2018年1月24日水曜日

原子力潜水艦が尖閣接続水域に侵入、追尾許す中国の失態―【私の論評】今回の事件の真相は、中国原潜の敗走(゚д゚)!

原子力潜水艦が尖閣接続水域に侵入、追尾許す中国の失態

東シナ海公海上で中国国旗を掲げて航行する潜水艦=12日午後
 2018年の幕が明けて間もない1月11日、尖閣諸島沖の接続水域に中国人民解放軍(以下、解放軍)に所属すると思われる原子力潜水艦が侵入したというニュースが日本列島を駆け巡った。

 駆け巡ったというのは、久しぶりのキーワードのそろったニュースで、メディアが張り切っていることが伝わってきたからだ。

 当初、国際面で展開される程度かなと考えていたら、一面トップのニュースとなったので、少し驚いた。

 それほど大騒ぎする話なのかな、というのが私の第一印象だった。

 というのも中国はもとより経済力に見合った海洋への進出を公言していて、宮古沖や津軽海峡を通って西太平洋に向かうことを恒常的に行うとしていた。つまり、日本のメディアが大騒ぎするほとんどの行為を、中国は隠してもいなければ、むしろ国内では「昨年、中国の太平洋への進出はこんなに進みました」と個別事例を挙げて誇っている。

 そして残念ながら空も海も通過が無害通航であれば日本として、それを妨げることもできない。

 そのため当初、私はこれも海洋進出のための一つのデモンストレーションではないかと考えた。

 紛らわしかったのは潜水艦だけではなく海上で中国海軍の軍艦も同時に接続水域へと侵入したこと。

 実は、日本は2015年の秋以降からとくに尖閣諸島への軍艦の接近ということに神経質になってきていた。これは別名「27度線問題」とも呼ばれているが、要するに中国海軍の“南下”にどう対処すべきか--つまり自衛隊をどう向き合わせるのかという課題--を突きつけられる極めて難しい問題であるからだ。

 つまり、後者であれば単に西太平洋への意思ではなくなるので深刻さは一気にエスカレートすることは避けられない。

 だが、その後の中国側の対応からも軍艦は、原潜をとらえて動いた自衛隊艦の動きを追尾したものとみられ、今回の問題はやはり潜水艦をメインにとらえて間違いないと考えた。

 だとすれば、なおさら日本が大騒ぎする話ではない。むしろ焦らなければならないのは中国だろう。

 そもそも原潜の脅威のほとんどは姿の見えない点にある。どこから攻撃してくるのか分からない存在だからこそ敵にとっての脅威になる。

 その原潜が自ら正体をさらして国旗まで掲げたのだから、ありがたい話であろう。写真1枚撮られるだけで、どれだけの情報が流出するかしれないのに、しっかり追尾までされてしまった。

 こんな中国の失態について、「習近平の指示だ」などと堂々書いている記事もあったが、それならば米軍は習近平に感謝状を贈るべきだろう。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

【私の論評】今回の事件の真相は、中国原潜の敗走(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事、理解しにくい面があります。特に、軍事面にあまり詳しくない方にとってはそうでしょう。なぜなら、確信的なことをはっきり言わないからです。

中国の潜水艦は日本の海上自衛隊に追尾され、お手上げになってしまったということです。挙句の果てには日本の海上自衛隊に潜水艦撃沈のシミレーション訓練に使われた可能性もあります。

それどころか、潜水艦、航空機、艦船などによって利用され、いろいろな場面で何度か撃沈シミレーションで撃沈されたかもしれません。潜水艦だ、航空機だけ、艦船だけ、あるいは潜水艦と航空機の組み合わせや、他の組み合わせ、あるいは全部の組み合わせなど幾通りものシミレーション訓練が行われたかもしれません。

潜水艦のソナー


しかも、下手をすると中国側にもわかるように、模擬魚雷、模擬爆雷などから、最近では漁船でも魚群探知機としても用いられるソナーで音波を発信させ、ソナーが潜水艦にあたりそれが反射して、海自側で確認したときに撃沈シミレーションで撃沈と判定したかもしれません。



潜水艦の場合、何らかの方式で、強烈なソナーを当てられると、乗組員全員がその音を聴くことができる場合もあります。直接聞けるだけあって、その恐怖は尋常なものではありません。何しろ、敵側の強烈なソナーの音響が響き渡るということは、自分たちは補足されていて、その次には魚雷や爆雷その他で攻撃され撃沈されることもありえるからです。(ただし、このあたりは、どの国でも極秘事項なので憶測の域を超えません)

