2019年11月6日水曜日

激化する米議会と中国の台湾外交綱引き―【私の論評】日本がすべきは、習氏を国賓として"おもてなし"することでなく中国の覇権主義に反対の声を上げることだ(゚д゚)!

激化する米議会と中国の台湾外交綱引き

岡崎研究所

 米国と台湾および中国の関係は、1978年12月の米中国交樹立時の「米中共同コミュニケ」さらには、79年4月の米国国内法・「台湾関係法」にさかのぼるものである。以来、米議会議員は、党派に無関係にその時々の米中政府間関係に縛られることなく、台湾を訪問し、台湾の政府関係者とも種々の意見交換を行ってきた。

 しかるに、最近、中国政府は、米議員の訪台に圧力をかけるような挙に出た。米国のショーン・パトリック・マロニー下院議員(民主党)は、10月13日付けのウォールストリート・ジャーナル紙への寄稿文‘Beijing Tries To Bully Congress’で、中国から如何なる圧力受けたかを告発し、これを厳しく糾弾している。

 マロニー議員の寄稿文の要点は次の通りである。



1.中国は10月初め、米議員たちが中国訪問のあと台湾をも訪問する予定があることを理由に、米訪中団に対しビザを出すことを拒否した。

2.中国当局者はマロニーのスタッフに「台湾訪問をやめるならばビザは認められる」と繰り返し言った。これに対し、「台湾滞在のキャンセルは選択肢にない」と明言したところ、中国側は「一つの中国政策」を支持する声明を出すよう求めた。

3.台湾が中国人による民主主義が繁栄し得ると示していることが、北京の脅威であることは疑いない。

4.従来、中国の当局者は賢明にも、米国が台湾関係法の義務を果たすことを受け入れてきた。今回の議員団が受けたような、拙劣で愚かな圧力キャンペーンは、米議会の台湾支持を活発化させよう。

5.来るべき数か月のうちに、私(マロニー)は、米国の台湾への支持を強化する方策を探る。米国は、中国共産党の攻撃性と権威主義に直面し、民主主義と自由のために立ち上がらなければならない。

 本寄稿文は、今回、米国議員たちが中国訪問のあと、台湾をも訪問する予定があることを理由に、中国が米訪中団に対しビザを出すことを拒否したことに対し、強い抗議の意を示すものとなっている。米国議員として当然の反応といえる。

 本件は、習近平体制下で中国の対台湾姿勢がますます非妥協的、独善的になりつつあることを如実に示すものである。特に、中国が米訪中議員団のスタッフに対し、中国の主張する「一つの中国政策」を支持する旨の声明を発出することを要求したというが、これは今までになかったことであり、注目される。

 台湾が自由で民主主義の定着した場所として繁栄していることが中国にとって「脅威」となっているというマロニーの見方はその通りだろう。そして、今日の時点からみて、香港におけるデモとそれへの的確な対応ができない習近平体制の大きな焦りが、近接する台湾問題への強硬姿勢に結び付いているものと思われる。現在、米議会では「香港人権法」とも呼ばれる法案が審議されている。

 マロニーは、上記寄稿文の中で、中国が2018年の台湾の統一地方選挙に際し、各種の情報操作を行ってプロパガンダやフェイクニュースを流し、親北京の候補者に対して違法献金をして介入したことにも言及している。これは特に新しい指摘ではない。しかし、2020年の来る台湾総統選挙でも、同様のことをしようとする兆候があると本論評は警鐘を鳴らしている。蔡英文政権も中国による総統選挙への種々の介入の可能性に対し、極めて強い警戒感を抱いている。

 このような中国の強硬な対台湾姿勢は、米国議会全体として台湾支持をさらに強化させなければならない、とのマロニーの結論を擁護するものとなるだろう。従って、米国への台湾関与を弱めようとする中国の意図とは正反対の結果をもたらすことになると見て間違いないであろう。9月に台湾はソロモン諸島、キリバスとの外交関係を相次いで失ったが、こうした状況を受け、米議会では、台湾の外交関係を守ることを意図する「台北法案」なるものの審議が進んでいる。

【私の論評】日本がすべきは、習近平を国賓として"おもてなし"することでなく中国の覇権主義に反対の声を上げることだ(゚д゚)!

ショーン・パトリック・マロニー下院議員(民主党)

先週、アメリカ国内で香港における民主化デモに対する支援の声が高まったことを受けて、中国外交部の広報官は、NBAを含むアメリカの企業は中国の世論に従わなければいけないと複数回にわたって語りました:
香港のデモ参加者やウイグルの収容所に強制収容されている人々の評判をおとしめるプロパガンダを発信することで、中国政府はナショナリズムの炎を焚きつけ、中国共産党の路線から果敢にも離脱する米国企業をボイコットするよう呼びかけている。

米の企業は、ますます中国市場に依存するようになっているが、企業の利益と米国の核心的な価値観との間でどちらを選択するのか迫られている。米国企業は、しばしば中国の要求に屈する。先週、アップル社はHKmap.liveというアプリをアップル・ストアから削除する決定を下した。このアプリは、香港の人々が投稿した情報により香港警察の動きをトラッキングし共有することができるものだった。–WSJ
マローニー議員は、中国政府がアメリカの議員を入国禁止にしているのは、中国国内の政治に外国が関与するのを阻止しようとする同国の一連の措置の中でも最新の動きであると確信しています。しかし、米国と台湾の間で継続した強力な関係を構築することを命じる1979年台湾関係法の下で、米国には法的義務があることを鑑みると、中国政府は自国の措置を再検討することが賢明であるとマローニー議員は語っています。

