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会見当日までの保秘徹底で当面の政局でも主導権
28日夕、官邸で辞任表明の会見を行う安倍晋三首相 |
内閣府の官僚が気づいた日程の「違和感」
8月27日夕、翌28日の安倍首相の日程が明らかになった。メディア並びに永田町、霞が関の住人がほぼ独占的に入手している公開情報である。
しかし、内閣府の切れ者で知られる官僚は日程をみて違和感を覚えた。
「臨時閣議が夕方にセットされているのはなぜか」
毎週金曜日は定例閣議が開かれる。2回も閣議を開く必要があるのか。ひょっとして、安倍首相がなにか考えているのではないか。閣僚の辞表を取りまとめての内閣改造、理屈としては内閣総辞職もあり得る――。
28日の臨時閣議は「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの確保の方針」を決定するために午後4時過ぎから開かれた。午後1時過ぎから行われた新型コロナウイルス感染症対策本部に連動した手続きの一つである。
結果的に、この官僚の推測は外れたことになる。ただ、違和感を覚えた点では大正解だった。実際、安倍首相は28日の臨時閣議で総理大臣として辞意を表明したからだ。
議院内閣制の仕組みに従い、安倍首相は先に午後2時過ぎに自民党本部を訪れ、臨時役員会などで自民党総裁として辞意を伝達している。そして4時から前述の臨時閣議、そして5時から辞任表明の記者会見を行った。28日午後5時からの記者会見予定が固まったのは26日とみられているが、この時点で安倍首相は辞意表明に向けた段取りをすべてセットしていたことになる。
安倍政権は閣議決定を歴代政権よりも多く行う傾向にあるため、コロナ対策での臨時閣議はおかしいとはいえないが、臨時閣議は緊急を要する場合に行うのが通例である。対策本部の日程をずらすなどして、定例閣議でコロナ対策を閣議決定すれば事足りる。1日2回の閣議はやはり何かの兆候だったのである。
誰にも洩らさなかった
この週は、24日の月曜日から首相の動静に注目が集まっていた。
安倍首相は24日午前、17日に引き続いて慶応大病院に向かい、約3時間40分滞在している。その日の午後、首相官邸に入った際には、安倍首相は「体調管理に万全を期し、これからまた仕事に頑張りたい」と述べた。
これにより自民党内は、当面は安倍首相が続投するとの認識を持った。安倍首相に近い側近らも、しばらくは職務に邁進すると受け止めた。実は前週末から「24日辞任」との怪情報が飛び交っていた。食事もとれなくなっているらしいという話はもう少し前から永田町を駆け巡っていた。政界関係者もメディアも緊張感をもって事態を見守っていた。
だが、この日の安倍首相の言動を見て、永田町とメディアは一息ついてしまった。それが実情だった。
筆者のつかんだ情報によれば、8月24日から25日にかけ、安倍首相は複数のメディア関係者や経済人らと電話をしている。その際、安倍首相は自身が回復傾向にある旨を明かしている。
会話をした人物の一人は「安倍首相が続投に強い意欲を示している」との印象を受けたという。今週に入り、メディアが「安倍首相は辞任しなさそうだ」との見方に大きく傾いたのは、安倍首相自身の発言に接した人々の“見方”が影響していた。もちろん、安倍首相と直接面会する閣僚や官邸スタッフ、与党幹部らも同様の見解を持っていた。
28日の辞任表明会見で、安倍首相は8月24日に辞意を決断したと明言し、誰にも相談せずに一人で決めたことも認めた。ウソをつくメリットを見いだせないので事実に近いはずだ。辞意を誰にも察知されないように保秘を徹底していた可能性が高い。実際、記者会見の3時間前まで、テレビも新聞も「辞意表明」の見出しを打てなかった上、自民党内も、例えば岸田文雄政調会長は地方に出張していたほどだ。有力後継候補の岸田氏がこのタイミングで東京を離れたところに致命的なセンスのなさを感じざるを得ないが、多くの議員たちにとっても寝耳に水だったのは間違いない。二階俊博幹事長も、菅義偉官房長官も、山口那津男公明党代表も、言動から推測するに事前にキャッチしていなかったようだ。唯一、事前に辞意を伝えられたのは麻生太郎副総理兼財務相だった。
安倍首相は8月24日、慶応大病院の検査を終え、官邸に入る際、記者団に「大変厳しい時にあっても、至らない私を支えてくれた全ての皆さまに感謝申し上げたい」と謝意を示している。今思えば、いつもとは異なる、妙な言い回しであり、“終わり”を意識した言葉であったことがわかる。
