2018年1月15日月曜日

スリランカの港に中国旗 99年間譲渡「一帯一路」債務重く“借金のカタ”に奪われる―【私の論評】日印の逆サラミ戦術は功を奏するか(゚д゚)!



 スリランカ政府は、中国の援助で建設した南部ハンバントタ港を中国国有企業へ引き渡し、現地紙によると今月1日、港湾当局の建物に中国国旗が掲げられているのが確認された。債務の返済に窮したスリランカが“借金のカタ”に海のインフラを奪われた形だ。南アジアで中国と主導権を争うインドは、対抗するように近隣の空港の権益を買い入れる計画を進める。かつての小さな漁村は国同士の思惑がぶつかり合う舞台となっている。

ハンバントタ港は海上シルクロードの再重要地点。一方、同港は
内戦終了時のラージャパクサ前大統領の利権貪る地でもある
 スリランカ国営企業と中国国有企業は昨年7月、スリランカ側が中国側に港の管理会社の株式の70%を99年間譲渡することで合意した。11億2千万ドル(約1240億円)の取引の合意文書に調印し港は先月、中国側に渡っていた。

 そもそも、港は親中派のラジャパクサ前政権時代に着工されたが、約13億ドルとされる建設費の大半は中国からの融資だ。しかし、最高6・3%にも上る高金利は財政が苦しいスリランカにとって「悪夢」とされ、リースの形で中国に引き渡されることとなった。

 現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国に乗った結果、港を明け渡した格好で、国内でも批判が噴出。昨年末からは職を奪われることに危機感を募らせた港湾労働者がストライキを断続的に起こしており、政府は経済効果を繰り返し強調して批判の沈静化に躍起だ。

スリランカのマッタラにあるマッタラ・ラジャパクサ国際空港で、最初の利用者となる
同国の当時の大統領マヒンダ・ラジャパクサ氏の到着を待つ僧侶たち(2013年3月18日)
 こうした動きに対してインドは、ハンバントタ港から約20キロの距離にあるマッタラ・ラジャパクサ国際空港の権益の購入に関心を示している。空港はラジャパクサ前大統領の肝いりで建設されたが、利用客は1日10人ほどに低迷し、一時はコメの貯蔵庫として利用されるありさまだった。インドにとって空港入手による経済的利益があるとは考えにくく、中国のハンバントタ支配に対する牽制(けんせい)の意味合いが強い。

 インド洋では中国の潜水艦航行が常態化するなど、インドにとって座視できない状況が続く。「このままでは、南アジアで中国の好きなようにされてしまう」(インド紙記者)という危機感があるようだ。

【私の論評】日印の逆サラミ戦術は功を奏するか(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にもあるように、インド洋での中国の影響力を削ぐため、インドは世界で最も利用者の少ない空港を買収する計画です。
1日あたり100万人を受け入れるべく設計されたスリランカのマッタラ・ラジャパクサ国際空港は、 同国の当時の大統領マヒンダ・ラジャパクサ氏の肝入りで、2013年に開港しました。ところが、この空港 は全く機能しておらず、1日あたりの利用者はわずか10人ほどです。
それでもインドは共同事業者として3億ドル(約340億円)を出資、一時は米の備蓄庫として使われていたこのスリランカ南部にある約2000エーカー(約800万平方メートル)の空港を、40年間借り受ける予定です。
インドがこの空港を将来的にどう使うのか、計画はよく見えない。航空学校? インドの新しい新婚旅行先? 利益を生む可能性はほとんどないように見える。だが、今回の契約のポイントはそこではない。
インド洋の戦略に詳しいオーストラリア国立大学のデビッド・ブリュースター(David Brewster)氏は、シンクタンクが運営するメディア『The Interpreter』にこう書いています。
代わりに、今回の買収の背景には、中国が運営するハンバントタ港に近いことがあるようです。港は空港から車で30分ほどの距離にあります。
中国がアジアとヨーロッパを結ぶ新シルクロード経済圏構想「一帯一路」を推し進める中、インドやアメリカ、日本は、中国がスリランカの港を軍事拠点として使うつもりではないかとの懸念を抱いています。でも、空港へのアクセスがなければ、その可能性も大きく阻まれます。
ブリュースター氏は以下のように述べています。
海外の海軍拠点はもちろん、物流施設にとっても、人や物に空から容易にアクセスできることが重要だ。海軍の拠点であれば、沿岸の空中監視能力も必要になる。ハンバントタ港に近い空港をコントロールできれば、港の使い道に関しても、インドがある程度の影響力を持つことができる。 
空港抜きでは、中国海軍がハンバントタをその重要な拠点として開発することも難しくなる。要するに、インドは3億ドルで空港を買うことで、中国の海軍拠点をブロックしている。
インド洋で影響力を増す中国を、インドが脅威とみなしていることには根拠があります。

アメリカ国防総省の2015年のレポートは、インド洋で中国のミサイル潜水艦が活動していることを認めています。
その前の年には、スリランカとの関係を強化しており、これはインドに混乱を与えました。中国はコロンボ港に軍艦や潜水艦を入港させ始めました。

中国がおよそ14億ドルを融資して建設が進められていた、スリランカ南部のハンバントタ港。 シーレーン・海上交通路の要衝で、南アジア最大級の港です。中国は昨年から、 この港を99年間にわたって管理運営することで、スリランカ政府と合意する見通しであると公表していました。
スリランカが中国政府にハンバントタ港の運営を正式に譲り渡したのは、最近のことです。中国の国有企業、招商局集団(China Merchants Group) に、11億ドルで99年間リースされます。

