2020年8月23日日曜日

「TikTok」 中国の運営会社がトランプ政権相手取り裁判の方針―【私の論評】KikTokの本当の脅威は、得られた膨大な情報をAIを用いて分析するオシントだ(゚д゚)!



世界的に人気の動画共有アプリ「TikTok」を運営する中国のIT企業に対し、アメリカのトランプ政権がアメリカ事業の売却を命じている問題で、会社側はこれを不服として裁判を起こす方針を明らかにしました。

「TikTok」をめぐってアメリカのトランプ大統領は、利用者の個人情報が中国政府に悪用され、安全保障を脅かすおそれがあるとして、これまでに運営会社である中国のIT企業、バイトダンスとの取り引きを来月下旬から禁止することやバイトダンスに対してアメリカ国内での事業を売却することを相次いで命じています。

会社側は22日、声明を出し「トランプ政権は事実関係に関心を払わず、企業どうしの交渉に干渉しようとした」と批判しました。

そのうえで「わが社と利用者への公平な対応を実現するため、司法を通じて大統領の命令に異議を申し立てるしかない」として、トランプ政権を相手取り裁判を起こす方針を明らかにしました。

会社側はSNSの公式アカウントに訴えは24日に起こすと投稿しています。

「TikTok」をめぐっては、大手IT企業マイクロソフトがアメリカ事業の買収に向けて交渉を進めていますが、その行方は不透明で、アメリカの利用者からは不安の声も出ています。

【私の論評】KikTokの本当の脅威は、得られた膨大な情報をAIを用いて分析するオシントだ(゚д゚)!

この裁判自体は、結審までには時間がかかるし、その頃には大統領選挙はとっくに終了しているだろうし、米国はこのようなことにお構いなしに、中国や「TikTok」を運営する中国のIT企業に対して制裁を課すでしょうし、場合によって結審前に、アメリカ事業の売却されてしまうかもしれず、それに運営会社側に勝ち目はなく、あまり意味がないでしよう。

TikTokの危険性については、以前から指摘されていましたが、それがはっきり示されたのは、今年の1月、米ワシントンDCに本部を置くシンクタンク、ピーターソン国際経済研究所(Peterson Institute for International Economics, PIIE)は最新調査報告によるものでした。

私自身は、日本や欧米の企業によって製作されたアプリに関しても、情報の不正使用もある可能性も全くないとはいいませんが、それは国家目的に使われることはないと考えています。もし、そのようなことがあれば、大問題になるからです。

しかし、中国は違います。当然のことながら、アプリで収集した情報などは、中共が必要とあれば、すべて閲覧できるでしょう。だがら、私はKikTokをはじめ、中国製や韓国製のアプリなどは使用したことはありません。

報告書によれば、他の中国開発アプリと同様に、ユーザーの個人情報や位置情報を中国にあるサーバーに送っているといいます。中国政府から情報収集の協力要請があれば、ユーザー情報を簡単に入手できます。

米国当局が問題視しているのは、一部の若い軍人が軍服のまま基地内や航空機内などで自撮りしてTikTokに投稿していることです。これらの情報に基づいて、中国当局による西側諸国の軍事活動の情報入手を許すほか、兵士らの顔面識別情報を提供することになります。

ピーターソン国際経済研究所は、TikTokはファーウェイのように、欧米各国政府の国家安全保障を脅かす可能性が高いとその危険性を強調。各国政府に対策を講じるよう呼び掛けました。

TikTokの画面、小学生の投稿

TikTokは日本の小中高生の間でブームとなっています。株式会社マイナビが運営する10代女子向け総合メディア「マイナビティーズ」が昨年11月に発表した「2018年10代女子が選ぶトレンドランキング」では、TikTokは「流行したモノ」ジャンルの2位となりました。