とはいえ、この言葉だけで、近いうちに退陣するだろうとの見通しを立てられた人はほとんどいないだろう。24日から28日までの5日間、安倍首相は「敵を欺くにはまず味方から」の権謀術数の鉄則を守り、表に出る日程に辞意表明に向けた布石を打った。
「臨時代理」阻止、総裁選方式も思うまま
8月28日の記者会見では、安倍首相の「低姿勢」が目立った。
「任期をまだ1年残し、他の様々な政策が実践途上にある中、コロナ禍の中、職を辞することとなったことについて、国民の皆様に、心よりお詫びを申し上げます」
「自分自身の健康管理も総理大臣の責任だろうと思います。それが私自身、十分にできなかったという反省はあります」
「病気と治療を抱え、体力が万全でないということのなか、大切な政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはなりません」
体調が万全ではないことが一目でわかる状態でありながら、無礼千万ともとれる一部記者の質問にも真摯に対応した。
効果は絶大だった。「病気についてあれこれ言うのはかわいそうだ、よくやった」という世論がまたたく間に形成された。安倍首相に厳しい姿勢を取ってきた野党議員からも、ねぎらいや慰労の言葉が次々に飛び出し、国民民主党所属議員からは、政治判断を誤ることはあってはならないので辞任するという理由を「潔い」と褒めたたえる声も出た。
思い出されるのは、安倍首相の大叔父でもある佐藤栄作首相の退陣会見だ。
1972年、佐藤栄作首相は、官邸と記者クラブとの行き違いもあって、花道となるはずの退陣表明会見を記者不在で行っている。佐藤首相は記者会見場に入った途端、新聞記者たちが集まっているのを見て不快感をあらわにし、「テレビカメラはどこにあるのか。新聞記者の諸君とは話さないことにしてるんだから。国民に直接話したいんだ。文字になると違うから。偏向的新聞は大嫌いだ」と言い放ち、最終的に記者団不在のまま記者会見が始まった。安倍首相は大叔父の大先輩とは正反対に、引き際の記者会見は成功したと評価されよう。
辞任の理由が病気であること、低姿勢を心がけた会見であったことなどから、世論はおおむね「労いモード」になった。そこで注目されるのは誰が次の首相になるのか、だ。
安倍首相は、後継に関しては口を出さないとの立場を強調しているが、果たしてそうだろうか。低姿勢の記者会見の裏で、復権に向けた野心も垣間見える。抜き打ち的な辞意表明により、自民党は安倍首相の敷いた路線に従わざるを得ない状態になっている。永田町でまことしやかに喧伝されていた「麻生首相臨時代理」構想は出る幕もなく、安倍首相は後継が決まるまでは職務を続けると断言した。すみやかに総裁選を実施する必要があるため、両院議員総会での総裁選が実施されることも内定した。これは安倍首相の不倶戴天の敵とされる石破茂元幹事長を潰すことに直結する。党員投票が実施されれば、石破氏が有利になるからだ。
現時点では、すべて安倍首相が望むような方向に動いている。
令和の「キングメーカー」誕生か
日本で最も権謀術数に長けているのは、史上最長の政権を維持した安倍首相である。「麻生首相臨時代理」の線を消し去り、総裁選出法については「二階幹事長に一任」とは言いながらも、石破氏が不利とされる議員票中心の方法へと導いた。いずれも用意周到なシナリオがあってのものだろう。次期政権への影響力保持を意図しているとしか思えないし、自身は政界を引退せず、一議員として活動していくとの意向も記者会見ではっきり示した。
9月15日前後に行われることになる総裁選、そして来年9月に再び行われる総裁選で、安倍首相の動きはポイントとなる。来年10月までには必ず衆院選もある。重要な政治イベントがあと1年のうちに3回もある点も見逃せない。
今後、安倍首相は党内最大派閥、細田派の最高実力者となり、党内政局のキーマンとなる。しかも、細田派は100人近い大所帯であり、全盛期の田中(角栄)派に匹敵する規模を誇る。安倍首相が体調回復に成功すれば、無役の「キングメーカー」として党内に君臨する公算が大きくなってきた。
さて、安倍首相の意中の後継者は誰なのか。スキャンダルまみれになりボロボロで官邸を去るのではない。歴代最長政権を率いた宰相経験者なのだから、その意向が影響力を持たないはずはない。当面、安倍首相の本音を探ろうとする動きが出てくるだろう。いや、そうなると安倍首相は実質的に、すでにキングメーカーの座を手に入れたと言えるのかもしれない。
【私の論評】安倍晋三氏は、一定期間のみ良い意味でのフィクサーか、キングメーカーの道を目指している(゚д゚)!
