河野氏と王毅氏(左から)の外相会談でも中国の苦境が見て取れた=28日、北京 |
安倍晋三政権が、中国への外交攻勢を強めている。28日の日中外相会談では、中国の原子力潜水艦が今月中旬、沖縄県・尖閣諸島の接続水域を潜航したことに、河野太郎外相が強く抗議した。いつもなら猛反発するはずの中国だが、逆に日中友好強化を進める方針を確認した。中国の不可解な変化には、外交的に「八方塞がり」となっていることに加え、経済的に外貨不足に陥り、日本への接近を強めているとの見方が浮上している。
河野氏は28日、北京の釣魚台迎賓館で中国の王毅外相と会談した際、中国潜水艦による暴挙について厳重抗議した。
通常ならば、日本に猛反発してくる中国だが、この日は違った。
王氏は、尖閣諸島が中国の領土だとする見解を示しながらも、両外相は、東シナ海での偶発的衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の早期運用開始に向け努力することを確認したのだ。
不自然だったのは王氏だけではない。
チャイナセブン(共産党中央政治局常務委員)ナンバー2である李克強首相も「中日関係は改善の勢いが表れ始めているが、寒いところも残っている。平和友好条約締約40周年を、真に中日関係が正常発展の軌道に向かうチャンスにしなければならない」と、河野氏との会談で語った。
対日強硬路線を維持してきた「中華外交」は影を潜め、中国の融和姿勢が目立った。背景には、米国やインド、北朝鮮など、中国外交が「見かけ以上に四苦八苦している」(北京の外交筋)現状があるとの見方がある。
中国が最重要視する対米関係では、米国防総省が今月、「国家防衛戦略」を発表し、中国を「現状変更勢力」と位置づけた。17日には、南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)の近接海域で、ドナルド・トランプ米政権が「航行の自由」作戦を実施した。米国が対中戦略を転換した一環として受け止められている。
朝鮮半島でも、中国の優位性は失われつつある。
金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮は保護者的存在である中国を無視するかのように、「核・ミサイル開発」に邁進(まいしん)している。
中国に接近しているかのように見える文在寅(ムン・ジェイン)大統領の韓国も、米国の顔色も伺う玉虫色の外交でどっちつかずだ。
歴史的に国境をめぐって摩擦の続く大国・インドとの関係も好転していない。インド、中国、ブータンの国境付近のドクラム地区では昨年6月、中国軍が道路建設に着手したことを契機に中印両軍のにらみ合いが発生し、1962年の国境紛争以来、「軍事衝突の恐れが最も高まった」とも指摘されている。
中国が経済的苦境から、日本に接近してきたという見方もある。
国際政治学者の藤井厳喜氏は「中国経済は現在、外貨不足に苦しんでおり、特に米ドルが厳しい。このため、外国企業の中に共産党の支部を作って介入し、日本企業が中国でもうけても窓口規制で送金させないという現象も起きている。『日本なら外貨を取りやすい』とみて、歩み寄りを見せているのではないか」と指摘する。
前出の王氏は日中外相会談で、安倍首相の訪中、習近平国家主席の来日についても、「着実に進めていくことの重要性」を改めて確認したが、見せかけの友好ムード演出に過ぎない可能性もある。
日本は今後、中国にだまされないため、何をしていくべきなのか。
藤井氏は「中国に一時的なおべっかを使っても、真の友好関係は築けない。自国の政治・外交方針を明確に示すべきだ。(中国潜水艦や艦船の侵入を阻止するため)尖閣諸島に自衛隊を置いた方がいい。それができないなら海上保安庁の常駐施設でもいい。世界に対して、『尖閣は日本の領土である』というアピールになる。中国が反発してくるなら、それは日中友好ではない」と話している。
【私の論評】中国は傍若無人な札束外交はもうできない(゚д゚)!
