ転落を示すともいわれていた。
第2次安倍晋三政権誕生後の2013年当初から急速に上昇し、14年からはプラス圏内で推移していたが、今期は13年10~12月期以来、11期ぶりにマイナスになった。つまり、一時デフレから脱却したかに見えたが、再びデフレ突入の瀬戸際になっているのだ。
原油価格の下落は言い訳にならない。原油価格下落によって輸入デフレーターが低下するため、逆にGDPデフレーターの上昇要因となるからだ。
雇用は相変わらず好調だが、GDPについては、積極財政と金融緩和のミックスというアベノミクス再稼働が必要な状況である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】何としてでも、個人消費を改善しなければ、景気は良くならない(゚д゚)!
高橋洋一氏のブログ冒頭の記事において、やはり太字にした部分は、重要です。
2014年4月からの消費増税の影響はかなりなくなってきているが、消費の力強さがないために、景気回復はまだしっかりしていない。そうなってくると、設備投資にも慎重になるのはやむをえず、横ばいにとどまった。
この統計は、総務省「家計調査」のなかの一つです。この統計は、全国約9000世帯を対象に、家計簿と同じように購入した品目、値段を詳細に記入させ、毎月集めて集計したものです。
増税前後のグラフを見ていただければ、L字型となっていて、数値が底ばい状態であることが判ります。これは反動減などではなく、構造的な減少です。現時点でも、2015年の平均を100とした指数で90台の後半をさまよい続けています。データでみれば一向に個人の消費が上向く兆しはありません。
この構造的な個人消費の低下は、当然のことながら平成14年4月からの消費税増税によるのです。
増税から一年半以上たっても消費税引き上げ直後の“反動減”の時期に当たる4月95.5、5月92.5とほとんど変わらない数字です。特に2015年11月は91.8と増税後最悪を更新しました。
この構造的な個人消費の低下は、当然のことながら平成14年4月からの消費税増税によるのです。
平成14年3月までは、105円出して買えていたものが増税で108円出さなければ買えなくなりました。その一方で、多くの消費者の給料は消費税増税分をまかなえるほど上昇していません。それは以下のグラフをみてもわかります。
名目賃金は、2013年あたりで下げ止まり、若干上昇傾向です。実質賃金は、2015年あたりで下げ止まり16年からは上昇傾向にはあります。ただし、実質賃金は日銀の金融緩和政策によって、雇用状況が改善して、パート・アルバイトや正社員であっても、比較的賃金の低い若年層が多く雇用されると、一時的に下がります。このグラフだけ見ていていては、現実を認識できません。
そこで、例を挙げると、たとえば昨年2015年の春闘で、日産自動車は大手製造業最高の賃上げを記録しました。そのベースアップ(基本給の賃上げ分)を含む1人当たり平均賃金改定額は1万1千円、年収増加率は3・6%。しかしベースアップ分だけなら、月5千円で、2%を切ります。他にも物価上昇が起きている中で、これでは消費増税増加分すらまかなえません。日産という自動車大手最高の賃上げでもこういう状況でした。
日本中のサラリーマンの給料が実質的に目減りをしたのです。これが2014年4月から続く「消費不況」の大きな原因です。
さらに、あまりにも長く続いたデフレの悪影響で貯蓄率も減っています。以下にそのグラフを掲載します。
これだけ、貯蓄ゼロの世帯が増えると、元々消費を控えているのに、増税されれば、当然のことながら、これらの世帯の人たちは、将来不安で一層消費を控えるようになるでしょう。
上の高橋洋一氏の指摘と、このような統計資料を合わせて考えてみると、どう考えても財政政策として、増税をしたのは全くの間違いです。財政政策として実施するなら、まずは増税などせずに、給付金対策をするとか、あるいは減税などをすべきでした。
8%増税は全くの間違いで、これを放置しておけば、景気は良くなりません。日銀による金融緩和によって、雇用はかなり改善しましたが、これも今のままではいずれ悪くなる可能性もあります。
やはり、高橋洋一氏が上記で指摘したように、GDPについては、積極財政と金融緩和のミックスというアベノミクス再稼働が必要です。それも、貯蓄ゼロの世帯を減らすには、中途半端な政策では成就できないでしょう。
日本のGDPに占める個人消費の割合は、60%でありこれが最大です。これを上昇させないかぎり、GDPは上昇しません。政府、日銀とも、これを伸ばすための政策を実行すべきです。特に、積極財政の緊急度は高いです。何をさておいても、なるべくはやく、大型の積極財政策を打つべきです。
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