キングメーカーとは、どういう意味かといえば、キング(比喩的に最高権力者を意味するが、国王そのものである場合もある)などの選出や退陣に裏方で大きな影響力を持つ人物のことです。
自らは表舞台の政治権力者にならない(または退陣した後)が、裏方では政治権力者に関する人事権を事実上持っていることがあります。そのため、政治権力者の人事権を通じて政治を左右します。
総理退陣後に「キングメーカー」として力を発揮した西園寺公望 |
表舞台の政治権力者に関する人事権が少数(究極的には1人)になったり、ルールで明文化されていないが政治権力者に関する人事権を裏方の少数が事実上持っている政治構造になっていたりする場合は権力の二重構造となりやすいです。
現在の民主政治では大統領や首相など行政府最高権力者に対する裏方の人事権を指すことが多いです。
現在の民主政治では大統領や首相など行政府最高権力者に対する裏方の人事権を指すことが多いです。
確かに、上の記事にもある通り、安倍総理の辞任発表のタイミングや、辞任する意向を麻生氏にだけ伝えたことや、今後、安倍首相は党内最大派閥、細田派の最高実力者となり、党内政局のキーマンとなることや、細田派が100人近い大所帯であり、全盛期の田中(角栄)派に匹敵する規模を誇ることから、安倍総理がキングメーカーになる可能性は高いです。
振り返ってみると、安倍晋三氏は、第一次安倍政権においては、結局のところ経済が良くなければ、政権を維持することは困難になることを学んだと思います。これは、もっともです。なぜなら、国民の一番の政治に対する関心事は、自らの暮らしぶりであり、国体や安保はその次です。それが悪くなれば、政権に不満を抱くようになり、政権への支持は低下します。
政権が維持できなければ、自らの理想を達成できないことも学んだと思います。まずは、安倍晋三氏は、政権を維持することが第一ということを肝に命じたでしょう。
そうして、不死鳥のようによみがえった第二次安倍政権では、アベノミクスといわれる経済政策を強く打ち出しました。これによって、経済はかなり回復したのですが、そこに伏兵が現れました。
それは、頑として緊縮路線を貫く財務省です。安倍総理は、支持率の高い政権であれば、財務省も時の政権に抗えないのではと思ったでしょうが、実体はそうではありませんでした。安倍総理は、二度にわたって増税を先延ばししたのですが、結局のところ財務省の圧力に負け、二度にわたる消費税増税を容認せざるを得なくなってしまいました。
安倍首相は13年前の第1次政権で財務省の怖さを身をもって経験しました。
当初は小泉政権から引き継いだ圧倒的多数を背景に公務員改革を進め、財務省の天下り先に大鉈を振るって政府機関の統廃合に取り組みました。ところが、半年経たないうちにその威勢は消し飛びました。
閣僚のスキャンダルや消えた年金問題がリークされ、支持率が落ち目になると、財務省は全くいうことを聞かなくなったのです。そうなると内閣はひとたまりもないです。
やはり13年前、安倍首相は新聞の宅配制度を支える「特殊指定(地域や読者による異なる定価設定や値引きを原則禁止する仕組み)」見直しに積極的だった竹島一彦・公正取引委員長を留任させました。その人事でさらなる窮地に陥ったのです。
財務省と宅配を維持したい大手紙側は竹島氏に交代してもらう方針で話がついていました。ところが、安倍総理が留任させたことから、財務省は『安倍政権は宅配潰しに積極的だ』と煽り、それまで親安倍だった読売などのメディアとの関係が冷え込んだのです。
財務省の天下り先を潰しただけで、それだけの報復を受けたのです。その後、自民党から政権を奪い、「総予算の組み替え」で財務省の聖域である予算編成権に手をつけようとした民主党政権の悲惨な末路を見せつけられたのです。