バイトダンス側の最新統計によれば、全世界の月間TikTokアクティブユーザーは5億人。中国国内の月間アクティブユーザーは3億人です。

2019年2月、TikTokが米国の児童オンラインプライバシー保護法に違反しているとして、児童法保護団体などが米連邦取引委員会(FTC)に訴えを起こし、TikTokはFTCから、罰金570万ドルの支払いを命じられていました。

このころから、米国議会の議員たちが次々とTikTokの情報安全問題について言及し始め、CFIUSは2019年11月1日からTikTokの調査を開始。またCFIUS(対米外国投資委員会)は、米国を代表する医療情報共有コミュニティPatientsLikeMeやゲイ専用出会い系アプリのグリンドルに対し、CFIUSの審査を経ずに、北京ゲノム研究所の元CEO王俊氏が設立したバイオテック企業iCarbonXやゲーム会社・北京崑崙万維科技が巨額投資していることを問題視し、中国企業側に支配的持ち分株の売却を要請し、中国企業側もこれに同意しました。

米国では当時、米国の患者のゲノムデータが中国に流れたり、出会い系アプリを利用しているゲイの政治家や高官の個人情報が中国側に漏れることで、脅されてスパイ行為を働いたりするリスクなど、中国製アプリの具体的な危険性に言及されはじめました。
ウォールストリートジャーナルによれば、 TikuTokはグーグルのOS「アンドロイド」の個人情報保護をすり抜け、何百万もの携帯端末から個別の識別番号を収集し、グーグルの規約に違反してユーザー追跡をしていたことが12日までに判明しています。
元ホワイトハウス国家安全保障委員会の官僚で、大西洋評議会デジタル・フォレンジック・リサーチラボ(DFRLab)のグラハム・ブルーキー主任はTikTokがもたらす米国の国家安全上の脅威を3つ挙げています。
その3つとは、
その3つとは、
(1)中国政府にはTikTokからユーザーの個人情報提供を直接要請する能力がある。

(2)ユーザーは個人情報をどのように利用されるか知るすべがない。

(3)投稿内容に対し中国が検閲できる。(1)中国政府にはTikTokからユーザーの個人情報提供を直接要請する能力がある。

これら、3つは当然といえば当然です。そもそも、中国に国家情報法国防動員法がある限り、中国と対立を深める米国は当然のこととして、日本を含むすべての国々にとって、あらゆる中国企業は国家安全上のリスクがある、ということになります。


TikTokだけでなく、微博、微信、百度翻訳などのあらゆるアプリも、またアリババや京東といったEコマース企業、トリップドットコムなどの旅行サイトも、ネットイースなどのゲーム企業も個人情報を中国政府に渡すリスクはあり、スパイ企業になりうる、ということになります。

実際、アップルは人気オンラインゲームも含めて3万以上のアプリをアップルストアから撤去しました。

トランプ大統領自身もすでにTikTokの被害にあっています。トランプ大統領のオクラホマ州タルサ集会(6月20日)に100万人の参加申し込みがありながら、実際は6000人ほどしか出席せず、トランプのメンツ丸つぶれとなる事件がありましたが、これはTikTokユーザーの「ステージ上でトランプを一人ぼっちにさせよう」と呼び掛ける動画が広がったことにも大きな原因があったとされています。

トランプ大統領が、中国アプリの中でTikTokを真っ先にターゲットにしたのはトランプ大統領の個人的恨み、という見方も一部で流れていましたが、中国政府が検閲を行使できる圧倒的な世論誘導力をもつアプリが米国の若年層に広がることの怖さを考えると、大統領選前にこのアプリを何とかしたいと思うトランプ大統領の考えも納得できます。

それに、TikTokのもう一つの脅威があります。昨日は日本が『ファイブ・アイズ』に入ることの真のメリットについて掲載しました。その記事の中で、現在のスパイ活動は、オシント(公開されている情報を情報源とする情報収集活動)を中心行われていることを示しまた。