そこまではしなくても、日本の海自は、中国の潜水艦の位置を示しつつ、何らかの方法で退去するように中国の潜水艦の艦長対し、警告を出したのは間違いないでしょう。

無論、中国の潜水艦はそのような警告に従うつもりはないので、様々な回避行動をとったのでしょうが、その都度探知され、どう頑張っても回避できないことがわかり、パニックに陥り精も根も尽き果ててどうしようもなくなって、浮上して中国の旗を掲げたのでしょう。こうすれば、少なくとも撃沈されることはありません。

039型潜水艦の発令所内部
対潜作戦で、潜水艦が浮上して国旗を掲げることは相手に、こっちは攻撃性がないことを告げていることを意味します。つまり、相手の艦隊により強制送還されること認めていることになります。中国の潜水艦は、ここまで追い詰められたということです。

これは機密事項ですから、日本政府が表に出すことはないでしょうが、これによって、中国の原潜は日本の海上自衛隊に対して手も足もでないことが、前から認識されていたのですが、それがはっきりと白日の下にさらされたということです。

軍事的に、潜水艦のステルス性が非常に重要視されているため、中国国内では潜水艦の公海での浮上・国旗掲げの理由をめぐって、推測が飛び交いました。

小野寺五典・防衛相は15日、中国の潜水艦は「商級」と呼ばれる093型原子力潜水艦だとの分析結果を発表しました。中国海軍の新型の攻撃型原潜で、全長110メートル、水中での排水量は6100トン、最大速力は30ノット。また、射程の長い巡航ミサイルを搭載可能だといいます。そうして、これは戦略型原潜ではなく攻撃型原潜です。

093型原子力潜水艦
海外中国語メディアは、「商級」原潜の浮上・国旗掲げは、日本に対して主権を主張しようとした狙いがあるほか、日本海上自衛隊の対潜作戦でやむ得ず浮上し、身元を明かしたのではないかと分析しました。日本の琉球諸島は、米軍のアジア太平洋地域におけるいわゆる中国がいうところの、第1列島線に位置し日米の軍事重要拠点であり、両軍の対潜戦力が非常に強いといわれています。

今回のような出来事は、過去にもありました。それは、漢級原子力潜水艦領海侵犯事件と呼ばれるものです。2004年(平成16年)11月10日に発生した中国人民解放軍海軍の漢型原子力潜水艦が石垣島周辺海域を領海侵犯した事件です。日本政府は、海上自衛隊創設以来2度目となる海上警備行動を発令しました。

中国海軍の改良型漢級原子力潜水艦
日本は、潜水艦を完璧にマークすることには成功したものの、海上警備行動発令のタイミングが遅れ、潜航したまま30分も領海侵犯されながら、その間必要な対処が出来なかったことが問題になりました。

事前に、海上保安庁単独では対応できない水中航行する潜水艦と判明していたにもかかわらず、国土交通省と防衛庁との間の調整と政治決断に時間がかかり過ぎたためです。本件の経過を受け、潜水艦のように明らかに海上保安庁では対応不能な不審船事案に関しては、最初から海上自衛隊が対処するよう運用が改められました。

また、当初より漢級原子力潜水艦とわかっていても最終的な音紋特定に時間がかかり、正式に抗議したのは事件の数日後になったことから、情報確定の困難さ、有事体制発動遅延の可能性が浮き彫りになりました。

しかし、この時の反省から今回は、海上自衛隊が適切に対応したどころが、その対応ぶりがあまりに迅速だったため中国の潜水艦は、浮上して国旗を掲げて航行し、敗走したということです。中国側は、さぞ肝をつぶしたことでしょう。

日米に追いつけ追い越せとばかりに、装備の近代化に血道をあげる中国海軍ですが、近年は空母を就役させたり、"チャイニーズ・イージス"の異名を取る旅洋Ⅱ型駆逐艦を運用するなど、その陣容は近代海軍そのものようにもみえます。

052C型駆逐艦(ルヤンII型/旅洋II型)
ただし、まだまだ中国の海軍力は、日米のには10年以上遅れています。多くの艦艇が、その実は"どんがら"ともいわれています。どんがらとは、外見は立派でも中身はスカスカという意味です。水上艦艇同士の戦いでは日米の敵ではありません。