これに怒った文科省は、腐敗官僚の前川を筆頭に、マスコミに嘘を垂れ流し、安倍内閣打倒に燃えるマスゴミがこれを最大限に利用して安倍政権を糾弾したのです。官庁の中では、最弱ともいわれる文科省がこれだけの反撃をするのですから、官庁では最強の財務省がどれだけの反撃をするのかは、想像に難くないです。
当初は小泉政権から引き継いだ圧倒的多数を背景に公務員改革を進め、財務省の天下り先に大鉈を振るって政府機関の統廃合に取り組みました。ところが、半年経たないうちにその威勢は消し飛びました。
閣僚のスキャンダルや消えた年金問題がリークされ、支持率が落ち目になると、財務省は全くいうことを聞かなくなったのです。そうなると内閣はひとたまりもないです。
官邸は閣議の際に大臣たちが総理に挨拶もしない“学級崩壊”状態に陥りました。あの時のトラウマがあるから、安倍総理は政権に返り咲くと政府系金融機関のトップに財務省OBの天下りを認めることで7年前の償いをせざるをえなかったようです。
13年前安倍第一次内閣は崩壊 |
やはり13年前、安倍首相は新聞の宅配制度を支える「特殊指定(地域や読者による異なる定価設定や値引きを原則禁止する仕組み)」見直しに積極的だった竹島一彦・公正取引委員長を留任させました。その人事でさらなる窮地に陥ったのです。
財務省と宅配を維持したい大手紙側は竹島氏に交代してもらう方針で話がついていました。ところが、安倍総理が留任させたことから、財務省は『安倍政権は宅配潰しに積極的だ』と煽り、それまで親安倍だった読売などのメディアとの関係が冷え込んだのです。
財務省の天下り先を潰しただけで、それだけの報復を受けたのです。その後、自民党から政権を奪い、「総予算の組み替え」で財務省の聖域である予算編成権に手をつけようとした民主党政権の悲惨な末路を見せつけられたのです。
最近の事例では、獣医学部新設のときの文科省の抵抗をみれば、わかりやすいでしょう。あの事件の実態は、獣医学部新設を渋る文科省に対し、官邸主導で押しまくって認可させたという、ただそれだけの出来事です。
これに怒った文科省は、腐敗官僚の前川を筆頭に、マスコミに嘘を垂れ流し、安倍内閣打倒に燃えるマスゴミがこれを最大限に利用して安倍政権を糾弾したのです。官庁の中では、最弱ともいわれる文科省がこれだけの反撃をするのですから、官庁では最強の財務省がどれだけの反撃をするのかは、想像に難くないです。
安倍総理としては、このことはかなりのトラウマになっていることでしょう。
安倍総理は、第二次安倍政権においては、財務省の抵抗にあって二回の増税をせざるをえませんでしたが、日銀は金融緩和を実施して、かつてないほど雇用は改善されました。これが、何といっても安倍長期政権を可能にした原動力でした。
しかし、財務省による圧力により、増税をせざるを得なくなりました。さらに、官僚の反抗とそれに呼応するマスコミの攻撃と、野党の攻撃に悩まされました。
確かに野党の攻撃は、ほとんど根拠のないもので「もりかけ桜」では、どうあがいても最初から倒閣など無理でした。しかし、国会開催中においては、どうしても、この野党のくだらない追求に付き合わなければなりません。
本当に日本の国会は、異常です。本来の国会議員の仕事は、立法です。だかこそ、立法府というのです。しかし、野党はまるで、倒閣するのが自分たちの仕事と思っているかのような振る舞いばかりします。
これは、英米などとは根本的に違います。米国では、たとえば、共和党のルビオ上院議員など、かなりの数の法案を提出しています。米国では、議員の仕事は、立法であることが理解されているようです。
しかし、日本の国会ではそれが理解されていないばかりか、閣僚や総理大臣が、国会に長時間拘束されます。米国では、年間で上院にトランプ大統領は1日出るだけですみます。下院には1時間だけです。フランス大統領は1日しか国会に出ません。英国も40時間くらいです。ドイツは14日。日本の総理はだいたい90日~100日くらい出ている。