実は昔からスパイ活動のうち007のような派手な活動は、ほんの一部で、スパイ活動の大部分は一見地味に見えるこのオシントによるものです。CIAもかつてのソ連のKGBの活動も大部分は、オシントです。ヒューミント(人を介して行う超包活動)はごく一部です。

スパイ活動には、オシント、シギント、ヒューミントの3つがある

そのオシントの例として、第二次世界大戦中に、新聞その他の公開情報から、たとえばドイツの高官がある町の結婚式に参加した等の情報を丹念につみあげていき、独ソ戦の開始日をあてた諜報員をあげました。

TikTokから得られる情報は、このオシントの効率を著しく高める可能性があるのです。たとえば、これらから得られる情報を丹念につみあげいげは、いますぐにではなくても、その時々の米国の国内の状況をつぶさに知ることができる可能性が高まります。

先程のなぜドイツの将官がある町の結婚式に参加したことが、独ソ戦の開始日の予測にむすびついたかといえば、当時のドイツとソ連の国境(現在のポーランド)に、ドイツ軍の機甲部隊が結集しているという情報があり、それに加えて、何か特殊なことが無い限り、その町に縁のないドイツの将官が来るはずもなく、しかも結婚式に参加という事態は普通なら起こり得ないことだったからです。

無論この二つの情報だけでは、独ソ戦の開始日など予測することなどできず、その他様々な公情報から独ソ戦の開始日を予測したのです。その当時は、インターネットも、AIもなかったので、これを調べるためには、複数の諜報員がかなり時間をかけて、様々な膨大なソースからこれを割り出したのでしょう。

しかし、現在では、インターネットがあり、AIもあります。TikTokから得られる様々な膨大な情報をAIと人間が分析して蓄積していけば、独ソ戦の開始日の予測どころか、かなりことを予測できる可能性があります。無論、TikTokから得られ情報は、中国外では非合法ですが、中国内では、合法であり、それは中国国内では、諜報活動にかかわるものとしては、公開情報と同じということになります。

だからこそ、一見TikTokから得られる諜報活動は、シギント(通信、電磁波、信号等の、主として傍受を利用した諜報・諜報活動)だといえますが、これは得られた情報が膨大にあるだけでは何のインテリジェンスにもならず、かなりオシント的なものになると思います。

そうして、その予測にもとづき、中共が様々な手を打てば、米国内の様々なことを操作できるようになるでしょう。いや、それどころか、世界中の国々の様々なことを操作てきるようになるのです。これが本当の脅威です。多くの日本人は、長い間平和に慣れ親しんできたせいで、このような脅威に鈍感になってしまったようです。日本では、このような脅威について、指摘するものはほとんどありません。

本来政治とは関係ない、若者の娯楽アプリであるはずですが、使いようによっては洗脳や世論誘導のツールとなりえます。もちろん、映画やテレビ、音楽、ファッションのあらゆる文化産物に、そうした世論誘導効果、中国の言うところの「宣伝効果」はあるのですが、スマートフォンとアプリの登場によって、その伝播力、影響力、そして低年齢層化が格段にレベルアップした以上、こうしたハイテクソフトのナショナリズム化は避けられないでしょう。

張一鳴氏は、思想的には必ずしも共産党一党独裁体制には染まっていないようです。むしろ傾向としては自由主義的な考えの持ち主で、真のグローバリストと評する声も出ています。

少なくとも共産党体制と決別したほうが、企業も社員もハッピーに違いないです。中国ではすでに習近平政権に敵視されて、経済犯として逮捕されたり失脚したりしたうえ、資産接収された民営企業がいくつか存在し、今後増えていきそうな気配です。

ただ、張一鳴氏がたとえ米国内の事業を売って、共産党体制と決別しようとしたとしても、中国に国家情報法国防動員法がある限り、張一鳴氏が中国人であるかぎり、中国共産党の要望や希望を叶えなければ、張一鳴氏は法律に違反したことになり、中共に逮捕されてしまうのです。これが、中国の脅威の本質なのです。

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