そこで中国は、「潜水艦戦力の拡充」に活路を求めているとされてきました。中国が尖閣上空を含む空域に防空識別圏を設定してみせたのも、"鉄クズ"と揶揄(やゆ)された空母を就役させてみせたのも、すべて潜水艦部隊を守るためです。

水上艦艇では日米に敵(かな)わない中国は、潜水艦を"決戦兵器"と考えているようです。その虎の子の潜水艦を守るためには、空と海上をわがものとしなければなりません。尖閣周辺で、領空、領海侵犯が頻発していますが、その下には、必ず潜水艦が潜んでいると考えて間違いありません。

中国海軍は、原子力潜水艦(原潜)と通常動力型潜水艦の2種類の潜水艦を70隻近く保有しています。ただし、なかには旧式で使い物にならない明(ミン)型などが多く含まれているとされ、近代艦と呼べるのは、半数程度というのが実情です。

対して、海自の保有する潜水艦総数は20隻(練習艦を除く)です。中国は現状、数にものを言わせた"飽和攻撃"ができる点が有利です。わが国が警戒するべき"質"を備えた中国の潜水艦は、ロシアから購入したキロ型と、これまたロシアの技術を利用した今回接続水域に入った商(シャン)型(原潜)くらいです。

潜水艦に関する情報を公開すると、その能力が判明してしまうことが多いので、公に報じられることは滅多にありません。しかし、その実中国海軍の潜水艦はしばしば日本領海を侵犯しています。尖閣周辺はもちろん、南沙諸島、房総沖の日本海溝周辺にも頻繁に出没しています。

海自および米軍は、こうした中国潜水艦の動向を逐一、捕捉しているといいます。中国の原潜はとにかく音がデカく、静粛(せいしゅく)性(静けさ)が命の潜水艦にあって、ドラを叩きながら水中を進むようなものです。

潜水艦の位置を特定するには、スクリューやエンジンの雑音を用います。海自は艦種ごとに異なる雑音のデータ(「音紋(おんもん)」という)を日夜収集しているといいます。

潜水艦からも音紋データは収集できますが、空には、P-3C哨戒機やSH- 60K哨戒ヘリが、敵潜水艦が海中に息を殺して潜もうと、空から音波を収集するソノブイを海中に投下、さらには磁気測定機を用いて即座に居場所を特定します。海自の対潜哨戒能力は世界一とされていますから、中国の潜水艦は生きた心地がしないでしょう。

SH- 60K哨戒ヘリ
自衛隊の潜水艦部隊は、2週間から、最大3か月程度の演習を繰り返します。演習とはいえ、重要な水上航路に潜み、絶えず情報収集を行っています。潜水艦の"ホットスポット"は、冷戦時代だとソ連太平洋艦隊の潜水艦や水上艦艇が通過する宗谷、津軽、対馬海峡。現在だと、中国対策で豊後水道や浦賀水道に目を光らせなければなりません。その他、作戦海域は東シナ海全域、台湾海峡、フィリピン沖のバシー海峡にまで及びます。


海自の潜水艦基地は横須賀(神奈川)と呉(広島)の2か所です。各国潜水艦が最も激しく蠢動(しゅんどう)しているのは、水深200メートル前後だと言われています。対潜戦は先手必勝、一撃必沈が大原則です。海中で息を潜め、敵艦の動きを察知し、先に魚雷を打ち込むことが唯一の勝機です。

中国のキロ型や商型は、海自の誇る「そうりゅう」型に肉薄する能力を持つとされますが、今回の接続水域に侵入した商型とみられる原潜が、旗を掲げて航行したということは、海自の前に白旗をあげたのと同じです。

これは中国への大きな牽制(けんせい)になったはずです。我々の知らない海中では、日中両国の"鉄鯨(てつげい)"が絶えず睨み合っているのです。

そうして、我が国の対潜哨戒能力や、潜水艦の能力は今のところ中国を大幅に上回ってはいますが、それでも中国側が必至に近代化に邁進していることからすれば、この優位性もいつまで保てるかわかりません。それに、上の地図をみても作戦領域はかなり広いです。やはり、予算を強化して、これから先も優位を保てるようにすべきでしょう。

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