これは、無論おくびにも出しませんでしたが、安倍総理には、かなり苦痛だったと思います。それでも、野党の追求がマクロ経済に関わること、安保に関わることなど根幹にかかわるような話であれば、まだ我慢もできるでしょうが、ほとんど倒閣のための低級なくだらない与党批判ばかりです。「桜」問題では、本当に野党の低能力ぶりが顕になり、安倍総理も内心呆れ返っていたのではないかと思います。
野党や、リベラル派の方々は、そんなことはないというかもしれませんが、では「もりかけ桜」で倒閣に結びつくような「物証」をあげてくれと、問うたら、提出できますか?
それができるなら、安倍内閣はもっと短命だったに違いありません。ある筋からの話ですが、安倍総理は元来チマチマしたことが嫌いなそうです。そんなことより、物事を大筋で捉えて、それに対する大胆な方策を考えることを好むそうです。そうして、本来国政とはそのようなものです。
野党のように、立法とは直接関係ないような、チマチマしたことを追求する姿勢には、ほんとうにうんざりされていたと思います。
それと、安倍総理は党内の派閥の力学にも悩まされ続けました、特に最近では、世界情勢が変わって、多くの民主主義国家が中国との対立を深めているにもかかわらず、自民党では志帥会(しすいかい,通称二階派)の勢力が強く、ご存知のように二階氏をはじめ、志帥会には親中派の議員も多く、これを配慮するあまり習近平主席の日本への国賓待遇での訪問を拒否するにかなり手間取りました。
それだけでなく、日本は政府は無論、民間企業なども旗幟を鮮明に、中国と対峙しなければ、いずれ米国等から制裁を受けかねません。
とにかく、第二次安倍政権において安倍総理は自ら総理大臣になって、選挙で何度も勝利して、政権を安定させたにしても、現在の日本の政治風土では、官僚の頑強な反抗、マスコミの攻撃、党内力学により、自分がやりたいようにできないということをは嫌というほど学んだと思います。これを民主主義と呼ぶには、あまりに官僚やマスコミ、党内力学が強すぎます。
二階自民党幹事長(左)と財務省太田次官(右) |
では、どうすれば良いのかということになりますが、それは上の記事にも掲載されているように、キングメーカーの道をえらぶということです。
私自身としては、安倍総理には辞任後は、メンターになってなってほしいと考えていました時期もありました。ちなみに、メンターとは、仕事上(または人生)の指導者、助言者の意味。
企業におけるメンター制度とは、企業において、新入社員などの精神的なサポートをするために、専任者をもうける制度のことで、日本におけるOJT制度が元になっています。メンターは、キャリア形成をはじめ生活上のさまざまな悩み相談を受けながら、育成にあたります。
ただ、メンター制度とは、あくまで商法や企業法、会社法など法律が整い、さらにその他の人事制度などが整っている組織で行えば、効果が期待できますが、官僚や、党内力学の問題がある政治の世界では全く効果が期待できません。
だとしたら、やはりキングメーカーになるのが、良いと思います。ただ私としては、それを乗り越えて、フィクサーへの道を歩んでいただきたいです。
なぜなら、最近の例をあげると、安倍総理が「10万円の制限なしの給付金」を岸田氏に一任したにもかかわらず、岸田氏は財務省との折衝において、いつの間にかそれが「30万円の所得制限つき給付金」に変わっていたことに象徴されるように、ポスト安倍候補者の能力があまりにも低いからです。
特に、マクロ経済政策に関しては、すべてのポスト安倍候補者があまりに疎く、財務省の緊縮脳に染められて、財政優先の思想に陥っているか、財務省の圧力に押し殺されて、財務省のいいなりのようです。これでは、誰が次の総理大臣になっても、長期政権すらおぼつかないです。