ブログ冒頭の記事には、掲載されていませんが、もう一つ従来の中国なら猛反発するはずなのに、まったくそうではないことがあります。それは、海自の黄海での監視活動です。
核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議を履行するため、海上自衛隊の護衛艦や哨戒機が昨年12月から日本海や朝鮮半島西側の黄海で、外国船から北朝鮮船舶への石油などの移し替えがないか警戒監視活動に当たっています。
ここで、注目すべきは黄海です。自衛隊は、設立されてからつい昨年の12月まで、一度も黄海で艦船や航空機などを派遣したことはありません。自衛隊は1954年7月1日に創設されたわけですから、もう60年以上もの間、一度も黄海に行ったことはないのです。
これ中国にとっては、あり得ないことのはずです。自衛隊の行動範囲は、日本列島と沖縄県あたりの海域に完全に限定されてたんですよ。それが黄海に入ったのです。
それもアジアではトップクラス海軍力を持ってる海上自衛隊が理由が何であれ、ここに来たということは、中国にとってはとんでもないことのはずです。
これは北朝鮮にとっても中国にとっても非常に有効な抑止力になります。場合によっては、北朝鮮が追い詰められた場合には、拉致被害者を返すというカードを切らなければならないかなと思わせるきっかけにもなり得る、重要な判断でした。安倍内閣はこのような判断に踏み切ったのです。このようなことができるようになった背景には無論、2015年の安保法制の改正があります。
海自が黄海に踏み入ってまで、監視活動をしても、中国側がこれに対して何も抗議をしない、それどころか、いつもなら中国の側にたって報道する日本のマスコミもこのことの重大性を報道しないのですから、中国は何かが大きく変わったと判断せざるを得ないです。
この中国の変化を、ブログ冒頭の記事では、"外交的に「八方塞がり」となっていることに加え、経済的に外貨不足に陥り、日本への接近を強めている"としています。
外交的には、安倍首相の安全保障のダイヤモンド構想が功を奏しているのは間違いないです。もし、これがなかった、今日これほど中国が外交的に「八方塞がり」にはなっていなかったことでしょう。
そうして、経済的には外貨不足に落ちいているることについては、このブログにも掲載したことがあります。
その記事のリンクを掲載します。
【田村秀男のお金は知っている】外貨準備増は中国自滅のシグナル 習近平氏の野望、外部からの借金なしに進められず―【私の論評】頼みの綱の一帯一路は幻影に過ぎない(゚д゚)!詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事にも掲載したグラフを引用します。
このグラフを見ると、対外負債の外貨準備費比率が右肩上がりにあがつていることを示しています。これは、何を意味しているかといえば、対外準備が国外からの借金でまかなわれており、その比率が年々拡大しているということです。
これには、中国当局もかなりの危機感を感じていることでしょう。中国が国外で何かをするときの資金のかなりの部分が国外からの借金で賄っているということです。
中国共産党機関紙・人民日報電子版「人民網」が昨年12月29日に報道したところによります、国家外貨管理局が29日に公表した同統計によれぱ、中長期対外債務残高は全体の35%、短期対外債務は65%をそれぞれ占めています。
政府機関別でみると、広義政府部門の対外債務残高は全体の9%、中央銀行が1%、銀行(金融機関)は50%、その他の部門が27%、また直接投資での企業間融資による対外債務残高は13%、となっています。
一方、人民銀行が昨年7月に更新した資産負債表によると、16年末まで中国国内の総負債規模は244兆元で、対外債務は約1兆5000億ドル。人民銀行は、中国の内外負債は約255兆元との見方を示しましたた。
中国経済金融情報サイト「新浪財経」は同月、国内専門家の評論記事を引用し、16年中国国内総生産(GDP)が74兆4000億元だったため、16年総債務規模の対GDP比率は342.7%だと報道しました。これは、もし中国が米国のような基軸通貨国であれば、あまり問題にならないのかもしれませんが、中国はそうではないので、かなり問題です。
「新浪財経」はまた、国際決済銀行(BIS)が16年中国非金融部門の債務規模は対GDP比で約260%と予想したため、「人民銀行の統計は、実際より過小評価されている」と指摘しました。
台湾企業家の高為邦氏は今年、中国経済の鈍化が続くとの見方を示しました。これまで中国経済の高成長を支えたのは輸出のほか、国内インフラ投資を刺激するための信用拡大でした。
今年、中国の主要輸出国であるアメリカは中国製品の関税引き上げなど様々な貿易制裁措置を実施するため、輸出は低迷するでしょう。輸出と債務拡大で、中国経済は一段と失速することになります。
トランプ大統領は中国の太陽光バネルの緊急輸入制限(セーフガード)を発動する文書に署名した |
中国当局は大規模な債務不履行(デフォルト)の発生を回避する金融危機の先延ばしのため、今紙幣を大量に印刷することで信用貨幣の供給量を増大しています。
貨幣供給量の増加によって発生するインフレは、同様に中国経済の崩壊につながる大きな要因になります。中国当局は安易に地方政府や国有企業の破産を認めないとの見解を示しています。
いよいよ、中国の金融崩壊が近づきつつあるようです。金融崩壊を何とかとどめたにしても、かつてのように破格の経済支援や格安のインフラ工事引き受けといったいわゆる札束外交で、世界各国での影響力増大を目指し続けるようなことはできなくなるでしょう。
貨幣供給量の増加によって発生するインフレは、同様に中国経済の崩壊につながる大きな要因になります。中国当局は安易に地方政府や国有企業の破産を認めないとの見解を示しています。
これを認めると、政権も一緒に滅びることになるからでしょう。当局が今できることは、債務拡大による金融危機の発生を先延ばしにするだけのようです。
日本は、間違っても中国に対する資金援助をするなどという馬鹿真似はするべきではありません。
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