「私の代表団に対して行われたような、不器用で恥もなく強制された圧力キャンペーンは、アメリカ連邦議会による台湾支援に活気をもたらすだろう」とマローニー議員は締めくくっています。

先週、トランプ政権は、中国西部でウイグル族を大規模収容していることに関わった中国政府関係者に対するビザの発給を制限すると発表しました。

マイク・ポンペオ米国務長官

米国務省のマイク・ポンペオ長官は、次の声明を発表しています:
合衆国政府は、中華人民共和国に対して、即刻、新疆において行われている抑圧政策を終わらせることを要求する。独裁的に収容された全ての人々を解放し、外国に居住している中国のイスラム教少数派の人々に対して、どういう運命が待っているかも明確にせず中国へ戻るよう強制させる活動を停止せよ。

先週月曜、米商務省のウィルバー・ロス長官は、新疆における人権侵害に関わっているとして新たに28の中国企業をブラックリストに掲載する発表を行った。米国の企業が、これらブラックリストに掲載されている企業に対していかなる米国製の製品を輸出するためには、特別な許可証を申請する必要がある。この28社には、中国の監視カメラ大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)や浙江大華技術(ダーファ)が含まれている
一方、中国政府は、反中国の企業や組織に関わっているアメリカ国民に対して、ビザの制限を厳格化すると発表したと、ブルームバーグ紙が報じています
(新たな)中国のルールでは、米国の軍およびCIAと関係した機関や人権団体のリストを起草し、それらの社員をビザのブラックリストに追加することを命じている。匿名を条件に情報源の人物は語った。

この(ビザの発行)制限を厳格化する措置は、中国政府による懸念が高まっている中で導入された。米国政府とその他諸外国の政府は、このような組織を利用して反中国政府のデモを中国本土と香港の両方で煽り立てていると中国政府は懸念している。また、中国政府がビザ制限を厳格化したことは、アメリカ政府が中国人の研究者や政府関係者達に対してビザの制限を行ったことに対する報復でもある。最初に引用した情報源の人物が語った。–Bloomberg
南太平洋のソロモン諸島とキリバスが先日、台湾との国交を断絶し、中国との外交関係を承認しました。これにより、台湾が外交関係を持つ国は15カ国となり、過去最低の数となりました。

南太平洋は、米国と豪州をつなぐ海上航路に位置します。そのため米国政府内部からは、米軍を置くグアムに近い、南太平洋での中国の軍事活動が活発になることへの懸念が示されています。

安全保障上の問題の他にも、中国が経済力に物を言わせて台湾を国際社会から孤立させようとする動きについても、批判の声が上がっています。

台湾の蔡英文総統が、自国の独立路線を軸にした外交を展開する中、他国との国交断絶が相次いでいる背景には、中国政府による入念な下準備がありました。

2006年4月に開催された第一回の中国・太平洋島嶼国経済開発協力フォーラムで、中国は太平洋諸島諸国に約450億円の借款を表明。第二回では、さらに約1000億円の追加融資を決定しました。

いずれのフォーラムにも当時の首相だった温家宝氏や、副首相の汪洋氏が出席していることから、中国が虎視眈々と南太平洋地域を狙っていたことがうかがえます。

ソロモンを含む太平洋諸島諸国の開発支援は、豪州が伝統的に担っており、貧困問題や経済格差など、国の発展を文字通り「支援」していた。

一方の中国の支援は、インフラ開発を名目とした多額の融資を行います。例えばソロモンの南に位置するバヌアツ共和国では、中国が大規模な港を建設中です。しかし、その過程で相手国に「借金」を負わせ、自国の影響力を増大させています。

こうした経済支援を隠れ蓑にした中国の覇権主義の広げ方は、「債務の罠」と言われ、国際社会で問題視されています。

訪台したプラハ市長ズデニェク・フジブ氏

しかし、中国に対する反発の動きも出始めています。

例えば、チェコ共和国の首都であるプラハの市政府は10月7日、中国・北京市と結んでいた「姉妹都市」関係の解消を決めました。

プラハ市と北京市は、2016年に中国の習近平国家主席がチェコを訪問した際に姉妹都市協定を締結。同協定の第3条には、「台湾は中国の不可分の一部」という中国側の主張が記載されていました。

しかし、民主主義の台湾を支持し、中国共産党による人権侵害を非難してきたズデニェク・フジブ氏が2018年11月、プラハ市長に就任。同氏は今年1月以降、中国当局に対して、台湾を国家として承認しない「一つの中国」に関する項目を削除するよう呼び掛けていました。

これに対し中国は4月、報復措置として、プラハの楽団の中国巡回公演を取り消していました。

中国の圧力により、台湾が国際社会から孤立すれば、沖縄をはじめとした日本への圧力も加速するでしょう。

日本は1972年に中国との国交を樹立した際、台湾と断交しました。しかし、「自由・民主・信仰」という普遍的な価値観を共有する日台が関係を強化することは、中国の覇権主義を抑止することにもつながります。

今の日本がなすべきことは、来日予定の習氏を国賓として"おもてなし"することではありません。プラハの姿勢に学び、中国の覇権主義に反対の声を上げることです。

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