かろうじて、最近麻生氏が財務省を「狼少年」と揶揄して、まともになったようですが、麻生氏は次の総裁選には出ないと公言しています。
行政組織、政府や企業などの社会組織では、通常は関係する人間や団体の意向(広くは世論)を踏まえたうえで、正規の手続きを取って意思決定を進める手段が確立されています。
例えば、行政への陳情、選挙や企業における稟議や経営会議などです。そのような正規の手段によらず、意思決定の過程に介入する資金、政治力、人脈などを持つ人物がフィクサーと呼ばれます。
フィクサーが介入すると往々にしてその手段は公正でなく恣意的な結論となる場合があります。自民党でいえば、金丸氏はその典型でした。無論、私は安倍晋三氏が金丸氏のようになれといっているわけではありません。一方で、理想と現実の間で複雑化する人間関係や利害関係を円滑にすすめる役割を果たす場合もあります。
私が、安倍総理にフィクサーになっていただきたいというのは、そのような役割を果たし、その上で政治をあるべき正しい方向に近づけていただきたいということです。
現在の日本では、先にも述べたように、総理大臣になっても、長期政権を実現してすら、総理大臣が理想とする政治を実現できないのははっきりしました。
この状況はなんとかして変えていかなければなりません。しかし、変えるには今のままの状況では不可能です。
これを変えるために、あくまで一時的に安倍晋三氏に、フィクサーになっていただき、官僚が政治に介入できないようにし、政治が党内力学によって歪められるることがないような体制に持っていていただきたいです。そうすれば、マスコミも自ずと、変わっていくでしょう。
その過程で、日本にも英米のように政策提言シンクタンクを生み出すべきでしょうが、そのようなチマチマしたことは、それこそ、優秀な官僚等に任せれば良いことです。その他、日本では政治家の仕事と思われているものも、ほとんどがチマチマしたことです。そのようなチマチマしたことに政治家が直接かかわらなくても、すむような体制を整えるべきです。
無論、この問題は日本だけではなく、多くの民主主義国家においては存在します。韓国は、日本よりも酷いです。ただ、日本ではこの問題が韓国ほどないにしても、他の民主主義国家と比較して、度が過ぎているということです。
何もかもが、安倍晋三氏の思い通りということになれば、それは「全体主義」です。そのようなことではなく、総理大臣や政権が、官僚の思惑や、党内力学によって度がすぎる程度にまで、歪められない体制を整えていただきたいのです。
そのためには、安倍晋三氏が一定期間良い意味でのフィクサーとなり、日本の政治を良い方向に導いていただきたいのです。そうして、無論フィクサーなるものが、長期間存在することは、良くないことですから、これは数年から長くても10年でやめていただきたいです。
それで、日本の政治風土が変わり、総理大臣と政権が、官僚の思惑や、党内の力学によって歪められなくなった、まさにその時は、安倍晋三氏が再び総理大臣になっていただくか、それがかなわなけれは、安倍総理の意思を受け継ぐ人が総理大臣になっていただきたいです。日本では、これをもってはじめて、まともな安保論議や、憲法改正論議になるのではないかと思います。
無論安倍晋三氏は、これに近いことも当然ながら考えたと思います。キングメーカーもしくは、フィクサーになるべきか、それとも総理大臣を続ける道を選ぶべきが、悩まれたと思います。私は病をおしてまで、総理大臣を続けるよりは、日本の政治をより、正しい方向に向ける可能性に賭けたのではないかと思います。そうでなければ、少しの間休んでも、その期間に代理をたてて、総理大臣を続けたのではないかと思います。
これに関しては、安倍晋三氏の今後の行動をみていれば、いずれわかる時が来ると思います。
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