この契約により、中国は世界で最も交通量の多い運輸ルートへのアクセスだけでなく、インド洋に面した数十カ国に対するアクセスを手に入れました。これには中国が急速にその影響力を高めているアフリカ諸国の他、人口が多く、市場規模も大きいインド、パキスタン、バングラデシュも含まれます。

フィナンシャル・タイムズは、中国が運営するこの港は「地域全体のサプライチェーンを改善し、より低い価格を実現し、貿易量を大幅に成長させるだろう」と述べています。

「中国による港の買収は、特にインド洋周辺での中国政府の戦略的、経済的な存在感の高まりを懸念するインドの不安を掻き立てた」アジア・太平洋地域のニュースに詳しい雑誌『The Diplomat』の安全保障担当の編集者アンキット・パンダ(Ankit Panda)氏はこう書いています。

インドでは、ハンバントタ港の買収は、中国の海上交通路戦略「真珠の首飾り」の一環と捉えられています。

1つ1つの真珠は、中国の軍事資産やインド洋やアジア太平洋の同盟国を意味し、それをつなげることでインドを取り囲もうというものです。マレーシアやパキスタン、バングラデシュ、ミャンマーもこれに含まれます

中国は昨年の夏、初の海外軍事基地をインドのすぐ西に位置するジブチに設置しました。

ジブチ(Djibouti)の地図上の位置
このジブチにおいては、日本政府は、昨年アフリカ東部ソマリア沖アデン湾での海賊対処活動を展開するためジブチにある自衛隊の活動拠点に隣接する土地をジブチ政府から新たに借り上げることで合意しました。日本政府関係者が昨年11月18日、明らかにしました。周辺国の治安悪化などに備え拠点を拡大し、邦人保護施設を整備することなどを検討します。

借り上げたのは現在の活動拠点に隣接する約3ヘクタールの土地で、日本、ジブチ両政府間で交渉を進め、11月に手続きを済ませました。
政府は平成23年からジブチ国際空港北西地区の約12ヘクタールの敷地を借り上げて自衛隊初の本格的な海外拠点として運用しています。海賊対策に従事する航空機の駐機場や司令部庁舎、隊員の宿舎などを設置。安倍晋三首相は25年に同施設で隊員を激励しました。

25年ジブチで自衛隊員を激励する安倍首相
このような、インドによるほとんど乗降客のいない空港の取得、日本によるジブチの土地取得など、当然のことながら、中国を意識してのことです。

そうして、このような日印の行動は、私は中国のサラミ戦術に対抗する逆サラミ戦術であると思います。

この逆サラミ戦術とは、私の造語です。これについては以前このブログに掲載したことがあります。
中国、印北東州で道路建設 インド側反発「インフラ整備で領有権主張する常套手段」―【私の論評】中華サラミ戦術には逆サラミ戦術で対抗せよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国のサラミ戦術と逆サラミ戦術に関する部分のみを以下に引用します。
サラミ戦術(サラミせんじゅつ、ハンガリー語: szalámitaktika [ˈsɒlɑ̈ːmitɒktikɒ] サラーミタクティカ)とは、敵対する勢力を殲滅または懐柔によって少しずつ滅ぼしていく分割統治の手法です。 別名サラミ・スライス戦略、サラミ・スライシング戦略ともいわれます。
私はサラミ戦略に対しては、「逆サラミ戦略」という戦略を採用すべきだと思います。 それは、さきほどのバス停を動かした婆さん(ブログ管理人注:自分の家の入り口より10mくらい離れたバス停を毎日5mmずつ移動して、自分の家に持ってきた婆さんの話)のたとえでいえば、バス停が動いたと認識した段階で、それを元に戻すのです。元に戻すにしても、いきなり元の位置に戻すというのではなく、これも一度に5mm程度を戻すのです。 
これは、婆さんが毎日5mm動かしているとすると、ある時点で、婆さんが日々5mm移動しても、バス停は全く動かなくなることを意味します。そうすると婆さんは、動かしても無駄だと思うようになり、諦めてしまいます。 
諦めた後でも、毎日5mmずつ動かすのです。そうして、元の場所に戻ったら動かすのをやめるのです。このやり方を「逆サラミ戦略」とでも名付けたいと思います。
要するに、中国がサラミ戦術で何かをやりはじめたら、それをに対抗する措置もこちら側も必ずとるということです。中国がスリランカの港を手に入れたら、インドは空港を手に入れる。中国が、ジブチに海軍基地をつくれば、日本はジブチの基地を拡充するなどのことを必ずするのです。

そうして、中国のサラミ戦術のように、いきなり軍事基地化などするのではなく、十年、二十年、長ければ数十年もかけてそれを少しずつ実行するのです。1年、2年ではあまり目立った変化ではないのですが、20年もすれば大きな変化になっているという具合に実行するのです。

とにかく、中国が何かをすれば、日印だけではなく、日米中露印豪ASEAN諸国などが合同で、これに対してして中国のサラミ戦術のように対抗策を長年かけてすこしずつ実行するのです。

そうして、これは、中国が一見南シナ海で成功しているようにみえる、サラミ戦術のように、徐々にボディーブローのように効いてくることでしょう。

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